特許第6872783号(P6872783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6872783-パイプ切断装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872783
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】パイプ切断装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 21/00 20060101AFI20210510BHJP
   B26D 3/16 20060101ALI20210510BHJP
   B26D 7/14 20060101ALI20210510BHJP
   B23D 33/02 20060101ALI20210510BHJP
   B26D 1/28 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   B23D21/00 510D
   B26D3/16 A
   B26D7/14
   B23D33/02 A
   !B26D1/28 E
   !B26D1/28 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-43931(P2017-43931)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-144195(P2018-144195A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 納品日 平成28年9月26日 納品場所 会社名 尼崎パイプ(タイランド)・カンパニー・リミテッド ヘッド・ファクトリー (住所)タイ 20000 チョンブリ アンプール・ムアン タンボル・ドンファロー ケイエム.57 バングナ‐トラッド・ロード アマタナコルン・インダストリアル・エステート 700/367 エム.6 <AMAGASAKI PIPE (THAILAND) CO., LTD.HEAD FACTORY 700/367 M.6 Amatanakorn Industrial Estate,Bangna−Trad RD.,KM.57 Tambol Donhuaroh,Amphur Muang,Chonburi 20000 Thailand> 〔刊行物等〕 納品日 平成28年9月26日 納品場所 会社名 尼崎パイプ(タイランド)・カンパニー・リミテッド サウス・ファクトリー (住所)タイ 20000 チョンブリ アンプール・ムアン タンボル・ドンファロー ケイエム.57 バングナ‐トラッド・ロード アマタナコルン・インダストリアル・エステート 700/69 エム.6 <AMAGASAKI PIPE (THAILAND) CO., LTD.SOUTH FACTORY 700/69 M.6 Amatanakorn Industrial Estate,Bangna−Trad RD.,KM.57 Tambol Donhuaroh,Amphur Muang,Chonburi 20000 Thailand>
(73)【特許権者】
【識別番号】000199267
【氏名又は名称】千代田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】遠越 英行
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−072278(JP,A)
【文献】 特表2016−518995(JP,A)
【文献】 特開平10−005878(JP,A)
【文献】 特開平10−034594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 21/00,33/02,47/04,
B26D 1/28,3/16,7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径や肉厚の異なる複数本のパイプを同時に切断可能なパイプ切断装置であって、
前記複数本のパイプの一端側を固定する固定機構と、
前記固定機構により固定された前記複数本のパイプを把持して他端側に引っ張ることで前記複数本のパイプに長手方向の引張力を付与する引張機構と、
前記固定機構と前記引張機構との間に配置され、単一の駆動部により駆動して前記複数本のパイプを同時に切断可能な切断機構と、を備え、
前記引張機構は、前記複数本のパイプを各別に把持する複数の把持部を備え、
各把持部は、それぞれ独立した駆動機構を有し、対応するパイプに他の把持部とは独立に引張力を付与可能であるパイプ切断装置。
【請求項2】
前記固定機構は、前記長手方向に沿って移動不能であり、
前記切断機構は、前記長手方向に沿って移動可能であり、且つ、前記引張機構に連動して前記引張機構側に移動する請求項1に記載のパイプ切断装置。
【請求項3】
前記切断機構は、前記固定機構とばね部材を介して連結されている請求項2に記載のパイプ切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のパイプを同時に切断可能なパイプ切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本のパイプを1つの装置で切断するようにすれば、作業効率が高まり、また装置の構成や設置スペースを省略できる。そして、特許文献1(特開2016−518995号公報)には、複数種のパイプを同時に切断するため、径の異なる複数種のパイプを同時に締め付けて固定するパイプ切断装置技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−518995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、パイプ切断装置の一種として、パイプに引張力を加えながらパイプを切断するいわゆる引張式のパイプ切断装置がある。しかし、引張式のパイプ切断装置において、複数種のパイプを同時に切断するには次の問題がある。つまり、装置の構成や設置スペースの省略の観点からは、切断機構及び引張機構をそれぞれ単一の駆動源により動作させるのが望ましいといえる。しかし、径や肉厚の異なる異種のパイプを切断しようとする場合、径や肉厚の差によって一部のパイプが先に切断完了し、引張機構による引張力が残りのパイプだけに加わることになる。そうすると、切断機構による切断速度と引張機構による引張力とのバランスが崩れ、切断面の不良や切断機構における刃こぼれ等が生じ得る。しかし、特許文献1には、引張式のパイプ切断装置において、かかる問題を解決して複数種のパイプを同時に切断するための技術は開示されていない。
【0005】
そこで、引張式のパイプ切断装置において、複数種のパイプを同時に切断するのに好適なパイプ切断装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパイプ切断装置は、
複数本のパイプを同時に切断可能なパイプ切断装置であって、
前記複数本のパイプの一端側を固定する固定機構と、
前記固定機構により固定された前記複数本のパイプを把持して他端側に引っ張ることで前記複数本のパイプに長手方向の引張力を付与する引張機構と、
前記固定機構と前記引張機構との間に配置され、単一の駆動部により駆動して前記複数本のパイプを同時に切断可能な切断機構と、を備え、
前記引張機構は、前記複数本のパイプを各別に把持する複数の把持部を備え、
各把持部は、それぞれ独立した駆動機構を有し、対応するパイプに他の把持部とは独立に引張力を付与可能である。
【0007】
この構成によれば、切断機構については単一の駆動源により動作させるようにしつつ、引張機構による引張力をパイプごとに各別に加えるようにしてあるので、装置の構成や設置スペースを省略しつつ、一部のパイプが先に切断完了した場合における切断面の不良や切断機構における刃こぼれ等が生じる上記問題を解決できる。
【0008】
一つの態様として、前記固定機構は、前記長手方向に沿って移動不能であり、前記切断機構は、前記長手方向に沿って移動可能であり、且つ、前記引張機構に連動して前記引張機構側に移動すると好適である。
【0009】
つまり、引張機構のみによりパイプを引っ張るいわゆる片引っ張りとした場合、カッター刃に対して固定機構側から荷重がかかって、切断面の不良や切断機構における刃こぼれ等が生じるおそれがあるが、この構成によれば、切断機構を引張機構に連動して引張機構側に移動させるので、カッター刃に対して固定機構側から加えられる荷重を効果的に緩和し、かかる不具合が生じにくくなる。
【0010】
一つの態様として、前記切断機構は、前記固定機構とばね部材を介して連結されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、各把持部における駆動機構が駆動しなくなった場合に自動的に切断機構が初期位置に戻るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】パイプ切断装置の斜視図
図2】切断機構及び引張機構のスライド盤を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るパイプ切断装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るパイプ切断装置1を示し、パイプ切断装置1は、パイプを供給するための送り機構2と、パイプを固定するための固定機構3と、パイプを切断するための切断機構4と、パイプに対して引張力を加えるための引張機構5と、を備える。本実施形態に係るパイプ切断装置1は、複数本のパイプを同時に切断可能な装置であり、特に径や肉厚の異なる複数種のパイプを同時に切断するのに好適な構成を有している。以下、各部の構成について説明する。
【0014】
送り機構2は、複数本(本実施形態では2本)のパイプをパイプ切断装置1に送り込むものである。具体的には、本実施形態では、送り機構2は、各パイプを各別に把持する複数の送りクランプ21を備えており、各送りクランプ21は上下のクランプ部材21a,21bをクランプ用シリンダ21cにより互いに近づけたり離したりすることでパイプを把持したり把持を解除することが可能になっている。そして、複数の送りクランプ21は、図示しない共通の駆動源によりパイプの長手方向Lに沿って前後動可能になっており、送りクランプ21が同時に前後動することで、複数本のパイプを同時に所定長さだけパイプ切断装置1に送り込むことが可能になっている。なお、送りクランプ21は、パイプの種類に関わらずパイプの中心軸の位置が同じ位置になるようにパイプを把持するようになっている(後述する固定クランプ31、引張クランプ51も同様)。
【0015】
固定機構3は、送り機構2により送り込まれた複数本のパイプの一端側を固定するものである。具体的には、本実施形態では、固定機構3は、各パイプを各別に把持する複数の固定クランプ31を備えており、各固定クランプ31は、送りクランプ21と同様に、上下のクランプ部材31a,31bをクランプ用シリンダ31cにより互いに近づけたり離したりすることでパイプを把持したり把持を解除することが可能になっている。そして、固定機構3は、送り機構2によって送り込まれた複数本のパイプを各固定クランプ31によりそれぞれ把持することによって複数本のパイプを固定するようになっている。なお、固定機構3は、長手方向Lに沿って移動不能になっている。
【0016】
切断機構4は、固定機構3と引張機構5との間に配置され、単一の駆動部42により駆動して複数本のパイプを同時に切断可能なものである。具体的には、本実施形態では、切断機構4は、内部にパイプをそれぞれ挿通して、先端に設けたカッターによりパイプを切断する複数のカッターヘッド41と、複数のカッターヘッド41に共通の駆動部42と、長手方向Lに沿って移動可能なスライド盤43と、を備えている。そして、パイプ切断時には、駆動部42の駆動により、カッターヘッド41が回転し、且つ、各カッターヘッド41の先端に設けたカッターがパイプの軸芯に向かって徐々に移動するようになっている。つまり、パイプまわりを公転するカッターをパイプに接触させることでパイプを切断するようになっている。また、スライド盤43のスライド移動に伴い、各カッターヘッド41及び駆動部42が長手方向に平行移動可能になっている。
【0017】
引張機構5は、固定機構3により固定された複数本のパイプを把持して他端側に引っ張ることで複数本のパイプに長手方向Lの引張力を付与するものである。具体的には、本実施形態では、引張機構5は、複数本のパイプを各別に把持する複数の引張クランプ(複数の把持部に相当)51を備えている。各引張クランプ51は、送りクランプ21と同様に、上下のクランプ部材51a,51bをクランプ用シリンダ51cにより互いに近づけたり離したりすることでパイプを把持したり把持を解除することが可能になっている。
【0018】
そして、本実施形態では、複数の引張クランプ51はそれぞれ独立した駆動機構(スライド盤52及び引張用シリンダ53)を有している。具体的には、各引張クランプ51は長手方向Lに沿って移動可能なスライド盤52上に設けられており、スライド盤52にそれぞれ連結された引張用シリンダ53の駆動により、各引張クランプ51がスライド盤52とともに長手方向Lに沿って各パイプの他端側に移動するようになっている。つまり、各引張用シリンダ53の駆動により、各引張クランプ51が、他の引張クランプ51とは独立に長手方向Lに移動して、対応するパイプに他の引張クランプ51とは独立に引張力を付与可能になっている。
【0019】
さらに、本実施形態では、切断機構4と引張機構5とがリンク機構6により連結されており、切断機構4が引張機構5に連動して引張機構5側に移動するようになっている。具体的には、リンク機構6は、引張機構5における各スライド盤52に設けられた第一リンク部61に、切断機構4におけるスライド盤43に設けられた複数の第二リンク部62が各別に連結されてなる。そして、引張用シリンダ53の駆動によりスライド盤52が長手方向Lに沿って各パイプの他端側に移動することで、スライド盤43、即ち切断機構4が引張機構5に連動して引張機構5側に移動するようになっている。
【0020】
また、スライド盤43は、2本のテンションスプリング(ばね部材に相当)7を介して固定機構3に連結されている。これにより、引張用シリンダ53が駆動しなくなったときに、テンションスプリング7の付勢力により、スライド盤43、即ち切断機構4が固定機構3側に引っ張られて所定位置に戻る。また、切断機構4が初期位置に戻るに伴い、切断機構4とリンク機構6により連結されている引張機構5も初期位置に戻るようになっている。
【0021】
次に、パイプ切断装置1を用いて複数のパイプを同時に切断する工程について説明する。まず、送り機構2により複数種のパイプが所定長さだけパイプ切断装置1に送り込まれる。そして、固定機構3の各固定クランプ31と引張機構5の各引張クランプ51によりパイプが把持される。その後、引張機構5の引張用シリンダ53が駆動を開始するとともに、切断機構4の各カッターヘッド41が回転を開始し、各パイプに引張力が加えられた状態で、各カッターヘッド41による各パイプの切断が開始する。この場合、引張機構5のみが移動する場合、パイプによってカッター刃に対して固定機構3側から荷重がかかって、切断面の不良や切断機構における刃こぼれ等が生じるおそれがあるが、本実施形態では、切断機構4を引張機構5に連動して引張機構5側に移動させるので、カッター刃に対して固定機構3側から加えられる荷重を緩和し、かかる不具合が生じにくくなっている。やがて全パイプの切断が終了すると、カッターヘッド41の回転、及び、引張用シリンダ53の駆動が停止し、テンションスプリング7の付勢力により、切断機構4及び引張機構5が固定機構3側に引っ張られて所定位置に戻る。
【0022】
そして、引張機構5が単一の駆動源により駆動する場合には、径や肉厚の異なる異種のパイプを切断しようとするとき、径や肉厚の差によって一部のパイプが先に切断完了し、引張機構5による引張力が残りのパイプだけに加わることになる。そうすると、切断機構による切断速度と引張機構による引張力とのバランスが崩れ、切断面の不良や切断機構における刃こぼれ等が生じ得る。これに対し、本実施形態に係るパイプ切断装置1によれば、引張機構5による引張力をパイプごとに各別に加えるようにしてあるので、径や肉厚の異なる複数種のパイプを切断する場合でも、一部のパイプが先に切断完了した場合における切断面の不良や切断機構における刃こぼれ等が生じる上記問題を解決できる。また、切断機構4については単一の駆動源により動作させるようにしてあるから、装置の構成や設置スペースを省略することができる。
【0023】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るパイプ切断装置のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0024】
(1)上述の実施形態では、2本のパイプを同時に切断可能なパイプ切断装置1を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、3本以上のパイプを同時に切断可能なものであってもよい。
【0025】
(2)上述の実施形態では、切断機構4と引張機構5とがリンク機構6により連結され、切断機構4が引張機構5に連動して引張機構5側に移動する構成を例に説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されず、切断機構4が引張機構5に連動して引張機構5側に移動しなくてもよく、また、切断機構4と引張機構5とがリンク機構6により連結される以外の構成により切断機構4が引張機構5に連動して引張機構5側に移動するものであってもよい。また、切断機構4は、固定機構3とテンションスプリング7を介して連結されていなくてもよい。その他、固定機構3が長手方向Lに沿って移動可能で、引張手段も兼ねるようにして、いわゆる両引っ張り式の装置としてもよい。
【0026】
(3)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、例えばパイプの切断に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 パイプ切断装置
3 固定機構
4 切断機構
42 単一の駆動部
5 引張機構
51 複数の把持部
52 スライド盤(駆動機構)
53 引張用シリンダ(駆動機構)
7 ばね部材
図1
図2