(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872624
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置、車両のためのブレーキシステム、および、電気機械式のブレーキ倍力装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20210510BHJP
F16C 35/02 20060101ALI20210510BHJP
F16C 23/04 20060101ALI20210510BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
B60T13/74 D
F16C35/02 Z
F16C23/04 Z
F16H25/20 E
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-546187(P2019-546187)
(86)(22)【出願日】2018年2月1日
(65)【公表番号】特表2020-508256(P2020-508256A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】EP2018052479
(87)【国際公開番号】WO2018162151
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】102017203559.5
(32)【優先日】2017年3月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】パヌンツィオ,ジャンマリア
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル,ヴィリ
【審査官】
的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−530645(JP,A)
【文献】
特開平09−166137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T13/00−13/74
F16C 21/00−31/06
35/00−39/06
43/00−43/08
F16H 19/00−37/16
49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置であって、
ハウジング(54,56)を有しており、
スピンドル(38)と噛み合い連動しているスピンドルナット(36)を有しており、 電気モータを有していて、該電気モータの運転によって、前記スピンドル(38)がこのスピンドルのスピンドル軸線(40)に沿った並進運動に変えられるように、前記スピンドルナット(36)が回転せしめられるようになっており、
前記ハウジング(54,56)に固定された、前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在する第1の抗張ロッド(58)を有しており、
前記ハウジング(54,56)に固定された、前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在する第2の抗張ロッド(60)を有しており、
前記スピンドル(38)に固定されたブラケット(62)を有しており、前記第1の抗張ロッド(58)を把持する第1の滑り軸受(64)が前記ブラケット(62)の第1の開口(66)内に配置されていて、前記第2の抗張ロッド(60)を把持する第2の滑り軸受(68)が前記ブラケット(62)の第2の開口(70)内に配置されている、
形式のものにおいて、
前記第1の滑り軸受(64)と前記第2の滑り軸受(68)とがそれぞれ、前記スピンドル軸線(40)に対して直角な平面(E)内で前記ブラケット(62)内にばね弾性的に締め付けられており、
前記第1の滑り軸受(64)が第1の側面で第1の剛性なU字形プロフィール(64a)を有していて、第2の側面で第1の弾性的なU字形プロフィール(64b)を有しており、および/または前記第2の滑り軸受(68)が第1の側面で第2の剛性なU字形プロフィール(68a)を有していて、第2の側面で第2の弾性的なU字形プロフィール(68b)を有している、電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記第1の滑り軸受(64)は、回転せしめられる前記スピンドルナット(36)によって前記第1の滑り軸受(64)に伝達されるトルクが前記第1の剛性なU字形プロフィール(64a)によって支えられるように、前記ブラケット(62)の前記第1の開口(66)内にばね弾性的に締め付けられており、および/または前記第2の滑り軸受(68)は、回転せしめられる前記スピンドルナット(36)によって前記第2の滑り軸受(68)に伝達されるトルクが前記第2の剛性なU字形プロフィール(68a)によって支えられるように、前記ブラケット(62)の前記第2の開口(70)内にばね弾性的に締め付けられている、請求項1記載の電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項3】
前記第1の滑り軸受(64)の前記第1の弾性的なU字形プロフィール(64b)の内側に第1のストッパ(64c)が形成されていて、該第1のストッパ(64c)が、前記第1の抗張ロッド(58)を把持する前記第1の滑り軸受(64)の第1の環状領域(64d)から中間ギャップ(76)だけ間隔を保っており、および/または前記第2の滑り軸受(68)の前記第2の弾性的なU字形プロフィール(68b)の内側に第2のストッパ(68c)が形成されていて、該第2のストッパ(68c)が、前記第2の抗張ロッド(60)を把持する前記第2の滑り軸受(68)の第2の環状領域(68d)から別の中間ギャップ(76)だけ間隔を保っている、請求項1または2記載の電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項4】
第1の溝(64e)が前記第1の滑り軸受(64)に形成されていて、前記ブラケット(62)の前記第1の開口(66)内にばね弾性的に締め付けられた前記第1の滑り軸受(64)が、前記第1の溝(64e)内に係合する前記ブラケット(62)の第1の縁部領域によって、前記スピンドル軸線(40)に対して平行に整列された空間方向で前記第1の縁部領域と前記第1の溝(64e)の第1の溝内壁との間にギャップ(78)が得られるように、前記第1の開口(66)に保持されており、および/または第2の溝(68e)が前記第2の滑り軸受(68)に形成されていて、前記ブラケット(62)の前記第2の開口(70)内にばね弾性的に締め付けられた前記第2の滑り軸受(68)が、前記第2の溝(68e)内に係合する、前記ブラケット(62)の第2の縁部領域によって、前記スピンドル軸線(40)に対して平行に整列された空間方向で、前記第2の縁部領域と前記第2の溝(68e)の第2の溝内壁との間に別のギャップ(78)が得られるように、前記第2の開口(70)に保持されており、
前記第1の滑り軸受(64)の第1の変形リブ(80)が、前記第1の弾性的なU字形プロフィール(64b)に位置する、前記第1の溝(64e)の前記第1の溝内壁の第1の領域に形成されており、および/または前記第2の滑り軸受(68)の第2の変形リブ(82)が、前記第2の弾性的なU字形プロフィール(68b)に位置する、前記第2の溝(68e)の前記第2の溝内壁の第2の領域内に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項5】
前記ブラケット(62)が接合法によって、前記スピンドル(38)に軸方向移動不能および相対回動不能に結合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項6】
車両のためのブレーキシステムにおいて、請求項1から5までのいずれか1項記載の電気機械式のブレーキ倍力装置を備えた車両のためのブレーキシステム。
【請求項7】
車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置であって、
ハウジング(54,56)を有しており、
スピンドル(38)と噛み合い連動しているスピンドルナット(36)を有しており、 電気モータを有していて、該電気モータの運転によって、前記スピンドル(38)がこのスピンドルのスピンドル軸線(40)に沿った並進運動に変えられるように、前記スピンドルナット(36)が回転せしめられるようになっており、
前記ハウジング(54,56)に固定された、前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在する第1の抗張ロッド(58)を有しており、
前記ハウジング(54,56)に固定された、前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在する第2の抗張ロッド(60)を有しており、
前記スピンドル(38)に固定されたブラケット(62)を有しており、前記第1の抗張ロッド(58)を把持する第1の滑り軸受(64)が前記ブラケット(62)の第1の開口(66)内に配置されていて、前記第2の抗張ロッド(60)を把持する第2の滑り軸受(68)が前記ブラケット(62)の第2の開口(70)内に配置されている、
形式のものにおいて、
前記第1の滑り軸受(64)と前記第2の滑り軸受(68)とがそれぞれ、前記スピンドル軸線(40)に対して直角な平面(E)内で前記ブラケット(62)内にばね弾性的に締め付けられており、
第1の溝(64e)が前記第1の滑り軸受(64)に形成されていて、前記ブラケット(62)の前記第1の開口(66)内にばね弾性的に締め付けられた前記第1の滑り軸受(64)が、前記第1の溝(64e)内に係合する前記ブラケット(62)の第1の縁部領域によって、前記スピンドル軸線(40)に対して平行に整列された空間方向で前記第1の縁部領域と前記第1の溝(64e)の第1の溝内壁との間にギャップ(78)が得られるように、前記第1の開口(66)に保持されており、および/または第2の溝(68e)が前記第2の滑り軸受(68)に形成されていて、前記ブラケット(62)の前記第2の開口(70)内にばね弾性的に締め付けられた前記第2の滑り軸受(68)が、前記第2の溝(68e)内に係合する、前記ブラケット(62)の第2の縁部領域によって、前記スピンドル軸線(40)に対して平行に整列された空間方向で、前記第2の縁部領域と前記第2の溝(68e)の第2の溝内壁との間に別のギャップ(78)が得られるように、前記第2の開口(70)に保持されている、電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項8】
車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置であって、
ハウジング(54,56)を有しており、
スピンドル(38)と噛み合い連動しているスピンドルナット(36)を有しており、 電気モータを有していて、該電気モータの運転によって、前記スピンドル(38)がこのスピンドルのスピンドル軸線(40)に沿った並進運動に変えられるように、前記スピンドルナット(36)が回転せしめられるようになっており、
前記ハウジング(54,56)に固定された、前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在する第1の抗張ロッド(58)を有しており、
前記ハウジング(54,56)に固定された、前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在する第2の抗張ロッド(60)を有しており、
前記スピンドル(38)に固定されたブラケット(62)を有しており、前記第1の抗張ロッド(58)を把持する第1の滑り軸受(64)が前記ブラケット(62)の第1の開口(66)内に配置されていて、前記第2の抗張ロッド(60)を把持する第2の滑り軸受(68)が前記ブラケット(62)の第2の開口(70)内に配置されている、
形式のものにおいて、
前記第1の滑り軸受(64)と前記第2の滑り軸受(68)とがそれぞれ、前記スピンドル軸線(40)に対して直角な平面(E)内で前記ブラケット(62)内にばね弾性的に締め付けられており、
前記第1の滑り軸受(64)が固定軸受として、前記第1の滑り軸受(64)のピン受け孔(72)内および前記ブラケット(62)の別のピン受け孔内に圧入されたピン(74)によって前記第1の開口(66)内に固定されており、これに対して前記第2の滑り軸受(68)が浮動軸受として前記第2の開口(70)内にしゅう動可能に支承されている、電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項9】
電気機械式のブレーキ倍力装置の製造方法であって、
スピンドル(38)と噛み合い連動しているスピンドルナット(36)を、該スピンドルナット(36)が電気モータの運転によって回転せしめられ、それによって前記スピンドル(38)がこのスピンドルのスピンドル軸線(40)に沿って並進運動せしめられるように、前記電気モータに接続し(S1)、
第1の滑り軸受(64)を、前記スピンドル(38)に固定されたブラケット(62)の第1の開口(66)内に配置し、第2の滑り軸受(68)を前記ブラケット(62)の第2の開口(70)内に配置し、
第1の抗張ロッド(58)を、前記第1の滑り軸受(64)が前記第1の抗張ロッド(58)を把持し前記第1の抗張ロッド(58)が前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在するように、電気機械式のブレーキ倍力装置のハウジング(54,56)に固定し(S3)、
第2の抗張ロッド(60)を、前記第2の滑り軸受(68)が前記第2の抗張ロッド(60)を把持し前記第2の抗張ロッド(60)が前記スピンドル(38)の前記スピンドル軸線(40)に対して平行に延在するように、電気機械式のブレーキ倍力装置の前記ハウジング(54,56)に固定する(S4)、
方法において、
前記第1の滑り軸受(64)および前記第2の滑り軸受(68)をそれぞれ、後で前記スピンドル軸線(40)に対して直角に整列された平面(E)内で、前記ブラケット(62)内にばね弾性的に締め付けられ(S2)
前記第1の滑り軸受(64)が第1の側面で第1の剛性なU字形プロフィール(64a)を有していて、第2の側面で第1の弾性的なU字形プロフィール(64b)を有しており、および/または前記第2の滑り軸受(68)が第1の側面で第2の剛性なU字形プロフィール(68a)を有していて、第2の側面で第2の弾性的なU字形プロフィール(68b)を有していることを特徴とする、電気機械式のブレーキ倍力装置のための製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置、および車両のためのブレーキシステムに関する。さらに、本発明は、電気機械式のブレーキ倍力装置のための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1aおよび
図1bは、本出願人による内部従来技術として公知である従来の電気機械式のブレーキ倍力装置の概略的な部分図を示す。
【0003】
図1aおよび
図1bに示された従来技術による電気機械式のブレーキ倍力装置は、(図示していない)スピンドルナットおよび(図示していない)電気モータを有しており、この電気モータの運転によって、スピンドルナットは回転せしめられる。スピンドルナットは、(図示していない)スピンドルと噛み合い連動しており、従ってスピンドルは、回転せしめられるスピンドルナットによって、そのスピンドル軸線10に沿って並進運動せしめられる。
【0004】
図1aおよび
図1bの従来の電気機械式のブレーキ倍力装置はハウジングも有しているが、ハウジングの図解は省かれている。(図示していない)第1の抗張ロッドおよび(図示していない)第2の抗張ロッドはそれぞれ、その縦軸線12が(概ね)スピンドル軸線10に対して平行に延在するように、ハウジングに固定されている。第1の滑り軸受14は第1の抗張ロッドを把持する。相応に、第2の滑り軸受16は第2の抗張ロッドを把持する。滑り軸受14および16は、ブラケット22のそれぞれ1つの開口18および20内にはめ込まれており、これらの開口18および20を介してスピンドルは抗張ロッドに沿ってガイドされている。ブラケット22は、ブラケット22の中央区分22aが(スピンドル軸線10に対して直角な)第1の平面E1内に位置し、これに対して、第1の開口18が形成されている、ブラケット22の第1の端部区分22b、および第2の開口20が形成されている、ブラケット22の第2の端部区分22cは、第1の平面E1に対して平行にずらされた第2の平面E2に形成されているように、直角に曲げて形成されている。
【0005】
各滑り軸受14および16は環状の溝24を有しており、この環状の溝24内に、対応配設された開口18または20に位置するブラケット22の縁部領域が係合する。
図1bには、第1の滑り軸受14に形成された溝24が拡大して示されている。溝24は、スピンドル軸線10に対して平行に整列された平面内に第1のギャップ26が存在し、またスピンドル軸線10に対して直角に整列された空間方向でそれぞれの溝24の内壁とブラケット22の係合する縁部領域との間に第2のギャップ28も存在するように形成されていることが分かる。従って、スピンドルナットの回転によってそれぞれの滑り軸受14または16に伝達される、スピンドル軸線10に対して直角に整列された平面内に位置する横方向力F1も、また対応配設された抗張ロッドに沿って滑動する滑り軸受14または16に作用する摩擦力F2も、溝24内に係合するブラケット22の縁部領域を、溝24内でしゅう動させるように作用する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、請求項1の特徴を有する車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置、請求項9の特徴を有する車両のためのブレーキシステム、および請求項10の特徴を有する電気機械式のブレーキ倍力装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、好適な形式で、それぞれのスピンドルが、抗張ロッドに沿ったスピンドルのガイドによって、スピンドル軸線に沿ったスピンドルの並進運動中の傾倒モーメントを懸念する必要なしに、支承されている、電気機械式のブレーキ倍力装置を提供する。それにより、スピンドルに作用する/伝達される横方向力およびトルクの影響は良好に補正され得るので、スピンドルの不都合な傾倒/固着が発生することはない。滑り軸受をブラケット内にばね弾性的に締め付けることによって、本発明によるブレーキ倍力装置において、遊びのある滑り軸受ガイドが実現されているので、滑り軸受の材料の様々な熱膨張係数に基づく、ブラケットに対する様々な熱膨張は補正可能である。本発明によるブレーキ倍力装置における遊びのある滑り軸受ガイドは、角度誤差の補正および構成部分公差の補正も可能にする。しかしながら、上記従来の滑り軸受ガイドに対して、本発明によるブレーキ倍力装置においては、滑り軸受の溝内に突入するブラケットの縁部領域がそれぞれの溝の溝内壁に当接する/ぶつかることに基づく騒音発生を懸念する必要はない。スピンドル軸線に対して直角に整列された平面内に滑り軸受をばね弾性的に締め付けることによって、溝内に突入するブラケットの縁部領域とそれぞれのブラケットの溝内壁との間のギャップ形成は問題なく省かれる。従って、ギャップの閉鎖に基づく当接騒音またはカチカチ音が誘発されることもない。従って、本発明は、本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置若しくはこのブレーキ倍力装置を備えて構成されたブレーキシステムを装備した車両の運転者のための快適性向上に寄与する。
【0008】
電気機械式のブレーキ倍力装置の好適な1実施例では、第1の滑り軸受が第1の側面で第1の剛性なU字形プロフィールを有していて、第2の側面で第1の弾性的なU字形プロフィールを有しており、および/または第2の滑り軸受が第1の側面で第2の剛性なU字形プロフィールを有していて、第2の側面で第2の弾性的なU字形プロフィールを有している。このような形式で構成された第1/第2の滑り軸受は、問題なく、滑り軸受、特に滑り軸受溝とブラケットとの当接が発生しないように、ブラケットの対応配設された開口内にばね弾性的に締め付けて設けることができる。これにより、それぞれの電気機械式のブレーキ倍力装置の高い操作速度および/または高い負荷においても、滑り軸受がブラケットに当接することに基づく高い騒音を懸念する必要はない。
【0009】
好適な形式で、第1の滑り軸受は、回転せしめられるスピンドルナットによって第1の滑り軸受に伝達されるトルクが第1の剛性なU字形プロフィールによって支えられるように、ブラケットの第1の開口内にばね弾性的に締め付けられており、および/または第2の滑り軸受は、回転せしめられるスピンドルナットによって第2の滑り軸受に伝達されるトルクが第2の剛性なU字形プロフィールによって支えられるように、ブラケットの第2の開口内にばね弾性的に締め付けられている。従って、電気機械式のブレーキ倍力装置のこの実施例は、トルクがたいていは所定の回転方向にだけ作用し、対応配設された抗張ロッドから、接触する剛性なU字形プロフィールの方向に向けられた横方向力を介して支えられる、という事実を利用するものである。横方向力に抗する方向に向けられた空間方向における妨害力は、電気機械式のブレーキ倍力装置の通常運転中は稀である。従って、ここに記載された電気機械式のブレーキ倍力装置は、ブラケットおよび好適な形式でこのブラケット内に嵌めこまれた滑り軸受によって、抗張ロッドにおけるスピンドルの特に好適なガイドを有している。
【0010】
好適な形式で、第1の滑り軸受の第1の弾性的なU字形プロフィールの内側に第1のストッパが形成されていて、この第1のストッパは、第1の抗張ロッドを把持する第1の滑り軸受の第1の環状領域から中間ギャップだけ間隔を保っており、および/または第2の滑り軸受の第2の弾性的なU字形プロフィールの内側に第2のストッパが形成されていて、この第2のストッパが、第2の抗張ロッドを把持する第2の滑り軸受の第2の環状領域から別の中間ギャップだけ間隔を保っている。電気機械式のブレーキ倍力装置のこの実施例は、比較的高い負荷および/または比較的高い操作速度においても、第1または第2の環状領域が隣接する第1または第2のストッパに当接したときに当接騒音またはカチカチ音を誘発させることはない。これに反して、このような形式のストッパは、人が騒音として認識できない程度に、強く減衰されている。
【0011】
電気機械式のブレーキ倍力装置の別の好適な実施例では、第1の溝が第1の滑り軸受に形成されていて、ブラケットの第1の開口内にばね弾性的に締め付けられた第1の滑り軸受が、第1の溝内に係合するブラケットの第1の縁部領域によって、スピンドル軸線に対して平行に整列された空間方向で第1の縁部領域と第1の溝の第1の溝内壁との間にギャップが得られるように、第1の開口に保持されている。相応に、第2の溝が第2の滑り軸受に形成されていてもよく、ブラケットの第2の開口内にばね弾性的に締め付けられた第2の滑り軸受が、第2の溝内に係合する、ブラケットの第2の縁部領域によって、スピンドル軸線に対して平行に整列された空間方向で、第2の縁部領域と第2の溝の第2の溝内壁との間に別のギャップが得られるように、第2の開口に保持されていてよい。この場合、第1および/または第2の滑り軸受は、ブラケットに対してすべての空間方向でわずかに傾倒可能であるので、角度誤差および構成部分公差が補正可能である。
【0012】
別の好適な実施例では、第1の滑り軸受の第1の変形リブが、第1の弾性的なU字形プロフィールに位置する、第1の溝の第1の溝内壁の第1の領域に形成されている。相応に、第2の滑り軸受の第2の変形リブが、第2の弾性的なU字形プロフィールに位置する、第2の溝の第2の溝内壁の第2の領域内に形成されていてよい。このような形式の変形リブによって、ブラケットにおける第1および/または第2の滑り軸受の組み立てが軽減され、このために必要な組み立て力を低下させることができる。
【0013】
好適な形式で、第1の滑り軸受が固定軸受として、第1の滑り軸受のピン受け孔内およびブラケットの別のピン受け孔内に圧入されたピンによって第1の開口内に固定されており、これに対して第2の滑り軸受が浮動軸受として第2の開口内にしゅう動可能に支承されている。これによって、第1および/または第2の滑り軸受が固着することなしに、スピンドルはそのスピンドル軸線伝いに抗張ロッドに沿ってしゅう動可能である。これは、浮動軸受としての第2の滑り軸受の浮動式の軸受に対する固定軸受としての第1の滑り軸受の固定と言い換えてもよい。
【0014】
好適な形式で、ブラケットは接合法によって、スピンドルに軸方向移動不能および相対回動不能に結合されている。例えば、ブラケットはスピンドルに押し付けられ、かつ/または溶接されていてよい。これは、スピンドルにおけるブラケットの確実な保持を保証する。
【0015】
前記利点は、このような形式の電気機械式のブレーキ倍力装置を備えた車両のためのブレーキシステムにおいても保証されている。ブレーキ倍力装置の前記実施例によるブレーキシステムはさらに改良可能であることを指摘しておく。
【0016】
電気機械式のブレーキ倍力装置のための対応する製造方法の実施も、前記利点を提供する。さらに、電気機械式のブレーキ倍力装置の前記実施例に従った製造方法は、同様にさらに改良可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1a】従来の電気機械式のブレーキ倍力装置の概略的な部分図である。
【
図1b】従来の電気機械式のブレーキ倍力装置の概略的な部分図である。
【
図2a】本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の1実施例の概略的な全体図である。
【
図2b】本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の1実施例の概略的な部分図である。
【
図2c】本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の1実施例の概略的な部分図である。
【
図2d】本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の1実施例の概略的な部分図である。
【
図2e】本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の1実施例の概略的な部分図である。
【
図2f】本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の1実施例の概略的な部分図である。
【
図3】本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の製造方法の1実施例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のその他の特徴および利点を以下に図面を用いて説明する。
【0019】
図2a乃至
図2fは、本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の1実施例の概略的な全体図および部分図を示す。
【0020】
図2a乃至
図2fによって概略的に示された電気機械式のブレーキ倍力装置は、液圧式のブレーキシステムの部分として車両/自動車に搭載することができ、この場合、電気機械式のブレーキ倍力装置の使用可能性は、所定のブレーキシステム型式でしかも所定の車両型式/自動車型式に限定される。
【0021】
図2aに全体が示されている電気機械式のブレーキ倍力装置は、(ブレーキペダルに後置された)入力ロッド32に伝達された運転者制動力が電気機械式のブレーキ倍力装置によって増幅可能となるように、(図示していない)ブレーキペダルと、電気機械式のブレーキ倍力装置を装備したブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ30との間に配置されている。このために、電気機械式のブレーキ倍力装置は、(図示していない)電気モータを有しており、この電気モータは、伝動装置34を介して、スピンドル38と噛み合い連動しているスピンドルナット36と次のように、つまり、スピンドルナット36が回転可能/回転せしめられ、スピンドル38がそのスピンドル軸線40に沿って並進運動可能/並進運動せしめられるように、接続されている。
図2aに示されていない電気モータのために、電気機械式のブレーキ倍力装置に適したそれぞれのモータ型式が使用されてよい。スピンドルナット36は、電気モータの運転によってスピンドル38のスピンドル軸線40まわりに回転運動せしめられる。
【0022】
入力ロッド32により接触されている入力ピストン42は、スピンドル軸線40に沿ってスピンドル38を貫いて延在する内孔内に次のように、つまり入力ピストン42、インサート44およびリアクションディスク46を介して運転者制動力を出力ピストン48に伝達可能であるように、位置調節可能に配置されている。スピンドル38の並進運動によってスピンドルのスピンドル軸線40に沿って位置調節されている弁体50も、リアクションディスク46を押圧し、それによって出力ピストン48に伝達される運転者制動力が増幅可能/増幅される。
【0023】
電気機械式のブレーキ倍力装置のハウジングとして、
図2aには、車両スプラッシュボード52に固定された伝動装置ハウジング底部54およびハウジング壁56が示されている。ハウジングに、スピンドル38のスピンドル軸線40に対して(概ね)平行に延在する第1の抗張ロッド58が固定されている。さらに、第2の抗張ロッド60がハウジングに、この第2の抗張ロッド60がスピンドル38のスピンドル軸線40に対してやはり(概ね)平行に延在するように、固定されている。第1の抗張ロッド58の第1の中心縦軸線58aおよび第2の抗張ロッド60の第2の中心縦軸線60aが、
図2aおよび
図2cに同様に示されている。
【0024】
図2a乃至
図2fの電気機械式のブレーキ倍力装置は、スピンドル38に固定されたブラケット62も有している。例えば、ブラケット62は、接合法によってスピンドル38に軸方向移動不能および相対回動不能に結合されている。特に、ブラケット62はスピンドル38に圧着および/または溶接されていてよい。これは、スピンドル軸線40に沿って位置調節されるスピンドル38におけるブラケット62の自立的な確実な保持を可能にする(抗張ロッド58および60に沿ったスピンドル38のガイドを保証するために)。
【0025】
第1の抗張ロッド58を把持する第1の滑り軸受64は、ブラケット62の第1の開口66内に配置されている。相応に、第2の抗張ロッド60を把持する第2の滑り軸受68は、ブラケット62の第2の開口70内に配置されている。好適な形式で、第1の滑り軸受64および/または第2の滑り軸受68は、プラスチック、特にポリオキシメチレンまたはポリアミドより成っている。このような形式で構成された滑り軸受64または68は、抗張ロッド58および60に沿った滑り軸受64および68の摩擦および摩耗の少ない軸受若しくはガイドを可能にする。
【0026】
第1の滑り軸受64および第2の滑り軸受68はそれぞれ、スピンドル軸線40に対して直角な平面Eでブラケット62内にばね弾性的に締め付けられている。従って、組み立てられた状態でばね弾性的に締め付けられている滑り軸受64および68は、スピンドル軸線40に対して直角に整列された平面Eで相対的に遊びなしである。従って、スピンドル軸線40に対して直角に整列された平面E内で、第1の滑り軸受64と第1の開口66を包囲するブラケット62の第1の縁部領域との間、または第2の滑り軸受68と第2の開口70を包囲するブラケット62の第2の縁部領域との間にギャップを維持することは省かれている。従って、ブラケット62に関連した(特にスピンドル軸線40に対して直角に整列された平面E内での)第1の滑り軸受64の運動、およびブラケット62に関連した(特にスピンドル軸線40に対して直角に整列された平面E内での)第2の滑り軸受68の運動は、ばね弾性的な締め付けのばね力が克服される場合にだけ発生する。従って、第1の滑り軸受64または第2の滑り軸受68の、ブラケット62に関連したこのような運動によって、第1の滑り軸受64または第2の滑り軸受68がブラケット62に当接することを懸念する必要もない。従って、このような形式の当接騒音またはカチカチ騒音の原因は確実に解消されている。
【0027】
第1の滑り軸受64または第2の滑り軸受68が(特にスピンドル軸線40に対して直角に整列された平面Eで)ブラケット62に当接する懸念はないので、ブラケット62および滑り軸受64および68のために様々な材料を問題なく使用することができる。好適な形式で、ブラケット62は金属より成っている。しかも、ブラケット
62は、第1の開口66が形成されているブラケット62の第1の端部区分、および第2の開口70が形成されているブラケット62の第2の端部区分が、スピンドル軸線40に対して直角に整列された平面Eに位置しているのに対して、ブラケット62の中央区分は平面Eに対して平行にずらされた平面内に構成されるように、直角に曲げて形成されていてよい。
【0028】
図2bおよび
図2cで分かるように、(固定軸受としての)第1の滑り軸受64は、第1の滑り軸受64の(
図2d乃至
図2fに示された)第1のピン受け孔72内およびブラケット62の別のピン受け孔内に押し込まれたピン74によって、第1の開口66内に固定されている。従って、ブラケット62に作用する引張力または圧縮力は、(第2の滑り軸受68に対してマスタ機能を実行する)第1の滑り軸受64によって受け止められ/支持される。これに対して、(浮動軸受としての)第2の滑り軸受68は、第2の開口70内でしゅう動可能に支承されている。従って、第2の滑り軸受68は、第2の開口70内でスピンドル38/そのスピンドル軸線40に対して半径方向にしゅう動可能である。これは、第1の滑り軸受64の固定された支承に対する第2の滑り軸受68の浮動式の支承と書き換えてもよい。従って、スピンドル38は、第1の抗張ロッド58および第2の抗張ロッド60に沿ってしゅう動可能であって、この場合、(第1の滑り軸受64に対してスレーブ機能を実行する)第2の滑り軸受68の浮動式の支承によって、固着は阻止されている。従って、マスタおよびスレーブ装置内に存在する滑り軸受64および68は、第1の抗張ロッド58および第2の抗張ロッド60におけるスピンドル38の摩擦の少ない支承だけではなく、確実な固着防止も実現する。
【0029】
第1の滑り軸受64は、第1の側面で第1の剛性なU字形プロフィール64aを有していて、(好適な形式で第1の側面から離れる方向に向けられた)第2の側面で第1の弾性的なU字形プロフィール64bを有している。第1の弾性的なU字形プロフィール64bは第1のばね弾性的な/ばね減衰されたU字形プロフィール64bと呼ばれてもよい。これは、ブラケット62に関連した第1の滑り軸受64の運動を所望に阻止することも、また第1の滑り軸受64の可能な緩衝も保証する。第2の滑り軸受68も、好適な形式で第1の側面に第2の剛性なU字形プロフィール68aを有していて、第2の側面に第2の弾性的なU字形プロフィール68bを有しており、この場合、第2の弾性的なU字形プロフィール68bは第2のばね弾性的な/ばね減衰されたU字形プロフィール68bと呼ばれてよい。
【0030】
第1の滑り軸受64はブラケット62の第1の開口66内で、(回転方向でずらされたスピンドルナット36によって)第1の滑り軸受64に伝達されたトルクを第1の剛性なU字形プロフィール64aによって支持するように、ばね弾性的に締め付けられている。これは、第1の滑り軸受64に伝達されたトルクが、スピンドルナット36の回転方向に向けられた横方向力F
shearを生ぜしめる、と書き換えてもよい。第1の滑り軸受64に作用する、横方向力F
shearに抗して向けられた妨害力F
disturbは、電気機械式のブレーキ倍力装置の通常運転中では、非常に稀である。これは、第1の滑り軸受64に作用する横方向力F
shearが第1の剛性なU字形プロフィール64aによって支持され、これに対して稀な妨害力F
disturbが第1の弾性的なU字形プロフィール64bの軽い変形だけを生ぜしめるように、第1の滑り軸受64を第1の開口66内で整列させるために利用され得る。相応に、第2の滑り軸受68も、回転方向でずらされたスピンドルナット36によって第2の滑り軸受68に伝達されたトルクが第2の剛性なU字形プロフィール68aによって支持されるように、ブラケット62の第2の開口70内でばね弾性的に締め付けられていてよい。
【0031】
図2d乃至
図2fは、第1/第2の滑り軸受64または68の拡大図を示す。好適な形式で、第1の滑り軸受64の第1の弾性的なU字形プロフィール64bの内側に第1のストッパ64cが形成されており、この第1のストッパ64cは、第1の抗張ロッド58を把持する第1の滑り軸受64の第1の環状領域64dから、中間ギャップ76だけ間隔を保っている。第1のストッパ64cは、過負荷防止手段として用いられる。妨害力F
disturbは、中間ギャップ76を閉鎖できるが(第1のストッパ64cが第1の環状領域64dと接触せしめられることによって)、第1の弾性的なU字形プロフィール64bを塑性変形させることはできない。追加的に、第1の環状領域64dを第1のストッパ64cと接触させても騒音は殆ど発生しない。何故ならば、第1の滑り軸受64のために通常はプラスチックが使用されるからである。過負荷防止手段として、同様に第2の滑り軸受68の第2の弾性的なU字形プロフィール68bの内側に第2のストッパ68cが形成されていてよく、この第2のストッパ68cは、第2の抗張ロッド60を把持する、第2の滑り軸受68の第2の環状領域68dから、別の中間ギャップ76だけ間隔を保っている。
【0032】
図2c乃至
図2eでは、第1の溝64eが第1の滑り軸受64に形成されていることが分かる。ブラケット62の第1の開口66内にばね弾性的に締め付けられた第1の滑り軸受64は、第1の溝64e内に係合する、ブラケット62の第1の縁部領域によって、スピンドル軸線40に対して平行に整列された空間方向で、第1の縁部領域と第1の溝64eの第1の溝内壁との間にギャップ78が形成されるように、第1の開口66で保持されている(
図2c参照)。従って、第1の滑り軸受64は、ブラケット62に対して容易に傾倒可能であり、これは、スピンドル38の、第1の抗張ロッド58に沿った固着することのないガイドを改善する。スピンドル38の固着を避けるために、第2の溝68eも第2の滑り軸受68に形成されていてよく、ブラケット62の第2の開口70内にばね弾性的に締め付けられている第2の滑り軸受68は、第2の溝68e内に係合するブラケット62の第2の縁部領域によって、スピンドル軸線
40に対して平行に整列された空間方向で第2の溝68eの第2の溝内壁と第2の縁部領域との間に別のギャップ78が形成されるように、第2の開口70に保持されていてよい。
【0033】
相互に作用する摩擦力F
frictionは、滑り軸受64および68をそれぞれのギャップ78内で軸方向にしゅう動させることができる。しかしながら、ばね減衰されたU字形プロフィール64bおよび68bの締め付け力に基づいて、軸方向のしゅう動は減衰される。この減衰は、騒音の阻止を生ぜしめる。しかも、発生した摩擦力F
frictionは、発生した横方向力F
shearよりも著しく小さい。(通常は、摩擦力F
frictionは横方向力F
shearの概ね1/10である。)
【0034】
図2dで分かるように、第1の滑り軸受64の第1の変形リブ80は、第1の弾性的なU字形プロフィール64bに位置する、第1の溝64eの第1の溝内壁の第1の領域に形成されている。好適には、第2の滑り軸受68の第2の変形リブ82が、第2の弾性的なU字形プロフィール68bに位置する、第2の溝68eの第2の溝内壁の第2の領域内に形成されていてもよい。ブラケット62および滑り軸受64,68の構成部分公差並びに滑り軸受64および68の締め付け力に基づいて、滑り軸受64および68の組み立て時に、従来形式による組み立て力は比較的高い。しかしながら、高い組み立て力においてその高さを容易に変形させることができる変形リブ80および82によって、滑り軸受64および68を組み立てるために加えようとする組み立て力は低下させることができる。
【0035】
最後に、
図2a乃至
図2fによって概略的に示された電気機械式のブレーキ倍力装置は安価に製造可能であり、かつ比較的わずかな構造スペースしか必要としないことを指摘しておく。
【0036】
さらにまた、このような形式の電気機械式のブレーキ倍力装置を備えた車両のための(液圧式の)ブレーキシステムは前記利点も有していることを指摘しておく。
【0037】
図3は、本発明による電気機械式のブレーキ倍力装置の製造方法の1実施例を説明するためのフローチャートを示す。
【0038】
以下に記載された製造方法によって、例えば前記電気機械式のブレーキ倍力装置が製造され得る。しかしながら、この製造方法の実施可能性は、
図2a乃至
図2fの電気機械式のブレーキ倍力装置に限定されるものではない。
【0039】
方法ステップS1で、スピンドルと噛み合い連動しているスピンドルナットは、スピンドルナットが電気モータの運転によって回転せしめられ、それによってスピンドルがそのスピンドル軸線に沿って並進運動せしめられるように、電気モータに接続されている。
【0040】
方法ステップS2で、第1の滑り軸受は、スピンドルに固定されたブラケットの第1の開口内に配置され、第2の滑り軸受はブラケットの第2の開口内に配置される。第1の滑り軸受および第2の滑り軸受はそれぞれ、一平面内でブラケット内にばね弾性的に締め付けられる。第1の滑り軸受および第2の滑り軸受がブラケット内にばね弾性的に締め付けられる平面は、後で(つまり電気モータ/電気機械式のブレーキ倍力装置の運転中に)スピンドル軸線に対して直角に整列される。
【0041】
方法ステップS3で、第1の抗張ロッドは、第1の滑り軸受が第1の抗張ロッドを把持し第1の抗張ロッドがスピンドルのスピンドル軸線に対して平行に延在するように、電気機械式のブレーキ倍力装置のハウジングに固定される。相応に、方法ステップS4で、第2の抗張ロッドは、第2の滑り軸受が第2の抗張ロッドを把持し、第2の抗張ロッドがスピンドルのスピンドル軸線に対して平行に延在するように、電気機械式のブレーキ倍力装置のハウジングに固定される。
【0042】
ここに記載された、方法ステップS1乃至S4の順番は例として示されているだけであるが、この方法ステップS1乃至S4も上記利点をもたらす。
【符号の説明】
【0043】
10 スピンドル軸線
12 縦軸線
14 第1の滑り軸受
16 第2の滑り軸受
18,20 開口
22 ブラケット
22a 中央区分
22b 第1の端部区分
22c 第2の端部区分
24 溝
30 マスタブレーキシリンダ
32 入力ロッド
34 伝動装置
36 スピンドルナット
38 スピンドル
40 スピンドル軸線
42 入力ピストン
44 インサート
46 リアクションディスク
48 出力ピストン
50 弁体
52 車両スプラッシュボード
54 伝動装置ハウジング底部
56 ハウジング壁
58 第1の抗張ロッド
58a 第1の中心縦軸線
60 第2の抗張ロッド
60a 第2の中心縦軸線
62 ブラケット
64 第1の滑り軸受
64a 第1の剛性なU字形プロフィール
64b 第1の弾性的なU字形プロフィール
64c 第1のストッパ
64d 第1の環状領域
64e 第1の溝
66 第1の開口
68 第2の滑り軸受
68a 第2の剛性なU字形プロフィール
68b 第2の弾性的なU字形プロフィール
68c 第2のストッパ
68d 第2の環状領域
68e 第2の溝
70 第2の開口
72 第1のピン受け孔
74 ピン
76 中間ギャップ
78 ギャップ
80 第1の変形リブ
82 第2の変形リブ
E スピンドル軸線40に対して直角に整列された平面
E1 第1の平面
E2 第2の平面
F1 横方向力
F2 摩擦力
F
disturb 妨害力
F
friction 摩擦力
F
shear 横方向力
S1,S2,S3,S4 方法ステップ