(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照される。図において、同様の符号は、通例、文脈で特に指示が限りは、同様の構成要素を識別する。詳細な説明、図面、および、請求項に記載の実施形態の例は、限定を意図したものではない。本明細書に提示された主題の範囲から逸脱することなしに、他の実施形態が用いられてもよく、その他の変更がなされてもよい。本明細書に概略的に記載され、図に示されている本開示の態様は、幅広い異なる構成で、配置、置換、組みあわせ、分離、および、設計されてよく、それらのすべてが、本明細書内で明確に意図されていることが容易に理解される。
【0024】
I.可変トランスミッションの例
機械式トランスミッションは、変速比によって特徴付けられる入力と出力との間の連結を提供する。変速比は、トランスミッションの入力側での回転数およびトルクと、トランスミッションの出力側での回転数およびトルクとの間の関係性を特徴付ける。トランスミッションは、モータ(またはその他のトルク生成装置)によって提供された回転の速度/トルクを変更するため、アクチュエータまたはロボット要素のインピーダンス全体を制御するため、より効率的な速度/トルクでモータが動作することを可能にすることによって装置の効率を高めるため、もしくは、何らかのその他の利点を提供するために提供されうる。例えば、トランスミッションは、内燃エンジンの高速かつ比較的低トルクの出力を、自動車の車輪を駆動するためのより低速かつ高トルクの出力へ変換するために自動車に設けられる。別の応用例において、高変速比を有するトランスミッションが、非常に高速かつ低トルクのモータがロボットの関節で非常に高いトルクを提供することを可能にするために、ロボットアームに設けられうる。かかる高速かつ低トルクのモータをトランスミッションと組み合わせると、トランスミッションなしで高トルクモータを利用するのに比べて、高い効率、低い総重量、低コスト、または、その他の利点などの利点を提供できる。
【0025】
様々な応用例において、動作中のトランスミッションの変速比を調整することが望ましい場合がある。例えば、変速比は、(例えば、自動車の速度が増す時に)トランスミッションの出力側で提供されるトルクおよび/または回転数の変化に適応するため、効率的な動作レジーム(例えば、電気モータについては、高速、低トルク)内に駆動モータを維持するため、モータ/トランスミッションの組みあわせの実効インピーダンスを適合させるため(例えば、人間がロボットと相互作用する時にさらなる安全性を提供するため)、または、何らかの他の利点を提供するために、制御されうる。トランスミッションの変速比を制御可能にするために、トランスミッションは、クラッチ、線形アクチュエータ、複数の異なるギアトレイン/遊星ギアのセット、もしくは、変速比を変化させるために、電気的、機械的、および/または、油圧で、アクティブまたはパッシブに動作されうるその他の要素、を備えうる。変速比のかかる変更は、複数の異なる離散的な変速比の間でなされうる。あるいは、トランスミッションは、変速比の値の連続的な範囲にわたって変速比の調整を可能にするよう構成された連続可変トランスミッションでありうる。
【0026】
連続可変トランスミッションは、多くの利点を提供できる。例えば、変速比は、不連続可変トランスミッションによって提供される離散的な一連の変速比の内の最も近い値ではなく、可能な変速比の範囲内の任意の値に制御されうる。したがって、連続可変トランスミッションは、幅広い範囲の出力速度/トルクにわたる高効率の速度/トルクに従って駆動モータを動作できるように、変速比を最適比に制御することを可能にする。連続可変トランスミッションは、他の利点も提供しうる。
【0027】
トランスミッションは、変速比の値の範囲にわたって変速比の連続制御を可能にするために様々な方法で構成されてよい。いくつかの実施形態において、これは、トランスミッション内の1または複数のプーリの有効径を制御することによって達成されてよい。プーリの有効径を制御することにより、トランスミッション内の他の要素(例えば、他のプーリ)に対するそのプーリの回転比、ひいては、トランスミッションの変速比が制御されうる。
【0028】
一部の例において、プーリは、2つのハーフプーリを有する分割プーリでありうる。ハーフプーリは、共通の回転軸を有し、各々が、ベルトと接触する向かい合った円錐形(またはその他の形状の)ベアリング面を有する。したがって、ベルト(例えば、v字形の断面を有するベルト)が、分割プーリを駆動する、または、分割プーリによって駆動されることができる。分割プーリの有効径は、ベルトがハーフプーリに接触する半径と関連する。したがって、分割プーリの有効径は、ハーフプーリの間の軸方向距離を変更することによって調整可能である。軸方向距離を増大させることにより、ベルトは、分割プーリの軸の近くでハーフプーリのベアリング面に接触するようになり、結果として、有効径が小さくなる。逆に、軸方向距離は、ベルトが分割プーリの軸から離れてハーフプーリのベアリング面に接触するように減少されることも可能であり、結果として、有効径が大きくなる。ベルトは、(例えば、第1分割プーリに結合された)入力と、(例えば、さらなるプーリに結合された)出力との間でのトルク/回転の伝達を容易にするために、別のプーリ(例えば、別の分割プーリ)と接触することができる。かかるトランスミッションの変速比は、プーリとベルトとの相互作用に関するプーリの有効径の間の比に関連しうる。ベルトの張力は、両方のプーリの有効径を調節することによって、テンショナープーリを有することによって、または、その他の方法によって維持されてよい。
【0029】
分割プーリに関連する態様を、
図1A〜Dに例として示す。
図1Aは、第1期間中の可変トランスミッション100の側面図を示し、
図1Bは、第1期間中のトランスミッションの上面図を示す。トランスミッション100は、2つのハーフプーリを有する第1分割プーリ100aと、2つのハーフプーリを有する第2分割プーリ110bと、分割プーリ110a、110bの両方と接触するv字形ベルト120と、を備える。
図1Bに示すように、第1分割プーリ110aの2つのハーフプーリの間の軸方向距離は、d
1であり、第2分割プーリ110bの2つのハーフプーリの間の軸方向距離は、d
2である。モータ140が、トランスミッション100を駆動するために、第1分割プーリ110aに接続されている。
図1Aに示すように、第1分割プーリ110aおよび第2分割プーリ110bは、同じ有効径を有しているため、第1期間中のトランスミッション110の変速比は、1:1である。
【0030】
この例において、第1分割プーリ110aの有効径は、第1分割プーリ110aのハーフプーリの間の軸方向距離を制御することによって制御されることができ、第2分割プーリ110bの有効径は、第2分割プーリ110bのハーフプーリの間の軸方向距離を制御することによって制御されることができる。これらの有効径の(
図1Aおよび
図1Bに対する)変更の結果が、第2期間中の可変トランスミッション100の側面図を示す
図1C、および、第2期間中の可変トランスミッションの上面図を示す
図1Dに示されている。
図1Dに示すように、第1分割プーリ110aのハーフプーリの間の軸方向距離がd
1からd
3へ減少した結果として、第1分割プーリ110aの有効径が増大しており、第2分割プーリ110bのハーフプーリの間の軸方向距離がd
2からd
4へ減少した結果として、第2分割プーリ110bの有効径が減少している。分割プーリ110aおよび110bの有効径のこれらの変化は、トランスミッション100の変速比を(例えば、
図1Aおよび
図1Bにおける1:1の変速比から
図1Cおよび
図1Dにおける3:1の変速比へ)増大させる。
【0031】
分割プーリ(例えば、110a)のハーフプーリの間の軸方向距離の制御は、様々な機構によって様々な方法でなされてよく、機構の例については後述する。それに応じて、第1分割プーリ110aの有効径および/または第2分割プーリ110bの有効径を制御し、ひいては、トランスミッション100の変速比を制御することができる。第1分割プーリ110aの有効径が変更されると、ベルト120の張力は、アイドラプーリを用いて、および/または、第2分割プーリ110bの有効径を変化させることによって、維持されてよい。これは、様々な方法でなされてよい(例えば、アクチュエータを用いて第2分割プーリ110bのハーフプーリの間の軸方向距離を独立的に制御することによって、一方の軸方向距離の制御が他方の軸方向距離の制御をもたらすように、2つの分割プーリ110a、110bの軸方向距離を結びつけるための機構を利用することによって、バネまたはその他の弾性要素を含むパッシブ機構を用いることによって)。
図1Bに示すように、第2分割プーリ110bのハーフプーリは、第2分割プーリ110bのハーフプーリの間に軸方向の力が作用するように、弾性要素130(例えば、ハーフプーリ上のスラストベアリングとトラスミッション100の機械的グラウンドとの間に結合されたバネ)を介して連結される。第1分割プーリ110aの有効径が変化すると、結果として起こるベルト120の張力の変化が、弾性要素130によって与えられた軸方向の力と相互作用することで、第2分割プーリ110bの有効径に、対応して起きるが逆向きの変化をもたらしうる。
【0032】
可変トランスミッションを形成するための
図1A〜Dに示す分割プーリの構成は、非限定的な実施形態例として意図されたものである。かかるトランスミッションおよび/またはそれに結合された要素の分割プーリ、ベルト、モータ、シフト機構、または、その他の要素は、別の方法で構成されてもよい。一部の例において、分割プーリの一方が他方の中に入った入れ子構造になっていてもよい。すなわち、いくらかの重複がプーリの間に生じる。かかる構成は、様々な利点を提供しうる。例えば、一方の分割プーリを他方の中に入れ子にすることにより、トランスミッションの全体サイズを削減できる。これは、自動車用途およびロボット用途で有用でありえ、ここで、トランスミッションの体積および重量は、自動車用途で用いられる非入れ子の分割プーリ設計と比べて、または、ロボット用途で用いられる固定比の遊星、ハーモニック、または、その他の構成のトランスミッション設計と比べて削減されうる。
【0033】
かかる入れ子状の構成において、外側プーリは、回転しないように固定されてよく(すなわち、外側プーリのハーフプーリが、回転を防止されてよく)、内側プーリは、1または複数の入力の回転によって内側分割プーリが入力の回転軸の周りを回る(例えば、サイクロイド運動および回転を行う)ように、カムを介して、1または複数の入力によって駆動されてよい。次いで、出力部材が、入力部材から内側分割プーリを介して出力部材へ回転および/またはトルクの伝達を可能にするために、内側分割プーリに(例えば、ケージギアまたはその他の方法で内側分割プーリの一方または両方のハーフプーリに)結合されてよい。かかるトランスミッションは、サイズの削減、高い変速比、または、その他の利点など、様々な利点を提供できる。また、かかるトランスミッションは、非入れ子状の分割プーリCVT構成に比べて、分割プーリの2つの部分の軸方向の分離における小さい変化で、トランスミッションの変速比の大きい変化を引き起こすことを可能にし得る。したがって、入れ子状プーリ構成は、変速比のシフト速度を高めることを可能にし得る。かかる高速のシフト速度は、(例えば、人間と接触した時にロボットの肢のインピーダンスを低減することによって)任意の近くの人間に対するロボットの安全性を高めるためにロボットの関節のインピーダンス(ひいてはロボットの肢の有効インピーダンス)を連続的に調整することを可能にすることにより、ロボットの安全性を高めるなど、多くの利点を提供してよい。
【0034】
一部の例において、かかるトランスミッションは、変速比ゼロを有するよう制御可能である(すなわち、入力の回転が出力の回転を引き起こさない)ように、および/または、負の変速比を有するよう制御可能である(すなわち、出力の回転の方向が入力に対して反転可能であるようにトランスミッションの変速比を制御できる)ように構成可能である。かかるトランスミッションは、ゼロを含む変速比の値の範囲にわたって構成可能な変速比を有し、「変速比無限大トランスミッション」と呼ばれてよい。かかるトランスミッションは、クラッチなしにトランスミッション出力の方向の反転を可能にし得るため、逆転ギア機構を提供するために例えば自動車およびロボット用途で用いられる設計(ここで、両方向の高トルクかつ低速の動作を可能にするために、複数のトランスミッション/ギアおよびそれらに付随するクラッチが提供されうる)に比べて、トランスミッションのサイズおよびコストを削減する。
【0035】
かかるトランスミッションの一例を
図2に示す。可変トランスミッション200は、第1ハーフプーリ230aおよび第2ハーフプーリ230bを有する第1分割プーリを備える。トランスミッション200は、さらに、第3ハーフプーリ220aおよび第4ハーフプーリ220bを有する第2分割プーリを備える。第1および第2分割プーリは、ベルト240を介して連結される。第1分割プーリは、外側分割プーリ内に入れ子状に含まれている。これは、第2分割プーリの外周内に配置された第1分割プーリの回転軸を含む。入力部材210が、カム235およびカムベアリング237を介して第1分割プーリに結合されている。入力210および第1分割プーリは、それぞれの異なるオフセットされた回転軸を有する。入力210の回転は、入力210の回転軸の周りでの第1分割プーリの回転軸の移動、ハーフプーリ230a、230bの回転、および、ベルト240を介した第1分割プーリから第2分割プーリへのトルクの伝達を引き起こす。したがって、入力210の回転は、第1分割プーリの特定の部分(例えば、第1ハーフプーリ230a上の特定の点)のサイクロイド運動を引き起こし得る。
【0036】
トランスミッション200は、さらに、出力部材250を備える。トランスミッション200は、回転しないように第2分割プーリのハーフプーリ220a、220bを機械的に固定すると共に、第1分割プーリの回転が出力部材250の回転を引き起こすように第1分割プーリのハーフプーリ230a、230bの少なくとも一方に出力部材250を結合することにより、制御可能な変速比に従って入力部材210から出力部材250へ回転および/またはトルクを伝達するよう構成されてよい。これは、第1分割プーリのハーフプーリ220a、220bの対応する要素(例えば、複数の形成された穴)と結合するよう構成されたケージギアとして出力部材250を構成することを含みうる。
【0037】
本明細書に記載のトランスミッションは、そこから力が出力へ伝達される入力を備えるものとして特徴付けられているが、これらのトランスミッションは、追加的または代替的に、バックドライブ可能であるよう構成されてもよいし、双方向エネルギ伝達および/または出力から入力へのエネルギ伝達を可能にするよう他の方法で構成されてもよいことに注意されたい。例えば、本明細書に記載のトランスミッションは、ロボットの関節の間でエネルギを双方向に伝達するために、例えば、1つの関節(例えば、エネルギを、例えば接地との接触から現在受けている関節)からエネルギを取り込んで、別の関節(例えば、ペイロードに力を加えるために現在利用されている関節)に印加するかまたはその逆を可能にすることによってロボットの全体効率を高めるために、利用できる。さらに、かかる構成は、(例えば、ロボットの1または複数の関節の)複数の自由度を単一のモータによって(例えば、それぞれの入れ子状プーリ変速比無限大トランスミッションを介して)駆動することを可能にし得る。
【0038】
II. 差動シフト機構の例
分割プーリ可変トランスミッションの変速比は、トランスミッションの分割プーリの内の1つ(または複数)のハーフプーリの間の軸方向距離を制御することによって制御されてよい。それに従って、トランスミッションのベルトが、異なる位置でベアリング面(例えば、円錐形分割プーリのハーフプーリの円錐形ベアリング面)と接触し、その結果として、分割プーリの有効径の変化およびトランスミッションの変速比の変化を引き起こす。
【0039】
様々な機構が、ハーフプーリの間の軸方向距離のかかる制御を行うために適用されてよい。一部の例において、分割プーリは、2つの(または3つ以上の)入力によって駆動されてもよく、トランスミッションの出力を駆動するための力の印加と、トランスミッションの変速比のシフトを行うために印加される力との間で2つの入力からのトルクを分配するために、差動装置が提供されてよい。例えば、かかる差動装置は、2つの入力の間のトルクの差が、差動装置を介して分割プーリの第1および第2ハーフプーリの間に軸方向の力を印加させるように構成されてよい。それに応じて、第1および第2ハーフプーリの間の軸方向距離が、増大または減少することで、分割プーリの有効径の変化を可能にしうる。軸方向距離のかかる変化の制御を容易にすることにより、差動装置は、分割プーリを備えたトランスミッションの変速比の制御を可能にする。差動装置は、さらに、正味トルクが(例えば、ベルト、さらなる分割プーリ、および/または、その他の要素を介して)トランスミッションの出力に印加されるように、入力から分割プーリへ正味トルクを印加できる。
【0040】
かかる差動機構は、様々な利点を提供しうる。例えば、トランスミッションの出力の駆動およびトランスミッションの変速比の変更の両方に2つの高出力駆動モータを利用することを可能にし得る。変速比のシフトが起こりうる速度は、シフトを行うために印加される力に関連するので、2つの大型高出力モータを利用すれば、非常に高速なシフティングが可能になりうる。さらに、それらのモータが、変速比をシフトするために「差動的に」動作されていない時、2つのモータの全出力が、出力を駆動するために用いられてよい。したがって、差動構成は、シフト動作のみのために分割当てられる大型高出力モータ(ならびに、それに伴うサイズ、重量、および、コスト)を必要とせずに、高速、制御可能、かつ、強力なシフト動作を可能にする。さらに、本明細書に記載の差動シフト装置の実施形態は、バックドライブ可能であるよう構成されてもよいし、出力から受けたエネルギ(例えば、トルク)が変速比のシフトをもたらし、トランスミッションの効率をさらに高めることに役立つことを可能にするよう構成されてもよい。
【0041】
図3〜
図6は、差動シフト装置が2つの入力を受ける実施形態を示しており、2つの入力は、差動/分割プーリから反対方向に伸びていてもよいし、一方の入力が他方の入力の中に少なくとも部分的に配置された(例えば、一方の入力シャフトが他方の中空になった中心部の中に配置された)状態で、同軸かつ同心であってもよい。別の実施形態において、入力は、かかる方法で入れ子状にされる必要はない。これらの変速比シフト機構は、入れ子状プーリ差動装置(例えば、
図2の入れ子状プーリ差動装置)の「内側」または「外側」分割プーリもしくは他の方法で構成された可変トランスミッション(例えば、
図1A〜
図1Dの可変トランスミッション)の分割プーリについて軸方向分離の変化をもたらすために利用されてよい。これらの図示した実施形態は、非限定的な例として意図されたものであり;入れ子状入力を記載する任意の実施形態が、適切な変形により、差動装置から反対方向に伸びる入力を受けてもよいし、または、受けなくてもよい。
【0042】
さらに、本明細書に記載のトランスミッションまたはその要素(例えば、差動装置)は、何らかの用途を容易にするために、追加的または代替的な要素を備えてもよい。例えば、トランスミッションは、例えば、異なる軸に関する回転を提供するため、ギア減速を提供するため、または、何らかの他の機械的効果を提供するために、さらなるギアを備えてもよい。これらの変形例は、例えば、差動トルクと、印加された変速比シフト力との間の関係性を制御するため、2つの入力の各々から変速比シフトおよび/または出力駆動へエネルギを非対称に分配するため、一方または両方の入力へのシフトおよび/または出力駆動における機械的利益を制御するため、回転運動を線形運動に変換するため(例えば、円錐形分割プーリのハーフプーリの間に軸方向の力を加えるため)、もしくは、用途に従って何らかの他の利点を提供するために提供されてよい。
【0043】
A.平ギア差動シフト装置
一部の例において、平ギア差動装置が、本明細書に記載したような差動シフト装置を実施するために提供されてよい。その場合、平ギア差動装置のピニオンギアが、(差動装置への入力の差動回転の結果としての)平ギアの回転を分割プーリのハーフプーリの間の軸方向の力/運動に結びつけるために、ネジまたはその他の機械的要素に結合されてよい。一部の例において、ハーフプーリは、互いに螺入されることが可能であり、ピニオンギアの回転が、2つのハーフプーリの間の相対回転に結びつけられることで、ハーフプーリをつなぐネジを介してハーフプーリ間の軸方向距離の変化が引き起こされうる。
【0044】
図3は、2つの入力部材310a、310bと、2つのハーフプーリ330a、330bとに連結された平ギア差動装置350を備えた分割プーリの一例300(例えば、可変トランスミッションの分割プーリ)を示しており、ここで、第1入力部材310aと第2入力部材310bとの間のトルク差が、差動装置350を介して第1ハーフプーリ330aと第2ハーフプーリ330bとの間に軸方向の力を印加させることで、第1ハーフプーリ330aと第2ハーフプーリ330bとの間の軸方向距離(「d」)の増減を可能にするようになっている。第1入力部材310aおよび第2入力部材310bは、同軸かつ同心であり、第1入力部材310aは、部分的に第2入力部材310bの中に配置される。
【0045】
差動装置350は、第1入力ギア351aおよび第2入力ギア351bを備える。第1入力ギア351aおよび第2入力ギア351bは、入力部材の回転がそれぞれの入力ギアの回転を引き起こすように、第1入力部材310aおよび第2入力部材310bに結合されている。差動装置350は、さらに、第1入力ギア351aと係合するピニオンギアの第1セット(第1ピニオンギア353aを含む)と、第2入力ギア351bと係合するピニオンギアの第2セット(第2ピニオンギア353bを含む)と、を備える。ピニオンギアの第1セットの各ピニオンギアは、第1入力部材310aと第2入力部材310bとの間の回転の差が、差動装置350のハウジングに対するピニオンギア353a、353bの回転を引き起こすように、ピニオンギアの第2セットのそれぞれのピニオンギアと係合する(図示せず)。
【0046】
ピニオンギア353a、353bの回転は、様々な方法で、ハーフプーリ330a、330bの間の軸方向の力/運動に結びつけられてよい。図に示すように、各ピニオンギア(例えば、353a)が、2つのネジ(例えば、ネジ355a、355b)に結合されている。次に、ネジ355a、355bは、ピニオンギア353a、353bの回転が、ネジ355a、355bの回転を引き起こすことで、ハーフプーリ330a、330bの間の軸方向距離(「d」)の変更を可能にするように、それぞれのネジ穴339a、339bを介して(さらに、それぞれのカム335a、335bおよびカムベアリング337a、337bを介して)ハーフプーリ330a、330bに連結されている。
【0047】
第1入力部材310aおよび第2入力部材310bによって提供された正味トルクが、例えば、可変トランスミッションのベルトを駆動するため、したがって、可変トランスミッションの出力を駆動するために、ハーフプーリ330a、330bに印加されてよい。かかる正味トルクは、差動装置350のハウジングを介して、ネジを介して、もしくは、分割プーリ300の1または複数の他の要素を介して、入力からハーフプーリへ結びつけられてよい。
【0048】
図3に示す実施形態は、非限定的な例としてのみ意図されたものであることに注意されたい。別の実施形態も想定される。例えば、差動装置350は、ハーフプーリの一方(例えば、330b)へ軸方向に剛結合されてもよく、ネジをそれぞれのネジ穴を介して反対側のハーフプーリ(例えば、330a)へ伸ばしてよい。ハーフプーリの例330a、330bは、入力部材310a、310bの正味の回転に応じたハーフプーリ330a、330bのサイクロイド運動を容易にするように、それぞれのカム335a、335bおよびカムベアリング337a、337bを介して入力310a、310bに連結されている。ただし、ハーフプーリ330a、330bは、(例えば、ベアリング337a、337bを省略して、ハーフプーリ330a、330bをカムに剛結合することによって)入力部材310a、310bによって直接的に駆動されてもよい、および/または、ハーフプーリ330a、330bは、ハーフプーリ330a、330bと共通の軸に関して回転する入力部材によって駆動されてもよい。
【0049】
B.ベベルギア差動シフト装置
一部の例において、ベベルギアまたはクラウンギア差動装置が、本明細書に記載したような差動シフト装置を実施するために提供されてよい。その場合、ベベルギア差動装置のベベルギアが、(差動装置への入力の差動回転の結果としての)ベベルギアの回転を分割プーリのハーフプーリの間の軸方向の力/運動に結びつけるために、歯付きピン、線状ギアまたはラック、ネジ、もしくは、その他の機械的要素に結合されてよい。一部の例において、ハーフプーリは、互いに螺入されることが可能であり、ベベルギアの回転が、2つのハーフプーリの間の相対回転に(例えば、さらなるベベルギアを介して)結びつけられることで、ハーフプーリをつなぐネジを介してハーフプーリ間の軸方向距離の変化が引き起こされうる。
【0050】
図4は、2つの入力部材410a、410bと、2つのハーフプーリ430a、430bとに連結されたベベルギア差動装置450を備えた分割プーリの一例400(例えば、可変トランスミッションの分割プーリ)を示しており、ここで、第1入力部材410aと第2入力部材410bとの間のトルク差が、差動装置450を介して第1ハーフプーリ430aと第2ハーフプーリ430bとの間に軸方向の力を印加させることで、第1ハーフプーリ430aと第2ハーフプーリ430bとの間の軸方向距離(「d」)の増減を可能にするようになっている。第1入力部材410aおよび第2入力部材410bは、同軸かつ同心であり、第1入力部材410aは、部分的に第2入力部材410bの中に配置される。
【0051】
差動装置450は、第1入力ギア451aおよび第2入力ギア451b(例えば、クラウンギア)を備える。第1入力ギア451aおよび第2入力ギア451bは、入力部材の回転がそれぞれの入力ギアの回転を引き起こすように、第1入力部材410aおよび第2入力部材410bに結合されている。差動装置450は、さらに、第1入力部材410aと第2入力部材410bとの間の回転の差が、差動装置450のハウジングに対するベベルギア453を引き起こすように、1セットの歯455aを介して第1入力ギア451aおよび第2入力ギア451bと係合する第1ベベル453を備える。
【0052】
ベベルギア453の回転は、様々な方法で、ハーフプーリ430a、430bの間の軸方向の力/運動に結びつけられてよい。図に示すように、ベベルギア453は、ピニオン455bへ軸方向に融合
、すなわち、結合されている。ピニオン455bは、ラック457の歯459と係合する。ラック457は、カムベアリング437bを介して、入力410a、410bおよび/または差動装置450から第2ハーフプーリ430bへ、力/トルクを伝えるカム435bに形成された対応する穴439の中に部分的に配置される。ラック457は、ベベルギア453およびピニオン455bの回転が、ラック457へ軸方向の力を掛けることにより、ハーフプーリ430a、430bの間の軸方向距離(「d」)の変更を可能にするように、第1ハーフプーリ430aに(カム435aおよびカムベアリング437aを介して)連結される。
【0053】
第1入力部材410aおよび第2入力部材410bによって提供された正味トルクが、例えば、可変トランスミッションのベルトを駆動するため、したがって、可変トランスミッションの出力を駆動するために、ハーフプーリ430a、430bに印加されてよい。かかる正味トルクは、差動装置450のハウジングを介して、ピニオン455bによってラック457に掛けられる力を介して、または、分割プーリ400の1または複数の他の要素を介して、入力からハーフプーリへ結びつけられてよい。
【0054】
図4に示す実施形態は、非限定的な例としてのみ意図されたものであることに注意されたい。別の実施形態も想定される。例えば、差動装置450は、ハーフプーリのどちらとも軸方向に剛結合されなくてもよく、第2ハーフプーリ430bに結合されたさらなるラックと係合することで、ベベルギアまたは差動装置450のその他の要素に関して対称なハーフプーリ430a、430bの軸方向の動きを可能にしてもよい。差動装置450は、さらなるベベルギア(例えば、1、2、または、3つのさらなるベベルギア)と、ハーフプーリ430a、430bの一方または他方と結合された対応するさらなるラックと、を備えてもよい。ハーフプーリの例430a、430bは、入力部材410a、410bの正味の回転に応じたハーフプーリ430a、430bのサイクロイド運動を容易にするように、それぞれのカム435a、435bおよびカムベアリング437a、437bを介して入力410a、410bに連結されている。ただし、ハーフプーリ430a、430bは、(例えば、ベアリング437a、437bを省略して、ハーフプーリ430a、430bをカムに剛結合することによって)入力部材410a、410bによって直接的に駆動されてもよい、および/または、ハーフプーリ430a、430bは、ハーフプーリ430a、430bと共通の軸に関して回転する入力部材によって駆動されてもよい。
【0055】
C.リングギア差動シフト装置
一部の例において、遊星差動装置が、本明細書に記載したような差動シフト装置を実施するために提供されてよい。その場合、遊星差動装置の遊星ギアが、(差動装置への入力の差動回転の結果としての)遊星ギアの回転を分割プーリのハーフプーリの間の軸方向の力/運動に結びつけるために、ネジ、歯付きピン、線状ギアまたはラック、もしくは、その他の機械的要素に結合されてよい。一部の例において、ハーフプーリは、互いに螺入されることが可能であり、遊星ギアの回転が、2つのハーフプーリの間の相対回転に結びつけられることで、ハーフプーリをつなぐネジを介してハーフプーリ間の軸方向距離の変化が引き起こされうる。
【0056】
図5Aは、2つの入力部材510a、510bと、2つのハーフプーリ530a、530bとに連結された遊星差動装置550を備えた分割プーリの一例500(例えば、可変トランスミッションの分割プーリ)を示す断面図であり、ここで、第1入力部材510aと第2入力部材510bとの間のトルク差が、差動装置550を介して第1ハーフプーリ530aと第2ハーフプーリ530bとの間に軸方向の力を印加させることで、第1ハーフプーリ530aと第2ハーフプーリ530bとの間の軸方向距離(「d」)の増減を可能にするようになっている。第1入力部材510aおよび第2入力部材510bは、同軸かつ同心であり、第1入力部材510aは、部分的に第2入力部材510bの中に配置される。
図5Bは、差動装置550の別の断面図を示しており、
図5Bの断面図は、
図5Aに提供した断面図と垂直である。
【0057】
差動装置550は、サンギア551aおよびリングギア551bを備える。サンギア551aおよびリングギア551bは、入力部材の回転が、サンギアおよびリングギアのそれぞれの回転を引き起こすように、それぞれ第1入力部材510aおよび第2入力部材510bに結合されている。差動装置550は、第1入力部材510aと第2入力部材510bとの間の回転の差が、差動装置550の遊星キャリア(図示せず)に対する遊星ギア553a、553b、553c、553dの回転を引き起こすように、サンギア551aおよびリングギア551bと係合する遊星ギア553a、553b、553c、553dをさらに備える。
【0058】
遊星ギア553a、553b、553c、553dの内の1または複数のギアの回転が、様々な方法で、ハーフプーリ530a、530bの間の軸方向の力/運動に結びつけられてよい。図に示すように、遊星ギア553a、553bは、それぞれのネジ555a、555bに結合されている。次に、ネジ555a、555bは、遊星ギア553a、553b、553c、553dの回転が、ネジ5551、555bの回転を引き起こすことで、ハーフプーリ530a、530bの間の軸方向距離の変更が可能にするように、それぞれのネジ穴539a、539bを介して第1ハーフプーリ530aに連結されている。
【0059】
第1入力部材510aおよび第2入力部材510bによって提供された正味トルクが、例えば、可変トランスミッションのベルトを駆動するため、したがって、可変トランスミッションの出力を駆動するために、ハーフプーリ530a、530bに印加されてよい。かかる正味トルクは、差動装置550のハウジングを介して、ネジ555a、555bによってハーフプーリに掛けられる力を介して、または、分割プーリ500の1または複数の他の要素を介して、入力からハーフプーリへ結びつけられてよい。
【0060】
図5に示す実施形態は、非限定的な例としてのみ意図されたものであることに注意されたい。別の実施形態も想定される。例えば、差動装置550は、ハーフプーリ530a、530bの間に配置されてもよく、さらなるネジを、遊星ギアからそれぞれのネジ穴を通して伸ばして、第2ハーフプーリ530aのねじ切り部分と係合させてもよい。これは、差動装置550の遊星ギアまたはその他の要素に関して対称なハーフプーリ530a、530bの軸方向の動きを可能にする。差動トルクと、印加された変速比シフト力との間の関係性を制御するため2つの入力の各々から変速比シフトおよび/または出力駆動へエネルギを非対称に分配するため、一方または両方の入力へのシフトおよび/または出力駆動における機械的利益を制御するため、もしくは、用途に従って何らかの他の利点を提供するために、サンギア、リングギア、および/または、遊星ギアの直径および/または歯の数を指定することができる。例のハーフプーリ530a、530bは、回転するように入力510a、510bの正味の回転に剛結合されているが;ハーフプーリ530a、530bは、入力部材510a、510bの正味の回転に応じたハーフプーリ530a、530bのサイクロイド運動を容易にするように、それぞれのカムおよびカムベアリングを介して入力510a、510bに連結されてもよい。
【0061】
D.ねじ切りカム差動シフト装置
一部の例において、複数の逆向きのねじ切り部分(例えば、ナット、テーパ状の穴、ボールネジのネジ山)を備えた差動装置が提供されてもよい。次いで、ねじ切り部分は、差動装置の入力に結合された対応するネジと係合しうる。したがって、入力の差動回転が、カムと接触するハーフプーリに軸方向の運動/力を印加させることができる(一方のネジが、それに対応するねじ切り部分に螺入すると、他方のネジは、それに対応するねじ切り部分から螺脱する)。入力の共通の回転は、カムおよび/または分割プーリの回転ならびに/もしくはカムおよび/または分割プーリへのトルクの印加を引き起こす。ねじ切り部分は、互いに剛結合されてよい(例えば、カムに形成された単一の穴の中へ反対方向からねじ切りされる)。あるいは、ねじ切り部分は、カムのそれぞれのサブ部分(例えば、「サブカム」)に形成されてもよく、その場合、ねじ切り部分の間の相対的運動が可能になる。かかるサブ部分は、サブ部分の間の相対的な軸方向の運動を許容するがサブ部分の間の相対的な回転を防ぐように、ピンまたはその他の方法で連結されうる。かかるカム、ネジ、ねじ切り部分、および、関連要素は、(カムの軸方向の運動を介して)トランスミッションの変速比のシフトへ入力の間の差動トルクを印加すると共にトランスミッションの出力トルクへ正味トルクを印加する差動装置を構成しうる。
【0062】
図6は、第1ねじ切り部分653aおよび第2ねじ切り部分653b(例えば、それぞれのボールネジのネジ山)を有するカム655を備えた分割プーリの一例600(例えば、可変トランスミッションの分割プーリ)を示す。ねじ切り部分653a、653bは、逆向きのねじ山を有する。トランスミッション600は、さらに、第1ハーフプーリ630aおよび第2ハーフプーリ630bを備える。第2ハーフプーリ730bは、第1ハーフプーリ630aのそれぞれの穴641の中に伸びるピン640を備える。ピン640は、ハーフプーリ630a、630bが互いに対して軸方向に平行移動することを許容するが、ハーフプーリ630a、630bの間の相対的な回転を防止する(したがって、入力部材610a、610bから第2ハーフプーリ630bへトルクを伝達するために利用されうる)。第1ハーフプーリ630aは、カム655に剛結合されている。2つの入力部材610a、610bは、第1入力部材610aと第2入力部材610bとの間のトルク差により、軸方向の力が、カム655を介して第1ハーフプーリ630aと第2ハーフプーリ630bとの間に印加されるように、カム655のそれぞれのねじ切り部分653a、653bと係合するそれぞれのネジ651a、651bに結合されている。第1ネジ651aおよび第2ネジ651bが、ハーフプーリ610a、610bの間の軸方向の力の生成を引き起こすように、互いに対して軸方向の力を掛けることを可能にするために、スラストベアリング660が提供される。したがって、かかる軸方向の力は、第1ハーフプーリ630aと第2ハーフプーリ630bとの間の軸方向距離(「d」)の増減を可能にしうる。第1入力部材610aおよび第2入力部材610bは、ハーフプーリ630a、630bから外側に向かって反対方向に伸びる。
【0063】
第1入力部材610aおよび第2入力部材610bによって提供された正味トルクが、例えば、可変トランスミッションのベルトを駆動するため、したがって、可変トランスミッションの出力を駆動するために、ハーフプーリ630a、630bに印加されてよい。かかる正味トルクは、カム655を介して、ピン640を介して、および/または、分割プーリ600の1または複数の他の要素を介して、入力からハーフプーリへ結びつけられてよい。
【0064】
図6に示すカム655、ネジ651a、651b、および、ハーフプーリ630a、630bは、かかる二重にねじ切りされたカムを用いて、円錐形(または他の構成の)分割プーリの第1および第2ハーフプーリの間の軸方向距離の制御を行う機構の非制限的な例として意図される。別の例において、カムは、逆向きのネジ山を持ったそれぞれの第1および第2ねじ切り部分を有する第1および第2サブカムとして提供されてもよい。サブカムは、サブ部分の間(およびハーフプーリの間)の相対的な軸方向の運動を許容しつつも、サブ部分の間の相対的な回転を防ぐように、それぞれのハーフプーリ630a、630bに剛結合され、ピンまたはその他の方法で互いに連結されてよい。
【0065】
図6に示す実施形態は、非限定的な例としてのみ意図されたものであることに注意されたい。別の実施形態も想定される。例のハーフプーリ630a、630bは、回転するようにカム655に(ひいては、入力610a、610bの正味の回転に)剛結合されているが、ハーフプーリ630a、630bは、入力部材610a、610bの正味の回転に応じたハーフプーリ630a、630bのサイクロイド運動を容易にするように、それぞれのさらなるカムおよび/またはカムベアリングを介して入力610a、610bおよび/またはカム655に連結されてもよい。追加的あるいは代替的に、ハーフプーリ630a、630bは、ハーフプーリ630a、630bと共通の軸に関して回転する入力部材によって駆動されてもよい。差動トルクと、印加された変速比シフト力との間の関係性を制御するため2つの入力の各々から変速比シフトおよび/または出力駆動へエネルギを非対称に分配するため、一方または両方の入力へのシフトおよび/または出力駆動における機械的利益を制御するため、もしくは、用途に従って何らかの他の利点を提供するために、ネジ651a、651bのピッチ、リード、条数、および/または、その他の特徴を指定することができる。
【0066】
III.さらなるシフト機構
図3〜
図6に図示して上述したシフト機構の例は、2つの入力の間のトルクの差から、円錐形(または他の構成の)分割プーリの対向するハーフプーリの間に軸方向のシフト力を提供するために、差動装置として構成された要素を組み込んでいる。ただし、分割プーリ可変トランスミッションの高速かつ制御可能な変速比シフトを可能にするために、その他の非差動機構も想定される。例えば、第1入力を介して印加されたトルクが分割プーリを介して(例えば、vベルトで)トランスミッションの出力に印加されるように分割プーリに結合された第1入力が提供されてもよい。また、第2入力が提供され、それを介して、トルクがトランスミッションのシフトを引き起こすように加えられる。かかる例において、変速比のシフトは、2つの入力の間の相対回転に関連し、実質的に、2つの入力の間のトルクの差には実質的に全く関連しえない。かかる例において、第2入力は、変速比を特定の値に維持するために、実質的にトルクが印加されない状態で、第1入力と同じ速度で回転してもよい。かかる例において、第2入力は、第1入力の速度と一致するようにアクティブに駆動されてよい。あるいは、第2入力は、変速比を特定の値に維持するために、第2入力を駆動するために用いられるどんなモータからも切り離されてよい。さらに別の実施形態において、第2入力720は、駆動モータがクラッチを介して第2入力720に結合された時に変速比のシフトをもたらすよう動作しうるように、クラッチを介して駆動モータに(例えば、第1入力710を駆動するために用いられる駆動モータに)結合されてよい。
【0067】
図7は、かかるトランスミッションの分割プーリ700の一例を示す断面図である。分割プーリ700は、2つのハーフプーリ730a、730bと、2つの入力部材710a、710bと、を備える。第1入力部材710aは、第1入力部材710aに印加されたトルクが第1ハーフプーリ730aおよび第2ハーフプーリ730bに伝達されるように、ハーフプーリ710a、710bの少なくとも一方と結合される。第1ハーフプーリ730aは、第2ハーフプーリ730bのそれぞれの穴741の中に伸びるピン740を備える。ピン740は、ハーフプーリ730a、730bが互いに対して軸方向に平行移動することを許容するが、ハーフプーリ730a、730bの間の相対的な回転を防止する(したがって、第1入力部材710から第2ハーフプーリ730bへトルクを伝達するために利用されうる)。
【0068】
第2入力部材720が、ネジ755に結合されている。第1入力部材710aおよび第2入力部材710bは、同軸かつ同心であり、第1入力部材710aは、部分的に第2入力部材710bの中に配置される。したがって、第1入力部材710と第2入力部材720との間の差動回転が、ネジ755の回転を引き起こしうる。ネジ755は、第1入力部材710と第2入力部材720との間の差動回転が、ネジ755を介して第1ハーフプーリ730aと第2ハーフプーリ730bとの間に印加される軸方向の力を引き起こし、したがって、第1ハーフプーリ730aと第2ハーフプーリ730bとの間の軸方向距離(「d」)の増減を可能にするように、第2ハーフプーリ730bのねじ切り部分739と係合する。
【0069】
図7に示す実施形態は、非限定的な例としてのみ意図されたものであることに注意されたい。別の実施形態も想定される。例えば、第1入力部材710と第2入力部材720との間の差動回転をハーフプーリ730a、730bの間の軸運動に変換するために、別の機構(例えば、ラック、線形ギア、ハーフプーリの間のネジカップリング)が用いられてもよい。複数のネジが備えられてもよく、各ネジは、第2入力720の回転をハーフプーリの間の軸方向の力/運動に変換するように(例えば、1または複数のギアを介して)第2入力によって駆動される。例のハーフプーリ730a、730bは、回転するように第1入力部材710の回転に剛結合されているが;ハーフプーリ730a、730bは、第1入力部材710の回転に応じたハーフプーリ730a、730bのサイクロイド運動を容易にするように、それぞれのカムおよびカムベアリングを介して第1入力710に連結されてもよい。
【0070】
IV. 結論
図に示す特定の配置は、限定と見なすべきではない。別の実施形態が、所与の図に示す各要素を多くまたは少なく備えてもよいことを理解されたい。さらに、図示する要素の一部は、組み合わせられてもよいし、省略されてもよい。さらにまた、一実施例が、図示されていない要素を備えてもよい。
【0071】
さらに、様々な態様および実施形態を本明細書で開示したが、別の態様および実施形態が当業者にとっては明らかである。本明細書に開示した様々な態様および実施形態は、例示を目的としたものであり、限定の意図はなく、真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。本明細書に提示された主題の精神または範囲から逸脱することなしに、他の実施形態が用いられてもよく、その他の変更がなされてもよい。本明細書に概略的に記載され、図に示されている本開示の態様は、幅広い異なる構成で、配置、置換、組みあわせ、分離、および、設計されてよく、それらのすべてが、本明細書内で想定されていることが容易に理解される。
【0072】
特に、本明細書の実施形態は、分割プーリ(もしくは、1または複数のその他の駆動される要素)から反対方向へ外向きに伸びる入力によって駆動されてもよいし、同じ方向に伸びる入力(例えば、同軸であり、互いの中に入れ子状になった入力)によって駆動されてもよいことに注意されたい。さらに、分割プーリのハーフプーリの間の軸方向の分離の制御を提供する本明細書に記載の実施形態は、分割プーリの回転軸および/または幾何軸と同軸な入力(例えば、ハーフプーリの円錐形ベアリング面の回転軸と同軸な入力)を受け入れる。あるいは、かかる実施形態は、分割プーリの回転軸および/または幾何軸と同軸ではない入力を受け入れてもよい(例えば、入れ子状トランスミッション構成に従って分割プーリを駆動することを可能にするため、または、何らかの他の応用例を容易にするために、入力が、1または複数のカムを介して分割プーリを駆動してよい)。