特許第6872641号(P6872641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872641
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】制御可能な緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20210510BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F16F9/46
   F16F9/34
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-564406(P2019-564406)
(86)(22)【出願日】2018年5月2日
(65)【公表番号】特表2020-521090(P2020-521090A)
(43)【公表日】2020年7月16日
(86)【国際出願番号】EP2018061133
(87)【国際公開番号】WO2018215176
(87)【国際公開日】20181129
【審査請求日】2019年11月29日
(31)【優先権主張番号】102017111157.3
(32)【優先日】2017年5月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513099832
【氏名又は名称】ケンドリオン (ビリンゲン) ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KENDRION (Villingen) GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ベルクフェルト、ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ツェラノ、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブランデンブルク、ホルガー
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−070354(JP,A)
【文献】 特開2015−200404(JP,A)
【文献】 特開2016−070430(JP,A)
【文献】 特開2017−008970(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/066314(WO,A1)
【文献】 国際公開第93/008416(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/169529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/46
F16F 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のための制御可能な緩衝器(10)であって、作動シリンダ(20)内で往復運動可能なピストン(30)を備え、このピストンが前記作動シリンダ(20)を上側の作動室(40)(引張り室)と下側の作動室(50)(圧縮室)に分割し、前記両作動室(40、50)がそれぞれ圧力媒体管(52、54)を介して弁装置(100)に接続されており、この弁装置(100)が、
4個の逆止弁(110、112、114、116)を有するブリッジ回路を具備し、この逆止弁は通過方向が交差するように接続配置され、互いに反対向きに接続された2個の逆止弁(110、114)と第1ブリッジブランチの接続部が高圧室(120)を形成し、互いに反対向きの他の2個の逆止弁(112、116)と第2ブリッジブランチの接続部が低圧室(122)を形成し、
前記弁装置が、
前記低圧室(122)と前記高圧室(120)との間に配置された液圧主滑り弁(140)と、
第5逆止弁(132)を介して前記上側の作動室(40)(引張り室)に属する圧力媒体管(52)に接続されたパイロット室(130)と、
制御されるパイロット弁(160、460、560)と、を具備し、このパイロット弁を介して前記パイロット室(130)が前記低圧室(122)に接続され、前記パイロット室(130)がオリフィス(170)を介して前記高圧室(120)に接続されている、
制御可能な緩衝器(10)。
【請求項2】
前記第5逆止弁(132)と前記パイロット室(130)との間に、他のオリフィス(172)が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項3】
前記上側の作動室(40)(引張り室)に属する前記圧力媒体管(52)と前記第5逆止弁(132)との間に、他のオリフィス(172)が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項4】
前記オリフィス(170)と前記他のオリフィス(172)が異なる大きさに形成されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項5】
前記ブリッジ回路の4個の逆止弁(110、112、114、116)が調節可能なばね要素(124)を備えていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項6】
前記主滑り弁(140)と前記パイロット弁(160、460、560)がそれぞれ液圧制御管(144、182)を介して前記パイロット室(130)に接続されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項7】
前記下側の作動室(50)に接続された圧力媒体管(54)がボトム弁(190)に接続されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項8】
前記両圧力媒体管(52、54)の間に、吹出弁(200)が接続配置されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項9】
前記パイロット弁(460、560)が3/3比例弁として形成され、このパイロット弁(460、560)の出口と前記低圧室(122)との間に、他のオリフィス(466)又は他の逆止弁(464)が接続配置されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項10】
前記パイロット弁(560)が圧力媒体を流通可能な磁石(134)を備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項11】
前記磁石(134)が縦軸線(L)に沿って移動可能な突棒(566)を備え、この突棒の第1端部が閉鎖要素(574)を操作し、前記第1端部が前記低圧室(122)内に達し、第2端部が磁石室(576)内に達していることを特徴とする、請求項10に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項12】
前記突棒(566)が圧力媒体を流通可能な通路(572)を有し、この通路が前記低圧室(122)と前記磁石室(576)を流体接続していることを特徴とする、請求項11に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項13】
前記突棒(566)が円筒状に形成され、かつ第1直径(d1)を有し、
前記閉鎖要素(574)が前記第1直径(d1)とは異なる第2直径(d2)を有し、
前記突棒(566)の通路(572)が前記突棒(566)の第1端部でオリフィス(472)に接続され、かつ前記突棒(566)の第2端部でオリフィス(470)に接続され、前記オリフィス(470、472)の大きさが前記第1直径(d1)と前記第2直径(d2)に適合していることを特徴とする、請求項12に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項14】
自動車のための制御可能な緩衝器(10)であって、作動シリンダ(20)内で往復運動可能なピストン(30)を備え、このピストンが前記作動シリンダ(20)を上側の作動室(40)(引張り室)と下側の作動室(50)(圧縮室)に分割し、前記両作動室(40、50)がそれぞれ圧力媒体管(52、54)を介して弁装置(100)に接続され、この弁装置(100)が、
4個の逆止弁(110、112、114、116)を有するブリッジ回路を具備し、この逆止弁は通過方向が交差するように接続配置され、互いに反対向きに接続配置された2個の逆止弁(110、114)と第1ブリッジブランチの接続部が高圧室(120)を形成し、互いに反対向きの他の2個の逆止弁(112、116)と第2ブリッジブランチの接続部が低圧室(122)を形成し、前記弁装置が、
前記低圧室(122)と前記高圧室(120)との間に配置された液圧主滑り弁(140)と、
パイロット室(130)と、
制御されるパイロット弁(160、460、560)と、を具備し、このパイロット弁を介して前記パイロット室(130)が前記低圧室(122)に接続され、前記パイロット室(130)がオリフィス(170)を介して前記高圧室(120)に接続されている、制御可能な緩衝器(10)において、
前記パイロット弁(460、560)が3/3比例弁として形成され、このパイロット弁(460、560)の出口と前記低圧室(122)との間に、他のオリフィス(466)又は他の逆止弁(464)が接続配置されていることを特徴とする、
制御可能な緩衝器(10)。
【請求項15】
前記パイロット弁(560)が圧力媒体を流通可能な磁石(134)を備えていることを特徴とする、請求項14に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項16】
前記磁石(134)が縦軸線(L)に沿って移動可能な突棒(566)を備え、この突棒の第1端部が閉鎖要素(574)を操作し、前記第1端部が前記パイロット室(130)内に達し、第2端部が磁石室(576)内に達していることを特徴とする、請求項15に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項17】
前記突棒(566)が圧力媒体を流通可能な通路(572)を有し、前記通路が前記パイロット室(130)と前記磁石室(576)を流体接続していることを特徴とする、請求項16に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項18】
前記突棒(566)が円筒状に形成され、かつ第1直径(d1)を有し、
前記閉鎖要素(574)が前記第1直径とは異なる第2直径(d2)を有し、
前記突棒(566)の通路(572)が前記第1端部で前記パイロット室(130)に達し、前記突棒(576)の第2端部で前記他のオリフィス(472)に接続され、前記パイロット室(130)と前記高圧室(120)を接続する前記オリフィス(170)の大きさと、前記他のオリフィス(172)の大きさが前記第1直径(d1)と前記第2直径(d2)に適合していることを特徴とする、請求項16に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【請求項19】
前記弁装置(100)が前記ピストン(30)又は前記ピストン(30)のピストンロッド(32)或いはこの両方に組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の制御可能な緩衝器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動シリンダ内で往復運動可能なピストンを備え、このピストンが作動シリンダを上側の作動室(引張り室)と下側の作動室(圧縮室)に分割し、両作動室がそれぞれ圧力媒体管を介して弁装置に接続されている、特に自動車のための制御可能な緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような制御可能な緩衝器は例えば(特許文献1)から知られており、特に車両を必要に応じて走行ルートに適合させる目的で、自動車の減衰力制御のために使用される。これは自動車の制御回路で自発的に自動で行うことができる。しかしながら、運転者が減衰力変化を手動で調節することもできる。緩衝器の構造的な実施は通常、車体と車輪懸架装置の運動の検出と、発生した減衰力の方向が車体の運動と反対に向くような運動状態における大きな減衰力の選択とが可能になるように行われる。小さな減衰力は通常、減衰力と車両の車体運動が同じ向きになるように選択される。運転者は勿論、ここでは運転者にとって所望な減衰力を、自動車内で自ら手動で頻繁に調節することができる。そのために、(特許文献1)では、作動シリンダに接続された弁装置が2個の減衰要素を備えている。この減衰要素はそれぞれ流れ経路内で個別的に又は一緒に切換え可能であり、引張り減衰及び圧縮減衰のためにそれぞれ逆並列に接続配置された2個の逆止弁を備えている。その際、逆止弁は、第1減衰要素が引張り減衰中に高い減衰力を有し、圧縮減衰中に低い減衰力を有し、逆並列に接続配置された2つの逆止弁を有する他の減衰要素が引張り減衰中に低い減衰力を発生し、圧縮減衰中に高い減衰力を発生するように設計されている。しかし、このような緩衝器では、圧縮負荷と引張り負荷時に、異なる減衰特性曲線を2つだけしか発生することができない。
【0003】
(特許文献2)は制御可能な他の緩衝器を示している。そこに記載された、自動車の車輪懸架装置用の緩衝器は、弁装置を備えている。この弁装置は緩衝器シリンダ内に又は作動シリンダとして組み込まれている。この弁装置は減衰弁と呼ばれる2つの主滑り弁を備えている。この主滑り弁は往復切換え可能な切換え弁を介して接続されている。作動シリンダに接続された弁装置はさらに、複数の逆止弁を備えている。この公知の緩衝器構造の場合、2個の主滑り弁が使用され、それによって構造的に複雑であるという問題がある。
【0004】
他の緩衝器が、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)及び(特許文献)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許発明第3803888号明細書
【特許文献2】欧州特許第2470809号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0369862号明細書
【特許文献4】特開2009−115319号公報
【特許文献5】米国特許第5147018号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2016/0091044号明細書
【特許文献7】国際公開第2016/066314号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0016086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、公知の制御可能な緩衝器と比較して、主滑り弁を1個だけしか備えておらず、従って構造的に簡単であり、それによって低コストで製作可能である、特に自動車のための制御可能な緩衝器を提供することである。本発明に係る緩衝器はさらに、緩衝器の緩衝器特性の調節に関して高度のフレキシビリティを有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1及び14の特徴を有する制御可能な緩衝器によって達成される。
このような緩衝器の発展形態は従属請求項に記載されている。
本発明に係る制御可能な緩衝器は特に自動車において車輪懸架のために適しており、作動シリンダ(緩衝器管)内で往復運動可能なピストンを備え、このピストンは作動シリンダを上側の作動室(引張り室)と下側の作動室(圧縮室)に分割している。両作動室はそれぞれ圧力媒体管を介して弁装置に接続され、この弁装置は、
4個の逆止弁を有するブリッジ回路を具備し、この逆止弁は通過方向が交差するように接続配置され、互いに反対向きに接続された2個の逆止弁と第1ブリッジブランチの接続部が高圧室を形成し、互いに反対向きの2個の逆止弁と第2ブリッジブランチの接続部が低圧室を形成し、弁装置が、
低圧室と高圧室との間に配置された液圧主滑り弁と、
好ましくは第5逆止弁を介して上側の作動室(引張り室)に属する圧力媒体管に接続されたパイロット室と、
パイロット弁と、を具備し、このパイロット弁を介してパイロット室が低圧室に接続され、パイロット室がオリフィスを介して高圧室に接続されている。
【0008】
本発明の優れている点は実質的に、弁装置が制御されるパイロット弁、特に制御される電磁式パイロット弁に作用連結された主滑り弁を1個だけ備えていることにある。1個だけの液圧式主滑り弁を使用できるようにするために、本発明では4個の逆止弁のブリッジ回路が設けられている。この逆止弁は通過方向が交差するように接続配置されている。パイロット弁の制御、特に電気制御によって、作動シリンダ内でのピストンの引張り運動又は圧縮運動時に、いろいろな圧力特性を生じることができる。
【0009】
本発明では、パイロット室が第1オリフィスを介して高圧室に接続されている。パイロット室が第5逆止弁を介して、上側の作動室に属する圧力媒体室に接続されている場合には、好ましくは他のオリフィスが第5逆止弁とパイロット室との間に配置されている。代替的に、他のオリフィスが上側の作動室に属する圧力媒体管と第5逆止弁との間に配置されている。絞りのように作用する両オリフィスの大きさを選択することにより、パイロット室と高圧室の圧力差を調節することができ、それによって圧縮室と引張り室のための特性曲線を変更することができる。しかし、オリフィスは原理的には同じ大きさにすることができる。また、用途に応じて、異なる大きさのオリフィスを選択することができる。さらに、他のオリフィスを配置することにより、緩衝器の固有振動傾向を低減することができる。
【0010】
本発明の発展形態では、ブリッジ回路の4個の逆止弁が調節可能なばね要素、例えばばね板を備えている。このばね要素のばね力を調節することにより、それぞれの逆止弁がどのような圧力で開放するかを定めることができる。これにより、制御可能な緩衝器の緩衝状態の基本特性を定めることができる。
【0011】
本発明の他の発展形態では、主滑り弁とパイロット弁がそれぞれ液圧制御管を介してパイロット室に接続されている。この液圧制御管は、力のバランスに影響を与えるために、圧力をさらに供給する目的を有する。
【0012】
実施形態では本発明に従い、下側の作動室に接続された圧力媒体管がボトム弁に接続されている。さらに、両圧力媒体管の間に、それ自体知られているいわゆる吹出弁を接続配置することができる。その際、吹出弁は、緩衝器の達成可能な最大減衰力を調節する働きをする。そのために、吹出弁は例えば、それぞれ前に接続配置したオリフィスを有する逆並列に接続配置された2個の逆止弁からなっている。
【0013】
作動シリンダの底に組み込まれたボトム弁は、基本減衰を発生するという目的を有する。これによってさらに、全体システムを調和させることができる。
本発明の有利な実施形態では、パイロット弁が3/3比例弁として形成され、このパイロット弁の出口と低圧室との間に、第3オリフィスが接続配置されている。この第3オリフィスは安全機能を有する。すなわち、電磁パイロット弁の電流が突然停止すると、このオリフィスに基づいて、緩衝器は「中間の減衰特性曲線」の状態になる。その条件は、勿論この第3オリフィスの適切な採寸である。類似の安全機能は、オリフィスがオリフィス−逆止弁によって置き換えられているときに達成可能である。
【0014】
本発明の発展形態では、第4オリフィスが逆止弁に対して平行に、3/3比例パイロット弁の出口に設けられている。この手段により、緩衝器の減衰特性の行き過ぎが回避される。
【0015】
提案に係る緩衝器の発展形態では、パイロット弁が圧力媒体を通過可能な磁石を備えている。圧力媒体が磁石を通過可能であることに基づいて、特に圧力媒体が液体であるときに、動作中に発生する熱を磁石から良好に排出することができる。
【0016】
さらに進んだ発展形態では、磁石は縦軸線に沿って移動可能な突棒を備え、この突棒の第1端部が閉鎖要素を操作し、第1端部が低圧室内に達し、第2端部が磁石室内に達している。磁石とは、閉鎖要素の操作のために必要なすべてのユニット、例えば突棒、アーマチュア及びコイルであると理解される。磁石のユニットは実質的に磁石室内に配置される。突棒の両端がそれぞれ1つの他の室内に達するように、突棒が配置されていることにより、突棒に適切に作用する開閉力を発生するために、室の間の圧力差が有効利用される。これにより、突棒を動かすために磁石によって加えられる力が低減され、少なくとも一部が流体によって発生する力によって置き換え可能である。緩衝器のエネルギ消費がこのように低減される。さらに、パイロット弁の所定の開又は閉状態を調節するために、例えば所定の圧力差から開又は閉を調節するために、圧力差を利用することができる。
【0017】
発展形態では、突棒が圧力媒体を流通可能な通路を有し、この通路が低圧室と磁石室を流体接続している。通路によって、熱排出のための流れが可能になるだけでなく、磁石室の圧力と低圧室の圧力との間に所定の関係を作ることもできる。例えば通路の出口の配置と直径によって、パイロット弁の所定の開又は閉状態を調節するために、突棒に作用する開閉力に影響を与えることができる。
【0018】
進んだ発展形態では、突棒が円筒状に形成され、かつ第1直径を有し、閉鎖要素が第1直径と異なる第2直径を有し、突棒の通路が突棒の第1端部でオリフィスに及び/又は突棒の第2端部でオリフィスに接続されている。その際、1つ又は複数のオリフィスの大きさが第1直径及び/又は第2直径に適合している。構造的な理由から、突棒が閉鎖要素とは異なる他の直径を有することが絶対必要である。突棒を軸承するための軸受は所定の直径でのみ供され、しかし閉鎖要素はこれとは異なる直径を有する。この異なる直径に基づいて、圧力媒体と協働する面積がほとんどの場合異なっている。この面積から、閉鎖要素と突棒に作用する開閉力が生じる。面積が異なると、パイロット弁の不所望な開閉状態を生じ得る。例えば、パイロット弁が全く開放しないか又はパイロット弁を通る所定の流量から急に、従って制御できないように開放する動作状態が発生し得る。圧力媒体が通路に入る前に及び/又は出た後でオリフィスを通って流れなければならないことにより、オリフィスの大きさの選択によって、制御される開閉状態を調節することができ、特にパイロット弁が全く開放しないか又は制御できないように開放することが防止される。これから、語句「オリフィスに接続される」は特に流体接続として理解することができるので、1個又は複数のオリフィスは突棒の当該端部に作用する圧力、ひいては突棒に作用する開閉力に影響を及ぼすことができる。
【0019】
代替的な実施形態は、特に自動車のための制御可能な緩衝器に関し、この緩衝器は作動シリンダ内で往復運動可能なピストンを備え、このピストンは作動シリンダを上側の作動室(引張り室)と下側の作動室(圧縮室)に分割し、両作動室はそれぞれ圧力媒体管を介して弁装置に接続され、この弁装置は、
4個の逆止弁を有するブリッジ回路を具備し、この逆止弁は通過方向が交差するように接続配置され、互いに反対向きに接続配置された2個の逆止弁との第1ブリッジブランチの接続部が高圧室を形成し、互いに反対向きの他の2個の逆止弁との第2ブリッジブランチの接続部が低圧室を形成し、弁装置はさらに、
低圧室と高圧室との間に配置された液圧主滑り弁と、
パイロット室と、
制御されるパイロット弁と、を具備し、このパイロット弁を介してパイロット室が低圧室に接続され、パイロット室がオリフィスを介して高圧室に接続されている。
【0020】
この実施形態では、パイロット室は引張り室に属する圧力媒体管に直接接続されてはいない。しかし、上述の作用はこの実施形態でも同様に達成可能である。
発展する実施形態では、パイロット弁は圧力媒体が流れることができる磁石を備えている。圧力媒体が磁石を流通可能であることに基づいて、特に圧力媒体が液体であるときには、動作中発生する熱を磁石から良好に排出することができる。
【0021】
他の実施形態では、磁石は縦軸線に沿って移動可能な突棒を備え、この突棒の第1端部が閉鎖要素を操作し、第1端部がパイロット室内に達し、第2端部が磁石室内に達している。突棒の両端部がそれぞれ異なる室内に達するように、突棒が配置されていることにより、突棒に作用する開又は閉力を適切に発生するために、室の間の圧力差を利用することができる。これにより、突棒を動かすために磁石によって加えられる力が低減され、少なくとも一部が流体によって発生する力によって置き換え可能である。緩衝器のエネルギ消費がこのように低減される。さらに、パイロット弁の所定の開又は閉状態を調節するために、例えば所定の圧力差から開閉を調節するために、圧力差を利用することができる。
【0022】
進んだ発展形態では、突棒が圧力媒体を流通可能な通路を有し、パイロット室と磁石室を流体接続している。この場合、パイロット室は通路を介して圧力媒体回路に統合可能である。この実施形態では、制御される開閉状態が達成され、かつ緩衝器の固有振動傾向が低減されることがわかった。
【0023】
他の発展形態では、突棒が円筒状に形成され、かつ第1直径を有し、閉鎖要素が第1直径とは異なる第2直径を有する。突棒の通路は第1端部でパイロット室内に達し、突棒の第2端部で他のオリフィスに接続され、パイロット室と高圧室を接続するオリフィスの大きさと、他のオリフィスの大きさが第1直径と第2直径に適合している。この発展形態でも、制御される開閉状態が達成され、かつ緩衝器の固有振動傾向が低減される。
【0024】
次に、図に基づいて、本発明に係る制御可能な緩衝器を、複数の実施形態に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態に係る、減衰力制御のための弁装置を備えた制御可能な緩衝器の概略的な構造を示す。
図2】パイロット弁と弁装置のオリフィスの作用を説明するための、圧縮室の減衰特性曲線を示す、減衰力と流量のグラフである。
図3図2と同様の減衰力と流量のグラフであるが、引張り室に関するものである。
図4】制御可能な緩衝器の弁装置の第2の実施形態を示す。
図5】制御可能な緩衝器の第3の実施形態を示す。
図6】本発明に係る制御可能な緩衝器の第4の実施形態を示す。
図7】本発明に係る制御可能な緩衝器の第5の実施形態を示す。
図8】引張り動作中のパイロット弁の実施形態の原理図である。
図9引張り動作中の、図8に示したパイロット弁の実施形態を示す。
図10】本発明に係る制御可能な緩衝器の第の実施形態を示す。
図11圧縮動作中のパイロット弁の他の実施形態の原理図である。
図12】不適切なオリフィス選択の場合の引張り動作における、パイロット弁内の圧力状態を、パイロット弁を通る主流量に依存して示すグラフである。
図13】適切なオリフィス選択の場合の引張り動作における、パイロット弁内の圧力状態を、パイロット弁を通る主流量に依存して示すグラフである。
図14】不適切なオリフィス選択の場合の圧縮動作における、パイロット弁内の圧力状態を、パイロット弁を通る主流量に依存して示すグラフである。
図15】適切なオリフィス選択の場合の圧縮動作における、パイロット弁内の圧力状態を、パイロット弁を通る主流量に依存して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面において、特別に記載しない限り、同じ参照符号は、同じ意味を有する同じ部分を示す。
図1は、制御可能な緩衝器の実施形態を、その概略的な構造に基づいて示している。緩衝器は参照符号10で示してある。緩衝器は、走行時に車輪懸架装置の減衰、ひいては車両の減衰を調節するために、例えば自動車の車輪の車輪懸架装置に取付けられている。緩衝器10は以下において作動シリンダ20と呼ぶ緩衝器管を有する。この作動シリンダ20内において、ピストンロッド32に固定されたピストン30が往復運動可能である。その際、ピストン30は自動車の車輪懸架装置に連結されている。ピストン30の往復運動は図1において運動矢印34によって示してある。明らかなように、ピストン30は作動シリンダ20内において往復運動時に下方へ又は上方へ動くことができる。以下において、ピストン30の下方への運動をピストン30の圧縮と言い、上方への運動をピストンの引張りと言う。従って、ピストン30の下側に、「圧縮室」と呼ぶ作動室50があり、ピストン30の上側に第2作動室40がある。この第2作動室は参照符号40を付けられ、「引張り室」と呼ばれる。
【0027】
上側の作動室40(引張り室)と下側の作動室50(圧縮室)はそれぞれ、圧力媒体管52、54を備えている。この両圧力媒体管52、54には、次に詳細に説明する弁装置100が接続されている。簡単に示すために、図1では、弁装置100が作動シリンダ20の外に配置された弁装置として示してある。これは勿論、図示上の理由から選択されている。弁装置100全体は実際は緩衝器の鉢状に形成されたピストン30の中に装着されている。そのために、ピストン30は図1に概略的に示した穴36のみを有する。この穴を介して、ピストン30内の構造空間35が上側の作動室40(引張り室)に液圧的に接続されている。さらに、上側の作動室40(引張り室)と下側の作動室50(圧縮室)は、ピストン30の外周に周方向に延在する半径方向シール38を介して封止されている。従って、ピストン30の前側の端面は適切な開口部を介して下側の作動室50(圧縮室)に液圧的に接続されている。
【0028】
両圧力媒体管52、54に接続された弁装置100は、4個の逆止弁110、112、114、116を有するブリッジ回路を備えている。この逆止弁110、112、114、116はその通過方向が交差するように接続配置されている。この場合、互いに反対向きに接続された2個の逆止弁110、114と第1ブリッジブランチの接続部は高圧室120を形成し、互いに反対向きに接続された他の2個の逆止弁112、116と第2ブリッジブランチの接続部は低圧室122に通じている。図1に明瞭に示すように、第1逆止弁110と第4逆止弁116は下側の圧力媒体管54に接続され、従って下側の作動室50(圧縮室)に接続されている。第1逆止弁110は通過方向が下側の作動室50(圧縮室)に接続されている。それに対して、第4逆止弁116は遮断方向が下側の作動室50に接続されている。第2逆止弁112と第3逆止弁114は上側の圧力媒体管52に接続されている。この場合、第2逆止弁112は遮断方向が上側の作動室40(引張り室)に接続され、第3逆止弁114は通過方向が上側の作動室に接続されている。
【0029】
図1にさらに示すように、4個の逆止弁110、112、114、116に対して直列にそれぞれオリフィス111、113、115、117が設けられている。第1オリフィス111は第1逆止弁110と高圧室120との間にある。第2オリフィス113は圧力媒体管52と第2逆止弁112との間にある。第3オリフィス115は高圧室120と第3逆止弁114との間にある。第4オリフィス117は圧力媒体管54と第4逆止弁116との間にある。好ましくは、ブリッジ回路の4個の逆止弁110、112、114、116が調節可能なばね要素124を備えている。これにより、調節可能なばね要素124のばね力がどのように設計されているかに応じて、個々の逆止弁110、112、114、116の開放状態を予め調節して選定することができる。
【0030】
弁装置100はさらに、主滑り弁140と、制御可能なパイロット弁160と、パイロット圧力室又はパイロット室130を備えている。このパイロット弁は好ましくは、特に電磁石として形成された磁石134を有する、電気制御式の電磁パイロット弁160である。パイロット室130は第5逆止弁132を介して上側の圧力媒体管52に接続されている。この第5逆止弁132は、第3逆止弁114のように、通過方向が上側の作動室40(引張り室)に通じている。パイロット室130は第5オリフィス170を介して高圧室120に液圧的に接続されている。第6オリフィス172が第5逆止弁132とパイロット室130との間に接続配置されている。
【0031】
既に述べたパイロット弁160は低圧室122とパイロット室130との間で管150を介して接続されている。パイロット弁160は本実施形態では、比例動作する電気制御式の2/2電磁弁として形成されている。これは、このパイロット弁160の磁石134の通電に応じて、多少の流量が低圧室122とパイロット室130との間で管150を通過し得ることを意味する。パイロット弁160はばね装置161に抗して及びパイロット室130から来る圧力に抗して動作する。これは図1において、制御管182によって示してある。
【0032】
既に述べた主滑り弁140は同様に2/2弁であるが、専ら液圧で作動する弁である。この主滑り弁140は低圧室122と高圧室120を接続する。主滑り弁140は一方では、ばね装置142に抗して及び制御管144を経て来るパイロット室130の圧力に抗して動作する。主滑り弁140は他方では、その反対側で、高圧室120から来る制御管146によって影響を受ける。
【0033】
念のために述べると、図1に示した制御可能な緩衝器は、作動シリンダ20の底の範囲内にボトム弁190を付加的に備えている。このボトム弁190は緩衝器においてそれ自体知られており、下側の圧力媒体管54とタンク199との間に接続配置されている。そのために、ボトム弁190は例えば下側の圧力媒体管54とタンク199との間にオリフィス191を有する。このオリフィスは下側の圧力媒体管54に接続されている。このオリフィス191には、圧力媒体管54とは反対の側に、逆並列接続された2個の逆止弁192、193が設けられている。この場合さらに、他のオリフィス194が並列に接続配置されている。
【0034】
両圧力媒体管52、54の間には、それ自体知られているいわゆる吹出弁200が接続配置されている。この吹出弁200は、緩衝器の達成可能な最大減衰力を調節する働きをする。そのために、図示のように、吹出弁200は例えば逆並列接続された2個の逆止弁201、202からなっている。この逆止弁の前にはそれぞれオリフィス203、204が接続配置されている。
【0035】
図1の制御可能な緩衝器の作用は次の通りである。
先ず、ピストン30が上方に移動し、それによって作動室40(引張り室)が縮小することから出発する。この動作は以下において引張り動作と呼ぶ。これにより、作動室40(引張り室)内の圧力は、ピストン30がさらに移動するにつれて上昇する。圧力媒体管52内の圧力が上昇する。第2逆止弁112が遮断方向に配置されているので、この圧力は低圧室122には達しない。第3逆止弁114が通過方向に接続配置されているので、逆止弁114の調節可能なばね要素124のばね力に打ち勝つと、この逆止弁が開放し、圧力媒体管52の圧力が高圧室120に達する。付加的に、第5逆止弁132がパイロット室130に対して通過方向に配置されている。高圧室120とパイロット室130との間の接続に基づいて、オリフィス170、172を介して決定される圧力がパイロット室130内に生じる。この場合、低圧室122からパイロット弁160を経て来る圧力はパイロット室130内で背圧として作用する。電磁石134に適切に通電することにより、パイロット弁160を制御することができるので、最終的にパイロット室130内に生じる圧力はパイロット弁160の通電に依存して調節される。パイロット室130内で作用するこの圧力は、制御管144を経て主滑り弁140に供給される。それによって、パイロット室130内の圧力が主滑り弁140の位置に影響を及ぼす。これにより、パイロット弁160に適切に通電することにより、ピストン30の引張り負荷時に、緩衝器の緩衝器特性を調節することができる。
【0036】
ピストン30が反対向きに、すなわち下方へ移動すると(圧縮動作)、下側の圧力媒体管54内の圧力が上昇する。この場合、第4逆止弁116はその遮断位置にあり、第1逆止弁110は高圧室120に対して通過方向にある。この場合、高圧室120はオリフィス170を介してパイロット室130に接続され、上記と類似の作用メカニズムが圧縮負荷の場合に生じる。
【0037】
図2図3には、作動シリンダ20内のピストン30の引張り負荷又は圧縮負荷(引張り動作又は圧縮動作)の際の力と流量の特性曲線がパイロット弁160の通電に依存して示してある。図2は圧縮負荷の際の特性曲線を示し、図3は引張り負荷の際の特性曲線を示している。制御可能なパイロット弁160は本実施形態ではいわゆる常時開放弁として形成されている。これは、このパイロット弁160の電磁石134の非通電時に、弁が開放していることを意味する。この場合、低圧室122は絞られることなくパイロット室130に接続されている。従って、制御管144を経て主滑り弁140に案内される液圧の力は最小であり、それによって引張り負荷時に最小の減衰特性曲線が生じる。引張り負荷時のこの最小の減衰特性曲線は図2において最も下側の特性曲線である。これに対して、制御されるパイロット弁160が最も強く通電されると、パイロット弁160がほとんど閉鎖され、制御管144を経て最大圧力が主滑り弁140に生じる。その結果、圧縮負荷に関して図2の最大値max1を有する上側のカーブが生じる。通電の変更により、いろいろな特性曲線を生じることができる。
【0038】
同様なことが、引張り負荷時の図3の図示にも当てはまる。最も下側のカーブは、引張り負荷時の最も弱い減衰特性を示している。パイロット弁160が最も強く、例えば1.6Aで通電されると、上側の減衰変化が生じる(max2参照)。
【0039】
図2図3の両カーブの比較から、両特性曲線の最大減衰値が異なっていることが判る。これは弁装置100のオリフィス170、172の適切なオリフィス選択によって達成される。
【0040】
図4には、制御可能な緩衝器10の第2の実施形態が示してある。この第2の実施形態は大部分が図1の緩衝器と類似するように構成されている。次に、図1の実施形態との違いについてのみ説明する。
【0041】
図4の緩衝器は、パイロット弁の実施形態とこのパイロット弁の切換えが異なっている。パイロット弁は参照符号460を付けられている。このパイロット弁460は同様に電磁弁として形成されている。パイロット弁460は本実施形態では電気制御され、従って電磁石134を新たに備えている。パイロット弁460は図4において回路記号で示すように、比例動作する3/3弁として形成されている。低圧室122とパイロット弁460との間において、管150は2本の接続管に分割されている。この接続管の一方はオリフィス462を備え、並列に延在する他の接続管は他の部品を備えていない。図1の実施形態の場合のように、このパイロット弁460は同様に、ばね装置161に抗して及びパイロット室130から来る圧力に抗して作動する。この圧力は制御管182を経てばね装置161のばね力に対して平行に向けられている。パイロット弁460はこのばね装置のばね力に抗して作動する。オリフィス462の目的は、停電時に中間の減衰特性、すなわち中間の特性曲線(図2図3参照)を調節することである(フェイルセーフ)。中間の特性曲線はそれぞれ破線で示してある。
【0042】
図5は制御可能な緩衝器の他の変形を示している。パイロット弁460は、図4で設けられたオリフィス462の代わりに、他の逆止弁464を備えている。これにより、良好なフェイルセーフ特性曲線を発生することができる。
【0043】
図6は第4の実施形態を示す。この第4の実施形態の場合にも、図4図5に示した既知のパイロット弁460が使用されている。図5に示した逆止弁464と並列に他のオリフィス466が接続配置され、そして他のオリフィス468が逆止弁46と低圧室122との間に接続配置されている。最後に述べたオリフィス468は減衰オリフィスとしての働きをする。
【0044】
図7には、制御可能な緩衝器10の第5の実施形態が示してある。この第5の実施形態は大部分が第4の実施形態に一致している。第5の実施形態に係る緩衝器10は特に、異なるように構成されたパイロット弁560を備えている。このパイロット弁の場合、圧力媒体が電磁石134を流通できるように形成されている。そのために、制御管184が圧力媒体管52から分岐し、電磁石134へ延びている。制御管184内にはオリフィス470が配置されている。制御管184を経て電磁石134に作用する圧力がこのオリフィスによって調節可能である。
【0045】
さらに、電磁石134と低圧室122との間に他の制御管186が延在している。この制御管186内にはオリフィス472が配置されている。
図8図9には、パイロット弁560の構造が原理的な図で詳細に示してある。パイロット弁560は通電可能なコイル562を備えている。このコイルによって、アーマチュア564をパイロット弁560の縦軸線Lに沿って移動させることができる。アーマチュア564には、時として軸とも呼ぶ突棒566が固定連結されているので、突棒566はアーマチュア564と同じ運動をする。アーマチュア564と突棒566が縦軸線Lに沿って移動することができるようにするために、第1軸受568と第2軸受570が設けられている。この軸受は例えば滑り軸受として形成可能である。制御管184と制御管186との間で流体接続を行うことができるようにするために、突棒566は通路572を有する。第1軸受568と第2軸受570も、制御管184と制御管186との間で流体接続を行うことができるようにするように形成可能である。突棒566は閉鎖要素574と協働する。この閉鎖要素は主滑り弁140の一部である。閉鎖要素574によって、パイロット室130と低圧室122との間の管150を開閉することができる。図示した例では、閉鎖要素574は球状に形成されている。突棒566は、閉鎖要素574の方に向いたその端部が低圧室122内にあり、一方、閉鎖要素574から離れたその端部が磁石室576内に配置されるように形成されている。その結果、いろいろな圧力、すなわち低圧室122の圧力pTと磁石室576の圧力p3が突棒566に作用する。これについて次に詳しく説明する。磁石室576が通過穴578を介して、コイル562を取り巻くコイル室580に接続されているので、コイル室580内と磁石室576内には同じ圧力が存在している。
【0046】
突棒566は直径d1を有し、球状の閉鎖要素574は直径d2を有する。直径d1は例えば3mm又は4mmであり、直径d2は2.3mmである。いかなる場合でも、直径d1が直径d2よりも大きい。さらに、オリフィス470の直径はオリフィス472の直径よりも小さい。
【0047】
緩衝器10が圧縮動作中であるか又は引張り動作中であるかに関係なく、主滑り弁140が開放している限りは、高圧室120から低圧室122を通って主流量Qが生じる。圧縮動作中では圧力媒体が低圧室122からさらに引張り室40に流れ、引張り動作中は圧縮室50に流れる(図8図9参照)。
【0048】
既に説明したように、オリフィス470の直径はオリフィス472の直径よりも小さい。図8に示した圧縮動作中は、圧力媒体が低圧室122から制御管186とオリフィス472を通って通路572に流れ、続いて磁石室576へ、そしてそこから制御管184とオリフィス470を通って引張り室40に流れる。
【0049】
図9に示した引張り動作中は、圧力媒体は引張り室40から制御管184とオリフィス470を通って磁石室576に流れ、そこから通路572を通って及び制御管186とオリフィス472を通って低圧室122に流れる。主流量Qについて説明したように、圧力媒体は低圧室から圧縮室50に流れる。
【0050】
圧縮動作中は、閉鎖力が突棒56に生じる。というのは、オリフィス472がオリフィス470と比較して大きな直径を有するという事実に基づいて、磁石室576内の動圧が上昇するからである。これにより、閉鎖要素574に向いた突棒566の環状面に作用する開放力がより多く相殺され、突棒566が主流量Qを介して弱い液圧付勢によって開放制御される。これにより、コイル562によって加える磁力を小さくすることができる。これは制御される緩衝器10のエネルギ効率を改善する。
【0051】
引張り動作中は、通路572を逆方向に通過する。ここでも、閉鎖力が突棒56に生じる。というのは、高圧室120の圧力p1が磁石室576内に達し、圧力媒体がオリフィス470を通過しないときに、この圧力p1が圧力p3に等しくなるからである。オリフィス470が設けられていないと、閉鎖力が非常に大きくなり、パイロット弁560が開放しないという危険が生じる。オリフィス470の大きさを適切に選択することにより、閉鎖力が所望な値を有するように、圧力p3を調節することができる。
【0052】
主流量Qが増大するにつれて、低圧と、磁石室576内の圧力p3が上昇する。それによって、パイロット弁560は自動的に安定する。
図10は制御可能な緩衝器10の第6の実施形態を示す。この第6の実施形態の場合、緩衝器は第5の実施形態の場合のように、流通可能なパイロット弁560を備えている。この実施形態においても、制御管184が圧力媒体管52から分岐し、電磁石134に達している。この実施形態において、第5逆止弁132は上側の作動室40とパイロット室130との間ではなく、上側の作動室40と電磁石134との間において制御管184内に配置されている。制御管184はさらに、上側の作動室40と第5逆止弁132との間に他のオリフィス172を備えている。
【0053】
さらに、他の制御管188が電磁石134とパイロット室130との間に配置されている。
図11には、パイロット弁560の構造が原理図に基づいて詳細に示してある。次に、図8図9に示したパイロット弁560と、図11に示したパイロット弁560との違いについてのみ説明する。この実施形態では、閉鎖要素574が球状に形成されないで、突棒566に連結された封止ディスク582を備えている。この場合、管150は有効直径d2を定める。管150と、この管を介して提供される、パイロット室130と低圧室122との間の接続部とが、コイル562に適切に通電することにより、封止ディスク582によって開閉可能である。他の制御管188が通路572によって形成される。
【0054】
緩衝器10が圧縮動作中であるか又は引張り動作中であるかどうかに関係なく、主滑り弁140が開放している限りは、主流量Qが高圧室120から低圧室122を通って生じる。圧力媒体は圧縮動作中低圧室122から引張り室40に流れ、引張り動作中圧縮室50に流れる。
【0055】
図11には、圧縮動作中のパイロット弁が示してある。この場合、圧力媒体はさらに高圧室120からオリフィス170を通ってパイロット室130に流れ、そして圧力媒体の圧力が逆止弁132を開放するのに十分な高さである限り、制御管188を形成する通路572と、制御管184と、オリフィス172とを通って引張り室40に流れる。制御管184内の圧力媒体の圧力は、オリフィス170によって影響を受ける。
【0056】
図示していない引張り動作中、圧力媒体は引張り室40から制御管184とオリフィス172を通って流れる。このオリフィスでは圧力が低下させられる。逆止弁132は管184を通る圧力媒体のそれ以上の流れを停止する。この実施形態においても、オリフィス170と他のオリフィス172の大きさを適切に選択することによって、突棒566に作用する閉鎖力が所望な値を有するように、圧力p3が調節される。
【0057】
図12図15には、それぞれオリフィス470、472の適切な選択と不適切な選択に関して、引張り動作中と圧縮動作中の、低圧室122内に生じる圧力pTと磁石室576内の圧力p3が、主流量Qに依存して示してある。
【0058】
図12には、オリフィス470、472の不適切な設計についての引張り動作の例が示してある。磁石室576内の圧力p3が主流量Qの増大につれて10L/minの値から非常に急激に上昇することがわかる。それによって、きわめて強い閉鎖力が突棒566に作用する。この閉鎖力は磁石134によって非常に限定的にのみ相殺可能である。従って、パイロット弁560は少なくとも約10L/minの主流量以降閉じたままであり、低圧室122内の圧力pTはほぼ零のままである。
【0059】
図13には、オリフィス470、472の適切な設計についての引張り動作の例が示してある。磁石室576内の圧力p3は、図示した主流量Q全体にわたって、低圧室122内の圧力pTよりも幾分高い。これにより、主流量Qの値に関係なく、磁石134によって発生する力によって、パイロット弁560を制御して開放し得ることが保証される。
【0060】
図14にはオリフィス470、472の不適切な設計についての圧縮運転の例が示してある。図10及び図11と比較して、磁石室576内の圧力p3が低圧室12内の圧力pTよりも低いことがわかる。オリフィス470、472が図12に示すように設計されると、磁石室576内に低すぎる圧力p3が生じるので、十分な大きさの閉鎖力が突棒566に作用しない。図8図9に示すように、突棒566の直径d1が閉鎖要素574の直径d2よりも大きいときに、パイロット弁560は約5L/minの主流量以降急激に開放する。
【0061】
図15はオリフィス470、472の適切な設計についての圧縮運転の例が示してある。低圧室120内の圧力pTは流量Q全体にわたって、磁石室576内の圧力p3にほぼ等しい。これにより、パイロット弁560はきわめて良好に制御して開放可能である。
【0062】
オリフィス170とパイロット弁560の液圧抵抗がオリフィス470とオリフィス472の抵抗よりも小さいと、次の式が生じる。
p1>p2>p3>pT
オリフィス170とパイロット弁560の液圧抵抗がオリフィス470とオリフィス472の抵抗よりも大きいと、次の式が生じる。
【0063】
p1>p3>p2>pT
緩衝器10の引張り動作中、オリフィス470が高圧室120に直接流体接続されているので、これによってオリフィス172の作用を付加的に強めることができる。
【符号の説明】
【0064】
10…制御可能な緩衝器、20…作動シリンダ、30…ピストン、32…ピストンロッド、34…運動矢印、35…構造空間、36…穴、38…シール、40…作動室(引張り室)、50…作動室(圧縮室)、52…圧力媒体管、54…圧力媒体管、100…弁装置、110…第1逆止弁、111…第1オリフィス、112…第2逆止弁、113…第2オリフィス、114…第3逆止弁、115…第3オリフィス、116…第4逆止弁、117…第4オリフィス、120…高圧室、122…低圧室、124…調節可能なばね要素、130…パイロット室、132…第5逆止弁、134…磁石、140…主滑り弁、142…ばね装置、144…制御管、146…制御管、150…管、160…パイロット弁、161…ばね装置、170…第5オリフィス、172…第6オリフィス、182…制御管、184…制御管、186…他の制御管、188…他の制御管、190…ボトム弁、191…オリフィス、192…逆止弁、193…逆止弁、194…オリフィス、199…タンク、200…吹出弁、201…逆止弁、202…逆止弁、203…オリフィス、204…オリフィス、460…パイロット弁、462…オリフィス、464…逆止弁、466…オリフィス、468…オリフィス、470…オリフィス、472…オリフィス、560…パイロット弁、562…コイル、564…アーマチュア、566…突棒、568…第1軸受、570…第2軸受、572…通路、574…閉鎖要素、576…磁石室、578…通過穴、580…コイル室、582…封止ディスク、d1…直径、d2…直径、L…縦軸線、p1…圧力、p2…圧力、p3…圧力、pT…圧力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15