(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
ここでは、フィルタの一例として、電界結合型のバンドパスフィルタ(BPF)を説明する。しかし、フィルタは、電界結合型であれば、バンドパスフィルタ(BPF)に限らない。なお、電界結合型を容量結合型と表記することがある。
【0013】
[第1の実施の形態]
(フィルタ1)
図1は、第1の実施の形態が適用されるフィルタ1の構成の一例を示す図である。
第1の実施の形態が適用されるフィルタ1は、4つの共振器11、12、13、14を備える。これらの共振器11、12、13、14は、これらの共振器11、12、13、14がそれぞれ備える筐体71、72、73、74が連続するように、列状に接続されている。筐体71、72、73、74が連続して構成された筐体70は、断面が四辺形(後述する
図2(a)、(b)に示すように側面71a、71c、下面71b、上面71dで囲われている)で、両端部が閉じている。筐体70は、導電性の材料で構成され、電磁界に対するシールド(電気壁)を構成する。すなわち、フィルタ1は、キャビティ構造を有している。
なお、
図1は、フィルタ1の筐体70の上側の面を除いて、内部を見た図である。
そして、フィルタ1は、
図1が上面側から見た図となるように設置されてもよく、他の向きに設置されてもよい。例えば、長手方向が垂直になるように設置されてもよい。
【0014】
共振器11は、共振体21、共振体21と対向して配置された結合部材31、及び、共振体21及び結合部材31に電界結合(容量結合)する結合ループ41を備える。
また、共振器11は、結合部材31に接続される接続部品51及び接続部品51に接続される入力端子61を備える。
さらに、共振器11は、共振体21、結合部材31、結合ループ41、接続部品51及び入力端子61を収容する筐体70の一部である筐体71を備える。
【0015】
共振器12は、共振体22及び共振体22を収容する筐体72を備える。
共振器13は、共振体23及び共振体23を収容する筐体73を備える。
【0016】
共振器14は、共振体24、共振体24と対向して配置された結合部材32、及び、共振体24及び結合部材32に電界結合(容量結合)する結合ループ42を備える。
また、共振器14は、結合部材32に接続される接続部品52及び接続部品52に接続された入力端子62を備える。
さらに、共振器14は、共振体24、結合部材32、結合ループ42、接続部品52及び出力端子62を収容する筐体74を備える。
【0017】
共振器11、12、13、14をそれぞれ区別しない場合は、共振器10と表記する。
共振体21、22、23、24をそれぞれ区別しない場合は、共振体20と表記する。
結合部材31、32をそれぞれ区別しない場合は、結合部材30と表記する。なお、結合部材30は、容量結合部材の一例である。
結合ループ41、42をそれぞれ区別しない場合は、結合ループ40と表記する。結合ループは、容量変更部材の一例である。
接続部品51、52をそれぞれ区別しない場合は、接続部品50と表記する。
そして、筐体71、72、73、74を一まとめにした場合の他、それぞれを区別しない場合に、筐体70と表記することがある。
【0018】
共振体21、22、23、24は、導電性の部材で構成されている。そして、共振体21、22、23、24は、それぞれ予め定められた波長(周波数)で共振するように設定されている。そして、共振体21、22、23、24は、筐体70内において、列状に配列されている。
結合部材31、32は、導電性の部材で構成され、一例として円盤状の外形を有している。そして、結合部材31は、平らな面が共振体21に対向するように配置されている。そして、結合部材31は、対向して配置された共振体21を介して、共振体21、22、23、24と電気的に結合する。ここでの電気的な結合は、電界結合(容量結合)である。
同様に、結合部材32は、平らな面が共振体24に対向するように配置されている。そして、結合部材32は、対向して配置された共振体24を介して、共振体21、22、23、24と電気的に結合する。ここでの電気的な結合も、電界結合(容量結合)である。
【0019】
なお、結合部材31、32の平面形状は、円でなくともよく、多角形であってもよい。また、図のような平面形状ではなく、線状であってもよい。なお、円であると、電界が集中することが抑制される。
【0020】
結合ループ41、42は、導電性の部材で構成され、両端が筐体70に接続されることでループを形成している。
接続部品51、52は、導電性の部材で構成されている。接続部品51は、信号を入力端子61から結合部材31へ伝搬し、接続部品52は、信号を結合部材32から出力端子62へ伝搬する。
入力端子61及び出力端子62は、例えば、コネクタである。入力端子61では、コネクタの内導体(芯線)が接続部品51に接続され、コネクタの外導体が筐体71に接続されている。そして、コネクタの内導体と外導体とは、直流的に絶縁されている。同様に、出力端子62では、コネクタの内導体(芯線)が接続部品52に接続され、コネクタの外導体が筐体74に接続されている。そして、コネクタの内導体と外導体とは、直流的に絶縁されている。
【0021】
筐体70を構成する筐体71、72、73、74を説明する。
筐体71は、共振器12側が閉じられていない。そして、筐体71は、共振器12側の反対側が閉じられている。ただし、入力端子61は、閉じられた筐体71の外側から内側の接続部品51に接続するように設けられている。
筐体72、73は、それぞれが共振体22、23の側面を覆っている。筐体72と筐体73との間には、導電性の部材で構成された隔壁75が設けられている。そして、隔壁75には、共振体22と共振体23とを電気的に結合させるための開口76が設けられている。ここでの、電気的な結合は、磁界結合である。なお、筐体72の共振器11側には、隔壁がなく、筐体73の共振器14側にも、隔壁がない。
さらに、筐体74は、筐体71と同様に、共振器13側が閉じられていない。そして、筐体74は、共振器13側の反対側が閉じられている。ただし、出力端子62は、閉じられた筐体74の外側から内側の接続部品52に接続するように設けられている。
そして、
図2(a)、(b)に示す側面71a、71c、下面71b、上面71dも導電性材料で構成されており、全体としてキャビティ構造となっている。
【0022】
なお、共振器12と共振器13との間の隔壁75を削除してもよく、共振器11と共振器12との間、又は/及び、共振器13と共振器14との間に、隔壁75と同様な隔壁を設けてもよい。隔壁は、フィルタ1の電気特性との関係において、設ければよい。
【0023】
上記における導電性の部材には、導電率の高いアルミニウム、銅、真鍮などが適用できる。また、アルミニウム、銅、真鍮に銀などがメッキされたものが適用できる。
【0024】
フィルタ1は、共振器11、12、13、14がそれぞれ単体として構成され(作製され)、これらの共振器11、12、13、14が接続されて構成されてもよい(組み立てられてもよい)。また、筐体70が全体として構成され(作製され)、筐体70の内部に共振体21、22、23、24、結合部材31、32などを構成されてもよい(組み立てられてもよい)。なお、いずれの場合も、筐体70(筐体71、72、73、74)の一部が取り外し可能になっていて、組み立てを容易にしていてもよい。
【0025】
なお、共振体21、22、23、24、結合部材31、32及び結合ループ41、42の構成は、後述する
図2において詳述する。
なお、共振器11が一端部の共振器の一例、共振器14が他端部の共振器の一例である。結合部材31が容量結合部材の一例、結合部材32が他の容量結合部材の一例、結合ループ41が容量変更部材の一例、結合ループ42が他の容量変更部材の一例である。
【0026】
フィルタ1の動作を説明する。
そして、筐体70(筐体71、72、73、74)、入力端子61であるコネクタの外導体及び出力端子62であるコネクタの外導体は、基準電位、例えば接地電位(GND)に設定されている。
【0027】
フィルタ1の入力端子61に信号が入力する。すると、信号は、接続部品51及び結合部材31に伝搬する。そして、信号は、結合部材31から、電界(容量)結合した共振体21を介して、共振体22、23、24に入力する。
その際、共振体21、22、23、24のそれぞれと共振する波長のみが伝搬する。
さらに、伝搬した信号は、共振体24と容量結合する結合部材32に入力する。そして、接続部品52を伝搬して、出力端子62から出力する。
【0028】
すなわち、フィルタ1は、入力端子61に入力する信号から、共振体21、22、23、24のそれぞれと共振する波長(共振波長)の信号のみを通過させ、出力端子62から出力する。この際、共振体21、22、23、24のそれぞれの共振波長を、通過させたい波長の範囲に合わせて設定すると、通過させたい波長の範囲(バンド)の信号を通過するバンドパスフィルタとなる。
【0029】
なお、結合ループ41は、共振体21及び結合部材31に対向して設けられている。そして、結合ループ41と共振体21及び/又は結合部材31との間の距離が変更(調整)されることで、結合ループ41と共振体21及び/又は結合部材31との間の容量が変更される。そして、共振器11における結合量が変更される。すなわち、共振器11の電気特性が変更される。
同様に、結合ループ42は、共振体24及び結合部材32に対向して設けられている。そして、結合ループ42と共振体24及び/又は結合部材32との間の距離が変更(調整)されることで、結合ループ42と共振体24及び/又は結合部材32との間の容量が変更される。そして、共振器14における結合量が変更される。すなわち、共振器14の電気特性が変更される。
このようにして、フィルタ1の電気特性が変更される。
これについては、後に詳述する。
【0030】
以上説明したように、結合部材31と共振体21とが電界(容量)結合し、共振体24と結合部材32とが電界(容量)結合しているので、フィルタ1においては、直流成分(DC)がカットされている。
【0031】
(共振器11)
図2は、共振器11を詳細に説明する図である。
図2(a)は、上面図、
図2(b)は側面図である。
図2(a)、(b)では、筐体71のそれぞれの面を、側面71a、71c、下面71b、上面71dとする。さらに、筐体71の入力端子61が設けられる面を側面71eとする。そして、
図2(a)では、
図1と同様に筐体71の上面71dを除いて示している。また、
図2(b)では、
図2(a)の紙面において、筐体71の側面71aを除いて示している。
なお、
図4、5に示す群遅延時間の評価は、共振器11は、筐体71で囲まれているとして行った。そこで、共振器12側に側面71fがあるとした。よって、
図2(a)、(b)では、側面71fを表記している。
【0032】
共振体21は、
図2(a)、(b)に示すように、断面が長方形で、角が丸められた棒状の部材である。そして、棒状の部材が中空になるように、長方形の中央部が、円形の空洞となっている。空洞は、棒状の共振体21を長手方向に貫いて設けられている。共振体21の断面形状は、角が丸められた長方形でなくともよく、多角形であってもよい。
【0033】
そして、共振体21の一方の端部が、筐体71の下面71bに電気的(直流的)に接続(ショート)されている。共振体21の他方の端部は、解放(オープン)されている。前述したように、筐体71は、基準電位に設定されている。
棒状の部材である共振体21は、筐体71で囲まれた管内での波長λgの1/4(1/4λg)に設定されている。なお、波長λgに対する周波数fgは、管内での周波数fgである。
すなわち、共振体21は、ショート端とオープン端までの長さが1/4λgである波長で共振する。
なお、他の共振体22、23、24も同様である。
ここでは、共振体20を中空の棒状の部材としたが、他の形状の部材としてもよい。
【0034】
そして、共振体21の長方形の断面における長手方向側の一面が、円盤状の結合部材31の平らな面と対向する。
【0035】
結合ループ41は、例えば、線状の部材であって、ここでは曲げることが容易な線状の導電性材料で構成されている。そして、結合ループ41は、一端部及び他端部が筐体71の下面71bに接続されている。すなわち、結合ループ41は、両端が基準電位に設定されている。そして、結合ループ41の長さは、通過させたい周波数の管内波長に対しておおよそ1/2λgに設定される。
そして、結合ループ41は、共振体21及び結合部材31と電界(容量)結合するように設定されている。すなわち、結合部材31側において、下面71bから立ち上がる結合ループ41の一端部は、結合部材31の中央部にまで立ち上がり、結合部材31(共振体21と反対側の面)に沿うように側面71cに向かうように曲げられる。次に、結合部材31を過ぎるまで下面71bに平行に進み、結合部材31を過ぎると共振体21に向かうように曲げられる。そして、共振体21の側面に沿うように、下面71bに平行に進む。そして、共振体21の側面の途中において、下面71bに向かって曲げられている。結合ループ41の他端部が下面71bに接続される。
すなわち、
図2(a)に示すように、結合ループ41は、下面71bに平行な部分がL字状になっている。
【0036】
結合ループ41は、基準電位に接続されて端部間の長さが1/2λgであると、電磁結合でなく、電界(容量)結合する。
なお、結合ループ41は、共振体21及び結合部材31と電界(容量)結合するように設けられればよい。よって、結合ループ41は、L字状の部分が下面71bに平行でなくてもよい。また、結合ループ41は、
図2(a)、(b)に示した形状でなくともよく、他の形状であってもよい。
【0037】
そして、結合ループ41は、線状の導電性材料で構成されているため、共振体21及び結合部材31との距離を後から変更することが可能である。すなわち、結合ループ41の下面71bに接続されていない側(L字状の部分)を、共振体21及び結合部材31の側に押して変形させることで、共振体21及び結合部材31との距離が近くなるようにしたり、共振体21及び結合部材31の側から離すように変形させることで、共振体21及び結合部材31との距離を遠くしたりできる。
すなわち、共振器11を組み立てた後に、電気特性を見ながら、一時的に上面71dを外すなどして、結合ループ41を変形させることで、共振体21又は/及び結合部材31との間の容量を変更することが可能となるため、共振器11における結合量を変更することが可能となる。これにより、各部材の加工精度や組立精度のばらつきにより電気特性にばらつきが生じても、線状の導電性材料を変形させるという比較的容易な方法で、電気特性を変更することが可能となる。
【0038】
図3は、共振器11及びフィルタ1の等価回路である。
図3(a)は、共振器11、
図3(b)は、フィルタ1である。
共振器11は、
図3(a)に示すように、共振器11は、共振体21に対して、容量が固定のコンデンサC1と容量が可変のコンデンサC2とが並列に接続されている。コンデンサC1は、共振体21と結合部材31との間の容量であり、コンデンサC2は、結合ループ41を介した、共振体21と結合部材31との間の容量である。
入力端子61に入力した信号は、結合部材31に伝搬し、コンデンサC1を介して共振体21に伝搬する。同様に、入力端子61に入力した信号は、結合ループ41で構成されるコンデンサC2を介して共振体21に伝搬する。
【0039】
結合ループ41と共振体21又は/及び結合部材31との距離を変更することにより、コンデンサC2の容量が変更される。これにより、共振器11における結合量が変更される。
【0040】
フィルタ1は、
図3(b)に示すように、共振器11、12、13、14が列状に並ぶ。そして、共振器14は、共振器11と同様な構造であるが、信号の進む向きに対して逆の構造になっている。そして、共振器14は、入力端子61の代わりに、出力端子62に接続されている。
例えば、移動体通信においては、ケーブルの配線工事を省力化するために、移相器等を制御するためのAISG信号を高周波用の同軸ケーブルに重畳させることがある。この様な場合を示したのが、
図3(b)である。AISG信号は高周波用の同軸ケーブルに重畳させる場合、2MHz程度のAM波に変調される。この信号波は、フィルタ1の通過する信号に比べて、低い周波数であるため、入力端子61部分から分離されて、フィルタ1とは別の経路で、出力端子62部分に送信される。そして、フィルタ1を通過した信号に加えられる。すなわち、AISG信号は、フィルタ1の通過帯域に属さない周波数であるため、インダクタンスL1、L2を介して、フィルタ1とは別の(異なる)経路で送信される。なお、インダクタンスL1、L2は、AISG信号より高い周波数の信号(例えばフィルタ1を通過する信号)の通過を抑制するために設けられている。
ここでは、AISG信号がフィルタ1を通過した信号に加えられるとしたが、そのままAISG信号の制御装置などに送信されてもよい。
【0041】
図4は、共振器11における群遅延時間を示した図である。一般に、結合量は群遅延時間で評価できるため、ここでは群遅延時間を用いて説明する。
図4では、第1の実施の形態が適用される結合ループ41を有する共振器11(結合ループ有)と第1の実施の形態が適用されない結合ループ41の無い共振器11(結合ループ無)とを示している。縦軸は、群遅延時間(ns)、横軸は、予め定められた周波数fg(波長λg)で規格化した周波数(f/fg)である。
なお、結合ループ41の無い共振器11とは、
図2(a)、(b)において、結合ループ41を除いたものである。すなわち、結合ループ41の無い共振器11の他の構成は、
図2(a)、(b)に示した共振器11と同様である。
図4に示すように、結合ループ41を有する共振器11は、結合ループ41の無い共振器11に比べて、周波数fgの近傍において群遅延時間が小さくなっている。これは、共振器11における結合量が増加したことを示している。つまり、共振器11は、結合ループ41を有することで、結合量が増加する。結合ループ41を有する共振器11は、結合が密(密結合)であり、結合ループ41を有しない共振器11は結合が疎(疎結合)である。
したがって、結合ループ41を有する場合は、結合ループ41を有しない場合に比べて共振体21と結合部材31の距離を広く設定することが可能である。これにより、耐電力特性も向上する。
【0042】
図5は、第1の実施の形態が適用される共振器11において、結合ループ41と共振体21及び結合部材31との距離を変えた場合の群遅延時間を示す図である。ここでは、
図2(a)に示すように、結合ループ41と共振体21との距離、及び、結合ループ41と結合部材31との距離を、ともにΔt変更している。なお、
図2(a)に示すように、Δtは、結合ループ41と共振体21及び結合部材31との距離が小さくなる(近づく)方向を+、大きく(遠ざかる)方向を−としている。なお、±のΔtは、結合ループ41のL字状の部分を動かして設定している。
【0043】
図5に示すように、Δtが+である(近づく)場合は、Δtが0である場合に比べて、周波数fgの近傍において群遅延時間が短くなっている。これは、共振器11における結合量が増加したこと(結合が密になったこと)を示している。
一方、Δtが−である(遠ざかる)場合は、Δtが0である場合に比べて、周波数fgの近傍において群遅延時間が長くなっている。これは、共振器11における結合量が減少したこと(結合が疎になったこと)を示している。
【0044】
以上説明したように、結合ループ41と共振体21及び結合部材31との距離を変えることにより、共振器11における結合量が変更される。すなわち、共振器11の電気特性が変更される。
ここでは、共振体21及び結合部材31の両方に対して、結合ループ41との距離を変化させたが、共振体21又は結合部材31の一方に対して、結合ループ41との距離を変化させてもよいし、結合ループ41の一部分を折り曲げるなど、変形させてもよい。求めたい結合量になるように、共振体21又は/及び結合部材31に対する結合ループ41の距離を設定すればよい。
なお、説明を省略するが、共振器14についても同様である。
【0045】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態が適用されるフィルタ1は、
図1に示した第1の実施の形態が適用されるフィルタ1と共振器12、共振器13の構成が異なる。
図6は、第2の実施の形態が適用されるフィルタ1の構成の一例を示す図である。
第2の実施の形態が適用されるフィルタ1は、第1の実施の形態が適用されるフィルタ1と同様に、4つの共振器11、12、13、14を備える。これらの共振器11、12、13、14は、これらの共振器11、12、13、14がそれぞれ備える筐体71、72、73、74が連続するように、列状に接続されている。筐体71、72、73、74が連続して構成された筐体70は、断面が四辺形(第1の実施の形態と同様に、両側面、下面、上面で囲まれている。)で、両端部が閉じている。筐体70は、導電性の材料で構成され、電磁界に対するシールド(電気壁)を構成する。すなわち、フィルタ1は、キャビティ構造を有している。
なお、
図6は、フィルタ1の筐体70の上側の面を除いて、内部を見た図である。
【0046】
共振器11、14など、
図1に示した第1の実施の形態のフィルタ1と同様の部分は、同じ符号を付して説明を省略する。そして、第1の実施の形態のフィルタ1と異なる共振器12、13を説明する。
共振器12は、
図1に示した第1の実施の形態のフィルタ1における共振器12と同様に、共振体22を備える。そして、共振器12は、共振器11及び共振器14と同様に、結合部材33、結合ループ43を備える。さらに、共振器12は、結合部材33に接続された接続部品53を備える。
また、共振器13は、
図1に示した第1の実施の形態のフィルタ1における共振器13と同様に、共振体23を備える。そして、共振器13は、共振器11及び共振器14と同様に、結合部材34、結合ループ44を備える。さらに、共振器13は、結合部材33に接続された接続部品54を備える。
【0047】
ここで、共振体22が第1の共振体の一例、共振体23が第2の共振体の一例、結合部材33が第1の容量結合部材の一例、結合部材34が第2の容量結合部材の一例、結合ループ43が第1の容量変更部材の一例、結合ループ44が第2の容量変更部材の一例である。
【0048】
そして、結合部材33は、共振器13側から共振体22に対向するように設けられ、共振体22と結合部材33とは、電界(容量)結合している。さらに、結合ループ43は、共振体22及び結合部材33に対して電界(容量)結合する位置に設けられるとともに、共振体22又は/及び結合部材33との距離が変更可能になっている。
同様に、結合部材34は、共振器12側から共振体23に対向するように設けられ、共振体23と結合部材34とは、電界(容量)結合している。さらに、結合ループ44は、共振体23及び結合部材34に対して電界(容量)結合する位置に設けられるとともに、共振体23又は/及び結合部材34との距離が変更可能になっている。
さらに、結合部材33と結合部材34とは、それぞれに接続された接続部品53、54により接続されている。接続部品53、54は、共振器12、13間の隔壁75に設けられた開口76を貫いて接続されている。
なお、接続部品53、54は、別部品としたが一個の部品であってもよい。
【0049】
以上説明したように、第2の実施の形態では、共振器12、13間を、結合部材33、34及び接続部品53、54で結合させるとともに、結合ループ43、44により結合量を変更する。すなわち、結合量は、結合ループ43と共振器12又は/及び結合部材33との距離により変更される。同様に、結合量は、結合ループ44と共振器13又は/及び結合部材34との距離により変更される。なお、結合ループ43と共振器12又は/及び結合部材33との距離と、結合ループ44と共振器13又は/及び結合部材34との距離との両方を変更してもよく、いずれか一方を変更してもよい。
【0050】
図7は、
図6に示した第2の実施の形態が適用されるフィルタ1から二個の共振器12、13を抜き出した図である。
なお、後述する
図8に示す二個の共振器12、13間の結合量を評価した状態を示すために、
図7に示す共振器12、13は、
図6における共振器11側及び共振器14側が筐体で囲まれているとした。
【0051】
図8は、結合した二個の共振器12、13における群遅延時間を示した図である。
図8では、第2の実施の形態が適用される共振器12、13(結合部材有、結合ループ有)と、第2の実施の形態が適用されない共振器12、13(結合部材有、結合ループ無)とを示している。縦軸は、群遅延時間(ns)、横軸は、予め定められた周波数fg(波長λg)で規格化した周波数(f/fg)である。なお、共振体22と結合部材33との間隔、ならびに共振体23と結合部材34との間隔は一定としている。
【0052】
第2の実施の形態が適用される共振器12、13は、結合部材33、34、接続部品53、54、結合ループ43、44を備える。よって、
図8では、「結合部材有、結合ループ有」と表記する。
一方、第2の実施の形態が適用されない共振器12、13は、結合部材33、34、接続部品53、54を備えるが、結合ループ43、44を備えない。よって、
図8では、「結合部材有、結合ループ無」と表記する。
【0053】
図8に示すように、第2の実施の形態が適用される共振器12、13(結合部材有、結合ループ有)では、第2の実施の形態が適用されない共振器12、13(結合部材有、結合ループ無)に比べ、分離して現れる二つの周波数の間隔が広い。これは、第2の実施の形態が適用される共振器12、13(結合部材有、結合ループ有)が、第2の実施の形態が適用されない共振器12、13(結合部材有、結合ループ無)に比べ、共振器12、13間の結合量が大きいことを示している。すなわち、共振器12、13(結合部材有、結合ループ有)は、結合が密(密結合)であり、共振器12、13(結合部材有、結合ループ無)は、結合が疎(疎結合)である。
【0054】
また、第2の実施の形態が適用される共振器12、13(結合部材有、結合ループ有)では、結合ループ43と共振器12又は/及び結合部材33との距離と、結合ループ44と共振器13又は/及び結合部材34との距離との両方、又は、いずれか一方を変更することにより、共振器12、13間の結合量が変更される。このようにして、接続された二個の共振器10における電気特性が変更される。
なお、接続された二個の共振器10も共振器と表記することがある。
【0055】
図9は、二個の共振器12、13の変形例を示す図である。
図8では、共振器12及び結合部材33に電界(容量)結合する結合ループ43と、共振器13及び結合部材34に電界(容量)結合する結合ループ44とが設けられていた。
図9に示す共振器12、13の変形例では、共振器12、結合部材33、共振器13及び結合部材34に結合する結合ループ45が設けられている。
なお、結合ループ45は、前述したように、基準電位に接続された二個の端部間における長さが1/2λgに設定される。よって、長さが1/2λgの結合ループ45で、共振器12、結合部材33、共振器13及び結合部材34に対する結合が得られにくい場合には、
図7に示したように、共振器12、13のそれぞれに結合ループ43、44をそれぞれ設けることがよい。
【0056】
なお、第1の実施の形態において、結合ループ40を一例として線状の導電性材料として説明した。結合ループ40は、線状の導電性材料とする他、板状や棒状の部材を折り曲げて構成してもよく、削り出して構成してもよい。結合ループ40が、共振体20又は/及び結合部材30に対する距離が共振器11を組み立てた後に変更可能であればよい。
そして、筐体70に長穴を設け、結合ループ40をその長穴に固定してもよい。長穴の範囲内において固定位置を変更することで、結合ループ40が、共振体20又は/及び結合部材30に対する距離により、容量が変更可能になる。すなわち、共振器10における結合量が変更可能となる。
【0057】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、結合ループ40と共振体20又は/及び結合部材30との距離を変更することで、結合ループ40と共振体20又は/及び結合部材30との間の容量を変更した。距離の代わりに、結合ループ40と共振体20又は/及び結合部材30とが対面する面積を変更してもよい。例えば、結合ループ40を板状の部材として、ねじることで、共振体20及び結合部材30に対向する面積を変更してもよい。
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。