(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
金属物体である測定対象物をX線回折測定する装置には、本願出願人が製造販売している装置のように、小型で測定対象物がある場所まで運搬して測定を行うことができる装置があるが、そのような装置で測定する金属物体には全面に塗装がされている等、絶縁層で全面が覆われている場合がある。そのような金属物体を表面研磨する場合、従来の技術を用いて工具と研磨対象物との間の導通状態を検出するには、研磨対象物の測定箇所とは別の箇所を研磨して電極を接続することで、工具と研磨対象物との間に電圧を印加できる状態にしなければならない。このため、X線回折測定のための研磨と電圧印加のための研磨をそれぞれ行わなければならず、目視により素材の金属が表面に出たことを確認する場合より効率はかえって悪くなる。よって、現状、研磨装置を研磨対象物がある場所まで運搬して該対象物の表面を研磨する場合は、目視により金属が表面に出たことを確認しており、効率が悪い。
【0005】
本発明はこの問題を解消するためなされたもので、その目的は、表面に絶縁層がある研磨対象物を金属の面が現れるまで研磨する際に使用される、研磨用工具と研磨対象物との間の導通状態を検出するための表面研磨用治具であって、絶縁層で全面が覆われている研磨対象物であっても、余計な研磨を行うことなく、効率よく表面研磨を行うことができる表面研磨用治具を提供することにある。また、該表面研磨用治具に接続して該導通状態を精度よく検出する特性検出装置を提供することにある。さらに、該特性検出装置からの信号線を接続可能である又は該特性検出装置を内部に含む表面研磨装置であって、表面研磨作業を容易にする表面研磨装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、円筒状の電極の内側に円筒状の絶縁体を配置し、円筒状の絶縁体の内側は研磨用工具を通過可能な貫通孔である第1電極部と、磁石の部分を有し、絶縁層がある研磨対象物に電極を接触させて固定させる第2電極部と、第1電極部の貫通孔に研磨用工具を挿入したとき、第1電極部の電極、研磨用工具、研磨対象物及び第2電極部の電極の順で成り立つ回路の特性を検出する特性検出装置を、第1電極部の電極と第2電極部の電極にそれぞれ接続可能にする2つの接続部とを備える表面研磨用治具としたことにある。
【0007】
これによれば、研磨対象物の研磨箇所が、表面研磨用治具の第1電極部の貫通孔の直下になるように表面研磨用治具を研磨対象物にセットし、表面研磨用治具の第1電極部の貫通孔に研磨用工具を挿入すると、第1電極部の電極と第2電極部の電極との間は、第1電極部の電極と研磨用工具から成り立つ第1のコンデンサと、研磨用工具と研磨対象物の導通状態から成り立つスイッチと、第2電極部の電極と研磨対象物から成り立つ第2のコンデンサからなる回路とみなすことができる。そして、この回路の特性は、研磨用工具と研磨対象物との間の導通状態(スイッチのON、OFF)により大きく変わるので、研磨用工具を回転させて表面研磨を行う間、表面研磨用治具の接続部に特性検出装置を接続して、第1電極部の電極と第2電極部の電極との間の回路の特性を検出すれば、特性が大きく変わるタイミングを検出することで研磨用工具と研磨対象物との導通を検出することができる。すなわち、絶縁層が全面にある研磨対象物であっても、余計な研磨を行うことなく、効率よく表面研磨を行うことができる。また、第2電極部は磁石を有するので、磁力を適正にすれば表面研磨の間、表面研磨用治具を研磨対象物に固定することができ、研磨対象物が水平でなくても表面研磨用治具をセットすることができる。なお、回路の特性を検出するとは、回路に何らかの作用を行ったときに回路が有する何らかの物理量を検出するということである。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、第1電極部の貫通孔の中心軸を略中心軸にした円柱形状又は角柱形状の凹部であって、研磨対象物がプレートに締め込まれたボルトの頭部である場合、この頭部と嵌合する大きさにされている凹部を備える表面研磨用治具としたことにある。
【0009】
これによれば、研磨対象物がプレートに締め込まれたボルトの頭部である場合は、この頭部に凹部を嵌め込んで表面研磨用治具を固定すればよく、研磨対象物がプレートである場合は、そのまま表面研磨用治具を固定すればよいので、様々な研磨対象物に対して上述した表面研磨用治具を用いて表面研磨を行うことができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、上述した表面研磨用治具の接続部に接続する特性検出装置において、第1電極部の電極と貫通孔に挿入した研磨用工具から形成されるコンデンサと、第2電極部の電極と研磨対象物から形成されるコンデンサとに、充電と放電を設定された周期で繰り返し行う充放電回路であって、充電の際、アースと第1電極部の電極との間及びアースと第2電極部の電極との間で等しい量の電荷が移動するようにされている充放電回路と、充放電回路により充電と放電が繰り返し行われているとき、充放電回路の所定の箇所における電圧又は電流の強度を検出する強度検出回路とを備えるようにしたことにある。
【0011】
これによれば、研磨対象物のアースの有無によらず、研磨用工具と研磨対象物との間の導通状態(スイッチのON、OFF)により、第1電極部の電極の電位は大きく変わる。また、研磨対象物のアースの有無によらず、研磨用工具と研磨対象物との間が導通したとき、充電の際のそれぞれのコンデンサへの電荷の移動量は等しいとともに略一定になるので、第1電極部の電極の電位は略一定になる。よって、強度検出回路が適切な箇所の電圧又は電流の強度を検出するようにすれば、検出した強度を予め設定した強度と比較することで、精度よく研磨用工具と研磨対象物との導通を検出することができる。また、充放電回路は直流電源を用いて構成できるので、特性検出装置をバッテリを用いたものにすることができ、特性検出装置を小型にできるとともに研磨対象物の場所に制限されないものにすることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、上述した表面研磨用治具の接続部に接続する特性検出装置において、 第1電極部の電極と貫通孔に挿入した研磨用工具から形成されるコンデンサと第2電極部の電極と研磨対象物から形成されるコンデンサとを回路内のコンデンサの1つとして、交流電流において抵抗を有する素子及び交流電源から構成されるブリッジ回路と、ブリッジ回路の交流電源が交流電圧を印加したとき、ブリッジ回路の並列回路間を橋渡しする箇所の電圧又は電流の強度を検出する強度検出回路とを備えるようにしたことにある。
【0013】
これによれば、研磨対象物のアースの有無によらず、研磨用工具と研磨対象物との間の導通状態(スイッチのON、OFF)により、ブリッジ回路の並列回路間を橋渡しする箇所の電圧又は電流の強度は大きく変動する。よって、強度検出回路により電圧又は電流の強度を検出し、検出した強度を予め設定した強度と比較するようにすれば、精度よく研磨用工具と研磨対象物との導通を検出することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、上述した表面研磨用治具の接続部に接続する特性検出装置が出力する特性に基づく信号を入力可能である表面研磨装置において、第1電極部の貫通孔に挿入する研磨用工具を回転駆動させる駆動手段と、特性検出装置から入力した特性に基づく信号により、駆動手段の作動と停止を制御する制御手段とを備えるようにしたことにある。
【0015】
これによれば、特性検出装置が出力する特性に基づく信号により、制御手段が研磨用工具と研磨対象物との導通を検出して駆動手段を停止させれば、作業者は表面研磨装置を作動させて研磨対象物を研磨することに集中すればよいので、研磨作業の効率がよくなる。なお、この場合、表面研磨装置は特性検出装置とは別にあり、特性検出装置からの信号線を接続する形態と、表面研磨装置が特性検出装置を内部に含む形態の両方がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る表面研磨用治具の構造について
図1乃至
図3を用いて説明する。
図1は表面研磨用治具1の外観図であり、
図2は、表面研磨用治具1を研磨対象物にセットし、表面研磨装置4の研磨用工具40を表面研磨用治具1の貫通孔12aに挿入したときを、表面研磨用治具1のみを断面図にして示した図である。本実施形態において、研磨対象物はプレートPtに締結されているボルトBtの頭部であり、プレートPt及びボルトBtは表面に塗装による絶縁膜が形成されているものである。そして、
図1及び
図2に示す表面研磨用治具1を用いた表面研磨は、研磨用工具40を回転させてボルトBtの頭部の一部から絶縁膜を除去し、ボルトBtの素材の金属を表面に出すためのものであり、表面研磨用治具1は、研磨用工具40とボルトBtとの導通状態を検出するために用いられるものである。なお、ボルトBtの素材の金属を表面に出す目的は、背景技術にて説明したように、本願出願人にとってはX線回折測定を可能にするためであるが、これに限定されず、対象物の一部において素材の金属を表面に出す必要があれば、どのような目的であってもよい。
【0018】
図1に示すように、表面研磨用治具1は円柱状であり、円柱状の本体部10の底面10bにリング状の平板電極15を取り付け、中心軸に貫通孔12aが形成されている構造をしている。本体部10は樹脂からできており、平板電極15は磁石からできている。これにより、表面研磨用治具1は軽量で容易に持ち運びができ、プレートPtの素材が鉄等の磁性体であれば、研磨する箇所が貫通孔12aの直下になるようプレートPtに固定することができる。プレートPtは上述したように塗装による絶縁膜が形成されたものなので、平板電極15をプレートPtに吸着させると、プレートPtの素材である金属と平板電極15とは絶縁膜を挟んで近傍で対峙することになり、コンデンサが形成されていると見なすことができる。そして、表面研磨用治具1がプレートPtに固定されれば、このコンデンサのキャパシタンスは一定である。また、本体部10は、側面10eに、後述する特性検出装置2との間をケーブルで接続するための接続部13,14が固定されている。接続部13,14は陸式ターミナルであり、バナナプラグを差し込むことでケーブルを接続することができる。なお、接続部13,14が表面研磨用治具1のどの箇所と導通しているかについては、後述する。
【0019】
図2に示すように、本体部10の底面10bには本体部10と中心軸を略同一にした円柱形状の凹部10aが形成され、凹部10aの大きさは研磨対象のボルトBtの頭部に嵌合する大きさになっている。これにより、ボルトBtの頭部が凹部10aに嵌め込まれるよう表面研磨用治具1をプレートPtにセットすると、貫通孔12aの直下がボルトBtの頭部の中心になる。
【0020】
図2に示すように、本体部10は、本体部10と中心軸を略同一にした貫通孔が形成され、その貫通孔に金属の円筒状電極11が入れられて固定されている。円筒状電極11の金属は電気伝導率が高ければよく、例えば銅である。そして、円筒状電極11の内側には樹脂の円筒状絶縁体12が固定されており、円筒状絶縁体12の内側が貫通孔12aであり、その径は研磨用工具40の径よりやや大きくなっている。これにより、表面研磨用治具1を貫通孔12aの直下がボルトBtの頭部になるようプレートPtにセットした後、研磨用工具40を貫通孔12aに挿入すると、
図2に示すように研磨用工具40の先端はボルトBtの頭部に到達する。このとき、金属である研磨用工具40の近傍の周囲を円筒状電極11が囲っているので、コンデンサが形成されていると見なすことができる。また、円筒状電極11の長さは、本体部10の中心軸に開けられた貫通孔の長さ、及び円筒状絶縁体12の長さよりやや短くなっており、円筒状電極11の上端の上及び円筒状電極11の下端の下には、本体部10の面に凹みがないように薬剤を硬化させた絶縁用のシール材18,19が塗布されている。すなわち、円筒状電極11の内側には円筒状絶縁体12があり、上端及び下端はシールされているので、円筒状電極11は別の物に接触することはないようになっている。これにより、研磨用工具40がその中心軸方向の横方向に位置が変化しても、また、ボルトBtの頭部の表面研磨により切り粉が発生しても、研磨用工具40と円筒状電極11とは短絡せず、研磨作業中、研磨用工具40と円筒状電極11とで形成されるコンデンサは保たれ続ける。
【0021】
円筒状絶縁体12は樹脂であれば絶縁性の点ではよいが、研磨作業中、回転する研磨用工具40が接触する可能性があるので、樹脂の中でもこの接触に対する耐性がある材質のものがよい。例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は摩擦係数が小さいため潤滑性がよく、耐候性及び耐熱性もよいので、円筒状絶縁体12の材質に適している。また、シール材18,19は、塗布が容易で硬化後、絶縁性、耐候性及び耐熱性がよければよく、例えばシリコーンである。なお、以下、本体部10と中心軸を略同一にした貫通孔に円筒状電極11を挿入して固定し、その円筒状電極11の内側に円筒状絶縁体12を挿入して固定し、さらに円筒状電極11の上端及び下端をシールすることで形成された部分を第1電極部という。また、磁石である平板電極15を本体部10の底面10bに固定した部分を第2電極部という。
【0022】
図2に示すように、本体部10は、側面10eから中心軸の貫通孔に向かって貫通孔10cが形成されており、貫通孔10cには貫通孔10cの全長から接続部13の差込部13aの長さを減算した長さより微量に長い導線16が入れられている。そして、側面10eから貫通孔10cに接続部13の差込部13aが挿入され、接続部13は側面10eで固定されているので、導線16は円筒状電極11と差込部13aに押し付けられている。これにより、接続部13の内部の導電箇所は円筒状電極11と導通している。また、本体部10は、底面10bから上方に向かって貫通孔10dが形成されており、貫通孔10dには貫通孔10dの全長より微量に長い導線17が入れられ、底面10bに磁石である平板電極15が固定されているので、導線17は平板電極15に押し付けられている。そして、貫通孔10dの上端よりやや低い位置に向かって側面10eから貫通孔10fが形成され、この貫通孔10fに接続部14の差込部14aが挿入されている。接続部14は側面10eで固定され、差込部14aの長さは貫通孔10fより微量に長いので、導線17は差込部14aに押しつけられている。これにより、接続部14の内部の導電箇所は磁石である平板電極15と導通している。
【0023】
以下に、表面研磨用治具1の製作方法について説明する。まず、樹脂を成形して
図1及び
図2の本体部10のように円柱状にし、成形した本体部10の中心軸に円筒状電極11の外径と略同じ径の貫通孔を開け、底面10bからボルトBtの頭部が嵌め込むことができる凹部10aを、本体部10の中心軸と中心軸を略同一にして開ける。次に、本体部10の側面10eから導線16を挿入できる大きさの貫通孔10cを本体部10の中心軸に向かって開け、底面10bから導線17を挿入できる大きさの貫通孔10dを、側面10eからの長さが接続部14の差込部14aの長さと同程度となる位置であって貫通孔10cの直下となる位置から上方に向かって、適正な長さとなるよう開ける。次に、本体部10の中心軸に開けた貫通孔に接着剤を塗布した後、円筒状電極11を挿入して、上端及び下端が本体部10の面よりやや奥側になるよう固定し、円筒状電極11の内側に接着材を塗布して樹脂の円筒状絶縁体12を挿入して、上端及び下端が本体部10の面と同じ位置になるようにして固定する。次に、絶縁用のシール材18,19の薬剤を円筒状電極11の上端と下端に凹み部分が埋まるように塗布して硬化させる。次に、側面10eから貫通孔10cに導線16を挿入し、接続部13の差込部13aを挿入して接続部13を側面10eに接着剤で固定する。次に、底面10bから貫通孔10dに導線17を挿入し、底面10bの所定の箇所に接着剤を塗布した後、磁石である平板電極15を押し当てて固定し、貫通孔10fに接続部14の差込部14aを挿入して接続部14を側面10eに接着剤で固定する。これにより表面研磨用治具1が完成する。
【0024】
図2に示す表面研磨装置4の駆動部分は1つの例であり、表面研磨装置4が研磨用工具40と絶縁がされており、研磨用工具40を回転させることで研磨対象物であるボルトBtの頭部を研磨できるものであれば、どのような装置であってもよい。
図2に示す表面研磨装置4は、研磨用工具40が固定部41に挿入されてねじ42を締め込むことで固定され、回転軸45は先端がフランジ部44に固定され、固定部41のフランジ41aと樹脂でできている絶縁体43を介して絶縁体のねじで固定されることで、表面研磨装置4は研磨用工具40と絶縁されている。また、研磨用工具40は回転することにより先端が対象物を研磨することができるものであれば、どのようなものでもよい。
【0025】
図3は、上述した構造の表面研磨用治具1を研磨対象物にセットし、研磨用工具40を表面研磨用治具1の貫通孔12aに挿入し、表面研磨用治具1の接続部13,14に特性検出装置2を接続したとき、接続部13,14の間で形成されている回路を示した図である。言い換えると、
図2の状態で接続部13,14に特性検出装置2を接続したとき、接続部13,14の間で形成されている回路を示した図である。上述したように接続部13は円筒状電極11に導通しており、接続部14は磁石である平板電極15に導通している。そして、円筒状電極11は樹脂である円筒状絶縁体12が内側に固定され、円筒状絶縁体12の貫通孔12aには研磨用工具40が挿入されており、円筒状電極11と研磨用工具40は近接しているので、コンデンサC1が形成されているとすることができ、このコンデンサC1は接続部13に導通しているとすることができる。また、研磨用工具40は表面研磨装置4側には絶縁体43により導通しておらず、研磨前は研磨対象物であるボルトBtとプレートPtにも導通していないが、ボルトBtの頭部を研磨してボルトBtの金属の素材と接触すると研磨対象物に導通するので、スイッチSWが形成されているとすることができる。また、磁石である平板電極15は絶縁層を介してプレートPtに接触しているので、コンデンサC2が形成されているとすることができ、このコンデンサC2は接続部14に導通しているとすることができる。
【0026】
図3に示す回路から分かるように、スイッチSWがONになると(研磨用工具40とボルトBtの素材が接触すると)、接続部13,14の間はコンデンサC1とコンデンサC2が直列した回路であり、コンデンサC1とコンデンサC2のキャパシタンスをそれぞれC1、C2とすると、全体のキャパシタンスは、{C1・C2/(C1+C2)}となる。また、スイッチSWがOFFであれば(研磨用工具40とボルトBtの素材が接触しないと)、スイッチSWはキャパシタンスが略0のコンデンサと見なすことができるので、全体のキャパシタンスは略0になる。すなわち、スイッチSWのON、OFFで(研磨用工具40のボルトBtの素材に対する接触の有無で)、接続部13,14の間のキャパシタンスは大きく変化する。よって、特性検出装置2として接続部13,14の間のキャパシタンスの変化により大きく変化する特性を検出できる装置を接続し、特性検出装置2が検出する特性が大きく変わるタイミングを検出することで研磨用工具40と研磨対象物との導通を検出することができる。
【0027】
上記説明からも理解できるように、上記実施形態の表面研磨用治具1においては、円筒状電極11の内側に樹脂である円筒状絶縁体12を配置し、円筒状絶縁体12の内側は研磨用工具40を通過可能な貫通孔12aである第1電極部と、絶縁層がある研磨対象物に磁石である平板電極15を接触させて固定させる第2電極部と、第1電極部の貫通孔12aに研磨用工具40を挿入したとき、第1電極部の円筒状電極11、研磨用工具40、研磨対象物及び第2電極部の平板電極15の順で成り立つ回路の特性を検出する特性検出装置2を、第1電極部の円筒状電極11と第2電極部の平板電極15にそれぞれ接続可能にする2つの接続部13,14とを備えている。
【0028】
これによれば、研磨対象物の研磨箇所が、表面研磨用治具1の第1電極部の貫通孔12aの直下になるように表面研磨用治具1を研磨対象物にセットし、表面研磨用治具1の第1電極部の貫通孔12aに研磨用工具を挿入すると、第1電極部の円筒状電極11と第2電極部の平板電極15との間は、第1電極部の円筒状電極11と研磨用工具40から成り立つコンデンサC1と、研磨用工具40と研磨対象物の導通状態から成り立つスイッチSWと、第2電極部の平板電極15と研磨対象物から成り立つコンデンサC2からなる回路とみなすことができる。そして、この回路の特性は、研磨用工具40と研磨対象物との間の導通状態(スイッチSWのON、OFF)により大きく変わるので、研磨用工具40を回転させて表面研磨を行う間、表面研磨用治具1の接続部13,14に特性検出装置2を接続して、第1電極部の円筒状電極11と第2電極部の平板電極15との間の回路の特性を検出すれば、特性が大きく変わるタイミングを検出することで研磨用工具40と研磨対象物との導通を検出することができる。すなわち、絶縁層が全面にある研磨対象物であっても、余計な研磨を行うことなく、効率よく表面研磨を行うことができる。また、第2電極部の平板電極15は磁石であるので、磁力を適正にすれば表面研磨の間、表面研磨用治具1を研磨対象物に固定することができ、研磨対象物が水平でなくても表面研磨用治具1をセットすることができる。
【0029】
また、上記実施形態の表面研磨用治具1においては、第1電極部の貫通孔12aの中心軸を略中心軸にした円柱形状の凹部10aであって、研磨対象物がプレートPtに締め込まれたボルトBtの頭部である場合、この頭部と嵌合する大きさにされている凹部10aを備えている。これによれば、研磨対象物がプレートPtに締め込まれたボルトBtの頭部である場合は、この頭部に凹部10aを嵌め込んで表面研磨用治具1を固定すればよく、研磨対象物がプレートPtである場合は、そのまま表面研磨用治具1を固定すればよいので、様々な研磨対象物に対して表面研磨用治具1を用いて表面研磨を行うことができる。
【0030】
第1電極部の円筒状電極11と第2電極部の平板電極15との間の回路の特性を検出するとは、該回路に何らかの作用を行ったときに該回路が有する何らかの物理量を検出するということであり、作用と物理量は様々なものが考えられる。よって、表面研磨用治具1に接続する特性検出装置は様々な形態の装置が考えられるが、
図4に示す特性検出装置2は精度よく該回路の特性の変化を検出できるとともに、小型であって研磨対象物の場所に制限されないものである。特性検出装置2は、表面研磨用治具1の接続部13,14に接続され、接続部13,14の間のキャパシタンスの変化により大きく変化する特性を検出することで、スイッチSWがONになる(研磨用工具40とボルトBtの素材が接触する)タイミングを検出する装置である。この特性検出装置2は、表面研磨用治具1の接続部13,14と同様の陸式ターミナルである接続部27,28を有し、両側の先端がバナナプラグになっているケーブルを接続部13,14と接続部27,28にそれぞれ差し込むことで、接続部13と接続部27、及び接続部14と接続部28を接続することができる。これは
図3では、接続部27とコンデンサC1とを、及び接続部28とコンデンサC2とを接続することである。
【0031】
スイッチ20は押されるごとに信号をON−OFF回路21に出力し、ON−OFF回路21は信号が入力するごとに、作動信号と停止信号を順に出力する。また、ON−OFF回路21は後述する比較回路32から信号が入力すると停止信号を出力する。ON−OFF回路21の作動信号と停止信号は、パルス列信号発振回路22、定電流出力回路23及び定電流出力回路24に入力し、パルス列信号発振回路22は作動信号が入力すると設定された周期のパルス列信号を出力し、定電流出力回路23,24は設定された強度の電流が流れるよう電圧が印加される。パルス列信号発振回路22が出力するパルス列信号はスイッチ回路25,26に入力し、スイッチ回路25,26はパルスが入力するごとにスイッチを切り替える。すなわち、停止状態からスイッチ20を押すと、
図3におけるコンデンサC1とコンデンサC2は所定の周期で充電と放電が繰り返される。
【0032】
スイッチSWがON状態(研磨用工具40とボルトBtの素材が接触の状態)では、スイッチ回路25のスイッチとスイッチ回路26のスイッチは、一定の周期で切り替えがされるので、最も充電がされた時点での電荷量は一定になり、定電流出力回路23のマイナス極側、定電流出力回路24のプラス極側はアース端子29に接続されることでアースされているので、コンデンサC1,C2のキャパシタンスが一定であれば、接続部13,27と接続部14,28の電位(円筒状電極11と平板電極15の電位)は一定である。また、放電は、コンデンサC1,C2の間で電荷が移動するが、定電流出力回路23と定電流出力回路24は等しい強度の電流が出力するよう設定されており、スイッチ回路25,26のそれぞれのスイッチは、同じタイミングで切り替えがされるので、コンデンサC1,C2の電荷量は常に等しく、最も放電がされる時点での接続部13,27と接続部14,28の電位(円筒状電極11と平板電極15の電位)も一定である。これは、研磨対象物であるプレートPtのアースの有無によらない。スイッチ回路25,26のスイッチが早い周期で切り替えがされると、スイッチドキャパシタの回路となり、接続部13,27と接続部14,28の電位(円筒状電極11と平板電極15の電位)は常に一定の電位を有するようになる。そして、この電位はコンデンサC1,C2のキャパシタンスで定まる。
【0033】
スイッチSWがOFF状態(研磨用工具40とボルトBtの素材が非接触の状態)では、スイッチSWはキャパシタンスが略0のコンデンサと見なすことができるので、コンデンサC1,スイッチSW及びコンデンサC2の全体もキャパシタンス0のコンデンサと見なすことができる。このときは、充電において定電流出力回路23と定電流出力回路24は設定された印加電圧の上限となり、定電流を流すことができず、コンデンサC1,C2は充電がされない。しかし、定電流出力回路23のマイナス極側、定電流出力回路24のプラス極側はアースされているので、接続部13,14の電位(円筒状電極11と平板電極15の電位)は略0の電位で一定になる。なお、これは、プレートPtがアースされていない場合である。もし、プレートPtがアースされている場合は、充電においてはコンデンサC2には定電流出力回路24により電荷が移動するが、コンデンサC1には電荷が移動しない。そして、放電においては、充電がされたコンデンサC1とそうでないコンデンサC2の間で電荷が移動する。この状態で、スイッチ回路25,26のスイッチが早い周期で切り替えがされると、接続部13,27と接続部14,28の電位(円筒状電極11と平板電極15の電位)は、ある電位を有するようになる。しかし、接続部13,27の電位(円筒状電極11の電位)は、マイナス側の電位となる。
【0034】
すなわち、接続部13,27の電位(円筒状電極11の電位)は、プレートPtがアースされていない場合は、スイッチSWがOFFからON状態になると(研磨用工具40とボルトBtの素材が非接触の状態から接触の状態になると)、略0からコンデンサC1,C2のキャパシタンスで定まる電位になり、プレートPtがアースされている場合は、マイナス側の電位からコンデンサC1,C2のキャパシタンスで定まる電位になる。よって、プレートPtのアースの有無によらず、スイッチSWがON状態における接続部13,27の電位(円筒状電極11の電位)より低い適切な電位を設定し、この設定した電位を接続部13,27の電位(円筒状電極11の電位)が超えたことを検出することで、研磨用工具40とボルトBtの素材の接触を検出することができる。
図5は、プレートPtがアースされていない状態で、アースと接続部13,27(円筒状電極11)との間の電圧を、(a)スイッチSWがOFF状態と(b)スイッチSWがON状態のときで示した図である。
図5が示すよう、スイッチSWがOFF状態とON状態では電圧強度は大きく違うので、0よりやや大きな強度を設定すれば、研磨用工具40とボルトBtの素材の接触を検出することができる。電圧検出回路30以降の回路および機器はこの検出のための回路及び機器である。なお、プレートPtがアースされている状態では、(a)スイッチSWがOFF状態では、電圧強度はマイナス側であるので、0よりやや大きな強度を設定していれば問題はない。
【0035】
電圧検出回路30は、アースと接続部13,27(円筒状電極11)との間の電圧を検出する回路であり、検出した電圧に相当する強度の信号を出力する。ローパスフィルタ31は、入力した信号から高い周波数の成分を除いた信号を出力する回路である。上述した説明では、研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態では、接続部13,27の電位(円筒状電極11の電位)は、プレートPtのアースの有無によらず略一定と説明したが、これはコンデンサC1のキャパシタンスが一定であるという前提がある。実際は、表面研磨が行われる間、研磨用工具40は回転しているうえに位置は小刻みに変動しており、コンデンサC1のキャパシタンスは細かく変動している。このため、接続部13,27の電位(円筒状電極11の電位)は細かい変動があり、電圧検出回路30が出力する信号も細かい変動がある。ローパスフィルタ31は、この細かい変動を入力した信号から除いて比較回路32に出力する回路である。
【0036】
比較回路32は、入力した信号の強度が設定された強度以下では信号を出力せず、入力した信号の強度が設定された強度より大きくなると、信号をON−OFF回路21とブザー33に出力する。比較回路32に設定されている強度は、0よりやや大きな適切な強度であり、スイッチSWがON状態(研磨用工具40とボルトBtの素材が接触の状態)のときに入力する信号の強度において、想定される最も小さい強度より小さい強度である。これにより、研磨用工具40とボルトBtの素材と接触すると、ON−OFF回路21とブザー33に信号が入力する。ON−OFF回路21は上述したように比較回路32から信号が入力すると停止信号を出力し、これによりパルス列信号発振回路22、定電流出力回路23及び定電流出力回路24は作動を停止するので、接続部13,14は電位を有さなくなり、電圧検出回路30が出力する信号の強度は0になる。これにより、比較回路32に入力する信号の強度は設定された強度以下になり、比較回路32は信号を出力しなくなる。すなわち、研磨用工具40とボルトBtの素材が非接触状態から接触状態になったとき、比較回路32が信号を出力するのは一瞬であり、1回のパルス信号である。
【0037】
ブザー33は比較回路32から信号が入力すると、設定された時間だけブザー音を発生させる機器である。作業者は表面研磨を開始した後、このブザー音を聞くことで研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になったことを知ることができる。
【0038】
上記説明からも理解できるように、上記実施形態の特性検出装置2においては、第1電極部の円筒状電極11と貫通孔12aに挿入した研磨用工具40から形成されるコンデンサC1と、第2電極部の平板電極15と研磨対象物から形成されるコンデンサC2とに、充電と放電を設定された周期で繰り返し行うパルス列信号発振回路22、定電流出力回路23,24及びスイッチ回路25,26からなる充放電回路であって、充電の際、アースと第1電極部の円筒状電極11との間及びアースと第2電極部の平板電極15との間で等しい量の電荷が移動するようにされている充放電回路と、充放電回路により充電と放電が繰り返し行われているとき、アースと円筒状電極11間の電圧の強度を検出する電圧検出回路30及びローパスフィルタ31からなる強度検出回路とを備えている。
【0039】
これによれば、研磨対象物のアースの有無によらず、研磨用工具40と研磨対象物との間の導通状態(スイッチSWのON、OFF)により、円筒状電極11の電位は大きく変わる。また、研磨対象物のアースの有無によらず、研磨用工具40と研磨対象物との間が導通したとき、充放電の際のそれぞれのコンデンサC1,C2の電荷量は等しいとともに略一定になるので、円筒状電極11の電位は略一定になる。よって、強度検出回路がアースと円筒状電極11間の電圧の強度を検出すれば、検出した強度を予め設定した強度と比較することで、精度よく研磨用工具40と研磨対象物との導通を検出することができる。また、充放電回路は直流電源を用いて構成できるので、特性検出装置2をバッテリを用いたものにすることができ、特性検出装置2を小型にできるとともに研磨対象物の場所に制限されないものにすることができる。
【0040】
(変形例1)
上述したように、特性検出装置は様々な形態の装置が考えられるが、
図6の構成図は、精度よく研磨用工具40と研磨対象物との導通を検出することができる、別の実施形態の特性検出装置2’を示した図である。この特性検出装置2’は、上述した特性検出装置2と同一である箇所を有しているので、
図6では同一の箇所は同じ番号を付し、違う箇所は異なる番号を付している。特性検出装置2’の接続部27,28、スイッチ20及びON−OFF回路21は上述した特性検出装置2のものと同じである。
【0041】
特性検出装置2’はコンデンサと抵抗を用いたブリッジ回路が形成されており、ブリッジ回路の並列回路間の橋渡しする箇所の電圧又は電流の強度が大きく変化したタイミングを検出することで、表面研磨用治具1の接続部13,14の間のキャパシタンスが大きく変化したタイミング(スイッチSWがOFFからONになったタイミング)を検出する。接続部13,14の間のコンデンサ、すなわち
図3のコンデンサC1、スイッチSW及びコンデンサC2からなるコンデンサをコンデンサCjとすると、ブリッジ回路は、コンデンサCj及び抵抗R1とコンデンサC3及び抵抗R2との並列回路から構成される。交流電圧出力回路34は、ON−OFF回路21から作動信号が入力すると設定された強度の交流電圧を該並列回路に出力する。
【0042】
コンデンサC3のキャパシタンスはかなり小さな値にされ、抵抗R1と抵抗R2の抵抗は等しく、交流電流に対するコンデンサC3の抵抗より十分小さい値にされている。研磨用工具40と研磨対象物が非導通状態(スイッチSWがOFF状態)であれば、コンデンサCjのキャパシタンスは略0であり、交流電流に対する抵抗はかなり大きな値になるので、交流電圧が印加されたとき並列回路間の橋渡し箇所に十分大きな抵抗を入れた場合、橋渡し箇所の両端での電圧は0に近い強度になる。また、該橋渡し箇所をそのまま導通させた場合、橋渡し箇所に流れる電流は0に近い強度になる。そして、研磨用工具40と研磨対象物が導通状態(スイッチSWがON状態)になると、コンデンサCjの交流電流に対する抵抗はコンデンサC3の交流電流に対する抵抗より十分小さい値になるので、並列回路間の橋渡し箇所における上述した電圧又は電流は大きな強度になる。よって、研磨用工具40と研磨対象物が導通状態のときにおける並列回路間の橋渡し箇所の電圧又は電流において、想定される最も低い電圧又は電流強度より小さい適切な強度の電圧又は電流を設定値として定め、並列回路間の橋渡し箇所の電圧又は電流がこの設定値より大きくなったことを検出すれば、研磨用工具40とボルトBtの素材の接触を検出することができる。検波回路35以降の回路および機器はこの検出のための回路及び機器である。
【0043】
検波回路35は、内部に十分大きな抵抗を有し、並列回路間の橋渡し箇所の両端での電圧におけるエンベロープ(包絡線)に相当する信号を出力する。言い換えると、ブリッジ回路には交流電圧が印加されるため、橋渡し箇所の両端での電圧は時間軸に対して振動する電圧となり、検波回路35はこの振動の振幅強度に相当する強度の信号を出力する。なお、検波回路35は、これに替えて、橋渡し箇所をそのまま導通させ、橋渡し箇所に流れる電流におけるエンベロープ(包絡線)に相当する信号を出力するようにしてもよい。比較回路37は特性検出装置2の比較回路32と同じであり、入力した信号の強度が設定された強度以下では信号を出力せず、入力した信号の強度が設定された強度より大きくなると、信号をON−OFF回路21とブザー33に出力する。ON−OFF回路21は比較回路37から信号が入力すると停止信号を出力し、交流電圧出力回路34は電圧出力を停止するので検波回路35が出力する信号の強度は0になる。よって、特性検出装置2’においても比較回路37が信号を出力するのは一瞬であり、1回のパルス信号である。ブザー33は特性検出装置2のものと同じであり、作業者はブザー音を聞くことで、研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になったことを知ることができる。
【0044】
上記説明からも理解できるように、上記実施形態の特性検出装置2’においては、第1電極部の円筒状電極11と貫通孔12aに挿入した研磨用工具40から形成されるコンデンサと第2電極部の平板電極15と研磨対象物から形成されるコンデンサとを回路内のコンデンサの1つとして、交流電流において抵抗を有するコンデンサC3、抵抗R1、抵抗R2及び交流電圧出力回路34から構成されるブリッジ回路と、ブリッジ回路の交流電圧出力回路34が交流電圧を印加したとき、ブリッジ回路の並列回路間を橋渡しする箇所の電圧又は電流の強度を検出する検波回路35とを備えている。
【0045】
これによれば、研磨対象物のアースの有無によらず、研磨用工具40と研磨対象物との間の導通状態(スイッチSWのON、OFF)により、ブリッジ回路の並列回路間を橋渡しする箇所の電圧又は電流の強度は大きく変動する。よって、検波回路35により電圧又は電流の強度を検出し、検出した強度を予め設定した強度と比較するようにすれば、精度よく研磨用工具40と研磨対象物との導通を検出することができる。
【0046】
(変形例2)
上述した特性検出装置2及び特性検出装置2’による表面研磨は、ブザー33が発するブザー音により、作業者が研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になったことを知り、手動で表面研磨装置4の作動を停止するが、これに替えて、研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になったとき、自動で表面研磨装置4の作動を停止するようにしてもよい。
図7に示す表面研磨装置4は、特性検出装置2からの信号を入力できるようにし、研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になったとき、特性検出装置2から入力した信号により表面研磨装置4の作動を停止するようにしている。なお、
図7は特性検出装置2を用いているが、特性検出装置2’でも説明は同じである。
【0047】
図7に示す特性検出装置2は、比較回路32の信号を出力する端子が設けられており、この端子と表面研磨装置4との間をケーブルで接続することで、比較回路32の信号をブザー33に対して出力する替わりに表面研磨装置4に出力するようになっている。表面研磨装置4にも、特性検出装置2からの信号を入力するための端子が用意されており、作業者は、表面研磨用治具1を研磨対象物にセットした後、表面研磨用治具1と特性検出装置2との間をケーブルで接続し、さらに特性検出装置2と表面研磨装置4との間をケーブルで接続する。
【0048】
図7に示す表面研磨装置4は、スイッチ49は押されるごとに信号をON−OFF回路47に出力し、ON−OFF回路47は信号が入力するごとに、作動信号と停止信号を順に出力する。また、ON−OFF回路47は特性検出装置2の比較回路32からの信号を入力すると停止信号を出力する。ON−OFF回路47の作動信号と停止信号は、回転駆動回路48に入力し、回転駆動回路48は作動信号が入力すると研磨用工具40を回転駆動するための駆動信号を出力し、停止信号が入力すると該駆動信号の出力を停止する。これにより、スイッチ49を押すと研磨用工具40が回転駆動し、上述したように研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になり、比較回路32が信号を出力すると研磨用工具40の回転駆動は停止する。
【0049】
上記説明からも理解できるように、上記実施形態の表面研磨装置4は特性検出装置2が出力する信号を入力可能にし、第1電極部の貫通孔12aに挿入する研磨用工具40を回転駆動させる回転駆動回路48と、特性検出装置2から入力した特性に基づく信号により、回転駆動回路48の作動と停止を制御するON−OFF回路47とを備えている。
【0050】
これによれば、特性検出装置2が出力する特性に基づく信号により、ON−OFF回路47が研磨用工具40と研磨対象物との導通を検出して回転駆動回路48を停止させれば、作業者は表面研磨装置4を作動させて研磨対象物を研磨することに集中すればよいので、研磨作業の効率がよくなる。
【0051】
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0052】
上記実施形態の変形例である、特性検出装置2からの信号により表面研磨装置4の作動を自動停止させる形態においては、研磨用工具40と研磨対象物とが導通したタイミングで比較回路32から信号が出力されるようにした。しかし、第1電極部の円筒状電極11、研磨用工具40、研磨対象物及び第2電極部の平板電極15の順で成り立つ回路の特性に基づく信号であれば、どのような信号を特性検出装置2から表面研磨装置4へ出力してもよい。例えば、ローパスフィルタ31が出力する信号を表面研磨装置4へ出力し、表面研磨装置4内に上記実施形態の比較回路32と同じ回路を設けて、該回路からON−OFF回路47に信号を出力するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態の変形例である、特性検出装置2からの信号により表面研磨装置4の作動を自動停止させる形態においては、特性検出装置2と表面研磨装置4との間をケーブルで接続するようにしたが、これに替えて、特性検出装置2自体を表面研磨装置4の内部に設けるようにしてもよい。これによれば、表面研磨作業を行う前に表面研磨用治具1と表面研磨装置4との間のみを接続すればよいので、作業効率がよくなる。
【0054】
また、上記実施形態及び変形例における特性検出装置2,2’では、ブザー33のブザー音により、作業者が研磨用工具40とボルトBtの素材の接触を知るようにした。しかし、作業者が研磨用工具40とボルトBtの素材の接触を知ることができれば、ブザー音以外の手段を用いてもよい。例えば、ランプの発光によってもよいし、メータの指針によってもよい。また、いくつかの手段を組み合わせてもよい。
【0055】
また、上記実施形態における特性検出装置2では、第1電極部の円筒状電極11の電位(アースと円筒状電極11間の電圧)を検出するようにしたが、研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になることで変化する特性であれば、別の特性を検出するようにしてもよい。例えば、第1電極部の円筒状電極11とアース間を抵抗を介して接続し、円筒状電極11とアース間で流れる電流を検出するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態における特性検出装置2では、スイッチドキャパシタの回路を用いて研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になることで、第1電極部の円筒状電極11の電位(アースと円筒状電極11間の電圧)が大きく変化することを検出するようにした。また、変形例における特性検出装置2’では、ブリッジ回路を用いて研磨用工具40とボルトBtの素材が接触状態になることで、ブリッジ回路の並列回路間を橋渡しする箇所の電圧又は電流が大きく変化することを検出するようにした。しかし、研磨対象物の場所が限定されており、特性検出装置を持ち運ぶ頻度が少なければ、上記実施形態及び変形例で示した装置以外の特性検出装置を用いてもよい。例えば、接続部13,14間に交流電圧を印加したときに、接続部13,14間で流れる電流の強度を検出する方法の装置を用いてもよい。
【0057】
また、上記実施形態における表面研磨用治具1は、ボルトBtの頭部に嵌合する凹部10aを円柱形状にしたが、ボルトBtの頭部に嵌合するならば、円柱形状に替えて角柱形状にしてもよい。また、上記実施形態における表面研磨用治具1は、凹部10aを設けることで、ボルトBtの頭部を研磨することも平板であるプレートPtを研磨することもできるようにしたが、研磨対象物が平板に限定されているならば、凹部10aは設けないようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態における表面研磨用治具1は、第2電極部の平板電極15は全体が磁石であるようにした。しかし、表面研磨用治具1を研磨対象物にセットし、研磨用工具40を貫通孔12aに挿入して表面研磨を行ったとき、磁石の研磨対象物に対する吸着力が表面研磨用治具1が動くことのないものであれば、平板電極15の一部分が磁石であるようにしてもよいし、平板電極15の近傍に磁石を設けてもよい。なお、特許請求の範囲に記載されている磁石の部分を有する第2電極部とは、平板電極15の近傍に磁石を設けている場合も含むものとする。
【0059】
また、上記実施形態における表面研磨用治具1は、本体部10を円柱形状にしたが、研磨対象物にセットし、研磨用工具40を貫通孔12aに挿入したとき、第1電極部の円筒状電極11、研磨用工具40、研磨対象物及び第2電極部の平板電極15の順で成り立つ回路ができるならば、形状はどのような形状であってもよい。例えば直方体形状でもよいし、六角柱形状でもよい。
【0060】
また、上記実施形態における表面研磨用治具1は、本体部10の材質を樹脂(プラスチック)にしたが、絶縁性が高く軽量で運搬が容易であれば、樹脂以外の材質を用いたものでもよい。例えば、ゴムや陶器を用いたものでもよい。
【解決手段】 円筒状電極11の内側に円筒状絶縁体12を配置し、円筒状絶縁体12の内側は研磨用工具40を通過可能な貫通孔12aである第1電極部と、絶縁層がある研磨対象物に磁石である平板電極15を接触させて固定させる第2電極部と、第1電極部の貫通孔12aに研磨用工具40を挿入したとき、円筒状電極11、研磨用工具40、研磨対象物及び第2電極部の平板電極15の順で成り立つ回路の特性を検出する特性検出装置を、円筒状電極11と平板電極15にそれぞれ接続可能にする2つの接続部13,14とを備える。