特許第6872751号(P6872751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872751
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20210510BHJP
   A61F 13/512 20060101ALI20210510BHJP
   A61F 5/44 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   A61F13/511 110
   A61F13/512
   !A61F5/44
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-46903(P2017-46903)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-149046(P2018-149046A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】長谷澤 敦子
(72)【発明者】
【氏名】堀切川 一男
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】柴田 圭
【審査官】 原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−231815(JP,A)
【文献】 特開2005−066355(JP,A)
【文献】 特開平06−070957(JP,A)
【文献】 特開2013−078362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/511
A61F 13/512
A61F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側に透液性表面シートが備えられた吸収性物品において、
前記透液性表面シートは、吸収性物品の長手方向に延びる凸部と凹部とが吸収性物品の幅方向に交互に複数配置された凹凸形状に形成され、前記凸部の側面に矩形状の開孔が形成され
前記凸部は、該凸部の基端と先端とを結ぶ高さ方向の中間に最大幅を有する断面形状で形成され、前記最大幅を有する高さより基端側の部分のみに前記開孔が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記透液性表面シートの非肌側にセカンドシートが配設され、前記凸部において前記透液性表面シートが前記セカンドシートから離間して断面略Ω字状の襞状部が形成されるとともに、前記凹部において前記透液性表面シートとセカンドシートとが接合されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記開孔の下端と前記凸部の基端との離間高さは、0〜1mmである請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記開孔は、幅寸法が2〜4mm、高さ寸法が0.5〜1.5mmの長方形状に形成されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは透液性表面シートが凹凸形状に形成されるとともに、凹凸形状の凸部の側面に開孔が設けられた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などからなる不透液性裏面シートと、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
前記透液性表面シートに関しては従来より、肌触りを良くするとともに肌への刺激を少なくしクッション性を高める、或いは肌への接触面積を低減させることによりべたつき感や湿り感を抑えるなどの目的に応じて、凹凸形状に形成されたものが提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、第1面側に突出する凸部と、第2面側に窪んだ溝部とを備え、前記凸部は、不織布の面の第1方向に向けて延設されているとともに、不織布の面において第1方向と直交する第2方向に予め定めた間隔で複数列設けられ、前記溝部は、前記第2方向に対して隣り合う凸部の間の空間に、前記第1方向に延設されているとともに、前記溝部の溝底部に、該溝部の溝底部よりも前記第2面側に位置する底部を有し、且つ前記第1方向に対して不連続に設けられた複数の凹部を備え、前記凹部は、該凹部の周面の少なくとも一部が、前記第2面に通じる孔部を備える吸収性物品用不織布が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、互いに積層された第1不織布及び第2不織布が部分的に熱融着されてシート形成用融着部が形成され、該第1不織布が、該シート形成用融着部で囲まれた非融着部において該第2不織布から離れる方向に突出して、内部が中空の凸部を多数形成しており、前記シート形成用融着部は、その輪郭よりも内側に、該輪郭の形状に相似する形状の外周縁を有する貫通孔を備え、該シート形成用融着部における前記輪郭と該貫通孔の外周縁との間の部分で、前記第1不織布及び第2不織布が接合されている立体シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5829326号公報
【特許文献2】特許第5960775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものでは、凹凸形状に形成された不織布の溝底部に、溝底部より窪んだ凹部が形成され、この凹部の周面に孔部が形成されているため、体圧がかかったとき、凹部に形成された孔部が閉じやすく、孔部を通じて体液を通過させるという効果は期待できない。このため、体液の吸収速度が遅くなり、表面に液残りして使用者がべたつき感を感じる場合があり、充分満足するに至らない。
【0008】
また、上記特許文献2に記載の立体シートでは、凹凸形状の凹部に貫通孔を備えているため、この貫通孔を通じて体液が素早く通過できるようになっているが、貫通孔が凹部に形成され、吸収体に面しているため、一旦貫通孔を通過した体液が再び貫通孔を通じて表面に逆戻りしやすく、逆戻りした体液によって表面がべたつくおそれがあった。
【0009】
一般的に、透液性表面シートの通液性を高めるために設けられる開孔は、円形状のものが多いが、粘度の高い経血が円形状の開孔を通過する際、表面張力によって開孔にメニスカスが形成されやすく、このメニスカスが体液の通過を阻害する問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、透液性表面シートの肌触りを良好にするとともに、体液を素早く吸収し、かつ表面のべたつきをなくした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、肌当接面側に透液性表面シートが備えられた吸収性物品において、
前記透液性表面シートは、吸収性物品の長手方向に延びる凸部と凹部とが吸収性物品の幅方向に交互に複数配置された凹凸形状に形成され、前記凸部の側面に矩形状の開孔が形成され
前記凸部は、該凸部の基端と先端とを結ぶ高さ方向の中間に最大幅を有する断面形状で形成され、前記最大幅を有する高さより基端側の部分のみに前記開孔が形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、透液性表面シートが凹凸形状に形成されているため、透液性表面シートの肌への接触面積が低減し肌触りを良好にすることができる。
【0013】
また、前記透液性表面シートは、凹凸形状の凸部の側面に開孔が形成されているため、この開孔を通じて体液が透液性表面シートを通過するので、体液が素早く吸収され、表面のべたつきが生じにくくなる。前記開孔は、凸部の側面に形成されているため、凹部の底面に形成された従来のものに比べて、一旦吸収された体液が開孔を通じて逆戻りしにくく、表面のべたつきがより一層防止できるようになっている。
【0014】
更に、前記開孔が矩形状に形成されることによって、開孔を通過する体液の表面張力によって開孔にメニスカスが形成されにくく、開孔がメニスカスによって塞がれないため、体液がスムーズに開孔を通過できる。このため、体液が素早く吸収でき、表面のべたつきが生じにくくなる。
【0015】
前記凸部は、該凸部の基端と先端とを結ぶ高さ方向の中間に最大幅を有する断面形状で形成され、前記最大幅を有する高さより基端側の部分のみに前記開孔が形成されている。
【0016】
前記凸部は、該凸部の基端と先端とを結ぶ高さ方向の中間に最大幅を有する断面形状で形成される。このような断面形状で形成された凸部に対し、前記開孔が前記最大幅を有する高さより基端側の部分のみに形成されているため、凹部に流れ込んだ体液が前記開孔を通じて素早く吸収でき、表面のべたつきがより確実に抑えられるようになる。
【0017】
請求項2に係る本発明として、前記透液性表面シートの非肌側にセカンドシートが配設され、前記凸部において前記透液性表面シートが前記セカンドシートから離間して断面略Ω字状の襞状部が形成されるとともに、前記凹部において前記透液性表面シートとセカンドシートとが接合されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項2記載の発明では、透液性表面シートを凹凸形状に形成する具体例として、前記透液性表面シートの非肌側にセカンドシートを配設し、前記凸部において透液性表面シートがセカンドシートから離間して断面略Ω字状の襞状部を形成するとともに、前記凹部において透液性表面シートとセカンドシートとを接合したものである。凹凸形状の凸部が断面略Ω字状の襞状部からなるため、クッション性に優れ、肌触りを更に良好にすることができるとともに、体圧がかかることによって隣り合う凸部同士の間隔が狭まり、逆戻りした体液があった場合でも、この体液が肌面に接触するのが防止でき、表面のべたつきをより一層生じにくくすることができる。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記開孔の下端と前記凸部の基端との離間高さは、0〜1mmである請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明では、前記開孔を凸部の基端の近傍に形成することによって、凹部に流れ込んだ体液が凹部の表面に溜まることなく、開孔を通じて素早く吸収されるようにしている。
【0021】
請求項に係る本発明として、前記開孔は、幅寸法が2〜4mm、高さ寸法が0.5〜1.5mmの長方形状に形成されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項記載の発明では、前記開孔の断面形状を、所定の幅寸法及び高さ寸法を有する長方形状に形成することによって、体液が開孔を通過する際に開孔にメニスカスが生成されるのが確実に抑制され、メニスカスによって体液の通過が阻害されるのが防止できる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、透液性表面シートの肌触りが良好になるとともに、体液が素早く吸収でき、かつ表面のべたつきをなくすことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】透液性表面シート3の拡大斜視図である。
図4】透液性表面シート3の拡大断面図である。
図5】製造装置20を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイドシート7、7とから構成されている。また、前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の側縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0028】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5によって囲繞されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体や、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。
【0029】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0030】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の5〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が5%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0031】
前記吸収体4を囲繞する被包シート5としては、薄葉紙やティッシュペーパーなどのクレープ紙や不織布を用いることが可能である。前記クレープ紙を構成する繊維素材は、パルプ繊維100%からなるのが望ましく、薄葉紙やティシュペーパーに用いられる針葉樹パルプ及び広葉樹パルプであるのが望ましい。前記親水性は、スパンボンド不織布やSMS不織布(SMS、SSMMS等)が好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。本例のように、吸収体4を囲繞する被包シート5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0032】
一方、本生理用ナプキン1の肌当接面側の両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイドシート7、7が設けられ、このサイドシート7、7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによって、本体部分の両側部に外側に突出するウイング状フラップW、Wが形成されている。前記ウイング状フラップW、Wは、装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むように、基端部の折り線RL(図1)にて外側に折り返して使用され、ウイング状フラップWの不透液性裏面シート2の外面に備えられたズレ止め粘着剤層(図示せず)を下着の外面に貼着することにより、下着とのズレ止めを図るためのものである。
【0033】
前記サイドシート7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0034】
〔透液性表面シート3〕
以下、前記透液性表面シート3について詳細に説明する。前記透液性表面シート3は、不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0035】
本生理用ナプキン1において、前記透液性表面シート3は、図3及び図4に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向に延びる凸部10と凹部11とが生理用ナプキン1の幅方向に交互に複数配置された凹凸形状に形成され、前記凸部10の側面に、矩形状の開孔12が形成されていることを特徴としている。前記凸部10及び凹部11はそれぞれ、生理用ナプキン1の長手方向に延びるとともに、透液性表面シート3の全長に亘って形成されており、生理用ナプキン1の幅方向に交互に複数列設されることにより、透液性表面シート3が生理用ナプキン1の幅方向に沿って(生理用ナプキン1の幅方向に沿った断面視で)凹凸形状(波形状)に形成されている。ここで、開孔12が凸部10の側面に形成されるとは、図4に示される透液性表面シート3の横断面視で、前記開孔12が、凸部10を構成する透液性表面シート3のうち、凸部10の高さ方向の頂点を境に左右のそれぞれの側に設けられていることを意味する。
【0036】
前記凸部10は、透液性表面シート3が該透液性表面シート3の非肌側に配置された部材から肌側に突出して、内部が中空に形成された部分である。
【0037】
前記凹部11は、前記凸部10の頂部より相対的に非肌側に窪むとともに、非肌側面が透液性表面シート3の非肌側に配置された部材に接するように形成された部分である。
【0038】
前記凸部10に設けられる開孔12は、透液性表面シート3の肌側と凸部10の中空状の内部とを透液性表面シート3の厚み方向に貫通する、透液性表面シート3を構成する素材が介在しない部分である。前記開孔12は、凸部10の両側面にそれぞれ、凸部10が延びる方向(生理用ナプキン1の長手方向)に沿って所定の間隔をあけて複数形成されている。
【0039】
前記透液性表面シート3が凹凸形状に形成されることにより、前記凸部10の頂部が肌面に接触して、肌面への接触面積が低減するため、透液性表面シート3の肌触りが良く肌への刺激が少なくなり、触感性に優れるようになる。また、凸部10の内部が中空に形成されるため、クッション性が良く、柔軟な肌当たり感が得られるようになる。
【0040】
また、前記透液性表面シート3は、凹凸形状の凸部10の側面に、生理用ナプキン1の長手方向に沿って複数の矩形状の開孔12、12…が形成されているため、これらの開孔12を通じて体液が素早く吸収体4側に吸収されることにより、表面のべたつきが生じなくなる。前記開孔12は、凸部10の側面に形成され、中空状に形成された凸部10の内部に臨んでいるため、凹部の底部に形成した従来のものに比べて、一旦吸収された体液が開孔12を通じて逆戻りしにくく、表面がべたつくのが防止できる。
【0041】
更に、前記開孔12は、角部が存在する矩形状に形成されているため、円形状に形成されたものに比べて、体液が開孔12を通過する際に、表面張力によって開孔12を塞ぐようなメニスカスが形成されにくく、体液がスムーズに開孔12を通過できる。これによって、体液が素早く吸収され、表面のべたつきが生じにくくなる。
【0042】
凹凸形状に形成された透液性表面シート3の構造について、更に詳しく説明すると、図3及び図4に示されるように、透液性表面シート3の非肌側にセカンドシート6が配設され、前記凸部10において透液性表面シートがセカンドシート6から離間して断面略Ω字状の襞状部が形成されるとともに、前記凹部11において透液性表面シート3とセカンドシート6とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されている。
【0043】
凹凸形状の凸部10が断面略Ω字状の襞状部で形成されることによって、透液性表面シート3のクッション性及び感触性が更に良好になるとともに、体圧がかかったときに隣り合う凸部10、10同士の間隔が狭まり、凹部11の表面に液残りした体液や表面に逆戻りした体液が肌面に接触するのが防止でき、表面のべたつきがより一層生じにくくなる。
【0044】
断面略Ω字状の襞状部からなる凸部10は、図4に示されるように、該凸部10の基端と先端(頂部)とを結ぶ高さ方向の中間に最大幅Aを有する断面形状で形成されている。すなわち、基端における両側の透液性表面シート3、3の離間幅Bより、高さ方向の中間部分における両側の透液性表面シート3、3の離間幅(最大幅A)の方が大きく形成されている(A>B)。前記凸部10の断面形状は、凸部10の両側面を構成する透液性表面シート3、3の離間幅が、基端から肌側に向かうに従って徐々に大きくなるように形成され、高さ方向の中間で離間幅が最大となる最大幅Aを有するとともに、それより更に肌側に向かうに従って、離間幅が徐々に小さくなり、凸部10の頂部で両側の透液性表面シート3、3が接続するように形成されている。
【0045】
前記最大幅Aとしては1.5〜3.0mmが好ましく、基端の離間幅Bとしては0.5〜1.0mmが好ましい。前記最大幅Aが1.5mmより小さいと、凸部10の幅が小さすぎて充分満足できる肌触りが得られない。また、前記Aが3.0mmより大きいと、凸部10の幅が大きすぎて素材の復元力によるクッション感が得られにくい。一方、基端の離間幅Bが0.5mmより小さいと、凸部10の基端が不安定となり、凸部10が倒れやすく、柔軟な肌触り感が得られない。また、前記Bが1.0mmより大きいと、凸部10の幅が大きすぎてクッション感が得られにくい。
【0046】
前記凸部10の肌側への突出高さCは、柔軟な肌触りを得るとともに、素材の復元力による凸部の保形性を確保することなどを目的として、1.0〜3.0mmとするのが好ましい。
【0047】
一方、隣り合う凸部10、10間の基端の離間距離D(凹部11の幅)は、体圧によって凸部10が頂部から押されたとき、隣り合う凸部10、10が程良くくっついて間隔がなくなり、凹部11の表面の体液が肌面に接触しにくくなるように、2.0〜4.0mmとするのが好ましい。
【0048】
前記凸部10の断面形状を、高さ方向の中間に最大幅Aを有する形状で形成した場合において、前記開孔12は、前記最大幅Aを有する高さより基端側の部分に形成し、最大幅Aを有する高さより先端側(頂部側)の部分には形成しないのが好ましい。つまり、前記開孔12は、断面略Ω字状に形成された凸部10の基端から最大幅Aを有する高さまでの範囲内に形成するのが好ましい。この範囲内では、前記凸部10を構成する透液性表面シート3が凸部10の中心より外側に向けて傾斜して突出しているため、透液性表面シート3の外面側から見たときに開孔12が直接視認しにくい位置に形成されるようになる。
【0049】
前記最大幅Aを有する高さより基端側の凸部10に前記開孔12を形成することによって、凹部11表面の体液が開孔12を通じて透液性表面シート3を通過しやすくなり、体液が素早く吸収できるとともに、表面のべたつきが抑えられるようになる。また、前記開孔12が凸部10の基端から最大幅Aを有する高さの範囲内に設けられているため、装着時に凸部10の頂部に体圧が加わったとき、隣り合う凸部10、10同士が最大幅Aの位置又はその近傍で接するように変形するため、開孔12が直接肌に触れることがなく、開孔12の端部による肌への刺激などが防止できる。
【0050】
凹部11の表面に存在する体液が開孔12を通じて透液性表面シート3を通過しやすくするため、図4に示されるように、開孔12の下端と凸部10の基端との透液性表面シート3に沿った凸部10の突出方向の離間高さEは、0〜1mmとするのが好ましい。これによって、前記開孔12が凸部10の基端の近傍に形成されるため、凹部11に流れ込んだ体液が、凹部11において透液性表面シート3の表面に溜まらずに、開孔12を通じて素早く吸収されるようになる。
【0051】
前記開孔12の形状は、図3に示されるように、幅寸法F(凸部10が延びる方向の寸法)が2〜4mm、高さ寸法G(凸部10の突出方向の寸法)が0.5〜1.5mmとなる横長の長方形状で形成するのが好ましい。これにより、体液が開孔12を通過する際のメニスカスの生成が確実に抑制され、メニスカスによって体液の通過が阻害されるのが防止できる。
【0052】
前記凸部10が延びる方向に隣り合う開孔12、12の間隔Hは、1〜2mmとするのがよい。これによって、開孔12を体液が通過しやすくなるとともに、凸部10の形状が安定して形成されるようになる。
【0053】
上記の構造からなる凹凸形状の透液性表面シート3を製造するには、図5に示されるように、凹凸形状の透液性表面シート3を平坦状に引き伸ばした状態で、開孔12に対応する位置に先端が矩形状の凸部が形成された凸ロール21と、前記凸ロール21の凸部に対応する凹部が形成された凹ロール22との間に、透液性表面シート3の原反を通過させ、前記凸ロール21の凸部と凹ロール22の凹部との噛み合わせにより多数の開孔12を形成する第1工程と、透液性表面シート3の凸部10に対応する凸部23a、23a…がロール周方向に沿うとともに、ロール軸方向に所定の間隔をあけて複数設けられた凸ロール23と、前記凸ロール23の凸部23aに対応する複数の凹部24a、24a…が形成された凹ロール24との間に、前記第1工程で前記開孔12を形成した透液性表面シート3を位置合わせしながら通過させ、凸部10及び凹部11を形成するとともに、凹部11を前記凸ロール23の凸部23aに噛み合わせた状態で別経路から搬送されたセカンドシート6を積層するとともに、前記凸ロール23の凸部23aの先端部と平坦ロール25との間で、前記透液性表面シート3とセカンドシート6とを接合する第2工程とからなる製造装置20を用いることができる。
【0054】
前記透液性表面シート3とセカンドシート6との接合は、ホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段を用いることができる。
【0055】
その後、前記凸ロール23の凸部23aから離型された透液性表面シート3及びセカンドシート6の積層体は、セカンドシート6から突出した部分が素材の復元力によって、図4に示されるような断面略Ω字状の凸部10を形成するようになる。
【0056】
なお、前記凸ロール21と凹ロール22との間を通過させて多数の開孔12、12…を形成した透液性表面シート3を、前記凹ロール22に巻き付けた状態のまま、第2工程の凹ロール24に搬送することにより、開孔12の位置と凹ロール24の凹部24aとの位置合わせが容易となるので好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…セカンドシート、7…サイド不織布、10…凸部、11…凹部、12…開孔、20…製造装置
図1
図2
図3
図4
図5