(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビームフォーミングにより、前記第1のアンテナ部と異なる放射方向の第2の複数の放射方向の異なるビームから第2の選択されたビームを形成する第2のアンテナ部を更に備え、
前記表示部は、更に、
前記第2の選択されたビームの放射方向と受信強度とに応じて、前記第2の複数の放射方向の異なるビームの本数よりも多数の第2のパターンから選択された1つのパターンと、
前記第2のパターンから選択されていないパターンと、
を表示し、
前記第2のパターンから選択された1つのパターンと、前記第2のパターンから選択されていないパターンとは異なるパターンである、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<1>本開示の一態様に至った経緯
先ず、本開示の一態様に至った経緯について説明する。
【0018】
従来のミリ波通信では、端末は基地局の方向に指向性が向けられるように逐次的に指向性を切替え、信号を送信する。
【0019】
図1は、ミリ波通信システムの一例を示す図である。
図1は、ミリ波端末101(以下「端末」または「STA(Station)」と呼ぶこともある)、ミリ波基地局102(以下「AP(Access Point)」と呼ぶこともある)、AP102の通信カバーエリア103を示す。端末101のアンテナで形成する電波の指向方向104、105、106(以下「ビーム」と呼ぶこともある)は、例えばK本(Kは1以上の整数であり、
図1ではK=3である)のビームを形成し、それぞれに番号(以下「ビームID」と呼ぶこともある)が付与され、ミリ波端末101によって、切替えられる。
図1は、電波の指向方向(ビーム)104はビームID=1、電波の指向方向(ビーム)105はビームID=k、電波の指向方向(ビーム)106はビームID=Kを示す。同様にAP102も複数のビームを備え、これを切替えることができる(図示せず)。
【0020】
STA101とAP102とは、AP102の通信カバーエリア103の範囲内にSTA101が存在する場合、データ通信を行うことができるが、伝送品質を向上させるために、STA101とAP102との間で、最も伝送品質が良くなるビームの組み合わせを選択する必要がある。
【0021】
図2に、STA101の構成を示す。STA101は、アンテナ部201と、ミリ波無線部202と、制御部203と、表示部204と、送信部205と、受信部206と、受信品質測定部207と、を有する。
【0022】
STA101からフレームを送信する場合、制御部203は送信部205に送信データを入力する。送信部205は入力されたデータを無線通信に適した信号フォーマットに変換し、ミリ波周波数帯の無線信号に変換し、アンテナ部201に出力する。また、制御部203は、アンテナ部201を送信モードに切替え、送信に用いるビームを選択する。アンテナ部201は選択されたビームに指向性を切り替えて送信部205から入力された無線信号を放射する。
【0023】
STA101がフレームを受信する場合、制御部203はアンテナ部201を受信モードに切替え、受信に用いるビームを選択する。アンテナ部201は選択されたビームに指向性を切替え、受信された無線信号を受信部206に出力する。受信部206は、入力された無線信号からフレームを検出した後、信号処理に適した周波数帯の信号に変換し、予め定めた信号フォーマットに従い復調し、受信データを制御部203に出力する。また、受信部206からの信号に基づき、受信品質測定部207は信号の受信品質(たとえば受信強度を示すRSSI(Receive Signal Strength Indicator)、信号対雑音比SNR(Signal-to-Noise Ratio)、信号対干渉雑音比SINR(Signal-to-Interference-plus-Noise Ratio)、及び誤り率の少なくとも1つ)を測定し、測定結果を制御部203に出力する。制御部203は入力された受信データ及び受信品質に関する情報に基づき、表示204に表示する情報を出力する。表示部204は、入力された情報をディスプレイパネルやインジケータなどの手段を用いてユーザに表示する。
【0024】
制御部203は、データ通信に先立ち、AP102との間で最も伝送品質が良くなるビームの組み合わせを選択するビームフォーミングトレーニングを行う。
【0025】
図3は、ビームフォーミングトレーニングの一例を示すタイミング図である。
図3は、STA101が送信するトレーニングフレーム301、302、303、フィードバックフレーム305、ACK(Acknowledge)フレーム306を示す。
図3ではSTA101のトレーニングを示したが、AP102も同様にしてトレーニングを行う。
【0026】
先ず、STA101はビームを切替え、トレーニングフレーム301、302、303を送信する。例えば、STA101は、トレーニングフレーム301をビームID=1(ビーム104)で送信、トレーニングフレーム302をビームID=n(ビーム105)で送信、トレーニングフレーム303をビームID=N(ビーム106)で送信する。ここで各トレーニングフレームは、送信に使用したビームIDの情報、及び、自トレーニングフレームの後に、いくつのフレームを送信するかを示す残りフレーム数の情報を含む。
【0027】
AP102は、トレーニングフレーム301、302、303を正常に受信できた(エラー無く受信した)場合、受信したトレーニングフレームの受信品質、トレーニングフレームが含むビームID及び残りフレーム数の情報、を記憶する。STA101のビーム方向やSTA101自体の向きによっては、正常な受信が困難なトレーニングフレームも存在するが、AP102は正常に受信できたトレーニングフレームから得られた残りフレーム数の情報により、STA101からのトレーニングフレーム送信期間を知ることができる。
【0028】
AP102はトレーニングフレーム送信期間の終了を検出した後、STA101からのトレーニングフレーム(301から303)送信期間中にAP102が受信したトレーニングフレームの中で最も受信品質が良いと判断したトレーニングフレームが含むビームID(以下「STAのベストセクタ」と呼ぶこともある)をフィードバックフレーム305でSTA101に通知する。
【0029】
STA101は、フィードバックフレーム305を受信し、通知されたSTAのベストセクタを示すビームIDを用いて、STA101からAP102への送信に対して、最も受信品質が良くなるビームIDを判定し、以降のAP102との通信には、判定したビームを用いる。
【0030】
STA101はフィードバックフレーム305の受信応答をACKフレーム306でAP102に通知する。これによりビームフォーミングトレーニングが終了する。
【0031】
ところで、STA101及びAP102は、広い角度範囲にビームの指向性を変化するために、多素子(例えば16〜64素子)のアンテナアレイを1つのアンテナとして用いる。しかし、多素子アンテナアレイを用いる場合、無線部の回路規模が大きくなるため、小型低消費電力が求められる端末は、搭載が困難である。よって、端末は、電波の放射角度範囲が狭くなり、姿勢及び方向の少なくとも1つが変わることによって、通信可能な範囲も変わってしまう。
【0032】
本開示の発明者らは、このような着目点を基にして、端末の通信可能な範囲を広げて通信品質を改善するためには、アンテナを基地局の方向に向けるようユーザに表示すれば有効であると考え、本開示に至った。
【0033】
<2>実施の形態1
実施の形態1に係るミリ波端末の動作の一例について、
図4を参照しながら説明する。
【0034】
本実施の形態の端末(STA)は、1つのアンテナを有し、1つのアンテナによってビームを形成する。
【0035】
図4は、本実施の形態の表示を行うまでに、STA101の制御部203で行われる制御を示すフロー図である。
図4においてSはステップを表す。
【0036】
S401において、STA101はAP102との接続を開始する。例えば、STA101は、AP102が周期的に送信しているビーコンフレームを検出することで、通信カバーエリア103に入ったことを検出し、AP102に接続要求を行う。
【0037】
STA101は、AP102との接続が完了した後、ビームフォーミングトレーニングを開始する(S402)。上述したとおり、STA101は、ビームを切替える毎に、トレーニングフレームを送信し(S403)、AP102から送信されるフィードバックフレームを受信し(S404)、AP102との通信に用いるビームを決定してビームフォーミングトレーニングが終了する(S405)。
【0038】
ビームフォーミングトレーニングが終了した後、データ通信期間が開始され、STA101は、決定したビームを用いてAP102へのデータ通信を行う(S406)。
【0039】
ここで、STA101は、データ通信中の受信フレームを用いて受信品質を測定し(S407)、測定した受信品質と決定したビームをユーザに表示する(S408)。STA101は、S409で接続を終了するか否かを判断し、接続を終了しない場合にはS402に戻り、接続を終了する場合には処理を終了する。
【0040】
図5に、表示部204で表示する表示パターンの表示例を示す。本実施の形態では、表示部204に、アンテナ部201によって形成可能なビームの放射方向を示すパターン(点線)と、アンテナ部201によって実際に形成されるビームの方向(黒塗り)と、を表示する。
図5の例では、STA101は、アンテナ部201によって形成可能なビームの放射方向のパターンを、扇形(circular sector)を中心角方向に分割して表示し(図の例では、ビームの放射方向のパターンが5であり、扇形を中心角方向に5つに分割して表示してある)、アンテナ部201によって形成されているビームの方向を、分割した扇形のいずれかの領域を塗りつぶすことで識別可能に表示している。
【0041】
また、形成可能なビームの放射方向を示すパターンである扇形は、径方向に分割され、受信品質が大きくなるほど、径方向の分割領域を中心から外周方向へと塗りつぶすことで、受信品質を表示している。
【0042】
具体的に説明する。
図5は、ビーム104(
図2)に対応する表示パターン501、ビーム105に対応する表示パターン502、ビーム106に対応する表示パターン503を示す。表示パターン501と表示パターン502の間、表示パターン502と表示パターン503の間の表示パターンは、ビーム104とビーム105の間、またはビーム105と106の間の方向のビーム(例えばビームID=k−1またはビームID=k+1など)であり、形成可能なビームの放射方向を示すパターンである扇形は、ビームの本数によって表示するビームパターンを変えればよい。
【0043】
また、1つのビームを表すパターンのうちの塗りつぶされた図形の数は受信品質レベルを表す。例えば、
図5の例においては、表示パターン501は、形成されているビームがビーム104であり、受信品質レベルが2であることを示し(最も良い受信品質レベルは1)、点線で表したパターンは選択されていない(アンテナ部201で現在形成されていない)ビームを表す。なお受信品質は先に挙げたRSSIやSNR,SINR、誤り率以外に、通信速度、スループット、使用している変調モードMCS(Modulation and Coding Scheme)などの情報であってもよい。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、アンテナ部201で形成されているビームの方向及び受信品質を表示部204に表示することで、ユーザは自分が所持している端末が左右方向のどちらの基地局と接続しているかを容易に認識することができる。従って、ユーザは、端末をどちらの方向に向ければ、より通信品質が改善するかが分かるため、遮蔽などがある場合でも容易に回避し、安定した通信ができるようになる。
【0045】
<3>実施の形態2
上述の実施の形態1では、端末(STA)が1つのアンテナを有し、1つのアンテナによってビームを形成する場合の表示について説明した。本実施の形態では、ビームを形成できる方向が異なる複数のアンテナを備えた場合の表示について提示する。
【0046】
具体的には、端末は、複数のアンテナが異なる角度に設置されている。複数のアンテナのうちアンテナ1はユーザが表示部を見ながら操作する場合、ユーザの前方方向に電波を放射するアンテナであり、アンテナ2はユーザが表示部を見ながら操作する場合、ユーザの後方方向に電波を放射するアンテナである。
【0047】
図6は、複数のアンテナを備える端末の一例を示す図である。
図6は、端末(筐体)601は、アンテナ1の放射方向(主方向)602、アンテナ1によって形成可能なビーム603、604、605、アンテナ2の放射方向(主方向)606、アンテナ2によって形成可能なビーム607、608、609、表示部610を示す。なお、
図6の例では、アンテナ1が形成可能なビーム数Kは3であり、アンテナ2が形成可能なビーム数Mは3である。
【0048】
タブレット状のモバイル端末は、ユーザが手で持って使用する状況又は机の上において使用する状況が考えられるため、それぞれの使用状況に適した位置にアンテナが配置されている。例えば端末601は、机の上に表示部610を上にして置いた状況では、主方向が放射方向606であるアンテナ2を使うことが望ましい。
【0049】
ユーザが端末601を手で持ち、表示部610をユーザに向けて使用する状況について説明する。端末601は、APがユーザの前方の上方(例えば天井など)に設置されている場所では、主方向が放射方向602であるアンテナ1を使うことが望ましい。一方でAPがユーザの真上から後方の上方に設置されている場所では、端末601は、主方向が放射方向606であるアンテナ2を使うことが望ましい。
【0050】
このようなビームを形成できる方向が異なる複数のアンテナを備えた場合に、各アンテナ部に形成可能なビームの放射方向を示すパターンと、形成されているビームの方向と、を表示することにより、さらに利便性が向上する。
【0051】
図7に、本実施の形態の端末601の構成を示す。端末601は、アンテナ部1(701)と、アンテナ部2(702)と、アンテナ切替え部703と、ミリ波無線部704と、制御部705と、送信部706と、受信部707と、受信品質測定部708と、を有する。ミリ波無線部704は、
図2のミリ波無線部202と同様の動作をする。
【0052】
端末601からフレームを送信する場合、制御部705は送信部706に送信データを入力する。送信部706は入力された通信データを無線通信に適した信号フォーマットに変換し、ミリ波周波数帯の無線信号に変換し、アンテナ切替え部703に出力する。制御部705は、アンテナ部1(701)とアンテナ部2(702)とのいずれか1つを選択し、アンテナ切替え部703に対して無線信号の出力経路の切り替えを制御し、選択されたアンテナ部に対して送信モードの切替え、及び、送信に用いるビームの選択を制御する。アンテナ切替え部703は、選択されたアンテナ部に対して、無線信号を出力する。選択されたアンテナ部は選択されたビームに指向性を切り替え、アンテナ切替え部703を介して送信部706から入力された無線信号を放射する。
【0053】
端末601がフレームを受信する場合、制御部705は、アンテナ部1とアンテナ部2とのいずれか1つを選択し、アンテナ切替え部703に対して無線信号の入力経路の切り替えを制御し、選択されたアンテナ部に対して受信モードに切替え、及び、受信に用いるビームの選択を制御する。アンテナ切替え部703は、選択されたアンテナ部から入力された無線信号を、受信部707に出力する。選択されたアンテナ部は選択されたビームに指向性を切替え、受信した無線信号を、アンテナ切替え部703を介して受信部707に出力する。
【0054】
受信部707は、入力された無線信号からフレームを検出した後、信号処理に適した周波数帯の信号に変換し、予め定めた信号フォーマットに従い復調し、受信データを制御部705に出力する。また、受信部707からの信号に基づき、受信品質測定部708は信号の受信品質を測定し、測定結果を制御部705に出力する。制御部705は入力された信号、受信品質、及び選択したアンテナ部に関する情報に基づき、表示部610に表示すべき情報を出力する。表示部610は、入力された情報をディスプレイパネルやインジケータなどの手段を用いてユーザに表示する。
【0055】
制御部705は、データ通信に先立ち、APとの間で最も伝送品質が良くなるビームの組み合わせを選択するビームフォーミングトレーニングを行う。
【0056】
図8は、複数のアンテナを用いるSTA601と、AP102との間で行われるビームフォーミングトレーニングの一例を示すタイミング図である。
図8は、STA601が送信するトレーニングフレーム801、802、803、804、805、806、フィードバックフレーム807、ACK(Acknowledge)フレーム808を示す。
図8ではSTA601のトレーニングを示したが、AP102も同様にしてトレーニングを行う。
【0057】
先ず、STA601は、アンテナをアンテナ1(アンテナID=1)に切替えて、アンテナ1のビームを切替える毎に、トレーニングフレーム801、802、803を送信する。例えば、STA601は、トレーニングフレーム801をアンテナID=1,ビームID=1(ビーム603)で送信し、トレーニングフレーム802をアンテナID=1,ビームID=n(ビーム604)で送信し、トレーニングフレーム803をアンテナID=1,ビームID=N(ビーム605)で送信する。
【0058】
次に、STA601は、アンテナをアンテナ2(アンテナID=2)に切替えて、アンテナ2のビームを切替える毎に、トレーニングフレーム804、805、806を送信する。例えば、STA601は、トレーニングフレーム804をアンテナID=2,ビームID=1(ビーム607)で送信し、トレーニングフレーム805をアンテナID=2,ビームID=m(ビーム608)で送信し、トレーニングフレーム806をアンテナID=2,ビームID=M(ビーム609)で送信する。
【0059】
ここで、各トレーニングフレームは、送信に使用したアンテナID、ビームIDの情報、及び、自トレーニングフレームの後に、いくつのフレームを送信するかを示す残りフレーム数の情報を含む。
【0060】
AP102は、トレーニングフレーム801、802、803、804、805、806を正常に受信できた場合、受信したトレーニングフレームの受信品質、トレーニングフレームが含むアンテナID、ビームID及び残りフレーム数の情報、を記憶する。STA601のアンテナ方向、ビーム方向及びSTA601自体の向きによっては、正常な受信が困難なトレーニングフレームも存在するが、AP102は正常に受信できたトレーニングフレームから得られた残りフレーム数の情報により、STA601からのトレーニングフレーム送信期間を知ることができる。
【0061】
AP102はトレーニングフレーム送信期間の終了を検出した後、STA601からのトレーニングフレーム(801から806)送信期間中にAP102が受信したトレーニングフレームの中で最も受信品質が良いと判断したトレーニングフレームが含むアンテナID及びビームID(以下「STAのベストセクタ」と呼ぶこともある)をフィードバックフレーム807でSTA601に通知する。
【0062】
STA601は、フィードバックフレーム807を受信し、通知されたSTAのベストセクタを示すアンテナIDとビームIDを用いて、STA601からAP102への送信に対して、最も受信品質が良くなるアンテナIDとビームIDを判定し、以降のAP102との通信には、判定したアンテナ及びビームを用いる。
【0063】
STA601はフィードバックフレーム807の受信応答をACKフレーム808でAP102に通知する。これによりビームフォーミングトレーニングが終了する。
【0064】
図9は、本実施の形態の表示を行うまでに、STA601の制御部705で行われる制御を示すフロー図である。
図9においてSはステップを表す。
【0065】
S901において、STA601はAP102との接続を開始する。例えば、STA601は、AP102が周期的に送信しているビーコンフレームを検出することで、通信カバーエリアに入ったことを検出し、AP102に接続要求を行う。
【0066】
STA601は、AP102との接続が完了した後、ビームフォーミングトレーニングを開始する(S902)。上述したとおり、STA601は、アンテナとビームとを切替える毎に、トレーニングフレームを送信し(S903)、AP102から送信されるフィードバックフレームを受信し(S904)、AP102との通信に用いるアンテナとビームとを決定してビームフォーミングトレーニングが終了する(S905)。
【0067】
ビームフォーミングトレーニングが終了した後、データ通信期間が開始し、STA601は、決定したアンテナとビームとを用いてAP102へのデータ通信を行う(S906)。
【0068】
ここで、STA601は、データ通信中の受信フレームを用いて受信品質を測定し(S907)、測定した受信品質と決定したビームをユーザに表示する(S908)。STA601は、S909で接続を終了するか否か判断し、接続を終了しない場合にはS902に戻り、接続を終了する場合には処理を終了する。
【0069】
図10に、表示部610で表示するビームの表示例を示す。本実施の形態の表示では、上述した実施の形態1の表示の特徴に加えて、各アンテナ部によって形成可能なビームの放射方向を示すパターン(点線)と、各アンテナ部によって実際に形成されるビームの方向(黒塗り)と、を表示する。
【0070】
具体的に説明する。
図10Aの表示画像610aでは、ビーム603(
図7)に対応する表示パターン1001、ビーム604に対応する表示パターン1002、ビーム605に対応する表示パターン1003を示す。表示パターン1001と表示パターン1002の間、表示パターン1002と表示パターン1003の間の表示パターンは、ビーム603とビーム604の間、またはビーム604と605の間の方向のビーム(例えばビームID=k−1またはビームID=k+1など)であり、各アンテナ部によって形成可能なビームの放射方向を示すパターンである扇形は、ビームの本数によって表示するビームパターンを変えればよい。
【0071】
表示パターン1001、1002、1003は、アンテナ1(主放射方向602)の使用を表すため、基地局の方向がユーザの前方にあることを知らせるために、扇が上向き(向こう向き)のパターンとするとよい。
【0072】
また、
図10Bの表示画像610bは、ビーム607(
図7)に対応する表示パターン1004、ビーム608に対応する表示パターン1005、ビーム609に対応する表示パターン1006を示す。表示パターン1004と表示パターン1005の間、表示パターン1005と表示パターン1006の間の表示パターンは、ビーム607とビーム608の間、またはビーム608とビーム609の間の方向のビーム(例えばビームID=m−1またはビームID=m+1など)であり、形成可能なビームの放射方向を示すパターンである扇形は、ビームの本数によって表示するビームパターンを変えればよい。
【0073】
パターン1004、1005、1006は、アンテナ2(主放射方向606)の使用を表すため、基地局の方向がユーザの後方にあることを知らせるために、扇が下向き(手前向き)のパターンとするとよい。
【0074】
また、1つのビームを表す表示パターンのうちの塗りつぶされたブロックの数は受信品質レベルを表す。例えば、
図10Aの例においては、表示部610aに表示される表示パターン1001は、形成されているビームがビーム603であり、受信品質レベルが2であることを示し、点線で表した表示パターンは選択されていない(アンテナ部1で現在形成されていない)ビームを表す。なお受信品質は先に挙げたRSSI、SNR,SINR、誤り率以外に、通信速度、スループット、使用している変調モードMCS(Modulation and Coding Scheme)などであってもよい。
【0075】
このように、本実施の形態によれば、選択されたアンテナと、選択されたアンテナで形成されているビームの方向及び受信品質を表示部610に表示することで、ユーザは自分が所持している端末が前後左右方向のどちらの基地局と接続しているか(つまり、左右に加えて、前後のどちらに基地局があるか)を容易に認識することができる。従って、ユーザは、端末をどちらの方向に向ければ、より通信品質が改善するかが分かるため、遮蔽などがある場合でも容易に回避し、安定した通信ができるようになる。
【0076】
なお、本実施の形態では、アンテナが2つの場合について説明したが、勿論、アンテナが3つ以上の場合にも適用できる。要は、各アンテナ部によって形成可能なビームの放射方向を示すパターンと、形成されているビームの方向とを表示すればよい。
【0077】
<4>実施の形態3
本実施の形態では、上述の実施の形態1、2のようなミリ波帯の通信に加えて、マイクロ波帯を用いた通信を行うことができる場合の表示について説明する。
【0078】
図11は、マイクロ波通信とミリ波通信とを組み合わせたヘテロジニアスネットワークシステムの一例を示す図である。
図11において、端末1101は、マルチバンド端末でありミリ波及びマイクロ波の両方で通信を行うことができる。ミリ波基地局1102、ミリ波基地局1102の通信カバーエリア1103、マルチバンド端末1101のミリ波アンテナで形成するビーム1104、1005、1106、マイクロ波基地局1107、マイクロ波基地局1107の通信カバーエリア1108である。マイクロ波基地局1107は例えば2.4GHz帯や5GHz帯を利用する無線LANである。
【0079】
マルチバンド端末1101は、通信カバーエリア1108内に移動した後、マイクロ波基地局1107と接続し、通信カバーエリア1103内に移動した後、ミリ波基地局1102と接続してデータ通信を行う。
【0080】
図12は、マルチバンド端末1101の構成を示す。マルチバンド端末1101は、ミリ波アンテナ部1201と、ミリ波無線部1202と、マイクロ波アンテナ部1203と、マイクロ波無線部1204と、制御部1205と、表示部1206と、を有する。マイクロ波無線部1204は、マイクロ波送信部1207と、マイクロ波受信部1208と、マイクロ波受信品質測定部1209と、を有する。
【0081】
ミリ波アンテナ部1201はアンテナ部201(
図2)と同様であり、ミリ波無線部1202はミリ波無線部202(
図2)と同様である。また、制御部1205がミリ波基地局1102と接続してデータ通信を行う場合は上述のとおりである。
【0082】
マルチバンド端末1101は、マイクロ波基地局1107と接続してデータ通信を行う場合、以下のように動作する。
【0083】
マルチバンド端末1101からマイクロ波フレームを送信する場合、制御部1205はマイクロ波送信部1207に送信データを入力する。マイクロ波送信部1207は入力された通信データをマイクロ波無線通信に適した信号フォーマットに変換し、マイクロ波周波数帯の無線信号に変換し、マイクロ波アンテナ部1203に出力する。制御部1205は、マイクロ波アンテナ部1203を送信モードに切替える。マイクロ波アンテナ部1203はマイクロ波送信部1207から入力された無線信号を放射するが、一般にマイクロ波はミリ波よりも直進性が強くないため、無指向性に近い広い角度範囲に放射される。
【0084】
マルチバンド端末1101がマイクロ波フレームを受信する場合、制御部1205はマイクロ波アンテナ部1203を受信モードに切替える。マイクロ波は無指向性に近い広い角度範囲で受信される。マイクロ波アンテナ部1203は、受信したマイクロ波帯の無線信号をマイクロ波受信部1208に出力する。マイクロ波受信部1208は入力されたマイクロ波帯の無線信号からマイクロ波フレームを検出した後、信号処理に適した周波数帯の信号に変換し、予め定めた信号フォーマットに従い復調し、受信データを制御部1205に出力する。また、マイクロ波受信部1208からの信号に基づいて、マイクロ波受信品質測定部1209はマイクロ波信号の受信品質(例えば受信強度を示すRSSI(Receive Signal Strength Indicator)、信号対雑音比SNR(Signal-to-Noise Ratio)、信号対干渉雑音比SINR(Signal-to-Interference-plus-Noise Ratio)、及び誤り率の少なくとも1つ)を測定し、測定結果を制御部1205に出力する。
【0085】
制御部1205は入力されたミリ波信号及びミリ波受信品質と、マイクロ波信号及びマイクロ波受信品質とに関する情報に基づき、表示部1206に表示する情報を出力する。表示部1206は、入力された情報をディスプレイパネルやインジケータなどの手段を用いてユーザに表示する。
【0086】
図13は、本実施の形態の表示を行うまでに、マルチバンド端末1101の制御部1205で行われる制御を示すフロー図である。
図13においてSはステップを表す。
【0087】
S1301において、制御部1205は接続先の判定を行う。通信カバーエリア1108内に移動したと判定した場合、マイクロ波基地局1107と接続するためS1311に移る。通信カバーエリア1103内に移動したと判定した場合、ミリ波基地局1102と接続するためS1302に移る。いずれの通信カバーエリア内に移動したかの判定は、例えば地図情報や位置情報などを用いても良いし、基地局から送信されるビーコンなどを受信することによって判定しても良いし、さらに、ユーザが主体的に接続先を切替えるようにしてもよい。
【0088】
S1302において、マルチバンド端末1101はミリ波基地局1102との接続を開始する。例えば、制御部1205は、ミリ波基地局1102が周期的に送信しているビーコンフレームを検出することで通信カバーエリア1103内に移動したことを検出し、ミリ波基地局1102に接続要求を行う。
【0089】
ミリ波基地局1102との接続が完了した後、ビームフォーミングトレーニングを開始する(S1303)。上述したとおり、ビームを切替える毎に、トレーニングフレームを送信し(S1304)、ミリ波基地局1102から送信されるフィードバックフレームを受信し(S1305)、ミリ波基地局1102との通信に用いるビームを決定してビームフォーミングトレーニングを終了する(S1306)。
【0090】
ビームフォーミングトレーニングが終了した後、データ通信期間が開始され、マルチバンド端末1101は、決定したビームを用いてミリ波基地局1102へのデータ通信を行う(S1307)。
【0091】
ここで、マルチバンド端末1101は、データ通信中の受信フレームを用いてミリ波受信品質を測定し(S1308)、測定したミリ波受信品質と決定したビームを、後述するパターン1(
図14A)で表示部1206に表示する(S1309)。マルチバンド端末1101は、S1310で接続を終了するか否か判断し、接続を終了しない場合にはS1303に戻り、接続を終了する場合には処理を終了する。
【0092】
一方、S1311において、マルチバンド端末1101はマイクロ波基地局1107との接続を開始する。例えば、制御部1205は、マイクロ波基地局1107が周期的に送信しているマイクロ波ビーコンフレームを検出することで通信カバーエリア1108内に移動したことを検出し、マイクロ波基地局1107に接続要求を行う。
【0093】
マイクロ波基地局1107との接続が完了した後、データ通信期間が開始され、マルチバンド端末1101は、マイクロ波基地局1107へのデータ通信を行う(S1312)。
【0094】
ここで、マルチバンド端末1101は、データ通信中のマイクロ波受信フレームを用いてマイクロ波受信品質を測定し(S1313)、測定したマイクロ波受信品質を、後述するパターン3(
図14B)で表示部1206に表示する(S1314)。マルチバンド端末1101は、S1315で接続を終了するか否か判断し、接続を終了しない場合にはS1312に戻り、接続を終了する場合には処理を終了する。
【0095】
図14に、表示部1206で表示する表示パターンの表示例を示す。本実施の形態では、ミリ波帯を用いた通信が行われている場合、表示パターンは、形成されているビームの方向を表示する(
図14A)、一方、マイクロ波帯を用いた通信が行われている場合、表示パターンは、ミリ波帯のビームよりも広い放射パターンを表示する(
図14B)。実際上、
図14の例では、ミリ波帯を用いて通信している場合、表示パターンは、ビームの方向と受信品質レベルとを表示する。一方で、マイクロ波帯を用いて通信している場合、表示パターンは、無指向性のため幅の広い放射パターンで受信品質レベルを表示する。
【0096】
具体的に説明する。マルチバンド端末1101がミリ波基地局1102と接続している場合、マルチバンド端末1101は、
図14Aに示す実施の形態1と同様の表示(パターン1)を行う。これに対して、マルチバンド端末1101がマイクロ波基地局1107と接続している場合、マルチバンド端末1101は、
図14Bに示す表示を行う(パターン3)。
【0097】
図14Bに示した表示パターン1404は、マイクロ波の無指向性を表すために、
図14Aの表示パターンよりも角度範囲が広い塗りつぶされたブロックで表現している。これにより、角度範囲の変化に基づいて、ミリ波で接続しているかマイクロ波で接続しているかをユーザが容易に識別できる。マイクロ波受信品質の表示は、ミリ波の表示パターン1401(
図14A)と同様、塗りつぶしたブロックの数で受信品質のレベルを表すようにすればよい。
【0098】
このように、本実施の形態によれば、選択された周波数帯と、ビームの方向と、受信品質とをユーザが識別可能に表示したことにより、ユーザはマルチバンド端末1101がマイクロ波とミリ波のどちらの周波数帯の基地局と接続しているかを容易に認識できる。従って、ユーザは、ミリ波で接続している場合、端末をどちらの方向に向ければより通信品質が改善するかが分かるため、遮蔽などがある場合でも容易し、安定した通信ができるようになる。また、ユーザは、マイクロ波に接続している場合、マルチバンド端末1101の姿勢及び方向のいずれか1つを変えても通信品質がほとんど変わらないことを認識できる。
【0099】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0100】
図5、
図10、
図14の表示例では、ビームの方向及び受信品質を、それに対応したブロック(領域)を塗りつぶすことで表現したが、要は、ビームの方向及び受信品質に対応した領域を色又は模様で識別可能に表示すればよい。また、扇形以外の形状を用いてビームの方向及び受信品質を表現してもよい。
【0101】
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0102】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0103】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0104】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0105】
本開示の無線通信装置は、ミリ波帯を用いて通信を行うためのビームフォーミングによって第1の複数のビームから選択されたビームを形成する第1のアンテナ部と、前記選択されたビームの放射方向を示す第1のパターンを表示する表示部と、を具備する。
【0106】
本開示の無線通信装置において、前記表示部は、更に、前記第1の複数のビームのうち、前記第1のアンテナ部によって選択されていないビームの放射方向を示す第2のパターンを、前記第1のパターンと異なるパターンを用いて、表示する。
【0107】
本開示の無線通信装置において、前記表示部は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンを、複数の扇形を用いて表示し、前記第1のパターンを、前記複数の扇形のいずれかの領域を他の領域と異なる色付け又は模様で表示する。
【0108】
本開示の無線通信装置において、前記第1のパターンは、更に、前記選択したビームによる受信品質を示す。
【0109】
本開示の無線通信装置において、前記表示部は、前記複数の扇形を径方向に分割し、受信品質が良いほど、中心角から円弧方向へと色付け又は模様で表示する分割領域を増やす。
【0110】
本開示の無線通信装置において、前記ビームフォーミングにより、前記第1のアンテナ部と異なる放射方向の第2の複数のビームから選択されたビームを形成する第2のアンテナ部を更に備え、前記表示部は、更に、前記第2のアンテナ部により選択されたビームの放射方向を示す第3のパターンと、前記第2の複数のビームのうち、前記第2のアンテナ部によって選択されていないビームの放射方向を示す第4のパターンと、を表示する。
【0111】
本開示の無線通信装置において、マイクロ波帯を用いた通信を行う第3のアンテナ部を更に含み、前記表示部は、前記第1のアンテナ部を用いた通信では、前記第1のパターンを表示し、前記第3のアンテナ部を用いた通信では、受信品質を示す第5のパターンを表示する。
【0112】
本開示の無線通信装置における表示方法は、無線通信装置における表示方法であって、ミリ波帯を用いて通信を行うためのビームフォーミングによって第1の複数のビームから選択されたビームを形成し、前記選択されたビームの放射方向を示す第1のパターンを表示する。