特許第6872638号(P6872638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6872638-対基板作業機 図000002
  • 特許6872638-対基板作業機 図000003
  • 特許6872638-対基板作業機 図000004
  • 特許6872638-対基板作業機 図000005
  • 特許6872638-対基板作業機 図000006
  • 特許6872638-対基板作業機 図000007
  • 特許6872638-対基板作業機 図000008
  • 特許6872638-対基板作業機 図000009
  • 特許6872638-対基板作業機 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872638
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】対基板作業機
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-559880(P2019-559880)
(86)(22)【出願日】2017年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2017045317
(87)【国際公開番号】WO2019123515
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2020年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】河口 浩二
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−043799(JP,A)
【文献】 特開2017−135311(JP,A)
【文献】 実開平03−035928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05K 13/04
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸着ノズルを保持可能である第1ヘッドおよび第2ヘッドを備え、前記第1ヘッドから前記第2ヘッドへ電子部品の受け渡しを行う装置であって、
制御部を備え、
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの少なくとも何れか一方は、前記複数の吸着ノズル間の相対位置が調整可能であり、
前記複数の吸着ノズル間の相対位置が調整可能である前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの少なくとも何れか一方は、前記複数の吸着ノズルの相対位置を調整する調整機構を備え、
前記制御部は、
前記第1ヘッドから前記第2ヘッドへ電子部品を受け渡させる第1処理と、
前記第1処理の前に、前記調整機構を備える前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの何れか一方の前記複数の吸着ノズルの位置が、前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの何れか他方の前記複数の吸着ノズルのうちの少なくとも一部の吸着ノズルの位置と一致するように該調整機構に調整させる第2処理と、を実行し、
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの各々は、円周上に前記複数の吸着ノズルを備え、
前記調整機構は、
前記複数の吸着ノズルの各々の位置の移動量を等しく一括で変更可能である対基板作業機。
【請求項2】
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの何れか一方は、先端に吸着ノズルを保持可能である自転可能なノズルホルダが円周上に等ピッチで複数配置された第1ロータリヘッドであり、
前記第1ヘッドおよび前記第2ヘッドの何れか他方は、前記第1ロータリヘッドの前記ノズルホルダが配置されている円周とは直径が異なる円周上に吸着ノズルが等ピッチで複数配置された第2ロータリヘッドであり、
前記第1ロータリヘッドの吸着ノズルの数と前記第2ロータリヘッドの吸着ノズルの数との最大公約数が2以上の自然数であり、
前記ノズルホルダは、自身の回転軸から偏心した位置に吸着ノズルを保持し、
前記制御部は、
前記第2処理において、前記第1ロータリヘッドの吸着ノズルが配置される円周の直径が、前記第2ロータリヘッドの吸着ノズルが配置される円周の直径と一致するように前記調整機構に前記ノズルホルダを回転させる請求項に記載の対基板作業機。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2処理において、前記調整機構に前記第1ロータリヘッドおよび前記第2ヘッドの何れか一方が備える前記ノズルホルダのすべてについて回転方向および回転角を等しく回転させる請求項に記載の対基板作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対基板作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイシングシートに貼付されたダイをピックアップする第1のヘッドと、該第1のヘッドからダイを受け取る第2のヘッドとを備える装置がある。具体的な構成として、例えば特許文献1には、8つの吸着取出ノズルが周縁部に配置された第1の回転盤(ロータリヘッド)および8つの吸着装填ノズルが周縁部に配置された第2の回転盤を備える装置が記載されている。第1のヘッドの吸着ノズルは、1つのダイを吸着した後反転する。その後、吸着ノズルは間欠回転され、受渡しステーションにて、第2のヘッドの吸着ノズルにダイを受け渡す。
【0003】
上記のように、特許文献1の装置は、第1のロータリヘッドから第2のロータリヘッドへダイを1個ずつ受け渡すものであるが、第1のロータリヘッドから第2のロータリヘッドへ複数のダイを一括して受け渡す装置もある。詳しくは、各ロータリヘッドにおいて吸着ノズルが配置される円周の直径を、2つのロータリヘッド間で一致させておき、複数の吸着ノズルの各々におけるダイの受け渡しを一括に行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−332468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の、一括して受け渡す装置では、2つのロータリヘッド間で吸着ノズルが配置される円周の直径が同じであることが必要となる。しかしながら、例えば、第2のロータリヘッドが装置に対して着脱可能であり、吸着ノズルが配置される円周の直径が互いに異なる種々の第2のロータリヘッドが用途に応じて交換可能に構成された装置もある。そこで、吸着ノズルが配置される円周の直径が2つのロータリヘッド間で互いに異なる場合にも、一括して受け渡すことができる装置が要請されていた。また、ロータリヘッドに限らず、複数の吸着ノズルを備える2つのヘッドで、複数の吸着ノズルの位置が互いに異なる場合に、ダイを一括して受け渡すことができる対基板作業機が要請されていた。
【0006】
本願は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、2つのヘッド間で吸着ノズルの位置が異なる場合にも、ダイを一括して受け渡すことができる対基板作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、複数の吸着ノズルを保持可能である第1ヘッドおよび第2ヘッドを備え、第1ヘッドから第2ヘッドへ電子部品の受け渡しを行う装置であって、制御部を備え、第1ヘッドおよび第2ヘッドの少なくとも何れか一方は、複数の吸着ノズル間の相対位置が調整可能であり、複数の吸着ノズル間の相対位置が調整可能である第1ヘッドおよび第2ヘッドの少なくとも何れか一方は、複数の吸着ノズルの相対位置を調整する調整機構を備え、制御部は、第1ヘッドから第2ヘッドへ電子部品を受け渡させる第1処理と、第1処理の前に、調整機構を備える第1ヘッドおよび第2ヘッドの何れか一方の複数の吸着ノズルの位置が、第1ヘッドおよび第2ヘッドの何れか他方の複数の吸着ノズルのうちの少なくとも一部の吸着ノズルの位置と一致するように調整機構に調整させる第2処理と、を実行し、第1ヘッドおよび第2ヘッドの各々は、円周上に複数の吸着ノズルを備え、調整機構は、複数の吸着ノズルの各々の位置の移動量を等しく一括で変更可能である対基板作業機を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1ヘッドと第2ヘッドとで、吸着ノズルの位置が互いに異なる場合であっても、調整機能により位置が一致するように調整することができるため、複数の電子部品を一括で受け渡すことができる対基板作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電子部品装着機の斜視図である。
図2】カバーを除いて示す電子部品装着機の平面図である。
図3】ピックアップヘッドの構造を示す左右方向から視た模式図である。
図4】ピックアップヘッドのノズルホルダおよび吸着ノズルの配置を示す平面図である。
図5】装着ヘッドのノズルホルダおよび吸着ノズルの配置を示す平面図である。
図6】電子部品装着機の制御系統を示すブロック図である。
図7】回転角度を説明する図である。
図8】(A)は調整前の吸着ノズル位置を示す図であり、(B)は調整後の吸着ノズル位置を示す図である。
図9】装着作業処理のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電子部品装着機の構成
図1に示すように、電子部品装着機10は、本体部11、ダイ供給装置30、フラックス供給装置26、および操作装置180を備えている。以下の説明には、図1に示す方向を用いる。電子部品装着機10の幅方向がX軸方向であり、X方向に直角な水平の方向をY軸方向である。電子部品装着機10は、例えばプリント基板などの基板に対してダイを装着する作業を実施する。
【0011】
本体部11はベース46、デバイスパレット70およびカバー12などを有する。本体部11は略箱形状であり、ベース46の上方に、図2に示す搬送装置20、装着ヘッド移動装置22、装着ヘッド24、およびヘッドステーション29などを収納している。ベース46の前側下方には、ダイ供給装置30の一部が差し込まれる空間である収納部86(図2)が設けられている。本体部11の上面の一部にカバー12が取り付けられている。フラックス供給装置26は、ベース46に固定されたデバイスパレットに70の上方に固定されている。ダイ供給装置30はメインフレーム100およびウエハ収容装置102などを有する。ウエハ収容装置102の内部には、複数のウエハが、面がXY平面と略平行な状態にされて収納されている。ダイ供給装置30は、ウエハ収容装置102に収納された複数のウエハのうちの一枚を取り出し、メインフレーム100の上方に送り出す。操作装置180は、本体部11の前面に取り付けられている。作業者は、操作装置180の表示画面に表示された、例えば電子部品装着機10の動作状況などの情報を確認することができる。また、作業者は、電子部品装着機10に必要な操作や設定を操作装置180の操作スイッチを介して行うことができる。
【0012】
図2に示すように、ダイ供給装置30は、上記の構成の他に、ピックアップヘッド移動装置106、ピックアップヘッド105、ウエハ保持フレーム118、およびダイ突上装置(不図示)などをメインフレーム100の上方に有している。ダイ供給装置30は、ウエハ90が有するダイ92をピックアップし、ダイ92の基板への装着作業を行う装着ヘッド24へ渡す装置である。尚、ここでのウエハ90とは、ダイシングシート93が貼着された後ダイシングされたものであり、複数のダイ92がダイシングシート93に貼着された状態となったものをいうものとする。
【0013】
ピックアップヘッド移動装置106は、Y軸方向に延びるY軸方向ガイドレール134,134、X軸方向に延びるX軸方向ガイドレール135、およびクランプ146などを有する。Y軸方向ガイドレール134,134は対をなし、X軸方向に所定間隔離間されて配置されている。X軸方向ガイドレール135は、Y軸方向ガイドレール134,134の上に架け渡されている。X軸方向ガイドレール135は、Y軸方向ガイドレール134,134に案内されて、不図示の電磁モータを駆動源として、Y軸方向の任意の位置に移動する。X軸方向ガイドレール135にはスライダ138が取り付けられている。スライダ138はXY平面に略平行な回転軸(不図示)を有し、ピックアップヘッド105は、該回転軸を軸として回動可能に取り付けられている。スライダ138およびピックアップヘッド105は、不図示の電磁モータを駆動源として、X軸方向の任意の位置に移動する。
【0014】
ピックアップヘッド105は、ノズルホルダ162(図3)、吸着ノズル163(図3)、ノズル昇降装置(不図示)、および反転装置(不図示)を有する。ノズルホルダ162は、棒状であり、先端に吸着ノズル163を保持する。吸着ノズル163は、正負圧供給装置(不図示)から負圧が供給されることでダイ92を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持したダイ92を離脱する。以下の説明において、ピックアップヘッド105が、ダイ92を吸着保持することをピックアップと記載する場合がある。ノズル昇降装置は、ノズルホルダ162および吸着ノズル163を上下方向に昇降させる。反転装置は、ノズルホルダ162を上下方向に反転させる。尚、ピックアップヘッド105の詳細については後述する。
【0015】
図2に戻り、クランプ146は、ピックアップヘッド移動装置106のX軸方向ガイドレール135の前面に取り付けられている。クランプ146は、ウエハ収容装置102に収容されたウエハ90を把持するものである。ウエハ保持フレーム118は、メインフレーム100の上面に配設されている。ウエハ収容装置102に収納された複数のウエハ90のうち、クランプ146と上下方向の位置が同等とされたウエハ90がクランプ146により把持される。その後、X軸方向ガイドレール135が後方へ移動することにより、クランプ146により把持されたウエハ90が後方へ移動する。ウエハ保持フレーム118の上まで移動したウエハ90は、クランプ146による把持が解除され、ウエハ保持フレーム118に載置される。ウエハ保持フレーム118の上に載置されたウエハ90は、不図示の固定機構により固定される。ダイ突上装置はウエハ保持フレーム118の下方に配設されており、ピックアップヘッド105がダイ92を吸着保持する際に、下方からダイ92を押し上げる。
【0016】
搬送装置20は、コンベア装置40,42を有する。コンベア装置40,42は、X軸方向に延びるように所定間隔離間して配設されている。コンベア装置40,42の各々は、不図示の電磁モータを駆動源として基板をX軸方向に搬送する。
【0017】
装着ヘッド移動装置22は、ピックアップヘッド移動装置106と同様の構成を有している。装着ヘッド移動装置22は、Y軸方向に延びるY軸方向ガイドレール50,50およびX軸方向に延びるX軸方向ガイドレール52などを有している。Y軸方向ガイドレール50,50は対をなし、X軸方向に所定間隔離間して配置されている。X軸方向ガイドレール52は、Y軸方向ガイドレール50,50の上に架け渡されている。X軸方向ガイドレール52は、Y軸方向ガイドレール50,50に案内されてY軸方向の任意の位置に移動する。X軸方向ガイドレール52には、装着ヘッド24が取り付けられたスライダ54が取り付けられている。スライダ54および装着ヘッド24は、X軸方向の任意の位置に移動する。装着ヘッド24は、ノズルホルダ172(図5)、吸着ノズル173(図5)、およびノズル昇降装置(不図示)などを有する。ノズルホルダ172は、棒状であり、先端に吸着ノズル173を保持する。吸着ノズル173は、正負圧供給装置(不図示)により負圧を供給されてダイ92を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持したダイ92を離脱する。ノズル昇降装置は、ノズルホルダ172および吸着ノズル173を上下方向に昇降させる。
【0018】
フラックス供給装置26は、後方端部にフラックストレイ74を有する。フラックストレイ74には、フラックスが貯留されている。ヘッドステーション29は、搬送装置20とヘッドステーション29との間に配置されている。ヘッドステーション29には、替えの装着ヘッド24が収納されている。
【0019】
ここで、電子部品装着機10による装着作業の概要について説明する。
基板はコンベア装置40,42により所定の位置まで搬送され、基板保持装置(不図示)により固定される。一方、ウエハ90は、ダイ供給装置30によりメインフレーム100上に固定される。ウエハ90の1つのダイ92がダイ突上装置により上方へ突き上げられ、突き上げられたダイ92は、ピックアップヘッド105の吸着ノズル163により、吸着保持される。次に、ピックアップヘッド105が上下方向に反転される。これにより、ダイ92がピックアップヘッド105の上方に位置することになる。ピックアップヘッド105の上方に移動した装着ヘッド24は、ピックアップヘッド105からダイ92を受け取る。次に、装着ヘッド24はフラックストレイ74の上方に移動し、吸着ノズルが下降されて、ダイ92のバンプ(不図示)にフラックスが塗布される。次に、装着ヘッド24は、基板の装着位置まで移動し、吸着ノズルが下降され、基板にダイ92が装着される。
【0020】
次に、図3を用いて、ピックアップヘッド105について詳述する。尚、ピックアップヘッド105は12個のノズルホルダ162を有するが、図3では、2個のノズルホルダ162のみ示し、他は省略している。ピックアップヘッド105はロータリヘッドであり、上記の構成の他に、ヘッド保持部150および回転部160を有する。ヘッド保持部150は上記の回転軸に支持されて、スライダ54に取り付けられている。回転部160はヘッド保持部150に着脱可能に取り付けられている。反転装置は、不図示の電磁モータを備え、電磁モータを駆動源として、回転軸を軸にピックアップヘッド105を回動させ、上下方向に反転させる。
【0021】
ヘッド保持部150は、R軸モータ151、Q軸モータ152、R軸ギヤ153、Q軸ギヤ154、およびR軸155などを有する。R軸ギヤ153、Q軸ギヤ154、およびR軸155は、R軸線RLを回転軸とする。R軸ギヤ153は、R軸モータ151を駆動源としてR軸線RL回りに一方向に自転する。以下の説明において、R軸線RL回りに自転することを、回転すると記載する場合がある。円柱状のR軸155は、R軸ギヤ153に固定されており、R軸ギヤ153の回転に応じて、R軸線RL回りに回転する。Q軸ギヤ154は、Q軸モータ152を駆動源として、R軸ギヤ153とは独立してR軸線RL回りに一方向に回転する。
【0022】
回転部160は、ホルダ支持部161、ノズルホルダ162、吸着ノズル163、ホルダギヤ164、および円筒ギヤ165などを有する。円筒ギヤ165は、R軸155を挿通可能な円筒状であり、外周面にギヤを有する。また、円筒ギヤ165は、上端部でQ軸ギヤ154と係合可能となっている。ノズルホルダ162は下端部に吸着ノズル163が取り付けられている。ここで、吸着ノズル163は、ノズルホルダ162の中心軸であるQ軸線QLから偏心した位置に取り付けられている。ノズルホルダ162の上端部には、円筒ギヤ165と噛み合うホルダギヤ164が取り付けられている。これにより、ノズルホルダ162は、Q軸モータ152の駆動力がQ軸ギヤ154および円筒ギヤ165を介してノズルホルダ162に伝達され、Q軸線QL回りに回転することができる。ホルダ支持部161は底面を有する円筒状であり、ノズルホルダ162を保持する。また、R軸155の下端部とホルダ支持部161の底面部とが係合可能となっている。これにより、ホルダ支持部161およびノズルホルダ162は、R軸モータ151の駆動力がR軸ギヤ153およびR軸155を介して伝達され、R軸線RL回りに回転することができる。尚、R軸155の下端部とホルダ支持部161の底面部との係合が解除されることによって、回転部160がヘッド保持部150から取り外される。
【0023】
図4に示すように、ピックアップヘッド105には、R軸線RLと同心の円周上において等ピッチで12個のノズルホルダ162が保持されている。上記のように、吸着ノズル163は、Q軸線QLから偏心した位置に取り付けられている。また、全てのノズルホルダ162において、ノズルホルダ162がR軸線RL回りに回転した場合に、吸着ノズル163の位置が互いに重なるように、吸着ノズル163は取り付けられる。ここで、ノズルホルダ162が配置される円周を円周CF1と称する。また、吸着ノズル163が配置される円周をノズル円周NCと称する。また、円周CF1の直径は直径D1であり、Q軸線QLと吸着ノズル163との距離は距離OSであるものとする。尚、吸着ノズル163はQ軸線QLから偏心した位置に取り付けられているため、ノズルホルダ162のQ軸線QL回りの回転に応じて、ノズル円周NCの直径は変化する。
【0024】
尚、ピックアップヘッド105がダイ92をピックアップする際は、ノズルホルダ162は隣接するノズルホルダ162とR軸線RLとのなす角度毎に間欠回転される。また、ノズル昇降装置は、円周CF1上のノズルホルダ162が停止する位置の1つである昇降位置HPにあるノズルホルダ162を昇降させる。ピックアップヘッド105がダイ92をピックアップする際は、ノズルホルダ162のR軸線RL回りの間欠回転および昇降位置HPにあるノズルホルダ162の昇降が繰り替えされて、全てのノズルホルダ162におけるダイ92の吸着保持が実施される。ここで、ノズルホルダ162の円周CF1上における基準位置は決められている。ノズルホルダ162の1つが昇降位置HPに位置している状態が、ノズルホルダ162が基準位置にある状態である。また、吸着ノズル163の基準位置も決められている。ここでは、図4に示すように、R軸線RLとQ軸線QLとを結ぶ直線上の位置のうち、円周CF1の外側の方の位置が吸着ノズル163の基準位置であるものとする。
【0025】
装着ヘッド24もロータリヘッドであり、反転装置を有していないが、反転装置以外の構成はピックアップヘッド105と同様であるであるため、詳細な説明は適宜省略する。図5に示すように、装着ヘッド24は、24個のノズルホルダ172および吸着ノズル173を有する。装着ヘッド24は、R軸線RLと同心の円周上において等ピッチで24個のノズルホルダ172を保持している。吸着ノズル173は、Q軸線QLと同軸に取り付けられている。また、ノズル昇降装置は、昇降位置HPにて、ノズルホルダ172を昇降させる。ここでは、ピックアップヘッド105の昇降位置HPと装着ヘッド24の昇降位置HPとは、ダイ92の受け渡しの際にピックアップヘッド105のR軸線RLと装着ヘッド24のR軸線RLとの位置が上下方向に重なった場合、上下方向から視て同一直線上に位置するものとする。また、ノズルホルダ172が配置される円周を円周CF2と称し、円周CF2の直径は直径D2であるものとする。また、ここでは、ノズルホルダ172の1つが昇降位置HPに位置している状態が、ノズルホルダ172が基準位置にある状態であるものとする。円周CF2の直径D2は、破線で示す円周CF1の直径D1よりも小さい。詳しくは、直径D2と直径D1との関係は(D2=D1−OS×2)で示されるものとする。
【0026】
電子部品装着機の制御システム構成
次に、図6を用いて、電子部品装着機10の制御システムの構成について説明する。電子部品装着機10は、上記した構成の他に、制御装置200を備える。制御装置200は、CPU201、RAM202、ROM203、記憶部204などを有する。CPU201はROM203もしくは記憶部204に記憶されている後述する装着作業処理などの各種のプログラムを実行することによって、電気的に接続されている各部を制御する。ここで各部とはダイ供給装置30、搬送装置20、装着ヘッド移動装置22、装着ヘッド24などである。詳しくは、CPU201は、各部に命令し、各部は命令に応じた動作が完了すると、完了した旨の信号をCPU201へ出力する。RAM202はCPU201が各種の処理を実行するための主記憶装置として用いられる。記憶部204には、ヘッド種情報205が記憶されている。ヘッド種情報205は、装着ヘッド24の種類を示すヘッド種IDにノズルホルダ172の数および円周CF2の直径が対応付けられた情報である。上記では、24個のノズルホルダ172を備える装着ヘッド24について説明したが、電子部品装着機10は、種類の異なる装着ヘッド24を使用することができる。種類の異なる装着ヘッド24は、例えばノズルホルダ172の数、円周CF2の直径などが異なる。種類の異なる装着ヘッド24は、ヘッドステーション29に収納され、CPU201の制御により、適宜交換される。尚、ここでは、全ての装着ヘッド24について、吸着ノズル173の数とピックアップヘッド105の吸着ノズル163の数との最大公約数が2以上の自然数であるものとする。
【0027】
CPU201は、装着ヘッド24を交換すると、交換した装着ヘッド24のヘッド種IDについてヘッド種情報205を参照し、装着ヘッド24の直径D2とピックアップヘッド105の吸着ノズル173が基準位置にある場合のノズル円周NCの直径とが同じであるか否かを判断する。CPU201は、装着ヘッド24の直径D2と、ピックアップヘッド105のノズル円周NCの直径とが同じでないと判断すると、ノズル円周NCの直径が直径D2と同じとなる回転角度θqを算出する。ここで、回転角度θqは、図7に示すように、吸着ノズル163の基準位置に対するQ軸線QL回りの回転角度である。また、CPU201は、算出した回転角度θqだけ回転された吸着ノズル163とR軸線RLとを結ぶ線と、Q軸線QLとR軸線RLとを結ぶ線分とのなす角度である角度θrを算出する。尚、回転角度θqおよび角度θrは三角関数などにより求められる。
【0028】
図4,5に示した装着ヘッド24およびピックアップヘッド105の場合について、図8を用いて説明する。直径D1と直径D2とは、(D2=D1−OS×2)の関係があるため、回転角度θq=180°の場合に、ノズル円周NCの直径が円周CF2の円周と同じとなる。図8(A)に示すように、基準位置の場合には、ノズル円周NCの直径は円周CF2の直径よりも大きい。ここで、ノズルホルダ162をQ軸線QL回りに180°回転させると、ノズル円周NCの直径は円周CF2の円周と一致する。尚、回転角度θqが180°の場合には、角度θrは0°となる。つまり、受け渡しの際には、ノズルホルダ162を180°回転させることで、ピックアップヘッド105の吸着ノズル163の位置を装着ヘッド24の吸着ノズル173の位置に合わせることができる。また、ピックアップヘッド105の吸着ノズル163の数と装着ヘッド24の吸着ノズル173の数の最大公倍数は12である。このため、受け渡しの際には、ノズルホルダ162をQ軸線QL回りに180°回転させることで、12個のノズルホルダ162で一括してダイ92の受け渡しが可能となる。
【0029】
CPU201は、装着ヘッド24の直径D2と、ピックアップヘッド105の基準位置におけるノズル円周NCの直径とが同じであると判断した場合には、回転角度θqおよび角度θrをいずれも0°としてRAM202に記憶させる。一方、装着ヘッド24の直径D2とピックアップヘッド105の基準位置におけるノズル円周NCの直径とが同じでないと判断した場合には、CPU201は算出した回転角度θqおよび角度θrをRAM202に記憶させる。図4,5に示した装着ヘッド24およびピックアップヘッド105の場合には、回転角度θqは180°、角度θrは0°としてRAM202に記憶される。
【0030】
次に、図9を用いて、CPU201が実行する装着作業処理について、図4,5に示した装着ヘッド24およびピックアップヘッド105の場合を適宜例示して説明する。CPU201は、例えば操作装置180などを介して装着作業の開始指示を受け付けると、装着作業処理を開始する。まず、CPU201は、ピックアップヘッド105に12個のダイ92のピックアップを実施させる(S1)。次に、CPU201は、吸着ノズル163の角度調整が必要であるか否かを判断する(S3)。CPU201は、RAM202が記憶する回転角度θqが0°である場合には角度調整は必要でないと判断し、回転角度θqが0°でない場合には角度調整は必要であると判断する。角度調整は必要であると判断すると(S3:YES)、CPU201はピックアップヘッド105にノズルホルダ162をQ軸線QL回りに回転角度θqだけ回転させ、ホルダ支持部161およびノズルホルダ162をR軸線RL回りに角度(360°−θr)だけ回転させ(S5)、ステップS7へ進む。ここで、ノズルホルダ162をR軸線RL回りに回転させるのは、吸着ノズル163がQ軸線QL回りに回転されために、Q軸線QLとR軸線RLとを結ぶ線上からずれてしまった吸着ノズル163の位置を修正するためである。これにより、基準位置にある装着ヘッド24の吸着ノズル173に対して、ピックアップヘッド105の吸着ノズル163の位置が合い、12個のダイ92の受け渡しが可能となる。尚、角度θrが0°の場合には、R軸線RL回りの回転を省略する構成としても良い。また、隣接する吸着ノズル163とR軸線RLとのなす角度から角度θrを除した角度を回転させる構成としても良い。例えば、図4に示すピックアップヘッド105の隣接する吸着ノズル163とR軸線RLとのなす角度は30°であるので、角度θrが10°である場合には、20°だけホルダ支持部161およびノズルホルダ162をR軸線RL回りに回転させる構成としても良い。
【0031】
一方、角度調整は必要でないと判断すると(S3:NO)、装着ヘッド24の吸着ノズル173に対して、基準位置にあるピックアップヘッド105の吸着ノズル163の位置が既に合っているため、CPU201はステップS5をスキップし、ステップS7へ進む。ステップS7では、CPU201は、ピックアップヘッド105を反転させ、装着ヘッド24に12個のダイ92を一括で受け渡させる(S7)。次に、CPU201はピックアップヘッド105を次のピックアップに備えて反転させ、ピックアップヘッド105が基準位置であるか否かを判断する(S9)。CPU201は、ステップS5を実行していない場合には基準位置であると判断し、ステップS5を実行した場合には基準位置でないと判断する。ピックアップヘッド105が基準位置でないと判断すると(S9:NO)、CPU201は、ノズルホルダ162をR軸線RLおよびQ軸線QL回りに回転させ、ピックアップヘッド105を基準位置に戻し(S11)、ステップS13へ進む。一方、ピックアップヘッド105が基準位置であると判断すると(S9:YES)、CPU201は、ステップS11をスキップし、ステップS13へ進む。
【0032】
ステップS13では、CPU201は、装着ヘッド24にフラックス塗布作業を実施させ、基板へのダイ92装着作業を実施させる(S13)。次に、予め計画された数量の装着作業が終了したか否かを判断する(S15)。装着作業が終了したと判断すると(S15:YES)、CPU201は装着作業処理を終了する。一方、装着作業が終了していないと判断すると(S15:NO)、CPU201はステップS1へ戻り、装着作業が終了したと判断するまで、以降の処理を繰り返し実行する。
【0033】
尚、上記では、D2=D1−OS×2の関係にあり、回転角度θqが180°である場合を説明したが、これに限定されない。ピックアップヘッド105の吸着ノズル163のノズル円周NCの直径は(D1−OS×2)以上、(D1+OS×2)以下の範囲で可変であり、装着ヘッド24の吸着ノズル173の円周CF2の直径D2がこの範囲にあれば、回転角度θqにより、直径D2にノズル円周NCの直径を一致させることができる。また、ノズルホルダ162,172の数は上記に限定されない。ノズルホルダ162の数と172の数との最大公約数が2以上の自然数である場合に、少なくとも2つのノズルホルダ162,172の位置が重なるため、複数のダイ92を一括して受け渡すことができる。
【0034】
ここで、電子部品装着機10は対基板作業機の一例であり、ピックアップヘッド105は第1ヘッドおよび第1ロータリヘッドの一例であり、装着ヘッド24は第2ヘッドおよび第2ロータリヘッドの一例である。また、Q軸モータ152、Q軸ギヤ154、ホルダギヤ164、およびノズルホルダ162は、調整機構の一例である。また、CPU201は制御部の一例であり、装着作業処理のステップS7は第1処理の一例であり、ステップS5は第2処理の一例である。
【0035】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
ピックアップヘッド105は、ノズルホルダ162のQ軸線QLから偏心する位置に吸着ノズル163を有し、ノズルホルダ162のQ軸線QL回りの回転により、吸着ノズル163間の相対位置が調整される。これにより、ピックアップヘッド105と装着ヘッド24とで、吸着ノズル163,173の位置が互いに異なる場合であっても、調整機能により位置が一致するように調整することができるため、複数のダイ92を一括で受け渡すことができる。
【0036】
また、CPU201は、装着ヘッド24にダイ92を受け渡させる(S7)前に、ピックアップヘッド105に吸着ノズル163を回転させる(S5)。これにより、電子部品装着機10は、人の手を介さずに、一括で複数のダイ92を一括で受け渡すことができる。
【0037】
また、ピックアップヘッド105は、Q軸モータ152の駆動により、吸着ノズル163の各々の位置の移動量を等しく一括で変更可能である。これのより、複数の吸着ノズル163間の相対位置の調整を容易に行うことができる。
【0038】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記では、ピックアップヘッド105が吸着ノズル163をQ軸線QLから偏心した位置に備え、吸着ノズル163をQ軸線QL回りに回転させることで、複数の吸着ノズル163間の相対位置を調整可能である構成について説明した。これに限定されず、装着ヘッド24も同様の構成で、複数の吸着ノズル173間の相対位置が調整可能である構成としても良い。この構成の場合には、ダイ92の受け渡しの際に、ピックアップヘッド105のノズルホルダ162および装着ヘッド24のノズルホルダ172のどちらもQ軸線QL回りに回転させる構成としても良いし、何れか一方だけをQ軸線QL回りに回転させる構成としても良い。
【0039】
また、上記では、ステップS5において、CPU201はピックアップヘッド105にホルダ支持部161およびノズルホルダ162をR軸線RL回りに角度(360°−θq)だけ回転させると説明したが、これに限定されない。ピックアップヘッド105ではなく、装着ヘッド24をR軸線RL回りに回転させることにより、吸着ノズル163と吸着ノズル173との位置を合わせる構成としても良い。
【0040】
また、上記では、ピックアップヘッド105および装着ヘッド24はロータリヘッドであると説明したが、これに限定されない。ピックアップヘッド105および装着ヘッド24の少なくとも何れか一方が、R軸線RL回りの各吸着ノズルの回転が不可能である構成であっても良い。何れか一方がR軸線RL回りの回転が可能であれば、吸着ノズル163と吸着ノズル173との位置合わせをR軸線RL回りの回転により行うことが可能である。また、ピックアップヘッド105および装着ヘッド24の何れもR軸線RL回りの回転が不可能である場合であっても、回転角度θqが180°である場合には、R軸線RL回りの回転が行われなくても、ダイ92の一括受け渡しが可能である。
【0041】
また、上記では、CPU201は、装着ヘッド24を交換すると、都度、装着ヘッド24の直径D2とピックアップヘッド105の吸着ノズル173が基準位置にある場合のノズル円周NCの直径とが同じであるか否かを判断し、適宜、回転角度θqおよび角度θrを算出すると説明したが、これに限定されない。例えば、予め記憶部204が、装着ヘッド24のヘッド種IDに対応付けられた回転角度θqおよび角度θrの情報を記憶している構成としても良い。
【0042】
また、上記では、調整機構の一例として、吸着ノズル163がQ軸線QL回りに回転されることで、複数の吸着ノズル163間の相対位置が調整される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、吸着ノズル163の各々が、ノズルホルダ162が配置される円の径方向に移動可能な構成とし、吸着ノズル163の各々が該径方向に移動することにより、吸着ノズル163間の相対位置が調整される構成としても良い。この構成の場合、例えば、傘のように、R軸に設けられた固定点と各ノズルホルダとを結ぶ骨部材に、各ノズルホルダを回動可能に取り付け、全ての骨構造を一括に広げることで、全てのノズルホルダの相対位置を一括で調整する構成とすると良い。
【0043】
また、上記では、ノズルホルダが円周上に配置されたヘッドについて説明したが、これに限定されない。円周上にない、例えば、複数のノズルホルダがX方向に並ぶヘッド、ノズルホルダがX方向およびY方向にマトリクス状に並ぶヘッドにも適用することができる。この複数のノズルホルダが円周上にない構成の場合には、X方向およびY方向の少なくとも何れか一方方向にノズルホルダが可動である構成とし、ノズルホルダ間の間隔を調整する調整機構を備える構成とすれば良い。調整機構としては、例えばボールねじなどがある。
【符号の説明】
【0044】
10 電子部品装着機
24 装着ヘッド
105 ピックアップヘッド
152 Q軸モータ
154 Q軸ギヤ
162 ノズルホルダ
164 ホルダギヤ
201 CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9