【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る誘導加熱装置は、被加熱物を誘導加熱するための誘導コイルに商用周波数である50Hz又は60Hzの交流電流を供給するとともに、前記誘導コイルに供給される交流電流を可飽和リアクトルによって制御する誘導加熱回路を有し、前記誘導加熱回路において前記可飽和リアクトル及び前記誘導コイルの間に、力率改善用コンデンサ及び当該力率改善用コンデンサを保護する保護用交流リアクトルが接続されていることを特徴とする。
【0008】
この誘導加熱装置によれば、電力制御素子として可飽和リアクトルを用いた誘導加熱回路において力率改善用コンデンサを接続しているので、誘導加熱回路において力率を改善することができる。
特に、可飽和リアクトルは、動作原理が等アンペアターンによる電流制御であるため、それ自体が定電流特性を有しており、大きな電流が流れることを防止する作用がある。また、可飽和リアクトルにより比較的高い周波数成分を少なくすることができ、力率改善用コンデンサを保護するための保護用交流リアクトルを接続することで、力率改善用コンデンサが破損するような大きな電流を防止することができる。その結果、力率改善用コンデンサを破損させることなく、力率の改善が可能となる。
なお、
図5に基本周波数60Hzで正弦波交流電源において、電力制御素子としてサイリスタを用いた場合と、可飽和リアクトルを用いた場合とにおける高調波成分の実測値を示している。この
図5から明らかなように、可飽和リアクトルの方が、低出力時における高調波含有率の差が大きい。
【0009】
巻き数(√3)Nの第1誘導コイルの一端を第1可飽和リアクトルを介して三相交流電源の第1相に接続し、前記第1誘導コイルの他端を巻き数2Nの第2誘導コイルの中央である巻き数Nの位置に接続し、前記第2誘導コイルの一端を第2可飽和リアクトルを介して前記三相交流電源の第2相に接続し、前記第2誘導コイルの他端を前記三相交流電源の第3相に接続することによって2組の誘導加熱回路を構成していることが望ましい。
この構成であれば、2組の誘導加熱回路で三相交流電源の各相の電流バランスを図りながら、第1誘導コイル及び第2誘導コイルの出力を個別に制御することができる。
【0010】
巻き数(√3)Nの第1誘導コイルを流れる巻線電流は、巻き数2Nの第2誘導コイルに流れ込むので、第2誘導コイルの巻線電流をゼロにできないため、第2誘導コイルが作用する誘導加熱負荷量が制御できない場合が生じうる。このため、前記第2誘導コイルが作用する誘導加熱負荷量は、前記第1誘導コイルが作用する誘導加熱負荷量と同じ又はそれよりも大きくなるように設定されていることが望ましい。
この構成であれば、第1誘導コイルの巻線電流が第2誘導コイルに流れ込んでも、個別温度制御における支障が生じることを防ぐことができる。
【0011】
前記誘導コイルが作用する誘導負荷は、耐食性に優れた例えばSUS304やSUS316L等の非磁性金属製の容器であることが望ましい。また、容器を誘導加熱する場合には、容器の側壁の外側に誘導コイルを配置して側壁を誘導加熱するとともに、容器の底壁の外側に誘導コイルを配置して底壁を誘導加熱する2面加熱方式が望ましい。さらに、非磁性金属を誘導加熱する場合には低力率となってしまうところ、本発明のように力率改善コンデンサを有する可飽和リアクトルを用いた電力制御方式が望ましい。
【0012】
商用周波数による非磁性金属の誘導加熱は、高周波による非磁性金属の誘導加熱に比べて電流浸透度が高く、加熱される深度も深くなる。ここで、誘導加熱における容器2の電流浸透深さσ[m]は、金属の抵抗率ρ[Ω・m]と、比透磁率μと、電源周波数f[Hz]とによって決まり、次式で表わされる。
σ=503.3√{ρ/(μf)}
【0013】
例えば、SUS316L製の容器が800℃に加熱された状態において、商用周波数50Hzでは、電流浸透深さと呼ばれる表面電流密度の36.8%となる深さは、96.5mmであり、高周波である10000Hzでは、6.8mmである。商用周波数の場合の力率は高周波の場合に比べて低くなる傾向があるので、可飽和リアクトルと力率改善コンデンサと保護用交流リアクトルとの組み合わせによる力率改善は受電容量低減において有効である。
【0014】
図6は、800℃におけるSUS316Lの誘導電流の電流浸透深さを表わすグラフであり、容器の誘導コイルに対向する外側面の電流密度を1.0としたときの、電流密度と深さとの関係を示している。
【0015】
例えば、容器の肉厚6.8mmであるとすると、10000Hzでは外側面に対する内側面の電流密度が36.8%であるから、外表面の発熱に対して内側面の発熱は電流密度の2乗である13.5%となる。
一方、50Hzでは、容器の内側面の電流密度は約95%であるから、外側面に対する内側面の発熱比は約90%となる。
【0016】
熱処理対象の収容物に伝熱するのは容器の内側面であるため、10000Hzの高周波では外側面1の加熱に対して内側面0.135の発熱温度を制御しなければならないのに対し、50Hzの商用周波数では外側面1の加熱で内側面0.9の発熱温度を制御すれば良い。つまり、容器の内側面及び容器の外側面との温度差の小さい商用周波数を用いることが、容器の内側面の温度制御性において優れている。
【0017】
このため、前記容器を構成する非磁性金属の肉厚は、前記誘導コイルに対向する外側面の電流密度に対して、当該外側面とは反対側の内側面の電流密度が90%以上となるように形成されていることが望ましい。容器は内側面の温度を所望の値に制御するために外側面から誘導加熱するが、内外面の温度差が大きいと制御性が悪くなる。内側面の電流密度が外側面の電流密度に比べて90%以上であれば、内側面の発熱量は外側面の発熱量のおよそ80%以上となることから、高い温度制御精度が得られる。