(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カーボンブラックが、前記ゴムウエットマスターバッチ中のゴム成分100重量部に対して、20〜60重量部であることを特徴とする請求項1記載のゴムウエットマスターバッチの製造方法。
請求項1または2記載のゴムウエットマスターバッチの製造方法で得られたゴムウエットマスターバッチを用いて、乾式混合する工程(IV)を含むことを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法は、少なくともカーボンブラック、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として使用する。
【0015】
<カーボンブラック>
本発明のカーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量が105mL/100g以上230mL/100g以下であり、統計的厚さ比表面積が90m
2/g以上205m
2/g以下であり、前記ジブチルフタレート吸油量の値から前記統計的厚さ比表面積の値を引いた値が、15以上であることの条件を満たすカーボンブラックを含む。
【0016】
前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量が105mL/100g以上230mL/100g以下である。前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性および耐摩耗性を向上させる観点から、ジブチルフタレート吸油量が、107mL/100g以上であることが好ましく、115mL/100g以上であることがより好ましく、120mL/100g以上であることがさらに好ましく、そして、190mL/100g以下であることが好ましく、170mL/100g以下であることがより好ましく、150mL/100g以下であることがさらに好ましい。なお、前記ジブチルフタレート吸油量は、JIS K 6217−4:2008に準じて測定できる。
【0017】
前記カーボンブラックは、統計的厚さ比表面積が90m
2/g以上205m
2/g以下である。前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性および耐摩耗性を向上させる観点から、統計的厚さ比表面積が、91m
2/g以上であることが好ましく、95m
2/g以上であることがより好ましく、98m
2/g以上であることがさらに好ましく、そして、150m
2/g以下であることが好ましく、130m
2/g以下であることがより好ましく、115m
2/g以下であることがさらに好ましい。なお、前記統計的厚さ比表面積は、JIS K 6217−7:2013に準じて測定できる。
【0018】
前記カーボンブラックは、前記ジブチルフタレート吸油量の値から前記統計的厚さ比表面積の値を引いた値が、15以上である。前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性および耐摩耗性のバランスを良好にさせる観点から、前記ジブチルフタレート吸油量の値から前記統計的厚さ比表面積の値を引いた値が、20以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、35以上であることがさらに好ましい。なお、前記ジブチルフタレート吸油量の値から前記統計的厚さ比表面積の値を引いた値は、上限値として、例えば、140以下、100以下が例示される。
【0019】
前記カーボンブラックは、ゴムウエットマスターバッチ中のゴム成分100重量部に対して、20〜60重量部であることが好ましい。前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性および耐摩耗性を向上させる観点から、ゴムウエットマスターバッチ中のゴム成分100重量部に対して、30重量部以上であることが好ましく、40重量部以上であることがより好ましく、そして、55重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましい。
【0020】
<分散溶媒>
本発明の分散溶媒としては、特に水を使用することが好ましいが、例えば、有機溶媒を含有する水であってもよい。前記分散溶媒は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0021】
<ゴムラテックス溶液>
本発明のゴムラテックス溶液としては、天然ゴムラテックス溶液および合成ゴムラテックス溶液を使用することができる。
【0022】
前記天然ゴムラテックス溶液は、植物の代謝作用による天然の生産物であり、特に分散溶媒が水である、天然ゴム/水系のものが好ましい。前記天然ゴムラテックス中に含まれる天然ゴムの数平均分子量は、200万以上であることが好ましく、250万以上であることがより好ましい。前記天然ゴムラテックス溶液としては、濃縮ラテックス、フィールドラテックスといわれる新鮮ラテックスなど区別なく使用できる。前記合成ゴムラテックス溶液としては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムを乳化重合により製造したものが挙げられる。前記ゴムラテックス溶液は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0023】
<カーボンブラックの製造方法>
前記カーボンブラックの製造方法は、反応炉として、ガス流路の上流から下流方向に向かって、燃料燃焼帯域、原料炭化水素導入帯域および反応帯域が順次設けられたものを使用する。当該方法は、前記燃料燃焼帯域に、酸素含有ガスと燃料を流入し混合燃焼させることで高温燃焼ガスを発生させ、次いで、前記原料炭化水素導入帯域に高温燃焼ガスと原料炭化水素を導入することでカーボンブラック含有ガスを発生させた後、冷却液などにより反応を停止させる方法である。このような反応炉としては、例えば、
図1に模式的に示すような広径円筒反応炉を挙げることができ、例えば、特開2017−145359号公報、特開2011−162596号公報などに開示のカーボンブラックの製造方法が参考となる。以下、前記カーボンブラックの製造方法を、
図1に示す反応炉を適宜例にとって説明する。
【0024】
図1に示す反応炉には、炉内に形成されたガス流路の上流から下流方向に向かって連通する、燃料燃焼帯域A、原料炭化水素導入帯域E、および反応帯域Fが順次設けられている。
【0025】
図1に示す反応炉において、前記燃料燃焼帯域Aは、炉軸方向に空気等の酸素含有ガスを導入する酸素含有ガス導入口Cと、炉軸方向に燃料を供給する燃焼用バーナーBとを備えている。また、前記原料炭化水素導入帯域Eは、炉軸方向に原料炭化水素を供給する原料導入ノズルDを備え、前記燃料燃焼帯域Aと同軸的に連通して設けられている。また、前記反応帯域Fに同軸的に連通して反応停止帯域も設けられており、同反応停止帯域には、炉軸方向に冷却液を噴霧する冷却液導入ノズルGが設けられている。
【0026】
前記燃料燃焼帯域Aでは、酸素含有ガスと燃料を導入し混合燃焼させて、高温燃焼ガス流を発生させる。前記酸素含有ガスとしては、例えば、酸素、空気またはこれらの混合物からなるガスなどが挙げられ、また、前記燃料としては、例えば、水素、一酸化炭素、天然ガス、石油ガス、FCC残渣油;重油などの石油系液体燃料;クレオソート油などの石炭系液体燃料;などが挙げられる。
【0027】
前記燃料燃焼帯域Aにおいて、前記酸素含有ガスの供給量は、1500kg/h〜3000kg/h程度であることが好ましく、1600kg/h〜2000kg/h程度であることがより好ましく、1700kg/h〜1900kg/h程度であることがさらに好ましい。また、前記燃料燃焼帯域Aにおいて、前記燃料の供給量は、50kg/h〜400kg/h程度であることが好ましく、100kg/h〜300kg/h程度であることがより好ましく、150kg/h〜200kg/h程度であることがさらに好ましい。前記燃料燃焼帯域Aにおいては、例えば、500℃〜800℃程度(好ましくは、600℃〜700℃程度)に予熱した前記酸素含有ガスを供給しつつ前記燃料を供給することにより、両者を混合燃焼させて前記高温燃焼ガス流を発生させることができる。
【0028】
前記カーボンブラックの製造方法は、前記高温燃焼ガス流を、原料炭化水素導入帯域Eに導入しつつ、当該原料炭化水素導入帯域Eに原料導入ノズルDから原料炭化水素を導入する。
【0029】
前記原料炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素;クレオソート油、カルボン酸油などの石炭系炭化水素;エチレンヘビーエンドオイル、FCC残渣油などの石油系重質油;アセチレン系不飽和炭化水素、エチレン系炭化水素、ペンタンやヘキサンなどの脂肪族飽和炭化水素などが挙げられる。また、前記原料導入ノズルDとしては、例えば、一流体ノズルが挙げられる。
【0030】
前記原料炭化水素の導入量は、50kg/h〜1000kg/h程度であることが好ましく、100kg/h〜500kg/h程度であることがより好ましく、250kg/h〜380kg/h程度であることがさらに好ましい。
【0031】
前記カーボンブラックの製造方法は、前記反応帯域Fで発生した、高温燃焼ガス中に浮遊懸濁したカーボンブラック粒子(カーボンブラック含有ガス)が、反応停止帯域に導入され、冷却液が噴霧される。前記冷却液としては水などを挙げることができ、冷却液を噴霧することにより、前記カーボンブラック含有ガスが冷却される。前記冷却液の噴霧は、例えば、
図1に示す冷却液導入ノズルGから冷却液を噴霧することにより行うことができる。
【0032】
また、前記高温燃焼ガス流と前記原料炭化水素が初期接触した後から、前記反応停止帯域における冷却液導入ノズルGで冷却されるまでに経過した時間(以下、滞留時間ともいう)は、0.001sec〜0.01sec程度であることが好ましく、0.002sec〜0.005sec程度であることがより好ましい。
【0033】
また、反応域帯Fから冷却液導入ノズルGへ達した時間における平均温度(以下、反応温度ともいう)は、1200℃〜2000℃程度であることが好ましく、1400℃〜1900℃程度であることがより好ましく、1500℃〜1700℃程度であることがさらに好ましい。
【0034】
また、原料炭化水素導入域帯Eから反応域帯Fへ達した時間における、平均温度(以下、滞留温度ともいう)は、1000℃〜1800℃程度であることが好ましく、1100℃〜1600℃程度であることがより好ましく、1200℃〜1300℃程度であることがより好ましい。
【0035】
前記冷却液にて冷却されたカーボンブラック粒子は、煙道Hなどを経て、サイクロンやバッグフィルターなどの捕集系(分離捕集装置)により分離捕集することにより、目的とするカーボンブラックを回収することができる。
【0036】
<ゴムウエットマスターバッチの製造方法>
以下に、本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法について具体的に説明する。かかる製造方法は、前記カーボンブラック、前記分散溶媒、および前記ゴムラテックス溶液を混合して、カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(I)と、得られたカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を凝固して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する工程(II)と、得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を乾燥してゴムウエットマスターバッチを製造する工程(III)を含む。
【0037】
<工程(I)>
本発明の工程(I)では、前記カーボンブラック、前記分散溶媒、および前記ゴムラテックス溶液を混合して、カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する。特に、本発明においては、前記工程(I)が、前記カーボンブラックを前記分散溶媒中に分散させて、カーボンブラック含有スラリー溶液(以下、スラリー溶液ともいう)を製造する工程(I−a1)と、得られたカーボンブラック含有スラリー溶液と、前記ゴムラテックス溶液とを混合して、カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(I−b1)を含むことが好ましい。また、本発明においては、前記工程(I)が、前記カーボンブラックを前記分散溶媒中に分散させる際に、前記ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液を製造する工程(I−a2)と、得られたゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液と、残りの前記ゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(I−b2)を含むことがより好ましい。
【0038】
<工程(I−a1)>
前記工程(I−a1)において、カーボンブラックおよび分散溶媒を混合する方法としては、例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用してカーボンブラックを分散させる方法が挙げられる。
【0039】
前記「高せん断ミキサー」とは、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターと、の間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高せん断作用が働くミキサーを意味する。このような高せん断作用を生み出すためには、ローターとステーターとのクリアランスを0.8mm以下とし、ローターの周速を5m/s以上とすることが好ましい。このような高せん断ミキサーは、市販品を使用することができ、例えば、SILVERSON社製「ハイシアーミキサー」が挙げられる。
【0040】
<工程(I−a2)>
前記工程(I−a2)では、カーボンブラックを分散溶媒中に分散させる際に、ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液を製造する。ゴムラテックス溶液は、あらかじめ分散溶媒と混合した後、カーボンブラックを添加し、分散させても良い。また、分散溶媒中にカーボンブラックを添加し、次いで所定の添加速度で、ゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中でカーボンブラックを分散させても良く、あるいは分散溶媒中にカーボンブラックを添加し、次いで何回かに分けて一定量のゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中でカーボンブラックを分散させても良い。ゴムラテックス溶液が存在する状態で、分散溶媒中にカーボンブラックを分散させることにより、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液を製造することができる。工程(I−a2)におけるゴムラテックス溶液の添加量としては、使用するゴムラテックス溶液の全量(工程(I−a2)および工程(I−b2)で添加する全量)に対して、0.075〜12重量%が例示される。
【0041】
前記工程(I−a2)では、添加するゴムラテックス溶液のゴム固形分の量が、カーボンブラックとの重量比で0.25〜15%であることが好ましく、0.5〜6%であることが好ましい。また、添加するゴムラテックス溶液中のゴム固形分の濃度が、0.2〜5重量%であることが好ましく、0.5〜1.5重量%であることがより好ましい。これらの場合、ゴムラテックス粒子をカーボンブラックに確実に付着させつつ、カーボンブラックの分散度合いを高めたゴムウエットマスターバッチを製造することができる。
【0042】
前記工程(I−a2)において、ゴムラテックス溶液存在下でカーボンブラックおよび分散溶媒を混合する方法としては、上述したカーボンブラックおよび分散溶媒を混合する方法と同様の方法が挙げられる。
【0043】
<工程(I−b1)>
本発明の工程(I−b1)では、前記スラリー溶液と、ゴムラテックス溶液とを混合して、カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する。スラリー溶液と、ゴムラテックス溶液とを液相で混合する方法は特に限定されるものではなく、スラリー溶液およびゴムラテックス溶液とを、例えば、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機や円筒状容器内でブレードが回転する混合機を使用して混合する方法が挙げられる。必要に応じて、混合の際に分散機などの混合系全体を加温してもよい。
【0044】
前記ゴムラテックス溶液は、後述する工程(III)での脱水時間・労力を考慮した場合、具体的には、ゴム固形分の濃度が10〜60重量%であることが好ましく、20〜30重量%であることがより好ましい。
【0045】
<工程(I−b2)>
前記工程(I−b2)では、前記ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液と、残りのゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造する。前記ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液と、残りのゴムラテックス溶液とを液相で混合する方法は、上述した、スラリー溶液と、ゴムラテックス溶液とを液相で混合する方法と同様の方法が挙げられる。
【0046】
前記残りのゴムラテックス溶液は、後述する工程(III)での脱水時間・労力を考慮した場合、工程(I−a2)で添加したゴムラテックス溶液よりもゴム固形分の濃度が高いことが好ましく、具体的には、ゴム固形分の濃度が10〜60重量%であることが好ましく、20〜30重量%であることがより好ましい。
【0047】
なお、前記工程(I)では、カーボンブラックの分散性向上のために界面活性剤を添加しても良い。前記界面活性剤としては、ゴム業界において公知の界面活性剤を使用することができ、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤などが挙げられる。また、前記界面活性剤に代えて、あるいは前記界面活性剤に加えて、エタノールなどのアルコールを使用しても良い。ただし、前記界面活性剤を使用した場合、最終的な加硫ゴムのゴム物性が低下することが懸念されるため、前記界面活性剤の配合量は、前記ゴムラテックス溶液のゴム固形分量100重量部に対して、2重量部以下であることが好ましく、1重量部以下であることがより好ましく、実質的に前記界面活性剤を使用しないことが好ましい。
【0048】
<工程(II)>
本発明の工程(II)では、上記で得られたカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を凝固して、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造する。
【0049】
前記凝固の方法としては、前記カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液中に、凝固剤を含有させる方法が挙げられる。前記凝固剤としては、ゴムラテックス溶液の凝固用として通常使用される、ギ酸、硫酸などの酸;塩化ナトリウムなどの塩;などを使用することができる。
【0050】
<工程(III)>
本発明の工程(III)では、上記で得られたカーボンブラック含有ゴム凝固物を脱水・乾燥して、ゴムウエットマスターバッチを製造する。前記脱水・乾燥の方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、スクリュープレス、オーブン、コンベアー乾燥機、真空乾燥機、エアードライヤーなどの各種乾燥装置を使用することができる。なお、工程(III)の前に、必要に応じて、カーボンブラック含有ゴム凝固物が含む水分量を適度に低減する目的として、例えば、遠心分離工程や振動スクリーンを使用した固液分離工程を設けてもよく、あるいは、洗浄を目的として、水洗法などの洗浄工程などを設けてもよい。
【0051】
<工程(IV)>
本発明のゴム組成物の製造方法は、上記のゴムウエットマスターバッチの製造方法で得られたゴムウエットマスターバッチを用いて、乾式混合する工程(IV)を含む。
【0052】
前記工程(IV)では、さらに、各種配合剤を用いることができる。使用可能な配合剤としては、例えば、ゴム、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤が挙げられる。
【0053】
前記ゴムは、前記ゴムウエットマスターバッチ由来のゴム成分とは別に使用されるものである。前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0054】
前記カーボンブラックは、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、20〜60重量部であることが好ましい。前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性および耐摩耗性を向上させる観点から、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、30重量部以上であることが好ましく、40重量部以上であることがより好ましく、そして、55重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましい。
【0055】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0056】
前記硫黄の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して0.3〜6.5重量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3重量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5重量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1.0〜5.5重量部であることがより好ましい。
【0057】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0058】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0059】
前記老化防止剤としては、通常のゴム用老化防止剤であればよく、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0060】
前記老化防止剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0061】
前記工程(IV)において、前記ゴムウエットマスターバッチ、および前記各種配合剤の配合(添加)の方法は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練する方法が挙げられる。
【0062】
前記混練する方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。また、混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。なお、混練機の排出温度は、前記加硫系成分を含む場合、80〜110℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。
【0063】
本発明のゴムウエットマスターバッチの製造方法、あるいはゴム組成物の製造方法によれば、低発熱性および耐摩耗性を有する加硫ゴムが得られる。また、本発明のゴムウエットマスターバッチおよびゴム組成物は、空気入りタイヤに適している。
【実施例】
【0064】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0065】
<合成例>
<カーボンブラック1、2の製造>
上述した広径円筒反応炉を用い、表1に記載の製造条件にて、カーボンブラック1、2を合成して得る。
【0066】
<比較合成例>
<カーボンブラックA〜Fの製造>
上述した広径円筒反応炉を用い、表1に記載の製造条件にて、カーボンブラックA〜Fを合成して得る。
【0067】
【表1】
【0068】
<カーボンブラックの特性分析>
<ジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)の評価>
ジブチルフタレート吸油量は、上記の合成例および比較合成例で得られるカーボンブラックを、JIS K 6217−4:2008に準じて求めた。結果を表2に示す。
【0069】
<統計的厚さ比表面積(STSA)の評価>
ジブチルフタレート吸油量は、上記の合成例および比較合成例で得られるカーボンブラックを、JIS K 6217−7:2013に準じて求めた。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
なお、表2中、カーボンブラックAは、東海カーボン社製「シースト7HM(N234)」;
カーボンブラックBは、東海カーボン社製「シーストKH(N339)」;を示す。
【0072】
(カーボンブラック以外の使用原料)
a)天然ゴムラテックス溶液:「NRフィールドラテックス」(Golden Hope社製)(DRC=31.2%)
b)天然ゴム:「RSS#3」
c)酸化亜鉛:「亜鉛華1号」(三井金属鉱業社製)
d)ステアリン酸:「ルナックS20」(花王社製)
e)老化防止剤(A):N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、「ノクラック6C」(大内新興化学工業社製)
f)老化防止剤(B):p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、「ノクラック224」(大内新興化学工業社製)
g)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
h)加硫促進剤(A):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、「サンセラーCM−G」(三新化学工業社製)
i)加硫促進剤(B):1,3-ジフェニルグアニジン、「ノクセラーD」(大内新興化学社製)
【0073】
<実施例1、3および4>
<工程(I):カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液の製造>
天然ゴムラテックス溶液に水を加え、濃度0.5重量%ゴム希薄ラテックス水溶液を調製した。得られたゴム希薄ラテックス水溶液に、上記のカーボンブラック1を45重量部(ラテックス溶液の固形分量(ゴム量)が、カーボンブラックとの重量比で1重量部)添加し、これにPRIMIX社製ロボミックスを使用してカーボンブラックを分散させることにより(該ロボミックスの条件:9000rpm、30分)、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液を製造した(工程(I−a2))。次に、工程(I−a2)で製造したゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液に、残りのゴムラテックス溶液(25重量%)を、工程(I−a2)で使用したゴム希薄ラテックス水溶液と合わせて、固形分(ゴム)量が100重量部となるように添加し、次いでSANYO社製家庭用ミキサーSM−L56型を使用して混合し(ミキサー条件11300rpm、30分)、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液を製造した(工程(I−b2))。
【0074】
<工程(II):カーボンブラック含有ゴム凝固物の製造>
上記の工程(I)で製造したゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液に、凝固剤として、ギ酸(10%溶液)を溶液全体がpH4となるまで添加し、カーボンブラック含有ゴム凝固物を製造した(工程(II))。
【0075】
<工程(III):ゴムウエットマスターバッチの製造>
上記の工程(II)で製造したカーボンブラック含有ゴム凝固物を、スクイザー式1軸押出脱水機(スエヒロEPM社製V−02型)で水分率が1.5%以下になるまで脱水および乾燥することにより、ゴムウエットマスターバッチを製造した(工程(III))。
【0076】
<工程(IV):ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
上記で得られたゴムウエットマスターバッチと、表3に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表3に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表3中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0077】
<実施例2>
実施例1の<工程(I):カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液の製造>において、使用するカーボンブラックを、表3に示す種類に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2のゴムウエットマスターバッチ、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。
【0078】
<比較例1〜8>
表3に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、比較例1〜8のゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表3に記載の硫黄、加硫促進剤(A)および加硫促進剤(B)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)することにより、比較例1〜8の未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表3中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0079】
<比較例9〜16>
実施例1の<工程(I):カーボンブラック含有ゴムラテックス溶液の製造>において、使用するカーボンブラックを、表3に示す種類に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例9〜16のゴムウエットマスターバッチ、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。
【0080】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0081】
<発熱性の評価>
発熱性の評価は、JIS K6394に準じて、(株)東洋精機製作所製の粘弾性試験機を用い、静歪み(初期歪み)10%、動歪み1%、周波数10Hz、温度60℃の条件下で、損失正接tanδを測定し、実施例1は比較例1の値を100とした指数、実施例2は比較例2の値を100とした指数、比較例9は比較例3の値を100とした指数、比較例10は比較例4の値を100とした指数、比較例11は比較例5の値を100とした指数、比較例12は比較例6の値を100とした指数、比較例13は比較例7の値を100とした指数、比較例14は比較例8の値を100とした指数、実施例3は比較例15の値を100とした指数、実施例4は比較例16の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど、発熱し難く、低発熱性に優れるため、タイヤとしての低燃費性能に優れることを示す。
【0082】
<耐摩耗性の評価>
耐摩耗性の評価は、得られた加硫ゴムの試験片において、JIS K6264に準拠して、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重29.4N、スリップ率20%、温度23℃、落砂量20g/分で摩耗減量を測定し、摩耗減量の逆数について、実施例1は比較例1の値を100とした指数、実施例2は比較例2の値を100とした指数、比較例9は比較例3の値を100とした指数、比較例10は比較例4の値を100とした指数、比較例11は比較例5の値を100とした指数、比較例12は比較例6の値を100とした指数、比較例13は比較例7の値を100とした指数、比較例14は比較例8の値を100とした指数、実施例3は比較例15の値を100とした指数、実施例4は比較例16の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、摩耗減量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】