特許第6872655号(P6872655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872655
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】三次元物体の積層造形法のための装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/105 20060101AFI20210510BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20210510BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20210510BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20210510BHJP
   B29C 64/277 20170101ALI20210510BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210510BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20210510BHJP
【FI】
   B22F3/105
   B22F3/16
   B29C64/153
   B29C64/268
   B29C64/277
   B33Y30/00
   B33Y70/10
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-67424(P2020-67424)
(22)【出願日】2020年4月3日
(62)【分割の表示】特願2018-506256(P2018-506256)の分割
【原出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2020-128593(P2020-128593A)
(43)【公開日】2020年8月27日
【審査請求日】2020年4月3日
(31)【優先権主張番号】102016104180.7
(32)【優先日】2016年3月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツォーク・フランク
(72)【発明者】
【氏名】ベックマン・フローリアーン
(72)【発明者】
【氏名】ツォイルナー・ファービアン
【審査官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−157405(JP,A)
【文献】 特開2009−006509(JP,A)
【文献】 特表2016−528374(JP,A)
【文献】 特開2013−049137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 3/16
B29C 64/00−64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形平面(11)内に形成された、少なくとも一つのエネルギ光線(4)によって固化が可能な造形材料(3)から成る造形材料層を、連続して層ごとに選択的に照射し、それに伴い固化することによって、三次元物体(2)を積層造形する装置(1)であって、
固化する造形材料層を選択的に照射するために前記造形平面(11)へ向けられる第1エネルギ光線(4)を生成するように構成された第1照射構成要素(10)であって、前記装置(1)のハウジング構造部(7)上に配置若しくは形成された第1磁気的固定構成要素(13)と前記第1照射構成要素(10)上に配置若しくは形成された第1磁気的滑走構成要素(14)とを備える第1磁気的移動及び支承装置(12)によって前記造形平面(11)に対する少なくとも一つの自由度で移動可能に支承された第1照射構成要素(10)を備える、第1照射装置(9)と、
固化する造形材料層を選択的に照射するために前記造形平面(11)へ向けられる第2エネルギ光線(4)を生成するように構成された第2照射構成要素(10)であって、前記装置(1)の前記ハウジング構造部(7)上に配置若しくは形成された第2磁気的固定構成要素(13)と前記第2照射構成要素(10)上に配置若しくは形成された第2磁気的滑走構成要素(14)とを備える第2磁気的移動及び支承装置(12)によって前記造形平面(11)に対する少なくとも一つの自由度で移動可能に支承された第2照射構成要素(10)を備える、第2照射装置(9)と、
を備える装置(1)であって、
前記第1磁気的固定構成要素(13)が、移動軌道若しくは移動平面を定義する第1平面状固定構成要素部分(17)を備えると共に、前記造形平面(11)に対して平行な位置に方向付けられ、
前記第2磁気的固定構成要素(13)が、移動軌道若しくは移動平面を定義する第2平面状固定構成要素部分(17)を備えると共に、前記造形平面(11)に対して角度をなす位置に方向付けられることを特徴とする、
装置。
【請求項2】
前記第1照射構成要素(10)が、前記造形平面(11)に対して90°未満の照射角度を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2照射構成要素(10)が、前記造形平面(11)に対して90°未満の照射角度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1平面状固定構成要素部分(17)及び/又は前記第2平面状固定構成要素部分(17)が、少なくとも部分的に平らであるように、或いは少なくとも部分的にアーチ状であるか若しくは湾曲しているように形成されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1平面状固定構成要素部分(17)及び/又は前記第2平面状固定構成要素部分(17)が、前記造形平面(11)の外側寸法を少なくとも部分的に包囲することを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記造形平面(11)に対して角度をなすと共に、前記造形平面(11)の外側寸法を少なくとも部分的に包囲する、第3平面状固定構成要素部分(17)を備えることを特徴とする、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1平面状固定構成要素部分(17)及び/又は前記第2平面状固定構成要素部分(17)が、前記造形平面(11)に対する少なくとも一つの自由度で移動可能に支承されたそれぞれの保持装置に保持されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1平面状固定構成要素部分(17)及び/又は前記第2平面状固定構成要素部分(17)が、モジュール状に形成されると共に、前記造形平面(11)に対して前もって定められた少なくとも一つの配置位置で、前記装置(1)の前記ハウジング構造部(7)に取り外し可能に取り付けられることを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1照射装置(9)が、構造的に第1照射構成要素群(18、19)にまとめられた複数の第1照射構成要素(10)を備え、且つ/或いは、前記第2照射装置(9)が、構造的に第2照射構成要素群(18、19)にまとめられた複数の第2照射構成要素(10)を備えることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1照射構成要素(10)及び/又は前記第2照射構成要素(10)が、レーザダイオード構成要素、又はレーザダイオード構成要素と連結可能か若しくは連結されている光学構成要素として形成されるか、又は当該レーザダイオード構成要素又は当該光学構成要素を備えるか、或いは、前記第1照射構成要素(10)及び/又は前記第2照射構成要素(10)が、光学的走査装置の一部としての走査構成要素として形成されるか、又は当該走査構成要素を備えることを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記造形平面(11)と前記第1磁気的移動及び支承装置(12)との間に、且つ/或いは、前記造形平面(11)と前記第2磁気的移動及び支承装置(12)との間に配置されると共に、前記造形平面(11)を前記第1磁気的移動及び支承装置(12)及び/又は前記第2磁気的移動及び支承装置(12)から磁気的に遮断するように構成された、少なくとも一つの遮断構成要素を備えることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の装置。
【請求項12】
造形平面(11)内における、エネルギ光線(4)によって固化が可能な造形材料(3)から成る個々の造形材料層を、連続して層ごとに選択的に照射し、それにより固化することによって、少なくとも一つの三次元物体(2)を積層造形する方法であって、請求項1〜11の何れか1項に記載の装置(1)を用いて、少なくとも一つの三次元物体(2)を積層造形することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つのエネルギ光線を用いて、連続して、層ごとに、選択的に照射することによって、またそれに伴う、造形平面内に形成された、固化が可能な造形材料からなる造形材料層の固化による、三次元物体の積層造形のための装置に関し、この装置は造形平面上に向けられている、選択的に固化するための造形材料層を選択的に照射するためのエネルギ光線を生成するための少なくとも一つの照射構成要素を含む、照射装置を含む。
【背景技術】
【0002】
三次元物体の積層造形若しくは生成造形のためのこの種の装置は基本的に公知である。造形するべき三次元物体は、相応する装置を用いての、連続した、層ごとの、選択的な照射によって、またそれに伴う、造形平面内に連続して塗布された、固化が可能な造形材料からなる造形材料層の、造形するべき物体のそれぞれの横断面領域に対応する領域での、エネルギ光線を使った固化によって、積層的に若しくは生成的に積み上げ形成される。固化するべき造形材料層のこの連続した、選択的な、層ごとの照射及びこれに伴う固化は、幾何的形状、すなわち特にそのつど造形するべき三次元物体の層に関連付けられた横断面の幾何的形状を記述する造形データを基盤に実施される。
【0003】
選択的に固化するべき造形材料層を選択的に照射するために、装置側に一つの照射装置が設けられている。この照射装置は一つ又は複数の照射構成要素を含み、照射構成要素は造形平面へ向けられているエネルギ光線を生成するために設けられている。
【0004】
特に比較的大きな造形平面若しくは造形容積の場合は、対応する照射構成要素が移動可能に支承されていることが目的に適っている。しかしながら、一般的にこのために使われている技術的解決策は、例えば照射構成要素の運動の順応性、精密さ、軽快な動きを顧慮してさらに発展が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、三次元物体の積層造形のための、これまでに比べて、特に照射構成要
素の運動の順応性、精密さ、軽快な動きを顧慮して、改善された装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載の装置によって解決される。これに従属する請求項はこの装置の特別な実施形態に関する。さらにこの課題は請求項12に記載された方法で解決される。
【0007】
ここで説明されている装置は、一般的に少なくとも一つの三次元物体、すなわち例えば技術的部品若しくは技術的部品群を、固化が可能な造形材料からなる個々の造形材料層を、少なくとも一つの照射装置に属する照射構成要素から発生されたエネルギ光線を用いた、連続した、層ごとの、選択的な照射及びそれに伴う固化によって、積層造形すること若しくは生成造形することに貢献する。このエネルギ光線はレーザ光線で有り得、この装置は対応して、選択的レーザ溶融装法(SLM法)又は選択的レーザ焼結法(SLS法)を実施するための装置であり得る。
【0008】
相応のエネルギ照射を用いて固化が可能な造形材料は、金属粉末、プラスチック粉末及び/又はセラミック粉末で有り得る。金属粉末、プラスチック粉末又はセラミック粉末の名の下では、さまざまな金属、プラスチック又はセラミックの粉体混合とも理解される。この場合に金属粉末は少なくとも一つの金属合金からなる粉末で有って差し支えない。
【0009】
一つの三次元物体(以下では省略して「物体」と呼ぶ)の製造のための、そのつど固化するべき造形材料層の、連続した、層ごとの、選択的な照射、またそれに伴う、連続した、層ごとの、選択的な固化は、物体に関した造形データを基礎として実施される。相応する造形データは一般的に物体の幾何的若しくは幾何的・構造的形状を記述する。相応する造形データは、例えば造形するべき物体のCADデータであるか、若しくはそのようなものを含むことができる。
【0010】
この装置は積層的造形プロセスを実施するために典型的に必要とするすべての機能構成要素を含む。対応する装置の機能的若しくは構造的な構築は一般的に周知であるため、以下には、ここで記述される原理の説明のために重要な、装置の機能構成要素のみを詳細に説明する。
【0011】
ここで記述される原理の説明のために重要な、装置の第一の機能構成要素は照射装置である。この照射装置は少なくとも一つの照射構成要素を含み、照射構成要素は造形平面へ向けられている、選択的に固化するための造形材料層を選択的に照射するためのエネルギ光線を生成するために設けられている。さらに下記には、照射構成要素がとりわけ例えばレーザダイオード構成要素であるか若しくは少なくとも一つのレーザダイオード構成要素を含む照射構成要素で有り得ることが説明されている。
【0012】
ここで記述されている原理を説明するために重要な、装置の別の機能構成要素は、磁気的移動及び支承装置(以下では省略して「磁気的支承装置」と呼ぶ)であって、磁気的支承装置は少なくとも一つの(装置側の造形チャンバ又はプロセスチャンバ内に配置されている)照射構成要素を、造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で移動可能に支承するために設けられている。この磁気的支承装置によって実現された移動可能な支承は、以下で詳細に分かるように、装置のさまざまな機能構成要素に帰属する、支承装置のさまざまな磁気的構成部分の間の磁気的相互作用に基づき、また造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で、個々の、複数の又はすべての照射構成要素の特に精密な、速やかな、及び軽快な動き、すなわち磨耗の少ない運動を許す。照射構成要素の移動は、少なくとも一つの並進軸に沿った並進的運動の自由度及び/又は少なく
とも一つの旋回軸を中心とした旋回的運動の自由度を含むことができる。造形平面に対して相対的な及び/又は少なくとも一つの別の照射構成要素に対して相対的な照射構成要素の移動の場合は、それゆえにそれは例えば一つの直線状運動軸(並進軸)に沿った直線運動及び/又は一つの回転軸(旋回軸)を中心とした回転運動で有り得る。もちろん、個々の、複数の又はすべての照射構成要素は、異なった運動の自由度内を組み合わされて移動することができる。
【0013】
この磁気的支承装置は、それぞれの照射構成要素の、造形平面に対して相対的に、精密な、速やかな、また順応性のある配置と方向付けを許し、このことは、特に造形するべき物体が比較的複雑な幾何的形状の場合においても、比較的大きな造形平面若しくは造形容量の場合においても、できる限り高い造形部品の品質、できる限り高い造形率、並びにそれぞれの照射構成要素のできる限り均等な活用を得るために、目的に適っている。
【0014】
この照射装置が多数の照射構成要素を含み、その際に特定の数量の照射構成要素が構造的に少なくとも一つの照射構成要素群にまとめられている場合、特に造形するべき物体に関連して、異なる照射構成要素群は相互に依存して又は無関係に移動可能で有り得る。それぞれの照射構成要素群は、特定の数量の、相対的に相互に特定の方向付けで、例えば列状及び/又は欄状に配置されている照射構成要素を含むことができる。
【0015】
ここで説明される装置は全体として、それぞれの照射構成要素の、特に順応性のある、精密な、速やかな、また軽快な、すなわち磨耗が少ないゆえに、改善された移動を提供し、これをもって改善された装置が提供される。
【0016】
この磁気的支承装置は、典型的には少なくとも一つの、装置側のハウジング構造部上に、すなわち特に少なくとも部分的に造形平面の上方に配置されているか又は形成されていて、それをもってハウジング構造部に帰属するところの磁気的固定構成要素(magnetisches Statorelement)と、少なくとも一つの照射構成要素上に配置されているか又は形成されていて、すなわち特に少なくとも一つの照射構成要素と運動が連結されていて、それをもって照射構成要素に帰属するところの磁気的滑走構成要素(magnetische Laeuferelement)を含む。この磁気的滑走構成要素は、磁気的固定構成要素との磁気的な相互作用を介して、磁気的固定構成要素に対して相対的に移動可能に支承されている。それゆえに、それぞれの照射構成要素のこの移動可能な支承は、磁気的固定構成要素と、照射構成要素と運動が連結されている滑走構成要素との間の磁気的な相互作用によって実現される。磁気的固定構成要素のみでなく磁気的滑走構成要素も、能動的な磁気的構成要素として典型的には少なくとも一つの電磁的構成要素を含み、電磁的構成要素への電気供給のために磁気的固定構成要素及び/又は磁気的滑走構成要素は電気エネルギ供給部と接続されている。これと関連して、磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間の電気的接続も可能である。磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間の電気的接続は、例えば一つの電気的接続構成要素、特に電気ケーブルを使って磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間に実現されることができる。
【0017】
それぞれの磁気的固定構成要素若しくは滑走構成要素は二次元駆動の典型的な構成部分であり、この磁気的支承装置はそれゆえに二次元駆動として形成されているか又は少なくとも一つのそのような二次元駆動を含むことができる。
【0018】
二次元駆動として磁気的支承装置を形成することを顧慮して、磁気的支承装置は、相応する二次元駆動を実現するために必要な若しくは目的に適った機能構成要素、すなわち例えば、磁気的滑走構成要素を磁気的固定構成要素に沿って滑走支承することを可能にする滑走支承装置、及び/又は磁気的滑走構成要素を磁気的固定構成要素に沿って(空圧式に
)浮遊支承することを可能にする(空圧式)支承装置を含むことができる。
【0019】
少なくとも一つの磁気的固定構成要素は、典型的には少なくとも一つの、磁気的滑走構成要素のための移動軌道又は移動平面を定義する、平面状固定構成要素部分(Statorelementabschnitt)を備えている。この「平面状」という概念は、平らな平面のみではなく、平らではない平面、すなわち例えば湾曲した若しくは盛り上がった面も含む。それにより、この平面状固定構成要素部分は、少なくとも部分的に、特に完全に、平らに、又は少なくとも部分的に、特に完全に、湾曲しているか若しくはアーチ状であって、すなわち特に円蓋状に形成されていることができる。
【0020】
平面状固定構成要素部分は、造形平面に対して相対的に平行及び/又は角度をもって方向付けられていることができる。平面状固定構成要素部分を造形平面に対して相対的に平行に配置することは、その時の磁気的滑走構成要素若しくはそれと運動が連結されている照射構成要素が造形平面に対して平行に移動することを可能にし、それをもって直角な、すなわち造形平面に対して相対的に約90°の照射角度のもとで実施される、造形平面の照射を可能にする。平面状固定構成要素部分を造形平面に対して相対的に角度をもった、すなわち例えば傾斜した配置にすることは、それぞれの磁気的滑走構成要素若しくはそれと運動が連結されている照射構成要素の移動を、造形平面に対して相対的に(明らかに)90°より小さい角度内で可能にし、それをもって角度をもった、すなわち90°より小さい照射角度で、特に造形平面に対して相対的に1°と89°との間の、好ましくは10°と80°の間の、造形平面の照射を可能にする。
【0021】
一般的に、それぞれの平面状固定構成要素部分の幾何的実施形態、すなわち特に形と寸法によって、及び/又はそれぞれの平面状固定構成要素部分の、造形平面に対して相対的な方向付けによって、それぞれの磁気的滑走構成要素のさまざまな移動軌道若しくは移動平面が、またそれをもって、それぞれの照射構成要素の起こり得る移動、並びにその結果として生じる照射状況を顧慮して、順応性の最大値を実現できるということが肝要である。
【0022】
典型的には、少なくとも一つの平面状固定構成要素部分は造形平面に対して平行に方向付けられ、また造形平面の上方に配置されている。造形平面に対して平行に方向付けられ、また造形平面の上方に配置されている平面状固定構成要素部分の平面状の広がりは、この平面状固定構成要素部分が造形平面を少なくとも部分的に、場合によっては完全に覆うように選択されている。もちろん固定構成要素部分と造形平面との間には十分な大きさの距離があり、その結果磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間の磁気的相互作用は造形平面内で形成された(磁気的若しくは磁気化可能な)造形材料層の品質に(磁気的な)影響を与えない。場合によってはこのために別個の磁気遮断構成要素、例えば適した遮断構造若しくは適した遮断材料からなる、例えば遮断金属板が設けられることができる。この装置にはそれゆえに、少なくとも一つの、造形平面と磁気的支承装置の間に配置可能な又は配置されている、造形平面を磁気的支承装置から磁気的に遮断するための遮断構成要素が属していることができる。
【0023】
造形平面に対して相対的に角度をもって方向付けられている平面状固定構成要素部分は、少なくとも部分的に、場合によっては完全に、造形平面の外側寸法に沿って伸延し、またそれゆえに造形平面の外側寸法を少なくとも部分的に、場合によっては完全に囲むことができる。もちろん、造形平面の外側寸法を一緒に少なくとも部分的に、場合によっては完全に包囲する、造形平面に対して相対的に角度をもって方向付けられている、複数の平面状固定構成要素部分を備えることができる。それぞれの平面状固定構成要素部分の造形平面に対して相対的に角度をもった配置によって、相応する平面状固定構成要素部分で少なくとも部分的に造形平面の「取り囲み」が提供される。それぞれの平面状固定構成要素
部分上に移動可能に支承されているそれぞれの磁気的滑走構成要素若しくはそれと運動が連結されているそれぞれの照射構成要素によって、さまざまな方向及び/又はさまざまな照射角度をもっての造形平面の(同時)照射が可能である。
【0024】
それぞれの照射構成要素の起こり得る移動と、その結果として生じる照射状況の順応性をさらに高めるために、それぞれの平面状固定構成要素部分の造形平面に対する相対的な配置と方向付けに依存することなく、平面状固定構成要素部分も造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で移動可能に支承されていることができる。このためにこの平面状固定構成要素部分は、造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で移動可能に支承されているところの、保持装置に保持装置で固定されている。相応する保持装置の運動は、少なくとも一つの並進軸に沿った並進的運動の自由度及び/又は少なくとも一つの旋回軸を中心とした旋回的運動の自由度を含むことができる。それゆえに、相応する保持装置が造形平面に対して相対的に移動する場合、それは例えば一つの直線状運動軸(並進軸)に沿った直線移動及び/又は一つの回転軸(旋回軸)を中心とした回転移動で有り得る。もちろんこの保持装置は、さまざまな運動の自由度内を組み合わされて移動可能である。
【0025】
個々の、複数の又はすべての平面状固定構成要素部分はモジュール状に形成されていることができ、この際にこのモジュール状に形成された平面状固定構成要素部分は、造形平面に対して相対的に前もって定められた少なくとも一つの配置位置で、装置側のハウジング構造部上に解除可能に取り付けられ得るか又は取り付けられている。このハウジング構造部は、例えば、さまざまに調整された、例えば幾何的形状すなわち特に寸法と形を顧慮した、少なくとも一つの平面状固定構成要素部分を受け入れるための、挿入可能に形成されている受け入れ装置が設けられていることができる。このようにして、できる限り高い造形部品品質及び/又はできる限り高い造形率を得るために、この装置を特定の「造形作業」すなわち特定の物体の積層造形を顧慮して、個々に応じて構成することが可能になる。
【0026】
照射構成要素は、レーザダイオード構成要素であるか、又はレーザダイオード構成要素と連結可能か若しくは連結されている、特にレンズ形状の光学構成要素であるか、又は光線屈折装置とも呼ばれるか若しくは見なされる光学的走査装置の一部としての走査構成要素であり得るか、又は上述の要素の少なくとも一つの照射構成要素を含むことができる。目的へのレーザダイオード構成要素の適合性は、その重さが僅かであることであって、その結果として照射構成要素の運動のためには比較的小さな質量が移動される。
【0027】
それぞれのレーザダイオード構成要素及び走査構成要素は、装置側のハウジング構造部によって境界付けされ、その中で積層造形過程が実施される造形チャンバ又はプロセスチャンバの中に配置されていることができる。しかしながら、一つ又は複数のレーザダイオード構成要素は、相応する造形チャンバ又はプロセスチャンバの外に配置されることも可能である。この場合は、それぞれ少なくとも一つのレーザダイオード構成要素と光学的に連結可能又は連結されている光学的構成要素が、例えばエネルギ光線を造形平面上に集束するための光学レンズ構成要素の形で、造形又はプロセスチャンバ内に配置されている。
【0028】
さらに本発明は、少なくとも一つのレーザ光線を用いて、固化が可能な造形材料からなる個々の造形材料層を、連続して、層ごとに、選択的に固化することによって、少なくとも一つの三次元物体を積層造形するための方法に関する。この方法は、選択的レーザ溶融装法(SLM法)又は選択的レーザ焼結法(SLS法)であることができる。この方法は、少なくとも一つの三次元物体の積層造形のために、説明されたような装置が使用されることを特徴とする。それゆえこの装置との関連において、上述のすべての叙述は相応してこの方法にも有効である。
【0029】
本発明を図面の例示的実施形態を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】例示的実施形態に沿った、三次元物体の積層造形のための装置の原理図である。
図2】例示的実施形態に沿った、三次元物体の積層造形のための装置の原理図である。
図3】例示的実施形態に沿った、三次元物体の積層造形のための装置の原理図である。
図4】例示的実施形態に沿った、三次元物体の積層造形のための装置の原理図である。
図5】例示的実施形態に沿った、三次元物体の積層造形のための装置の原理図である。
図6】例示的実施形態に沿った、三次元物体の積層造形のための装置の原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、例示的実施形態に沿った装置1の原理図を示している。この装置1は、三次元物体2すなわち例えば技術的部品若しくは技術的部品群を、固化が可能な造形材料3からなる造形材料層を、少なくとも一つのエネルギ光線若しくはレーザ光線4を用いての、連続した、層ごとの、選択的な照射及びそれに伴う固化によって、積層造形することに貢献する。
【0032】
固化が可能な造形材料3は金属粉末(混合)、すなわち例えばアルミニウム粉末(混合)又は鋼粉末(混合)、及び/又はプラスチック粉末(混合)、すなわち例えばポリエーテルエーテルケトン粉末(混合)、及び/又はセラミック粉末(混合)、すなわち例えば酸化アルミニウム粉末(混合)で有り得る。
【0033】
固化するべきそれぞれの造形材料層は、水平方向に方向付けられている二重矢印5で示唆されているように、移動可能に支承されているリコータ装置6を使って、装置1のハウジング構造部7内に配置されている、装置1のプロセスチャンバ8内に形成される。典型的にはこのプロセスチャンバ8内は保護ガス環境、すなわち例えばアルゴン環境又は窒素環境が支配している。この固化するべきそれぞれの造形材料層を、連続して、層ごとに、選択的に固化することは、一つ又は複数のエネルギ光線4が、造形するべき物体2のそれぞれの層に関連付けられた横断面幾何的形状に対応する、固化するべきである造形材料層のそれぞれの特定の領域に選択的に方向付けられて(「選択的照射」)実施される。
【0034】
それぞれのエネルギ光線4は照射装置9に属する照射構成要素10によって生成される。対応して、一つのそれぞれの照射構成要素10は、造形平面11上に向けられている、選択的に固化するための造形材料層を選択的に照射するためのエネルギ光線4の生成のために設けられている。この照射構成要素10は列状及び/又は欄状配置(「マトリクス状に」)に配置されていることができる。
【0035】
照射構成要素10は、場合によっては少なくとも一つの光線特性に関するパラメータ、すなわち例えばその入力若しくは出力を変化させることができる(「減光可能な」)レーザダイオード構成要素で有り得る。相応に変化が可能なレーザダイオード構成要素を介して、例えば入力及び/又は出力の変化によって、さまざまな光線特性、すなわち例えばさまざまなエネルギ密度、強度などを持つレーザ光線が生成される。対応したレーザダイオード構成要素を介して放出されたレーザ電力は、典型的には0.1と10ワットの間の領域に有る。
【0036】
この装置1は、照射装置9若しくはそれに属する照射構成要素10を造形平面11に対して相対的に移動可能に支承するために設けられている、一つの磁気的移動及び支承装置12(以下では省略して「磁気的支承装置」と呼ぶ)を含む。磁気的支承装置12によって実現された移動可能な支承は、装置1のさまざまな機能構成要素に属する磁気的支承装
置12のさまざまな磁気的構成部分の間の磁気的相互作用に基づき、またこれは造形平面11に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内での、照射構成要素10の特に精密で、速やかな、及び軽快な動き、すなわち磨耗の少ない運動を許す。照射構成要素10の運動は、二重矢印P1で示唆されているように、少なくとも一つの並進軸に沿った並進的運動の自由度及び/又は二重矢印P2で示唆されているように、少なくとも一つの旋回軸に沿った旋回的運動の自由度を含んでいる。照射構成要素10の運動の場合は、それゆえにそれは例えば一つの直線状運動軸(並進軸)に沿った直線運動及び/又は一つの回転軸(旋回軸)を中心とした回転運動で有り得る。例示的な並進軸若しくは運動軸は、図1内に参照のために示されている座標システム内の軸によって表されている。もちろんこの照射構成要素10は異なった運動の自由度内を組み合わされて移動することができる。
【0037】
この磁気的支承装置12は、造形平面11の上方の、装置側のハウジング構造部7上に配置されているか又は形成されている磁気的固定構成要素13と、照射構成要素10の上に配置されているか又は形成されている、すなわち照射構成要素10と運動が連結されている磁気的滑走構成要素14とを含む。磁気的固定構成要素13及び磁気的滑走構成要素14は磁気的に協同作業をする二次元駆動の構成要素であり、この磁気的支承装置12はそれゆえに二次元駆動として形成されている。
【0038】
磁気的固定構成要素13はハウジング構造部7に帰属し、磁気的滑走構成要素14は照射装置9若しくは照射構成要素10に帰属する。磁気的滑走構成要素14は磁気的固定構成要素13との磁気的相互作用によって、固定構成要素に対して相対的に移動可能に支承されている。それゆえに照射構成要素10の移動可能な支承は、磁気的固定構成要素13と、照射構成要素10と運動が連結されている磁気的滑走構成要素14との間の磁気的相互作用で実現される。磁気的固定構成要素13のみでなく磁気的滑走構成要素14も、能動的な磁気的構成要素として少なくとも一つの電磁的構成要素(詳細には示されていない)を含み、典型的には電磁的構成要素への電気供給のために、この磁気的固定構成要素13若しくはこの磁気的滑走構成要素14は電気エネルギ供給部15と接続されている(図2を参照)。
【0039】
図中に明確には示されてはいないが、この磁気的支承装置12は相応する二次元駆動を実現するために必要な若しくは目的に適った機能構成要素、すなわち例えば、磁気的滑走構成要素14をこの磁気的固定構成要素13に沿って滑走支承することを可能にする滑走支承装置、及び/又は磁気的滑走構成要素14を磁気的固定構成要素13に沿って(空圧式に)浮遊支承することを可能にする(空圧式の)支承装置を含む。
【0040】
図2は、図1に記入されている切断線II−IIに沿って切断された、装置1のハウジング構造部7の天井方向への視野の図を示している。
【0041】
図1図2からはまず磁気的固定構成要素13が平面状固定構成要素部分17を備えていることが分かる。この平面状固定構成要素部分17は移動平面を定義し、その移動平面中で磁気的滑走構成要素14が移動可能である。この平面状固定構成要素部分17は平面状(平ら)に形成されていて、また造形平面11に対して平行に方向付けられている。平面状固定構成要素部分17の平面状の広がりは、この平面状固定構成要素部分17が造形平面11を少なくとも部分的に、場合によっては完全に覆うように選択されている。平面状固定構成要素部分17を造形平面11に対して相対的に平行に構成することは、磁気的滑走構成要素14若しくはそれと運動が連結されている照射構成要素10が造形平面11に対して平行に移動することを可能にし、それをもって直角な、すなわち造形平面11に対して相対的に約90°の照射角度のもとで実施される、造形平面11の照射を可能にする。
【0042】
さらに図2からは、破線で示されている描出で、平面状固定構成要素部分17の寸法で定義されている移動平面内での、磁気的滑走構成要素14の例示的出発位置から出発して、幾つかの例示的移動位置が示唆されている。すでに述べたように、磁気的滑走構成要素14は任意の並進的及び/又は旋回的運動の自由度内を移動することができる。
【0043】
さらに図2にからは、固定構成要素側若しくは滑走構成要素側の電磁的構成要素の電気供給のために設けられている電気エネルギ供給部15の、考えられる得る配置を認めることができる。それが通常の電気エネルギ源、すなわち例えばそれに属する制御電子機器を伴った配電網への接続で有り得るところの電気エネルギ供給部15は、ここでは固定構成要素側に配置されている。磁気的滑走構成要素14のこの電気供給は、電気エネルギ供給部15と磁気的滑走構成要素14との間の、例えば電気接続ケーブルとして形成されている、電気的接続構成要素16を用いて行われる。この電気的接続構成要素16は、構造的には磁気的滑走構成要素14の最大限の移動の自由を可能にするように形成されていて、それゆえに電気的接続構成要素16は例えば相応に十分な順応性と長さを備えている。
【0044】
図3は別の例示的実施形態に沿った装置1の原理図を図2に類似した図で示している。
【0045】
図3からは、この磁気的支承装置12が、複数の、相互に依存して、又は独立して移動可能な磁気的滑走構成要素14を含むことができることが分かる。これは特に、照射装置9が複数の照射構成要素10を含み、その際に特定の数量の、相対的に相互に一つの特定の方向付けで、例えば列状及び/又は欄状に配置されている照射構成要素10が、構造的に一つの(第一の)照射構成要素群18にまとめられ、また特定の数量の、相対的に相互に一つの特定の方向付けで、例えば列状及び/又は欄状に配置されている照射構成要素10が構造的に別の照射構成要素群19にまとめられているという場合のためである。すでに述べたように、それぞれの磁気的滑走構成要素14は相互に依存して、又は独立して移動することができ、それゆえ、それぞれの照射構成要素群18、10は相互に依存して、又は独立して移動され得る。
【0046】
図4は別の例示的実施形態に沿った装置1の原理図を示している。
【0047】
これまでの図に示されていた例示的実施形態に対しての一般的な違いとして、ここでは磁気的支承装置12は、それぞれに帰属する磁気的滑走構成要素14を持つ、複数の磁気的固定構成要素13を含んでいる。加えて、これまでの図に示されていた例示的実施形態に対しての特別な違いとして、角度のある、すなわち造形平面11に対して相対的に垂直に方向付けられている磁気的固定構成要素13若しくは平面状固定構成要素部分17が存在することである。もちろん造形平面11に対して相対的に角度をもって方向付けられているただ一つの磁気的固定構成要素13を設けることも可能である。対応して、造形平面11に対して相対的に角度をもって方向付けられている平面状固定構成要素部分17は、場合によっては完全に造形平面11の外側寸法に沿って伸延し、またそれゆえに場合によっては造形平面11を完全に包囲することができる。もちろんこのために複数の、造形平面11に対して相対的に角度をもって方向付けられている平面状固定構成要素部分17が存在する。
【0048】
それぞれの平面状固定構成要素部分17を造形平面11対して相対的に角度をもって配置することは、それぞれの磁気的滑走構成要素14若しくはそれと運動が連結されている照射構成要素10の(並進的)移動を、造形平面11に対して相対的に(明らかに)90°より小さい、さまざまな角度αで可能にし、それをもって(並進的に)角度をもった、すなわち照射角度αが90°より小さい、特に造形平面11に対して相対的に1°と89°との間の、好ましくは10°と80°の間の造形平面の照射を可能にする。磁気的滑走構成要素14の例示的移動は(水平及び垂直)の二重矢印で示唆されている。
【0049】
図5は別の例示的実施形態に沿った装置1の原理図を示している。
【0050】
図4に示されていた例示的実施形態とは異なり、造形平面11に対して相対的に角度をもって傾斜して方向付けられている磁気的固定構成要素13若しくは平面状固定構成要素部分17が存在する。もちろん造形平面11に対して相対的に角度をもって傾けて方向付けられている磁気的固定構成要素13を一つだけ設けることも可能である。それぞれの平面状固定構成要素部分17を造形平面11に対して相対的に角度をもって傾けて配置することは、それぞれの磁気的滑走構成要素14若しくはそれと運動が連結されている照射構成要素10の移動を造形平面11に対して相対的に(明らかに)90°より小さいさまざまな角度α、βで可能にし、それをもって角度をもった、すなわち照射角度が90°より小さい、特に造形平面11に対して10°と80°の間で実施される造形平面11の照射を可能にする。磁気的滑走構成要素14の例示的移動はここでも二重矢印で示唆されている。
【0051】
図6は別の例示的実施形態に沿った装置1の原理図を示している。
【0052】
これまでの図に示されていた例示的実施形態とは異なり、この平面状固定構成要素部分17がここでは平面(平ら)には形成されておらず、湾曲しているか若しくはアーチ状であって、それゆえに円蓋状に形成されている。ここでは磁気的滑走構成要素14の起こり得る移動は、二重矢印P3で示唆されているように、平面状固定構成要素部分17の曲げ若しくは湾曲によって定義された弓状若しくは弓形の移動路若しくは移動平面に沿って経過する。磁気的滑走構成要素14の例示的位置は破線で示されている。
【0053】
すべての例示的実施形態において、それぞれの平面状固定構成要素部分17と造形平面11との間に十分な大きさの距離があり、その結果磁気的固定構成要素13と磁気的滑走構成要素14の間の磁気的相互作用が、造形平面11内で形成された(磁気的若しくは磁気化可能な)造形材料層の品質に(磁気的な)影響を与えないということが肝要である。場合によってはこのために別個の磁気遮断構成要素(示されていない)、例えば適した遮断構造若しくは適した遮断材料からなる、例えば遮断金属板が、造形平面11を磁気的支承装置12から磁気的に遮断するために設けられることができる。
【0054】
さらにすべての例示的実施形態において、平面状固定構成要素部分17も少なくとも一つの運動の自由度内で、造形平面11に対して相対的に移動可能に支承され得るということが肝要である。このためにはこの平面状固定構成要素部分17は、造形平面11に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内において移動可能に支承されている保持装置(示されていない)に保持装置で固定されている。相応する保持装置の移動は、少なくとも一つの並進軸に沿った並進的運動の自由度及び/又は少なくとも一つの旋回軸を中心とした旋回的運動の自由度を含んでいることができる。
【0055】
さらにすべての例示的実施形態において、個々の、複数の又はすべての平面状固定構成要素部分17はモジュール状に形成されていることができ、この際にこのモジュール状に形成された平面状固定構成要素部分17は、造形平面11に対して相対的に前もって定められた少なくとも一つの配置位置で、ハウジング構造部7上に解除可能に取り付けられ得るか又は取り付けられている。このハウジング構造部7は、例えば、さまざまに調整された、例えば幾何的形状、すなわち特に寸法と形を顧慮した、少なくとも一つの平面状固定構成要素部分17を受け入れるための、挿入可能に形成されている受け入れ装置(示されていない)が設けられていることができる。このようにして、できる限り高い造形部品品質及び/又はできる限り高い造形率を得るために、この装置1を特定の「造形作業」すなわち特定の物体2の積層造形を顧慮して、個々に応じて構成することが可能になる。
【0056】
図に示された装置1を介して、少なくとも一つのエネルギ光線4を用いて、固化が可能な造形材料3からなる個々の造形材料層を、連続して、層ごとに、選択的に固化することによって、三次元物体2を積層造形するための方法が実現できる。この方法は、選択的レーザ溶融装法(SLM法)又は選択的レーザ焼結法(SLS法)であることができる。
【0057】
個々の、複数の又はすべての、特定の例示的実施形態との関連で示された特徴は、少なくとも一つの別の例示的実施形態に転用できる。
以上の開示から以下の付記が提案される。
(付記1)
少なくとも一つのエネルギ光線(4)を用いて、連続して、層ごとに、選択的に照射することによって、またそれに伴う、造形平面(11)内に形成された、固化が可能な造形材料(3)からなる造形材料層の固化による、三次元物体(2)の積層造形のための装置(1)であって、前記造形平面(11)へ向けられている、選択的に固化するための造形材料層を選択的に照射するためのエネルギ光線(4)を生成するための少なくとも一つの照射構成要素(10)を含む、照射装置(9)を含む装置において、少なくとも一つの前記照射構成要素(10)が、一つの磁気的移動及び支承装置(12)を用いて、少なくとも一つの運動の自由度内で、前記造形平面(11)に対して相対的に移動可能に支承されていることを特徴とする装置。
(付記2)
前記磁気的移動及び支承装置(12)が少なくとも一つの、装置側のハウジング構造部(7)上に配置されているか若しくは形成されている磁気的固定構成要素(13)と、少なくとも一つの、照射構成要素(10)の上に配置されているか若しくは形成されている磁気的滑走構成要素(14)とを含むことを特徴とする付記1に記載の装置。
(付記3)
少なくとも一つの前記磁気的固定構成要素(13)が、少なくとも一つの、移動軌道若しくは移動平面を定義する平面状固定構成要素部分(17)を含み、平面状固定構成要素部分が前記造形平面(11)に対して相対的に平行及び/又は角度をもって方向付けられていることを特徴とする付記2に記載の装置。
(付記4)
前記平面状固定構成要素部分(17)が少なくとも部分的に、特に完全に、平らな平面状で又は少なくとも部分的に、特に完全に、湾曲しているか若しくはアーチ状に形成されていることを特徴とする付記3に記載の装置。
(付記5)
少なくとも一つの平面状固定構成要素部分(17)が前記造形平面(11)に対して相対的に角度をもって方向付けられていて、前記平面状固定構成要素部分(17)が前記造形平面(11)の外側寸法を少なくとも部分的に包囲することを特徴とする付記3又は4に記載の装置。
(付記6)
前記造形平面(11)の外側寸法を少なくとも部分的に、特に完全に一緒に包囲する、前記造形平面(11)に対して相対的に角度をもって方向付けられている複数の平面状固定構成要素部分(17)を特徴とする付記5に記載の装置。
(付記7)
少なくとも一つの前記平面状固定構成要素部分(17)が、保持装置に保持装置で固定されており、前記保持装置が、前記造形平面(11)に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で、移動可能に支承されていることを特徴とする付記3〜6のいずれか一つに記載の装置。
(付記8)
前記平面状固定構成要素部分(17)がモジュール状に形成されており、このモジュール状に形成された前記平面状固定構成要素部分(17)は、前記造形平面(11)に対して相対的に前もって定められた少なくとも一つの配置位置で、装置側のハウジング構造部(7)に解除可能に取り付けられ得るか又は取り付けられていることを特徴とする付記3〜7のいずれか一つに記載の装置。
(付記9)
前記照射装置(9)が複数の照射構成要素(10)を含み、特定の数量の、特に列状及び/又は欄状に配置されている照射構成要素(10)が、構造的に少なくとも一つの照射構成要素群(18、19)にまとめられていることを特徴とする付記3〜8のいずれか一つに記載の装置。
(付記10)
照射構成要素(10)が、レーザダイオード構成要素であるか、又はレーザダイオード構成要素と連結可能か若しくは連結されている、特にレンズ形状の光学構成要素であるか、又は光学的走査装置の一部としての走査構成要素として成されているか、又は上述の要素の少なくとも一つを含むことを特徴とする付記1〜9のいずれか一つに記載の装置。
(付記11)
少なくとも一つの、前記造形平面(11)と前記磁気的移動及び支承装置(12)との間に配置されている、前記造形平面(11)を前記磁気的移動及び支承装置(12)から磁気的に遮断するための遮断構成要素を特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載の装置。
(付記12)
少なくとも一つのエネルギ光線(4)を用いて、連続して、層ごとに、選択的に照射することによって、またそれに伴う、造形平面(11)内に形成された、固化が可能な造形材料(3)からなる造形材料層の固化による、三次元物体(2)の積層造形のための方法において、
少なくとも一つの三次元物体(2)の積層造形のために、付記1〜11のいずれか一つに記載の、少なくとも一つの三次元物体(2)の積層造形のための装置(1)が使用されることを特徴とする方法。
【符号の説明】
【0058】
1 装置
2 物体
3 造形材料
4 エネルギ光線
5 二重矢印
6 リコータ装置
7 ハウジング構造部
8 プロセスチャンバ
9 照射装置
10 照射構成要素
11 造形平面
12 磁気的支承装置
13 磁気的固定構成要素
14 磁気的滑走構成要素
15 電気エネルギ供給部
16 電気的接続構成要素
17 平面状固定構成要素部分
18 照射構成要素群
19 照射構成要素群
P1 二重矢印
P2 二重矢印


図1
図2
図3
図4
図5
図6