特許第6872752号(P6872752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872752継手部材の接続構造及び継手部材の接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872752
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】継手部材の接続構造及び継手部材の接続方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   E03C1/20 E
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-114823(P2017-114823)
(22)【出願日】2017年6月12日
(65)【公開番号】特開2019-2134(P2019-2134A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392028767
【氏名又は名称】株式会社日本アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】石垣 征樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 高志
【審査官】 下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−100644(JP,A)
【文献】 特開2003−232064(JP,A)
【文献】 特開2007−154545(JP,A)
【文献】 実開昭56−154473(JP,U)
【文献】 実開昭49−147878(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C1/12〜1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口及び当該排水口を形成する部位である排水口形成部を有する防水パンと、槽体からの排水が流れる継手部材とを備え、
前記排水口形成部に対する前記継手部材の接続に係る継手部材の接続構造であって、
前記排水口形成部は、段差状の掛かり部を具備し、
前記継手部材は、
筒状の軟質筒状部、及び、当該軟質筒状部の一端部から外側に突出形成された軟質鍔状部を備えてなる軟質部材と、
筒状の硬質筒状部、及び、当該硬質筒状部の一端部から外側に突出形成された硬質鍔状部を備え、前記軟質部材よりも硬質の材料により形成された硬質部材とを備え、
前記軟質鍔状部及び前記硬質鍔状部が相対向するとともに、前記軟質筒状部に対し当該軟質筒状部の他端部から突出した状態で前記硬質筒状部が挿設された状態となることで、前記軟質部材及び前記硬質部材が組合わされており、
前記硬質筒状部のうち前記軟質筒状部の他端部から突出した部位には、外側に突出する弾性変形可能な爪部が設けられ、
前記爪部を内側に弾性変形させつつ前記軟質筒状部及び前記硬質筒状部を前記排水口に挿通していき、前記掛かり部よりも奥に前記爪部が配置されたときに前記爪部の弾性変形が解除されることで、前記排水口形成部に前記継手部材が接続されるように構成されており、
前記硬質鍔状部及び前記防水パン間に前記軟質鍔状部が配置されるとともに、前記排水口形成部及び前記硬質筒状部間に前記軟質筒状部が配置され、少なくとも前記軟質筒状部が前記排水口形成部及び前記硬質筒状部で挟み込まれた状態とされることを特徴とする継手部材の接続構造。
【請求項2】
前記硬質筒状部の外側面には、前記軟質筒状部に対応する形状をなし、前記軟質筒状部の配置される収容溝部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の継手部材の接続構造。
【請求項3】
前記軟質筒状部の他端側外側面には、当該軟質筒状部の最他端に向けて徐々に細くなる形状をなすテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の継手部材の接続構造。
【請求項4】
前記軟質部材は、前記軟質鍔状部の外周部分に連続し、前記軟質鍔状部に対する前記軟質筒状部の突出方向とは反対方向に向けて、前記軟質鍔状部から突出する筒状の軟質連結部を有し、
前記継手部材は、前記軟質連結部と直列的に連結され、前記軟質部材よりも硬質の材料により形成された筒状の第二硬質部材を有し、
前記軟質連結部は、前記第二硬質部材及び前記硬質鍔状部間に位置する伸縮変形可能な蛇腹部を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の継手部材の接続構造。
【請求項5】
前記蛇腹部を圧縮変形させた状態において、前記第二硬質部材の端部が前記硬質鍔状部へと接触するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の継手部材の接続構造。
【請求項6】
前記爪部は、前記硬質部材が撓み変形することで弾性変形可能に構成されており、
前記硬質部材のうち前記爪部が弾性変形する際に撓み変形する部分は、前記硬質筒状部における前記軟質筒状部の他端部から突出した部位のみに設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の継手部材の接続構造。
【請求項7】
前記軟質筒状部の外側面には、外側に突出する環状の突条部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の継手部材の接続構造。
【請求項8】
前記軟質筒状部の外側面であって、前記突条部に対し前記軟質鍔状部側において隣接する部位には、凹部が設けられており、
前記凹部は、前記突条部の全周に対応して設けられることで環状をなしており、
前記軟質筒状部及び前記硬質筒状部を前記排水口に挿通していく際に、前記突条部が前記凹部側に向けて変形可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の継手部材の接続構造。
【請求項9】
防水パンのうちその排水口を形成する部位である排水口形成部に対する、槽体からの排水が流れる継手部材の接続に係る継手部材の接続方法であって、
前記排水口形成部は、段差状の掛かり部を具備し、
前記継手部材は、
筒状の軟質筒状部、及び、当該軟質筒状部の一端部から外側に突出形成された軟質鍔状部を備えてなる軟質部材と、
筒状の硬質筒状部、及び、当該硬質筒状部の一端部から外側に突出形成された硬質鍔状部を備え、前記軟質部材よりも硬質の材料により形成された硬質部材とを備え、
前記軟質鍔状部及び前記硬質鍔状部が相対向するとともに、前記軟質筒状部に対し当該軟質筒状部の他端部から突出した状態で前記硬質筒状部が挿設された状態となることで、前記軟質部材及び前記硬質部材が組合わされており、
前記硬質筒状部のうち前記軟質筒状部の他端部から突出した部位には、外側に突出する弾性変形可能な爪部が設けられ、
前記爪部を内側に弾性変形させつつ前記軟質筒状部及び前記硬質筒状部を前記排水口に挿通していき、前記掛かり部よりも奥に前記爪部が配置されたときに前記爪部の弾性変形が解除されることで、前記排水口形成部に前記継手部材を接続し、前記硬質鍔状部及び前記防水パン間に前記軟質鍔状部を配置させるとともに、前記排水口形成部及び前記硬質筒状部間に前記軟質筒状部を配置させ、少なくとも前記軟質筒状部を前記排水口形成部及び前記硬質筒状部で挟み込んだ状態とする工程を含むことを特徴とする継手部材の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水パンに対し排水の流れる継手部材が接続されてなる継手部材の接続構造、及び、防水パンに対する継手部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、槽体(例えば、浴槽など)の排水口と、防水パンの排水口とを連通するために、筒状の継手部材が用いられる。継手部材は、防水パンにおける排水口を形成する部位である排水口形成部に対し接続されることで、槽体及び防水パンの両排水口を連通する。
【0003】
従来、継手部材の接続容易性を考慮して、継手部材を、例えば、ゴムや軟質樹脂などの軟質材料によって形成することがある。一般に、このような継手部材の排水口形成部に対する接続には、防水パンの排水口に対し継手部材を挿入することで、排水口形成部に対し継手部材を接続するという接続構造(以下、「第一の接続構造」と称す)が採用される。
【0004】
また近年では、軟質材料(ゴム)からなる筒状の軟質部材(浴槽排水継手)と、軟質部材に対しその下部から突出した状態で挿設された筒状の硬質部材(接続用環体)とにより構成した継手部材を用いる接続構造(以下、「第二の接続構造」と称す)が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
この接続構造において、硬質部材は、軟質部材の下部から露出する部分の外周に、外側に突出するとともに周方向に延設されたロック爪を複数備え、また、内周に、工具を係合するための内向き鍔部を備えている。継手部材を接続する際には、防水パンの排水口に対し、硬質部材における軟質部材の下部から露出する部分を挿入した上で、軟質部材の上部開口を通して硬質部材の内部に所定の工具を配置しつつ、当該工具を内向き鍔部を係合した状態で当該工具を回転させることにより硬質部材を回転させる。そして、防水パンにおける排水口の下縁に対しロック爪を係合させることにより、排水口形成部に対し継手部材が接続された状態となる。
【0006】
また、第二の接続構造では、硬質部材及び防水パンの上面で軟質部材の下部が挟み込まれることにより、継手部材及び防水パン間における止水性の確保が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−100644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、第一の接続構造では、継手部材が軟質材料により形成されているため、防水パンの排水口に対する継手部材の挿入途中で、継手部材の変形が生じてしまいやすく、排水口に対する継手部材の挿入を行いにくい。また、排水口に対し継手部材が正常に挿入されたか否か、つまり、継手部材が適切な状態で接続されたか否かの判断が難しい。
【0009】
一方、第二の接続構造では、硬質部材の存在により、排水口に対し継手部材を比較的容易に挿入することができる。しかしながら、継手部材を接続するためには、軟質部材の上部開口を通して硬質部材の内部に工具を配置し、この工具によって硬質部材を回転させるといった面倒な作業が必要となってしまう。また、ロック爪が防水パンにおける排水口の下縁に対し適切に係合されているか否かの判断が難しい。すなわち、第一の接続構造と同様に、継手部材が適切な状態で接続されたか否かの判断が難しい。
【0010】
このように、いずれの接続構造であっても、取付等に係る作業は決して容易なものではなく、また、接続状態が適切であるか否かの判断についても容易なものではない。
【0011】
さらに、第一の接続構造では、単に排水口に対し継手部材を挿入するといったものであるため、止水性が不十分となってしまいやすい。
【0012】
一方、第二の接続構造は、硬質部材及び防水パンの上面で軟質部材の下部を挟み込むことにより止水性の確保を図る構成ではあるが、例えば防水パンの厚さなどの影響により、万が一軟質部材の下部の挟み込みが不十分になってしまうと、止水性が著しく低下してしまうおそれがある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、継手部材の接続に係る作業を非常に容易なものとすることができるとともに、良好な止水性をより確実に確保することができる継手部材の接続構造等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0015】
手段1.排水口及び当該排水口を形成する部位である排水口形成部を有する防水パンと、槽体からの排水が流れる継手部材とを備え、
前記排水口形成部に対する前記継手部材の接続に係る継手部材の接続構造であって、
前記排水口形成部は、段差状の掛かり部を具備し、
前記継手部材は、
筒状の軟質筒状部、及び、当該軟質筒状部の一端部から外側に突出形成された軟質鍔状部を備えてなる軟質部材と、
筒状の硬質筒状部、及び、当該硬質筒状部の一端部から外側に突出形成された硬質鍔状部を備え、前記軟質部材よりも硬質の材料により形成された硬質部材とを備え、
前記軟質鍔状部及び前記硬質鍔状部が相対向するとともに、前記軟質筒状部に対し当該軟質筒状部の他端部から突出した状態で前記硬質筒状部が挿設された状態となることで、前記軟質部材及び前記硬質部材が組合わされており、
前記硬質筒状部のうち前記軟質筒状部の他端部から突出した部位には、外側に突出する弾性変形可能な爪部が設けられ、
前記爪部を内側に弾性変形させつつ前記軟質筒状部及び前記硬質筒状部を前記排水口に挿通していき、前記掛かり部よりも奥に前記爪部が配置されたときに前記爪部の弾性変形が解除されることで、前記排水口形成部に前記継手部材が接続されるように構成されており、
前記硬質鍔状部及び前記防水パン間に前記軟質鍔状部が配置されるとともに、前記排水口形成部及び前記硬質筒状部間に前記軟質筒状部が配置され、少なくとも前記軟質筒状部が前記排水口形成部及び前記硬質筒状部で挟み込まれた状態とされることを特徴とする継手部材の接続構造。
【0016】
上記手段1によれば、継手部材は、例えばゴムや軟質樹脂等により形成された軟質部材と、当該軟質部材よりも硬質の材料(例えば硬質樹脂等)により形成された硬質部材とを備えており、両部材は、それぞれ鍔状部と筒状部とを有している。そして、両鍔状部が相対向するとともに、軟質部材の筒状部(軟質筒状部)の内部に対し当該軟質筒状部の他端部から突出した状態で硬質部材の筒状部(硬質筒状部)が配置された状態となることで、軟質部材及び硬質部材が組合わされている。
【0017】
その上で、上記手段1によれば、硬質筒状部における軟質筒状部から突出した(露出した)部分には、弾性変形可能な爪部が設けられている。そして、爪部を内側に弾性変形させつつ排水口に対し両筒状部を挿通していき、排水口形成部に設けられた掛かり部よりも奥(下方)に爪部が配置された状態となったときに爪部の弾性変形が解除されることで、排水口形成部に継手部材が接続されるように構成されている。すなわち、スナップフィット(材料の弾性を利用した取付手法)により、排水口形成部に対し継手部材が接続されるように構成されている。ここで、接続時には、硬質筒状部の存在により、排水口に対する継手部材(両筒状部)の挿通途中で継手部材が変形するといった事態は生じにくくなり、排水口に対し継手部材を容易に挿入することができる。また、排水口に対し継手部材を単に挿通すればよく、工具を使った面倒で手間のかかる作業を行う必要はない。さらに、爪部における弾性変形の解除に伴い音や衝撃を生じさせるという構成を容易に実現可能となり、この構成を採用することで、音や衝撃の有無により、作業者において、継手部材が適切な状態で接続されたか否かを容易に判断可能とすることができる。これらの結果、継手部材の接続に係る作業を非常に容易なものとすることができ、作業性を飛躍的に向上させることができる。
【0018】
さらに、上記手段1によれば、排水口形成部に対し継手部材を接続した状態では、硬質鍔状部及び防水パン間に軟質鍔状部が配置されるとともに、排水口形成部及び硬質筒状部間に軟質筒状部が配置された状態とされ、少なくとも軟質筒状部が排水口形成部及び硬質筒状部で挟み込まれた(力を加えられつつ挟まれた)状態とされる。すなわち、接続完了後における排水口への挿通方向に沿った継手部材の位置によっては、十分に挟み込まれないおそれのある軟質鍔状部ではなく、前記挿通方向に沿った継手部材の位置が多少変動したとしても、十分に挟み込み可能な軟質筒状部を挟み込みの対象としている。従って、継手部材及び防水パン間において、良好な止水性をより確実に確保することができる。
【0019】
尚、設計上は、軟質筒状部に加えて、軟質鍔状部も挟み込まれるようにすることが好ましい。軟質筒状部及び軟質鍔状部の双方が挟み込まれることで、止水部分を2箇所設けることができ、非常に優れた止水性を実現することができる。尚、仮に接続完了後における継手部材のその挿通方向に沿った位置が設計上の位置からずれたとしても、軟質筒状部によって良好な止水性が担保されることとなる。
【0020】
手段2.前記硬質筒状部の外側面には、前記軟質筒状部に対応する形状をなし、前記軟質筒状部の配置される収容溝部が設けられていることを特徴とする手段1に記載の継手部材の接続構造。
【0021】
上記手段2によれば、軟質筒状部は、硬質筒状部の外側面に設けられた、軟質筒状部に対応する形状の収容溝部に配置された状態となっている。従って、いわば軟質筒状部の他端面の少なくとも一部を硬質筒状部で覆った状態とすることができる。これにより、排水口に対し両筒状部を挿通する際に、軟質筒状部の他端部が防水パンに引っ掛かりにくくなる。その結果、継手部材の接続に係る作業を一段と容易なものとすることができる。さらに、硬質筒状部から軟質筒状部が外れにくくなり、硬質部材及び軟質部材の取付安定性を高めることができる。
【0022】
手段3.前記軟質筒状部の他端側外側面には、当該軟質筒状部の最他端に向けて徐々に細くなる形状をなすテーパ部が設けられていることを特徴とする手段1又は2に記載の継手部材の接続構造。
【0023】
上記手段3によれば、軟質筒状部の他端側外側面には、軟質筒状部の最他端に向けて徐々に細くなる形状のテーパ部が設けられている。すなわち、軟質筒状部は、排水口に対する両筒状部の挿通方向に沿った前方側部位がより細い形状となっている。従って、排水口に対し両筒状部を挿通する際に、軟質筒状部の他端部が防水パンに対しより引っ掛かりにくいものとなる。これにより、継手部材の接続に係る作業をより容易なものとすることができる。
【0024】
手段4.前記軟質部材は、前記軟質鍔状部の外周部分に連続し、前記軟質鍔状部に対する前記軟質筒状部の突出方向とは反対方向に向けて、前記軟質鍔状部から突出する筒状の軟質連結部を有し、
前記継手部材は、前記軟質連結部と直列的に連結され、前記軟質部材よりも硬質の材料により形成された筒状の第二硬質部材を有し、
前記軟質連結部は、前記第二硬質部材及び前記硬質鍔状部間に位置する伸縮変形可能な蛇腹部を具備することを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の継手部材の接続構造。
【0025】
上記手段4によれば、蛇腹部が伸縮変形することで、継手部材の高さを変動させることができる。これにより、防水パンに対する槽体(例えば浴槽など)の高さが変動した場合であっても、継手部材を槽体の排水口に設けられた装置などに対しより確実に接続することができる。これにより、継手部材の汎用性をより高めることができ、製造等に関するコストの低減を図ることができる。
【0026】
また、上記手段4によれば、比較的硬質の第二硬質部材を防水パンの排水口側へと押し込むことで、排水口に対し両筒状部を挿通することができる。従って、軟質部材を押し込む場合と比較して、継手部材の接続をより容易に行うことができる。
【0027】
手段5.前記蛇腹部を圧縮変形させた状態において、前記第二硬質部材の端部が前記硬質鍔状部へと接触するように構成されていることを特徴とする手段4に記載の継手部材の接続構造。
【0028】
第二硬質部材を押し込む際に、第二硬質部材及び硬質鍔状部で軟質部材が挟まれた状態になってしまうと、押込み時に第二硬質部材がぐらつきやすくなってしまい、作業性の低下を招いてしまう可能性がある。
【0029】
この点を踏まえ、上記手段5によれば、防水パンの排水口に対し両筒状部を挿通すべく、第二硬質部材を防水パンの排水口側へと押し込み、蛇腹部を圧縮変形させたときに、第二硬質部材の端部を硬質鍔状部へと直接接触させることができる。従って、第二硬質部材を押し込む際に、第二硬質部材を安定した状態で押し込むことができ、作業性をより一層向上させることができる。また、第二硬質部材へと加えられた押込力を硬質部材や軟質部材へとより確実に伝達することができ、排水口に対し両筒状部をより容易に挿通することができる。
【0030】
手段6.前記爪部は、前記硬質部材が撓み変形することで弾性変形可能に構成されており、
前記硬質部材のうち前記爪部が弾性変形する際に撓み変形する部分は、前記硬質筒状部における前記軟質筒状部の他端部から突出した部位のみに設けられていることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の継手部材の接続構造。
【0031】
上記手段6によれば、硬質部材のうち爪部が弾性変形する際に撓み変形する部分は、硬質筒状部における軟質筒状部から突出した部位のみに設けられている。すなわち、硬質筒状部のうち排水口形成部との間で軟質筒状部を挟み込む部位は、爪部が弾性変形する際に撓み変形することはない。従って、硬質筒状部及び排水口形成部によって軟質筒状部をより確実に挟み込むことができる。その結果、止水性の更なる向上を図ることができる。
【0032】
手段7.前記軟質筒状部の外側面には、外側に突出する環状の突条部が設けられていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の継手部材の接続構造。
【0033】
上記手段7によれば、軟質筒状部の外側面には、環状(より詳細には、軟質筒状部の中心軸と直交する仮想面に投影したときに環状)をなす突条部が設けられている。従って、硬質筒状部及び排水口形成部で軟質筒状部を挟み込んだ状態としたときに、突条部を排水口形成部へと押付けることができる。そのため、排水口形成部に対し軟質筒状部を線接触に近い状態で接触させることができ、排水口形成部に対する軟質筒状部の接触圧力を増大させることができる。これにより、止水性をさらに良好なものとすることができる。
【0034】
手段8.前記軟質筒状部の外側面であって、前記突条部に対し前記軟質鍔状部側において隣接する部位には、凹部が設けられており、
前記凹部は、前記突条部の全周に対応して設けられることで環状をなしており、
前記軟質筒状部及び前記硬質筒状部を前記排水口に挿通していく際に、前記突条部が前記凹部側に向けて変形可能に構成されていることを特徴とする手段7に記載の継手部材の接続構造。
【0035】
上記手段8によれば、軟質筒状部及び硬質筒状部を排水口に挿通していく際に、突条部が凹部側に向けて撓むようにして変形可能とされている。従って、軟質筒状部等を排水口に挿通する際に、突条部と排水口形成部との間で生じる抵抗を軽減することができる。その結果、継手部材の接続に係る作業をより一層容易なものとすることができ、作業性の更なる向上を図ることができる。
【0036】
手段9.防水パンのうちその排水口を形成する部位である排水口形成部に対する、槽体からの排水が流れる継手部材の接続に係る継手部材の接続方法であって、
前記排水口形成部は、段差状の掛かり部を具備し、
前記継手部材は、
筒状の軟質筒状部、及び、当該軟質筒状部の一端部から外側に突出形成された軟質鍔状部を備えてなる軟質部材と、
筒状の硬質筒状部、及び、当該硬質筒状部の一端部から外側に突出形成された硬質鍔状部を備え、前記軟質部材よりも硬質の材料により形成された硬質部材とを備え、
前記軟質鍔状部及び前記硬質鍔状部が相対向するとともに、前記軟質筒状部に対し当該軟質筒状部の他端部から突出した状態で前記硬質筒状部が挿設された状態となることで、前記軟質部材及び前記硬質部材が組合わされており、
前記硬質筒状部のうち前記軟質筒状部の他端部から突出した部位には、外側に突出する弾性変形可能な爪部が設けられ、
前記爪部を内側に弾性変形させつつ前記軟質筒状部及び前記硬質筒状部を前記排水口に挿通していき、前記掛かり部よりも奥に前記爪部が配置されたときに前記爪部の弾性変形が解除されることで、前記排水口形成部に前記継手部材を接続し、前記硬質鍔状部及び前記防水パン間に前記軟質鍔状部を配置させるとともに、前記排水口形成部及び前記硬質筒状部間に前記軟質筒状部を配置させ、少なくとも前記軟質筒状部を前記排水口形成部及び前記硬質筒状部で挟み込んだ状態とする工程を含むことを特徴とする継手部材の接続方法。
【0037】
上記手段9によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。尚、上記手段2〜8の技術的思想を上記手段9に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】排水口を閉状態としたときにおける排水口装置等の一部破断正面図である。
図2】排水口を開状態としたときにおける排水口装置等の一部破断正面図である。
図3】継手部材の断面図である。
図4】硬質部材及び軟質部材をより詳細に示すための継手部材の拡大断面図である。
図5】挿通工程の一過程を説明するための継手部材などの断面図である。
図6】挿通工程の一過程を説明するための継手部材などの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、排水口装置1は、浴槽100に取付けられている。
【0040】
まず、排水口装置1の説明に先立って、浴槽100について説明する。浴槽100は、その底面を構成する底壁部101を備えており、当該底壁部101には、下方に向けて垂下する垂下部102と、当該垂下部102の下部から内向きに突出する内鍔部103とが設けられている。内鍔部103の内側に、排水口104が形成されている。
【0041】
さらに、底壁部101の外周には図示しない周壁部が立設されており、当該周壁部の上端部には外側に向けて突出する図示しないフランジ部が設けられている。そして、このフランジ部に対し、浴槽100に対して変位可能な図示しない操作部材(例えば、操作ボタンなど)を有する操作装置(図示せず)が取付けられている。尚、前記操作装置を浴槽100周辺の構造物に設けてもよい。
【0042】
次いで、排水口装置1について説明する。排水口装置1は、排水口部材2、継手部材3、アタッチメント部材4、支持軸機構5、栓蓋6及びUパッキン7を備えている。
【0043】
排水口部材2は、主として継手部材3を浴槽100へと接続するために用いられるものである。排水口部材2は、筒状に形成されており、自身の中心軸と前記排水口104の中心軸とがほぼ一致するように排水口104に挿設されている。排水口部材2は、その上端部において径方向外側に突出形成された鍔部21と、当該鍔部21よりも下方側に位置する円筒状の被挿通部22とを備えている。
【0044】
鍔部21は、継手部材3との間で底壁部101(内鍔部103)及びUパッキン7を挟み込むためのものであり、垂下部102内に配置されている。鍔部21の外周には、周方向に沿って延びる環状の溝が形成されており、当該溝には、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状のシール部材23が嵌め込まれている。
【0045】
シール部材23は、鍔部21よりも外側に突出した形状をなしており、その外周部分が垂下部102へと接触することで、垂下部102及び排水口部材2間をシールする。
【0046】
被挿通部22は、継手部材3の内周へ挿通される部位であり、その内周における下部には、突起状の内向突出部22Aと、窪み状の切欠凹部22Bとが、排水口部材2の周方向に沿って複数形成されている。内向突出部22A及び切欠凹部22Bは、排水口部材2の内周にアタッチメント部材4を取付けるために用いられる。
【0047】
さらに、排水口部材2は、被挿通部22の外周面に、外側に向けて突出する複数(例えば4つ)の係止凸部22Cを周方向に所定間隔を隔てて備えている。係止凸部22Cは、排水口部材2に対し継手部材3を取付けるために用いられる。
【0048】
継手部材3は、筒状をなし、浴槽100等から流れる排水の流路を構成する部分である。継手部材3は、硬質部材31及び第二硬質部材32と、これらを連結する軟質部材33とを備えている。硬質部材31及び軟質部材33は、浴槽100の下方に配置された防水パン110への接続部として機能し、第二硬質部材32は、排水口部材2に対する接続部として機能する。継手部材3についての詳細な説明、特に継手部材3のうち防水パン110への接続に係る部分についての詳細な説明は後述する。ここでは、継手部材3のうち排水口部材2への接続に係る部分(特に第二硬質部材32)を中心に説明する。
【0049】
第二硬質部材32は、鉛直方向に沿って延びる円筒状の本体管32Aと、当該本体管32Aから枝分かれした状態で延びる接続管32Bとを備えている。
【0050】
接続管32Bは、前記操作装置に流入した排水を流すための図示しない連結管が接続される部位である。接続管32Bは、本体管32Aの外周から斜め上向きに向けて突出形成され、自身の内部空間が本体管32Aの内部空間に連通している。そして、前記操作装置に流入した排水は、前記連結管及び接続管32Bを通って、本体管32A内へと案内されるようになっている。尚、本体管32A内に流入した排水は、硬質部材31や軟質部材33を通って下流側(例えば、排水トラップなどの側)へと流れていく。
【0051】
また、継手部材3は、自身の内周に排水口部材2の下側部分が挿通された状態で、当該排水口部材2に取付けられている。本実施形態における排水口部材2に対する継手部材3の取付手法は、特開2013−92012号公報に記載された取付手法とほぼ同様である。
【0052】
取付手法について説明すると、本体管32Aの上部内周面には、所定間隔を隔てて複数の(例えば4つの)ガイド部32Cが突出形成されている(図3参照)。ガイド部32C同士の間隔は、係止凸部22Cの挿通(通過)を許容する程度に十分に広く設定されている。
【0053】
ガイド部32Cは、その上端縁が本体管32Aの内周面に沿って水平方向に延びている。一方、ガイド部32Cの下端縁は、本体管32Aの内周面に沿って斜め下方に延びる傾斜部32Dと、当該傾斜部32Dに隣接するとともに本体管32Aの内周面に沿って水平方向に延び前記傾斜部32Dの最下部よりも上方に若干窪んだ形状をなす被係止窪み部32Eと、当該被係止窪み部32Eを挟んで傾斜部32Dとは反対側に位置し、被係止窪み部32Eよりも下方に突出した形状をなすストッパ部32Fとを備えている。
【0054】
排水口部材2に対し継手部材3を取付けるにあたっては、まず、Uパッキン7を底壁部101に取付けた上で、排水口104の裏側に継手部材3が配置されるように防水パン110上に浴槽100を設置する。その上で、継手部材3の内周に対し、排水口104を通して排水口部材2を挿通する。このとき、継手部材3の内周に設けられた各ガイド部32C間に、排水口部材2の係止凸部22Cが位置した状態とする。
【0055】
次いで、この状態から、例えば平面視時計回り方向に、排水口部材2を所定量(例えば略45°)だけ回動させる。これにより、各係止凸部22Cが前記傾斜部32Dに沿って移動しつつ下方に案内され、継手部材3のより奥側へと排水口部材2が入り込んでいく。
【0056】
そして、各係止凸部22Cが、被係止窪み部32Eに位置するとともに、前記ストッパ部32Fに接触し、排水口部材2のそれ以上の回動が規制された状態となることで、排水口部材2に対する継手部材3の取付が完了する。
【0057】
アタッチメント部材4は、排水口部材2及び継手部材3の内部、つまり、排水の流路にて支持軸機構5を保持するためのものである。アタッチメント部材4は、外筒部41、保持筒部42及びアーム部43を備えている。
【0058】
外筒部41は、円筒状をなしており、排水口部材2の内周面に沿って配置されている。また、外筒部41は、その外周に、外側に向けて突出する凸部41Aを備えている。凸部41Aは、外筒部41の周方向に沿って等間隔に複数設けられている。外筒部41における各凸部41Aに隣接する部位には切欠きが形成されており、その結果、各凸部41Aは外筒部41の径方向に沿って弾性変形可能となっている。
【0059】
保持筒部42は、外筒部41の内側におけるアタッチメント部材4の中心に配置されており、外筒部41と同心円状の円筒状をなしている。保持筒部42は、自身の内周において支持軸機構5を保持する部位である。
【0060】
アーム部43は、外筒部41の内周面と保持筒部42の外周面とを連結し、保持筒部42及びこれに保持された支持軸機構5を、排水口部材2及び継手部材3(すなわち、排水の流路)の中心に配置させる部位である。アーム部43は、保持筒部42の周方向に沿って間隔をあけて複数設けられており、排水口部材2に流入した排水は、アーム部43間の隙間を通って下流へと流れるようになっている。
【0061】
また、アタッチメント部材4は、排水口部材2の内周に挿通された状態で排水口部材2に取付けられている。詳述すると、凸部41Aが切欠凹部22Bに配置されるとともに、外筒部41における前記切欠きを形成する部位が内向突出部22Aに載置された状態となることで、排水口部材2に対しアタッチメント部材4が取付けられている。
【0062】
支持軸機構5は、栓蓋6を上下動させる機構である。支持軸機構5は、ケース部51及び支持軸52を備えている。
【0063】
ケース部51は、円筒状をなしており、支持軸52を内部に収容するものである。ケース部51は、保持筒部42の内部に設けられ、保持筒部42に対し上下方向に相対移動不能な状態とされている。尚、前記操作装置には、支持軸52を一定位置にて支持するためのロック機構(図示せず)が設けられている。
【0064】
支持軸52は、栓蓋6を支持する部位であり、その先端部が栓蓋6の背面に形成された筒状部位に嵌着されている。支持軸52の下端部は、前記操作部材の変位に伴い往復移動する伝達部材81(例えば、金属製のワイヤーなど)によって押し上げ可能となっている。尚、伝達部材81は、その外周に設けられた筒状のチューブ部材82内を往復移動可能に構成されており、前記操作部材の変位によりチューブ部材82内を往復移動する。
【0065】
前記操作部材の変位により伝達部材81が往動(前記操作装置側から排水口装置1側に移動)し、支持軸52が上昇すると、前記ロック機構により伝達部材81が往動した状態で支持され、支持軸52はその上昇端よりも若干下方の位置にてロックされる。この状態で、前記操作部材を再度変位させ伝達部材81が往動すると、前記ロック機構による伝達部材81の支持が解除され、図示しない戻りばね(例えば、ケース部51内に設けられる)などの力によって、支持軸52が下降する。このように、本実施形態では、前記操作部材の変位に伴い、ほぼ上昇端の位置における支持軸52のロックと、ロック解除に伴う支持軸52の下降とが交互に行われるようになっている。
【0066】
栓蓋6は、支持軸52とともに上下動することで、排水口104を開閉するためのものである。栓蓋6は、樹脂等からなる円板状の栓蓋本体部61と、当該栓蓋本体部61に取付けられたパッキン部62とを備えている。パッキン部62は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)によって環状に形成されており、栓蓋本体部61の背面の外周寄りに設けられた、外側に開口する凹部に対し嵌め込まれた状態とされている。
【0067】
本実施形態では、支持軸52の上動に伴い栓蓋6が上動し、パッキン部62が排水口部材2から離間することで、排水口104(排水の流路)が開状態とされる(図2参照)。一方、支持軸52の下動に伴い栓蓋6が下動し、パッキン部62の外周部分全域が排水口部材2(本実施形態では、内周のテーパ状部分)に接触することで、排水口104(排水の流路)が閉状態とされる。本実施形態では、前記操作部材を操作する度に栓蓋6の上昇・下降(排水口104の開閉)が交互に行われる。
【0068】
Uパッキン7は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)により環状に形成されている。Uパッキン7は、鍔部21及び継手部材3の一端面によって、底壁部101(内鍔部103)とともに挟み込まれた状態とされており、排水口部材2及び継手部材3と浴槽100との間からの漏水防止を図るためのものである。Uパッキン7は、断面U字状をなしており、内側の空間に底壁部101(内鍔部103)が嵌め込まれた状態となっている。
【0069】
また、Uパッキン7は、底壁部101に向けて膨出する膨出部71を備えている。膨出部71は、Uパッキン7の内側空間に対し底壁部101(内鍔部103)が配置された状態になると、底壁部101(内鍔部103)に接触して潰れ変形した状態となる。従って、底壁部101(内鍔部103)の厚さが変動した場合であっても、配置後のUパッキン7の厚さを一定とすることができる。これにより、本実施形態のように、排水口部材2と継手部材3とが取付けられた状態において、鍔部21及び継手部材3の一端面間の距離が常に一定となる場合であっても、鍔部21及び継手部材3の一端面によってUパッキン7及び底壁部101(内鍔部103)をより確実に挟み込むことが可能となる。その結果、良好な水密性を確保することができるようになっている。
【0070】
次いで、防水パン110及び継手部材3を備えてなる継手部材の接続構造91について説明する。まず、防水パン110について説明する。
【0071】
防水パン110は、浴槽100の下方にて広がる浅い槽状をなしており、漏水防止や保温機能向上のために設けられている。防水パン110には、上下方向に貫通する排水口111が設けられている。防水パン110のうち排水口111を形成する部位である排水口形成部112は、上方が比較的小さな内径を有する一方、下方が比較的大きな内径を有するように構成されている。そして、排水口形成部112における小径部分と大径部分との間には、段差状の掛かり部113が形成されている。
【0072】
尚、排水口形成部112を構成する筒状部材を、防水パン110の本体部とは別体で設け、前記本体部に形成された貫通孔に対し前記筒状部材を挿設する(例えば、螺合する)ことで、排水口111や掛かり部113を備えた防水パン110を構成してもよい。
【0073】
次に、継手部材3のうち防水パン110への接続に係る部分の構成、及び、継手部材3を構成する各部材31〜33の連結に係る構成を中心に説明する。まず、硬質部材31について説明し、次いで、軟質部材33及び第二硬質部材32をこの順序で説明する。
【0074】
硬質部材31は、比較的硬質の樹脂などにより形成されており、図3及び図4に示すように、硬質筒状部311と、当該硬質筒状部311の一端部に設けられた硬質鍔状部312とを備えている。
【0075】
硬質筒状部311は、円筒状をなしており、排水口111に対し挿設される部位である。硬質筒状部311の他端部(下部)には、外側に向けて突出する爪部311Aが設けられている。爪部311Aは、硬質筒状部311の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では、4つ)設けられている。
【0076】
本実施形態では、硬質筒状部311における爪部311Aを挟む位置に、硬質筒状部311の軸方向に延びるスリット311Bが設けられている。そして、硬質筒状部311のうちスリット311Bで挟まれた、爪部311Aの存在する部分が内外方向に弾性変形することで、爪部311Aが内外方向に弾性変形可能となっている。
【0077】
また、硬質筒状部311の外側面には、環状の溝である収容溝部311Cが設けられている。硬質筒状部311の径方向に沿った収容溝部311Cの深さは、後述する軟質筒状部331の厚さよりも若干だけ小さい程度に設定されている。また、硬質筒状部311の軸方向に沿った収容溝部311Cの長さは、後述する軟質筒状部331の内面の長さよりも若干だけ大きい程度に設定されている。すなわち、収容溝部311Cは、軟質筒状部331に対応する形状をなしている。
【0078】
さらに、硬質筒状部311のうち収容溝部311Cよりも下方に位置する部位の外径は、硬質筒状部311の他端部(爪部311Aや次述する傾斜部311Dの位置する部位)を除いて、軟質筒状部331の外径とほぼ同一となるように構成されている。また、硬質筒状部311の他端部(下端部)には、最他端(下方)に向けて徐々に外径が小さくなる傾斜部311Dが設けられている。
【0079】
硬質鍔状部312は、硬質筒状部311の一端部から外側に向けて突出する鍔状をなしている。本実施形態において、硬質鍔状部312の外径は、第二硬質部材32における他端部(下部)の内径よりも大きなものとされている。
【0080】
軟質部材33は、硬質部材31を構成する材料よりも軟質の材料(例えば、軟質樹脂やゴムなど)によって形成されており、軟質筒状部331と、当該軟質筒状部331の一端部に設けられた軟質鍔状部332と、軟質連結部333とを備えている。
【0081】
軟質筒状部331は、硬質筒状部311よりも短い円筒状をなしており、排水口111に対し挿設される部位である。軟質筒状部331の他端側外側面には、軟質筒状部331の最他端(最下部)に向けて徐々に細くなる形状をなすテーパ部331Aが設けられている。
【0082】
また、軟質筒状部331の外側面上側には、外側に突出する環状の突条部331Bが設けられている。突条部331Bは、断面視したときに、全体的にやや上側に反った突起状をなしている。
【0083】
さらに、軟質筒状部331の外側面であって、突条部331Bに対し軟質鍔状部332側にて隣接する部位には、凹部331Cが設けられている。凹部331Cは、突条部331Bの全周に対応して設けられることで環状をなしている。
【0084】
軟質鍔状部332は、軟質筒状部331の一端部から外側に向けて突出する鍔状をなしている。
【0085】
軟質連結部333は、筒状をなしており、第二硬質部材32が直列的に連結される部位である。軟質連結部333は、軟質鍔状部332の外周部分に連続しており、軟質鍔状部332に対する軟質筒状部331の突出方向とは反対方向に向けて、軟質鍔状部332から突出している。つまり、軟質連結部333は、軟質鍔状部332の外周部分から上方に向けて延びている。
【0086】
軟質連結部333の上部内面には、第二硬質部材32を連結するための連結用溝部333Aが設けられている。連結用溝部333Aは、軟質連結部333の上部を断面コ字状に形成することで設けられている。
【0087】
また、軟質連結部333は、軟質鍔状部332及び連結用溝部333A間に、軟質連結部333の軸方向に沿って伸縮変形可能な蛇腹部333Bを備えている。蛇腹部333Bは、外側に向けて膨出する形状をなしており、圧縮変形した際には、外側に向けて突出するように変形する(図6参照)。
【0088】
第二硬質部材32は、硬質部材31と同様に、比較的硬質の樹脂などによって形成されている。第二硬質部材32の他端側外側面には、外側に向けて突出する連結用鍔部321が設けられている。
【0089】
このように構成された硬質部材31、軟質部材33及び第二硬質部材32は、この順序で直列的にかつ同軸状に連結されている。より詳しくは、軟質鍔状部332及び硬質鍔状部312が相対向するとともに、軟質筒状部331に対し当該軟質筒状部331の他端部から突出した状態で硬質筒状部311が挿設された状態となることで、軟質部材33及び硬質部材31が組合わされ、軟質部材33及び硬質部材31が連結された状態となっている。この連結された状態において、軟質筒状部331は、収容溝部311Cに配置された状態となっており、また、爪部311Aは、軟質筒状部331の他端部から下方に突出(露出)した状態となっている。さらに、スリット311Bの最上部は、軟質筒状部331の他端部から下方に突出(露出)した状態となっている。すなわち、硬質部材31のうち爪部311Aが弾性変形した際に撓み変形する部分は、硬質筒状部311における軟質筒状部331の他端部から突出した部位のみに設けられている。
【0090】
加えて、軟質部材33及び第二硬質部材32は、連結用溝部333Aに対し連結用鍔部321が嵌合されることで連結されている。軟質部材33及び第二硬質部材32を連結した状態においては、第二硬質部材32の他端部(下端部)及び硬質鍔状部312間に蛇腹部333Bが位置する状態となっている。ここで、上記の通り、硬質筒状部311の外径は第二硬質部材32の他端部の内径よりも大きく、また、蛇腹部333Bは、圧縮変形した際に外側に向けて突出するように変形する。そのため、硬質部材31側に向けて第二硬質部材32を押圧し、蛇腹部333Bを圧縮変形させた状態としたとき、第二硬質部材32の他端部が硬質鍔状部312に対し軟質部材33を介することなく直接接触するようになっている。
【0091】
さらに、継手部材3は、排水口111へと挿通された状態となることで、排水口形成部112へと接続されている。詳述すると、排水口111に対し硬質筒状部311及び軟質筒状部331が挿通されるとともに、掛かり部113よりも奥(下方)に爪部311Aが配置され、排水口111からの継手部材3の抜けが防止された状態となることによって、排水口形成部112に対し継手部材3が接続されている。排水口形成部112に対し継手部材3を接続した状態において、軟質鍔状部332は、硬質鍔状部312及び防水パン110間に配置され、軟質筒状部331は、硬質筒状部311及び排水口形成部112間に配置された状態となる。そして、少なくとも軟質筒状部331が、硬質筒状部311及び排水口形成部112で挟み込まれた状態(挟圧された状態)となっている。尚、本実施形態では、軟質鍔状部332も、硬質鍔状部312及び防水パン110で挟み込まれた状態となるように設計されている。
【0092】
次いで、防水パン110(排水口形成部112)に対する継手部材3の接続方法について説明する。防水パン110(排水口形成部112)に対する継手部材3の接続工程は、挿通工程を含む。尚、防水パン110(排水口形成部112)に対する継手部材3の接続は、防水パン110の上方に浴槽100が設置されていない状態で行われる。
【0093】
挿通工程では、図5に示すように、まず、硬質筒状部311のうち爪部311Aよりも下部に位置する部位(他端側部位)を排水口111へと挿通する。このとき、硬質筒状部311の他端部(下端部)には傾斜部311Dが設けられているため、排水口111に対し硬質筒状部311の他端側部位を容易に挿通することができる。
【0094】
次いで、図6に示すように、第二硬質部材32を例えば手の平などによって下方に向けて押圧する。これにより、排水口形成部112への接触に伴い爪部311Aが内側に弾性変形した状態で、排水口111へと軟質筒状部331及び硬質筒状部311が挿通されていく。挿通時には、第二硬質部材32が硬質鍔状部312へと直接接触した状態となる。また、挿通時には、突条部331Bに隣接して設けられた凹部331Cの存在により、排水口形成部112に接触した突条部331Bが凹部331C側に向けて変形する。
【0095】
そして、排水口111に対する軟質筒状部331及び硬質筒状部311の挿通が進み、掛かり部113よりも奥(下方)に爪部311Aが配置されると、爪部311Aの弾性変形が解除され、排水口形成部112に対し継手部材3が接続された状態となる。本実施形態では、排水口111に対し軟質筒状部331及び硬質筒状部311をある程度勢いよく押し込むことで、爪部311Aにおける弾性変形の解除を勢いよく生じさせることができ、ひいては音や衝撃を発生させることができるようになっている。
【0096】
以上詳述したように、本実施形態によれば、爪部311Aを内側に弾性変形させつつ排水口111に対し両筒状部311,331を挿通していき、掛かり部113よりも奥(下方)に爪部311Aが配置された状態となったときに爪部311Aの弾性変形が解除されることで、排水口形成部112に継手部材3が接続される。すなわち、スナップフィット(材料の弾性を利用した取付手法)により、排水口形成部112に対し継手部材3が接続される。ここで、接続時には、硬質筒状部311の存在により、排水口111に対する継手部材3(両筒状部311,331)の挿通途中で継手部材3が変形するといった事態は生じにくくなり、排水口111に対し継手部材3を容易に挿入することができる。また、排水口111に対し継手部材3を単に挿通すればよく、工具を使った面倒で手間のかかる作業を行う必要はない。さらに、爪部311Aにおける弾性変形の解除に伴い音や衝撃を生じさせることで、作業者において、継手部材3が適切な状態で接続されたか否かを容易に判断可能とすることができる。これらの結果、継手部材3の接続に係る作業を非常に容易なものとすることができ、作業性を飛躍的に向上させることができる。
【0097】
さらに、排水口形成部112に対し継手部材3を接続した状態では、少なくとも軟質筒状部331が排水口形成部112及び硬質筒状部311で挟み込まれた(力を加えられつつ挟まれた)状態とされる。すなわち、接続完了後における排水口111への挿通方向に沿った継手部材3の位置によっては、十分に挟み込まれないおそれのある軟質鍔状部332ではなく、前記挿通方向に沿った継手部材3の位置が多少変動したとしても、十分に挟み込み可能な軟質筒状部331を挟み込みの対象としている。従って、継手部材3及び防水パン110間において、良好な止水性をより確実に確保することができる。
【0098】
尚、本実施形態では、軟質筒状部331に加えて、軟質鍔状部332も挟み込まれるように設計されている。軟質筒状部331及び軟質鍔状部332の双方が挟み込まれることにより、止水部分を2箇所設けることができ、非常に優れた止水性を実現することができる。尚、仮に接続完了後における継手部材3の位置が設計上の位置からずれたとしても、軟質筒状部331によって良好な止水性が担保されることとなる。
【0099】
また、軟質筒状部331は、硬質筒状部311の外側面に設けられた収容溝部311Cに配置された状態となっている。従って、いわば軟質筒状部331の他端面の少なくとも一部を硬質筒状部311で覆った状態とすることができる。これにより、排水口111に対し両筒状部311,331を挿通する際に、軟質筒状部331の他端部が防水パン110に引っ掛かりにくくなる。その結果、継手部材3の接続に係る作業を一段と容易なものとすることができる。さらに、硬質筒状部311から軟質筒状部331が外れにくくなり、硬質部材31及び軟質部材33の取付安定性を高めることができる。
【0100】
さらに、軟質筒状部331の他端側外側面にはテーパ部331Aが設けられているため、排水口111に対し両筒状部311,331を挿通する際に、軟質筒状部331の他端部が防水パン110に対しより引っ掛かりにくいものとなる。これにより、継手部材3の接続に係る作業をより容易なものとすることができる。
【0101】
加えて、蛇腹部333Bが伸縮変形することで、継手部材3の高さを変動させることができる。これにより、防水パン110に対する浴槽100の高さが変動した場合であっても、継手部材3(第二硬質部材32)を排水口部材2に対しより確実に接続することができる。これにより、継手部材3の汎用性をより高めることができ、製造等に関するコストの低減を図ることができる。
【0102】
また、比較的硬質の第二硬質部材32を排水口111側へと押し込むことで、排水口111に対し両筒状部311,331を挿通することができる。従って、軟質部材33を押し込む場合と比較して、継手部材3の接続をより容易に行うことができる。
【0103】
さらに、第二硬質部材32を排水口111側へと押し込み、蛇腹部333Bを圧縮変形させたときに、第二硬質部材32の他端部を硬質鍔状部312へと直接接触させることができる。従って、第二硬質部材32を押し込む際に、第二硬質部材32を安定した状態で押し込むことができ、作業性をより一層向上させることができる。また、第二硬質部材32へと加えられた押込力を硬質部材31や軟質部材33へとより確実に伝達することができ、排水口111に対し両筒状部311,331をより容易に挿通することができる。
【0104】
加えて、硬質部材31のうち爪部311Aが弾性変形する際に撓み変形する部分は、硬質筒状部311における軟質筒状部331から突出した部位のみに設けられている。すなわち、硬質筒状部311のうち排水口形成部112との間で軟質筒状部331を挟み込む部位は、爪部311Aが弾性変形する際に撓み変形することはない。従って、硬質筒状部311及び排水口形成部112によって軟質筒状部331をより確実に挟み込むことができる。その結果、止水性の更なる向上を図ることができる。
【0105】
併せて、硬質筒状部311及び排水口形成部112で軟質筒状部331を挟み込んだ状態としたときには、突条部331Bを排水口形成部112へと押付けることができる。そのため、排水口形成部112に対し軟質筒状部331を線接触に近い状態で接触させることができ、排水口形成部112に対する軟質筒状部331の接触圧力を増大させることができる。これにより、止水性をさらに良好なものとすることができる。
【0106】
また、両筒状部311,331を排水口111に挿通していく際に、突条部331Bが凹部331C側に向けて撓むようにして変形可能とされている。従って、筒状部311,331を排水口111に挿通する際に、突条部331Bと排水口形成部112との間で生じる抵抗を軽減することができる。その結果、継手部材3の接続に係る作業をより一層容易なものとすることができ、作業性の更なる向上を図ることができる。
【0107】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0108】
(a)上記実施形態で挙げた、排水口部材2、アタッチメント部材4、支持軸機構5及び栓蓋6などの構成は一例であり、これらの構成は適宜変更可能である。また、排水口部材2及び継手部材3の接続手法などについても適宜変更可能である。
【0109】
(b)上記実施形態において、第二硬質部材32の本体管32Aと軟質部材33のうち排水口110に挿通されていない部位とは一直線上に延びる形状をなしているが、これらの形状を変更してもよい。例えば、軟質部材が直角に曲がる部位などを備えるものであってもよい。
【0110】
(c)上記実施形態において、排水口装置1は、排水口104を開閉するための栓蓋6や栓蓋6を上下動させるための支持軸機構5を備えているが、栓蓋6や支持軸機構5を設けなくてもよい。勿論、支持軸機構5等を設けない場合には、支持軸機構5を保持するためのアタッチメント部材4や支持軸52を上下動させるための部材(例えば、伝達部材81など)は不要である。
【0111】
(d)上記実施形態では、栓蓋6(パッキン部62)が排水口部材2に接触することで、排水口104が閉鎖されるように構成されているが、栓蓋6(パッキン部62)が底壁部101に接触することで、排水口104が閉鎖されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0112】
3…継手部材、31…硬質部材、32…第二硬質部材、33…軟質部材、91…接続構造、110…防水パン、111…(防水パンの)排水口、112…排水口形成部、113…掛かり部、311…硬質筒状部、311A…爪部、311C…収容溝部、312…硬質鍔状部、331…軟質筒状部、331A…テーパ部、331B…突条部、331C…凹部、332…軟質鍔状部、333…軟質連結部、333B…蛇腹部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6