特許第6872787号(P6872787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6872787-紫外線照射用保護ジャケット 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872787
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】紫外線照射用保護ジャケット
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   C02F1/32
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-79442(P2017-79442)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-176068(P2018-176068A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】502154452
【氏名又は名称】株式会社東通研
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳一
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−025503(JP,A)
【文献】 特開2003−059453(JP,A)
【文献】 特開平06−084498(JP,A)
【文献】 特開平09−120773(JP,A)
【文献】 特開2013−226473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射対象物と紫外線照射手段の間に設けて紫外線を透過して前記紫外線照射手段を保護する紫外線照射用保護ジャケットにおいて、
前記紫外線照射手段の紫外線照射面を覆う溶融石英ガラス本体を備え、
前記溶融石英ガラス本体に酸化アルミニウム膜を形成し
前記酸化アルミニウム膜は、酸化アルミニウムと酢酸ブチルエステートの混合比3:7の混合物を用いて形成したことを特徴とする紫外線照射用保護ジャケット。
【請求項2】
前記溶融石英ガラス本体は、前記紫外線照射手段と対向する面に前記酸化アルミニウム膜を形成したことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射用保護ジャケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射ランプなどの紫外線照射面を覆い紫外線を透過させる紫外線照射用保護ジャケットに関する。
【背景技術】
【0002】
図2は紫外線水処理装置の説明図であり、(1)は側面図、(2)は(1)のA−A断面図である。図示のように紫外線水処理装置1は、一端上部に給水口と他端上部に排水口を備えた円筒状のチャンバー本体2と、チャンバー本体2の内部に長手方向に沿って取り付けて、両端がチャンバー本体2の両端と接続した複数の保護ジャケット3と、各保護ジャケット3の円筒内部に取り付けた紫外線照射ランプ4と、を主な基本構成としている。このような構成の紫外線水処理装置1は、チャンバー本体2の給水口から供給された水がチャンバー本体2の長手方向に沿って保護ジャケット3間を通過する。水がチャンバー本体2内部を通過する際、紫外線照射ランプ4の紫外線が照射されて、殺菌処理及び有機物分解処理が行われて純水となり排水口から排出される。
【0003】
このような紫外線水処理装置は、半導体製造分野において工業用超純水の製造装置として適用されている(例えば特許文献1,2に開示)。そして保護ジャケットは材質に所定の強度を備え、かつ紫外線を透過する石英ガラスが一般的に使用されている。この石英ガラスは製造方法の異なる合成石英ガラスと溶融石英ガラスがある。溶融石英ガラスは、原料を高温で溶融させて冷却しガラス化させている。一方、合成石英ガラスは、化学気相蒸着(CVD)によって析出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−164488号公報
【特許文献2】特開10−151450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の合成石英ガラスは、不純物が溶融石英ガラスと比べて少なく、かつ紫外線の透過率も高い。一例として波長域100〜200nmの紫外線の透過率は、合成石英ガラスが85%以上、溶融石英ガラスが60%〜70%である。
しかしながら合成石英ガラスは高価であるため、多数本を組み合わせて用いる純水製造装置の場合、装置全体のコストが増加するという問題があった。
また、溶融石英ガラスは紫外線の透過率が低いため、保護ジャケットと紫外線照射ランプの間の空間内で熱およびオゾンが発生し易くなり、保護ジャケットが劣化して超純水に影響を及ぼすおそれがあった。
【0006】
上記従来技術の問題点に鑑み本発明は、紫外線照射手段の紫外線照射強度を高めると共に、経年劣化を防止する紫外線照射用保護ジャケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段として、本発明は、紫外線照射対象物と紫外線照射手段の間に設けて紫外線を透過して前記紫外線照射手段を保護する紫外線照射用保護ジャケットにおいて、
前記紫外線照射手段の紫外線照射面を覆う溶融石英ガラス本体を備え、
前記溶融石英ガラス本体に酸化アルミニウム膜を形成し
前記酸化アルミニウム膜は、酸化アルミニウムと酢酸ブチルエステートの混合比3:7の混合物を用いて形成したことを特徴とする紫外線照射用保護ジャケットを提供することにある。
上記第1の手段によれば、酸化アルミニウム膜によって保護ジャケットが石英ガラス本来のマイナス電位からプラス電位を担持することになり、紫外線照射ランプのランプ内部での水銀粒子のイオン化が進行し易くなり紫外線照射強度を高めることができる。また、紫外線照射手段の紫外線照射強度が高まることにより保護ジャケットと紫外線照射手段の間の空間で生じる熱及びオゾンガスの発生を低減して、ジャケット本体の劣化及び純水への悪影響を抑制できる。
【0008】
上記課題を解決するための第2の手段として、本発明は、前記第1の手段において、前記溶融石英ガラス本体は、前記紫外線照射手段と対向する面に前記酸化アルミニウム膜を形成したことを特徴とする紫外線照射用保護ジャケットを提供することにある。
上記第2の手段によれば、紫外線照射用保護ジャケットを紫外線水処理装置に適用したときに、ガラス本体の内側に酸化アルミニウム膜を形成しているので酸化アルミニウム膜による純水の汚染を防止でき、殺菌処理及び有機物分解処理を効率的に行うことができる。
【0009】
上記課題を解決するための第3の手段として、本発明は、前記第1又は第2の手段において、前記酸化アルミニウム膜は、酸化アルミニウムと酢酸ブチルエステートの混合比3:7の混合物を用いて形成したことを特徴とする紫外線照射用保護ジャケットを提供することにある。
上記第2の手段によれば、保護ジャケットの内面に酸化アルミニウム膜を所定の膜厚で均一に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化アルミニウム膜によって保護ジャケットが石英ガラス本来のマイナス電位からプラス電位を担持することになり、紫外線照射ランプのランプ内部での水銀粒子のイオン化が進行し易くなり紫外線照射強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の紫外線照射用保護ジャケットの構成概略図である。
図2】紫外線水処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の紫外線照射用保護ジャケットの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
[紫外線照射用保護ジャケット10]
図1は本発明の紫外線照射用保護ジャケットの構成概略図であり、(1)は斜視図、(2)は内部に紫外線照射手段を取り付けて長手方向に沿った断面図、(3)は内部に紫外線照射手段を取り付けて長手方向と直交する方向の断面図である。図示のように本発明の紫外線照射用保護ジャケット10は、円筒状の溶融石英ガラス本体20であり、筒内に紫外線照射手段12となる低圧放電ランプ等を配置可能としている。
【0013】
溶融石英ガラス本体20は、紫外線照射手段12の紫外線照射面を覆う筒状の内面に酸化アルミニウム膜30を形成(コーティング)している。この酸化アルミニウム膜30の成膜方法は、例えば、酸化アルミニウム(酸化アルミナ)粉体と酢酸ブチルエステート容器の混合液をスプレー噴霧した後、電気炉内で200℃〜300℃の熱風で焼結固着させて成膜することができる。
また酢酸ブチルエステート溶液と酸化アルミニウム粉体の混合比は7:3であると良い。これにより内面に所定の膜厚(薄膜)を均一に形成することができる。
紫外線照射手段は、アマルガムアンプ(合金ランプ)、低圧放電ランプ、LEDを用いて主波長254nmの紫外線を照射可能な手段である。
【0014】
[作用]
上記構成による本発明の紫外線照射用保護ジャケットの作用について、以下説明する。
紫外線水処理装置などの紫外線照射用保護ジャケット10の筒状内部に紫外線照射手段12を配置して、主波長254nmの紫外線を水などの紫外線照射対象物へ照射する。酸化アルミニウム膜30によって紫外線照射用保護ジャケット10の内面が石英ガラス本来のマイナス電位からプラス電位を担持することになり、紫外線照射ランプのランプ内部での水銀粒子のイオン化が進行し易くなり紫外線照射強度を高めることができる。また、紫外線照射手段12の紫外線照射強度が高まることにより紫外線照射用保護ジャケット10と紫外線照射手段12の間の空間で生じる熱及びオゾンガスの発生を低減して、溶融石英ガラス本体20の劣化及び純水への悪影響を抑制できる。
【0015】
[実施例]
紫外線照射手段となるアマルガムランプ(無負荷電圧250V、最大電流1.3A、始動電圧8000V)の主波長254nmの紫外線のUV照度が43.33mw/cm2であった。
本発明のA:紫外線照射用保護ジャケット、B:溶融石英ガラス管(酸化アルミニウム膜なし)、C:合成石英ガラス管の筒内に前述のアマルガムランプを配置して、各UV照度を測定した。その結果、A:37.59mw/cm2、B:35.32mw/cm2、C:38.20mw/cm2であった。
各透過率は、A=83%、B=77%、C=84%であった。
これにより、本発明の紫外線照射用保護ジャケットは、溶融石英ガラス管と比べ6%透過率が増加し、合成石英ガラス管並みの透過率が得られた。従って、紫外線照射用保護ジャケットに安価な溶融石英ガラスを用いることにより、装置全体の低コスト化を図れる。また溶融石英ガラスを用いても紫外線照射強度を合成石英ガラス並みに高めることができる。
【0016】
なお、本実施形態では、溶融石英ガラス本体の内側(内面)に酸化アルミニウム膜を形成したが、形成箇所はこれに限らず、溶融石英ガラス本体の外側(外面)に形成しても良い。外側に酸化アルミニウム膜を形成した場合は、主に空気中の殺菌処理及び有機物分解処理を行うことができる。
また、本発明の紫外線照射用保護ジャケットは、主波長185nmの紫外線の透過を大幅に低減できる。このため、安価な低圧放電ランプ(波長185nm及び254nmの紫外線を照射可能)に本発明の紫外線照射用保護ジャケットを適用した場合、波長254nmの紫外線の照射強度を高めると共に、波長184nmの紫外線の透過を大幅に低減して、紫外線照射用保護ジャケットと紫外線照射手段の間の空間で生じる熱及びオゾンガスの発生を低減して、溶融石英ガラス本体の劣化及び純水への悪影響を抑制できる。
また紫外線照射中の保護ジャケットの温度上昇(点灯してから1時間経過後)については以下の通りであった。
本発明の紫外線照射用保護ジャケットは、点灯前内部温度19.2℃、1時間経過後の温度49.8℃であった。
溶融石英ガラスは、点灯前内部温度18.3℃、1時間経過後の温度53.3℃であった。
合成石英ガラスは、点灯前内部温度20.1℃、1時間経過後の温度49.3℃であった。
以上より、本発明の紫外線照射用保護ジャケットは、溶融石英ガラスよりも温度上昇を抑えることができ、合成石英ガラス並みの温度上昇を維持できる。このため、保護ジャケットと紫外線照射手段の間の空間で生じる熱の発生を低減して、ジャケット本体の劣化及び純水への悪影響を抑制できる。
【符号の説明】
【0017】
1………紫外線水処理装置、2………チャンバー本体、3………保護ジャケット、4………紫外線照射ランプ、
10………紫外線照射用保護ジャケット、12………紫外線照射手段、20………溶融石英ガラス本体、30………酸化アルミニウム膜。
図1
図2