特許第6872762号(P6872762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872762堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872762
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20210510BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G01N23/223
   G01N33/24 D
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-142431(P2020-142431)
(22)【出願日】2020年8月26日
(65)【公開番号】特開2021-56212(P2021-56212A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年8月26日
(31)【優先権主張番号】201910923092.3
(32)【優先日】2019年9月27日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518200329
【氏名又は名称】自然資源部第一海洋研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】517455720
【氏名又は名称】青▲島▼海洋地▲質▼研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼升▲発▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼喜林
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】曹▲鵬▼
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第106885815(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第108240999(CN,A)
【文献】 特開平07−286869(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第107605465(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102944570(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106204591(CN,A)
【文献】 X-ray fluorescence analysis of the Bakken and Three Forks Formations and logging applications,Journal of Petroleum Science and Engineering,Elsevier B.V.,2018年 9月 4日,Vol. 172,pp. 764-775,doi: 10.1016/j.petrol.2018.08.070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
G01N 33/24
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積物の岩石コアを分割し、X線により堆積物の岩石コアの元素に対する走査を行い、堆積物の岩石コアに含まれる元素の強度データを得る工程Aと、
得られた元素の強度データを基に、堆積層における元素の賦存特性に従って堆積層の解析指数を確定し、前記解析指数はSi/Ti比率及びCaの元素強度を含む工程Bと、
前記工程Bで確定した堆積層の解析指数を基に、前記元素の強度データに対して解析を行うことでイベント層の識別を行う工程Cと、を含み、前記工程Cは、
(C1)解析指数の平均値
及び標準偏差δを確定する;
(C2)解析指数を正規化した後の正規化標準偏差SDを基に、イベント層を識別する閾値を確定し、前記正規化後の標準偏差SDは、解析指数の元素強度データに対して正規化処理を行って得たものであり、前記閾値とは、堆積物の岩石コアにおける正常堆積層とイベント層を区分する臨界値のことをいう;
(C3)イベント層を確定するが、具体的には以下の方式を採用する:
1)SD≧0.1の場合、正規化後のSi/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線中、
及び
の2つの臨界値により深度に平行な直線を作成し、前記直線と曲線が交差する部分の深度層位が区間
内にある層位は正常堆積層と定義し
より大きい区間内の層位をイベント層と定義する;
2)SD<0.1の場合、正規化後のSi/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線中、
及び
の2つの臨界値により深度に平行な垂線を作成し、前記垂線と曲線が交差する部分の深度層位が区間
内にある層位は正常堆積層と定義し
より大きい区間内の層位をイベント層と定義する;
3)正規化標準偏差SDの値に基づき、正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の深度別変化曲線に対して、選定した閾値により深度に平行な直線を作成し、正規化後の元素強度の変化曲線中のデータ点の値が閾値を上回る位置にある点の数量が5個以上の層位をイベント層とし、且つ前記直線と正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の深度別変化曲線の交差部における曲線中の一つ目の点をイベント層の起点とし、交差部における曲線中の最後の点をイベント層の終点とし、これにより岩石コア中の第1イベント層を得て、第1イベント層以下を類推し、岩石コア中の第nイベント層を識別する、という工程を含むことを特徴とする、堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法。
【請求項2】
前記工程Aは、具体的には、
実験室において得られた堆積物の岩石コアを中心軸に沿って均等に分割し、そのうちの半分の岩石コアの表面を平坦化処理した後、コアスキャナーを用いて走査解析を行、堆積物の岩石コア中の常量元素と微量元素の強度データを得るが、前記常量元素には、ケイ素Si、カルシウムCa、アルミニウムAlが含まれ、前記微量元素には、ジルコニウムZr、ルビジウムRb、ストロンチウムSrが含まれる、という方式で行われることを特徴とする、請求項1に記載の堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法。
【請求項3】
前記工程Bにおいて、前記堆積層の解析指数はZr/Rb比率及びSrの元素強度であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法。
【請求項4】
前記工程C1において、Si/Ti比率及びCaの元素強度データの平均値
及び標準偏差δをそれぞれ確定するときには、
(1)最初にSi/Ti比率及びCaの元素強度データの正規化処理を行い、且つ正規化後のSi/Ti及びCa元素の正規化後の正規化標準偏差SDをそれぞれ計算する;
(2)次に、箱ひげ図及び四分位数の解析方法により、前記Si/Ti比率及びCaの元素強度データに対してそれぞれ処理を行い、且つSi/Ti比率及びCaの元素強度データの四分位点における数値をそれぞれ確定する;
(3)四分位数を上回った外れ値を除去した後、Si/Ti比率及びCaの元素強度データの平均値
及び標準偏差δをそれぞれ計算する、という方式を採用することを特徴とする、請求項1に記載の堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法。
【請求項5】
前記工程C2中、正規化標準偏差SDを基に岩石コア堆積層を識別する閾値を確定するときには、
1)SD≧0.1の場合、
値を閾値として設定し、
2)SD<0.1の場合、
値を閾値として設定し、
前記閾値とは、堆積物の岩石コアにおける正常堆積層とイベント層を区分する臨界値をいうことを特徴とする、請求項4に記載の堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋堆積学におけるイベント層識別及び古気候研究分野に属し、具体的には海域堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異常気象イベント(例えば台風や洪水など)は、異常な降雨の発生を招き、これによって海洋中に輸送される物質が突然に増加し、最終的に海洋中でこれらの物質の堆積が生じることで海洋堆積物が形成される。従って、海洋堆積物中の異常堆積層を抽出し、且つ室内での実験解析結果と結合することで、異常気象イベントの発生履歴を復元することができ、将来の世界各地における異常気象イベントの発生を予測するうえで重要な科学的根拠が提供される。また、岩石コアにおけるイベント層の存在は、岩石コアの年代較正の正確性にも影響するため、岩石コアにおけるイベント層の識別は、海洋堆積学研究の発展にとって極めて重要である。
【0003】
現在、海洋堆積物の岩石コアからイベント層を抽出する方法は主に、1)堆積物の岩石コアを2つに分割し、岩石コアの堆積層全体における異質性を肉眼で観察し、イベント層を判断する方法と、2)岩石コアを等間隔に従ってサンプリングした後、実験室内で粒度と元素を解析し、測定結果によってイベント層を確定する方法がある。但し、これら2種類の堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法には、欠点もある程度存在する。1)岩石コアの堆積層の異質性を肉眼的に観察すると、人によって違いが生じ、イベント層の正確な位置を確定することができない。2)等間隔でサンプリングして室内解析を行う場合、試料の縮分間隔が限定され、極めて小さなイベント層を正確に識別することができない。また、当該方法で実験結果を得るには期間が長く、時間と手間がかかる。
【0004】
よって、海洋における古気候及び古環境研究の発展に有力な技術支援を提供するために、堆積物の岩石コアにおけるイベント層を迅速且つ精確に識別する方法の構築が期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の堆積物の岩石コアにおけるイベント層を識別する方法に存在する精度の悪さなどの欠点に鑑み、岩石コア中の微小なイベント層を識別できるだけでなく、識別効率を大幅に高め、イベント層識別の正確性を大きく向上させた、堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法を提出する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の技術案を採用して実現したものである。堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法であって、以下の工程を含む。
【0007】
工程A、堆積物の岩石コアを分割し、X線により堆積物の岩石コアの元素に対する走査を行い、堆積物の岩石コアに含まれる元素の強度データを得る。
【0008】
工程B、得られた元素の強度データを基に、堆積層における元素の賦存特性に従って堆積層の解析指数を確定し、解析指数は元素の強度データによって表す。
【0009】
工程C、工程Bで確定した堆積層の解析指数を基に、その元素の強度データに対して解析を行うことでイベント層の識別が実現するが、それには以下を含む。
【0010】
(C1)解析指数の平均値
及び標準偏差δを確定する。
【0011】
(C2)解析指数を正規化した後の正規化標準偏差SDを基に、イベント層を識別する閾値を確定する。正規化後の標準偏差SDは、解析指数の元素強度データに対して正規化処理を行って得たものであり、閾値とは、堆積物の岩石コアにおける正常堆積層とイベント層を区分する臨界値のことをいう。
【0012】
(C3)正規化標準偏差SDの値に従って閾値を確定し、正規化後の解析指数の深度別変化曲線に対して、確定した閾値に基づく深度に平行な直線を作成し、直線と正規化後の解析指数である元素強度の深度別変化曲線とが交差する。これにより、「直線右側の点の数量が5個より多い層位、且つ解析指数中で合致する層位をイベント層とする」に従って、イベント層の識別を実現する。
【0013】
さらに、工程Aは具体的に以下の方式により実現する。
【0014】
実験室において得られた堆積物の岩石コアを中心軸に沿って均等に分割し、そのうちの半分の岩石コアの表面を平坦化処理した後、コアスキャナーを用いて走査解析を行い、堆積物の岩石コア中の常量元素と微量元素の強度データを得る。常量元素には、ケイ素Si、カルシウムCa、アルミニウムAlが含まれ、微量元素には、ジルコニウムZr、ルビジウムRb、ストロンチウムSrが含まれる。
【0015】
さらに、工程Bにおいて、堆積層の解析指数はSi/Ti比率及びCaの元素強度である。
【0016】
さらに、工程Bおいて、堆積層の解析指数はZr/Rb比率及びSrの元素強度である。
【0017】
さらに、工程C1において、Si/Ti比率及びCaの元素強度データの平均値
及び標準偏差δをそれぞれ確定するときには、以下の方式を採用する。
【0018】
(1)最初にSi/Ti比率及びCaの元素強度データの正規化処理を行い、且つ正規化後のSi/Ti及びCa元素の正規化後の正規化標準偏差SDをそれぞれ計算する。
【0019】
(2)次に箱ひげ図及び四分位数の解析方法により、上述のSi/Ti比率及びCaの元素強度データに対してそれぞれ処理を行い、且つSi/Ti比率及びCaの元素強度データの四分位点における数値をそれぞれ確定する。
【0020】
(3)四分位数を上回った外れ値を除去した後、Si/Ti比率及びCaの元素強度データの平均値
及び標準偏差δをそれぞれ計算する。
【0021】
さらに、工程C2において、正規化標準偏差SDを基に、岩石コア堆積層を識別する閾値を確定する。
【0022】
1)SD≧0.1の場合、
値を閾値として設定する。
【0023】
2)SD<0.1の場合、
値を閾値として設定する。
【0024】
閾値とは、堆積物の岩石コアにおける正常堆積層とイベント層を区分する臨界値のことをいう。
【0025】
さらに、工程C3において、イベント層の確定は、具体的には以下の方式を採用する。
【0026】
1)SD≧0.1の場合、正規化後のSi/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線において、
及び、
の2つの臨界値により深度に平行な直線を作成し、直線と曲線が交差する部分の深度層位が区間内にある層位は正常堆積層と定義し、
より小さく
より大きい区間内にある層位はいずれもイベント層と定義する。
より小さい区間内の層位は適切な堆積学的解釈が得られないため、
より大きい区間内の層位をイベント層と定義する。
【0027】
2)SD<0.1の場合、正規化後のSi/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線中、
及び
の2つの臨界値により深度に平行な垂線を作成し、垂線と曲線が交差する部分の深度層位が区間
内にある層位は正常堆積層と定義し、
より小さく
より大きい区間内にある層位はいずれもイベント層と定義する。
より小さい区間内の層位は適切な堆積学的解釈が得られないため、
より大きい区間内の層位をイベント層と定義する。
【0028】
3)正規化標準偏差SDの値に基づき、正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の深度別変化曲線に対して、選定した閾値により深度に平行な直線を作成し、直線右側に位置する点の数量が5個以上の層位をイベント層とし、且つ直線と正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の深度別変化曲線の交差部における曲線中の一つ目の点をイベント層の起点とし、交差部における曲線中の最後の点をイベント層の終点とし、これにより岩石コア中の第1イベント層を得る。第1イベント層以下をこのように類推して、岩石コア中の第nイベント層を識別する。
【発明の効果】
【0029】
従来技術と比較すると、本発明は以下の優位点及び好ましい効果を有する。
【0030】
本発明は、無損失且つ高分解能の岩石コア元素走査技術により、得られた海域堆積物の岩石コアに対して走査解析を行い、岩石コア中の元素の地球化学的な強度データを迅速に取得し、イベント層の識別方法と結合することで、岩石コア中のイベント層に対する高効率且つ精確な識別を実現することが可能であり、さらに本案は、岩石コア中の微小なイベント層を識別できるだけでなく、識別効率を大幅に高め、イベント層識別の正確性を大きく向上させており、海洋における古気候及び古環境研究の発展に有力な技術支援を提供し、高い実用価値を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例におけるイベント層の識別方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例における事例1中、本発明の方法及び従来の堆積学的方法に基づき識別したイベント層の比較概略図である。
図3】本発明の実施例における事例2中、本発明の方法及び従来の堆積学的方法に基づき識別したイベント層の比較概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の上記目的及び利点をより明解にするため、以下で図面に基づき本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
<実施例>
【0033】
堆積物の岩石コアにおけるイベント層の識別方法であって、本実施例では海域堆積物の岩石コアを例に紹介するが、図1に示す通り、以下の工程を含む。
【0034】
工程1、堆積物の岩石コアを分割し、X線により堆積物の岩石コアの元素に対する走査を行い、堆積物の岩石コアに含まれる元素の強度データを得る。具体的には以下の通りである。
【0035】
実験室において得られた堆積物の岩石コアを中心軸に沿って均等に分割し、そのうちの半分の岩石コアの表面を平坦化処理した後、コアスキャナーを用いて走査解析を行い、堆積物の岩石コア中の常量元素と微量元素の強度データを得る。常量元素には、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)などが含まれ、微量元素には、ジルコニウム(Zr)、ルビジウム(Rb)、ストロンチウム(Sr)などが含まれる。
【0036】
一般的に、取得する海域堆積物の岩石コア試料は、直径75mm又は110mmの円柱体であり、長さは通常数十センチメートルから数メートルの間とされる。そのうち、本実施例において採用するコアスキャナーは限定されず、CORTEXシリーズのX−ray Corescanner又はITRAXシリーズのX−ray Corescannerでもよい。堆積層中の微小なイベント層を精確に識別できるようにするため、コアスキャナーの走査ステップ幅は1mmに設定する。ステップ幅が小さいほど、精度はより高くなる。即ち、長さ200cmの岩石コアから2000列の元素強度データを得ることができる。
【0037】
工程2、得られた元素の強度データを基に、堆積層の解析指数を確定する。
【0038】
得られた複数種類の元素強度のデータを基にした実験、モデリング、解析により、且つ堆積層における元素の賦存特性を考慮することにより、Si/Ti及びCaの元素強度又はその他の元素指数(例えばZr/Rb及びSrの元素強度)を解析指数として選択する。一般的に、X−ray Corescannerによる走査解析で得られるZr、Rb及びSrの元素強度は弱めであり、識別精度を保証するため、本実施例ではSi/Ti及びCaの元素強度を堆積物の岩石コアにおけるイベント層の解析指数として選択している。
【0039】
海洋堆積物中のSiは主に堆積物中の粗粒成分中に賦存されており、Tiは主に細粒堆積物中に賦存されているため、Si/Ti比率は堆積層中の粗粒・細粒鉱物含有量の差異を良好に示し得る。Caは主に堆積物中のデトライタス(生物破片)中に存在するため、Ca含有量は比較的粗いデトライタスの堆積物における相対的寄与を示し得る。
【0040】
工程3、工程2で確定した堆積層の解析指数を基に、その元素の強度データに対して解析を行うことでイベント層の識別が実現するが、具体的には以下を含む。
【0041】
(1)Si/Ti比率及びCaの元素強度データの平均値
及び標準偏差δをそれぞれ計算する。
【0042】
イベント層を識別する前に、最初にSi/Ti比率及びCaの元素強度データの正規化処理を行い、且つ正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の標準偏差SDをそれぞれ計算する。次に、箱ひげ図及び四分位数の解析方法により、上述のSi/Ti比率及びCaの元素強度データに対してそれぞれ処理を行い、当該方法に従ってSi/Ti比率及びCaの元素強度データの四分位点における数値をそれぞれ確定する。その後、四分位数を上回った外れ値を除去した後、Si/Ti比率及びCaの元素強度データの平均値
及び標準偏差δをそれぞれ計算する。また、本実施例中、上述の正規化処理方法、箱ひげ図及び四分位数の解析方法はいずれも当業者公知の技術であり、ここでは詳述しない。
【0043】
(2)正規化標準偏差SDを基に、岩石コア堆積層を識別する閾値を確定する。
【0044】
1)SD≧0.1の場合、
値を閾値として設定する。
【0045】
2)SD<0.1の場合、
値を閾値として設定する。
【0046】
上述の1)及び2)中、閾値とは、岩石コア中の正常堆積層とイベント層を区分する臨界値のことをいう。
【0047】
(3)設定した岩石コア堆積層を識別する閾値により、イベント層を確定する。
【0048】
1)SD≧0.1の場合、本実施例では正規化後のSi/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線中、閾値により深度に平行な直線を作成し、直線と曲線が交差する部分の深度層位が区間
内にある層位は正常堆積層と定義し、この区間以外の堆積層はイベント層と定義するが、
より小さい区間内の層位は適切な堆積学的解釈が得られないため、本発明では
より大きい区間内の層位をイベント層と定義する。
【0049】
2)SD<0.1の場合、本発明では正規化後のSi/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線中、閾値により深度に平行な垂線を作成し、垂線と曲線が交差する部分の深度層位が区間
内にある層位は正常堆積層と定義し、この区間以外の堆積層はイベント層と定義するが、
より小さい区間内の層位は適切な堆積学的解釈が得られないため、本発明では
より大きい区間内の層位をイベント層と定義する。
【0050】
3)正規化標準偏差SDの値に基づき、正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の深度別変化曲線に対して、適切な閾値を選定して(閾値を確定する原則に従い、SD≧0.1の場合、
値を閾値として設定し、SD<0.1の場合、
値を閾値として設定する)深度に平行な直線を作成し、直線と正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の深度別変化曲線とが交差する。直線右側に位置する点の数量が5個以上の層位をイベント層とし、且つ直線右側の交差部における曲線中の一つ目の点をイベント層の起点とし、交差部における曲線中の最後の点をイベント層の終点とし、これにより岩石コア中の第1イベント層を得る。第1イベント層以下において、直線右側に位置する点の数量が5個以上の層位を第2イベント層とし、このように類推して、岩石コア中の第nイベント層を識別し、岩石中のSi/Ti比率及びCa元素の曲線中のイベント層をそれぞれ識別することができるが、堆積層をより正確に識別するため、本発明では正規化後のSi/Ti比率及びCa元素の深度別に変化する2本の曲線中、互いに合致するイベント層をイベント層と定義している。
【0051】
以下は、実際の応用事例を例に本案の優位性について詳述する。
【0052】
事案1:中国長江の三角州の水中から岩石コアAを選んで採取した。
【0053】
工程1:岩石コアの長さは100cmであり、実験室内で、得られた直径75mmの堆積物の岩石コアAをコアカッターで中心軸に沿って2つに分割し、解析準備としてそのうちの半分にトリミング・バフ処理を行った。
【0054】
工程2:実験室内でコアスキャナーを用いてバフ処理後の半分の岩石コアの走査解析を行い、岩石コア中の元素強度の深度別に変化する強度変化曲線を得た。スキャナーの動作条件は、以下の通り設定した。電圧50kV、電流30mA、露光時間800ms、スキャン幅1mm。
【0055】
工程3:工程2で得た岩石コアの元素強度に対して処理を行い、Si/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線を得るとともに、箱ひげ図及び四分位数の解析方法により、Si/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線の三分位点及び四分位点における数値を確定した。次に、上述の閾値を確定する原則に従い、計算して得られたSi/Ti比率及びCa元素強度のSD値はそれぞれ0.03と0.05であったため、
(0.26)値をSi/Ti曲線の閾値として選択し、
(0.18)をCa元素強度曲線の閾値として選択した。
【0056】
工程4:図2を参照して、Si/Ti及びCa曲線中で0.26と0.18の垂線がそれぞれ作成され、垂線と2本の曲線が交差しており、「垂線右側に位置する点の数量が5個以上の層位をイベント層とし、且つ垂線右側の交差部における曲線中の一つ目の点をイベント層の起点とし、交差部における曲線中の最後の点をイベント層の終点とし、これにより岩石コア中の第1イベント層を得る。第1イベント層以下において、垂線右側に位置する点の数量が5個以上の層位を第2イベント層とし、且つ垂線右側の交差部における曲線中の一つ目の点をイベント層の起点とし、交差部における曲線中の最後の点をイベント層の終点とし、これにより岩石コア中の第2イベント層を得る。このように類推して、岩石コア中の第nイベント層を識別することができる」という判定方法に従って、岩石中のSi/Ti曲線中で10個のイベント層が識別され、Ca元素曲線中で9個のイベント層が識別され、2本の曲線中で互いに合致したイベント層はそれぞれ[1]、[2]、[3]、[4]、[5]、[6]、[7]、[8]の合計8か所であった。一番右側は堆積学において常套の平均粒径に基づく指数であり、合計8個のイベント層が識別された。
【0057】
2種類の方法の比較からは、従来の堆積学における識別方法を用いた場合、幾つかの微小なイベント層は識別が得られていないことが分かる(イベント層[7]と[8]など)。平均粒径の結果は手動による縮分で得たものであり、縮分過程中で人為的な誤差が存在し、識別されたイベント層の位置が不正確になっている。また、堆積物粒度の実験過程においても人為的な誤差要因が存在し、識別されたイベント層に誤りが存在するおそれがある。例えば、平均粒径に基づく指数では、イベント層1と2が識別されているが、Si/Ti及びCa元素強度の2つの指数中では識別されていない。この点も、本発明の方法の高い効果性と正確性をさらに示すものである。
【0058】
事例2:中国東シナ海の大陸棚内から岩石コアBを選んで採取した。
【0059】
工程1’:岩石コアの長さは100cmであり、実験室内で、得られた直径75mmの堆積物の岩石コアBをコアカッターで中心軸に沿って2つに分割した。解析準備として、そのうちの半分にトリミング・バフ処理を行った。
【0060】
工程2’:実験室内でコアスキャナーを用いてバフ処理後の半分の岩石コアの走査解析を行い、岩石コア中の元素の深度別に変化する強度変化曲線を得た。スキャナーの動作条件は以下の通り設定した。電圧50kV、電流30mA、露光時間800ms、スキャン幅1mm。
【0061】
工程3’:工程2’中で得た岩石コアの元素強度に対して処理を行い、Si/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線を得るとともに、箱ひげ図及び四分位数の解析方法により、Si/Ti比率及びCa元素強度の深度別変化曲線の三分位点及び四分位点における数値を確定した。次に、上述の閾値を確定する原則に従い、計算して得られたSi/Ti比率及びCa元素強度のSD値はそれぞれ0.06と0.07であったため、
を閾値として選択し、計算を経て0.26と0.66をSi/Ti及びCa元素強度曲線の閾値として確定した。
【0062】
工程4’:図3を参照して、Si/Ti及びCa曲線中で0.26と0.66の垂線がそれぞれ作成され、垂線と2本の曲線が交差しており、「垂線右側に位置する点の数量が5個以上の層位をイベント層とし、且つ垂線右側の交差部における曲線中の一つ目の点をイベント層の起点とし、交差部における曲線中の最後の点をイベント層の終点とし、これにより岩石コア中の第1イベント層を得る。第1イベント層以下において、垂線右側に位置する点の数量が5個以上の層位を第2イベント層とし、且つ垂線右側の交差部における曲線中の一つ目の点をイベント層の起点とし、交差部における曲線中の最後の点をイベント層の終点とし、これにより岩石コア中の第2イベント層を得る。このように類推して、岩石コア中の第nイベント層を識別することができる」という判定方法に従って、岩石中のSi/Ti曲線中で5個のイベント層が識別され、Ca元素曲線中で5個のイベント層が識別され、2本の曲線中で互いに合致したイベント層はそれぞれ[1]、[2]、[3]、[4]、[5]の合計5か所であった。一番右側は堆積学において常套の平均粒径に基づく指数であり、合計4個のイベント層が識別された。
【0063】
2種類の方法の比較からは、従来の堆積学における識別方法を用いた場合、幾つかの微小なイベント層は識別が得られていないことが分かる(イベント層[4]など)。平均粒径の結果は手動による縮分で得たものであり、縮分過程で人為的な誤差が存在し、識別されたイベント層の位置が不正確になっている。例えば、2種類の方法が識別したイベント層[2]、[3]及び[4]の位置がやや大きく異なっている。従来の堆積学における識別方法を用いて識別されたイベント層は大きめであり、且つ確定されたイベント層の位置も不正確であるため、後続の解析過程において誤認識をもたらす可能性がある。
【0064】
上述は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明が他の形態を取るのを限定するものではなく、当業者であれば上述で開示した技術内容を利用し、変更又は改造を加えて等価変更した同等の実施例を他の分野に応用することができるが、そのいずれも本発明の技術案の内容を逸脱せず、本発明の技術的本質に基づき上述の実施例に対して行う何らかの簡単な修正、等価変更及び改造はいずれも本発明の技術案の保護範囲に属する。
図1
図2
図3