特許第6872679号(P6872679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872679ホタテ貝殻粉末含有の抗菌剤の製造方法及び抗菌性水溶液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872679
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ホタテ貝殻粉末含有の抗菌剤の製造方法及び抗菌性水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20210510BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20210510BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20210510BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20210510BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   A01N59/00 C
   A01P3/00
   A01N25/12 101
   A01N25/02
   A01P1/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-46276(P2016-46276)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-149704(P2017-149704A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】509151326
【氏名又は名称】株式会社エヌアールエンジニアリング
(72)【発明者】
【氏名】新田 勉
(72)【発明者】
【氏名】新田 正子
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−224678(JP,A)
【文献】 特開平08−073263(JP,A)
【文献】 特開平07−267717(JP,A)
【文献】 特開2001−199823(JP,A)
【文献】 特開2007−332131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 59/00
A01N 59/00
A01N 25/02
A01N 25/12
A01P 1/00
A01P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホタテ貝殻を洗浄後、乾燥し、粉砕して粒径1.0mm以下の粉末とし、粘土と該貝殻粉末を7:3〜6:4で混合し、混合したものを造粒又は成型した後、1000〜1200℃で焼成して製造することからなるホタテ貝殻粉末含有の造粒体又は成型体を作成し、該造粒体又は成型体を水に浸漬して乾燥したことからなる抗菌剤の製造方法。
【請求項2】
ホタテ貝殻を洗浄後、乾燥し、粉砕して粒径1.0mm以下の粉末とし、粘土と該貝殻粉末を7:3〜6:4で混合し、混合したものを造粒又は成型した後、1000〜1200℃で焼成して、ホタテ貝殻粉末含有の造粒体又は成型体を作成し、該造粒体又は成型体を水に浸漬して乾燥して抗菌剤を得て、該抗菌剤を水に浸漬して、アルカリ水溶液からなる抗菌性水溶液を得る、抗菌性水溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貝殻などの水産系廃棄物の有効活用に関するものである。貝殻などの水産系廃棄物の大部分は未利用のまま捨てられ、廃棄物とされている。本発明は、これらの貝殻を原材料とする造粒体、成型体からなる抗菌剤の製造方法及び抗菌性水溶液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホタテ等の貝殻は、長年放置され問題となっている。この貝殻を利用するものとして、カルシウムを主剤とした飼料、肥料、土壌改良材に天然資源の貝殻系の貝殻カルシウムが利用されている。(特許文献1)
【0003】
また、貝殻を焼成処理によって、貝殻の成分が変化して生成する酸化カルシウムと貝殻の主成分である炭酸カルシウムなどの酸化物によって除菌剤、抗菌剤としての効果が得られることが知られている。(特許文献2)
貝殻の粉末を酸化焼成し生成した抗菌剤を水に溶解させて、強アルカリ水溶液とした抗菌水溶液が知られている。(特許文献3)
【0004】
しかし、前記は、大多数が粉末での使用であり、粉末では使用し難いという問題があり、粒状化が望まれていた。粒状化体を製造する方法として、貝殻の粉末に酸化マグネシウムや炭酸マグネシウム、リン酸の添加剤と混合し、加圧造粒する顆粒状貝殻材が知られている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−300237号公報
【特許文献2】特開2002−234807号公報
【特許文献3】特開2011−207779号公報
【特許文献4】特開2008−297190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1、2及び3に示すように、貝殻の成分であるカルシウムを利用するもの、貝殻を焼成して生成した抗菌性を利用するものが知られているが、いずれも、貝殻を粉砕した粉末状で使用するもので、粉末では使用し難いという問題がある。
また、特許文献4では、貝殻を粉砕した粉末を添加剤との混合で、顆粒化するもので、顆粒状より径が大きく取扱い大きさで、貝殻の有効利用を図るために、薬剤との混合での顆粒化ではなく、安価で容易に手に入れられるものとの混合による造粒及び成型により、取扱いやすい粒径の造粒体及び成型体が容易に作成でき、貝殻の利点であるカルシウム成分としての活用及び焼成して抗菌剤等としての活用を図るためのホタテ貝殻粉末を含有してなる造粒体及び成型体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたもので、第1の発明は、ホタテ貝殻を洗浄後、粉砕して粒径1.0mm以下の粉末とし、粘土と該貝殻粉末を7:3〜6:4で混合し、混合したものを造粒又は成型した後、1000〜1200℃で焼成することからなるホタテ貝殻粉末含有の造粒体又は成型体を作成する。
【0008】
作成したホタテ貝殻粉末含有の造粒体又は成型体を水に浸漬して乾燥したことからなる抗菌剤の製造方法である。
【0009】
発明1で作成したホタテ貝殻粉末含有の造粒体又は成型体からなる抗菌剤を水に浸漬して得られるアルカリ水溶液からなる抗菌性水溶液の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホタテ貝殻の粉末と安価で容易に入手しやすい粘土とを混合し、造粒又は成型したものを、焼成することで固形化したもので、粉末と違い、取扱いが容易であり、環境に優しい天然素材による優れた殺菌効果を有する抗菌剤を製造することができる。
【0011】
また、本発明によれば、原材料が天然素材であることから人体に対して安全な抗菌剤として提供できるだけでなく、排水・土壌を汚染することなく廃棄処理することができる。また、粘土とホタテ貝殻粉末の混合物からなる造粒体及び成型体に関し、適宜の大きさのものを作成することができることから、用途に応じた大きさとすることができる。例えば、粒径の小さい造粒体を猫等に用いる砂に混ぜて使用することで、抗菌性による雑菌の繁殖低減や臭気を低減することができる。また、砂場等に散布することで、雑菌の繁殖を低減することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、pH9以上のアルカリ水溶液として、調理器具、台所のフキン、生ごみ、シンク、下水等に散布することで、抗菌・除菌をするのに用いることができる。また、腐敗臭やアンモニア臭を消臭するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の抗菌剤の製造工程を示す工程図である。
図2】本発明の型で成型したものを示す写真である。
図3】本発明の抗菌剤の抗菌性を示す試験検査成績書である。
図4】本発明のアルカリ水溶液の抗菌性を示す試験検査成績書である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、図1の製造工程に示すように、ホタテの貝殻を洗浄し、乾燥後、粉砕する。粉末とした貝殻粉末を粘土と混合し、造粒又は成型後、乾燥後し、焼成し、水に浸漬して乾燥する造粒体又は成型体を水に浸漬し乾燥したことからなる抗菌剤の製造方法及び該抗菌剤を水に浸漬して得られる抗菌性水溶液の製造方法である。
【0015】
各工程について説明する。
1、洗浄工程
ホタテ貝殻を粗洗浄後、水高圧で洗浄を行った。
貝殻を洗浄機(形式:NRSEN−1)を用い、洗浄機の容量水50リットルにホタテの貝殻10kgを入れ、6%次亜塩素酸ナトリウムを20mlを加え、水圧は水中ポンプにより、0.4Psの水圧により、10分間ホタテ貝殻を洗浄した。
なお、貝殻の汚れの度合いにより、添加する前記次亜塩素酸ナトリウムの量を水量の3〜5%量、水中ポンプでの水圧を0.3〜0.8Psに調整、また洗浄度合いにより、洗浄時間を調整して行う。
【0016】
2.乾燥工程
洗浄後、洗浄機からホタテ貝殻を取り出し、カゴに入れ、日陰所で5〜7日自然乾燥を行う。
【0017】
3.粉砕工程
洗浄後、乾燥したホタテ貝殻を粉砕機(形式SFS 三方製作所製)により、粉砕を行った。
粉砕機による貝殻の粉砕は、直径0.3〜3.0mm程度に粉砕した。
粉砕の粉末粒子は、後の造粒工程での粘土との混合後の造粒機での造粒において、粒径0.5mm以下、粒径1.0mm以下及び粒径3.0mmに粉砕したものを比較した。
粘土との混合物において、粒径0.5mm以下及び粒径1.0mm以下に粉砕したものは容易に造粒できたが、3.0mm以下に粉砕したものは、造粒し難かった。造粒する場合、粉末の粒径が細かい程造粒しやすいが、細かく粉砕するほどコスト、時間を要することから、粉砕の粒径は、1.0mm以下の粉砕とした。
【0018】
4.粘土との混合工程
粘土は、益子焼で使用する粘土、具体的には、益子水簸度土(販売先:益子焼協同組合)を用いた。
使用する粘土としては、粘土系の土壌であれば使用することができる。
粘土と粒径1.0mm以下に粉砕した貝殻粉末の割合を5:5、6;4、7:3に混合したものを比較した。混合の際に混ぜやすくするように粘土の含水量により、若干の水を加え、30分練りあげた。混合したものの状態は耳たぶ程度の柔らかさとした。
混合割合は、後の造粒工程での造粒にて、粘土量:ホタテ貝殻粉末量、5:5.6:4、7:3の3種の割合で造粒具合を比較した。
粘土量:ホタテ貝殻粉末量の割合、7:3、6:4は造粒加工できたが、5:5は造粒できなかった。これから、粘土とホタテ貝殻粉末の割合は、7:3、6:4とした。
【0019】
5.造粒及び成型
粘土とホタテ貝殻粉末を所定の割合に混合したものを用い、造粒体及び成型体の作成を行った。
【0020】
5−1.造粒工程
粘土:ホタテ貝殻粉末を7:3、6:4に混合したものを造粒機(型式バランスグラン2L、アキラ機工製)にて、所定の大きさになるように回転数、時間を変えて造粒を行った。造粒は所定の割合に調整した混合物1kgを造粒機に入れ、造粒を行った。
造粒機のプロペラの回転数が多いと粒径の細かい造粒、回転数が少ないと粒径の大きい造粒体ができる。回転数200回/分で1時間造粒処理すると粒径1〜2mmの造粒体、回転数500回/分30分造粒処理することで粒径5〜6mmの造粒体を作ることができた。
【0021】
5−2、成型工程
予め作成した丸型や形成した型に5−1の造粒の結果から、粘土とホタテ貝殻の混合割合、7:3及び6:4に混合したものを用い、成型後、型抜きした。成型した成型体は図2に示すものを作成した。
造粒及び成型したものを台の上に並べ、日陰で3日間、天日で1日間乾燥した。
【0022】
.焼成工程
乾燥後、造粒又は成型したものを1000℃、1100℃、1200℃、1250℃で焼成した。焼成は、所定の温度になってから、1時間指定の温度で焼成した。
焼成は、焼成した各温度で製造したものを50mlの水中に焼成して製造した造粒体を入れ、2時間後にアルカリ値を測定するとともに造粒体の形状から判断した。
【0023】
造粒体は、粘土:貝殻粉末の配合割合が7:3の割合で、粒径1mm及び10mm程度に造粒し、焼成した造粒体を用いた。
1000℃及び1100で焼成したものは、外形が少しもろい状態が見られたが、1100℃で焼成したものは1000℃で焼成したものよりは程度が軽かった。1200℃で焼成したものは、ひび割れが散見されたが、造粒体を得ることができた。1250℃で焼成したものは、粘土が溶解し、ドロドロに溶けて原型の形を留めていなかった。
以上の結果から、1150℃で焼成したものを作成し評価した結果、外形にひび割れもなく、もろさがない状態のものが得られたが 時間がたつにつれもろくなり 原型をなくしてしまう状態になった。
7.浸漬・乾燥
そのため、焼成した造粒体・成型を 水(常温)に1時間浸し 日陰乾燥を2〜3日間することで 原型を維持できる様になった。
粘土:ホタテ貝殻粉末の混合割合、6:4で造粒したものも同様の結果を示した。
【0024】
焼成した造粒体に関し、粘土:ホタテ貝殻粉末の割合が7:3で、粒径5mm程度に造粒したものを用い、容器に水50mlの中に20g入れ、pHをpH電子メーター(アズワン(株)製)で測定した結果、2時間後、1000℃及び1100℃で焼成したものは、pH11.8、1200℃で焼成したものは、pH11.9の値を示した。
【0025】
上記の方法で作成した造粒体及び成型体の効果について調査した。
1.造粒体の抗菌性
粘土:貝殻粉末の割合が6:4で、粒径10mm程度の造粒体を用いた。
(公財)栃木県保健衛生事業団に依頼して行った試験検査成績書を図3に示す。
試験成績書から、大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌に抗菌性を示すことがわかる。
【0026】
2.アルカリ水溶液の抗菌性
粘土:貝殻粉末の割合が6:4、粒径10mm程度に造粒した造粒体を用いて行った。
(公財)栃木県保健衛生事業団に依頼して行った試験成績書を図4に示す。
大腸菌、黄色ブドウ球菌に抗菌性を示すことがわかる。
【0027】
.アルカリ水溶液の持続性(pH)
(1)試験例1
粘土:貝殻粉末の割合が、6:4で、粒径10mm程度に造粒した造粒体を用い、容器に水200mlを入れ、造粒体20gを入れた。浸漬時間経過後、pHを測定した。測定後、水を新たな水と取り替えた。これを繰り返し、測定したpHを表1に示す。pHは、pH電子メーター(アズワン(株)製)で測定した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1から明らかなように、pHは測定回数が増えるとやや低下する傾向を示し、30回(7日経過)後の測定でもpH9.3を示した。また、浸漬時間が長い程pHは高い値を示した。これから、pHは30回以上の繰り返し、7日経過後でもアルカリ水溶液を得ることができた。
【0030】
(2)試験例2
粘土:貝殻粉末の割合が、7:3及び6:4で、粒径5〜8mm程度に造粒した造粒体を用い、容器に水200mlを入れ、造粒体20gを入れた。時間経過後、pHを測定した。測定後、水を新たな水と取り替えた。これを繰り返し、測定したpHを表2に示す。pHは、pH電子メーター(アズワン(株)製)で測定した。
【0031】
【表2】
【0032】
表2から明らかなように、pH値は測定回数が増えるほど、やや低下する傾向を示した。30回(7日経過)後の測定でもpH10以上のアルカリ値を示した。また、浸漬時間が長い程pHは高いアルカリ値を示した。これから、pHは30回以上の繰り返し、7日経過後でもアルカリ水溶液を得ることができることがわかる。粘土と貝殻粉末の含有割合では、貝殻粉末の多いものほど、pH値は高い数値を示していた。
【0033】
本発明での造粒体を用いてアルカリ水溶液を作るに際し、水に水量の約10%程度の重量の造粒体を添加することで、所定のpHのアルカリ水溶液を得ることができる。また、繰り返して使用することができ、本発明の造粒体は、ホタテの貝殻粉末及び粘土の天然物からできているので、処分が容易である。
本発明のアルカリ水溶液は、容器に水を入れ、水量の10%程度の造粒体を添加して、2時間以上浸漬することで高アルカリの水溶液を作成することができる。得られたアルカリ水溶液をジョウロ等に移し、そのまま散布するか、噴霧器で噴霧することで、使用することができる。
【0034】
本発明の造粒体は、水に浸漬することで、上記のように、アルカリ水溶液を30回以上、または、7日以上繰り返して作ることができるが、30回程度の繰り返し、または7日程度で新たな造粒体に変えることが好ましい。
本発明のアルカリ水溶液を生ごみ、シンク、トイレ、下駄箱、砂場、下水管等に散布することで、臭いのある場所の消臭や抗菌・殺菌効果に効果を示し、衛生的な環境をつくることができる。
また、原材料が粘土とホタテ貝殻の天然物であることから、本発明のアルカリ水溶液を洗濯物、まな板等の漬け置きやスプレー、厨房、作業スペース等での散布での防臭・抗菌等に安全に使用することができる。
さらに本発明の造粒体の微粒を砂場等に散布・混合することで、抗菌作用が期待できる。
図1
図2
図3
図4