(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872635
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】複雑なリカレント低速マヌーバを実行する自動車自律運転
(51)【国際特許分類】
B60W 40/00 20060101AFI20210510BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
B60W40/00
G08G1/16 C
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-553488(P2019-553488)
(86)(22)【出願日】2019年3月6日
(65)【公表番号】特表2020-518501(P2020-518501A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(86)【国際出願番号】IB2019051809
(87)【国際公開番号】WO2019171292
(87)【国際公開日】20190912
【審査請求日】2019年11月5日
(31)【優先権主張番号】102018000003312
(32)【優先日】2018年3月6日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】598031246
【氏名又は名称】チ・エレ・エッフェ・ソシエタ・コンソルティーレ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】C.R.F. Societa Consortile per Azioni
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マレンコ,シルヴァーノ
(72)【発明者】
【氏名】マンゴシオ,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ファッサネッティ,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】サロルディ,アンドレア
【審査官】
平井 功
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−25993(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2018/0043935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−60/00
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進システム、制動システム、操舵システム及び感覚システムを含む自動車搭載システム(3)並びに自動車ユーザインタフェース(4)に、自動車搭載通信ネットワーク(6)によって接続可能に構成され、自動車搭載システム(3)と協力して自律運転システム(1)を提供するように設計された自動車電子制御ユニット(5)であって、
前記自動車電子制御ユニット(5)は、更に、リカレント低速マヌーバのデータベースを記憶し、前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶されたリカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返すように構成され、
前記自動車電子制御ユニット(5)が、更に、
自動車(2)のカレント低速マヌーバの記述データを決定して記憶し、
前記カレント低速マヌーバの記述データ又は所定の弁別基準に基づいて、前記カレント低速マヌーバが単純な低速マヌーバか複雑な低速マヌーバかを決定し(10)、
前記カレント低速マヌーバが、複雑な低速マヌーバであると決定された場合に、前記複雑な低速マヌーバもリカレント低速マヌーバであるかどうかを決定し(20)、
前記複雑な低速マヌーバが、リカレント低速マヌーバでないと決定された場合に、前記複雑な低速マヌーバを複雑な低速マヌーバのデータベースにマヌーバリカレント指標と関連して記憶し(30)、
その代わりに、前記複雑な低速マヌーバが、リカレント低速マヌーバであると決定された場合に、前記複雑な低速マヌーバと関連して記憶された前記マヌーバリカレント指標を更新し(40)、
前記複雑な低速マヌーバと関連して記憶された前記マヌーバリカレント指標が、所定の基準を満たすかどうかを確認し(50)、
前記複雑な低速マヌーバと関連して記憶された前記マヌーバリカレント指標が、前述の所定の基準を満たすと決定された場合に、前記複雑な低速マヌーバが、前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶されているかどうかを確認し(60)、
前記複雑な低速マヌーバが、前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶されていないことが決定された場合に、前記自動車ユーザインタフェース(4)によって、前記自動車の運転者を促して、前記複雑な低速マヌーバを前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶させ(70)、
前記複雑な低速マヌーバを前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶する促しが、前記自動車ユーザインタフェース(4)によって前記運転者によって受け入れられると決定された場合に、マヌーバ繰り返し指標と関連して、前記複雑な低速マヌーバを前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶する(100)ことによって、前記リカレント低速マヌーバのデータベースをポピュレートするように構成され、
前記自動車電子制御ユニット(5)が、更に、前記リカレント低速マヌーバを前記リカレント低速マヌーバのデータベースに、前記リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な環境の記述データの形で記憶するように構成され、前記記述データが、前記リカレント低速マヌーバの始点及び終点と、リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返される環境における空間的制約、障害物及び関連寸法とを表す地理位置情報データを含み、
前記自動車電子制御ユニット(5)が、更に、
前記自動車(2)が始点から終点まで移動する最適経路、及び前記自動車(2)の関連付けられた縦方向及び横方向ダイナミクスを、関連付けられた記憶した地理位置情報データ及び前記感覚システムから受け取ったデータに基づいて計算し、それにより、前記リカレント低速マヌーバが、自律運転モードで繰り返し可能であり、前記リカレント低速マヌーバが記憶されたときに識別された環境における空間的制約、障害物及び/又は関連寸法と、前記リカレント低速マヌーバが記憶された後で自律運転モードで繰り返し可能な環境で現れ、前記感覚システムから受け取った前記データに基づいて識別可能な任意の新しい空間的制約及び/又は障害物の両方を考慮し、
前記計算された最適経路に基づいて、前記リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返すために前記自動車(2)の前記自律運転システムに提供されるコマンドを計算することによって、前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶された前記リカレント低速マヌーバを前記自律運転モードで繰り返すように構成された、自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項2】
前記リカレント低速マヌーバが、自律運転モードで繰り返され、前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶される環境の前記記述データが、記憶されたときに前記リカレント低速マヌーバを実行するために使用される自動車(2)のタイプを示すデータを含まず、記憶リカレント低速マヌーバの前記記述データを、記憶されたときに前記リカレント低速マヌーバを実行するために使用される自動車(2)のタイプに無関係にする、請求項1に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項3】
更に、前記自動車(2)が自律運転モードで移動する最適経路及び前記自動車(2)の関連した縦方向及び横方向ダイナミクスを計算するように構成され、前記リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な自動車(2)のタイプも考慮して、前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶された前記リカレント低速マヌーバの自律運転モードでの繰り返しを、前記リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能である自動車(2)のタイプに依存させる、請求項1又は2に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項4】
更に、
前記自動車(2)の現在位置において自律運転モードで繰り返すための記憶リカレント低速マヌーバの利用可能性を決定し(120)、
記憶されたリカレント低速マヌーバが、前記現在位置において自律運転モードで繰り返しに利用可能であると決定された場合に、前記自動車ユーザインタフェース(4)によって前記運転者を促して、自律運転モードで前記利用可能な記憶カレント低速マヌーバを繰り返させ、
前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返す促しが、前記自動車ユーザインタフェース(4)を介して前記運転者によって拒否されたと決定された場合に、前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバと関連して記憶された前記マヌーバ繰り返し指標を低減し(140)、
前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返す促しが、前記自動車ユーザインタフェース(4)を介して前記運転者によって受け入れられたと決定された場合に、前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバと関連して記憶された前記マヌーバ繰り返し指標を増大させる(150)ことによって、前記リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶された前記リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返し可能にするように構成された、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項5】
自律運転モードで前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを繰り返す促しが、前記自動車ユーザインタフェース(4)を介して前記運転者によって拒否された場合に、更に、
前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバと関連して記憶された前記マヌーバ繰り返し指標が所定の基準を満たすかどうかを確認し(170)、
前記利用可能な記憶されたリカレント低速マヌーバと関連して記憶された前記マヌーバ繰り返し指標が所定の基準を満たすと決定された場合に、前記リカレント低速マヌーバのデータベースから前記リカレント低速マヌーバを削除する(180)ように構成された、請求項4に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項6】
更に、自律運転モードで前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを繰り返す促しが、前記自動車ユーザインタフェース(4)を介して前記運転者によって受け入れられたと決定された場合に、前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返し、前記自律運転モードで繰り返される前記リカレント低速マヌーバ及び周囲環境のスケッチを前記自動車ユーザインタフェース(4)のディスプレイ上に表示させるように構成された、請求項4又は5に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項7】
幾つかの記憶されたリカレント低速マヌーバが、前記自動車(2)の現在位置において自律運転モードで繰り返しに利用可能であると決定された場合に、更に、
前記自動車ユーザインタフェース(4)を介して前記運転者を促して、マヌーバ繰り返し指標の降順で表示することによって前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返させ、それにより、最も高いマヌーバ繰り返し指標を有する前記利用可能な記憶リカレント低速マヌーバが順序の最初になり、
前記自動車ユーザインタフェース(4)を介して、自律運転モードで繰り返しに利用可能な前記リカレント低速マヌーバのうちの1つを前記運転者が選択することを可能にし、
前記運転者の選択に応じて前記選択された記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返させるように構成された、請求項4〜6のいずれか一項に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項8】
前記自動車(2)のカレントマヌーバの前記記述データが、
前記カレントマヌーバの地理位置情報データと、
前記カレントマヌーバが実行され、好都合には、前記環境における複数(好都合には3つ以上)の基準点の地理位置情報データを含む環境の記述データと、
前記カレントマヌーバが実行される日の期間又は時刻を示す時間データと、
前記カレントマヌーバを構成する操作の数を示すデータと、
前記カレントマヌーバ中に前記自動車(2)が移動した経路の幅を示すデータと、
前記カレントマヌーバ中の前記自動車(2)の速度を示すデータとのうちの1つ以上を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項9】
前記弁別基準が、前記自動車(2)の前記カレント低速マヌーバ中の前記運転者の認識負担に基づき、所定の自動車量に基づいて決定可能であり、
前記所定の自動車量は、
自動車の縦方向/横方向/垂直方向加速度、
道路勾配、
方向変化に応じたマヌーバの数、
ハンドルの操作を示すハンドル角度とハンドル角速度の変化、
ブレーキの操作を示す圧力と圧力変化、
空きスペースを示す利用可能な経路幅及び/又は側方障害物までの距離、
自動車速度、
室内又は室外環境、及び
マヌーバの持続時間の最小値及び最大値
の1つ以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項10】
更に、前記自動車(2)のカレント低速マヌーバが単純な低速マヌーバか複雑な低速マヌーバかを、
前記自動車(2)の前記カレント低速マヌーバの複雑さを示す複雑さ指標(I)を計算し、
前記複雑さ指標(I)をしきい値と比較し、
前記複雑さ指標(I)が前記しきい値より高いか等しい場合に、前記自動車(2)の前記カレント低速マヌーバを複雑なマヌーバとして決定し、
そうでない場合に、前記自動車(2)の前記カレント低速マヌーバを単純なマヌーバとして決定することによって決定するように構成され、
前記複雑さ指標(I)が、
自動車の縦方向/横方向/垂直方向加速度、
道路勾配、
方向変化に応じたマヌーバの数、
ハンドルの操作を示すハンドル角度とハンドル角速度の変化、
ブレーキの操作を示す圧力と圧力変化、
空きスペースを示す利用可能な経路幅及び/又は側方障害物までの距離、
自動車速度、
室内又は室外環境、及び
マヌーバの持続時間の最小値及び最大値の量の1つ以上に基づいて計算可能である、請求項9に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項11】
更に、以下の式によって、k個の前述の量vを適切に重み付けすることによって複雑さ指標(I)を計算するように構成され、
【数1】
ここで、
anが、n番目のvn量による重量であり、
fnが、0〜1の値を仮定できるn番目の関数である、請求項10に記載の自動車電子制御ユニット(5)。
【請求項12】
自動車自律運転システム(1)であって、
自動車推進システム、制動システム、操舵システム及び感覚システムを含む自動車搭載システム(3)と、
自動車ユーザインタフェース(4)と、
自動車搭載通信ネットワーク(6)によって前記自動車搭載システム(3)と前記自動車ユーザインタフェース(4)に接続され、前記自動車搭載システム(3)と協力して前記自動車自律運転システム(1)を提供するように設計された請求項1〜11のいずれかに記載の自動車電子制御ユニット(5)と、を含む自動車自律運転システム(1)。
【請求項13】
請求項12による自動車自律運転システム(1)を含む自動車(2)。
【請求項14】
自動車電子制御ユニット(5)にロード可能であり、実行されたときに、前記自動車電子制御ユニット(5)が、請求項1〜11のいずれか一項に記載されたように構成されるように設計されたソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月6日に出願されたイタリア国特許出願第102018000003312号の優先権を請求し、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に自動車運転支援に関し、詳細には自律運転モードにおける複雑なリカレント低速マヌーバ(recurrent low speed manoeuvre)の実行に関する。
【0003】
本発明は、乗用車、バス、キャンピングカーなどの人を搬送するために使用されるか、産業車両(トラック、トロッコ、連結式車両など)や軽又は中重量商業車両(バン、コンテナ車、遊航船など)などの物品を輸送するために使用されるかに関係なく、任意のタイプの路上自動車に用途を有する。
【背景技術】
【0004】
周知のように、近年、自動車メーカは、運転安全性と快適さを改善するために高度自動車運転支援/援助システム(先進運転支援システム−ADAS)の研究に膨大な資源を注ぎ込んできた。
【0005】
このため、また交通事故を減らすために欧州連合によって設定された目標の達成を支援することにより、ADASは、今後ますます普及する自動車業界で最も急成長している分野の1つである。
【0006】
ADAS安全機能は、運転者に潜在的問題を警告する技法を提供することによって衝突と事故を回避するか、セーフガード措置を実施し自動車の制御を行うことによって衝突を回避するように設計されている。適応機能は、照明を自動化し、適応性走行制御を提供し、制動を自動化し、GPS/交通信号発信を内蔵し、スマートフォンを接続し、他の自動車の危険を運転者に警告し、運転者を右側車線に維持し、又は死角にあるものを示し得る。
【0007】
ADAS技術は、視覚/カメラシステム、感覚システム、自動車データネットワーク、車両間(V2V)通信システム、又は車両インフラストラクチャ間(V2I)通信システムに基づいている。次世代ADASシステムは、V2V又はV2I通信に付加価値を提供するために無線接続を益々利用するようになる。
【0008】
ドイツ保険協会(GDV)の事故調査機関によって行われた研究によれば、実際に、車線逸脱警報システムが単独で、交通事故の最大15%を防ぎ得るが、交差点における支援は、交通事故の最大35%を回避できる。
【0009】
レーダとカメラの統合、複数アプリケーションからの感覚データの融合などの技術開発は、最初の自動車が誕生してから経過した130年間よりも今後の20年間で、より大きく自動車を変化させると予想される。
【0010】
これらの技術開発の終点は、通常、セルフドライビングカー(self-driving car)又は自動運転車(autonomous car)と定義される。
【0011】
2つの用語は、この考察では圧倒的にほとんど互換可能に使用されるが、幾つかの特殊な環境では、これらの2つの用語は、微妙に区別するために違う意味合いで使用される。
【0012】
詳細には、用語「自動運転車」は、今日の自動車(即ち、前向き座席とハンドルがある)と同様の自動車を示すために使用されており、運転者は、例えば、自動駐車又は自動ブレーキ、前方自動車から安全距離を維持するために速度を調整する適応走行制御など、特定環境でのみ運転作業が奪われる。近い将来、自動運転車は、渋滞又は高速道路での運転の完全制御を行いうる。
【0013】
一方で、用語「セルフドライビングカー」は、自動運転車と比べてさらに進歩したと見なされる自動車(即ち、ハンドルが完全に消え、自動運転車によって使用されるのと同じ感覚システムを使用して完全走行を行う自動車)を示すために使用されている。
【0014】
この微妙な違いを無視すると、真の違いは、例えば運転支援自動車は、自動車が、前の車両がブレーキをかけた場合にブレーキをかけ、必要なときに速度を落とすことによって、運転者(したがって、注意を払うことから免除されていない)を「支援」するものであり、自動又は自動化運転自動車は、上のものと違って、自動車が、完全に自律的に運転しており、運転者が注意を払わなくてもよいものを意味する。
【0015】
この用語上の違いの例は、非特許文献1によって示されており、著者は、「この論文は一般に用語「自動」の代わりに用語「自律」を使用する」と述べている。用語「自律」は、現在ではより広く使用されている(従って、公衆により知られている)用語であるため選択された。しかしながら、用語「自動」は、おそらく機械による制御又は操作を暗示するため、より正確であり、一方、「自律」は、単独又は独立での作動を暗示する。現在、ほとんどの車両(座席に人がいることが分からない)では、クラウド又は他の車両との通信を使用し、目的地を別個に入力しない。即ち、用語「自動」はこの車両概念をより良く示す。
【0016】
2014年に、SAE(自動車技術協会)インターナショナルで、自動車、トラック、船及び航空機を含む全ての種類の発動機付き車両のエンジニアリング基準を開発し定義する作業をする航空宇宙、自動車及び車両産業における標準機関が、自動運転の6つの異なるレベルを定義した新しい国際規格J3016を公表した。この分類は、運転者が、自動車の性能に基づくのではなく、自動車にどれだけ介入しなければならないかに基づく。
【0017】
自動運転の6つのレベルは、次の通りである。
0レベル 自動化なし:運転者は電子的支援なしに全ての運転様相を管理しなければならない。
レベル1 運転者支援:運転者は、全ての運転様相を処理しなければならないが、危険な状況又は悪条件の存在を信号送信できる電子システムによって情報で(視覚的又は聴覚警告の形で)支援される。このレベルでは、自動車は、単に状況を分析し表現し、したがって、運転者は、車両を運転するための完全で十分な責任を有する。
レベル2 部分的自動化:運転者は運転を処理するが、第1の運転統合がある。このレベルで、自動車は、例えばブレーキ支援や衝突防止緊急ブレーキなどの安全システムによって加速とブレーキに介入する。方向及び交通制御は、まだ運転者の制御下にあるが、はっきり分かる路面マーキングを有する特定のシナリオで、操舵は、部分的に自動化された形で管理されうる(自動車ブランドにより、車線維持支援と呼ばれるシステム、及び最も完全なバージョンでは渋滞支援、自動操縦装置、高速道路支援)。
レベル3 条件付き自動化:自動車は、通常の環境条件での運転、加速、ブレーキ及び方向を管理できるが、運転者は、システムが要求する場合、又は運転者自身が悪条件を確認した場合に問題状況に介入する。
レベル4 高自動化:自動システムが、いかなる不測の自体も管理できるが、悪天候の場合のような極端な運転条件では活動化されてはならない。
レベル5 全自動化:自動運転システムは、人間によって管理されうる全ての状況を、人間の介入なしに管理できる。
【0018】
特許文献1は、自動運転車の運転の標準的状況に基づく計画的制御方法を開示している。一実施形態では、自動運転車が所定の経路内で経路の第1地点から第2地点まで移動しなければならないことを示す計画及び移動制御データを受け取る。計画及び移動制御データに応じて、第1地点から第2地点までの経路が、複数の経路区分に分割される。経路区分のそれぞれに関して、対応する経路区分の移動特徴に対応している所定の運転状況のうちの1つが識別される。経路区分と関連付けられた計画及び移動制御データが、経路区分の所定の移動設定により修正される。自動運転車は、修正された計画及び移動制御データに従って経路区分を運転される。
【0019】
特許文献2は、状況認識に基づいて自動車の経路と目的地を予測し、複数のセンサからの少なくとも1つの現在位置と1つの現在時間を含む自動車に関するデータを受け取るステップと、自動車データに基づいて複数の使用シナリオを決定するステップと、自動車に関する履歴データとデータベースに記憶されたユーザデータにアクセスするステップと、自動車データに基づいて複数の使用シナリオのそれぞれに確率値を割り当てるステップと、複数の使用シナリオのそれぞれの1組の目的地と経路を予測するステップとを含む方法を開示している。
【0020】
特許文献3は、長さに沿った可変曲率を有する農業車両の運転経路を拡張するためのシステムを開示している。このシステムは、圃場を耕作する列を形成するために、一連の隣り合った経路に沿った農業車両の正確な運転を提供する。車両は、ナビゲーションシステム(例えば、RTK GPS)から位置決め情報を受信しながら第1の経路に沿って移動される。この位置決め情報は、プロセッサに記憶され、プロセッサによって使用されて、第1の経路に沿った複数位置で第1の経路の区分に垂直なオフセットを計算することによって第1の経路に隣接した第2の経路が計算される。オフセットプロセスは、第3の経路とその後の経路を計算するために繰り返されて、圃場全体がカバーされる。このオフセットプロセスによって、圃場を長さに沿って可変曲率を有する経路でカバーでき、更に実質的に隙間や重複なしに圃場をカバーできる。システムは、代替経路を提案でき、ユーザは、農業車両を操縦するかグラフィカルユーザインタフェースを使用して代替通路を選択することによって介入できる。圃場をカバーできる経路をモデルの形で記憶でき、そのモデルを使用して、圃場での次の作業及び次の年に農業車両を予め計算された経路に沿って自動的に操縦させうる。
【0021】
特許文献4は、駐車マヌーバ中に自動車の操縦を制御するための装置を開示している。この目的のため、最初に自動車を駐車するために選択された駐車スペースが監視され、その監視結果に基づいて、選択された駐車スペース内及び選択された駐車スペース近くの複数の位置決めポイントの目的地方位を定義する方位フィールドが作成される。次に、自動車は、これらの位置決めポイントに沿って方位フィールド内の任意の点から駐車マヌーバの目的地ポイントまで運転される。自動車の制御は、方位フィールド内のそれぞれの位置に関して自動車のそれぞれの現在方位を特定の目的地方位と比較し、自動車の方位から目的地方位への操舵角を適切に調整することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/011494号
【特許文献2】米国意匠出願公開第2015/354978号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/178823号
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/082613号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】論文、Woodら(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本出願は、障害物及び周囲自動車の存在により、交通で移動するときに、同じ目的地に同じルートによって到達しなければならないときでも、自動車が常に、推測的に予測もプログラムもできない異なる経路を移動し、それに対して、自動車が、低速で、常に同じ1つ以上の所定の経路又は軌跡を移動し、自動車に経路を強制的に修正させうる障害物(例えば、他の周囲の車両)の存在が制限される(もしある場合)場合に、典型的には局所化され、個人又は保護領域(又は、アクセスが制限又は制御された場合)内に「管理された」状況が存在することを発見した。
【0025】
例えば、家の庭内で、自動車が、第1地点(例えば、入口の門)から第2地点(例えば、ガレージ)まで低速で同じ経路を数回移動するか、倉庫の掃除機の積み降ろし領域内で、自動車が、入口地点から複数の所定の経路を移動してそれぞれの倉庫の積み降ろし地点に達し(いわゆる、マヌーバの「結合」)、更に、駐車場内で、自動車は、典型的には、所定の経路に沿って移動して入口地点から所定の駐車領域まで進む。
【0026】
現在、前述の状況で、自動車の運転者は、典型的には、所望の目的地に達するために同じマヌーバを繰り返し実行して所定の経路を移動しなければならない。更に、自動車の運転者は、管理領域の構成に慣れていない場合、その目的地に達するのが難しいと分かることがあり、典型的な例は、公共又は個人用駐車場の空きスペース又は貨物積み降ろし領域内の割り当て荷下ろし領域を見つけることが難しいことである。
【0027】
一般に、普通のマヌーバ中に運転者の注意が低下することを実証できることを考察すると、かなりの時間の無駄に繋がる誤ったマヌーバの明らかなリスクがある。
【0028】
低速マヌーバを実行するために、早くも2008年に出願者が欧州特許第2 136 275号明細書で自動車自律運転システムを提案し、自動車電子制御ユニットが、自動車の運転者の手動制御下で経路を移動している間に自動車の運転データを自動記憶させる自己学習経路手順を実現した。
【0029】
したがって、本発明の目的は、複雑又は難しいリカレント低速マヌーバを実行するためにできるだけユーザフレンドリに自動車自律運転技術を利用する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
したがって、本発明によれば、添付の特許請求の範囲で請求されるような自動車電子制御ユニット、自動車自律運転システム及び自動車が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】リカレント低速マヌーバを実行する自動車自律運転の可能な利用の典型的シナリオを示す図である。
【
図2】リカレント低速マヌーバを実行する自動車自律運転システムのブロック図である。
【
図3】自動車によって自律的に実行される低速マヌーバに関連して自動車電子制御ユニットによって実行される操作の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、当業者が本発明を実施し使用することを可能にするために添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。説明される実施形態に対する種々の修正は、当業者に容易に明らかになり、説明される一般原理は、添付した特許請求の範囲で定義されたような本発明の保護範囲から逸脱することなく他の実施形態及び用途に適用されうる。したがって、本発明は、本明細書で説明され例示された実施形態に限定されると考えられるべきでないが、本明細書で説明され請求される特徴と矛盾しない最も広い保護範囲が与えられるべきである。
【0033】
特に指定されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。相反する場合は、提供された定義を含む本明細書が統制する。更に、例は、単に例示のために提供され、したがって制限と見なされるべきでない。
【0034】
詳細には、添付図面に含まれ後述されるブロック図は、構造的特徴(即ち、構造上の制限)の表現として理解されるべきでなく、機能的特徴(即ち、得られる効果によって定義される装置の本質的特性(即ち、機能的制限)の表現として理解されるべきであり、機能的特徴は、その機能(operational capability)を保護するために様々な形で実施されうる。
【0035】
本明細書で説明される実施形態の理解を容易にするために、幾つかの特定の実施形態が参照され、その説明に特定の文言が使用される。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを説明するために使用され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
図1は、自動車をガレージ内に駐車する自動車自律運転技術の可能な利用の典型的シナリオを概略的に示す。
【0037】
図2は、自動車(参照数字2で参照される)に自律運転モードでリカレント低速マヌーバを実行させるように設計された自動車自律運転システム(全体として参照数字1で参照された)のブロック図を示す。
【0038】
図2に示されたように、自動車自律運転システム1は、
特に、推進システム、制動システム、操舵システム、情報娯楽システム、及び、例としてホイール角度、ハンドル角度、ヨー、縦方向及び横方向加速度、位置などを含む自動車に関連した量2を検出するように設計された感覚システムを含む自動車搭載システム3(本発明の実施態様に関係する部分だけが後述される)と、
自動車2の乗員が自動車自律運転システム1と対話可能な自動車ユーザインタフェース4(HMI−人間機械インタフェース)と、
CAN、FlexRAyなどの自動車搭載通信ネットワーク6によって自動車搭載システム3と自動車ユーザインタフェース4に動作的に接続され、ソフトウェア命令を含む自律運転ソフトウェアを記憶し実行するように設計された自動車電子制御ユニット(ECU)5であって、ソフトウェア命令は、実行されたときに、電子制御ユニット5が、自動車搭載システム3と協力して、自動車リカレント低速マヌーバを自律運転モードで実行可能にする自動車自律運転システム1を提供する自動車電子制御ユニット(ECU)5とを含む。
【0039】
自動車2の乗員が自動車自律運転システム1と対話することを可能にするために、自動車ユーザインタフェース4は、
搭載ディスプレイと、
典型的には自動車のハンドル(図示せず)上に配置されたハードタイプ及び/又はソフトタイプ(即ち、搭載ディスプレイ上に表示された)の選択及び活動化ボタンと、
音声認識システム(任意選択)、
自動車2の乗員の携帯型(手持ち式)又は装着型個人用モバイル電子通信装置(スマートフォン、ファブフレット、タブレット、パーソナルコンピュータ、スマートウォッチなど)であって、特に個人用モバイル電子通信装置が自動車情報娯楽システム及び自動車自律運転システム1と通信するように設計されたソフトウェアアプリケーションが記憶され実行されうる個人用モバイル電子通信装置と、
以下で「D2V」通信システム(Device to Vehicleの頭字語)と呼ばれる自動車2に搭載された個人用モバイル電子通信装置の短距離双方向無線通信システムをその通信範囲内で検出し識別し、また必要に応じて、場合によっては適切なペアリング手順後に、検出され識別されたD2V通信システムとの通信を確立し通信できる、以下で「V2D」通信システム(Vehicle to Deviceの頭字語)と呼ばれる短距離双方向ワイヤレス通信システムとを含む。
【0040】
自動車ユーザインタフェース4は、自動車2の運転者によって与えられ、例えば記憶されたリカレント低速マヌーバを開始するコマンドや記憶されたリカレント低速マヌーバを選択するコマンドなどを含むコマンドを受け取り、及び/又は、自動車2の運転者に、記憶されたリカレント低速マヌーバの進度及び自動車2の運転パラメータに関して通知し、及び/又は自動車2の運転者の介入を要求し、例えば、リカレント低速マヌーバが自律運転によって部分的にのみ実行されるときに、自動車2を停止するかバックギアを入れるように構成される。介入及び情報の要求は、自動車2の運転者に視覚、音声及び/又は聴覚で提供されてもよく、運転者が視覚的注意を道路から反らすことにならず、したがって潜在的な危険及び障害物を直ちに知覚するために聴覚/音声モードが好ましい。
【0041】
電子制御ユニット5は、3つの高度なタスク、即ち、
自律運転モードで自動車2によって実行可能なリカレント低速マヌーバを学習し記憶すること、
記憶されたリカレント低速マヌーバを識別して、自動車2の現在位置に基づいて自律運転モードで運転者に繰り返しを提案すること、
記憶されたリカレント低速マヌーバを繰り返す(再実行する)こと、を実行するようにプログラムされる。
【0042】
単なる例として、低速マヌーバは、最大速度が記憶中に30km/hを超えず(自動車2が停止から動き始めるか既に動いている)、繰り返し中に20km/hを超えないマヌーバとして意味しうる。
【0043】
自動車電子制御ユニット5は、自動車2の運転者によって手動で実行されるリカレント低速マヌーバと、自動車電子制御ユニット5に記憶され自律運転モードで実行されるマヌーバの両方を学習するようにプログラムされる。特定の位置で実行されたリカレント低速マヌーバの自動車電子制御ユニット5内の記憶は、実際には、自動車2の運転者によって手動で行われたリカレント低速マヌーバの学習の結果であるだけではなく、適切な外部プログラミング装置によって実行されたリカレント低速マヌーバのプログラミングの結果、あるいは、そのようなマヌーバが同じ運転者によって又は異なる自動車2上の別の運転者によって手動で実行されたとき行われた学習の結果として同じマヌーバが記憶されたリモートサーバに記憶されたリカレント低速マヌーバのダウンロードの結果でよい。
【0044】
自動車電子制御ユニット5は、更に、リカレント低速マヌーバをリカレント低速マヌーバのデータベースに、リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返しできる環境の記述データ、詳細には、リカレント低速マヌーバの自律運転モードの繰り返しに利用でき、好都合には、リカレント低速マヌーバの始点及び終点、並びにリカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な環境における空間的制約、障害物及び関連寸法を表す地理位置情報データを含む可能な自由スペースの記述データの形で記憶するようにプログラムされる。
【0045】
好都合には、更に、リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶された、リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な環境の記述データが、記憶されたときに低速マヌーバを実行して、それらを実行するために使用される自動車2のタイプと関係なくリカレント低速マヌーバの記述データを作成するために使用される自動車2のタイプを示すデータを含まない。リカレント低速マヌーバのデータベースは、自動車電子制御ユニット5の内部メモリ又は自動車電子制御ユニット5に外部から接続された専用記憶ユニットに記憶され、必要に応じて、自動同期手順によって、特定のリモートレポジトリ(例えば、リモートサーバ)に自動的に複写され、同じリカレント低速マヌーバを実行するために必要なことがある他の運転者と共有されうる。
【0046】
自動車電子制御ユニット5は、また、自動車リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な環境の記述データと共に、その後の識別及びその自動又は手動選択を可能するリカレント低速マヌーバの識別データ、例えば、学習が完了したときに自動車ユーザインタフェース4を介して自動車2の運転者によって与えられる記述名、及び自律運転モードで記憶されたリカレント低速マヌーバが繰り返される回数を示すマヌーバ繰り返し指標を記憶するようにプログラムされる。
【0047】
自動車電子制御ユニット5は、また、自律運転モードで繰り返しに利用可能な記憶リカレント低速マヌーバが、自動車ユーザインタフェース4を介して運転者によって手動、及び自動車2の現在位置に基づいて自動車電子制御ユニット5によって自動の両方で選択可能になり、自動車2の位置と一致するその地理位置情報データを有する記憶リカレント低速マヌーバを識別するようにプログラムされる。
【0048】
詳細には、自律運転モードでの繰り返しに利用可能な記憶リカレント低速マヌーバは、搭載サテライト地理位置情報装置(GPS、Galileo)によって出力されるか自動車2の搭載感覚システム(例えば、超音波センサ、周囲ビューカメラ、レーザスキャナなど)によって提供された感覚データを融合することによって計算された自動車2の現在位置を示す現在地理位置情報データを、記憶されたリカレント低速マヌーバの地理位置情報データと比較することによって、自動車2の現在位置に基づいて、自動車電子制御ユニット5によって自律的に選択可能である。
【0049】
自動車電子制御ユニット5は、また、自動車ユーザインタフェース4を介して自動車2の運転者によって与えられたコマンドに応じて、例えば、自動車2若しくは個人用電子通信装置の搭載ディスプレイに表示された特別の開始ボタンの操作に応じて、又は自動車2の制御に対する自動車2の運転者の特定のジェスチャ(例えば、ハンドルから両手及び/又はアクセルペダルから片足を離すこと)の認識に応じて、記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返すようにプログラムされる。
【0050】
自動車電子制御ユニット5は、また、
最初に、自動車2のサテライト地理位置情報装置によって提供された地理位置情報データ及び/又はリカレント低速マヌーバ(固定障害物と空間制約)の記述データに基づいて、自動車2が、リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な場所にあること、必ずしも正確にリカレント低速マヌーバの開始点でないが、その開始点の近くにあり、あるいはリカレント低速マヌーバの経路の中間にあるかどうかを確認し、
次に、リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返される環境で、リカレント低速マヌーバの記述データと、自動車2の感覚システムから受け取り、自動車2の動きを示し、空間的制約、障害物及び関連寸法のデータに基づいて、自律運転モードでリカレント低速マヌーバを繰り返すために自動車搭載システム3に提供される適切なコマンドを生成することによって、記憶されたリカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返すようにプログラムされる。
【0051】
代替実施形態において、自動車電子制御ユニット5は、リカレント低速マヌーバを所定の基準系で定義された基本変位を最初に計算することによって自律運転モードで繰り返し、自動車2によって実行させ、次に、計算された基本変位に基づいて、また既知のアルゴリズムを使用することによって、記憶リカレント低速マヌーバを繰り返すために自動車搭載システム3に提供される特定のコマンドを生成するようにプログラムされる。
【0052】
自動車電子制御ユニット5は、また、既知のアルゴリズムによって、自動車2が始点から終点まで移動する最適経路を実時間で計算し、リカレント低速マヌーバが繰り返される環境で、マヌーバが記憶されたときにリカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返される環境で両方が識別され空間的制約、障害物及び関連寸法と、リカレント低速マヌーバがその記憶後に自律運転モードで繰り返される環境で現れた可能性があり、自動車2の知覚システムから受け取ったデータに基づいて識別可能な任意の新しい空間的制約及び/又は障害物とを考慮することによって、自動車2に自律運転モードで記憶リカレント低速マヌーバを繰り返させるようにプログラムされる。
【0053】
したがって、記憶されたリカレント低速マヌーバは、リカレント低速マヌーバが記憶されたときに自動車2の運転者によって自動車搭載システム3に提供されるコマンドを単純に繰り返すが、リカレント低速マヌーバの記憶された記述データ及び自動車2の感覚システムからのデータとに基づいて対応する最適経路を実時間で計算することによって、自律運転モードで繰り返されない。
【0054】
このようにして、マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な環境で新しい制約及び/又は新しい障害物が現れた場合、及び/又は既存のもの及び/又は関連寸法が、リカレント低速マヌーバが記憶されたときと比較して修正される場合でも、記憶されたリカレント低速マヌーバは、修正又は復元することなく繰り返されうる。したがって、記憶されたリカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返し可能な環境における新しい制約及び/又は新しい障害物の出現、又はリカレント低速マヌーバが記憶されたときと比較した既存のもの及び/又は関連寸法の修正、記憶リカレント低速マヌーバの記述データ及び自動車2の感覚システムからのデータに基づく対応する最適経路の計算が、自律運転モードで繰り返し可能なリカレント低速マヌーバを記憶されたものとは異なるものにする。
【0055】
両方の実施形態で、更に、自動車電子制御ユニット5は、また、好都合には、自律運転モードでの繰り返しを、自律運転モードでリカレント低速マヌーバを繰り返すために使用される自動車2のタイプに依存させるために、リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返される自動車2のタイプを考慮する自律運転モードで、自動車2が移動する最適経路を計算するようにプログラムされる。
【0056】
自動車電子制御ユニット5は、また、安全上の理由で、自動車2の運転者が、自律運転モードでリカレント低速マヌーバの繰り返し中に優先手動制御を実行し、例えば、経路に沿った障害物の出現などの異常な状況に対して適時に反応できるようにプログラムされうる。この目的のため、自律運転中、自動車2の運転者は、マヌーバの繰り返しを中断せずに、少なくともブレーキ及びアクセルペダル及びギア転換装置の能動制御を行い、例えば、これが自律運転モードで可能でなく、したがって運転者の介入を必要とする場合に移動方向を逆にし、及び/又はハンドルの能動制御を実行することが許可され、したがって、ハンドル上の介入が侵略的と考えられるかどうかにより、マヌーバの繰り返しの中断が可能になる。
【0057】
いかなる場合も、自動車電子制御ユニット5は、運転者によって与えられた手動コマンドを自律運転によるものより優先的に検討するようにプログラムされる。
【0058】
自動車電子制御ユニット5は、また、
図3に示されたフローチャートに関して後述される操作を実行することによって、リカレント低速マヌーバのデータベースを記憶しポピュレートするようにプログラムされる。
【0059】
詳細には、この目的のため、自動車電子制御ユニット5は、
単なる例として、
・自動車2のカレントマヌーバの地理位置情報データと、
・マヌーバが実行される環境の記述データ、好都合には、環境における複数(好都合には3つ以上)の基準点(例えば、
図1に示されたような、入口の門柱、移動経路に沿った木など)の地理位置情報データと、
・カレントマヌーバが実行された1日の期間又は正確な時刻を示す時間データと、
・実行される低速マヌーバを構成する操作数を示すデータと、
・移動される経路の幅を示すデータと、
・マヌーバ中の自動車2の現在速度を示す速度データを含む、自動車2のカレントマヌーバの記述データを決定し記憶し、
カレント低速マヌーバの記述データに基づいて、自動車2のカレント低速マヌーバが、単純(難しくない)な低速マヌーバか複雑(難しい)な低速マヌーバかを決定し(ブロック10)、
自動車2のカレント低速マヌーバが複雑な低速マヌーバと決定された場合に、自動車2の難しい低速マヌーバもリカレント(習慣的)低速マヌーバであるかどうかを決定し(ブロック20)、
複雑な低速マヌーバが、リカレント低速マヌーバでないことが決定された場合に、単位値に好都合に初期化されるマヌーバリカレント指標に関連して、複雑な低速マヌーバを複雑な低速マヌーバのデータベースに記憶し(ブロック30)、
その代わりに、複雑な低速マヌーバが、リカレント低速マヌーバであると決定された場合に、記憶された複雑な低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバリカレント指標を増大させ(ブロック40)、
複雑な低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバリカレント指標が、所定の基準を満たすかどうか、例えば、所定のしきい値を超えるかどうかを確認し(ブロック50)、
複雑な低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバリカレント指標が、前述の所定の基準を満たさない場合は、10〜50のブロックに関して前述された操作を繰り返し、
その代わりに、複雑な低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバリカレント指標が、前述の所定の基準を満たす場合は、複雑な低速マヌーバが、リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶されているかどうかを確認し(ブロック60)、
複雑な低速マヌーバがリカレント低速マヌーバのデータベースに記憶されていないことが決定された場合に、運転者を促して、自動車ユーザインタフェース4を介して、複雑な低速マヌーバをリカレント低速マヌーバのデータベースに記憶し(ブロック70)、運転者の選択を取得し(ブロック80)、
複雑な低速マヌーバをリカレント低速マヌーバのデータベースに記憶する促しが、運転者によって拒否されたと決定された場合は、複雑な低速マヌーバを複雑な低速マヌーバのデータベースから削除し(ブロック90)、
その代わりに、複雑な低速マヌーバをリカレント低速マヌーバのデータベースに記憶する促しが運転者によって受け入れられたと決定された場合に、複雑な低速マヌーバをリカレント低速マヌーバとしてのリカレント低速マヌーバのデータベースに、リカレント低速マヌーバが自律運転モードで繰り返され、好都合には単位値に初期化される回数を示すマヌーバ繰り返し指標と関連して記憶し(ブロック100)、好都合には、運転者に、自動車ユーザインタフェース4を介して記憶されたリカレント低速マヌーバの記述データ、例えば、マヌーバの始点/終点及びリカレント低速マヌーバが行われる環境での基準点の地理位置情報データ、又は、速度データ、又は移動した経路の記述データ(縦方向、緯度、又は垂直ジャークの最適化)、又はマヌーバの快適さを改善するためにリカレント低速マヌーバを構成する最大操作数を提供してマヌーバの快適さを改善する(ブロック110)ようにプログラムされる。
【0060】
自動車2のカレント低速マヌーバが、単純な低速マヌーバであるか複雑な低速マヌーバであるかの決定は、好都合には、比較的単純なカレント低速マヌーバを記憶し繰り返す連続した促しで自動車2の運転者を悩ませないように実行され、自律運転モードでのその繰り返しは運転者にほとんど利益をもたらさない。
【0061】
カレント低速マヌーバが単純なマヌーバであるか複雑なマヌーバであるかの決定は、他の自動車メーカの性能と区別するために自動車メーカによって特別に開発された独自の弁別基準に基づく。
【0062】
一実施形態では、弁別基準は、所定の自動車量に基づいて決定されうる運転者の認識負担に基づきうる。
【0063】
したがって、この実施形態では、自動車電子制御ユニット5は、更に、
カレント低速マヌーバの複雑さを示す複雑さ指標Iを計算し、
複雑さ指標Iをしきい値と比較し、
複雑さ指標Iがしきい値より高いか等しい場合にカレント低速マヌーバが複雑なマヌーバであることを決定し、
そうでない場合にカレント低速マヌーバが単純なマヌーバであることを決定するようにプログラムされる。
【0064】
複雑さ指標lは、以下の式に従って、k個の量vを適切に重み付けすることによって計算されてもよく、
【0066】
ここで、
a
nは、n番目の量v
nによる重みであり、
f
nは、0〜1の値を仮定できるn番目の関数であり、好都合には以下の量v
nに基づくが必須ではなく、
縦方向/横方向/垂直方向加速度、
道路勾配、
方向転換(従って、マヌーバの数)、
ハンドルの操作(ハンドル角度とハンドル角速度の変化)、
ブレーキの操作(圧力と圧力変化)、
利用可能な経路幅(自由スペース)及び/又は側方障害物までの距離、
自動車速度、
室内又は室外環境、及び、
マヌーバの持続時間(最小及び最大値)。
【0067】
非限定的な例として、
V
1を自動車の縦方向加速度、
V
2を方向転換の数として示すことによって、
【数2】
単純化された例では、マヌーバは、I>0.5の場合に複雑と見なされる。
【0068】
自動車電子制御ユニット5は、更に、リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶されたリカレント低速マヌーバが、
図3に示されたフローチャートに関して再び後述される操作を実行することによって、自律運転モードで繰り返し可能になるようにプログラムされる。
【0069】
詳細には、この目的のため、自動車電子制御ユニット5は、
自動車2の位置を絶えず監視し、
前述のブロック60で、複雑な低速マヌーバが、リカレント低速マヌーバのデータベースに記憶されていると決定された場合に、自動車2の現在位置において記憶されたリカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返しに利用可能かどうかを決定し(ブロック120)、
記憶されたリカレント低速マヌーバが、自動車2の現在位置において自律運転モードで繰り返しに利用可能であると決定された場合に、自動車ユーザインタフェース4を介して、運転者を促して、自律運転モードで利用可能な記憶されたリカレント低速マヌーバを繰り返させ(ブロック120)、運転者の選択を取得させ(ブロック130)、
運転者が、自動車ユーザインタフェース4を介して、自律運転モードでの繰り返しに利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返す提案を拒否した場合に、自律運転モードでの繰り返しに利用可能な記憶リカレント低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバ繰り返し指標を低減し(140)、
自律運転モードで利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを繰り返すべき促しが、自動車ユーザインタフェース4を介して運転者によって拒否されることが決定された場合に、利用可能な記憶されたリカレント低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバ繰り返し指標を増加させ(ブロック150)、それによりリカレント低速マヌーバのデータベースを更新する(ブロック160)ようにプログラムされる。
【0070】
自律運転モードで、利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを繰り返す促しが運転者によって受け入れられたと決定された場合に、自動車電子制御ユニット5は、更に、
利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを前述のように自律運転モードで繰り返し、
繰り返されるリカレント低速マヌーバ並びに繰り返される環境のスケッチを、自動車2又はユーザの個人用電子通信装置の搭載ディスプレイ上に表示させるようにプログラムされる。
【0071】
自律運転モードで、利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを繰り返す促しが、運転者によって拒否されると決定された場合に、自動車電子制御ユニット5が、更に、
自律運転モードでの繰り返しに利用可能な記憶リカレント低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバ繰り返し指標が、所定の基準を満たすかどうか、例えば、マヌーバ繰り返し指標が所定のしきい値より低いかどうかを確認し(ブロック170)、
自律運転モードでの繰り返しに利用可能な記憶リカレント低速マヌーバと関連して記憶されたマヌーバ繰り返し指標が所定の基準を満たす場合に、リカレント低速マヌーバをリカレント低速マヌーバのデータベースから削除する(ブロック180)ようにプログラムされる。
【0072】
幾つかの記憶リカレント低速マヌーバが、自動車2の現在位置において自律運転モードで繰り返しに利用可能な場合に、自動車電子制御ユニット5は、更に、
自動車ユーザインタフェース4を介して、マヌーバ繰り返し指標の降順で表示することによって、運転者に自律運転モードで利用可能な記憶リカレント低速マヌーバを繰り返させ、それにより、最も高いマヌーバ繰り返し指標を有する利用可能な記憶リカレント低速マヌーバが順序の最初になり、
自動車ユーザインタフェース4によって、自律運転モードの繰り返しに促されたリカレント低速マヌーバのうちの1つを運転者に選択させ、
運転者の選択に応じて、選択された記憶リカレント低速マヌーバを自律運転モードで繰り返すようにプログラムされる。
【0073】
最後に、自動車電子制御ユニット5は、
自動車2の縦方向ダイナミクス又は横方向ダイナミクスあるいは両方を適切に制御することによって自動車2の手動運転と自律運転のスマートな移行を行って難しいリカレント低速マヌーバを実行し、
自動車2の縦方向及び横方向ダイナミクスを示す量、例えば、
・縦方向
*アクセルペダル
*ブレーキペダル
*エンジントルク
・横方向
*ハンドル角度
*ハンドル速度
*ヨーレート
*トルクステア
に基づいて認識された難しいリカレント低速マヌーバの自動運転モードでの繰り返しを可能にし、
アクセルペダル、ブレーキペダル又はハンドルの運転者の操作が検出されたとき、特定ボタンの実装を必要とすることなく難しいリカレント低速マヌーバの自動運転モードでの繰り返しを開始し及び終了し、例えば、アクセル及びブレーキペダルを離すことによって、自動運転モードでの難しいリカレント低速マヌーバの繰り返しを開始し、自動運転モードでの難しいリカレント低速マヌーバの繰り返しを終了し、
リカレント低速マヌーバの自律運転モードでの繰り返しのオーバーライド、休止及びアボーションの条件のスマートな管理を実行する。
【0074】
本発明による自動車自律運転システムによって可能にされた利点は、その特徴の検討から明らかになる。
【0075】
詳細には、経験のない運転者でも、限定され管理された領域内の所定の経路に沿って行われるリカレント低速マヌーバ中に、意図した目的地に達するのにかかる時間及び誤りを犯す可能性を大幅に低減できる。
【0076】
本発明による自動車自律運転システムは、複雑な構造的修正なしに任意のタイプの自動車に適用でき、その理由は、所定の経路に沿って自動車を運転するために、レールなどの機械的駆動手段を準備することなく、自動車に既に搭載されており、任意の領域内の自動車の自律運転に使用されるセンサ及びアクチュエータを使用するからである。
【0077】
自動車の自動車自律運転システムは、構成可能であり、あまり複雑でない状況(例えば、個人の庭)からより複雑な状況(例えば、マヌーバを効率的、迅速及び安全に結合する貨物積み降ろしのためのハブ複合施設)まで、幾つかのタイプの状況で容易に適合され使用されうる。
【0078】
最後に、添付した特許請求の範囲に定義されたような本発明の保護範囲から逸脱することなく、本明細書に記述され例示されたものに修正及び変形を行えることは明らかである。
【0079】
詳細には、自動車自律運転システムがどのように構成されたかにより、運転は、完全に自律的でも部分的に自律的でもよく、例えば、運転者は、ブレーキ及びアクセルペダルを制御する役割のまま、自律動作を操舵操作のみに制限してもよいことは明らかである。
【0080】
更に、リカレント低速マヌーバを手動で定義しプログラミングするための手順が、複数の所定のマヌーバを学習し記憶装置に記憶すること、ユーザが記憶されたマヌーバの中から所望のマヌーバを選択する能力と共に、コード又は関連した識別カテゴリ(例えば、家での駐車、狭い路地の通過、高層駐車環状ランプ、料金所への接近など)によって認識することを含みうることは明らかである。
【0081】
記憶リカレント低速マヌーバは、また、自動車の移動方向を逆にするように適切に修正された到達地点から出発点に戻るための逆のマヌーバも含みうる。あるいは、逆の経路は、電子制御ユニットによって適切な処理により計算されうる。
【符号の説明】
【0082】
1 自動車自律運転システム
3 自動車搭載システム
4 自動車ユーザインタフェース
5 自動車電子制御ユニット(ECU)
6 自動車搭載通信ネットワーク