(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液状硬化性樹脂組成物が、50μmの厚みの硬化物を用いて測定した600nmの平行光線透過率が50〜90%である硬化物を与える組成物である、請求項1または2に記載の製造方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−7646号公報
【特許文献2】特開2008−24788号公報
【特許文献3】特開2006−241450号公報
【特許文献4】特開2008−248033号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nogi, M.; Ifuku, S.; Abe, K.; Honda, K.; Nakagaito, A. N.; Yano, H. Appl. Phys. Lett. 2006, 88, 133124.
【非特許文献2】Nogi, M.; Honda, K.; Nakagaito, A. N.; Yano, H. Appl. Phys. Lett. 2005, 87, 243110.
【非特許文献3】Shimazaki, Y.; Miyazaki, Y.; Takezawa, Y.; Nogi, M.; Abe, K.; Ifuku, S.; Yano, H. Biomacromolecules 2007, 8, 2976-2978.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは前記先行技術文献に記載の技術を予備的に検討したところ、熱伝導性が十分なレベルではないという知見を得た。かかる事情を鑑み、本発明は高熱伝導性を備えるCNF複合膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、CNF複合膜の表面に形成されたCNFを含まない樹脂層の存在により十分な熱伝導性が達成できないことを見出し、当該樹脂層を排除したCNF複合膜により前記課題を解決するに至った。すなわち、前記課題は以下の本発明により解決される。
(1)セルロースナノファイバー含有膜、およびその両面に積層された多孔質層を備える積層体を調製する積層工程、
前記多孔質層を介して液状硬化性樹脂組成物を前記セルロースナノファイバー含有膜に含浸させる含浸工程、ならびに
前記液状硬化性樹脂組成物を硬化させた後に前記多孔質層を剥離する硬化剥離工程、を備える、
セルロースナノファイバー複合膜の製造方法。
(2)前記硬化剥離工程が、反応率50〜90%の硬化反応を行った後に前記多孔質層を剥離する工程を含む、(1)に記載の製造方法。
(3)前記硬化剥離工程が、単離されたセルロースナノファイバー含有膜を後硬化する工程をさらに含む、(2)に記載の製造方法。
(4)前記液状硬化性樹脂組成物が透明な硬化物を与える組成物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記液状硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)樹脂マトリックスおよび当該樹脂マトリックス中に存在するセルロースナノファイバーを含む、セルロースナノファイバー複合膜であって、
当該膜を厚み方向に3等分した各層のうち、繊維濃度が最大になる層の繊維濃度をCmax、他の2つの層の繊維濃度をそれぞれCa、Cbとするとき、
(Cmax−Ca)/Cmax≦0.5かつ
(Cmax−Cb)/Cmax≦0.5
を満たす、セルロースナノファイバー複合膜。
(7)周期加熱放射測温法により測定される面内方向の熱伝導率が0.1W/mK以上である、(6)に記載のセルロースナノファイバー複合膜。
(8)50μmの厚みの膜を用いて測定した600nmの平行光線透過率が50〜90%である、(6)または(7)に記載のセルロースナノファイバー複合膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明により高熱伝導性を有するCNF複合膜を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「X〜Y」はその端値であるXおよびYを含む。
【0010】
1.製造方法
本発明のセルロースナノファイバー複合膜の製造方法は、セルロースナノファイバー含有膜、およびその両面に積層された多孔質層を備える積層体を調製する積層工程、前記多孔質層を介して液状硬化性樹脂組成物を前記セルロースナノファイバー含有膜に含浸させる含浸工程、ならびに前記液状硬化性樹脂組成物を硬化させた後に前記多孔質層を剥離する硬化剥離工程、を備える。以下、
図1を参照しながら製造方法を説明する。
【0011】
(1)積層工程
本工程は
図1(A)および(B)に示すように、セルロースナノファイバー含有膜10、およびその両面に積層された多孔質層22を備える積層体20を調製する。セルロースナノファイバー含有膜とはCNF(セルロースナノファイバー)を主成分として含む膜である。CNFが主成分であるとは、膜の95重量%以上、好ましくは98重量%以上がCNFで構成されていることをいう。本発明において、CNFは平均繊維径が3nm以上、好ましくは10nm以上のセルロース繊維である。CNFの平均繊維長は10nm〜10μmであってよい。
【0012】
CNFの原料として、木材、竹、朝、ジュート、ケナフ、綿、ビートパルプ、農産物残廃物、布、紙等の植物由来原料を使用できる。当該原料からはリグニンを除去することが好ましい。また、CNFの原料として、ホヤ殻等の動物由来原料も使用できる。当該原料からはたんぱく質を除去することが好ましい。さらに、CNFの原料として、ナタデココ等のバクテリア由来原料も使用できる。これらの原料を公知の方法で解繊することでCNFを得ることができる。
【0013】
セルロースナノファイバー含有膜はCNFを製膜して製造できる。製膜方法は特に限定されないが、例えばCNFを水等の分散媒に分散させたスラリーから塗布膜を製造し、当該膜から分散媒を除去する方法を採用できる。セルロースナノファイバー含有膜の厚みは特に限定されず、一般にフィルムおよびシートと呼ばれる範囲の厚みを含む。例えばセルロースナノファイバー含有膜の厚みは1〜500μmであってよいが、取扱い容易性等の観点から10〜100μmが好ましい。CNFは表面が、カルボキシル化、アセチル化、カルボキシメチル化、アルキル化ヒドロキシアルキル化等により変性されていてもよい。
【0014】
CNF含有膜は、他の成分を含まなくてもよいが(この場合、特に「CNF膜」ともいう)、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、窒化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等の熱伝導性に優れる充填剤や、各種添加剤等が挙げられる。後述するとおり、本発明の製造方法で得られるCNF複合膜は透明であることがより好ましい。したがって他の成分の種類および量は透明性を損なわない範囲で選択されることが好ましい。当該成分の配合量はCNF含有膜中、0〜5重量%が好ましく、0〜2重量%がより好ましい。
【0015】
多孔質材料としては、多孔質無機材料、有機多孔質材料のいずれも使用できる。しかしながら、取扱い容易性等を考慮すると有機多孔質材料が好ましい。さらに、多孔質材料は、積層体としたときにCNF膜と剥離しない程度に親水性を有することが好ましい。多孔質層の平均孔径は1μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。空隙率は50〜99%が好ましく、65〜85%がより好ましい。多孔質層の厚さは200μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。また多孔質層の厚さは5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0016】
積層体20を調製する方法は限定されない。例えば、一方の多孔質層22の上にCNF分散液を塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜の表面に新たな多孔質層22を載置して、これらに圧力を印加し、乾燥することで積層体20を調製できる。あるいは、CNFの湿潤膜を準備し、この両面に多孔質層22を配置して、加圧かつ乾燥することで積層体20を調製できる。
【0017】
(2)含浸工程
本工程では液状硬化性樹脂組成物24を、前記多孔質層22を介して前記セルロースナノファイバー含有膜10に含浸させる。液状硬化性樹脂組成物とは、液状硬化性樹脂と、必要に応じて硬化剤や硬化促進剤等の硬化性添加剤あるいは充填剤等の公知の添加剤を含む組成物をいう。液状硬化性樹脂とは、室温で液体であり、光照射または加熱等により硬化可能な樹脂である。当該樹脂としては、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂の公知の樹脂が挙げられる。液状硬化性樹脂組成物は透明の硬化物を与えるものが好ましい。透明の硬化物とは、目視で透明と確認できる硬化物をいうが、50μmの厚みの硬化物を用いて測定した600nmの平行光線透過率が50〜90%であることが好ましい。また、液状硬化性樹脂組成物は硬化剤等の他の成分を含まない液状硬化性樹脂であってもよい。
【0018】
液状硬化性樹脂組成物24を積層体20中のCNF含有膜10に含浸させる方法は特に限定されない。例えば、積層体20を液状硬化性樹脂組成物24中に浸漬することによって多孔質層22表面から液状硬化性樹脂組成物24をCNF含有膜10に含浸させることができる(
図1(C1))。あるいは、シリンジ等を用いて、多孔質層22表面から液状硬化性樹脂組成物24をCNF含有膜10まで含浸させることができる(
図1(C2))。この際、開口部を有する部材積層体20を挟み、当該開口部から液状硬化性樹脂組成物24を注入してもよい。
【0019】
最終的に得られるCNF複合膜中のCNF含有量は30〜50重量%が好ましく、50〜70重量%がより好ましく、70〜90重量%が特に好ましい。よって、液状硬化性樹脂組成物24とCNF含有膜10の重量比は、最終的に得られるCNF複合膜中のCNF含有量を考慮して決定される。さらに、CNF含有膜10の嵩密度によっても最終的に得られるCNF複合膜中のCNF含有量を調整できる。当該嵩密度は0.4〜1.5g/cm
3であることが好ましい。下限は0.8g/cm
3以上が好ましく、1g/cm
3以上がより好ましい。
【0020】
(3)硬化剥離工程
本工程では、
図1(D)および(E)に示すように、液状硬化性樹脂組成物24を硬化させて硬化積層体200を調製し、当該積層体から硬化多孔質層220を剥離して、本発明のCNF複合膜100を得る。
【0021】
液状硬化性樹脂組成物24の硬化反応率が低いと流動性を有するので硬化多孔質層220の剥離が困難になる。よって、本工程においては多孔質層220が剥離できる程度に液状硬化性樹脂組成物24を硬化させる。例えば、反応率が50〜100%となるように液状硬化性樹脂組成物24を硬化させて硬化多孔質層220とCNF複合膜100を剥離させる。しかしながら、硬化率が100%になると剥離が困難な場合があるので、反応率を50〜90%とすることが好ましく、60〜80%とすることがより好ましい。反応率は、硬化性官能基の残存量から算出できる。例えば、ラマン分光分析等の分光分析によって硬化物中の硬化性官能基の量を求め、反応率を算出できる。硬化はUV等の光照射、加熱等によって行うことができ、光量、照射時間、温度、加熱温度等により硬化反応率を調整できる。
【0022】
このようにして得たCNF複合膜100については、必要に応じて後硬化を行ってもよい。後硬化は光照射または加熱によって実施できる。後硬化条件は用いる液状硬化性樹脂によって適宜調整してよい。
【0023】
従来の方法で得られるCNF複合膜は、液状硬化性樹脂の表面張力により、複合膜表面にCNFを含まない樹脂層50が存在する(
図2参照)。通常樹脂層は10μm程度である。しかし、本発明の製造方法で得たCNF複合膜100は、余分な液状硬化性樹脂が多孔質層22に保持され、同時に剥離されるので複合膜100表面に当該樹脂層が存在しない。このため、本発明のCNF複合膜は優れた熱伝導性を有する。CNF複合膜の構造等については、以下に詳述する。
【0024】
2.CNF複合膜
本発明のCNF複合膜は樹脂マトリックスおよび当該樹脂マトリックス中に存在するセルロースナノファイバーを含む。前述のとおりCNF複合膜中のCNF含有量は30〜50重量%が好ましく、50〜70重量%がより好ましく、70〜90重量%が特に好ましい。CNF複合膜の厚みは1〜500μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。CNF複合膜の形状は特に限定されず、円状、方状等任意の形状としてよい。大きさも用途により適宜調整してよいが、例えば、円状である場合、直径を3〜10cm程度とすることができる。
【0025】
当該複合膜は、前記樹脂層が存在せず厚み方向において繊維が均等に分散しており、濃度のばらつきが小さい。すなわち、本発明のCNF複合膜を厚み方向に3等分した各層のうち、繊維濃度が最大になる層の繊維濃度をCmax、他の2つの層の繊維濃度をそれぞれCa、Cbとするとき、以下の関係が成り立つ。
(Cmax−Ca)/Cmax≦0.5かつ
(Cmax−Cb)/Cmax≦0.5。
【0026】
図3を参照してこのことを説明する。
図3は本発明のCNF複合膜100の断面を示す。破線は断面を三分割する線であり、これによって得られる層について各層の繊維濃度を測定したところ、濃度が上から順にCa、Cmax(最大)、Cbであったとする。本発明のCNF複合膜100においては、CmaxとCaの差、およびCmaxとCbの差が、Cmaxに対して50%以内である。当該差はCmaxに対して30%以内であることが好ましい。繊維濃度は、ラマン分光分析等の分光分析によりCNF複合膜100の断面を分析して、樹脂に起因するピーク強度または繊維に起因するピーク強度から求めることができる。例えば、液状硬化性樹脂としてアクリレート樹脂を用いた場合、CH変角振動に起因する805cm
−1のピーク強度とセルロース特有の1095cm
−1のピーク強度との比から、繊維濃度を求めることができる。
【0027】
このように、本発明のCNF複合膜100は厚み方向での繊維濃度にばらつきがないため、優れた熱伝導性を有する。面内方向の熱伝導率は、0.1W/mK以上であることが好ましく、1.0W/mK以上であることがより好ましい。熱伝導性は、熱拡散率×比熱容量×かさ密度により求められる。熱拡散率は試料をサイン波加熱して、応答波の位相差を測定する、周期加熱放射測温法により決定される。このような測定が可能な装置としては株式会社べテル製TA3が挙げられる。
【0028】
さらに、本発明のCNF複合膜100は優れた透明性も有する。透明度は50μmの厚みの膜を用いて600nmの平行光線透過率を測定して評価できる。当該透過率は50〜90%であることが好ましい。
【0029】
3.用途
本発明のCNF複合膜は、電子ペーパーやフレキシブル太陽電池等の次世代の薄型電子基板材料として有用である。
【実施例】
【0030】
[熱伝導率]
熱伝導率は、熱拡散率にかさ密度と比熱容量を乗じて求めた。熱拡散率は周期加熱放射測温法により測定した。具体的には株式会社べテル製TA3を用いて面内方向の熱拡散率を測定した。比熱容量はTAインスツルメント製温度変調DSC(Q200)によって求めた。
【0031】
[透明性]
透明性は、透過率測定器(日本分光株式会社製、V630)を用いて、50μmの厚みの膜の600nmの平行光線透過率を測定し、評価した。
【0032】
[硬化反応率]
ラマン分光分析計(日本分光株式会社製、NRS−5100)を用いて、未硬化光硬化性樹脂、半硬化光硬化性樹脂、完全硬化光硬化性樹脂のそれぞれについて、メタクリル基中のC=C伸縮に起因する1635cm
−1のピークP2と、CH変角に起因する805cm
−1のピークP1を測定した。以下の式から、硬化反応率を求めた。
【0033】
【数1】
【0034】
[繊維濃度分布]
ラマン分光分析計(日本分光株式会社製、NRS−5100)を用いてCNF複合膜の断面を分析した。具体的には、当該断面を厚み方向に三分割して、各層について0.8μm間隔でスポットを移動させ、樹脂のCH変角に起因する805cm
−1のピーク強度(I
805)とセルロースに起因する1095cm
−1のピーク強度(I
1095)を求めた(
図4参照)。そして強度比(I
1095)/(I
805)から、繊維濃度を算出し平均し各層の繊維濃度とした。最高繊維濃度をCmaxとし、それ以外の層の繊維濃度をCaおよびCbとし、以下の式より繊維濃度のばらつきを評価した。
(Cmax−Ca)/Cmax
(Cmax−Cb)/Cmax
【0035】
[線熱膨張係数]
TAインスツルメント製Q400を用いて、20〜80℃の寸法変化率(傾き)から線熱膨張係数を求めた。
【0036】
[製造例1]CNFの製造
宮城県産のマボヤの外套膜60gを1000mLの酢酸水溶液(酢酸0.3vol%)に入れ、さらに14.3g(1重量%分)のNaClO
2粉末(NaClO
2純度70%、和光純薬工業製)を加えて、80℃で5時間漂白処理した。当該処理物を、55wt%硫酸を用いて60℃で20分間、加水分解処理した。当該処理物に超音波を照射して解繊処理を行い、その後、金属メッシュ(300mesh)でろ過精製することでホヤ由来CNFが水に分散したCNF分散液を得た。
【0037】
[実施例1]
当該分散液を直径4.7cmのメンブランフィルター(アドバンテック株式会社製、親水性PTFEタイプH010A047A)を用いてろ過し、メンブランフィルターの上にCNF湿潤膜を製膜した。当該湿潤膜の上に新たにメンブランフィルターを載置した後、110℃でホットプレスして、メンブランフィルター/CNF膜/メンブランフィルター積層体を調製した。得られた積層体の一部を測定用に採取し、メンブランフィルターを剥離してCNF膜を単離した。当該CNF膜の厚みは約50μmであり、密度は0.95g/cm
3であった。
【0038】
液状紫外線硬化性樹脂(アクリル樹脂、新中村化学工業製、A−BPE−10)を充填したシャーレの中に前記積層体を浸漬した。当該シャーレを減圧下に2時間置き、メンブランフィルターを介してCNF膜に当該樹脂を含浸させた。次いで積層体を取出し、二枚のガラス板に挟み、紫外線を30秒照射して硬化(半硬化)した。このときの硬化反応率を前記の方法で測定したところ70%であった。
【0039】
両面のメンブランフィルターを剥離しCNF複合膜を単離した。さらに当該CNF複合膜に紫外線を5分間照射して後硬化を行い、完全硬化した。このようにしてCNF複合膜を製造した。当該複合膜中のCNF含有量は74.7重量%であった。当該CNF複合膜について、前述の方法により、熱伝導率、透明性、繊維濃度分布を測定し、評価した。
【0040】
[実施例2]
製造例で得たCNF分散液に、窒化ホウ素粉末(和光純薬工業製、CAS.NO10043-11-5)をCNFに対して5重量%添加して、窒化ホウ素含有CNF分散液を調製した。当該分散液を用いて、実施例1と同様にしてCNF複合膜を製造し、評価した。
【0041】
[比較例1]
製造例で得たCNF分散液を用いて実施例1と同様にしてメンブランフィルター上にCNFの湿潤を製膜した。当該湿潤膜を単離して乾燥した。当該乾燥膜を実施例1で用いた液状紫外線硬化性樹脂を充填したシャーレの中に前記積層体を浸漬し、当該シャーレを減圧下に1時間置きCNF膜に当該樹脂を含浸させた。次いで含浸膜を取出し、二枚のガラス板に挟み、紫外線を5分間照射して硬化して、比較用のCNF複合膜を得た。当該CNF複合膜について、実施例1と同様にして評価した。これらの結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
図5(A)は本発明のCNF複合膜断面をラマン分光して得た厚み方向における(I
1095)/(I
805)を、
図5(B)は比較用CNF複合膜断面をラマン分光して得た厚み方向における(I
1095)/(I
805)を、
図6は実施例2で得たCNF複合膜断面をラマン分光して得た厚み方向における(I
1095)/(I
805)を示す。表1、
図5、
図6から本発明のCNF複合膜はCNFの分散状態が均一であり優れた熱伝導性を有することが明らかである。特に
図6から、本発明によりCNF含有膜が窒化ホウ素を含む2成分系膜である場合にも表層に樹脂層を形成することなくCNF複合膜を製造できることも明らかである。CNF膜単独の熱伝導率は2.5W/mKであるので、本発明のCNF複合膜はCNF膜本来の熱伝導性を維持している。また、本発明のCNF複合膜は優れた透明性および熱寸法安定性を有することも明らかである。