(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872792
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】張設シート用縁取りテープ
(51)【国際特許分類】
E01F 7/00 20060101AFI20210510BHJP
E04F 10/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
E01F7/00
E04F10/02
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-155734(P2017-155734)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-35212(P2019-35212A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】392002918
【氏名又は名称】日本ワイドクロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】月足 和弘
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−327349(JP,A)
【文献】
実開平05−096340(JP,U)
【文献】
実開昭62−011196(JP,U)
【文献】
特開2002−309425(JP,A)
【文献】
特開昭58−057934(JP,A)
【文献】
特開平11−187775(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/072905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00
E04F 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
張設シートの縁に縫着固定されるとともに、留め具が挿入される貫通穴を有する張設シート用縁取りテープであって、
モノフィラメントを編織成して帯状に形成され、
幅方向の中間部に長手方向に沿って延びて2つ折りを可能にする折り曲げ線部が形成され、
該折り曲げ線部が組織を他の部分よりも粗く又は薄くして構成され、
幅方向における前記折り曲げ線部の両側であって前記折り曲げ線部から幅方向外側に等距離離れるとともに2つ折りにしたときに重なり合う位置に、複数の前記貫通穴が長手方向に沿って間隔をあけて形成された
張設シート用縁取りテープ。
【請求項2】
前記貫通穴が、長手方向に延びるたて糸間に非連続部を設けて形成された
請求項1に記載の張設シート用縁取りテープ。
【請求項3】
前記折り曲げ線部を挟んで並ぶ前記貫通穴間の距離が、前記折り曲げ線部で2つ折りしたときに別部材のロープを保持可能とする間隔である
請求項1または請求項2に記載の張設シート用縁取りテープ。
【請求項4】
幅方向における前記貫通穴を有する部分に、前記モノフィラメントと異なる色の貫通穴目印糸が長手方向に沿って織り込まれた
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の張設シート用縁取りテープ。
【請求項5】
幅方向における前記貫通穴と外端の間であって前記張設シートを縫着固定するときの縫着位置に、前記モノフィラメントと異なる色の縫着目印糸が長手方向に沿って織り込まれた
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の張設シート用縁取りテープ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の張設シート用縁取りテープを備えた
張設シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば防風ネットや防護シート、防音シート、日よけなどのように張設して用いられる張設シート用の部材、より詳しくは、補強と張設を行うために張設シートの縁に縫着固定される張設シート用縁取りテープに関する。
【背景技術】
【0002】
張設シートに使用される縁取りテープには、金具である鳩目を取り付けるものが使用されていた。つまり、張設シートの縁に縁取りテープを縫着したのち、縁取りテープと張設シートの重合部分に貫通穴を形成して、この貫通穴に鳩目をかしめ固定していた。
【0003】
しかし、張設シートを張設したときに鳩目には荷重が集中する。この鳩目は、縁取りテープとは別体の金具であるうえに、かしめて固定されているので、過大な負荷により破れが生じやすい。
【0004】
このため、下記特許文献1に開示されている鳩目部材が提案された。
【0005】
この鳩目部材は、張設シートの縁に取り付けられる帯状の取り付け部と、この取付け部との間に間隔をあけて平行に並べた鳩目糸と、これら取り付け部と鳩目糸との間を連結し、長手方向に沿って一定間隔おきに配設された横糸とで構成されている。横糸と取り付け部と鳩目糸で囲まれた部分が、留め具を通す鳩目用の開口である。この開口は比較的大きく形成されている。
【0006】
この鳩目部材によれば、鳩目をかしめ固定する場合と比べて、強度の低下を防止できる。
【0007】
しかしながら、荷重は横糸と鳩目糸で主に支えることになり、開口は大きく変形しやすいうえに、留め具との相対変位も生じやすい構造であるので、鳩目を用いた場合よりもきれいに張れないことがある。すなわち、鳩目糸のうちの留め具で留めた部分だけが固定対象に固定され、その他の部分が荷重によって大きく波打つように変形してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3445548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、高い強度が得られるとともにきれいに張設できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための手段は、張設シートの縁に縫着固定されるとともに、留め具が挿入される貫通穴を有する張設シート用縁取りテープであって、モノフィラメントを編織成して帯状に形成され、幅方向の中間部に長手方向に沿って延びて2つ折りを可能にする折り曲げ線部が形成され、該折り曲げ線部が組織を他の部分よりも粗く又は薄くして構成され、幅方向における前記折り曲げ線部の両側であって前記折り曲げ線部から幅方向外側に等距離離れるとともに2つ折りにしたときに重なり合う位置に、複数の前記貫通穴が長手方向に沿って間隔をあけて形成された張設シート用縁取りテープである。
【0011】
前記の「編織成」は、編成又は織成することであり、強度の点からは編成するほうが好ましい。
【0012】
この構成では、折り曲げ線部は2つ折りを容易に、正確な位置で行わせる。留め具が挿入される貫通穴は、折り曲げ線部を挟む両側の2箇所に存在するとともに、これら貫通穴は、かかる荷重を編織成されてなる全体に分散する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、正しく2つ折りされて重なり合う2つの貫通穴が荷重を全体に分散しながら支えるので、強度の高い張設状態が得られるとともに、張設シートをきれいに張設できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】張設シート用縁取りテープを備えた張設シートの要部の斜視図。
【
図3】張設シート用縁取りテープの開いた状態の正面図。
【
図4】張設シート用縁取りテープの固定作業の一工程を示す斜視図。
【
図5】張設シート用縁取りテープの固定作業の一工程を示す斜視図。
【
図6】張設シート用縁取りテープの固定部分を示す断面図。
【
図7】張設シート用縁取りテープの固定部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0016】
図1に、張設シート11の要部を示した。この張設シート11は、例えば
図2に示したように張設して使用される適宜のものであり、網地(ネット)やシート材、これらの複合材などで構成される。
図1、
図2等では、便宜上、張設シート11が網地であるように描いたが、張設シート11は網地を有するものに限定されない。
【0017】
張設して使用されるため、張設シート11は、縁の補強と張った状態での取り付けを可能にするため、全周の縁に、張設シート用縁取りテープ12(以下、「縁取りテープ」という)が縫着固定されている。
【0018】
縁取りテープ12は、
図1に示したような結束具13aや、そのほかの金具など適宜の留め具13が挿入される貫通穴21を有している。
【0019】
図3が縁取りテープ12の正面図である。
図3は縁取りテープ12を開いた状態を示しており、縁取りテープ12は、長手方向、つまり
図3の上下方向に連続する長尺である。長尺のテープ状であるため、縁取りテープ12は使用に際して適宜長さに切断して使用される。
【0020】
縁取りテープ12は、合成樹脂製のモノフィラメントを編織成して帯状に形成されている。好ましくは、縁取りテープ12は、例えばラッセル編みなど、目ほどけがないうえ伸縮性が少なく適宜の厚み有する強靭な編地で構成されるとよい。
【0021】
縁取りテープ12の幅W1は、長手方向に沿って2つ折りして張設シート11の縁に一部を重ね合わせて取り付けるとともに、張設シート11の縁と2つ折りした折り曲げ位置との間に前述の貫通穴21を形成できる幅に設定されている。
【0022】
縁取りテープ12の幅方向の中間部には、長手方向に沿って延びて前述の2つ折りを可能にする折り曲げ線部22が形成されている。折り曲げ線部22の幅W2は、縁取りテープ12の厚さに見合った細さ、つまり縁取りテープ12を折り曲げ線部22で折り曲げたときの2つ折り状態が、誰が行っても一様に定まる細さに設定される。
【0023】
この折り曲げ線部22は、編成組織を他の部分よりも粗く又は薄くして構成する。
図3に示した例では、鎖のように編まれたたて糸を不存在にして幅方向に連結するモノフィラメントのみを存在させる。しかも、幅方向に連結するモノフィラメントの本数を他の部分よりも少なくして、組織を他の部分よりも粗く、かつ薄くしている。
【0024】
このほか、折り曲げ線部22の構成は、たて糸を存在させても細くしたり、たて糸間隔を広めにあけて曲がりやすくしたりするなど、採用する編成組織又は織成組織に応じてその他の構成とすることもできる。
【0025】
前述の貫通穴21は、縁取りテープ12の幅方向における折り曲げ線部22の両側であって折り曲げ線部22から幅方向外側に等距離離れるとともに2つ折りにしたときに重なり合う位置に、長手方向に沿って複数、間隔をあけて形成している。
【0026】
これら貫通穴21は、縁取りテープ12が前述のように編成により構成されるので、長手方向に延びる鎖状に編まれたたて糸間に非連続部23を設けて形成されている。非連続部23を設けるとは、たて糸を編みながら幅方向に絡みあわせるときに、貫通穴21を形成する部分で幅方向の絡み合わせを省略することである。
図3では、やや誇張して示しているが、非連続部23を有しない隣接する部位で幅方向での絡み合わせがなされるので、貫通穴21は自ずと開く。
【0027】
貫通穴21の大きさ(長さ)は、使用する留め具13の形状などに応じて適宜設定される。図示例のようなスリット(切れ目)状であるほか、丸い鳩目のように小さく(短く)してもよい。
【0028】
貫通穴21の長さL1と貫通穴21同士の間隔L2は、絡み合わせない又は絡み合わせる編目の数で適宜設定できる。貫通穴21同士の間隔L2は、貫通穴21の長さL1よりも長い方が好ましい。貫通穴21にかかる荷重をより広く分散させて良好に支えられるからである。
【0029】
これに関連して、幅方向における貫通穴21の位置と、幅方向中間の折り曲げ線部22の間には、荷重を支える平面部24が形成できる適宜の幅を持たせるのが好ましい。
【0030】
より好ましくは、平面部24の幅は、折り曲げ線部22を挟んで並ぶ貫通穴21間の距離が、折り曲げ線部22で2つ折りしたときに別部材のロープ14(
図7参照)を保持可能とする間隔となるものであるとよい。
【0031】
このような貫通穴21を有する部分には、貫通穴21の位置を示す貫通穴目印糸25を有している。つまり、幅方向における貫通穴21を有する部分に、モノフィラメントと異なる色の貫通穴目印糸25が長手方向に沿って織り込まれている。貫通穴目印糸25は、モノフィラメントが黒色である場合には白色など、目立つ色の糸を使用して、編成と同時に織り込む。具体的には、貫通穴21を形成する2本のたて糸に沿って、2本の貫通穴目印糸25を備える。
【0032】
また、幅方向における貫通穴21と外端の間であって張設シート11を縫着固定するときの縫着位置に、モノフィラメントと異なる色の縫着目印糸26が長手方向に沿って織り込まれている。この縫着目印糸26も貫通穴目印糸25と同様に、目立つ色の糸を使用して、編成と同時に織り込む。この場合は、1本でよい。縫着目印糸26の形成位置は、折り曲げ線部22を挟む両側部あるも、
図3に示したようにいずれか一方であるもよい。
【0033】
以上のような構成の縁取りテープ12は、次のようにして縁取りテープ12を備えた張設シート11を構成し、張設がなされる。
【0034】
まず、
図4に示したように縁取りテープ12を開いて、折り曲げ線部22を挟む貫通穴21のうち一方の貫通穴21よりも外側の部分に、張設シート11の縁をのせる。つぎに、
図5に示したように折り曲げ線部22を挟む他方側の貫通穴21を有する部分を折り曲げ線部22位置で折り返して、張設シート11の縁を挟む。折り曲げ線部22を有するので、2つ折りが一様に正確に行え、重なり合うべき貫通穴21同士が正確に重なり合う。
【0035】
このあと、縫着目印糸26に沿って縫着を行う。縫着目印糸26が縫着に際して基準となるので、作業が正確に、しかも容易に行える。そのうえ、前述のように折り曲げ線部22が2つ折りを正確に行わせるとともに、その2つ折り状態を維持するように作用するので、折り曲げ線部22を挟む両側部分がずれることなく正確に縫着が行える。
【0036】
このようにして行う縁取りテープ12の固定は、張設シート11の必要とされる縁に対してなされる。
【0037】
図6に、張設シート11の縁取りテープ12部分の断面構造を模式的に示している。折り曲げ線部22に隣接して順に、平面部24、貫通穴21が形成されている。貫通穴21は、2個が一対となって重なり合っている。
図6中、15は縫着をした縫い糸である。
【0038】
図7に示したようにロープ14を保持する場合には、縁取りテープ12を2つ折りする時にロープ14を保持してから縫着を行うとよい。
【0039】
張設シート11の張設に際しては、複数の貫通穴21のうちの必要とする貫通穴21に対して留め具13を挿入して取り付ける。留め具13の挿入際しては、貫通穴目印糸25が貫通穴21の位置を示すので、たとえ黒色のモノフィラメントで構成された縁取りテープ12であっても、貫通穴21の位置が容易にわかり、固定作業が円滑に行える。
【0040】
そして、貫通穴21を有する部分は2重であり、折り曲げ線部22との間に平面部24を有する構造であって、2つの貫通穴21に留め具13が挿入されるので、強度が高い。また、引っ張られたときに貫通穴21にかかる荷重は、貫通穴21を形作るモノフィラメントから平面部24を構成するモノフィラメント、その他の部分のモノフィラメントへと、全体的に分散されながら支持される。このため、強度の高い張設状態が得られるとともに、張設シート11の縁、つまり縁取りテープ12を備えた部分はその形状が維持された状態で張設がなされ、外観美麗な張設ができることになる。
【0041】
このような縁取りテープ12において、折り曲げ線部22は、組織を他の部分よりも粗く又は薄くして形成され、貫通穴21は、たて糸間に非連続部23を設けて形成されるので、縁取りテープ12は編成だけ形成でき、別部材の鳩目を固定するような別途の作業は不要である。このため、製造は容易である。
【0042】
また、鳩目をかしめ固定した場合のように、廃棄に際して部材を分けたりする手間も不要である。
【符号の説明】
【0043】
11…張設シート
12…張設シート用縁取りテープ
13…留め具
14…ロープ
21…貫通穴
22…折り曲げ線部
23…非連続部
25…貫通穴目印糸
26…縫着目印糸