【実施例】
【0129】
実施例1:抗マウス/ヒトMyl9モノクローナル抗体の作製
マウス抗マウス/ヒトMyl9モノクローナル抗体の作製
マウスMyl9(Genbank Accession No.NP_742116.1、配列番号1)とヒトMyl9(Genbank Accession No.NP_006088.2、配列番号2)に対するモノクローナル抗体を作製するため、マウスMyl9とヒトMyl9に共通するN末端の配列(1〜27位)のC末端にシステイン(Cys)を付加したもの(以下、マウス/ヒトMyl9ペプチドという)(配列番号3)にスカシガイヘモシアニン(KLH)を融合したタンパク質(以下、「マウス/ヒトMyl9ペプチド−KLH」という)を以下の工程により調製した。マウスMyl9とヒトMyl9の配列の比較を
図1−1Aに示す。
【0130】
まず、マウス/ヒトMyl9ペプチド(配列番号3)を株式会社東レリサーチセンターに依頼して合成し、Imject Maleimide−Activated mcKLH Spin Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて、マウス/ヒトMyl9ペプチド−KLHを作製した。
【0131】
10μgのマウス/ヒトMyl9ペプチド−KLHを、同量のGERBUアジュバント(GERBU Biotechnik GmbH)と混合し、C57BL/6Jマウスの足蹠へ皮下注射した。その後、3、7、および10日目に同様にマウス/ヒトMyl9ペプチド−KLHを投与した。このとき、GERBUアジュバント(GERBU Biotechnik GmbH)は3および10日目に使用した。13日目にマウスを屠殺し(sacrificed)、末梢リンパ節を回収してリンパ節細胞を調製した。GenomeONE−CF(Ishihara Sangyo Kaisha,Ltd.)の存在下で、調製したリンパ節細胞とP3U1ミエローマ細胞(京都大学、清水淳先生より分与)とを5:1の割合で融合した。前記融合細胞は、96ウェルプラスチックプレートで培養した。7日間のインキュベーション(5%CO
2、37°C)の後、培養上清を回収した。
【0132】
得られた培養上清を用いて、マウス/ヒトMyl9ペプチドに対する反応性、ならびに、マウスCD69細胞外領域タンパク質とマウスMyl9との結合に対する阻害活性を有するウェルをピックアップした。
【0133】
マウス/ヒトMyl9ペプチドに対する反応性は、マウス/ヒトMyl9ペプチド(配列番号3)に対して、ウシ血清アルブミン(BSA)を融合したタンパク質(以下、マウス/ヒトMyl9ペプチド−BSA)を用い、ELISAにて評価した。
【0134】
マウス/ヒトMyl9ペプチド(配列番号3)を株式会社東レリサーチセンターに依頼して合成し、Imject Maleimide−Activated BSA Spin Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて、マウス/ヒトMyl9ペプチド−BSAを作製した。
【0135】
FlagタグをN末端に付加したマウスCD69細胞外領域タンパク質(62〜199位)(配列番号4)(以下、3xFlag−マウスCD69EC)をコードするプラスミドは千葉大学より分与され、ExpiFectamine 293 Transfection Kit(Thermo Fisher Scientific/Gibco)を用いてExpi293F細胞(Invitrogen/LifeTechnologies)へ形質移入した。4日間のインキュベーション(8%CO2、37°C)の後、培養上清を回収した。回収した培養上清より、3xFlag−マウスCD69ECを、Anti−Flag M2 Affinity Gel(SIGMA)を用いて精製した。精製後、PNGase F(New England BioLabs)を用いて糖鎖切断処理を行った。
【0136】
グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)−His−マウスMyl9(以下GST−HisマウスMyl9)は、千葉大学より分与されたプラスミドを大腸菌BL21−Gold(DE3)pLys(Agilent Technologies)に発現させ、Glutathione Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)にて精製を行った。
【0137】
マウス/ヒトMyl9ペプチド−BSAを用いたELISAは、以下の工程に従って行った。マウス/ヒトMyl9ペプチド−BSAを、96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、ウェルに前記融合細胞の培養上清を添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Loboratories)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer)により450nmの吸光度を読み取った。
【0138】
マウスCD69細胞外領域タンパク質とマウスMyl9との結合に対する阻害活性の評価は、以下の工程に従って行った。GST−His−マウスMyl9を、96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、ウェルに前記融合細胞の培養上清を添加した。室温にて1時間インキュベートした。ウェルに糖鎖切断処理を行った3xFlag−マウスCD69ECを添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗Flag抗体(SIGMA)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer)により450nmの吸光度を読み取った。
【0139】
上記工程を経てピックアップしたウェルより限界希釈法にてハイブリドーマをクローニングし、最終的にマウス/ヒトMyl9ペプチドに対する反応活性を有し、かつ、マウスCD69細胞外領域タンパク質とマウスMyl9との結合に対する阻害活性を有するマウス抗マウス/ヒトMyl9抗体を発現するハイブリドーマクローンを得た。
【0140】
得られたハイブリドーマクローンを培養し、培養上清からProtein A(GE Healthcare)を用いて抗マウス/ヒトMyl9抗体(「抗体A」(「mAb A」と記載することもある。))を精製した。抗体Aのアイソタイプは、モノクローナル抗体アイソタイピングキット(Serotec)にて決定し、IgG2c、κであった。
【0141】
抗体Aのマウス/ヒトMyl9タンパク質に対する結合能の解析
抗体Aのマウス、ヒトMyl9に対する結合能をELISAにて評価した。以下の工程に従って、マウスMyl3(Genbank Accession No.NP_034989.1、配列番号5)、マウスMyl9、ヒトMyl3(Genbank Accession No.NP_000249.1、配列番号6)、ヒトMyl9の各C末端にヒスチジンタグを結合したタンパク質(以下、それぞれマウスMyl3−His、マウスMyl9−His、ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−Hisという)を作製した。マウスMyl3とヒトMyl3(
図1−1B)、マウスMyl3とマウスMyl9(
図1−2C)、ヒトMyl3とヒトMyl9(
図1−2D)のアミノ酸配列の比較を示す。
【0142】
マウスMyl3とマウスMyl9タンパク質をコードする遺伝子は千葉大学より分与された。ヒトMyl3、ヒトMyl9タンパク質をコードする遺伝子は、ヒトの心臓のcDNAよりPCRにて増幅した。これらの遺伝子を、PreScission Protease(GE Healthcare)の切断配列をコードする遺伝子を挿入したpET42bベクター(Merck)のBglII/BamHIサイトに挿入した。作製したベクターを大腸菌株BL21−Gold(DE3)pLys(Agilent Technologies)に形質転換し、GSTタグのついたマウスMyl3−His、マウスMyl9−His、ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−Hisを発現させた。発現させたタンパク質をGlutathione Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)にて精製し、PreScission ProteaseにてGSTタグを切断し、TALON Superflow Metal Affinity Resin(CLONTECH)にてマウスMyl3−His、マウスMyl9−His、ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−Hisを精製した。
【0143】
マウス/ヒトMyl9に対する結合能は以下の工程に従ってELISAにて評価した。マウスMyl3−His、マウスMyl9−His、ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−Hisを、96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、抗体Aを10μg/mLの濃度から4倍ずつ10段階希釈して、ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Loboratories)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer)により450nmの吸光度を読み取った。
【0144】
抗体AはマウスおよびヒトMyl9への濃度依存的な結合を示し、マウスおよびヒトMyl9とは相同性の低いマウスおよびヒトMyl3には結合しなかった(
図2)。
【0145】
抗体AのマウスCD69細胞外領域タンパク質とマウスMyl9との結合に対する阻害活性の評価
抗体AのマウスCD69細胞外領域タンパク質とマウスMyl9との結合に対する阻害活性の評価を競合ELISAにて行った。まず、マウスCD69細胞外領域タンパク質とマウスMyl9タンパク質の作製を行った。
【0146】
具体的には、骨髄、心筋組織のcDNAよりマウスMyl3、Myl9各々をクローニングし、pET42bベクター(メルク社)のマルチクローニングサイトへ挿入した。作成した発現ベクターをRosettaコンピテントセル(メルク社)にトランスフォーメーションし、発現ベクターを有するクローンを選抜した。カナマイシン含む500mLのLB溶液に事前培養を行った各クローン培養液を加え、37℃の浸透器で培養した。OD600=0.4で終濃度1mMのIPTG(ナカライ社)を加え3時間37℃でマウスMyl3、Myl9タンパク質の発現誘導を行った。3時間後に遠心により集菌し、溶解バッファー[Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl]で溶解後、氷上で冷やしながらソニケーターにより破砕した。遠心により不溶性画分を取り除き、0.45μmのフィルター(コーニング社)に通した後、Ni−NTAビーズ(QIAGEN)を充填したカラムで精製を行った。洗浄バッファー[Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl、10mM Imidazole]でビーズを洗浄後、溶出バッファー[Tris−HCl(pH8.0)、150mM NaCl、500mM Imidazole]で結合タンパクの溶出を行った。得られたGST−His−マウスMyl3、GST−His−マウスMyl9タンパク質はPD10(GE Healthcare)を用いてPBSに溶液置換した。精製タンパク質の濃度測定にはBradford溶液(BIO―RAD)を用いた。
【0147】
次に、マウスMyl9とマウスCD69の会合の有無を解析する為に、ELISAを行った(
図3A、3B)。具体的には、GST−His−マウスMyl3タンパク質、およびGST−His−マウスMyl9タンパク質を5μg/mLの濃度で加え、4℃で一晩培養することによりELISAプレートに固相化した。翌日にBlock Ace(大日本住友製薬)を用いて室温1時間でブロッキングした後、洗浄バッファー(50mM HEPES(pH6.5)、150mM NaCl、0.02% Tween20)で3回洗浄した。3xFlag マウスCD69ECタンパク質の濃度をふって各ウェルに加え、室温で1時間30分反応させた。
図3BではPNGase F(NEB)を用いてN型糖鎖を切断した3xFlag マウスCD69ECタンパク質を用いた。N型糖鎖切断処理は、4μgの3xFlag マウスCD69ECタンパク質に対し、1,000UのPNGase Fを用いて行った。洗浄バッファーで3回洗浄した後、HRP標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)を加え、室温で1時間反応させた後、洗浄バッファーで5回洗浄した。発色基質は、TMB溶液(BIO−RAD)を使用し、1N H
2SO
4を用いて反応を止めた。SpectraMAX Paradigm(Molecular Device)を用いて450nmの値を計測した。
【0148】
図3A、3Bで示したように、マウスCD69のマウスMyl9に対する濃度依存的な結合が有意に検出された。
【0149】
抗体AのマウスCD69細胞外領域タンパク質とマウスMyl9との結合に対する阻害活性の評価のため、競合ELISAを行った。具体的には、グルタチオンコートプレート(Thermo)に、GSTタンパク質(Abcam)、GST−His−マウスMyl9タンパク質を加えることで固相化した。Block Aceで各ウェルを室温1時間でブロッキングした後、洗浄バッファー(PBS、0.02% Tween20)で3回洗浄した。抗体A、抗Myl9/12ポリクローナル抗体を
図3Cに記載されている濃度で加え、室温で1時間反応させた。PNGase F処理した3xFlag マウスCD69ECタンパク質を加え、4℃で一晩反応させ、洗浄バッファーで3回洗浄した。HRP標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)を加え、室温で1時間反応させた後、洗浄バッファーで5回洗浄した。発色基質は、TMB溶液(BIO−RAD)を使用し、1N H
2SO
4を用いて反応を止めた。SpectraMAX Paradigm(Molecular Device)を用いて450nmの値を計測した。
【0150】
図3Cで示したように、マウスCD69とマウスMyl9との結合は、抗体Aの存在下において、濃度依存的に有意に阻害された。この阻害活性は、抗Myl9/12ポリクローナル抗体よりも高い傾向にあった。
【0151】
抗体Aの配列解析
抗体Aの重鎖および軽鎖のシグナル配列、および可変領域をコードするDNA配列を、5’−RACE(5’−rapid amplification of cDNA ends)法によって増幅した。前記ハイブリドーマから、RNeasy Mini kit(QIAGEN)を用いて全RNAを調製し、DNase(QIAGEN,RNase free DNase set)で処理した。cDNA合成キット(TAKARA)を用いて、前記全RNAから二本鎖cDNAを調製した。オリゴDNA ad29S(ACATCACTCCGT)(配列番号7)およびオリゴDNA ad29AS(ACGGAGTGATGTCCGTCGACGTATCTCTGCGTTGATACTTCAGCGTAGCT)(配列番号8)のアニーリングによって得られた5’アダプターを前記cDNAに付加した。得られたcDNAを、5’フォワードプライマー(5’−PCR4 primer,AGCTACGCTGAAGTATCAACGCAGAG) (配列番号9)および3’リバースプライマー(マウスIgG重鎖の増幅にはGCCAGTGGATAGACTGATGG(配列番号10)を用い、マウスIgκ軽鎖の増幅にはGATGGATACAGTTGGTGCAGC(配列番号11)を用いた)によって増幅した。増幅されたcDNAを、pCR2.1ベクター(Invitrogen/LifeTechnologies)に挿入した。抗体Aの遺伝子配列を、ABI3130XLを用いて解析した(配列番号12〜19)。
【0152】
抗体Aの重鎖および軽鎖の全長配列は、以下の工程により取得した。前記ハイブリドーマから、RNeasy Mini kit(QIAGEN)を用いて全RNAを調製し、DNase(QIAGEN, RNase free DNase set)で処理した。cDNA合成キット(TAKARA)を用いて、前記全RNAからcDNAを調製した。得られたcDNAを鋳型に用い、抗体Aの重鎖および軽鎖をコードする遺伝子配列を5‘フォワードプライマー(重鎖の増幅にはGCGAAGCTTGCCGCCACCATGGAATGGAGCTGGGTCTTTC(配列番号20)を使用し、軽鎖の増幅にはGCGAAGCTTGCCGCCACCATGAAGTTGCCTGTTAGGCTG(配列番号21)を使用した)と3’リバースプライマー(重鎖の増幅にはGCGGAATTCATCATTTACCCAGAGACCGGGAGATGG(配列番号22)を使用し、軽鎖の増幅にはGCGGAATTCACTAACACTCATTCCTGTTGAAGCTCTTGAC(配列番号23)を使用した)を用いて、PCRにて増幅し、pEE6.4、およびpEE12.4ベクター(Lonza)にそれぞれクローニングした。遺伝子配列を、ABI3130XLを用いて解析した(配列番号12〜19、24〜27)。
【0153】
抗体AのCDRは、抗体Aのアミノ酸配列をKabatの番号付システム(Kabat numbering system)に従い、Abysisソフトフェア(UCLからのライセンス)を用いて番号付けし、この番号を基に、CDRの同定のためのKabatの定義(Kabat definition)、または、AbMの定義法(AbM definition method)に従って決定した(配列番号28〜43)。
【0154】
実施例2:抗体AのOVA誘導性のマウス気道炎症モデルでの薬効評価
アレルギー性気道炎症に対する、精製マウス抗マウス/ヒトMyl9抗体(抗体A)のin vivo投与における効果を、OVA誘導性の気道炎症モデルを用いて検証した。
【0155】
まず、気道炎症時に誘導される気管支周囲への細胞浸潤に対する、抗体A投与による抑制効果について検討した。具体的には、野生型のBALB/cマウスに、卵白アルブミン(OVA)100μg/マウス(SIGMA)をアラム4mg/マウス(Thermo)と共に腹腔内投与して免疫した。一回目の投与日を0日目とし、二回目の投与は7日目に行った。14日目と、16日目に、1%OVA溶液(10mg/mL 生理食塩水)を、超音波式ネブライザー(Omron)を用いて30分間噴霧吸引させることで、気道炎症を誘導した(OVA inhalation)。コントロール群として、OVAを吸引させないものを用意した(No inhalation)。抗体A、もしくはコントロールのマウスIgG2a,κ抗体(BioLegend)は、13日目と15日目にそれぞれ100μgを腹腔内投与した。18日目にマウス肺を摘出し、10%ホルマリン溶液で固定後、パラフィン包埋し、組織切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色(H&E染色)、並びにPAS(Periodic Acid−Schiff)染色を行った(
図4−1A)。
【0156】
図4−1Aに示すように、OVAを吸引したコントロール抗体投与群では、気管支周囲に激しい細胞の浸潤が見られるが、OVAを吸引した抗体A投与群では、細胞浸潤が顕著に抑制された(
図4−1A上段)。また、OVAを吸引したコントロール抗体投与群では、気管支内部にPAS染色陽性粘液の産生が見られるが、OVAを吸引した抗体A投与群では、粘液産生も顕著に抑制された(
図4−1A下段)。
【0157】
次に、気道炎症を誘発後17日目に肺胞洗浄を行い、肺胞洗浄液 (Bronchoalveolar lavage fluid:BALF)中に見られる浸潤細胞数と、浸潤細胞種について、抗体A投与群、コントロール抗体投与群の間で比較した。肺胞洗浄は、マウスにペントバルタールNa(70−90mg/kg)を腹腔内投与して麻酔した後、気道を切開してカニューレ(Becton Dickinson)を挿管し、生理食塩水(大塚製薬)を肺に注入して細胞を回収することにより行った。回収した細胞は細胞数を計測した(全細胞)。またウシ胎仔血清(FCS)で懸濁し、サイトスピン3(Thermo Fisher Scientific)を用いてスライドガラスに貼り付けた。メイ グリュンワルド ギムザ (May−Gruenwald Giemsa)(MERCK)試薬を用いて染色を行い、細胞を形態学的基準によって好酸球、好中球、リンパ球、マクロファージに識別した。
【0158】
図4−1Bに示すように、抗体A投与群では、コントロール抗体投与群に比較して、全浸潤細胞数は有意に減少し、好酸球、好中球、リンパ球、マクロファージの各種細胞数も有意に減少していた。
【0159】
次に、回収した肺胞洗浄液中に含まれる各種サイトカイン(IL−4、IL−5、IL−6、IL−13、RANTES)について、抗体A投与群、コントロール抗体投与群の間で比較した。測定には、Cytometric Bead Array(BD Biosciences)を使用した。
【0160】
図4−1Cに示すように、抗体A投与群では、コントロール抗体投与群に比較して、いずれのサイトカイン(IL−4、IL−5、IL−6、IL−13、RANTES)産生も低下していた。
【0161】
次に、気道炎症誘発後17日目におけるメサコリン誘導性の気道抵抗値について、抗体A投与群(
図4−2D)、抗Myl9/12ポリクローナル抗体投与群(
図4−2E)、並びにコントロール抗体投与群の間で比較した。
【0162】
図4−2Dに示すように、コントロール抗体投与群では、メサコリン濃度依存的に気道抵抗値が上昇したのに対し、抗体A投与群では、その上昇が有意に抑制された。また
図4−2Eに示すように、抗Myl9/12ポリクローナル抗体投与群では、メサコリン濃度依存的な気道抵抗値の上昇抑制は見られるものの、その効果に有意差は認められなかった。抗体Aは、抗Myl9/12ポリクローナル抗体よりも、強い抗気道炎症作用があることが示唆された。
【0163】
実施例3:抗体Aのマウス大腸炎モデルでの薬効評価
CD4陽性CD45RB強陽性(CD4+CD45RB
high)Tリンパ球移入炎症性腸疾患モデルの作製についてはPowrie et al., Int.Immunol.,5,1461−1471,1993を参考にした。雌性、8−10週齢のBalb/cマウス(日本チャールズ・リバー)の脾臓を摘出し、スリガラスですり潰し脾臓細胞を分離した。分離した脾臓細胞は、脾臓一個あたり5mLの155mM塩化アンモニウム、10mM炭酸水素カリウム、80μM EDTA−4Na蒸留水を加え5分室温に放置し赤血球を溶解した。脾臓細胞溶液にPBSを2倍容量加え、1500rpmで5分遠心して沈殿を回収した。分離した脾臓細胞からCD4 T cell isolation kit(ミルテニー社製)によりCD4 Tリンパ球を精製した。CD4陽性CD45RB強陽性Tリンパ球を分離するために、精製したCD4 Tリンパ球に対して、フィコエリスリン(PE)標識抗CD4抗体(eBioscience社製)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗CD45RB抗体(eBioscience社製)を用い二重染色を行った。二重染色の後、FACSAria(ベクトンディッキンソン社製)を用いCD4陽性CD45RB強陽性細胞をソーティングし目的の細胞を回収した。回収された細胞はPBSで洗浄後、2x10
6細胞/mLの細胞濃度にPBSにて懸濁した。雌性、8週齢のSCIDマウス(日本クレア)の腹腔に、上記で調製したCD4陽性CD45RB強陽性細胞を250μLずつ、すなわち5x10
5細胞/マウスで移入を行った。各群8匹のCD4陽性CD45RB強陽性細胞を移入したSCIDマウスに、500μgのコントロール抗体(マウスIgG)、500μgの抗体A(抗体はPBS溶液)を、細胞移入後11日目より、週2回投与した。なお投与は尾静脈から行った。また陰性対照群として、CD4 T cell Isolation kit(ミルテニー社製)により精製し、CD45RBの発現強度による分離をしていないマウスCD4 Tリンパ球(全CD4陽性細胞)を5x10
5/マウスで移入した。細胞移入27日後に剖検を行い体重減少、大腸内便性状をスコア化し評価を行った。便性状のスコアはデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎で用いられている便性状のスコア(Cooper et al., Lab. Invest., 69, 238−249, 1993)を使用した。
【0164】
コントロール抗体投与群と比較して、抗体A投与群では有意に疾患活動性指数[DAI(Disease Activity Index)]が低下した(
図5)。
【0165】
実施例4:抗体Aからのキメラ抗体とヒト化抗体の作製
キメラ抗体およびヒト化抗体の調製
まず、キメラ抗体の発現ベクターを構築した。重鎖として、抗体Aの重鎖のシグナル配列をコードする遺伝子配列(配列番号16)と可変領域をコードする遺伝子配列(配列番号17)を、V234AおよびG237A変異を有し、C末端のリシン残基を欠失したヒトIgG2の定常領域(配列番号44)をコードする遺伝子配列(配列番号45)を含む発現ベクター(pcDNA3.4)に挿入し、軽鎖として、抗体Aの軽鎖のシグナル配列をコードする遺伝子配列(配列番号18)と可変領域をコードする遺伝子配列(配列番号19)を、ヒトIgκの定常領域(配列番号46)をコードする遺伝子配列(配列番号47)を含む発現ベクター(pcDNA3.4)に挿入し、キメラ抗体の発現ベクターを構築した。キメラ抗体を産生するため、Expi293発現システム(Gibco/ThermoFisher)を用いて、前記発現ベクターをExpi293F細胞(Gibco/ThermoFisher)へ形質移入した。上清を回収し、Protein A(GE Healthcare)を用いて精製した。ここでいう、「V234A」とは、234位のバリンがアラニンに置換された変異を、「G237A」とは、237位のグリシンがアラニンに置換された変異を表す。
【0166】
次にヒト化抗体の可変領域を設計した。抗体Aのフレームワーク領域(Framework region:FR)に対する高い相同性を基に、ヒト抗体のFR;軽鎖についてIGKV2−28*01(配列番号48)またはIGKV2−24*01(配列番号49)、およびJK4(配列番号50)、重鎖についてIGHV1−69*02(配列番号51)、IGHV1−46*01(配列番号52)またはIGHV7−4−1*02(配列番号53)およびJH4(配列番号54)を、ヒト化抗体のFRとして選択した。その後、マウス抗体Aの3D構造予測モデルを用いて、CDRのアミノ酸と相互作用するFRのアミノ酸を予測し、CDR(配列番号28−35)とともに移植した。V234AおよびG237A変異を有し、C末端リシン残基を欠失したヒトIgG2の定常領域(配列番号44)、および、ヒトIgκの定常領域(配列番号46)を、それぞれ重鎖および軽鎖の定常領域として用いた。HK1−4(配列番号55)、HK1−5(配列番号56)、HK1−6(配列番号57)、HK1−A(配列番号58)、HK2−5(配列番号59)、HK2−6(配列番号60)、HK2−9(配列番号61)、およびHK3−2(配列番号62)は、Kabatの定義方法によって決定されたCDR(配列番号28、30、32)を移植したヒト化抗体の重鎖可変領域として設計され、HA1−4(配列番号63)およびHA1−6(配列番号64)は、AbMの定義方法によって決定されたCDR(配列番号29、31、32)を移植されたヒト化抗体の重鎖可変領域として設計され、HK1−4、HK1−5、HK1−6、HK1−A、HA1−4、およびHA1−6は、IGHV1−69*02およびJH4を用いるヒト化抗体の重鎖可変領域として設計され、HK2−5、HK2−6、およびHK2−9は、IGHV1−46*01およびJH4を用いるヒト化抗体の重鎖可変領域として設計され、HK3−2は、IGHV7−4−1*02およびJH4を用いるヒト化抗体の重鎖可変領域として設計され、L1−4(配列番号65)、L1−5(配列番号66)、およびL1−A(配列番号67)は、IGKV2−28*01およびJK4を用いるヒト化抗体の軽鎖可変領域として設計され、L4−2(配列番号68)は、IGKV2−24*01およびJK4を用いるヒト化抗体の軽鎖可変領域として設計された。
【0167】
HK1−4、HK1−5、HK1−6のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、IGHV1−69*02(配列番号51)およびJH4(配列番号54)に抗体Aの重鎖CDR(配列番号28、30、32)を移植し、シグナル配列(配列番号69)をN末端に付加したアミノ酸配列を、GenScript USA Inc.によって遺伝子配列に変換して合成し、PCRにて変異を導入して作製した(HK1−4:配列番号70、HK1−5:配列番号71、HK1−6:配列番号72、シグナル配列:配列番号73)。HK1−Aのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、HK1−AのN末端にシグナル配列(配列番号69)を付加したアミノ酸配列をGenScript USA Inc.によって遺伝子配列に変換して合成した(HK1−A:配列番号74、シグナル配列:配列番号75)。HK2−5、HK2−6、HK2−9のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、IGHV1−46*01(配列番号52)およびJH4(配列番号54)に抗体Aの重鎖CDR(配列番号28、30、32)を移植し、シグナル配列(配列番号69)をN末端に付加したアミノ酸配列を、GenScript USA Inc.によって遺伝子配列に変換して合成し、PCRにて変異を導入して作製した(HK2−5:配列番号76、HK2−6:配列番号77、HK2−9:配列番号78、シグナル配列:配列番号79)。HK3−2のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、HK3−2のN末端にシグナル配列(配列番号69)を付加したアミノ酸配列をGenScript USA Inc.によって遺伝子配列に変換して合成した(HK3−2:配列番号80、シグナル配列:配列番号81)。HA1−4、HA1−6のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、IGHV1−69*02(配列番号51)およびJH4(配列番号54)に抗体Aの重鎖CDR(配列番号29、31、32)を移植し、シグナル配列(配列番号69)をN末端に付加したアミノ酸配列を、GenScript USA Inc.によって遺伝子配列に変換して合成し、PCRにて変異を導入して作製した(HA1−4:配列番号82、HA1−6:配列番号83、シグナル配列:配列番号84)。L1−4、L1−5のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、IGKV2−28*01(配列番号48)およびJK4(配列番号50)に抗体Aの軽鎖CDR(配列番号33−35)を移植し、シグナル配列(配列番号85)をN末端に付加したアミノ酸配列を、GenScript USA Inc.によって遺伝子配列に変換して合成し、PCRにて変異を導入して作製した(L1−4:配列番号86、L1−5:配列番号87、シグナル配列:配列番号88)。L1−A、およびL4−2のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列は、L1−A、およびL4−2のN末端にシグナル配列(配列番号85)を付加したアミノ酸配列をGenScript USA Inc.によって遺伝子配列に変換して合成した(L1−A:配列番号89、L1−Aのシグナル配列:配列番号90、L4−2:配列番号91、L4−2のシグナル配列:配列番号92)。これらのヒト化重鎖可変領域とシグナル配列をコードする遺伝子は、V234AおよびG237A変異を有し、C末端のリシン残基を欠失したヒトIgG2の定常領域(配列番号44)をコードする遺伝子配列(配列番号45)を含む発現ベクター(pcDNA3.4)に挿入した。これらのヒト化軽鎖可変領域とシグナル配列をコードする遺伝子はヒトIgκの定常領域(配列番号46)をコードする遺伝子配列(配列番号47)を含む発現ベクター(pcDNA3.4)に挿入した。ここでいう、「V234A」とは、234位のバリンがアラニンに置換された変異を、「G237A」とは、237位のグリシンがアラニンに置換された変異を表す。抗体を産生するため、Expi293発現システム(Gibco/ThermoFisher)を用いて、前記発現ベクターを表1の組み合わせでExpi293F細胞(Gibco/ThermoFisher)へ形質移入した。上清を回収し、Protein A(GE Healthcare)を用いて精製した。
【0168】
【表1】
【0169】
抗体Aから作製したキメラ抗体とヒト化抗体のヒトMyl9タンパク質に対する結合能の解析
抗体Aから作製したキメラ抗体とヒト化抗体のヒトMyl9に対する結合能をELISAにて評価した。ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−Hisタンパク質は実施例1に記載の方法により調製した。
【0170】
ヒトMyl9に対する結合能は以下の工程に従ってELISAにて評価した。ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−Hisを、96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、キメラ抗体とヒト化抗体を10μg/mLの濃度から6倍ずつ7段階希釈して、ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Loboratories)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer)により450nmの吸光度を読み取った。
【0171】
表1のすべてのヒト化抗体は、キメラ抗体と同程度にヒトMyl9に対して、濃度依存的に結合し、ヒトMyl3には結合しなかった(
図6−1〜6−3)。
【0172】
実施例5:抗体Aとそのキメラ抗体およびヒト化抗体のマウス/ヒトMyl12a、12bタンパク質に対する結合能
マウス/ヒトMyl12a、12bタンパク質の調製
以下の工程に従って、マウスMyl12a(Genbank Accession No.NP_080340.2、配列番号93)、マウスMyl12b(Genbank Accession No.NP_075891.1、配列番号94)、ヒトMyl12a(Genbank Accession No.NP_001289976.1、配列番号95)、ヒトMyl12b(Genbank Accession No.NP_001138416.1、配列番号96)の各C末端にヒスチジンタグを結合したタンパク質(以下、それぞれマウスMyl12a−His、マウスMyl12b−His、ヒトMyl12a−His、ヒトMyl12b−Hisという)を作製した。マウスMyl9、12a、12b(
図7A)、ヒトMyl9、12a、12b(
図7B)のアミノ酸配列の比較を示す。
【0173】
マウスMyl12a、12bタンパク質をコードする遺伝子は千葉大学より分与された。ヒトMyl12a、12bタンパク質をコードする遺伝子は、ヒトの心臓、または小腸のcDNAよりPCRにて増幅した。これらの遺伝子を、PreScission Protease(GE Healthcare)の切断配列をコードする核酸配列を挿入したpET42bベクター(Merck)のBglII/BamHIサイトに挿入した。作製したベクターを大腸菌株BL21−Gold(DE3)pLys(Agilent Technologies)に形質転換し、GSTタグのついたマウスMyl12a−His、マウスMyl12b−His、ヒトMyl12a−His、ヒトMyl12b−Hisを発現させた。発現させたタンパク質をGlutathione Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)にて精製し、PreScission ProteaseにてGSTタグを切断し、TALON Superflow Metal Affinity Resin(CLONTECH)にてマウスMyl12a−His、マウスMyl12b−His、ヒトMyl12a−His、ヒトMyl12b−Hisを精製した。
【0174】
マウスMyl12a−His、マウスMyl12b−His、ヒトMyl12a−His、ヒトMyl12b−His、および、実施例1にて精製したマウスMyl3−His、マウスMyl9−His、ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−Hisは、最終濃度が50mMになるようにジチオトレイトール(Wako)を加え、4℃で1時間反応を行い、モノマーにした。反応後、PBS(Wako)にて透析を行った。
【0175】
抗体Aのマウス/ヒトMyl12a、12bタンパク質に対する結合能の解析
マウス、ヒトMyl12a、12bに対する抗体Aの結合能は以下の工程に従ってELISAにて評価した。マウスMyl3−His、マウスMyl9−His、マウスMyl12a−His、マウスMyl12b−His、ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−His、ヒトMyl12a−His、ヒトMyl12b−Hisを、96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、抗体Aを10μg/mLの濃度から4倍ずつ11段階希釈して、ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Loboratories)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific)により450nmの吸光度を読み取った。
【0176】
抗体AはマウスおよびヒトMyl9と相同性の高いMyl12a、12bへの濃度依存的な結合を示し、マウスおよびヒトMyl9とは相同性の低いマウスおよびヒトMyl3には結合しなかった(
図8A、B)。
【0177】
抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体のヒトMyl12a、12bタンパク質に対する結合能の解析
抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体のヒトMyl12a、12bに対する結合能は以下の工程に従ってELISAにて評価した。ヒトMyl3−His、ヒトMyl9−His、ヒトMyl12a−HisおよびヒトMyl12b−Hisを、それぞれ96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、キメラ抗体およびヒト化抗体をそれぞれ0.01、0.1、1μg/mLの濃度に希釈して、ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch Loboratories)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific)により450nmの吸光度を読み取った。
【0178】
キメラ抗体およびヒト化抗体は、ヒトMyl9と相同性の高いMyl12a、12bへの濃度依存的な結合を示し、ヒトMyl9とは相同性の低いヒトMyl3には結合しなかった(
図9A−C)。
【0179】
実施例6:ヒトMyl9、ヒトMyl12aおよびヒトMyl12bとヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合能に対する、抗体Aとそのキメラ抗体およびヒト化抗体の阻害効果
ヒトMyl9、12a、12bタンパク質とヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合
ヒトMyl9、12a、12bタンパク質とヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合をELISAにて評価した。以下の工程に従って、ヒトCD69タンパク質の細胞外領域(64−199位、配列番号97)のN末端にFlagタグを付加したタンパク質(以下、3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質)を作製した。ヒトとマウスのCD69タンパク質の細胞外領域のアミノ酸配列の比較を示す(
図10)。
【0180】
3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質をコードする遺伝子を含む発現プラスミドは千葉大学より分与され、ExpiFectamine 293 Transfection Kit(Thermo Fisher Scientific/Gibco)を用いてExpi293F細胞(Invitrogen/LifeTechnologies)へ形質移入した。4日間のインキュベーション(8%CO2、37°C)の後、培養上清を回収した。回収した培養上清より、3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質をanti−Flag M2 Affinity Gel(SIGMA)を用いて精製したのち、Superdex200またはSuperdex75を用いてダイマー化したタンパク質を分取した。
【0181】
ヒトMyl9、12a、12bタンパク質とヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合をELISAにて評価した。実施例5に従って作製したヒトMyl3−His、ヒトMyl9−His、ヒトMyl12a−His、ヒトMyl12b−Hisを、それぞれ96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質を10μg/mLから3倍希釈で6段階の濃度になるように、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で希釈して、ウェルに添加した。室温にて1.5時間インキュベートして3回、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific)により450nmの吸光度を読み取った。
【0182】
ヒトCD69細胞外領域タンパク質は、ヒトMyl9、およびヒトMyl9と相同性の高いMyl12a、12bへの濃度依存的な結合を示し、ヒトMyl9とは相同性の低いヒトMyl3には結合しなかった(
図11)。
【0183】
ヒトMyl9、ヒトMyl12aおよびヒトMyl12bとヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合能に対する、抗体Aの阻害活性の評価
ヒトMyl9、ヒトMyl12aおよびヒトMyl12bとヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合能に対する、抗体Aの阻害活性は、以下の工程によりELISAにて評価した。実施例5に従って作製したヒトMyl9−His、ヒトMyl12a−His、およびヒトMyl12b−Hisを、それぞれ96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、抗体Aまたはコントロール抗体(抗ジニトロフェノール抗体、マウスIgG2c、κ)を30μg/mLから3倍希釈で7段階に50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で希釈し、ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄し、3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質を10μg/mLの濃度になるように、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で希釈して、ウェルに添加した。室温にて1.5時間インキュベートして3回、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific)により450nmの吸光度を読み取った。
【0184】
抗体Aは、ヒトMyl9、ヒトMyl12aおよびヒトMyl12bとヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合を濃度依存的に阻害した(
図12A−C)。コントロール抗体は阻害活性を示さなかった。図中のバックグラウンドは、ヒトMyl9−His、ヒトMyl12a−HisまたはヒトMyl12b−Hisを固相化していないウェル上での3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質、ならびに西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)による発色を示す。
【0185】
ヒトMyl9とヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合能に対する、抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体の阻害活性の評価
抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体の、ヒトMyl9とヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合能に対する阻害活性は、以下の工程によりELISAにて評価した。実施例5に従って作製したヒトMyl9−Hisを、96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、抗体A、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはコントロール抗体(ヒトIgG2、κ、Sigma)を30μg/mLから3倍希釈で7段階に50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で希釈し、ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄し、3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質を10μg/mLの濃度になるように、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で希釈して、ウェルに添加した。室温にて1.5時間インキュベートして3回、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific)により450nmの吸光度を読み取った。
【0186】
抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体は、ヒトMyl9とヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合を濃度依存的に阻害した(
図13−1〜13−5)。コントロール抗体は阻害活性を示さなかった。図中のバックグラウンドは、ヒトMyl9−Hisを固相化していないウェル上での3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質、ならびに西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)による発色を示す。
【0187】
ヒトMyl12aおよびヒトMyl12bとヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合能に対する、抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体の阻害活性の評価
抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体の、ヒトMyl12aおよびヒトMyl12bとヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合能に対する阻害活性は、以下の工程によりELISAにて評価した。実施例5に従って作製したヒトMyl12a−HisおよびヒトMyl12b−Hisを、それぞれ96ウェルプレート(Nunc)のウェル上にコートした。4℃にて一晩インキュベートした後、1xブロックエース(DSファーマバイオメディカル株式会社)により、ウェルを室温にて1時間ブロッキングした。0.02% Tween20/PBSで3回洗浄した後、抗体A、キメラ抗体、ヒト化抗体またはコントロール抗体(ヒトIgG2、κ、Sigma)を0.1、1、10μg/mLの濃度になるように50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で希釈し、ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートして3回洗浄し、3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質を10μg/mLの濃度になるように、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で希釈して、ウェルに添加した。室温にて1.5時間インキュベートして3回、50mM NaOAc(pH5.5)/150mM NaCl/0.02% Tween20で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)を加え、室温にて1時間インキュベートした。5回洗浄した後、ウェルにTMBZ(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加え、5〜20分、室温にてインキュベートした。ウェルに等量の反応停止溶液(2N H
2SO
4)を加え、マイクロプレートリーダー(Thermo Scientific)により450nmの吸光度を読み取った。
【0188】
抗体Aから作製したキメラ抗体およびヒト化抗体は、ヒトMyl12aおよびヒトMyl12bとヒトCD69細胞外領域タンパク質との結合を濃度依存的に阻害した(
図14−1〜14−4)。コントロール抗体は阻害活性を示さなかった。図中のバックグラウンドは、ヒトMyl12a−HisまたはヒトMyl12b−Hisを固相化していないウェル上での3xFlag−ヒトCD69ECタンパク質、ならびに西洋ワサビペルオキシダーゼ標識の抗Flag(M2)抗体(Sigma)による発色を示す。
【0189】
実施例7:抗体Aおよび抗PD−1抗体の併用投与による抗腫瘍効果
10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培養液で培養したマウス大腸がん細胞株CT26.WT(ATCC number CRT−2638)をリン酸緩衝生理食塩水にて1.0 × 10
7 cells/mLの濃度の細胞懸濁液を調製し、6週齢のマウス(Balb/c、雌、日本チャールズリバー)の右背部皮下に0.1mLの用量で移植した。移植から6日後に電子デジタルノギス(デジマチックTMキャリパ、株式会社ミツトヨ)を用いて腫瘍の短径、長径を計測し、以下の計算式で腫瘍体積を算出した。
腫瘍体積(mm
3)=長径(mm)× 短径(mm)× 短径(mm)/2
マウス大腸がん細胞株CT26.WTの皮下腫瘍組織を遺伝子発現解析した結果を
図15に示す。CT26細胞由来腫瘍組織から、TRIzol(登録商標)Reagent(ThermoFisher scientific)を用いて核酸を抽出した後、RNeasy mini kit(Qiagen)を用いて全RNAを調製した。全RNAから、SureSelect Strand Specific RNAライブラリー調製試薬(Agilent Technologies)を用いてRNASeq解析用のLibraryを作製し、HiSeq4000(illumine)にてシーケンシングを行った。シーケンスにより得られたFastqファイルからTPM(Transcript Per Million)の方法によりノーマライズを行い、Myl9、Myl12aおよびMyl12bの発現量を測定した。腫瘍組織ではMyl9の発現量は低いが、Myl12aおよびMyl12bの発現量は高いことが示された。
投与初日の腫瘍体積をもとに、各群の腫瘍体積の平均値がほぼ等しくなるように群分けを行った。抗体Aおよび抗PD−1抗体(BioXCell、Catalog#:BE0146)はリン酸緩衝生理食塩水にて2mg/mLに調製し、0.1mL/マウスの投与量で7日に2回の頻度で計4回(がん細胞移植後6、9、13、16日目)腹腔内に投与した。コントロール群にはリン酸緩衝生理食塩水を0.2mL/マウスの投与量で7日に2回の頻度で計4回(がん細胞移植後6、9、13、16日目)腹腔内に投与した。実験は1群7−8匹で行った。
試験最終日(30日目)までのコントロール群(A)、抗体A投与群(B)、抗PD−1投与群(C)、抗体Aと抗PD−1抗体併用投与群(D)それぞれの腫瘍体積を計算し経日的な変化の推移を
図16に示す。
図16Bに示すように、抗体A単独では腫瘍の増殖をほとんど抑制しなかった。一方、抗PD−1抗体単独ではコントロール群と比較して若干の腫瘍増殖抑制(
図16C)が見られた。一方、抗体Aと抗PD−1抗体を併用投与すると、顕著な腫瘍増殖抑制が見られ、腫瘍が消失する個体(2匹/10匹)も見られた(
図16D)。以上の結果から、抗体Aと抗PD−1抗体の併用投与による相乗効果が強く示唆された。