特許第6872767号(P6872767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872767吊り足場の支持構造、支持方法及び構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872767
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】吊り足場の支持構造、支持方法及び構築方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20210510BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20210510BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   E01D21/00 A
   E04G3/24 302H
   E01D22/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-182983(P2016-182983)
(22)【出願日】2016年9月20日
(65)【公開番号】特開2018-48450(P2018-48450A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】315019894
【氏名又は名称】株式会社杉孝グループホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【弁理士】
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 信夫
(72)【発明者】
【氏名】水落 昇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昌史
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−360302(JP,A)
【文献】 特開2012−030927(JP,A)
【文献】 特開2012−122266(JP,A)
【文献】 実開平03−015758(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0067955(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
E04G 1/00−7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う高所構造物の桁又は梁のウェブ部の側面又は壁面の離間距離(S)よりも小さい全長を有し、前記桁又は梁の下フランジ部に着座して該フランジ部によって支承される受座部を両端部に有し、該受座部を前記フランジ部の上面又はハンチ面に着座せしめることにより、隣り合う桁又は梁のスパン間領域に架設される二点支持構造の横架材と、該横架材の吊元部に上端部を係止又は係留され、吊り足場を前記桁又は梁の下側に懸吊する索条とを有する吊り足場の支持構造において、
間隔を隔てて並列に配置された複数の横架材同士を相互連結するための連繋材と、前記横架材の両端部に取付けられ、該横架材の軸線方向に前記桁又は梁のウェブ部を押圧す押圧装置とを有
前記横架材の上方のスパン間領域(α)に立体架構又は立体骨組を形成することなく、前記横架材の両端部の前記押圧装置によって該横架材の軸線方向に前記桁又は梁のウェブ部を押圧するとともに、吊り足場を懸吊するための格子状の支持構造体を前記横架材及び連繋材によって形成し、前記横架材の軸線方向に作用する前記桁又は梁の反力によって前記横架材の位置を拘束し、地震時又は強風時に吊り足場及びその支持構造に作用する外力又は加振力に起因する該横架材の変位、変形又は回動を阻止するようにしたことを特徴とする吊り足場の支持構造。
【請求項2】
前記横架材は、前記押圧装置を備えた一対の吊元材と、該吊元材を相互連結する梁部材と、前記吊元材の下部に配置される前記受座部とを組立てた組立体からなることを特徴とする請求項1に記載の支持構造。
【請求項3】
前記フランジ部の側面及び下面を部分的に囲繞するように前記横架材から下方に延びるフランジ囲繞具を更に有し、該囲繞具は、前記フランジ部の直下に前記索条の吊元を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の支持構造。
【請求項4】
前記梁部材の中間領域に吊元形成部材を付加的に配設し、前記吊元材の間の領域に前記索条の吊元を更に形成することを特徴とする請求項2に記載の支持構造。
【請求項5】
前記受座部は、前記吊元材の下部に配置され、前記桁又は梁の軸線方向と平行な中心軸線を有する支軸によって該中心軸線を中心に回動可能に支持され、所定角度を超える前記受座部の回動を阻止する回動制止部材が、前記吊元材に配設されることを特徴とする請求項2又はに記載の支持構造。
【請求項6】
隣り合う高所構造物の桁又は梁のウェブ部の側面又は壁面の離間距離(S)よりも小さい全長を有し、前記桁又は梁の下フランジ部に着座して該フランジ部によって支承される受座部を両端部に有する二点支持構造の横架材を隣り合う桁又は梁のスパン間領域架設し、前記桁又は梁と直交する方向に延びる前記横架材によって索条の吊元を形成するとともに、該横架材に係止又は係留した索条によって吊り足場を懸吊する吊り足場の支持方法において、
前記受座部を前記フランジ部の上面又はハンチ面に着座させ
前記横架材の端部に取付けられた押圧装置によって該横架材の軸線方向に前記桁又は梁のウェブ部を押圧するとともに、間隔を隔てて並列に配置された複数の横架材同士を連繋材によって相互連結して、吊り足場を懸吊するための格子状の支持構造体を前記横架材及び連繋材によって形成し
前記横架材の上方のスパン間領域(α)に立体架構又は立体骨組を形成することなく、前記横架材の軸線方向に作用する前記ウェブ部の反力によって前記横架材位置を拘束し、地震時又は強風時に吊り足場及びその支持構造に作用する外力又は加振力に起因する該横架材の変位、変形又は回動を阻止することを特徴とする吊り足場の支持方法。
【請求項7】
前記押圧装置を備えた一対の吊元材と、該吊元材を相互連結する梁部材と、前記吊元材の下部に配置される前記受座部とを組立てる組立体として、前記横架材を構成し、前記梁部材の交換により、前記桁又は梁のスパン寸法に対する前記横架材の適用範囲を変更することを特徴とする請求項6に記載の支持方法。
【請求項8】
前記フランジ部の側面及び下面を部分的に囲繞するように前記横架材から下方に延びるフランジ囲繞具によって、前記フランジ部の直下に前記索条の吊元を更に形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の支持方法。
【請求項9】
前記梁部材の中間領域に吊元形成部材を付加的に配設し、前記吊元材の間の領域に前記索条の吊元を更に形成することを特徴とする請求項に記載の支持方法。
【請求項10】
前記受座部を前記吊元材の下部に配置し、前記桁又は梁の軸線方向と平行な中心軸線を有する支軸によって該中心軸線を中心に回動可能に前記受座部を支持し、前記吊元材に設けられた回動制止部材によって、所定角度を超える前記受座部の回動を阻止することを特徴とする請求項7又は9に記載の支持方法。
【請求項11】
高所構造物の桁又は梁の下フランジ部によって横架材の端部を支承して、隣り合う桁又は梁のスパン間領域に前記横架材を架設し、前記桁又は梁と直交する方向に延びる前記横架材によって索条の吊元を形成するとともに、該横架材に係止又は係留した索条によって吊り足場を懸吊する吊り足場の構築方法において、
並列配置された複数の横架材を相互連結するための連繋材を既存の横架材にスライド可能に支承し、前記連繋材の先端部分に第2横架材を緊締し、該連繋材を吊り足場の未施工領域の側にスライドさせて第2横架材を位置決めし且つ前記連繋材を既存の横架材に緊締し、
新たな索条を第2横架材に係止又は係留し、該索条によって吊り足場の足場板又は足場パネルを前記未施工領域に懸吊することを特徴とする吊り足場の構築方法。
【請求項12】
新たな索条を前記連繋材に係止又は係留し、該索条によって吊り足場の足場板又は足場パネルを前記未施工領域に懸吊した後、第2横架材に前記索条を係止又は係留する工程を実施することを特徴とする請求項11に記載の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り足場の支持構造、支持方法及び構築方法に関するものであり、より詳細には、T桁橋等の高所構造物の桁又は梁の点検・補修等のために桁又は梁の下側に吊り足場を懸吊する吊り足場の支持構造、支持方法及び構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PC(プレストレス・コンクリート)バルブT桁橋等の橋梁構造物や、プラント又は大規模建築の高架構造物等の点検・補修、改修工事、補強工事等の際には、高所構造物の下側に作業用の吊り足場が仮設される。吊り足場の工法として、セーフティSKパネル工法、パーフェクト工法等が知られているが、いずれの工法においても、チェーン、ワイヤ、ケーブル等の索条によってパネル材、面材、足場板等が高所構造物から懸吊され、高所の吊り足場が高所構造物の下側に形成される(特開2010-65378号公報等)。
【0003】
吊り足場を橋梁のRC桁又はPC桁等に係止又は係留する従来の工法として、吊り足場を懸吊するための索条を係止又は係留可能なアンカーボルト等の係留具をコンクリート製の桁材又は梁材に打込み又は埋入する方式の工法が知られている。この工法では、アンカーボルト等の施工時にコンクリート内の鉄筋が切断されることが懸念されるので、通常は、コンクリート内の鉄筋の位置を確認し又は調査するために鉄筋探査等が事前に実施される。また、この工法では、アンカーボルトの撤去や、その設置箇所の補修等を事後的に実施する必要が生じる。
【0004】
これに対し、このような係留具をPC桁等に直に設置せずに吊り足場をPC桁等から懸吊する技術が、例えば、特開2001-90030号公報及び特開2004-360302号公報に記載されている。図14(A)及び図14(B)は、これらの公報に記載された吊り足場の支持構造を示す縦断面図及びIII−III線断面図である。
【0005】
図14に示す如く、橋梁Gは、複数のPCバルブT桁を並列配置したPCバルブT桁橋である。各々の桁Dは、ウェブ部Eの下端を球根状に拡大した下側フランジ部Fを有する。鋼製の足場支持用横架材Bが、フランジ部Fの上面レベル(上側ハンチレベル)に配置される。横架材Bは、桁Dと直交する方向に配向される。横架材Bの各端部は、フランジ部Fの上面(ハンチ面)Faに載置され、フランジ部Fによって支承される。横架材Bは、索条Cの吊元を形成する。金属製チェーン等の索条Cの上端部が横架材Bに係止又は係留され、吊り足場Aを構成するパネル、管材等が索条Cの下端部に係留される。
【0006】
吊り足場をPC桁等から懸吊する他の技術として、T桁のフランジ部Fを把持又は挟持する足場吊り金具によって吊り足場を懸吊する技術が、特開2012-122266号公報に記載されている。図15(A)及び図15(B)は、この方式の吊り足場支持構造を示す縦断面図及びIV−IV線断面図である。
【0007】
図15には、一対の係止部材M、Nによってフランジ部Fを両側から把持又は挟持する足場吊り金具Jが示されている。桁Dと直交する方向に配向された水平部材Kが、フランジ部Fの下面に沿って延びる。係止部材M、Nは、水平部材Kによって相互連結される。係止部材M、Nの係止部Ma、NaがフランジJの上面(ハンチ面)Faに当接し、水平部材Kが、索条Cの吊元を形成する。索条Cの上端部が水平部材Kに係止又は係留され、吊り足場Aのパネル、管材等が索条Cの下端部に係留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-65378号公報
【特許文献2】特開2001-90030号公報
【特許文献3】特開2004-360302号公報
【特許文献4】特開2012-122266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
足場支持用の横架材Bをフランジ部Fの上面に載置して横架材Bを支承する上記支持構造(図14)においては、横架材Bの全長は、施工上、隣り合うウェブ部Eの側面(壁面)離間距離(以下「桁材間スパンS」という。)よりも小さく設定せざるを得ない。このため、使用時に横架材Fが変位し又は回動し、横架材Bの端部がフランジ部Fから離脱又は脱落する事態が懸念される。例えば、地震時、強風時等に橋梁G及び吊り足場Aに作用する水平外力や加振力によって横架材B及びフランジ部Fが相対変位し得ることを想定すると、横架材B及びフランジ部Fの過大な相対変位を阻止する対策は、重要であると考えられる。
【0010】
この点に関し、特開2004-360302号公報には、横架材Bの上側領域に第2横架材及び支柱を配設し、横架材Bを含む立体架構又は立体骨組構造を桁材間領域α(桁材間スパンSの領域)に配置し、吊り足場支持構造の剛性を向上することが記載されている。しかし、重量、施工性、工事費及び工事期間等を考慮すれば容易に理解し得るとおり、このような複雑且つ重厚な立体架構等を桁材間領域αに配設する構成は、現実には採用し難い。
【0011】
他方、PC桁に取付けた足場吊り金具Jによって吊り足場を支持する支持構造(図15)においては、足場吊り金具Jを桁Dの直下又はその近傍に配置せざせるを得ない。このため、フランジ部Fの間の桁材間領域αに吊元を形成し得ないという問題が生じる。殊に、桁材間スパンSを比較的大きく設定される大規模な橋梁等では、吊元間隔が増大し、吊り足場を容易に支持し難い状況が生じ得る。
【0012】
また、PCバルブT桁のフランジ部Fの各部寸法及びハンチ面傾斜角等は、個々のPC桁毎に相違する。図15(C)には、フランジ部Fの幅W1、突出寸法W2、高さV及びハンチ面傾斜角θが記載されているが、これらの寸法又は角度として比較的多くの橋梁構造物で設定される値は、例えば、以下のとおりである。
300mm≦W1≦800mm
85mm≦W2≦275mm
250mm≦V≦550mm
35°≦θ≦55°
上記構成の足場吊り金具Jでは、ある程度まで各部寸法等を調節可能な寸法等調節機構を備えることができるかもしれないが、このように構造物毎に大きく相違する寸法範囲及び角度範囲等に適応し得るように足場吊り金具Jを設計することは、極めて困難である。
【0013】
更に、この種の吊り足場を吊り足場上の作業者が拡張する作業は、比較的作業性が悪い高所作業であるので、このような作業の作業性を改善し、この作業を容易に実施し得るようにする対策が望まれる。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高所構造物の桁又は梁によって吊り足場支持用の横架材を支承する吊り足場の支持構造及び支持方法において、複雑且つ重厚な立体架構又は立体骨組構造を桁材間領域に配設することなく、吊り足場を支持する横架材の過大な変位、変形又は回動を確実に防止することができる吊り足場の支持構造及び支持方法を提供することにある。
【0015】
本発明は又、高所構造物の桁又は梁によって吊り足場支持用の横架材を支承する吊り足場をその未施工領域に拡張する吊り足場の構築方法において、吊り足場上の作業者が比較的容易に吊り足場を拡張することができる吊り足場の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成すべく、本発明は、隣り合う高所構造物の桁又は梁のウェブ部の側面又は壁面の離間距離(S)よりも小さい全長を有し、前記桁又は梁の下フランジ部に着座して該フランジ部によって支承される受座部を両端部に有し、該受座部を前記フランジ部の上面又はハンチ面に着座せしめることにより、隣り合う桁又は梁のスパン間領域に架設される二点支持構造の横架材と、該横架材の吊元部に上端部を係止又は係留され、吊り足場を前記桁又は梁の下側に懸吊する索条とを有する吊り足場の支持構造において、
間隔を隔てて並列に配置された複数の横架材同士を相互連結するための連繋材と、前記横架材の両端部に取付けられ、該横架材の軸線方向に前記桁又は梁のウェブ部を押圧す押圧装置とを有
前記横架材の上方のスパン間領域(α)に立体架構又は立体骨組を形成することなく、前記横架材の両端部の前記押圧装置によって該横架材の軸線方向に前記桁又は梁のウェブ部を押圧するとともに、吊り足場を懸吊するための格子状の支持構造体を前記横架材及び連繋材によって形成し、前記横架材の軸線方向に作用する前記桁又は梁の反力によって前記横架材の位置を拘束し、地震時又は強風時に吊り足場及びその支持構造に作用する外力又は加振力に起因する該横架材の変位、変形又は回動を阻止するようにしたことを特徴とする吊り足場の支持構造を提供する。
【0017】
他の観点より、本発明は、隣り合う高所構造物の桁又は梁のウェブ部の側面又は壁面の離間距離(S)よりも小さい全長を有し、前記桁又は梁の下フランジ部に着座して該フランジ部によって支承される受座部を両端部に有する二点支持構造の横架材を隣り合う桁又は梁のスパン間領域架設し、前記桁又は梁と直交する方向に延びる前記横架材によって索条の吊元を形成するとともに、該横架材に係止又は係留した索条によって吊り足場を懸吊する吊り足場の支持方法において、
前記受座部を前記フランジ部の上面又はハンチ面に着座させ
前記横架材の端部に取付けられた押圧装置によって該横架材の軸線方向に前記桁又は梁のウェブ部を押圧するとともに、間隔を隔てて並列に配置された複数の横架材同士を連繋材によって相互連結して、吊り足場を懸吊するための格子状の支持構造体を前記横架材及び連繋材によって形成し
前記横架材の上方のスパン間領域(α)に立体架構又は立体骨組を形成することなく、前記横架材の軸線方向に作用する前記ウェブ部の反力によって前記横架材位置を拘束し、地震時又は強風時に吊り足場及びその支持構造に作用する外力又は加振力に起因する該横架材の変位、変形又は回動を阻止することを特徴とする吊り足場の支持方法を提供する。
【0018】
本発明の上記構成によれば、吊り足場は、横架材によって懸吊され、横架材は、隣り合う桁又は梁のフランジ部によって支承される。横架材に作用する吊り足場の鉛直荷重は、両端部をフランジ部に支承された二点支持構造の横架材により支持される。桁又は梁のウェブ部は、押圧装置によって押圧され、ウェブ部の反力は、軸線方向の圧縮力として横架材に作用し、横架材の位置を保持し又は拘束する。このため、横架材は、桁又は梁に対して相対変位し難く、横架材の支持は構造的に安定する。この結果、水平荷重や水平加振力、或いは、吊り足場に作用する予測不能な短期荷重等に起因した横架材の過大な変位、変形又は回動等を防止することができる。しかも、上記構成の支持構造及び支持方法は、複雑且つ重厚な立体架構又は立体骨組構造を桁材間領域に配設することを要しない構成のものであるので、重量、施工性等の点で極めて有利である。
【0019】
好ましくは、上記横架材は、押圧装置を備えた一対の吊元材と、吊元材を相互連結する梁部材と、吊元材の下部に配置される受座部とを組立てた組立体からなり、受座部は、フランジ部の上面又はハンチ面に着座してフランジ部によって支承される。このような構成の横架材によれば、梁部材の交換により、桁又は梁のスパン寸法に対する横架材の適用範囲を容易に変更することができる。
【0020】
また、横架材同士を相互連結する連繋材によって格子状の支持構造体を形成する本発明の構成によれば、支持構造体の剛性が全体的に向上するとともに、連繋材によって索条の吊元を形成することができるので、横架材の所要本数を低減することが可能となる。
【0021】
所望により、フランジ部の側面及び下面を部分的に囲繞するように横架材から下方に延びるフランジ囲繞具を横架材に更に設け、フランジ囲繞具によってフランジ部の直下に索条の吊元を形成しても良い。また、梁部材の中間領域に吊元形成部材を付加的に配設し、吊元材の間の領域に索条の吊元を更に形成しても良い。
【0022】
好適には、上記受座部は、上記吊元材の下部に配置され、上記吊元材は、桁又は梁の軸線方向と平行な中心軸線を有する支軸によって支軸の中心軸線を中心に回動可能に受座部を支持するとともに、吊元材に設けられた回動制止部材によって、所定角度を超える受座部の回動を阻止するように構成される。このような構成によれば、受座部をフランジ部のハンチ面の傾斜角に容易に適合させるとともに、過大な受座部の回動を確実に防止することができる。
【0023】
他の観点より、本発明は、高所構造物の桁又は梁の下フランジ部によって横架材の端部を支承して、隣り合う桁又は梁のスパン間領域に前記横架材を架設し、前記桁又は梁と直交する方向に延びる前記横架材によって索条の吊元を形成するとともに、該横架材に係止又は係留した索条によって吊り足場を懸吊する吊り足場の構築方法において、
並列配置された複数の横架材を相互連結するための連繋材(10a)を既存の横架材(1)にスライド可能に支承し、前記連繋材の先端部分に第2横架材(1a)を緊締し、該連繋材を吊り足場の未施工領域(λ)の側にスライドさせて第2横架材を位置決めし且つ前記連繋材を既存の横架材(1)に緊締し、
新たな索条(Cb)を第2横架材に係止又は係留し、該索条によって吊り足場の足場板又は足場パネル(Pb)を前記未施工領域に懸吊することを特徴とする吊り足場の構築方法を提供する。
【0024】
好ましくは、第2横架材(Cb)に上記索条を係止又は係留する前に、新たな索条(Ca)が上記連繋材に係止又は係留され、該索条によって吊り足場の足場板又は足場パネル(Pa)が上記未施工領域に懸吊される。
【0025】
このような吊り足場の構築方法によれば、作業者が連繋材及び横架材を吊り足場上で組立てた後、連繋材を上記未施工領域にスライドさせ、既存の横架材に片持ち梁(キャンチレバー)形態に固定することにより、吊り足場懸吊用の横架材を足場の未施工領域に新たに配設することができる。本発明の好適な実施形態においては、連繋材のスライドさせる手段は、遊嵌状態(解放状態)のクランプ部材であり、連繋材を固定する手段は、締付け状態(緊締状態)のクランプ部材である。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る吊り足場の支持構造及び支持方法によれば、高所構造物の桁又は梁によって吊り足場支持用の横架材を支承する吊り足場の支持構造及び支持方法において、複雑且つ重厚な立体架構又は立体骨組構造を桁材間領域に配設することなく、吊り足場を支持する横架材の過大な変位、変形又は回動を確実に防止することができる。
【0027】
本発明に係る吊り足場の構築方法によれば、高所構造物の桁又は梁によって吊り足場支持用の横架材を支承する吊り足場をその未施工領域に拡張する吊り足場の構築方法において、吊り足場上の作業者が比較的容易に吊り足場を拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の好適な実施形態に係る吊り足場支持構造の全体構成を示す橋梁の縦断面図である。
図2図2(A)〜図2(C)は、横架材の構造を示す平面図、正面図、側面図であり、図2(D)は、梁部材の管材を比較的短い管材に交換した構成を示す横架材の正面図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、受座部及び押圧部の構造を示す横架材の部分拡大正面図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、更に好適な実施形態に係る押圧部の構造を示す部分破断拡大正面図及び拡大側面図である。
図5図5(A)及び図5(B)は、クランプ部材及び連繋材を横架材に取付けた状態を示す平面図及び正面図であり、図5(C)は、梁部材の管材を比較的短い管材に交換した構成を示す横架材の正面図であり、図5(D)は、図5(B)のI−I線における断面図であり、図5(E)は、図5(B)のII−II線における梁部材の拡大断面図である。
図6図6は、並列配置された横架材を連繋材によって相互連結した構成を示す吊り足場支持構造の斜視図である。
図7図7は、フランジ部の下側に延びるフランジ拘束具を備えた吊元材の構成を示す平面図、正面図、側面図及び底面図である。
図8図8は、図7に示す横架材の使用形態を示す横架材の部分正面図である。
図9図9(A)は、横架材の中央部に索条係留部材を配設した構成を示す横架材の正面図であり、図9(B)は、図9(A)に示す横架材を鉄骨構造の橋梁等に使用した使用形態を示す正面図である。
図10図10は、吊り足場支持構造の全体構成を示す橋梁の縦断面図であり、図9(A)に示す横架材中央部の索条係留部材によって付加的に吊り足場を懸吊した状態が示されている。
図11図11は、吊り足場の構築方法を例示する縦断面図であり、吊り足場の設置工程が段階的に示されている。
図12図12は、吊り足場の構築方法を示す斜視図である。
図13図13は、吊り足場の構築方法を示す斜視図であり、図12に示す工程に後続する工程が示されている。
図14図14は、従来技術に係る吊り足場の支持構造を示す縦断面図及びIII−III線断面図である。
図15図15(A)及び図15(B)は、係止部材によってPC桁のフランジ部を把持又は挟持する従来の足場吊り金具の構成を示す縦断面図及びIV−IV線断面図であり、図15(C)は、フランジ部の主要寸法及びハンチ面傾斜角を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1(A)は、本発明の好適な実施形態に係る吊り足場支持構造の全体構成を示す橋梁の縦断面図である。図1(B)は、図1(A)の部分拡大図である。
【0031】
図1(A)及び図1(B)には、PCバルブT桁橋構造の橋梁Gが示されている。橋梁Gは、桁材間スパンSの間隔を隔てて並列配置された複数の桁Dを有する。足場支持用の横架材1が、桁Dの下側フランジ部Fの張出部(ハンチ面Fa)によって支承される。横架材1は、吊り足場Aを橋梁Gの下側に懸吊する吊り足場支持構造を構成する。
【0032】
横架材1は、梁部材2、吊元材3、受座部4及び押圧部5を一体的に組立てた構造を有する金属製又は鋼製の組立梁である。横架材1は、後述する如く、梁部材2及び吊元材3の連結位置調節機構を調整することにより、その全長を調節可能な構造を有する。押圧部5を除く横架材1の全長は、吊元材3の両端面がウェブ部Eの側面Eaから距離βを隔てて配置されるように、横架材1の組立時に予め調節又は初期設定される。好ましくは、距離βは、横架材1をフランジF上の位置に配置する上で施工上必要な最小限のクリアランスである。
【0033】
図2(A)〜図2(C)は、横架材1の構造を示す平面図、正面図、左側面図であり、図2(D)は、比較的短い管材によって吊元材3を相互連結した構成を示す横架材1の正面図である。図3(A)及び図3(B)は、受座部4及び押圧部5の構造を示す横架材1の部分拡大正面図である。
【0034】
梁部材2は、角形(正方形)断面の鋼管又は金属管20(以下、「管体20」という。)よりなり、管体20の両端部は、図2(A)に示す如く、角形(正方形)断面の鋼管又は金属管からなる吊元材3の管体部30に挿入される。多数の位置決め孔21が管体20の両側面に穿設されるとともに、位置決め孔21に整合可能な位置決め孔31が、管体部30の両側面に穿設される。整合した位置決め孔21、31に挿通可能な軸部22a、22bを有する係止具22が、金属ワイヤ等の索条によって吊元材3に係留される。係止具22の軸部22a、22bを位置決め孔21、31に挿通することにより、管体20及び管体部30の位置関係を固定することができる。
【0035】
吊元材3は、管体部30の下面から垂下するブラケット33を有する。ブラケット33は、方形開口部34及び円形開口部35を有する。方形開口部34は、後述するクランプ取付け用の開口であり、円形開口部35は、索条C(図1)を吊元材3に係留又は係止するための索条貫通用の開口である。また、吊元材3の外端部上面には、押圧部5が配設され、吊元材3の外端下部には、受座部4が配設される。
【0036】
図2(A)及び図2(B)に示す横架材1は、桁材間スパンS=1500mm〜2000mmの範囲に適応するように予め設定され、押圧部5を含む横架材1の全長L1は、最大長位置で係止具22を位置決め孔21、31に挿通した図2(A)及び図2(B)の状態において、2000mmよりも寸法ΔL×2だけ短く設定されている。他方、図2(D)に示す横架材1は、桁材間スパンS=1000mm〜1500mmに適応するように設定されており、比較的短い全長の管材が梁部材20として使用され、横架材1の全長L1は、係止具22を最小長位置で位置決め孔21、31に挿通した図2(D)の状態において、1000mmよりも寸法ΔL×2だけ短く設定されている。即ち、横架材1を設置すべき橋梁Gの桁材間スパンSが大きく相違する場合には、梁部材20を交換することにより、横架材1の適用スパン範囲を所望の如く設定変更することができる。また、横架材1の全長L1を桁材間スパンSに対して調節するには、整合する位置決め孔21、31を変更して係止具22の軸部22a、22bを位置決め孔21、31に挿入すれば良く、従って、位置決め孔21、31及び係止具22は、横架材1の全長L1を調節するための梁部材2及び吊元材3の連結位置調節機構を構成する。
【0037】
図3には、受座部4をフランジ部Fのハンチ面Faに着座した受座部4が示されている。図3(A)には、傾斜角θ=55°のハンチ面Faに受座部4が着座した状態が示されており、図3(B)には、傾斜角θ=30°のハンチ面Faに受座部4が着座した状態が示されている。傾斜角θ=55°は、本例の横架材1が適応可能なハンチ面の最大傾斜角であり、傾斜角θ=30°は、本例の横架材1が適応可能な最小傾斜角である。
【0038】
図3に示す如く、受座部4は、支軸42によってブラケット33に回動可能に支持された受座金具40を有する。受座金具40は、底面視方形(図4(B))の着座盤45を有する。着座盤45は、ハンチ面Faに着座する着座面41を備える。着座盤45は、着座面41の幅を拡大して着座時の安定性を向上する。横架材1は、着座面41の着座によりハンチ面Faに支承され、横架材1の鉛直荷重は、フランジ部Fによって支持される。
【0039】
制止ピン43がブラケット33の側面に突設される。制止ピン43は、傾斜角θ=55°まで回転した受座金具40に衝合し、角度55°を超える受座金具40の回転を阻止する。従って、角度55°を超える受座金具40の回動を確実に防止することができる。
【0040】
前述のとおり、横架材1の全長Lは、桁材間スパンSよりも寸法ΔL×2だけ小さい寸法に設定されるが、寸法ΔLは、押圧部5を締付けたときに生じる押圧部5の変位量(伸長寸法)でもある。以下、図3及び図4を参照して押圧部5の構成について説明する。
【0041】
図3(A)に示す如く、押圧部5は、管体部30の上面から上方に突出する基部51を有し、長ナット52が基部51の上縁に水平に固定される。アジャスタボルト50の螺子部53が長ナット51に螺入し、螺子部53のヘッド部54が長ナット52から突出する。螺子部53の中心軸線φ2は、横架材1の中心軸線φ1(梁部材20及び管体部30の中心軸線)と平行であり、横架材1の中心軸線φ1に対して距離εだけ上方に偏心している。なお、図3には、受座部4及び押圧部5の支点間距離ηが示されている。
【0042】
アジャスタボルト50は、桁Dのウェブ部Eに押圧される拡大先端部55を有し、拡大先端部55は、ウェブ部Eの側面Eaに当接可能な硬質ゴム等の弾性体を備える。ヘッド部54は、インパクトレンチ又はトルクレンチ等の締付け工具(図示せず)に係合する。アジャスタボルト50は、締付け工具の締付け力によって回転し、図3(A)に矢印γで示すように、ウェブ部Eの側面Eaに押圧される。図3(B)には、アジャスタボルト50の拡大先端部55を側面Eaに押圧した状態が示されている。
【0043】
横架材1は、両側の押圧部5を締付けて各拡大先端部55を各側面Eaに押圧することより、桁材間領域αに水平に架設される。各拡大先端部55は、拡大先端部55と側面Eaとの間に作用する側面Eaの反力と、両者間の摩擦力とにより、各側面Eaに拘束され又は保持される。このため、横架材1は、地震時、強風時等に橋梁G及び吊り足場Aに作用する水平外力や加振力等に抗してその位置を維持しようとするので、フランジ部Fに対する横架材1の過大な相対変位を確実に阻止することができる。なお、横架材1の撤去時には、ヘッド部54を逆方向に回転させてアジャスタボルト50の締付け力を解放すれば良い。
【0044】
図4(A)及び図4(B)は、更に好適な実施形態に係る押圧部5の構造を示す部分破断拡大正面図及び拡大側面図である。
【0045】
図4に示す押圧部5は、管体部30の先端中空部に内装された基板56を有する。基板56の中心部には、アジャスタボルト50の螺子部53が貫通する円形開口59が穿設されるとともに、長ナット52が同心状に固定される。アジャスタボルト50の螺子部53が長ナット52に螺入し、管体部30の管内領域において長ナット52の反対側に突出する。螺子部53の中心軸線φ2は、横架材1の中心軸線φ1(梁部材20及び管体部30の中心軸線)と一致し、押圧部5及び横架材1は合芯しており、受座部4及び押圧部5の支点間距離ηは、図3に示す受座部4及び押圧部5の支点間距離ηに比べて短縮している。アジャスタボルト50は、拡大先端部55の裏面側に隣接して螺子部53に固定された手動操作式の回転ハンドル57を有する。アジャスタボルト50は、ハンドル57を手作業で回転させることにより、矢印γで示すように、ウェブ部Eの側面Eaに押圧される。
【0046】
拡大先端部55の位置は、拡大先端部55と側面Eaとの間に作用する反力及び摩擦力により、各側面Eaに拘束され又は保持され、横架材1は、橋梁G及び吊り足場Aに作用する水平外力や加振力等に抗して、フランジ部Fに対する横架材1の過大な相対変位を阻止することができる。なお、横架材1の撤去時には、ハンドル57を手作業で逆方向に回転させれば良い。
【0047】
このように押圧部5によってウェブ部Eの側面Eaを押圧して横架材1を架設することにより、横架材1の水平変位を防止し、受座部4を確実にフランジ部Fによって支承し得るが、本実施形態の横架材1は、横架材1の構造的安定性を更に向上すべく、複数の横架材1の協働および支持構造全体の剛性向上を図り、或いは、横架材1の本数の低減を図るために、クランプ取付け用の方形開口部34を備える。方形開口部34を有する吊元材3の部分には、図2(B)に破線で示す如く、クランプ部材9を取付けることができる。
【0048】
図5(A)及び図5(B)は、クランプ部材9及び連繋材10を横架材1に取付けた状態を示す平面図及び正面図であり、図5(C)は、比較的短い管材を梁部材20として用いた構成を示す横架材1の正面図である。図5(D)は、図5(B)のI−I線における断面図であり、図5(E)は、図5(B)のII−II線における梁部材2の拡大断面図である。図6は、並列配置された横架材1を連繋材10によって相互連結した構成を示す吊り足場支持構造の斜視図である。
【0049】
図5に示す横架材1は、図4に示す構造の押圧部5を有する。図5(E)に示す如く、梁部材2は、管体20の中空部内に挿入された補強鋼材23を有する。補強鋼材23は、溝形断面又はチャンネル形断面を有し、位置決め孔21に整合した位置決め孔24が、補強鋼材23のウェブ部分に穿設される。補強鋼材23は、梁部材2の曲げ剛性を向上するスチフナ又はウェブとして機能する。
【0050】
図5(A)〜図5(C)の左半部には、連繋材10として角形断面(正方形断面)の鋼管又は金属管を使用した状態が例示され、図5(A)〜図5(C)の右半部には、連繋材10として円形断面の鋼管又は金属管を使用した状態が例示されている。角形断面の連繋材10として、60mm角の鋼管を例示し、円形断面の鋼管として、約50mm径の鋼管を例示し得る。但し、左側及び右側の連繋材10として、同一断面の管材を使用し得ることはいうまでもない。なお、クランプ部材9は、単管足場等の仮設足場において一般に使用される管材緊締用のクランプ部材である。
【0051】
図6には、梁間方向(Y方向)に配向した複数の横架材1を桁方向(X方向)に間隔を隔てて架設するとともに、桁方向に延びる連繋材10によって横架材1同士を相互連結した吊り足場Aの支持構造が示されている。本実施形態において、吊り足場Aは、セーフティSKパネル工法に従って幅W3=約660mmのSKパネル(登録商標)を索条Cによって横架材1の吊元材3および連繋材10から懸吊するとともに、SKパネル同士を順次、相互連接した構造のものである。
【0052】
横架材1及び連繋材10はクランプ部材9によって相互連結され、水平外力、加振力等による変形又は支点移動を抑制された比較的高剛性の格子状構造の支持構造体が、概ねハンチ部Faのレベルに形成される。また、セーフティSKパネル工法の場合、SKパネルの幅W3が約660mmであり、索条Cは、約660mm(W3)の間隔で吊り足場Aを懸吊する必要があるので、一般に、横架材1も又、約660mm間隔で架設する必要が生じる。しかしながら、連繋材10によっても索条Cを係止又は係留する本例の支持構造によれば、横架材1を約1320mm(W3×2)間隔に配置すれば良い。従って、横架材1の間隔を増大し、横架材1の所要本数を半減することができる。
【0053】
図7は、フランジ部Fの下側に延びるフランジ拘束具3を備えた吊元材3の構成を示す平面図、正面図、側面図及び底面図であり、図8は、図7に示す横架材1の使用形態を示す横架材1の部分正面図である。
【0054】
図7に示す横架材1は、管体部30から垂下する角形断面の鉛直管36と、鉛直管36に上下動可能に支持されたフランジ拘束具37と、フランジ拘束具37の昇降部37aを鉛直管36に係止する係止具39とを有する。上下方向に整列配置された多数の位置決め孔38が鉛直管36の両側面に穿設されるとともに、位置決め孔38に整合可能な位置決め孔(図示せず)が、フランジ拘束具37の昇降管部分37aに穿設される。昇降管部分37aの位置決め孔を位置決め孔38に整合させ、これらの位置決め孔に係止具39の軸部39a、39bを挿通することにより、昇降管部分37の高さ位置を固定することができる。
【0055】
フランジ拘束具37の水平延出部37bには、索条Cを係止又は係留可能な円形開口部35aが形成される。鉛直管36の内側面から内方且つ斜め上方に延びるブラケット33aには、索条Cを係止又は係留可能な円形開口部35bが形成される。鉛直管36の外側面から外方且つ斜め上方に延びるブラケット33bには、係止具22、39に連結された金属ワイヤ等の索条が係留される。
【0056】
図8に示す如く、フランジ拘束具37は、フランジ部Fの高さVに適合する高さ位置に位置決めされ、吊元材3は、フランジ部Fの半部を全体的に囲繞するようにフランジ部Fに設置される。水平延出部37bは、フランジ部Fの下側に延出し、円形開口部35aは、フランジ部Fの下側に配置される。
【0057】
本実施形態の支持構造によれば、索条Cをブラケット33aの円形開口部35bに係留し、フランジ部Fの上側から吊り足場Aを懸吊し得るだけではなく、索条Cを円形開口部35aに係留し、フランジ部Fの直下から吊り足場Aを懸吊することができる。
【0058】
図9(A)は、管体20の中央部に中間吊元部材25を付加的に配設した横架材1の構成を示す正面図であり、図9(B)は、図9(A)に示す横架材1を鉄骨構造の橋梁等に使用した使用形態を示す正面図である。
【0059】
中間吊元部材25及び管体20は、整合可能な位置決め孔(図示せず)を有し、中間吊元部材25は、これらの位置決め孔に係止具26を挿通することにより、管体20の所定位置に固定される。中間吊元部材25は、管体20から下方に延びる垂下部25aに円形開口部27を有する。このような横架材1の構成によれば、索条Cを円形開口部35に係止又は係留し、フランジ部Fの近傍から吊り足場Aを懸吊し得るだけではなく、索条Cを円形開口部27に係止又は係留することにより、横架材1の中央部からも吊り足場Aを懸吊することができる。
【0060】
図10は、中間吊元部材25に係止又は係留した索条Cによって横架材1の中央部からも吊り足場Aを懸吊した状態を示す橋梁の縦断面図である。吊り足場Aは、梁部材2の中央部に配置された中間吊元部材25によって中間支持されるので、吊り足場Aの安定性を更に向上することができる。
【0061】
図9(B)には、図9(A)に示す横架材1を鉄骨構造の橋梁等に使用した使用形態が示されている。図9(B)に示す如く、横架材1は、基本的には、PC構造、鉄筋コンクリート構造、或いは、鉄骨構造等の構造種別の相違にかかわらず、等しく使用し得る性質のものである。但し、PC桁又はPC梁のフランジ部Fは、ハンチ面Faを備えるのに対し、鉄骨構造の桁材又は梁材のフランジ部Fは、一般に、水平面Fbであるので、スパン内方に若干偏倚した形態を有する受座部4を使用することが望ましい。
【0062】
以上説明したとおり、上記実施形態に係る吊り足場Aの支持構造及び支持方法によれば、吊り足場Aは、横架材1によって懸吊され、横架材1は、隣り合う桁Dのフランジ部Fによって支承される。吊り足場Aの鉛直荷重は、両端部をフランジ部Fに支承された二点支持構造の横架材1により支持される。図6に示す支持構造に関する本発明者等の強度試験結果(載荷試験結果)によれば、横架材破壊時の付加(印加)荷重は、約2000kgfのチェーン荷重(索条一本当りの荷重)に相当し、約8000kgf(約2000kgf×4)であり、約800kgf(2000kgf/2.5)のチェーン荷重に相当する約3200kgf(約800kgf×4)を横架材1の想定許容荷重として設定し得ることが判明した。
【0063】
また、上記実施形態に係る吊り足場Aにおいては、桁Dのウェブ部Eは、押圧部5によって押圧され、ウェブ部Eの反力は、軸線方向の圧縮力として横架材1に作用し、横架材1の位置を保持し又は拘束する。このため、横架材1は、桁Dに対して相対変位し難く、横架材1の支持は構造的に安定する。この結果、水平荷重や水平加振力、或いは、吊り足場Aに作用する予測不能な短期荷重等に起因した横架材1の過大な変位、変形又は回動等を防止することができる。しかも、上記構成の支持構造及び支持方法は、複雑且つ重厚な立体架構又は立体骨組構造を桁材間領域αに配設することを要しない構成のものであるので、重量、施工性等の点で極めて有利である。
【0064】
また、上記構成の支持構造及び支持方法によれば、新規な構成の吊り足場構築方法が実現する。図11図12及び図13は、本発明に係る吊り足場の構築方法を例示する縦断面図及び斜視図である。図11図12及び図13には、吊り足場の設置工程が段階的に示されている。
【0065】
図12(A)に示す如く、吊り足場Aを構成するパネルPは、索条Cによって懸吊される。索条Cは、横架材1の吊元材3に係留又は係止されるとともに、連繋材10に係留又は係止される。横架材1は、吊元材3の受座部4及び押圧部5(図2等)によって桁Dに支持され、連繋材10は、横架材1を介して桁Dに支持される。図12(A)に示す吊り足場Aの場合、連繋材10は、横架材1の間隔に相応する全長を有し、連繋材10の両端部は、クランプ部材9よって、離間した各横架材1の吊元材3に夫々緊締される。連繋材10の中央部には、索条Cの移動を規制すべく、一対のクランプ部材9が組付けられ、連繋材10を周回する索条Cの位置は、これらクランプ部材9の間に保持される。
【0066】
吊り足場Aの片側(前方)には、足場の未施工領域λが存在しており、このような吊り足場Aを未施工領域λに拡張する工程が図11に段階的に示されている。図11(A)は、図12(A)に示す吊り足場Aの端部の状態を示す断面図である。作業者は、図11(B)及び図11(C)に示す如く、連繋材10aを支持するためのクランプ部材9aを横架材1の吊元材3に緊締し、新たな連繋材10aをクランプ部材9aの解放部分に配置する。この状態では、連繋材10aをクランプ部材9aによって緊締せず、遊嵌状態(解放状態)のクランプ部材9aによって連繋材10aをスライド可能に支承すれば良い。作業者は更に、連繋材10aの先端部に新たなクランプ部材9bを緊締するとともに、新たな横架材1aをクランプ部材9bによって連繋材10aの先端部に緊締する。この状態が、図11(D)及び図12(B)に示されている。
【0067】
次いで、作業者は、図11(E)、図11(F)、図12(B)及び図13(A)に矢印で示す如く、遊嵌状態(解放状態)のクランプ部材9aによって支承された連繋材10aを前方に(未施工領域λの側に)スライドさせる。作業者は、横架材1aが横架材1に対して適切な距離まで離間したとき、クランプ部材9aを締付けて連繋材10aを横架材1に緊締する。図11(G)に示す如く、この状態では、最前端のパネルP上の作業者は、新たな索条Caを連繋材10aに係止又は係留し、新たなパネルPaを索条Caによって懸吊することができる。作業者は、パネルPaを索条Caによって懸吊し且つパネルPに連結した後、図11(H)に示す如く、パネルPa上に移動し、新たな索条Cbを横架材1aの吊元材3aに係止又は係留し、新たなパネルPbを索条Cbによって懸吊することができる。パネルPbを索条Cbによって懸吊し且つパネルPaに連結した状態が、図13(B)に示されている。
【0068】
作業者は、図11(A)〜図11(H)及び図12(A)〜図13(B)に示す工程を繰り返し実施することにより、吊り足場Aを更に拡張することができる。従って、このような吊り足場Aの構築方法によれば、既存の吊り足場A上の作業者が比較的容易に吊り足場Aを未施工領域λに順次施工し、比較的広範な桁材間領域αに吊り足場Aを構築することができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0070】
例えば、本発明の支持構造によれば、横架材1の支持剛性が比較的安定するので、図1(C)に示す如く、パネル材、面材、足場板等を横架材1の上側面に敷設し、横架材1の上側に作業用足場A'を形成することも可能である。
【0071】
また、上記実施形態は、セーフティSKパネル工法の吊り足場をPCバルブT桁橋の桁に取付ける構成のものであるが、本発明は、吊り足場の種類及び構造や、高所構造物の種類、断面又は構造等に限定されるものではなく、他の種類、断面又は構造等の高所構造物に対して他の種類又は構造の吊り足場を支持する支持構造及び支持方法においても、同様に適用し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、高所構造物の桁又は梁の下側に吊り足場を形成するための吊り足場の支持構造、支持方法及び構築方法に適用される。本発明は殊に、高所構造物の桁又は梁の下フランジ部によって横架材の端部を支承し、桁又は梁のスパン間領域に架設した横架材によって索条の吊元を形成し、横架材に係止又は係留した索条によって吊り足場を懸吊する吊り足場の支持構造及び支持方法に好ましく適用し得る。本発明によれば、複雑且つ重厚な立体架構又は立体骨組構造を桁材間領域に配設することなく、吊り足場を支持する横架材の過大な変位、変形又は回動を確実に防止することができ、また、吊り足場上の作業者が比較的容易に吊り足場を拡張することができるので、その実用的価値は、顕著である。
【符号の説明】
【0073】
1 横架材
2 梁部材
3 吊元材
4 受座部
5 押圧部
9 クランプ部材
10 連繋材
20 管体
25 中間吊元部材
30 管体部
37 フランジ拘束具
40 受座金具
43 制止ピン
50 アジャスタボルト
A 吊り足場
C 索条
D 桁
E ウェブ部
Ea 側面
F フランジ部
Fa ハンチ面
Fb 水平面
G 橋梁
S 桁材間スパン
α 桁材間領域
λ 未施工領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15