特許第6872681号(P6872681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872681
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/02 20060101AFI20210510BHJP
   B03C 3/45 20060101ALI20210510BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20210510BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20210510BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B03C3/02 Z
   B03C3/45 C
   F24F7/00 A
   B64C39/02
   B64C27/08
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-538518(P2017-538518)
(86)(22)【出願日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2016076508
(87)【国際公開番号】WO2017043599
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-178005(P2015-178005)
(32)【優先日】2015年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591012266
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100101926
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 孝和
(72)【発明者】
【氏名】羅 莉
(72)【発明者】
【氏名】辰己 良昭
(72)【発明者】
【氏名】坪井 和樹
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−515086(JP,A)
【文献】 特開平10−057837(JP,A)
【文献】 特開2012−170869(JP,A)
【文献】 特開2015−137092(JP,A)
【文献】 特開昭49−021771(JP,A)
【文献】 特開2014−128203(JP,A)
【文献】 特開平05−146623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00 − 11/00
B64C 1/00 − 99/00
F24F 7/00 − 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラを推進力として浮動可能な飛行体と、吸気口と排気口とを有し且つ吸気口から流入した空気中の塵埃を静電吸着するための集塵器とを備える空気清浄機であって、
上記飛行体は、空気を上方から吸気して下方に排気する複数の上記プロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設された構造のドローンであり、
上記集塵器は、それぞれが電極を有し且つ隣り合う電極同士が対向するように同心状に嵌め込まれた3つ以上の筒状の吸着部と、上記隣り合って対向する電極間に電位差を発生させるための電源部とを備え、
上記3つ以上の筒状の吸着部は、その両端開口が上下方向を向くように配置され、上記飛行体のプロペラが上記吸着部の吸気口近傍,吸着部の内部又は排気口近傍のいずれかに位置するように、飛行体に組み付けられており、
上記プロペラが上記吸着部の吸気口近傍に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の上下方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが、吸着部の吸気口をなす上開口の直近真上に位置することであり、
上記プロペラが上記吸着部の内部に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の上下方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが吸着部の内部に位置することであり、
上記プロペラが上記吸着部の排気口近傍に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の上下方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが吸着部の排気口をなす下開口の直近真下に位置することである、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気清浄機において、
上記集塵器の吸気口が排気口よりも大径になるように、吸着部の吸気口側の部位をテーパ状に広げ、
上記プロペラを上記吸着部の内部に位置させた、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の空気清浄機において、
上記集塵器を構成する上記3つ以上の吸着部は、複数の孔をそれぞれ有する、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項4】
プロペラを推進力として浮動可能な飛行体と、吸気口と排気口とを有し且つ吸気口から流入した空気中の塵埃を静電吸着するための集塵器とを備える空気清浄機であって、
上記飛行体は、空気を上方から吸気して下方に排気する複数の上記プロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設された構造のドローンであり、
上記集塵器は、それぞれが電極と1つ以上の孔とを有し且つ上下方向に一定間隔で列設された複数のシート状の吸着部と、上下方向で隣り合う吸着部の電極間に電位差を発生させるための電源部とを備え、
上記複数のシート状の吸着部は、上記飛行体のプロペラが上記吸着部の排気口近傍に位置するように、飛行体に組み付けられており、
上記プロペラが上記吸着部の排気口近傍に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の列設方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが、最下位の吸着部の排気口をなす1つ以上の孔の直近真下に位置することである、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空気清浄機において、
上記1つ又は複数の吸着部のいずれか又は全てが、網状に形成されている、
ことを特徴とする空気清浄機。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の空気清浄機において、
第1の磁性部材を上記集塵器の吸着部に固定すると共に第2の磁性部材を上記飛行体に固定し、これら第1及び第2の磁性部材の磁力による吸着力によって、上記吸着部を飛行体に着脱自在に組み付けた、
ことを特徴とする空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空中を浮動して、空気中の塵埃を捕集することができる空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気清浄機としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載の技術がある。
特許文献1に記載の空気清浄機は、空気中の塵埃を吸着するための塵埃捕集体と、この塵埃捕集体をプロペラによって空気中に浮遊させる飛行手段と、この飛行手段を制御する制御装置とを備えている。
かかる構成により、飛行手段を駆動させて、空気清浄機を室内に浮遊させると、浮遊した空気清浄機が、塵埃捕集体の表面の固定電子不織布によって、空気中に漂う塵埃を吸着する。また、室内に置かれている家具の天面や棚に付着している塵埃を、プロペラによって空中に巻き上げ、この固定電子不織布に吸着させる。
【0003】
一方、特許文献2に記載の空気清浄機は、プロペラ推進のバルーンで構成された飛行体と、この飛行体に取り付けられた集塵器とを備えている。集塵器は、互いに逆極性に帯電させることができる吸気口と排気口とを有する容器で形成されている。
かかる構成により、飛行体を、プロペラの推進力により、空中で移動させると、空気は、給気口を通って集塵器内に流入する。これにより、空気中の帯電した塵埃が、集塵器の給気口付近や内部及び排気口付近で捕集されるようなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−131883号公報
【特許文献2】特表2014−515086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の空気清浄機では、次のような課題があった。
特許文献1及び特許文献2に記載された空気清浄機は、共に、飛行体をプロペラの推力で動かしながら、塵埃を集塵器に接触させて捕集する構造である。このため、単位時間当たりの塵埃捕集率が、飛行体の速度や経路に依存する。したがって、飛行体の速度が遅く且つ飛行体が余り動き回らない場合には、塵埃の捕集率が低下する。
【0006】
特に、特許文献2に記載の空気清浄機のように、集塵器の吸気口と排出口とが異なる電荷を有する構造では、高電圧を印加させて、塵埃を帯電させる構造にした場合、絶縁のために、吸気口と排気口との電極間に距離をあけて、吸気口と排気口とが離れた構造にする必要がある。
このような構造の集塵器を、飛行体の推進機構の気流に影響する位置に取り付けると、飛行体の推進力に大きな影響を与えることとなる。また、集塵器が大きくなるため、空気清浄機全体の重心が、集塵器の取り付け位置によって移動していまう。このため、飛行体の制御が非常に難しくなる。
【0007】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、より広範囲の空気を集塵器内に吸入することができ、しかも、集塵器からの塵埃の脱落がなく且つ小型の集塵器を取り付け可能な空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、プロペラを推進力として浮動可能な飛行体と、吸気口と排気口とを有し且つ吸気口から流入した空気中の塵埃を静電吸着するための集塵器とを備える空気清浄機であって、飛行体は、空気を上方から吸気して下方に排気する複数のプロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設された構造のドローンであり、集塵器は、それぞれが電極を有し且つ隣り合う電極同士が対向するように同心状に嵌め込まれた3つ以上の筒状の吸着部と、隣り合って対向する電極間に電位差を発生させるための電源部とを備え、3つ以上の筒状の吸着部は、その両端開口が上下方向を向くように配置され、飛行体のプロペラが吸着部の吸気口近傍,吸着部の内部又は排気口近傍のいずれかに位置するように、飛行体に組み付けられており、プロペラが吸着部の吸気口近傍に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の上下方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが、吸着部の吸気口をなす上開口の直近真上に位置することであり、プロペラが吸着部の内部に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の上下方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが吸着部の内部に位置することであり、プロペラが吸着部の排気口近傍に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の上下方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが吸着部の排気口をなす下開口の直近真下に位置することである構成とした。
かかる構成により、飛行体が、プロペラの推進力によって浮動する。飛行体の浮動に伴って、空気中の塵埃が吸気口から集塵器に吸い込まれ、集塵器に静電吸着される。詳しくは、プロペラが、集塵器の吸気口近傍,内部又は排気口近傍のいずれかに位置するので、周囲の広い範囲の空気が、プロペラの吸気力及び排気力によって、強制的に集塵器内に吸い込まれる。この結果、より広範囲の空気を集塵器内に吸入することができるので、飛行体の速度が遅く且つ飛行体が余り動き回らない場合においても、十分な塵埃捕集率を得ることができる。
また、集塵器は、塵埃を静電吸着して捕集する構造であるので、特許文献1に記載の空気清浄機とは異なり、1μm以下という極小の塵埃であっても強固に吸着する。このため、風や集塵器に対する僅かな衝撃があっても、塵埃が集塵器から脱落することはない。つまり、この発明の空気清浄機は、特許文献1に記載の空気清浄機に比べて、塵埃の清浄効率が非常に高い。
さらに、この発明の空気清浄機は、吸気口から集塵器に流入した空気中の塵埃を静電吸着する構造であるので、特許文献2に記載の空気清浄機と異なり、集塵器を高電圧使用にしても、集塵器自体が大型化することはない。
そして、このように、集塵器を高電圧使用にすることにより、イオン,オゾン等を発生させることができ、集塵効率を高めるだけでなく、殺菌作用やアレルギー不活化作用を得ることができる。
また、周囲の空気が、プロペラの吸気力及び排気力によって、強制的に集塵器内に吸い込まれる。このとき、集塵器が、同心状に嵌め込まれた複数の筒状の吸着部で構成されているので、複数の筒状の吸着部の間が、空気通路となり、強制的に吸い込まれた空気が、これらの複数の空気通路を流通することとなる。そして、集塵器の電源部がオン状態であると、対向する電極間に電位差が発生し、対向する電極の一方が正極になり、他方が負極になる。この結果、負極に帯電している空気中の塵埃が、正極の電極を有した吸着部の表面に吸着され、正極に帯電している空気中の塵埃が、負極の電極を有した吸着部の表面に吸着される。
また、複数の筒状の吸着部を同心状に嵌め込んだ構成であるので、空気と吸着部との接触面積が大きくなり、単位時間当たりの塵埃捕集率がさらに高まる。
さらに、プロペラが集塵器を内部になるように、複数の筒状の吸着部を組み付けることで、吸着部がプロペラのカバーとして機能する。また、かかる構造は、ダクテッドファンとして機能するので、推進力が、プロペラ単体の時よりも増加することとなる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の空気清浄機において、集塵器の吸気口が排気口よりも大径になるように、吸着部の吸気口側の部位をテーパ状に広げ、プロペラを上記吸着部の内部に位置させた構成とする。
かかる構成により、大量の空気を、大径の吸気口から吸着部内にスムーズに流入させることができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気清浄機において、集塵器を構成する3つ以上の吸着部は、複数の孔をそれぞれ有する構成とした。
かかる構成により、空気は集塵器の吸気口から吸い込まれるだけでなく、吸着部の複数の孔からも集塵器の内部に吸い込まれて、排気口から排出される。したがって、集塵器内への空気流量を増加させることができ、その分、塵埃集塵率を高めることができる。
【0011】
請求項4の発明は、プロペラを推進力として浮動可能な飛行体と、吸気口と排気口とを有し且つ吸気口から流入した空気中の塵埃を静電吸着するための集塵器とを備える空気清浄機であって、飛行体は、空気を上方から吸気して下方に排気する複数の上記プロペラが、飛行動作を制御する制御部を有した本体部の周囲に配設された構造のドローンであり、集塵器は、それぞれが電極と1つ以上の孔とを有し且つ上下方向に一定間隔で列設された複数のシート状の吸着部と、上下方向で隣り合う吸着部の電極間に電位差を発生させるための電源部とを備え、複数のシート状の吸着部は、飛行体のプロペラが吸着部の排気口近傍に位置するように、飛行体に組み付けられており、プロペラが吸着部の排気口近傍に位置するとは、プロペラの回転軸を吸着部の列設方向を向く中心軸にほぼ一致させた状態で、プロペラが、最下位の吸着部の排気口をなす1つ以上の孔の直近真下に位置することである構成とした。
かかる構成により、集塵器の周囲の空気が、プロペラの吸気力によって、一方端の吸着部の孔から後段の吸着部に向かって吸い込まれる。後段の吸着部の孔を通過した空気は、プロペラの排気力によって、他方端の孔から排出される。この際、空気が、複数の吸着部に接触し、空気中の塵埃が吸着部に静電吸着される。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の空気清浄機において、1つ又は複数の吸着部のいずれか又は全てが、網状に形成されている構成とした。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の空気清浄機において、第1の磁性部材を集塵器の吸着部に固定すると共に第2の磁性部材を飛行体に固定し、これら第1及び第2の磁性部材の磁力による吸着力によって、吸着部を飛行体に着脱自在に組み付けた構成とする。
【発明の効果】
【0014】
以上詳しく説明したように、この発明の空気清浄機によれば、集塵器による単位時間当たりの塵埃捕集率を高めることができるという優れた効果がある。これにより、ほとんど静止した状態でも、塵埃を十分に捕集することができる。また、空気中の塵埃を静電吸着して、塵埃を脱落させることなく強固に確保することができる。さらに、集塵器自体を小型化させることができる。集塵器を高電圧使用にすることにより、集塵だけでなく、殺菌作用やアレルギー不活化作用を得ることもできる。
また、空気と吸着部との接触面積を大きくして、塵埃捕集率をさらに高めることができる、という効果がある。そして、集塵器の吸着部をプロペラのカバーとして機能させることができるので、低空飛行時におけるプロペラへの異物の巻き込みを防止することができる。また、ダクテッドファンとして機能させることができるので、プロペラの推進力を増大させることができる、という効果もある。
【0015】
また、請求項2及び請求項3の発明によれば、集塵器内へ吸入する空気の範囲を増加させて、塵埃集塵率を高めることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の第1実施例に係る空気清浄機を示す斜視図である。
図2】空気清浄機の一部を破断して示す概略側面図である。
図3】空気清浄機の平面図である。
図4】飛行体の制御システムを説明するための概略図である。
図5】吸着部を示す分解斜視図である。
図6】吸着部を示す断面図である。
図7】吸着部のプロペラへの組み付け及び取り外し方法を示す部分側面図であり、図7の(a)は、吸着部の組み付け前の状態又は取り外し後の状態を示し、図7の(b)は、吸着部の組み付け状態を示す。
図8】空気清浄機の飛行動作を説明するための側面図である。
図9】塵埃の捕集作用を説明するための概略断面図である。
図10】吸着部の取付位置の変形例を示す部分側面図であり、図10の(a)は、プロペラを吸着部の吸気口の近傍に位置させた例を示し、図10の(b)は、プロペラを吸着部の排気口の近傍に位置させた例を示す。
図11】この発明の第2実施例に係る空気清浄機の要部である吸着部の分解斜視図である。
図12】吸着部の断面図である。
図13】第2実施例の変形例を示す分解斜視図であり、図13の(a)は、第1変形例を示し、図13の(b)は、第2変形例を示す。
図14】この発明の第3実施例に係る空気清浄機の要部である吸着部を示す平面図である。
図15図14の矢視B−B断面図である。
図16】この発明の第4実施例に係る空気清浄機の要部を示す概略断面図である。
図17】第4実施例の変形例を示す概略断面図である。
図18】この発明の第5実施例に係る空気清浄機の要部を示す斜視図である。
図19】要部を示す断面図である。
図20】第5実施例の変形例を示す斜視図である。
図21】この発明の第6実施例に係る空気清浄機の一部を破断して示す概略側面図である。
図22】空気清浄機の平面図である。
図23】この発明の第7実施例に係る空気清浄機の一部を破断して示す概略側面図である。
図24】空気清浄機の平面図である。
図25】この発明の第8実施例に係る空気清浄機を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(実施例1)
図1は、この発明の第1実施例に係る空気清浄機を示す斜視図であり、図2は、空気清浄機の一部を破断して示す概略側面図であり、図3は、空気清浄機の平面図である。
図1に示すように、この実施例の空気清浄機1−1は、4つの集塵器4−1〜4−4を飛行体2に組み付けた構成になっている。
【0019】
飛行体2は、プロペラを推進力として、垂直および水平に浮動可能なロータ式のドローンである。ロータ式のドローンとしては、3つのプロペラを有するトライロータ、4つのプロペラを有するクォードロータ、5つのプロペラを有するペンタロータ、6つのプロペラを有するヘキサロータ、8つのプロペラを有するオクトロータ等、多種多様のロータを備えたものが存在する。この実施例では、クォードロータのドローンを、飛行体2として適用した。
【0020】
図2及び図3に示すように、この飛行体2は、本体部20と、本体部20の周囲に配設された4つのプロペラ21〜24とを有している。
プロペラ21〜24は、本体部20から十字状に延出した4本のフレーム25〜28の先端部に取り付けられている。具体的には、モータ21a(22a〜24a)が、各フレーム25(26〜28)の先端上部に取り付けられ、各プロペラ21(22〜24)が、各モータ21a(22a〜24a)の回転軸21b(22b〜24b)に固着されている。
これにより、モータ21a(22a〜24a)の駆動により、プロペラ21(22〜24)が回転軸21b(22b〜24b)と一体に回転し、空気を上方から吸気して下方に排気する。つまり、プロペラ21(22〜24)は、回転によって、飛行体2に対する上方への推進力を与える。
【0021】
本体部20は、飛行体2の飛行動作を制御するための制御部30を有している。
図4は、飛行体2の制御システムを説明するための概略図である。
図4に示すように、メモリ30aを有した制御部30と電源部31と4つの変圧部32−1〜32−4と昇圧部33と受信部34とアンテナ35とが、本体部20に収納されている。
電源部31は、4つ変圧部32−1〜32−4と昇圧部33とに接続され、各変圧部32−1(32−2〜32−4)の出力端は、配線32a,32bを通じて、各プロペラ21(22〜24)のモータ21a(22a〜24a)の入力端に接続されている。また、昇圧部33の出力端は、後述する集塵器4−1(4−2〜4−4)の吸着部40A〜40C内の各電極42にそれぞれ接続されている。
制御部30は、変圧部32−1(32−2〜32−4)の出力電圧を制御することができる。これにより、制御部30は、プロペラ21(22〜24)のモータ21a(22a〜24a)の回転数を変化させることができる。
また、同時に、制御部30は、電源部31からの電圧を昇圧部33で高電圧又はパルス電圧に昇圧させて、後述する集塵器4−1(4−2〜4−4)の吸着部40A〜40C内の各電極42(図5及び図6参照)に印加させることができる。
【0022】
ところで、飛行体2の制御飛行には、大きく分けて、自動型制御飛行と操作型制御飛行とがある。自動型制御飛行は、例えば、予め作成された清浄対象空間の3D(3次元)図面データを制御部30に格納しておき、制御部30がこの3D図面データと制御プログラムに基づいて、飛行体2を空間の所望の位置に飛行させる飛行形態である。一方、操作型制御飛行は、飛行体2を、専用操作機、携帯操作機、スマートフォンやGPS等を用いて、近距離又は遠距離からマニュアル操作する飛行形態である。両制御飛行共、飛行体2を、全空間で飛行させたり、所定の場所又は所定高さに限定して飛行させたりすることができる。
これら自動型制御飛行及び操作型制御飛行のシステムは、公知であり、飛行体2には、どちらの制御システムも適用することができる。
この実施例では、自動型制御飛行と操作型制御飛行の双方が可能なシステムを適用する。すなわち、制御部30が、メモリ30aに格納されている制御プログラムや3D図面等のデータに基づいて、変圧部32−1〜32−4を制御することができるようになっている。また、外部からの指令電波やGPSからの電波を、アンテナ35を介して、受信部34で受信し、受信した電波に基づいて、制御部30が、変圧部32−1〜32−4や昇圧部33を制御することができるようにもなっている。
【0023】
図1図3において、集塵器4−1〜4−4は、空気中の塵埃を静電吸着するための機器であり、図4に示すように、各集塵器4−1(4−2〜4−4)は、プロペラ21(22〜24)に組み付けられた3つの吸着部40A〜40Cと、本体部20内の電源部31と昇圧部33とで構成されている。
【0024】
図5は、吸着部40A〜40Cを示す分解斜視図であり、図6は、吸着部40A〜40Cを示す断面図である。
図5に示すように、3つの吸着部40A〜40Cは、それぞれ異径の筒状体であり、最大径の吸着部40Aの内側に、吸着部40Bが嵌め込まれ、この吸着部40Bの内側に、最小径の吸着部40Cが嵌め込まれている。図6に示すように、これらの吸着部40A〜40Cは、同心状に嵌め込まれ、所定幅の間隙G1が、吸着部40A,40B間に設けられ、所定幅の間隙G2が、吸着部40B,40C間に設けられている。この実施例では、嵌め込まれた3つの吸着部40A〜40Cの上側開口が、集塵器4−1(4−2〜4−4)の吸気口4Aに設定され、下側開口が、排気口4Bに設定されている。
各吸着部40A(40B,40C)は、電極42を誘電体41で被覆した構造になっており、これにより、隣り合う吸着部40A,40Bの電極42,42同士が対向し、隣り合う吸着部40B,40Cの電極42,42同士が対向している。
【0025】
吸着部40Aの電極42は、配線33aを通じて昇圧部33に接続されている。そして、吸着部40B,40Cの電極42,42は、配線33b,33cを通じて、昇圧部33にそれぞれ接続されている。これにより、制御部30の制御によって、所定の電圧が、昇圧部33から吸着部40Aの電極42と吸着部40Bの電極42とに印加され、吸着部40A,40Bの電極42,42間に所定の電位差が発生するようになっている。また、昇圧部33からの所定の電圧が、吸着部40Cの電極42と吸着部40Bの電極42とにも、印加され、所定の電位差が、吸着部40C,40Bの電極42,42間に発生するようになっている。この実施例では、例えば6kVの電圧が、吸着部40A,40Cの電極42,42に印加されるように設定され、吸着部40Bの電極42は接地されている。これにより、6kVの電位差を、吸着部40A,40Bの電極42,42間に生じさせ、吸着部40C,40Bの電極42,42間にも、同じく6kVの電位差を生じさせることができる。
【0026】
上記のごとき、吸着部40A〜40Cは、図3図5に示すように、スペーサ44,45によって連結されている。具体的には、吸着部40A,40Bが、間隙G1内に挿入されたスペーサ44によって連結され、吸着部40B,40Cが、間隙G2内に挿入されたスペーサ45によって連結されている。
【0027】
このように、スペーサ44,45によって連結された吸着部40A〜40C全体は、プロペラ21(22〜24)に組み付けられている。
具体的には、図6に示すように、下向きの凸部46aがリング46に凸設され、このリング46が、最外の吸着部40Aの下端部外周面に固着されている。また、上向きの凹部47aがリング47に凹設され、このリング47が、フレーム25(26〜28)に固着されている。プロペラ21(22〜24)は、このリング47の中心に位置している(図5参照)。
リング46は、第1の磁性部材であり、リング47は、第2の磁性部材である。
リング46,47は、共に磁性を有しており、リング46の凸部46a側の磁極とリング47の凹部47a側の磁極とが、逆極性になるように、取り付けられている。
これにより、吸着部40A〜40Cをプロペラ21(22〜24)側に下降させ、リング46をリング47に当接させた状態で、凸部46aを凹部47aに嵌め込むことができる。このようにして、吸着部40A〜40Cをプロペラ21(22〜24)に組み付けることで、プロペラ21(22〜24)を吸着部40A〜40Cの内部に位置させることができる。そして、吸着部40A〜40Cの上下の移動は、リング46,47同士の磁力によって防止され、横方向の移動は、凸部46aと凹部47aとの嵌合力によって防止される。また、リング46,47の磁力に抗して、吸着部40A〜40Cを引き上げることで、吸着部40A〜40Cをプロペラ21(22〜24)から取り外すことができる。
つまり、吸着部40A〜40Cは、リング46,47の磁力による吸着力によって、飛行体2に着脱自在に組み付けられている。したがって、飛行体がある物体に衝突したとしても、その衝突時の衝撃で、吸着部40A〜40Cが飛行体2から容易に分離する。このため、衝突された物体が、衝突によるダメージを受けることはない。
なお、この実施例では、吸着部40A〜40Cのリング46に凸部を設け、フレーム25(26〜28)側のリング47に凹部を設けたが、逆に、吸着部40A〜40Cのリング46に凹部を設け、フレーム25(26〜28)側のリング47に凸部を設けても良いことは勿論である。
【0028】
次に、この実施例の空気清浄機1−1の作用及び効果について説明する。
図7は、吸着部40A〜40Cのプロペラ21(22〜24)への組み付け及び取り外し方法を示す部分側面図であり、図7の(a)は、吸着部40A〜40Cの組み付け前の状態又は取り外し後の状態を示し、図7の(b)は、吸着部40A〜40Cの組み付け状態を示す。図8は、空気清浄機1−1の飛行動作を説明するための側面図である。
【0029】
飛行体2を浮動させる前に、吸着部40A〜40Cを飛行体2のプロペラ21(22〜24)に組み付ける。すなわち、図7の(a)に示すように、吸着部40A〜40Cのリング46を飛行体2のリング47の真上から下降させて、図7の(b)に示すように、リング46の凸部46aをリング47の凹部47aに嵌合させることで、吸着部40A〜40Cをプロペラ21(22〜24)に組み付ける。
【0030】
かかる状態で、制御部30(図4参照)の制御によって、プロペラ21〜24を所望の回転速度で回転させると、図8に示すように、上方の空気Wがプロペラ21〜24側に吸い込まれ、プロペラ21〜24の下方に排気される。つまり、プロペラ21〜24の回転によって、上方への推進力が生じ、飛行体2が浮上する。
このとき、プロペラ21(22〜24)が、集塵器4−1(4−2〜4−4)の吸着部40A〜40C内に位置しているので、プロペラ21(22〜24)の吸気力及び排気力によって、周囲の広い範囲の空気Wが、吸気口4Aを通じて強制的に吸着部40A〜40Cに吸い込まれ、強制的に排気口4Bから排出される。つまり、空気Wの高速気流が、吸着部40A〜40C内に形成されるので、吸着部40A〜40Cをプロペラ21(22〜24)に組み付けた構造が、ダクテッドファンとして機能する。この結果、プロペラ21〜24単体の時よりも、大きな推進力を得ることができる。
【0031】
図9は、塵埃の捕集作用を説明するための概略断面図である。
上記のように、飛行体2の周囲の空気Wは、プロペラ21(22〜24)の吸気力及び排気力によって、強制的に吸着部40A〜40C内に吸い込まれる。すなわち、図9の矢印で示すように、空気Wが、上方の吸気口4Aから吸着部40A〜40C内に吸い込まれる。このとき、筒状の吸着部40A〜40Cが、同心状に嵌め込まれた構造になっているので、吸気口4Aから吸い込まれた空気Wは、吸着部40C内を通る。また、吸着部40A,40B間の間隙G1と吸着部40B,40C間の間隙G2が共に空気通路として機能するので、空気Wは、吸着部40C内だけでなく、これら間隙G1,G2をも通る。
このとき、制御部30の制御によって、上記電圧が、昇圧部33(図4参照)から吸着部40A〜40Cの各電極42に印加されていると、上記したように、6kVの電位差が、吸着部40A,40Bの電極42,42間と吸着部40C,40Bの電極42,42間とに生じている。このため、吸着部40A,40Cが正極に帯電し、吸着部40Bが負極に帯電している。
したがって、空気Wが、吸着部40C内や間隙G1,G2を通る際に、空気Wに含まれている帯電した塵埃が、帯電している吸着部40A〜40Cに静電気力によって吸着される。具体的には、負極に帯電した塵埃が、吸着部40A,40Cの表面に吸着され、正極に帯電した塵埃が、吸着部40Bの表面に吸着される。しかる後、吸着部40C内や間隙G1,G2を通過した空気Wが、吸着部40A〜40Cの排気口4Bから下方に排気される。さらに、排気口4Bから排気された空気Wは、プロペラ21(22〜24)によって、再び吸気口4Aから強制的に吸気され、空気Wの気流が、吸着部40A〜40Cの周囲と吸着部40A〜40C内を循環することとなる。
【0032】
このように、この実施例の空気清浄機1−1は、プロペラ21(22〜24)の回転によって、周囲の空気Wを吸着部40A〜40C内に強制的に流入する構造であるので、空気清浄機1−1が、ホバーリング状態のように、速度が遅く且つ余り動き回らない場合においても、空気中の塵埃を十分に捕集することができる。
【0033】
そして、図8に示すように、空気清浄機1−1を浮かせた状態で移動させることにより、広い清浄対象空間を動き回ることができ、広い空間中に存在する多量の塵埃を吸着部40A〜40Cによって捕集することができる。
ところで、空気清浄機1−1が、空間を動き回る場合には、吸着部40A〜40Cが、プロペラ21(22〜24)以外の部位、例えば、本体部20等に組み付けられていても、空気Wは、吸着部40C内や間隙G1,G2を通るので、塵埃の捕集は可能である。
しかし、吸着部40A〜40Cによる単位時間当たりの塵埃捕集率は、空気Wが吸着部40C内や間隙G1,G2に流入する速度に対応する。したがって、特許文献2に記載の空気清浄機のように、吸着部40A〜40Cを、プロペラ21(22〜24)以外の部位に組み付けた場合には、空気清浄機の移動速度に対応した塵埃捕集率しか得ることができない。
しかしながら、この実施例の空気清浄機1−1では、空気Wが、空気清浄機1−1の移動速度とプロペラ21(22〜24)による空気流入速度との和の速度で、吸着部40C内や間隙G1,G2に流入することとなる。このため、高速の空気Wが、吸着部40C内や間隙G1,G2に流入するので、吸着部40A〜40Cによる単位時間当たりの塵埃捕集率は、非常に高くなる。この結果、より広範囲の空気Wを集塵機4−1(4−2〜4−4)内に吸入することができる。
また、塵埃捕集率は、空気Wと吸着部との接触面積に対応する。この実施例の空気清浄機1−1では、空気Wを、3つの吸着部40A〜40Cに接触させる構造になっているので、空気Wと吸着部との接触面積が大きい。したがって、かかる点からも、さらに高い単位時間当たりの塵埃捕集率を得ることができる。
【0034】
この実施例の空気清浄機1−1は、多種多様な清浄対象空間内で制御飛行させることができる。その一例として、次のような制御飛行が可能である。
すなわち、GPS信号が届かず、しかも危険な清浄対象空間を定期的に清浄する場合には、まず、図示しない操作機を用いて、外部から空気清浄機1−1に指令電波を送り、空気清浄機1−1を飛行させる。そして、効率的に集塵できる飛行経路のデータを集め、その3D図面データを制御部30のメモリ30a(図4参照)に格納しておく。
その後は、制御部30が、メモリ30aに格納されている3D図面のデータに基づいて、変圧部32−1〜32−4を制御し、空気清浄機1−1が、3D図面のデータが示す飛行経路を自動的に飛び回り、空間中の塵埃を効率的に集塵する。
かかる飛行による集塵は、空気中の塵埃を吸着部40A〜40Cで静電吸着することにより、行われるので、特許文献1に記載の空気清浄機とは異なり、1μm以下という極小の塵埃であっても強固に吸着する。したがって、一度集塵した塵埃は、風や空気清浄機1−1に対する僅かな衝撃によって脱落することはない。
【0035】
また、この実施例の空気清浄機1−1は、集塵装置として使用することができるだけでなく、除菌装置としても使用することができる。すなわち、図4において、高電圧を昇圧部33から吸着部40A〜40Cの電極42に印加するように、昇圧部33の出力電圧を制御することで、吸着部40A〜40Cからイオンやオゾンを発生させることができる。これにより、空気清浄機1−1の周囲の殺菌等を行うことができる。
このように、空気清浄機1−1の集塵器4−1〜4−4を高電圧使用に設定しても、特許文献2に記載の空気清浄機と異なり、吸着部40A〜40Cの長さや径を大きくする必要がない。
【0036】
清浄作業を終了して着地した空気清浄機1−1においては、多量の塵埃が、集塵器4−1(4−2〜4−4)の吸着部40A〜40Cに付着している。
空気清浄機1−1の着地時には、図7の(b)に示すように、吸着部40A〜40Cがプロペラ21(22〜24)に組み付けられているので、吸着部40A〜40Cを上方に持ち上げることで、吸着部40A〜40Cをプロペラ21(22〜24)から取り外すことができる。このとき、吸着部40A〜40Cへの電圧印加を停止させることで、吸着部40A〜40Cに付着した多量の塵埃を脱落させたり、拭き取ったりすることができる。
【0037】
なお、この実施例では、図4図6に示したように、3つの筒状の吸着部40A〜40Cと昇圧部33と電源部31とで、集塵器4−1(4−2〜4−4)を構成したが、筒状の吸着部の数は、3つに限定されない。2つ又は4つ以上の吸着部を集塵器4−1(4−2〜4−4)の構成部材とすることができる。
【0038】
また、この実施例では、飛行体2のプロペラ21(22〜24)が、内部に位置するように、吸着部40A〜40Cをプロペラ21(22〜24)に組み付けたが、これに限定されるものではない。
図10は、吸着部40A〜40Cの取付位置の変形例を示す部分側面図であり、図10の(a)は、プロペラ21(22〜24)を吸着部40A〜40Cの吸気口4Aの近傍に位置させた例を示し、図10の(b)は、プロペラ21(22〜24)を吸着部40A〜40Cの排気口4Bの近傍に位置させた例を示す。
すなわち、図10の(a)に示すように、凹部47aを下向きにしたリング47を、フレーム25(26〜28)の下側に固着する。そして、凸部46aを上向きにした吸着部40A〜40Cのリング46を、リング47に当て、凸部46aを凹部47aに嵌合させる。かかる吸着部40A〜40Cの組み付けにより、プロペラ21(22〜24)が、吸着部40A〜40Cの吸気口4Aの近傍に位置した状態になる。
また、図10の(b)に示すように、筒体48を、フレーム25(26〜28)の上側に固着し、リング47を筒体48の上端に固着させて、リング47をプロペラ21(22〜24)の近傍に位置させる。そして、吸着部40A〜40Cのリング46を、リング47に嵌合させる。かかる吸着部40A〜40Cの組み付けにより、プロペラ21(22〜24)が、吸着部40A〜40Cの排気口4Bの近傍に位置した状態になる。
これにより、飛行体2の周囲の空気Wが、吸着部40C内や間隙G1,G2を通った後、筒体48内を通って、外部に勢いよく排気される。
【0039】
(実施例2)
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図11は、この発明の第2実施例に係る空気清浄機の要部である吸着部の分解斜視図であり、図12は、吸着部の断面図である。
図11に示すように、この実施例の空気清浄機に適用される吸着部40A〜40Cは、複数の孔を有している点が、上記第1実施例の吸着部と異なる。
具体的には、吸着部40Aには、誘電体41と電極42とを貫通した円形又は楕円形の孔40a1が、多数穿設されている。そして、吸着部40B,40Cには、誘電体41と電極42とを貫通した円形又は楕円形の孔40b1,40c1が、それぞれ多数穿設されている。
【0040】
上記第1実施例では、図9に示したように、プロペラ21(22〜24)を回転させると、空気Wが、吸気口4Aから吸気され、その空気Wは、吸着部40C内と間隙G1,G2とをそれぞれ独立に通るようになっていた。
これに対して、この実施例では、多数の孔40a1〜40c1が吸着部40A〜40Cに穿設されているので、図12に示すように、吸気口4Aから吸気された空気Wは、吸着部40C内と間隙G1,G2を通るだけでなく、孔40a1〜40c1を通じて、プロペラ21(22〜24)側に分流する。しかも、空気Wは、吸気口4Aからだけでなく、外側の吸着部40Aの孔40a1からも流入するので、その空気流量増加分だけ、塵埃集塵率が高まる。
【0041】
なお、この実施例では、円形又は楕円形の孔40a1(40b1,40c1)を吸着部40A(40B,40C)に設けたが、孔は、円形又は楕円形に限定されるものではない。図13図14に示すように、多種多様の孔を吸着部40A〜40Cに設けることができる。
図13は、第2実施例の変形例を示す分解斜視図であり、図13の(a)は、第1変形例を示し、図13の(b)は、第2変形例を示す。
図13の(a)に示す吸着部40A〜40Cは、複数のスリット状の孔を有している。
具体的には、吸着部40Aには、誘電体41と電極42とを貫通した縦長スリット状の孔40a2が、周方向に一定間隔で複数穿設されている。そして、吸着部40B,40Cには、誘電体41と電極42とを貫通した縦長スリット状の孔40b2,40c2が、周方向に一定間隔で複数穿設されている。
【0042】
一方、図13の(b)に示す吸着部40A〜40Cでは、それぞれの吸着部40A(40B,40C)が網状に形成されている。
具体的には、吸着部40Aには、誘電体41と電極42とを貫通し、且つ互いに近接した矩形状の孔40a3が、吸着部40A全体に多数穿設されている。そして、吸着部40B,40Cには、誘電体41と電極42とを貫通し、且つ互いに近接した矩形状の孔40b3,40c3が、吸着部40B,40C全体に多数穿設されている。
【0043】
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0044】
(実施例3)
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図14は、この発明の第3実施例に係る空気清浄機の要部である吸着部を示す平面図であり、図15は、図14の矢視B−B断面図である。
図14に示すように、この実施例の空気清浄機に適用される集塵機40−1(40−2〜40−4)では、吸着部40A’’,40B’’が渦巻き状に形成されている点が、上記第1ないし第3実施例の吸着部と異なる。
具体的には、1対の吸着部40A’’,40B’’が、それぞれシート状に形成され、各吸着部40A’’(40B’’)において、電極42が誘電体41に被覆されている。これらの吸着部40A’’,40B’’は、渦巻き状に丸められ、スペーサ44によって、間隙Gが吸着部40A’’,40B’’間に形成されている。これにより、吸着部40A’’の電極42と吸着部40B’’の電極42とが、間隙Gを挟んで対向した状態になっている。
そして、吸着部40A’’の電極42と吸着部40B’’の電極42とが、配線33a,33bを通じて、昇圧部33にそれぞれ接続されている。
これにより、昇圧部33で昇圧された電源電圧、例えば6kV,0kVの電圧が、吸着部40A’’,40B’’の電極42,42に印加されると、対向する電極42,42間に電位差が発生し、図15に示すように、吸着部40A’’が正極に帯電し、吸着部40B’’が負極に帯電する。
【0045】
かかる構成により、吸着部40A’’,40B’’をプロペラ21(22〜24)(図1等参照)の近傍に、組み付けることで、周囲の空気を吸気口4Aから強制的に吸気し、間隙Gや吸着部40A’’,40B’’の中心空間G’を通して、排気口4Bから排気することができる。空気中の塵埃は、中心空間G’や間隙Gを通過する間に、吸着部40A’’,40B’’の表面に静電吸着される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0046】
(実施例4)
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図16は、この発明の第4実施例に係る空気清浄機の要部を示す概略断面図である。
図16に示すように、この実施例の空気清浄機に適用される吸着部40A〜40Cは、吸気口4A側の部位が、テーパ状になっている点が、上記第1及び第2実施例と異なる。
すなわち、吸着部40A〜40Cの上半部40A1〜40C1がテーパ状に広がり、吸気口4Aの開口径が排気口4Bの開口径よりも大きい。
【0047】
かかる構成により、プロペラ21(22〜24)の回転によって、大量の空気が、大径の吸気口4Aから吸着部40A〜40C内部にスムーズに吸い込まれ、排気口4Bから強制的に排出される。
【0048】
図17は、第4実施例の変形例を示す概略断面図である。
上記のごとく、この実施例では、吸着部40A〜40Cの全ての上半部40A1〜40C1をテーパ状に設定したが、これに限定されない。吸着部40A〜40Cの上半部40A1〜40C1のいずれかをテーパ状に設定しても、同様の作用及び効果を得ることができる。
例えば、図17に示すように、吸着部40A〜40Cの内の吸着部40Aの上半部40A1のみをテーパ状に設定しても良い。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0049】
(実施例5)
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図18は、この発明の第5実施例に係る空気清浄機の要部を示す斜視図であり、図19は、要部を示す断面図である。
図18に示すように、この実施例の空気清浄機は、吸着部の構造が上記第1ないし第4実施例と異なる。
すなわち、この実施例では、3つのシート状の吸着部40A’〜40C’が、厚さ方向(図の上方向)に等間隔で列設されている。
具体的には、各吸着部40A’(40B’,40C’)が、円形に形成され、吸着部40A’,40B’が、スペーサ44’によって連結され、吸着部40B’,40C’が、スペーサ45’によって連結されている。そして、吸着部40A’〜40C’全体が、プロペラ21(22〜24)の真上に組み付けられている。
【0050】
図19に示すように、外周の孔40a1’(40b1’,40c1’)と内周の孔40a2’(40b2’,40c2’)が、吸着部40A’(40B’,40C’)に設けられており、最上段の吸着部40C’の孔40c1’,40c2’が、吸気口4Aに設定され、最下段の吸着部40A’の孔40a1’,40a2’が、排気口4Bに設定されている。
各吸着部40A’(40B’,40C’)は、シート状の円形の誘電体41’と、誘電体41’内に設けられた電極42’とで構成され、吸着部40A’(40B’,40C’)の電極42’が、配線33a(33b,33c)を通じて、昇圧部33に接続されている。
これにより、昇圧部33で昇圧された電源電圧、例えば6kV,0kV,6kVの電圧が、吸着部40A’〜40C’の電極42’,42’,42’にそれぞれ印加されると、対向する吸着部40A’,40B’の電極42’,42’間、及び、対向する吸着部40C’,40B’の電極42’,42’間にそれぞれ電位差が発生し、吸着部40A’,40C’が正極に帯電し、吸着部40B’が負極に帯電する。
【0051】
かかる構成により、プロペラ21(22〜24)を回転させると、周囲の空気が、吸気口4Aとしての吸着部40C’の孔40c1’,40c2’から下段の吸着部40B’に向かって流入する。そして、空気は、吸着部40B’の孔40b1’,40b2’を通過して、最下段の吸着部40A’に至り、排気口4Bとしての孔40a1’,40a2’から排出される。空気が、吸着部40A’〜40C’を通過する際、空気中の塵埃が吸着部40A’〜40C’に静電吸着される。
【0052】
図20は、第5実施例の変形例を示す斜視図である。
上記では、吸着部40A’〜40C’を、スペーサ44’,45’で連結した例を示したが、図20に示すように、吸着部40A’〜40C’を、リング46を有した筒状体40’内に組み込んでも良い。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第4実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0053】
(実施例6)
次に、この発明の第6実施例について説明する。
図21は、この発明の第6実施例に係る空気清浄機の一部を破断して示す概略側面図であり、図22は、空気清浄機の平面図である。
これらの図に示すように、この実施例の空気清浄機1−2は、下向きのプロペラ29と、集塵器4−5とを備えている点が、上記第1ないし第5実施例と異なる。
【0054】
具体的には、モータ29aが、本体部20の下面中央に取り付けられ、プロペラ29が、モータ29aの回転軸29bに固着されている。
このプロペラ29は、プロペラ21〜24とは異なり、その回転によって、空気を下方から吸気して上方に排気する機能を有している。
本体部20には、上記変圧部32−1〜32−4(図4参照)の他に、同構造の変圧部32−5が設けられており、モータ29aが、図示しない配線を通じて、この変圧部32−5に接続されている。この変圧部32−5も、制御部30(図4参照)に接続されており、これにより、制御部30の制御が、変圧部32−5を通じて、プロペラ29の回転速度を制御するようになっている。
【0055】
この実施例では、上記実施例の集塵器4−1〜4−4は適用されず、集塵器4−5のみが適用されている。集塵器4−5も、集塵器4−1〜4−4と同様に、吸着部40A〜40Cを有しており、吸着部40A〜40Cは、プロペラ29にのみ組み付けられている。プロペラ29への組み付け方法は、プロペラ21(22〜24)への組み付ける方法と同様である。すなわち、吸着部40A〜40Cのリング46を、本体部20下面のリング47に嵌め込むことで、吸着部40A〜40Cを、本体部20下面のプロペラ29に組み付けることができる。
この吸着部40A〜40Cの電極42,42,42(図示せず)も、上記第1実施例の場合と同様に、図示しない配線を通じて、本体部20内の昇圧部33(図4参照)に接続されている。すなわち、制御部30は、電源部31からの電圧を昇圧部33で高電圧又はパルス電圧に昇圧させて、これら吸着部40A〜40Cの電極42,42,42に印加させることができる。
【0056】
かかる構成により、プロペラ21〜24を回転させて、空気清浄機1−2を浮上させることができる。そして、プロペラ29を回転させると、下方の空気が、プロペラ29より、吸気口4Aから吸着部40A〜40C内に吸い上げられ、空気中の塵埃が、集塵器4−5の吸着部40A〜40Cによって捕集される。そして、空気は、吸着部40A〜40Cの排気口4Bから上方に排気される。すると、上方に排気された空気は、プロペラ21〜24によって、吸気され、下方に排気される。この結果、空気が、プロペラ29と周囲のプロペラ21〜24との間を循環し、循環気流が生成される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第5実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0057】
(実施例7)
次に、この発明の第7実施例について説明する。
図23は、この発明の第7実施例に係る空気清浄機の一部を破断して示す概略側面図であり、図24は、空気清浄機の平面図である。
これらの図に示すように、この実施例の空気清浄機1−3は、集塵器4−1〜4−4,4−5がすべてのプロペラ21〜24,29に組み付けられている点が、上記第1ないし第6実施例と異なる。
すなわち、集塵器4−1〜4−4の吸着部40A〜40Cが、上記第1実施例と同様に、プロペラ21〜24にそれぞれ組み付けられ、集塵器4−5の吸着部40A〜40Cが、上記第6実施例と同様に、プロペラ29に組み付けられている。
【0058】
かかる構成により、図23に示すように、空気Wが、プロペラ21〜24とプロペラ29との間を確実に循環し、5つの集塵器4−1〜4−5による塵埃捕集率の大幅アップを図ることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第6実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0059】
(実施例8)
次に、この発明の第8実施例について説明する。
図25は、この発明の第8実施例に係る空気清浄機を示す側面図である。
図25に示すように、この実施例の空気清浄機1−4は、プロペラ29’で推進するバルーン5と集塵器4−6とで構成されている。
具体的には、プロペラ29’が、バルーン5の後部に設けられ、集塵器4−6の吸着部40A〜40Cがこのプロペラ29’に組み付けられている。
吸着部40A〜40Cの電極42,42,42(図示せず)は、図示しない昇圧部33に接続され、この昇圧部33は、図示しない電源部31に接続されており、電源部31の電圧が、昇圧部33で昇圧されて、吸着部40A〜40Cの各電極42に印加されるようになっている。
【0060】
かかる構成により、プロペラ29’を回転させながら、バルーン5を飛行させることで、空気が吸着部40A〜40C内に強制的に吸気される。そして、空気が、吸着部40A〜40C内を通って排気されることにより、空気中の塵埃が、吸着部40A〜40Cに静電吸着される。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第7実施例と同様であるので、それらの記載は省略する。
【0061】
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記実施例では、すべてのプロペラ21〜24に集塵器の吸着部40A〜40Cを取り付けた例を示した。しかし、集塵器の吸着部は、飛行体の少なくとも1つ以上のプロペラに組み付けられていれば良い。したがって、吸着部40A〜40Cをプロペラ21〜24のうちのいずれかにのみ組み付けた空気清浄機も、この発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1−1〜1−4…空気清浄機、 2…飛行体、 4−1〜4−6…集塵器、 4A…吸気口、 4B…排気口、 5…バルーン、 20…本体部、 21〜24,29,29’…プロペラ、 21a〜24a,29a…モータ、 21b〜24b,29b…回転軸、 25〜28…フレーム、 30…制御部、 30a…メモリ、 31…電源部、 32−1〜32−4,32−5…変圧部、 32a,32b,33a〜33c…配線、 33…昇圧部、 34…受信部、 35…アンテナ、 40’…筒状体、 40A〜40C,40A’〜40C’,40A’’,40B’’…吸着部、 40a1〜40a3,40b1〜40b3,40c1〜40c3,40a1’〜40c1’,40a2’〜40c2’…孔、 40A1〜40C1…上半部、 41,41’…誘電体、 42,42a,42b,42’…電極、 44,45,44’,45’…スペーサ、 46,47…リング、 46a…凸部、 47a…凹部、 48…筒体、 G,G1,G2…間隙、 G’…中心空間、 H…空気通路、 W…空気。
図1
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