(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の装置(100、400)であって、前記レーザビーム(112)の前記パワー密度分布を調節するために、前記第1の調節装置(120)が、前記光学軸(124)に実質的に垂直な平面内でおよび/または前記光学軸(124)に実質的に平行な平面内で前記光学軸(124)に対して変位可能であることを特徴とする装置(100、400)。
請求項1または2に記載の装置(100、400)であって、前記第1の調節装置(120)が円形経路に沿って変位可能であり、前記円形経路の中心が前記光学軸(124)上にある、または前記第1の調節装置(120)が直線的に変位可能であることを特徴とする装置(100、400)。
請求項1、2、または3のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、前記第1の調節装置(120)の前記変位方向が、前記加工方向(20)に結び付けられることを特徴とする装置(100、400)。
請求項1に記載の装置(100、400)であって、加工速度、焦点位置、および切断ガス圧からなる群から選択される1つ以上のプロセスパラメータに前記第1の調節装置(120)の前記変位の大きさを結び付けるように構成された制御装置をさらに備えることを特徴とする装置(100、400)。
請求項1から5のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、前記第1の調節装置(120)が、前記第1の調節装置(120)の変位方向に軸対称になるようにおよび/または前記第1の調節装置(120)の前記変位方向に垂直に非対称になるように前記パワー密度分布を調節するように構成されることを特徴とする装置(100、400)。
請求項1から6のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、前記第1の調節装置(120)が、前記レーザビーム(112)の非対称パワー密度分布と対称パワー密度分布との間を切り替えるように構成されることを特徴とする装置(100、400)。
請求項1から7のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、前記加工方向(20)に垂直なガスジェット(880)の密度分布を非対称になるように調節するように構成された前記ガスジェット(880)用の調節装置(800)をさらに備えることを特徴とする装置(100、400)。
請求項8または9に記載の装置(100、400)であって、前記ガスジェット(880)を供給するためのガス源であり、前記ガス源が前記光学軸(124)の周りに対称な複数の排出口開口部(810)を有する、ガス源をさらに備えることを特徴とする装置(100、400)。
請求項8から11のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、前記ガスジェット(880)が、前記装置内で前記レーザビーム(112)と同軸的に重なることが可能であることを特徴とする装置(100、400)。
請求項8から12のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、ガスジェット(880)用の前記調節装置(800)が、前記ガスジェット(880)の非対称密度分布と対称密度分布との間を切り替えるように構成されることを特徴とする装置(100、400)。
請求項1から13のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、前記装置が、レーザ加工ヘッド、レーザ切断ヘッド、またはレーザ溶接ヘッドを備えることを特徴とする装置(100、400)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施形態を、図に図説し、そして下記により詳細に説明する。
【0019】
下記では、別なふうに特に言及しない限り、類似の参照番号が類似の要素および等価な要素に対して使用される。
【0020】
レーザビームを用いて材料を加工するとき、特に、レーザ切断のときには、レーザビームをエネルギー源として、そしてガスジェットをプロセスドライバとして使用することができる。ガスジェットを、モーメンタム源として、そして任意選択で酸化剤(例えば、酸素)として使用することができる。従来は、レーザビームおよびガスジェットは、回転対称である。より具体的に、光学軸に垂直な任意の平面内のレーザビームの強度分布またはパワー密度分布は、回転対称である。同じことが、ガスの密度および速度にも当てはまることがある。このように、同じ切断結果を、任意の所望の切断方向で実現することができる。切断方向への敏感な調節は、必ずしも必要ではない。このことは、小さな外形を有する薄いシートを扱う仕事をするときに、非常に早く頻繁な方向の変更が生じることがあるので、特に有利である。
【0021】
対称的なレーザビームおよびガスジェットを用いると、両側で同一でありそれゆえ同じ品質のカーフを作成することができる。例えば、切断部の2つの側が2つの異なる部品に関係するように金属シート上で外形をネスティングするためのネスティング技術がある。しかしながら、実際には、これは非常に限られた数の部品に対して利用可能であるに過ぎない。多くの場合、部品の外形は、片われがさらなる目的を満足することができず、したがって廃棄物として処理されるように成形される。「廃棄物側」の切断部品質は、そのため無意味である。したがって、このことが、「製品側」の切断端部の品質の向上および/または加工速度の増加などの「製品側」に関する利点をもたらす場合には、廃棄物の切断部品質を低下させてもよい。
【0022】
本開示によれば、レーザビームおよび/またはガスジェットの回転対称性が破られる。特に、加工方向、これは例えば、切断方向であってもよい、に垂直なレーザビームのパワー密度分布もしくは強度分布および/またはガスジェットの密度分布は非対称である。ここでは、レーザビームの非対称パワー密度分布および/またはガスジェットの密度分布が、ワークの位置のところで形成される。したがって、外形切断を、一方の側で、例えば所望の部品の側で、すなわち「製品側」で明確に改善することができる。
【0023】
図1は、本開示の実施形態による、加工方向20に沿ってレーザビーム112を用いて材料を加工するための装置100の模式図を示している。装置100を、レーザ切断ヘッドなどの切断ヘッドとすることができる。加工方向20を、切断方向および/またはワーク10に対する装置100の移動の方向とすることができる。
【0024】
装置100は、ワーク10上へとレーザビーム112を集光させるための集光光学系121、122を備える。集光光学系121、122は、光学軸124を規定する。装置100は、調節機構をさらに備える。調節機構は、レーザビーム用の第1の調節装置120および/またはガスジェット用の第2の調節装置800(
図1には図示せず、
図8参照)を備える。ガスジェットは、レーザビーム112と重なることがある。例えば、ガスジェットが光学軸124に向かってそして光学軸に沿って流れるように、ガスジェットを偏向させることができる。
【0025】
第1の調節装置120は、少なくとも1つのビーム成形光学系、例えば、シーメンススター、アキシコン、アキシコンアレイ、変形可能ミラー、屈折型光学素子、または任意選択で離散化されたコーン表面をともなうもしくは湾曲したコーン表面をともなう扁平アキシコンを好ましくは備える。レーザビーム112用の第1の調節装置120は、加工方向20に垂直なレーザビーム112のパワー密度分布または強度分布を非対称になるように調節するように構成される。言い換えると、光学軸124に垂直な平面内のレーザビーム112のパワー密度分布の回転対称性が破られる。パワー密度は、したがって光学軸124に垂直な平面内では不均一である。ガスジェット用の第2の調節装置800は、加工方向20に垂直なガスジェットの密度分布または速度分布を非対称になるように調節するように構成される。言い換えると、光学軸124に垂直な平面内のガスジェットの密度の回転対称性が破られる。光学軸124に垂直な平面内の密度は、したがって不均一である。第1の調節装置120および第2の調節装置800を、装置100内に二者択一的にまたは一体的に実装することができる。
【0026】
実施形態によれば、第1の調節装置120を、光学軸124上の意図した位置から変位させることができて、レーザビーム112のパワー密度分布を調節することができる。これを、x/y平面内、すなわち、光学軸124を横切る(すなわち、光学軸124に垂直な平面内)の変位とすることができる。代替でまたは任意選択で、第1の調節装置120をチルトさせることができる。任意選択で、第1の調節装置120を、任意の横方向の変位のためにやはり構成することができる。
【0027】
レーザビーム112のパワー密度分布の非対称性および/またはガスジェットの密度の非対称性は、光学軸124に垂直な平面内に存在する。ここで、レーザビーム112および/またはガスジェットは、光学軸124に平行な平面内で対称的なまたは均一なパワー密度分布または密度分布を有することができる。光学軸124に垂直な平面内のレーザビーム112および/またはガスジェットの断面、すなわち、これらの空間的な広がりを、光学軸124の周りで(回転)対称とすることができる。しかしながら、レーザビーム112および/またはガスジェットの断面エリア内のパワー密度分布または密度分布は、非対称である。言い換えると、レーザビームのパワー密度および/またはガスジェットの密度は、断面エリア内では不均一である。
【0028】
装置100は、レーザビーム112を供給するためのレーザ源110を備える。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、装置100は、ガスジェットを供給するためのガス源(図示せず)を備える。ガス源を、レーザ切断ヘッドとすることができる装置100と一体化することができる。ガス源は、第2の調節装置800を含むことができる。光学軸124に沿ってレーザ源110により供給されるレーザビーム112とガスジェットが重なるように、ガス源を構成することができる。
【0029】
集光光学系121、122を、光学軸124を規定する固定または可変の焦点長(ズーム)を有する光学システムとすることができる。集光光学系121、122は、少なくとも1つの結像光学素子を備える。光学軸124に垂直なパワー密度分布は、初期にはすべての平面内で回転対称であり、レーザ源110が、例えば、光ファイバの円形または環状である光ガイドコアに当てはまるこの特性をやはり有することを可能にする。本開示によれば、光学システムを、ビーム成形光学系などの第1の調節装置120により補うことができ、その結果、回転対称ではないビームプロファイルを選択的な方式で生成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、集光光学系121、122は、コリメータ光学系121および集光光学系122を含むことができる。例えば、レーザ源110の光ファイバから出てくる発散レーザ光ビームが、コリメータ光学系121により平行レーザ光ビームへと変換され、これが集光レンズ122によりワーク10上に集光される。調節機構、そして特に第1の調節装置120を、コリメータ光学系121と集光光学系122との間の平行レーザ光ビームへと挿入することができる。
【0031】
図2Aおよび
図2Bは、色スケールでの、光学軸に垂直な平面内での対称(
図2A)または非対称(
図2B)パワー密度分布を有するレーザビームの模式図を示している。スケールの単位は、平方センチメートル当たりのワット(W/cm
2)であり、スケールの上端(赤)が最大値、例えば、5.00E+
06W/cm
2を示し、下端(青)が0の最小値を示している。
図2A、
図2B、
図3、
図5A、
図5B、
図6A、および
図6Bのすべてのビームプロファイル表示は、このスケールに基づいている。
【0032】
光学軸124に垂直なパワー密度分布は、第1の調節装置120を用いなくても回転対称であり、レーザ源110がこの特性をやはり有することを可能にする。このような対称パワー密度分布200が
図2Aに示されている。レーザビームのパワー密度または強度は、実質的に均一である。ビーム成形光学系であってもよい第1の調節装置120は、レーザビーム112の対称性を破り、その結果、レーザビーム112は非対称パワー密度分布を有する。第1の調節装置により生成された非対称強度分布が
図2Bに示されている。レーザビームのパワー密度または強度は、不均一である。
【0033】
レーザビームの非対称パワー密度分布には、最大部210および最小部220がある。最大部210は、最大パワー密度または強度の領域である。最小部220は、最小パワー密度または強度の領域である。最小部220、すなわち、最小パワー密度または強度を、最大部、すなわち最大パワー密度または強度の90%未満とすることができ、好ましくは50%未満、好ましくは25%未満、そしてより好ましくは10%未満とすることができる。第1の調節装置120は、強度を再分布させるように構成されてもよく、ここではレーザビーム112の総合的な強度を、実質的に一定にすることができる。最大パワー密度を有する領域は、「製品側」に面していてもよい。
【0034】
同様に、ガスジェットの非対称密度分布には、最大部および最小部がある。最大部は、最大ガス密度の領域である。最小部は、最小ガス密度の領域である。最小部、すなわち、最小ガス密度を、最大部、すなわち最大ガス密度の90%未満とすることができ、好ましくは50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは10%未満とすることができる。第2の調節装置800は、ガスを再分布させるように構成されることがあり、ここではガスの全流量を、実質的に一定にすることができる。最大ガス密度を有する領域は、「製品側」に面していてもよい。
【0035】
パワー密度分布の対称性が破られるとはいえ、光学軸に垂直な平面内でのレーザビーム112の空間的な広がりを、実質的に対称にすることができる。例えば、光学軸124に垂直な平面内でのレーザビーム112の空間的な広がりを、パワー密度分布を非対称なままで、光学軸124の周りで対称にすることができる。同じことがガスジェットに同様に当てはまることがある。
【0036】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の調節装置120は、加工方向20に基づくレーザビーム112のパワー密度分布の最大、すなわち、最大強度を調節するように構成される。代替でまたは任意選択で、第2の調節装置800を、加工方向20に基づくガスジェットの最大密度として密度分布の最大を調節するように構成することができる。加工方向20を、ワークに対する装置の移動の方向とすることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1の調節装置120は、加工方向20に応じて非対称になるように加工方向20に垂直なレーザビーム112のパワー密度分布を調節するように構成される。言い換えると、パワー密度を、加工方向20に対して一方の側で(
図2Bでは左側で)他方の側(
図2Bでは右側)よりも高くすることができる。例えば、第1の調節装置120の変位を、加工方向20に結び付けることができる。加工方向20に沿ったパワー密度分布を対称にすることができる。言い換えると、加工方向20に平行なパワー密度を、実質的に一定にすることができる。
【0038】
代替でまたは任意選択で、第2の調節装置800を、加工方向20に基づいて非対称になるように加工方向20に垂直なガスジェットの密度分布を調節するように構成することができる。言い換えると、ガスジェットの密度を、加工方向20に対して一方の側で他方の側よりも高くすることができる。加工方向20に沿った密度分布を対称にすることができる。言い換えると、加工方向20に平行な密度を、実質的に一定にすることができる。
【0039】
図3は、本開示の実施形態による、ワーク上でのレーザ切断プロセスの模式図である。
【0040】
レーザ切断プロセスは、レーザビームを用いてワークに穴をあけること、最大速度までレーザビームを持っていくこと、およびワークから外形を切断することを含むことができる。穴をあけることを、
図2Aに示したように、回転対称パワー密度分布200を用いて実行することができる。外形の切断中に、パワー密度分布を、段階的にまたは連続的に調節することができ、その結果、最大パワー密度領域210が「製品側」に面する。特に、パワー密度分布を、
図3に示したように、加工方向に基づいて調節することができる。したがって、粗さ、角型性、ビアード形成、均一性、等などの「製品側」の切断端部の品質を改善することができる。
【0041】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、本発明による装置の加工速度は、少なくとも0.05m/min、好ましくは少なくとも1m/min、より好ましくは少なくとも10m/min、それどころかより好ましくは少なくとも100mm/minである。
【0042】
図4Aは、本開示の他の実施形態による、加工方向に沿ってレーザビーム112を用いて材料を加工するための装置400の模式図を示している。
図4Bは、本開示の実施形態による、装置400の旋回装置410の模式図を示している。
【0043】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の調節装置120は、光学軸124に対して移動可能である。特に、レーザビーム112の非対称パワー密度分布を調節するためにおよび/またはビーム成形をオンおよびオフに切り替えるために、第1の調節装置120を光学軸124に対して移動させることができる。例えば、ビーム成形をできなくするために、第1の調節装置120をビーム経路から取り除く(例えば、旋回させる)ことができる。
【0044】
レーザビーム112のパワー密度分布を調節するためにおよび/またはビーム成形オン/オフを切り替えるために、第1の調節装置120は、光学軸124に実質的に垂直な平面内で移動可能であっても変位可能であってもよい。代替でまたは加えて、レーザビーム112のパワー密度分布を調節するために、第1の調節装置120は、光学軸124に実質的に平行な平面内で移動可能であっても変位可能であってもよい。例えば、第1の調節装置120は、光学軸124に垂直におよび/または平行に変位可能であってもよい。いくつかの実施形態では、第1の調節装置120は、パワー密度分布を調節するために光学軸124に対してチルト可能であってもよい。さらなる実施形態では、第1の調節装置120は、円形経路に沿って移動可能であってもよい。円形経路の中心点を、光学軸124上とすることができる。このような円形の移動に関して、非対称性の程度を一定にすることができ、パワー密度分布は、光学軸124の周りを回転することができる。
【0045】
実施形態によれば、第1の調節装置120の移動の方向に沿ったパワー密度分布を、実質的に対称にすることができる。しかしながら、第1の調節装置の移動の方向に垂直なパワー密度分布を、非対称にすることができる。この例が
図5Aおよび
図5Bにシーメンススターを参照して図示されている。
【0046】
図4Aを参照して、装置400は、旋回軸416を規定している可動旋回素子414を有する旋回装置410を備える。第1の調節装置120は、接続素子412を介して可動旋回素子414に接続される。ビーム成形オン/オフを完全に切り替えるために、第1の調節装置120を、旋回軸416の周りの回転によりビーム経路の中へ/外へ旋回させることができる。非対称ビーム成形を可能にするために、可動旋回部材414または旋回軸416を動かすことができる。例えば、旋回軸416を動かすまたはチルトさせることができる。実施形態によれば、旋回軸416の変位は、光学軸124に平行な平面内でおよび/または光学軸124に垂直な平面内で行われてもよい。旋回軸416と光学軸124とが0°よりも大きく90°未満の角度を囲むように、チルトを実行することができる。言い換えると、チルトは、互いに平行でない旋回軸416と光学軸124とによって規定される。
【0047】
総合的なシステムの光学軸124は、変位させた第1の調節装置120によってはほんのわずかしか影響を受けない。ワーク10上でわずかに変化したレーザビーム112のx−y位置の結果として、所望の部品の形状に望ましくない寸法誤差が生じる場合には、寸法誤差を、すべての方向で事前に決定することができ、次いで切断外形のプログラミングの際に補正することができる。第1の調節装置120のビーム成形光学系が典型的には平面プレートと比較して形状でわずかな寸法誤差しか示さないので、総合的なシステムの焦点位置は、ビーム成形光学系のすべての変位に対してほぼ同一である。相当な焦点位置の変化が生じる場合には、これらの変化を、基本光学系の可動光学素子を介して補正することができる。
【0048】
図5Aは、第1の調節装置120、このケースではシーメンススター、の変位の関数として光学軸に垂直な平面(x−y平面)内のレーザビームのパワー密度分布を示している。光学軸は、z軸に沿って延びている。
図5Bは、第1の調節装置120を円形経路に沿って変位させるときの固定のz平面(z=4mm)内で光学軸に垂直な平面内でのレーザビームのパワー密度分布を示している。このような円形の移動に関して、非対称の程度を一定にすることができ、パワー密度分布を光学軸の周りに回転させることができる。
【0049】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の調節装置120は、シーメンススターを含んでもシーメンススターであってもよい。シーメンススターを、特に、石英ガラスまたは硫化亜鉛製のオプチカルフラットの透明なガラス板からなる板状の形をした光学素子とすることができ、これは、一方の側に、アジマス方向または円周方向に傾斜したシーメンススター状のファセットを有する。
【0050】
図5Aおよび
図5Bに示したシミュレーションのために使用したシーメンススターを用いる配置は、下記のパラメータ:ファセット角=0.25°、焦点長fc=100mmとff=150mm、ファイバコアΦ=100μm、およびNA=0.06を有する。加えて:焦点面(z=0mm)内でリングΦ=600μmおよび検出器ウィンドウサイズ=1.2x1.2mm。
【0051】
シーメンススターがビーム経路の中心にあるときには、焦点の前、焦点位置および焦点の後で得られるパワー密度分布は、限られた数のファセットによる「ホットスポット」を除いて回転対称である。シーメンススターがx方向および/またはy方向に光学軸から外れて変位する場合には、個々のファセットが異なるパワーで照射されるので、パワー密度分布の回転対称性が失われる。変位方向に沿って、パワー密度分布は、依然として軸対称である。偏向方向に対して横方向に、パワー密度分布は、非対称である。x/y変位の大きさが、この非対称性の程度を決定する。
【0052】
光学系が中心として光学軸を有する円形経路に沿って変位するときには、
図5Bに示したように、非対称性の程度は一定であり、パワー密度分布が光学軸の周りを回転する。
【0053】
好ましくは、第1の調節装置120の変位または移動の方向が、切断方向に結び付けられる。実施形態によれば、第1の調節装置120の変位または移動の大きさは、プロセスパラメータに結び付けることができる。プロセスパラメータを、切断速度、焦点位置、切断ガス圧、および類似のパラメータを含む群から選択することができる。
【0054】
図6Aは、ここではアキシコンとして具体化された第1の調節装置120の変位の関数として光学軸に垂直なレーザビームの強度分布を示している。
図6Bは、第1の調節装置を円形経路に沿って変位させるときの固定のz平面(z=0mm)内での光学軸に垂直なレーザビームの強度分布を示している。
【0055】
アキシコンは、円錐形の研磨レンズである。アキシコンは、点光源を光学軸に沿った線上へと結像する、またはレーザビームをリングへと変換する。
【0056】
図6Aおよび
図6Bに示したシミュレーションのために使用したアキシコンを用いた配置は、下記のパラメータ:アキシコン角=0.17°、焦点長fc=100mmとff=150mm、ファイバコアΦ=100μm、およびNA=0.1を有する。加えて、焦点面(z=0mm)内でリングΦ=400μmおよび検出器ウィンドウサイズ=1.2x1.2mm。
【0057】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、第1の調節装置120は、シーメンススター、変形可能ミラー、屈折型光学素子、アキシコン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのビーム成形光学系を備える。変形可能ミラーは、回転対称ではない反射表面の形成を可能にする。屈折型光学素子は、光学系の変位を回転対称ではない強度分布へと変換するように構成されてもよい。アキシコンの様々な実施形態が
図7A〜
図7Cに示されている。
図7Aは、コーン尖端部の代わりに表面710を有する扁平アキシコン700を示し、中央アライメントで非対称ビーム成形を可能にする。いくつかの実施形態では、アキシコン700’は、離散化されたコーン表面710’(
図7B)を有してもよい。これは、横方向のスポット上でより高い強度を可能にする。加えて、アキシコン700”は、実施形態にしたがって湾曲したコーン表面710”(
図7C)を有してもよい。これは半径方向への横方向スポットの伸長を可能にする。
【0058】
図8Aおよび
図8Bは、本開示の実施形態による、第2の調節装置800の模式図である。
【0059】
いくつかの実施形態では、レーザビーム112の代替でまたは加えて、ガスジェットを、回転対称ではないようにやはり形成することができる。レーザビーム112のように、ガスジェットを、加工方向に応じて方向付けすることができる。本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、レーザビームを用いて材料を加工するための装置は、ガスジェットを供給するためのガス源を備え、このガス源は、複数の排出口開口部810を有し、ここでは第2の調節装置800が、ガスジェットの密度分布を調節するために排出口開口部810のうちの1つ以上を選択的に開くおよび/または閉じるように構成される。特に、例えば、一様に分布した排出口開口部810のうちの1つ以上を塞ぐことによって、非対称ガスジェットを生成することができる。
【0060】
典型的には、レーザ加工ヘッドまたは切断ヘッドであってもよい装置100または400へのガスの注入は、一方の側からである。ガスを、そのときには、ヘッドの内側でレーザビーム112と同軸的に重ねることができる。好ましくは、ガスは、分割方式で先ず分岐され、その結果、ガスジェット880が光学軸124に向かっていくつかの空間的な方向から一様に流れる(
図8C参照)。これを、例えば、複数の対称的に配置された排出口開口部810により実現することができる。これは、個々の排出口開口部810(すなわち、ガス排出口)を塞ぐ可能性を提供する。これにより、非対称性を強制的に作ることができる(
図8D参照)。好ましくは、これらの排出口開口部810のうちのいずれかを塞ぐことができる。これを、モータによりまたは任意選択で自動的に実行することができる。
図8Aおよび
図8Bでは、開いている排出口開口部が白丸で示され、そして閉じられた排出口開口部が黒丸で示されている。いくつかの実施形態では、第2の調節装置800は、回転可能なピンダイアフラムを備えることができるまたはピンダイアフラムであってもよい。
【0061】
図9は、本開示の実施形態による、レーザビームを用いて材料を加工するための方法900のフローチャートを示している。方法900は、本開示にしたがって、加工方向にレーザビームを用いて材料を加工するための装置を使用することができる。
【0062】
方法900は、ステップ910において、光学軸に対してパワー密度分布を有するレーザビームを形成するステップと、ステップ920において、加工方向に沿ってレーザビームを用いてワークを加工するステップであり、加工方向に垂直なレーザビームのパワー密度分布および/またはガスビームの密度分布が非対称である、加工するステップとを含む。
【0063】
本開示によれば、レーザパワー密度分布、強度最大部および/または加工方向に応じて光学軸から偏向される「重心」が生成される。特に、ビーム成形光学系を、レーザ材料加工ヘッド内で使用することができ、ビーム成形光学系が、システムの光学軸に対してそれぞれ、加工方向に応じて変位されるおよび/またはチルトされる。結果として、例えば、切断端部の品質の向上、特に、粗さの低減およびバリ形成の低減、切り落とそうとする部品に関係する少なくともカーフの側を、レーザ切断のために提供することができる。
【0064】
好ましい実施形態は、特に:
1.加工方向(20)に沿ってレーザビーム(112)を用いて材料を加工するための装置(100、400)であって、
ワーク(10)上へと上記レーザビーム(112)を集光させるための集光光学系(121、122)であり、上記集光光学系(121、122)が光学軸(124)を規定する、集光光学系(121、122)と、
上記加工方向(20)に垂直な上記レーザビーム(112)のパワー密度分布を非対称になるように調節するように構成された上記レーザビーム(112)用の第1の調節装置(120)、および/または
上記加工方向(20)に垂直なガスジェット(880)の密度分布を非対称になるように調節するように構成されたガスジェット(880)用の第2の調節装置(800)と
を備える、調節機構と
を具備することを特徴とする装置(100、400)。
2.実施形態1に記載の装置(100、400)であって、上記レーザビーム(112)の上記パワー密度分布を調節するために、上記第1の調節装置(120)が上記光学軸(124)に対して変位可能であることを特徴とする装置(100、400)。
3.実施形態2に記載の装置(100、400)であって、上記第1の調節装置(120)が、上記光学軸(124)に実質的に垂直な平面内でおよび/または上記光学軸(124)に実質的に平行な平面内で変位可能であることを特徴とする装置(100、400)。
4.実施形態2または3に記載の装置(100、400)であって、上記第1の調節装置(120)が円形経路に沿って変位可能であり、上記円形経路の中心が上記光学軸(124)上にあることを特徴とする装置(100、400)。
5.実施形態2から4のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、上記第1の調節装置(120)の上記変位方向が上記加工方向(20)に結び付けられることを特徴とする装置(100、400)。
6.実施形態2から5のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、上記第1の調節装置(120)の変位の大きさが、加工速度、焦点位置、切断ガス圧からなる群から選択される1つ以上のプロセスパラメータに結び付けられることを特徴とする装置(100、400)。
7.実施形態2から6のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、上記第1の調節装置(120)により調節された上記パワー密度分布が、上記第1の調節装置(120)の変位方向に沿って軸対称であるおよび/または上記第1の調節装置(120)の上記変位方向に垂直に非対称であることを特徴とする装置(100、400)。
8.実施形態1から7のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、上記第1の調節装置(120)が、シーメンススター、変形可能ミラー、屈折型光学素子、アキシコン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのビーム成形光学系を備えることを特徴とする装置(100、400)。
9.実施形態1から8のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、上記ガスジェット(880)を供給するためのガス源であり、上記ガス源が複数の排出口開口部(810)を有する、ガス源をさらに備え、上記第2の調節装置(800)が、上記ガスジェットの上記密度分布を調節するために上記排出口開口部(810)のうちの1つ以上を選択的に開くおよび/または閉じるように構成されることを特徴とする装置(100、400)。
10.実施形態1から9のいずれか1項に記載の装置(100、400)であって、上記装置が、レーザ加工ヘッドまたレーザ溶接ヘッドを備えることを特徴とする装置(100、400)。
11.レーザビームを用いて材料を加工するための方法(900)であって、
光学軸に対してパワー密度分布を有するレーザビームを形成するステップ(910)と、
加工方向に沿って上記レーザビームを用いてワークを加工するステップ(920)であり、上記加工方向に垂直な上記レーザビームの上記パワー密度分布および/またはガスジェット(880)の密度分布が非対称である、加工するステップ(920)と
を含むことを特徴とする方法(900)。