【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載の装置によって解決される。これに従属する請求項はこの装置の特別な実施形態に関する。さらにこの課題は請求項12に記載された方法で解決される。
【0007】
ここで説明されている装置は、一般的に少なくとも一つの三次元物体、すなわち例えば技術的部品若しくは技術的部品群を、固化が可能な造形材料からなる個々の造形材料層を、少なくとも一つの照射装置に属する照射構成要素から発生されたエネルギ光線を用いた、連続した、層ごとの、選択的な照射及びそれに伴う固化によって、積層造形すること若しくは生成造形することに貢献する。このエネルギ光線はレーザ光線で有り得、この装置は対応して、選択的レーザ溶融装法(SLM法)又は選択的レーザ焼結法(SLS法)を実施するための装置であり得る。
【0008】
相応のエネルギ照射を用いて固化が可能な造形材料は、金属粉末、プラスチック粉末及び/又はセラミック粉末で有り得る。金属粉末、プラスチック粉末又はセラミック粉末の名の下では、さまざまな金属、プラスチック又はセラミックの粉体混合とも理解される。この場合に金属粉末は少なくとも一つの金属合金からなる粉末で有って差し支えない。
【0009】
一つの三次元物体(以下では省略して「物体」と呼ぶ)の製造のための、そのつど固化するべき造形材料層の、連続した、層ごとの、選択的な照射、またそれに伴う、連続した、層ごとの、選択的な固化は、物体に関した造形データを基礎として実施される。相応する造形データは一般的に物体の幾何的若しくは幾何的・構造的形状を記述する。相応する造形データは、例えば造形するべき物体のCADデータであるか、若しくはそのようなものを含むことができる。
【0010】
この装置は積層的造形プロセスを実施するために典型的に必要とするすべての機能構成要素を含む。対応する装置の機能的若しくは構造的な構築は一般的に周知であるため、以下には、ここで記述される原理の説明のために重要な、装置の機能構成要素のみを詳細に説明する。
【0011】
ここで記述される原理の説明のために重要な、装置の第一の機能構成要素は照射装置である。この照射装置は少なくとも一つの照射構成要素を含み、照射構成要素は造形平面へ向けられている、選択的に固化するための造形材料層を選択的に照射するためのエネルギ光線を生成するために設けられている。さらに下記には、照射構成要素がとりわけ例えばレーザダイオード構成要素であるか若しくは少なくとも一つのレーザダイオード構成要素を含む照射構成要素で有り得ることが説明されている。
【0012】
ここで記述されている原理を説明するために重要な、装置の別の機能構成要素は、磁気的移動及び支承装置(以下では省略して「磁気的支承装置」と呼ぶ)であって、磁気的支承装置は少なくとも一つの(装置側の造形チャンバ又はプロセスチャンバ内に配置されている)照射構成要素を、造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で移動可能に支承するために設けられている。この磁気的支承装置によって実現された移動可能な支承は、以下で詳細に分かるように、装置のさまざまな機能構成要素に帰属する、支承装置のさまざまな磁気的構成部分の間の磁気的相互作用に基づき、また造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で、個々の、複数の又はすべての照射構成要素の特に精密な、速やかな、及び軽快な動き、すなわち磨耗の少ない運動を許す。照射構成要素の移動は、少なくとも一つの並進軸に沿った並進的運動の自由度及び/又は少なく
とも一つの旋回軸を中心とした旋回的運動の自由度を含むことができる。造形平面に対して相対的な及び/又は少なくとも一つの別の照射構成要素に対して相対的な照射構成要素の移動の場合は、それゆえにそれは例えば一つの直線状運動軸(並進軸)に沿った直線運動及び/又は一つの回転軸(旋回軸)を中心とした回転運動で有り得る。もちろん、個々の、複数の又はすべての照射構成要素は、異なった運動の自由度内を組み合わされて移動することができる。
【0013】
この磁気的支承装置は、それぞれの照射構成要素の、造形平面に対して相対的に、精密な、速やかな、また順応性のある配置と方向付けを許し、このことは、特に造形するべき物体が比較的複雑な幾何的形状の場合においても、比較的大きな造形平面若しくは造形容量の場合においても、できる限り高い造形部品の品質、できる限り高い造形率、並びにそれぞれの照射構成要素のできる限り均等な活用を得るために、目的に適っている。
【0014】
この照射装置が多数の照射構成要素を含み、その際に特定の数量の照射構成要素が構造的に少なくとも一つの照射構成要素群にまとめられている場合、特に造形するべき物体に関連して、異なる照射構成要素群は相互に依存して又は無関係に移動可能で有り得る。それぞれの照射構成要素群は、特定の数量の、相対的に相互に特定の方向付けで、例えば列状及び/又は欄状に配置されている照射構成要素を含むことができる。
【0015】
ここで説明される装置は全体として、それぞれの照射構成要素の、特に順応性のある、精密な、速やかな、また軽快な、すなわち磨耗が少ないゆえに、改善された移動を提供し、これをもって改善された装置が提供される。
【0016】
この磁気的支承装置は、典型的には少なくとも一つの、装置側のハウジング構造部上に、すなわち特に少なくとも部分的に造形平面の上方に配置されているか又は形成されていて、それをもってハウジング構造部に帰属するところの磁気的固定構成要素(magnetisches Statorelement)と、少なくとも一つの照射構成要素上に配置されているか又は形成されていて、すなわち特に少なくとも一つの照射構成要素と運動が連結されていて、それをもって照射構成要素に帰属するところの磁気的滑走構成要素(magnetische Laeuferelement)を含む。この磁気的滑走構成要素は、磁気的固定構成要素との磁気的な相互作用を介して、磁気的固定構成要素に対して相対的に移動可能に支承されている。それゆえに、それぞれの照射構成要素のこの移動可能な支承は、磁気的固定構成要素と、照射構成要素と運動が連結されている滑走構成要素との間の磁気的な相互作用によって実現される。磁気的固定構成要素のみでなく磁気的滑走構成要素も、能動的な磁気的構成要素として典型的には少なくとも一つの電磁的構成要素を含み、電磁的構成要素への電気供給のために磁気的固定構成要素及び/又は磁気的滑走構成要素は電気エネルギ供給部と接続されている。これと関連して、磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間の電気的接続も可能である。磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間の電気的接続は、例えば一つの電気的接続構成要素、特に電気ケーブルを使って磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間に実現されることができる。
【0017】
それぞれの磁気的固定構成要素若しくは滑走構成要素は二次元駆動の典型的な構成部分であり、この磁気的支承装置はそれゆえに二次元駆動として形成されているか又は少なくとも一つのそのような二次元駆動を含むことができる。
【0018】
二次元駆動として磁気的支承装置を形成することを顧慮して、磁気的支承装置は、相応する二次元駆動を実現するために必要な若しくは目的に適った機能構成要素、すなわち例えば、磁気的滑走構成要素を磁気的固定構成要素に沿って滑走支承することを可能にする滑走支承装置、及び/又は磁気的滑走構成要素を磁気的固定構成要素に沿って(空圧式に
)浮遊支承することを可能にする(空圧式)支承装置を含むことができる。
【0019】
少なくとも一つの磁気的固定構成要素は、典型的には少なくとも一つの、磁気的滑走構成要素のための移動軌道又は移動平面を定義する、平面状固定構成要素部分(Statorelementabschnitt)を備えている。この「平面状」という概念は、平らな平面のみではなく、平らではない平面、すなわち例えば湾曲した若しくは盛り上がった面も含む。それにより、この平面状固定構成要素部分は、少なくとも部分的に、特に完全に、平らに、又は少なくとも部分的に、特に完全に、湾曲しているか若しくはアーチ状であって、すなわち特に円蓋状に形成されていることができる。
【0020】
平面状固定構成要素部分は、造形平面に対して相対的に平行及び/又は角度をもって方向付けられていることができる。平面状固定構成要素部分を造形平面に対して相対的に平行に配置することは、その時の磁気的滑走構成要素若しくはそれと運動が連結されている照射構成要素が造形平面に対して平行に移動することを可能にし、それをもって直角な、すなわち造形平面に対して相対的に約90°の照射角度のもとで実施される、造形平面の照射を可能にする。平面状固定構成要素部分を造形平面に対して相対的に角度をもった、すなわち例えば傾斜した配置にすることは、それぞれの磁気的滑走構成要素若しくはそれと運動が連結されている照射構成要素の移動を、造形平面に対して相対的に(明らかに)90°より小さい角度内で可能にし、それをもって角度をもった、すなわち90°より小さい照射角度で、特に造形平面に対して相対的に1°と89°との間の、好ましくは10°と80°の間の、造形平面の照射を可能にする。
【0021】
一般的に、それぞれの平面状固定構成要素部分の幾何的実施形態、すなわち特に形と寸法によって、及び/又はそれぞれの平面状固定構成要素部分の、造形平面に対して相対的な方向付けによって、それぞれの磁気的滑走構成要素のさまざまな移動軌道若しくは移動平面が、またそれをもって、それぞれの照射構成要素の起こり得る移動、並びにその結果として生じる照射状況を顧慮して、順応性の最大値を実現できるということが肝要である。
【0022】
典型的には、少なくとも一つの平面状固定構成要素部分は造形平面に対して平行に方向付けられ、また造形平面の上方に配置されている。造形平面に対して平行に方向付けられ、また造形平面の上方に配置されている平面状固定構成要素部分の平面状の広がりは、この平面状固定構成要素部分が造形平面を少なくとも部分的に、場合によっては完全に覆うように選択されている。もちろん固定構成要素部分と造形平面との間には十分な大きさの距離があり、その結果磁気的固定構成要素と磁気的滑走構成要素との間の磁気的相互作用は造形平面内で形成された(磁気的若しくは磁気化可能な)造形材料層の品質に(磁気的な)影響を与えない。場合によってはこのために別個の磁気遮断構成要素、例えば適した遮断構造若しくは適した遮断材料からなる、例えば遮断金属板が設けられることができる。この装置にはそれゆえに、少なくとも一つの、造形平面と磁気的支承装置の間に配置可能な又は配置されている、造形平面を磁気的支承装置から磁気的に遮断するための遮断構成要素が属していることができる。
【0023】
造形平面に対して相対的に角度をもって方向付けられている平面状固定構成要素部分は、少なくとも部分的に、場合によっては完全に、造形平面の外側寸法に沿って伸延し、またそれゆえに造形平面の外側寸法を少なくとも部分的に、場合によっては完全に囲むことができる。もちろん、造形平面の外側寸法を一緒に少なくとも部分的に、場合によっては完全に包囲する、造形平面に対して相対的に角度をもって方向付けられている、複数の平面状固定構成要素部分を備えることができる。それぞれの平面状固定構成要素部分の造形平面に対して相対的に角度をもった配置によって、相応する平面状固定構成要素部分で少なくとも部分的に造形平面の「取り囲み」が提供される。それぞれの平面状固定構成要素
部分上に移動可能に支承されているそれぞれの磁気的滑走構成要素若しくはそれと運動が連結されているそれぞれの照射構成要素によって、さまざまな方向及び/又はさまざまな照射角度をもっての造形平面の(同時)照射が可能である。
【0024】
それぞれの照射構成要素の起こり得る移動と、その結果として生じる照射状況の順応性をさらに高めるために、それぞれの平面状固定構成要素部分の造形平面に対する相対的な配置と方向付けに依存することなく、平面状固定構成要素部分も造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で移動可能に支承されていることができる。このためにこの平面状固定構成要素部分は、造形平面に対して相対的に少なくとも一つの運動の自由度内で移動可能に支承されているところの、保持装置に保持装置で固定されている。相応する保持装置の運動は、少なくとも一つの並進軸に沿った並進的運動の自由度及び/又は少なくとも一つの旋回軸を中心とした旋回的運動の自由度を含むことができる。それゆえに、相応する保持装置が造形平面に対して相対的に移動する場合、それは例えば一つの直線状運動軸(並進軸)に沿った直線移動及び/又は一つの回転軸(旋回軸)を中心とした回転移動で有り得る。もちろんこの保持装置は、さまざまな運動の自由度内を組み合わされて移動可能である。
【0025】
個々の、複数の又はすべての平面状固定構成要素部分はモジュール状に形成されていることができ、この際にこのモジュール状に形成された平面状固定構成要素部分は、造形平面に対して相対的に前もって定められた少なくとも一つの配置位置で、装置側のハウジング構造部上に解除可能に取り付けられ得るか又は取り付けられている。このハウジング構造部は、例えば、さまざまに調整された、例えば幾何的形状すなわち特に寸法と形を顧慮した、少なくとも一つの平面状固定構成要素部分を受け入れるための、挿入可能に形成されている受け入れ装置が設けられていることができる。このようにして、できる限り高い造形部品品質及び/又はできる限り高い造形率を得るために、この装置を特定の「造形作業」すなわち特定の物体の積層造形を顧慮して、個々に応じて構成することが可能になる。
【0026】
照射構成要素は、レーザダイオード構成要素であるか、又はレーザダイオード構成要素と連結可能か若しくは連結されている、特にレンズ形状の光学構成要素であるか、又は光線屈折装置とも呼ばれるか若しくは見なされる光学的走査装置の一部としての走査構成要素であり得るか、又は上述の要素の少なくとも一つの照射構成要素を含むことができる。目的へのレーザダイオード構成要素の適合性は、その重さが僅かであることであって、その結果として照射構成要素の運動のためには比較的小さな質量が移動される。
【0027】
それぞれのレーザダイオード構成要素及び走査構成要素は、装置側のハウジング構造部によって境界付けされ、その中で積層造形過程が実施される造形チャンバ又はプロセスチャンバの中に配置されていることができる。しかしながら、一つ又は複数のレーザダイオード構成要素は、相応する造形チャンバ又はプロセスチャンバの外に配置されることも可能である。この場合は、それぞれ少なくとも一つのレーザダイオード構成要素と光学的に連結可能又は連結されている光学的構成要素が、例えばエネルギ光線を造形平面上に集束するための光学レンズ構成要素の形で、造形又はプロセスチャンバ内に配置されている。
【0028】
さらに本発明は、少なくとも一つのレーザ光線を用いて、固化が可能な造形材料からなる個々の造形材料層を、連続して、層ごとに、選択的に固化することによって、少なくとも一つの三次元物体を積層造形するための方法に関する。この方法は、選択的レーザ溶融装法(SLM法)又は選択的レーザ焼結法(SLS法)であることができる。この方法は、少なくとも一つの三次元物体の積層造形のために、説明されたような装置が使用されることを特徴とする。それゆえこの装置との関連において、上述のすべての叙述は相応してこの方法にも有効である。
【0029】
本発明を図面の例示的実施形態を参照して詳細に説明する。