特許第6872747号(P6872747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872747硫黄スケールの洗浄剤およびそれを用いる硫黄スケールの洗浄方法
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  • 特許6872747-硫黄スケールの洗浄剤およびそれを用いる硫黄スケールの洗浄方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872747
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】硫黄スケールの洗浄剤およびそれを用いる硫黄スケールの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/32 20060101AFI20210510BHJP
   C11D 7/06 20060101ALI20210510BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20210510BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20210510BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 5/08 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20210510BHJP
   C02F 5/12 20060101ALI20210510BHJP
   C23F 14/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C11D7/32
   C11D7/06
   C11D1/90
   C11D3/04
   C11D17/08
   C02F5/00 610H
   C02F5/00 620A
   C02F5/08 D
   C02F5/10 620C
   C02F5/10 620G
   C02F5/12
   C23F14/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-5937(P2017-5937)
(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公開番号】特開2018-115240(P2018-115240A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2020年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】505112048
【氏名又は名称】ナルコジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】土居 摩記
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭47−041674(JP,B1)
【文献】 国際公開第2011/105449(WO,A1)
【文献】 特開昭58−183996(JP,A)
【文献】 特開平08−003594(JP,A)
【文献】 特開平04−145199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
C02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の含窒素化合物と、pH13以上に調整し得るアルカリ化剤と、水性媒体とを含む硫黄スケールの洗浄剤であって、
前記含窒素化合物が、該含窒素化合物5質量%、前記アルカリ化剤5質量%および残部水からなる処理薬剤100gに硫黄1gを浸漬し、温度70℃、撹拌下で4時間処理したときに、残留した硫黄の乾燥質量から算出した硫黄の溶解質量を除去量として25質量%以上の除去率の硫黄除去能を有し、
前記含窒素化合物が、炭素数6〜12のアルキル基または炭素数2〜4のアルカノール基を有する第1〜第3アミン、ベンジル基またはシクロヘキシル基を有する第1アミン、メトキシ基またはエトキシ基置換の炭素数2〜4のアルキル基を有する第1アミン、アミノ基置換低級アルキル基を有する第2アミンから選択される1種以上のアミン化合物;炭素数8〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物;炭素数10〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン;分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩から選択される1種以上の化合物であり、
前記アルカリ化剤が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1種以上である
ことを特徴とする硫黄スケールの洗浄剤。
【請求項2】
前記含窒素化合物が分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、かつ前記アルカリ化剤が水酸化ナトリウムである請求項1に記載の硫黄スケールの洗浄剤。
【請求項3】
前記硫黄スケールの洗浄剤が、対象系に充填・循環させて該対象系中に付着した硫黄スールを除去する硫黄スケールの洗浄剤である請求項1または2に記載の硫黄スケールの洗浄剤。
【請求項4】
硫黄スケールの除去対象系の装置の操業を停止し、該対象系に請求項1〜のいずれか1つに記載の硫黄スケールの洗浄剤を充填・循環させて、該対象系中に付着した硫黄スケールを溶解・除去することを特徴とする硫黄スケールの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄スケールの洗浄剤およびそれを用いる硫黄スケールの洗浄方法に関する。本発明の硫黄スケールの洗浄剤は、主に硫黄からなるスケールの除去が必要とされる対象系を備えた装置、例えば石油化学、石油精製、地熱発電、製鉄、石炭発電、製紙などの技術分野の装置の硫黄スケール洗浄に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来から石油化学、石油精製、地熱発電、製鉄、石炭発電、製紙などの様々な技術分野において、流通、冷却や熱交換などを目的として、機器やその配管などを備えた装置が用いられている。これらの装置では、流通する水や石油などの液体成分、それらの気体成分、それらの溶解成分や懸濁成分に由来して硫黄や硫黄化合物がその系内に蓄積(堆積)され、硫黄スケールが形成されるという問題がある。形成された硫黄スケールは、配管を閉塞して液体成分や気体成分の流通を阻害するだけでなく、熱伝導率の低い硫黄スケールのために熱交換効率が低下するという問題を惹き起こす。
【0003】
上記の問題を解消する、すなわち硫黄スケールを除去するあるいはその形成を防止(抑制)するための物理的(機械的)および化学的な、様々な技術が提案されている。
例えば、特公平1−59039号公報(特許文献1)には、ヒドラジン5%および水酸化ナトリウムまたはメタケイ酸ナトリウム0.1〜1.0%を含む水溶液を、壁面に付着した単体硫黄および硫黄化合物を主体とする硫黄スケールに接触させる硫黄スケールの化学的除去方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−59039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヒドラジンは、毒物及び劇物取締法では毒物に指定され、労働基準法では疾病化学物質に指定され、発がんの疑いのある化合物として区分され、また大気汚染防止法では有害大気汚染物質として指定され、水質汚染防止法では指定物質とされていることから、より安全な代替物質が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、より安全でかつ環境負荷の低い硫黄スケールの洗浄剤およびそれを用いる硫黄スケールの洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、硫黄スケールが付着した対象系にアルカリ条件下で特定の含窒素化合物を充填・循環させることにより、意外にも硫黄スケールが溶解除去される事実を見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
かくして、本発明によれば、少なくとも1種の含窒素化合物と、pH13以上に調整し得るアルカリ化剤と、水性媒体とを含む硫黄スケールの洗浄剤であって、
前記含窒素化合物が、該含窒素化合物5質量%、前記アルカリ化剤5質量%および残部水からなる処理薬剤100gに硫黄1gを浸漬し、温度70℃、撹拌下で4時間処理したときに、残留した硫黄の乾燥質量から算出した硫黄の溶解質量を除去量として25質量%以上の除去率の硫黄除去能を有し、
前記含窒素化合物が、炭素数6〜12のアルキル基または炭素数2〜4のアルカノール基を有する第1〜第3アミン、ベンジル基またはシクロヘキシル基を有する第1アミン、メトキシ基またはエトキシ基置換の炭素数2〜4のアルキル基を有する第1アミン、アミノ基置換低級アルキル基を有する第2アミンから選択される1種以上のアミン化合物;炭素数8〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物;炭素数10〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン;分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩から選択される1種以上の化合物であり、
前記アルカリ化剤が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1種以上である
ことを特徴とする硫黄スケールの洗浄剤が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、硫黄スケールの除去対象系の装置の操業を停止し、該対象系に上記の硫黄スケールの洗浄剤を充填・循環させて、該対象系中に付着した硫黄スケールを溶解・除去することを特徴とする硫黄スケールの洗浄方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より安全でかつ環境負荷の低い硫黄スケールの洗浄剤およびそれを用いる硫黄スケールの洗浄方法を提供することができる。
【0011】
本発明の硫黄スケールの洗浄剤は、次の条件(1)〜(4)のいずれか1つを満たす場合に、上記の効果をより発揮する。
(1)含窒素化合物が、炭素数6〜12のアルキル基または炭素数2〜4のアルカノール基を有する第1〜第3アミン、ベンジル基またはシクロヘキシル基を有する第1アミン、メトキシ基またはエトキシ基置換の炭素数2〜4のアルキル基を有する第1アミン、アミノ基置換低級アルキル基を有する第2アミンから選択される1種以上のアミン化合物;炭素数8〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物;炭素数10〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン;分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩から選択される1種以上の化合物である。
(2)アルカリ化剤が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される1種以上である。
(3)含窒素化合物が分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩であり、かつアルカリ化剤が水酸化ナトリウムである。
(4)硫黄スケールの洗浄剤が、対象系に充填・循環させて該対象系中に付着した硫黄スールを除去する硫黄スケールの洗浄剤である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】試験例1および2で用いた試験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)硫黄スケールの洗浄剤
本発明の硫黄スケールの洗浄剤(以下「洗浄剤」ともいう)は、少なくとも1種の含窒素化合物と、pH10以上に調整し得るアルカリ化剤と、水性媒体とを含む硫黄スケールの洗浄剤であって、
前記含窒素化合物が、該含窒素化合物5質量%、前記アルカリ化剤5質量%および残部水からなる処理薬剤100gに硫黄1gを浸漬し、温度70℃、撹拌下で4時間処理したときに、残留した硫黄の乾燥質量から算出した硫黄の溶解質量を除去量として25質量%以上の除去率の硫黄除去能を有することを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明の洗浄剤は、上記の条件で測定した除去率25質量%以上の硫黄除去能を有することを特徴とし、その具体的な硫黄除去率の測定方法については、実施例において詳述する。
測定に用いる「硫黄」は、CAS No.7704−34−9の硫黄結晶であり、例えば、試薬として市販されている99.999%の硫黄が挙げられる。
洗浄剤の硫黄除去率が25質量%未満では、硫黄スケールを十分に溶解させることができず、本発明の十分な洗浄効果が得られないことがある。一方、洗浄剤の硫黄除去率は100質量%であることが最も好ましいが、60質量%以上であれば、実用的な洗浄効果が得られ、より好ましい洗浄剤の硫黄除去率は80質量%以上である。
【0015】
(含窒素化合物)
本発明の洗浄剤に含まれる含窒素化合物としては、アミン化合物(第1〜第3アミン)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインおよびポリジアリルジメチルアンモニウム塩などが挙げられ、上記の硫黄除去能の要件を満たし得る含窒素化合物であれば特に限定されない。
本発明の硫黄スケールの溶解メカニズムは明らかではないが、アルカリ条件下で含窒素化合物が硫黄に作用しているものと考えられる。
【0016】
(アミン化合物)
アミン化合物としては、炭素数6〜12のアルキル基または炭素数2〜4のアルカノール基を有する第1〜第3アミン、ベンジル基またはシクロヘキシル基を有する第1アミン、メトキシ基またはエトキシ基置換の炭素数2〜4のアルキル基を有する第1アミン、アミノ基置換低級アルキル基を有する第2アミンなどが挙げられる。
【0017】
炭素数6〜12のアルキル基を有する第1〜第3アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ヘキシルジメチルアミン、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ラウリルジメチルアミンなどが挙げられる。
炭素数2〜4のアルカノール基を有する第1〜第3アミンとしては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンおよびモノブタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、エタノールプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンおよびトリブタノールアミンなどが挙げられる。
【0018】
ベンジル基またはシクロヘキシル基を有する第1アミンとしては、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
メトキシ基またはエトキシ基置換の炭素数2〜4のアルキル基を有する第1アミンとしては、メトキシエチルアミン、エトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、エトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシブチルアミンなどが挙げられる。
アミノ基置換低級アルキル基を有する第2アミンとしては、ビス(アミノヘキシル)アミン、ビス(アミノオクチル)アミンなどが挙げられる。
本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらのアミン化合物の中でも、洗浄効果の点で、ヘキシルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、またはビス(アミノヘキシル)アミンが特に好ましい。
【0019】
(アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩)
アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩としては、炭素数8〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩などが挙げられる。
アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩としては、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルジメチルベンジルヒドロキシド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイドおよびオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、洗浄効果の点で、炭素数12〜16のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの混合物が特に好ましい。
上記の4級アンモニウム化合物は、いずれも公知のカチオン界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
【0020】
(高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物)
高級脂肪族アミンのエチレンオキサイド(EO)またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド(PO)との付加物としては、炭素数6〜20の飽和または不飽和の脂肪族アミンおよびそのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加物などが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
炭素数6〜20の飽和または不飽和の脂肪族アミンとしては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、ココナッツアルキルアミン、牛脂アルキルアミンおよびヤシアルキルアミンなどが挙げられる。ここで、ココナッツアルキルアミン、牛脂アルキルアミン、ヤシアルキルアミンとは、そのアミンがココナッツ油、ヤシ油もしくはヤシ脂肪、牛脂などから公知の手段により製造された炭素数12〜20の直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基がその主要成分を占めるアミンの混合物(混合アルキルアミン)であることを意味する。
【0021】
上記の脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加物としては、特に炭素数10〜20の飽和または不飽和の脂肪族アミンに、エチレンオキサイドを15〜30モル付加させたもの、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを0〜15モル付加させたものが、洗浄効果の点で好ましく、エチレンオキサイドを15〜20モル付加させたもの、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを0〜5モル付加させたものがさらに好ましい。
【0022】
高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの付加物は、ステアリルアミン・エチレンオキサイド2モル付加物(ステアリルアミンEO2)、ステアリルアミン・エチレンオキサイド20モル付加物(ステアリルアミンEO20)、ステアリルアミン・エチレンオキサイド20モル・プロピレンオキサイド2モル付加物(ステアリルアミンEO20PO2)、ステアリルアミン・エチレンオキサイド45モル付加物(ステアリルアミンEO45)およびラウリルアミン・エチレンオキサイド10モル付加物(ラウリルアミンEO10)などが挙げられ、これらは洗浄効果が高く、特に好ましい。
【0023】
(アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン)
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインとしては、炭素数10〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられる。
アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインとしては、デシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、テトラデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヘキサデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オクタデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、洗浄効果の点で、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(「ラウリルベタイン」ともいう)が特に好ましい。
上記のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインは、いずれも公知の両性界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
【0024】
(ポリジアリルジメチルアンモニウム塩)
ポリジアリルジメチルアンモニウム塩としては、分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。ポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、一般式(I):
【化1】
(式中、X-はハロゲン原子のイオンまたは鉱酸アニオン、nは整数)で表される。
【0025】
一般式(I)における「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などが挙げられ、塩素が特に好ましい。また、「鉱酸アニオン」としては、硫酸、硝酸、リン酸および炭酸などのアニオン、すなわちHSO4-、NO3-、H2PO4-およびHCO3-などが挙げられる。一般式(I)におけるnは、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩の分子量が10,000〜200,000となり得るような整数である。
ポリジアリルジメチルアンモニウム塩の分子量は、洗浄効果の点で20,000〜100,000が好ましく、30,000〜80,000が特に好ましい。
【0026】
一般式(I)で表されるポリジアリルジメチルアンモニウム塩としては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムブロマイド、ポリジアリルジメチルアンモニウムナイトレート、ポリジアリルジメチルアンモニウムサルフェートおよびポリジアリルジメチルアンモニウムホスフェートなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、洗浄効果の点で、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
上記のポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、市販のものを使用することができる。
【0027】
(アルカリ化剤)
本発明の洗浄剤に含まれるアルカリ化剤は、洗浄剤をpH10以上、好ましくはpH12以上、より好ましくはpH13以上に調整し得る化合物であれば特に限定されない。
アルカリ剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられ、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムから選択される1種以上であるのが好ましく、工業的に入手容易であることから、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0028】
(水性媒体)
本発明で用いられる水性媒体は、有効成分である含窒素化合物およびアルカリ化剤を溶解し得るものであれば特に限定されず、工業用水、上水、プラント内での再生水、およびそれらの混合水などが挙げられる。
【0029】
本発明の洗浄剤は、洗浄効果の点で、含窒素化合物が分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩であり、かつ前記アルカリ化剤が水酸化ナトリウムであるのが好ましい。
【0030】
(含窒素化合物およびアルカリ化剤の配合量)
本発明の洗浄剤における含窒素化合物の好ましい配合量は、それらの化合物の種類や洗浄対象の性状により異なるが、通常、洗浄剤の0.001〜10質量%である。
洗浄剤中の含窒素化合物が0.001質量%未満では、十分な洗浄効果が得られないことがある。一方、洗浄剤中の含窒素化合物が10質量%を超えれば、経済的なデメリットにより、実用に適さないことがある。より好ましい含窒素化合物の配合量は、0.01〜5質量%である。
【0031】
また、本発明の洗浄剤におけるアルカリ化剤の好ましい配合量は、洗浄剤のpHを規定値以上にさせ得る量であればよく、それらの化合物の種類や洗浄対象の性状により異なるが、通常、洗浄剤の0.1〜20質量%である。
洗浄剤中のアルカリ化剤が0.1質量%未満では、十分な洗浄効果が得られないことがある。より好ましいアルカリ化剤の配合量は、0.5〜15質量%である。
【0032】
(製剤)
本発明の洗浄剤は、含窒素化合物とアルカリ化剤とを水性媒体に溶解させることにより得られる。
このように本発明の洗浄剤は、一液製剤の形態で用いるのが好ましいが、場合によっては、含窒素化合物とアルカリ化剤とを二液製剤の形態で用いてもよい。この場合、二液を合わせた段階で上記の配合量になるように調整すればよい。
【0033】
(他の配合成分)
本発明の洗浄剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の機能を有する薬剤を含有していてもよく、例えば、消泡剤、界面活性剤(カチオン・アニオン・ノニオン)、親水性有機溶剤、キレート剤などが挙げられる。
【0034】
(適用対象)
本発明の洗浄剤は、硫黄スケールの蓄積(堆積)が問題となり、かつ本発明の洗浄剤の有効成分が弊害とならない、水や石油などの液体成分、それらの気体成分の一過式または循環式の流通系を有する装置に適用し得る。
本発明の洗浄剤は、例えば、石油化学、石油精製、地熱発電、製鉄、石炭発電、製紙などの技術分野において、冷却や熱交換などを目的として、機器やその配管などを備えた装置に適用し得る。
また、本発明の洗浄剤は、温泉水、特に硫黄泉の配管設備などの硫黄スケールの洗浄への適用も期待できる。
すなわち、本発明の洗浄剤は、対象系に充填・循環させて該対象系中に付着した硫黄スールを除去する硫黄スケールの洗浄剤であるのが好ましい。
【0035】
(2)硫黄スケールの洗浄方法
本発明の硫黄スケールの洗浄方法(以下「洗浄方法」ともいう)は、硫黄スケールの除去対象系の装置の操業を停止し、該対象系に本発明の洗浄剤を充填・循環させて、該対象系中に付着した硫黄スケールを溶解・除去することを特徴とする。
【0036】
具体的には、硫黄スケールの除去対象系の装置の操業を停止し、必要であればその内容物を排出した後、その対象系に本発明の洗浄剤を導入・充填し、洗浄剤を循環させる。対象系が循環式(閉鎖系)ではなく、一過式(開放系)であれば、既存の設備を用いるなどして対象系を一時的に循環式に改造すればよい。
循環方法は、既存の動力設備を用いてもよく、また洗浄処理用に用意した動力設備を用いてもよい。
また、洗浄時間は、処理対象やその性状などにより適宜設定すればよく、例えば、30分〜24時間程度である。
【実施例】
【0037】
本発明を製剤例および試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例および試験例により限定されるものではない。
本明細書において、特記のない限り「%」は質量基準である。
【0038】
製剤例および試験例において次の化合物および水を用いた[略称]。
これらの化合物は、試薬または市販品である。
・硫黄(試薬、硫黄結晶、CAS No.7704−34−9、和光純薬工業株式会社製、製造コード:197−17892)
・ヘキシルアミン
・ステアリルアミンEO20モル付加物[ステアリルアミンEO20]
EO:エチレンオキサイド
・ステアリルアミンEO45モル付加物[ステアリルアミンEO45]
・ステアリルアミンEO2モル付加物[ステアリルアミンEO2]
・ステアリルアミンEO20モル付加物・PO2モル付加[ステアリルアミンEO20PO2]
PO:プロピレンオキサイド
・ラウリルアミンEO10モル付加物[ラウリルアミンEO10]
【0039】
・ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン[ラウリルベタイン]
・ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(分子量6〜7万)
・ベンジルアミン
・ビス(アミノヘキシル)アミン
・塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム
・ポリオキシエチレンEO20モル付加物ソルビタンモノウラレート
・エチレンジアミン
・ジエチレントリアミン
・エチレンジアミン四酢酸[EDTA]
・ステアリルアミン
・水酸化ナトリウム[NaOH]
・水酸化カリウム[KOH]
・水(純水)
【0040】
製剤例1〜5では、それぞれ下記の化合物(有効成分)がその配合量(含有量)になるように水に添加混合し液体製剤を得た。
(製剤例1)
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド 5%
水酸化ナトリウム 5%
水 90%
(製剤例2)
ステアリルアミンEO20 5%
水酸化ナトリウム 5%
水 90%
(製剤例3)
ステアリルアミンEO20PO2 5%
水酸化ナトリウム 5%
水 90%
(製剤例4)
ラウリルアミンEO10 5%
水酸化ナトリウム 5%
水 90%
(製剤例5)
塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム 5%
水酸化ナトリウム 5%
水 90%
【0041】
(試験例1:硫黄試薬を用いた硫黄除去率の測定)
硫黄試薬および図1に示される試験装置を用いて試験した。
表1に示す含窒素化合物5質量%、アルカリ化剤5質量%および残部水からなる処理薬剤[4]を調製し、そのpHを測定した。
但し、実施例3および4は、アルカリ化剤の配合量が5質量%ではなく、それぞれ1質量%および0.4質量%であり、参考例とした。
次いで、得られた処理薬剤[4]100gを、撹拌装置[1](図1ではマグネチック
スターラーの撹拌子のみを図示)および加熱装置[2]を備えた容器[3]の容量100mLビーカーに入れた。
撹拌装置(撹拌子)[1]を用いて一定の条件で処理薬剤[4]を撹拌しつつ、加熱装置[2]を用いて処理薬剤[4]を温度70℃に加熱した。
次いで、硫黄試料[6]として秤量した硫黄試薬1gを入れた、ステンレス製ワイヤーで形成された目開き20メッシュの円筒形の金網袋[5]を、設定温度に到達した処理薬剤[4]に浸漬させ、温度70℃、撹拌下で4時間処理した。
【0042】
その後、容器「3」から金網袋[5]を取り出し、流水で水洗し、設定温度60〜70℃の乾燥器内で乾燥させた。
乾燥後(処理後)の硫黄試料[6]の重量Wa(g)を秤量し、処理前の硫黄試料[6]の重量Wb(g)とから次式により硫黄除去率(%)を求めた。
硫黄除去率(%)=[(Wb−Wa)/Wb]×100
また、硫黄除去率(%)を次の基準で評価した。
◎:硫黄除去率が60%以上
○:硫黄除去率が25%以上60%未満
×:硫黄除去率が25%未満
得られた結果を、含窒素化合物およびアルカリ化剤の化合物名ならびにそれらの配合量と共に表1および2に示す。なお、表中、有効成分以外の残部は水である。
上記以外に、含窒素化合物としてトール油脂肪酸ジメチルアミド、アルカリ化剤として水酸化ナトリウムを用いて試験したが、両者が反応し石鹸化して結果にバラツキが生じたことから洗浄の阻害となると判断した。
【0043】
(試験例2:硫黄スケールを用いた硫黄除去率の測定)
某工場の現場水系において採取した硫黄スケールおよび図1に示される試験装置を用いて試験した。
蛍光X線分析により硫黄スケールの構成成分を定量分析したところ、硫黄98.9%、アルミニウム0.2%および珪素0.9%であった。
処理薬剤[4]を表1に記載の含窒素化合物、アルカリ化剤およびそれらの配合量とし、硫黄試料[6]を硫黄スケールとすること以外は、上記の試験例1と同様にして試験した。
得られた結果を、含窒素化合物およびアルカリ化剤の化合物名ならびにそれらの配合量と共に表1および2に示す。なお、表中、有効成分以外の残部は水である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および2の結果から次のことがわかる。
・含窒素化合物単独では洗浄効果を示さないものの(比較例4〜6)、アルカリ化剤と併用することにより優れた洗浄効果を示すこと(実施例1〜14)
・純水やアルカリ化剤単独では洗浄効果を示さないこと(比較例7〜9)
・含窒素化合物がエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)のいずれの付加物であっても洗浄効果を示すこと(実施例2〜6、12および14)
・アルカリ化剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのいずれであっても洗浄効果を示すこと(実施例8および13)
【符号の説明】
【0047】
1 撹拌装置(撹拌子)
2 加熱装置
3 容器(ビーカー)
4 処理薬剤
5 金網袋
6 硫黄試料
図1