(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施の形態の説明に先立ち、本開示の基礎となった知見について説明する。以下、本開示の基礎となった知見として、従来技術の表示装置及びその問題点について説明する。
【0011】
図1は、従来技術の表示装置900の機能構成を示すブロック図である。
図1に示される従来技術の表示装置900は、主に、表示パネル910と、制御回路903と、電源回路906とを備える。
【0012】
表示パネル910は、表示部902と、走査線駆動回路904と、信号線駆動回路905とを有する。
【0013】
表示部902は、行列状に配置された複数の画素回路90を有する。当該行列の各行には同じ行に配置される複数の画素回路90に共通に接続される制御信号線が設けられ、当該行列の各列には同じ列に配置される複数の画素回路90に共通に接続されるデータ信号線が設けられる。
【0014】
走査線駆動回路904は、制御信号線を介して、画素回路90に対し、画素回路90の動作を制御するための制御信号を供給する。
【0015】
信号線駆動回路905は、データ信号線を介して、画素回路90に対し、発光輝度に対応するデータ信号を供給する。データ信号は、画素回路90の表示階調に基づく電圧信号である。
【0016】
制御回路903は、表示パネル910を制御する回路であり、外部から映像信号を受信し、当該映像信号で表される画像が表示部902において表示されるように、走査線駆動回路904、信号線駆動回路905を制御する。
【0017】
電源回路906は、表示装置900の動作用の電源を、表示装置900の各部に供給する。
【0018】
複数の画素回路90について図面を用いて説明する。
図2は、従来技術の表示装置900の画素回路90の一例を示す回路図である。複数の画素回路90は、データ信号に対応する輝度で有機EL素子24を発光させる回路である。複数の画素回路90の各々は、
図2に示されるように、有機EL素子24と、容量素子20と、駆動トランジスタTDとを有する。複数の画素回路90の各々は、さらに、参照トランジスタTREFと、書込みトランジスタTWSと、初期化トランジスタTINIとを有する。複数の画素回路90の各々には、走査線駆動回路904から出力される各制御信号を供給する参照信号線REF、書込み信号線WS及び初期化信号線INIが接続される。また、複数の画素回路90の各々には、信号線駆動回路905から出力されるデータ信号を供給するデータ信号線SIGが接続される。
【0019】
有機EL素子24は、第一電極及び第二電極を有する発光素子である。
図2に示される例では、第一電極及び第二電極は、それぞれ有機EL素子24のアノード及びカソードである。有機EL素子24は、容量成分を有するため、画素回路90の等価回路は、有機EL素子24の容量成分に相当するEL容量素子22を用いて
図2のように表される。また、有機EL素子24の第二電極は、カソード電源線VCATに接続される。ただし、第二電極とカソード電源線VCATとの間には、接触抵抗25が存在する。
【0020】
容量素子20は、電圧を保持するための素子であり、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間に接続される。
【0021】
駆動トランジスタTDは、有機EL素子24の第一電極と接続され、容量素子20に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子24に供給する薄膜トランジスタである。駆動トランジスタTDのソース電極sが有機EL素子24の第一電極(アノード)に接続され、ドレイン電極dがアノード電源線VCCに接続される。
【0022】
初期化トランジスタTINIは、有機EL素子24の第一電極の電位を初期化するための薄膜トランジスタである。初期化トランジスタTINIのドレイン電極及びソース電極の一方に初期化電源線VINIが接続され、他方に有機EL素子24の第一電極(アノード)が接続される。初期化トランジスタTINIのゲート電極には、初期化信号線INIが接続される。
【0023】
参照トランジスタTREFは、容量素子20に参照電圧を印加するための薄膜トランジスタである。参照トランジスタTREFのドレイン電極及びソース電極の一方に参照電源線VREFが接続され、他方に駆動トランジスタTDのゲート電極gが接続される。参照トランジスタTREFのゲート電極には、参照信号線REFが接続される。
【0024】
書込みトランジスタTWSは、容量素子20にデータ信号に対応する電圧を印加するための薄膜トランジスタである。書込みトランジスタTWSのドレイン電極及びソース電極の一方にデータ信号線SIGが接続され、他方に駆動トランジスタTDのゲート電極が接続される。書込みトランジスタTWSのゲート電極には、書込み信号線WSが接続される。
【0025】
上述したような従来技術の表示装置900において、輝度ムラが発生することを発明者は見出した。以下、表示装置900において生じる輝度ムラについて図面を用いて説明する。
図3は、従来技術の表示部902において生じる輝度ムラを示す概略図である。
【0026】
図3に示されるように、表示装置900の表示部902においては、下方に他の領域より輝度が低い領域902aが発生する。以下、この領域902aを「輝度ムラが発生する領域」ともいう。このような輝度ムラが発生する原因の一つについて、以下で図面を用いて説明する。
【0027】
図4は、表示装置900の各制御信号線及びデータ信号線SIGに入力される信号の波形を示すタイミングチャートである。
図4には、一フレーム周期における各信号の波形に加えて、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位Vg及びソース電極sの電位Vsの波形が示されている。なお、データ信号線SIGにおいては、各行に対するデータ信号が、一水平走査期間毎に印加されている。
図4に示されるように、まず、時点T0において、参照信号線REFに出力される参照信号が高レベルとなり、参照トランジスタTREFのドレイン電極とソース電極との間が導通状態となる。これにより、駆動トランジスタTDのゲート電極gに、例えば1V程度の参照電圧が印加される。参照信号線REFに入力される参照信号は、時点T1において低レベルとなり、参照トランジスタTREFのドレイン電極とソース電極との間が非導通状態となる。時点T0から時点T1までの期間は、有機EL素子24を非発光状態とするための非発光期間である。
【0028】
続いて、時点T2において、初期化信号線INIに入力される初期化信号が高レベルとなる。これにより、初期化トランジスタTINIのドレイン電極とソース電極との間が導通状態となる。したがって、有機EL素子24の第一電極、駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子20の当該第一電極に接続された電極の電位が、初期化される。
図2に示される例では、例えば、有機EL素子24の第一電極などに、−3V程度の初期化電圧が印加される。
【0029】
続いて時点T3において、参照信号線REFに入力される参照信号が高レベルとなり、時点T0における動作と同様に、駆動トランジスタTDのゲート電極gに接続された電極に参照電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタTDのゲート電極gには、1V程度の参照電圧が印加され、ソース電極sには、−3V程度の初期化電圧が印加された状態となる。つまり、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間、及び、容量素子20には、約4Vの電圧が印加された状態となる。ここで、駆動トランジスタTDとして、閾値電圧が4V未満であるものを用いる。この場合、駆動トランジスタTDのドレイン電極dとソース電極sとの間に、容量素子20に保持される電圧に応じた電流が流れる。このとき、有機EL素子24のアノードには、初期化トランジスタTINIを介して−3V程度の初期化電圧が印加されており、カソードには、カソード電源線VCATによって+1.5V程度のカソード電圧が印加されている。つまり、有機EL素子24には逆バイアスが印加されている状態となるため、有機EL素子24は発光しない。駆動トランジスタTDに流れる電流は、容量素子20に流れ込み、後述する閾値補償動作において用いられる。以下では、時点T2から後述する時点T4までの有機EL素子24の第一電極の電位を初期化する制御を初期化制御という。
【0030】
続いて、時点T4において、初期化信号線INIに入力される初期化信号が低レベルとなり、初期化トランジスタTINIのドレイン電極とソース電極との間が非導通状態となる。これにより時点T4以降においては、初期化電源線VINIから容量素子20への電圧供給が遮断され、かつ、有機EL素子24には、逆バイアスが印加されている。このため、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間に流れる電流は、容量素子20に流れ込む。これに伴い、駆動トランジスタTDのソース電極sに接続された容量素子20の電極の電位が徐々に上昇する。また、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間の電圧、つまり、容量素子20が保持する電圧が徐々に低下する。容量素子20が保持する電圧が、駆動トランジスタTDの閾値電圧に近付くと、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間に電流が流れなくなる。このように、容量素子20が保持する電圧は、駆動トランジスタTDの閾値電圧と等しい状態に維持される。なお、このとき、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位が上昇しても、有機EL素子24に順方向閾値電圧以上の電圧が印加されないように、カソード電源線VCATに印加されるカソード電圧の値が設定されている。以上のように、表示装置900においては、駆動トランジスタTDの閾値電圧が補償される。続いて時点T5において、参照信号線REFに入力される参照信号が低レベルとなり、参照トランジスタTREFのドレイン電極とソース電極との間が非導通状態となる。以下では、時点T4から時点T5までの駆動トランジスタTDの閾値電圧を補償する制御を閾値補償制御という。
【0031】
続いて、時点T6において、書込み信号線WSに入力される信号が高レベルとなり、書込みトランジスタTWSのドレイン電極とソース電極との間が導通状態となる。これに伴い、データ信号線SIGに入力されたデータ信号に対応する電圧が、容量素子20に印加される。具体的には、容量素子20に印加される電圧Vgsは、データ信号の電圧Vsig、参照電圧Vref、駆動トランジスタTDの閾値電圧Vth、容量素子20の容量Cs及びEL容量素子22の容量Coledを用いて、以下のように表される。
【0032】
Vgs=(Vsig−Vref)×Coled/(Cs+Coled)+Vth
【0033】
続いて、時点T7において、書込み信号線WSに入力される信号が低レベルとなり、書込みトランジスタTWSのドレイン電極とソース電極との間が非導通状態となる。これに伴い、駆動トランジスタTDのゲート電極gへのデータ信号の印加が解除されるので、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位Vgは上昇可能な状態となり、ソース電極sの電位Vsも上昇可能な状態となる。このとき、駆動トランジスタTDには、ドレイン電流が流れ、EL容量素子22が充電されることでブートストラップ動作が開始される。すなわち、有機EL素子24のアノード、つまり、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位Vsが上昇し、これに伴い、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位Vgも上昇する。このブートストラップ動作において、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位Vsが上昇することによって、有機EL素子24の逆バイアス状態が解消されるため、駆動トランジスタTDの出力電流が有機EL素子24に流れる。これにより、有機EL素子24は、データ信号が示す表示階調に応じた輝度で発光する。
【0034】
表示装置900の表示部902において、複数の画素回路90の各々が順次以上のような動作を行う。
【0035】
続いて、複数の画素回路90が順次以上のような動作を行う場合に起こる現象について、図面を用いて説明する。
図5及び
図6は、それぞれ、従来技術の表示装置900において起こる第一及び第二の現象を説明する回路図である。
【0036】
図4の時点T2において、有機EL素子24の第一電極(アノード)に−3V程度の初期化電圧が印加される直前まで、第一電極には、1V程度の参照電圧が印加された状態である。時点T2において、
図5の矢印(1)で示されるように、初期化電圧が第一電極に印加される。これに伴い、第一電極の電位が1V程度から−3V程度まで急激に低下する(
図5の矢印(2)参照)。ここで、第一電極と第二電極との間には、上述のとおりEL容量素子22が存在する。また、第二電極とカソード電源線VCATとの間には、接触抵抗25が存在するため、第二電極の電位は変動し得る。特に、第二電極からカソード電源線VCATに流れる電流の密度が小さい場合には、接触抵抗25の抵抗値が大きくなるため、第二電極の電位変動が顕著となる。このため、第一電極の電位低下に伴って、第二電極の電位も低下する(
図5の矢印(3)参照)。
【0037】
ここで、接触抵抗25の抵抗値の非線形性について図面を用いて説明する。
図7は、画素回路90の有機EL素子24の第二電極とカソード電源線VCATとの間の接触抵抗25の電圧−電流密度特性の概要を示すグラフである。
図7に示されるように、接触抵抗25の電圧−電流密度特性は非線形を有する。つまり、接触抵抗25の抵抗値は、電流密度に応じて変化する。接触抵抗25の抵抗値は、電流密度が小さいほど大きくなる。
【0038】
このような接触抵抗25の抵抗値の非線形性が生じる原因について、図面を用いて説明する。
図8及び
図9は、それぞれ、接触抵抗25が発生するコンタクト領域の一例及び他の例を示す模式的な断面図である。
図8には、有機EL素子24及び接触抵抗25が形成される領域の断面が示されている。
図9には、赤、緑及び青の光をそれぞれ出射する有機EL素子24R、24G及び24Bと、接触抵抗25が形成される領域の断面が示されている。
図9に示される有機EL素子24R、24G及び24Bは、
図2に示される有機EL素子24の一例である。なお、
図8及び
図9においては、画素回路90における薄膜トランジスタなどが形成された層は省略されている。
【0039】
図8に示される例では、表示部902には複数の画素回路90にそれぞれ対応する複数の有機EL素子24が配置されている。複数の有機EL素子24は、共通の基板912上に形成されている。有機EL素子24の各々は、第一電極241と、第二電極242と、第一有機EL層243と、第二有機EL層244とを備える。有機EL素子24の各々は、バンク245によって分離されている。なお、有機EL素子24の各々は、これらの層以外の層を備えてもよい。
【0040】
第一電極241は、例えば、有機EL素子24のアノードであり、バンク245によって、隣り合う有機EL素子24の第一電極241と分離されている。
【0041】
第一有機EL層243は、有機材料からなる層であり、例えば、有機発光層である。第一有機EL層243は、バンク245によって、隣り合う有機EL素子24の第一電極241と分離されている。複数の第一有機EL層243は、同一の有機材料膜をパターニングすることによって形成されてもよいし、例えば、発光色に応じて異なる有機材料膜が形成されてもよい。
【0042】
第二有機EL層244は、有機材料からなる層であり、例えば、電子輸送層である。
図8に示される例では、第二有機EL層244は、有機EL素子24毎にパターニングせずに、第一有機EL層243及びバンク245上に一体的に設けられている。これにより、第二有機EL層244の形成において、パターニングの工程が不要となるため、有機EL素子24の製造工程を簡素化できる。これに伴い、精度の高いマスクパターン形成が不要となるため、マスクコスト及び表示パネル製造コストを低減できる。
【0043】
第二電極242は、例えば、有機EL素子24のカソードであり、
図8に示される例では、第二電極242は、有機EL素子24毎にパターニングせずに、第二有機EL層244上に一体的に設けられている。これにより、第二電極242の形成において、パターニングの工程が不要となるため、有機EL素子24の製造工程を簡素化できる。
【0044】
図8に示される例では、カソード電源線VCATは、表示部902の外部に配置されている。カソード電源線VCATは、例えば、第一電極241と同じ導電材料を用いて形成されてもよい。カソード電源線VCATは、表示部902の外部のコンタクト領域902cにおいて、第二電極242と接触している。このコンタクト領域902cにおいて、接触抵抗25が発生する。
【0045】
図9に示される例では、表示部902にカソード電源線VCAT及びコンタクト領域902cが配置されている点において、
図8に示される例と相違する。また、表示部902に配置される各画素92は、赤、緑及び青の光をそれぞれ出射する有機EL素子24R、24G及び24Bを有する。また、有機EL素子24R、24G及び24Bの各々の構成は、
図8に示される例と同様である。有機EL素子24R、24G及び24Bが備える第一有機EL層243は、それぞれ異なる有機材料で形成されてもよい。
【0046】
図8及び
図9に示される各例のコンタクト領域902cにおいて、例えば、カソード電源線VCATと、第二電極242との間に、有機EL層が配置されることによって、接触抵抗25が有機EL素子24と同様にダイオード特性を有し得る。これにより、接触抵抗25の抵抗値が、
図7に示されるような非線形性を有する。
【0047】
なお、接触抵抗25が、非線形性を有する構成はこれに限定されない。例えば、有機EL素子24の発光効率を高めるために、第一電極241の表面に薄い絶縁膜を形成する場合がある。この場合において、製造工程を簡略化するために、カソード電源線VCATを、第一電極241と同一の材料を用いて、同一工程で形成すると、カソード電源線VCATの表面にも絶縁膜が形成される。この場合も、接触抵抗25の抵抗値が非線形性を有し得る。
【0048】
なお、コンタクト領域902cなどの構成は、
図8及び
図9に示される例に限定されない。例えば、
図8及び
図9においては、有機EL素子は、有機EL素子毎に分離された層と、分離されていない層とを備えたが、いずれか一方の層だけを備えてもよい。また、
図9では、各画素992が赤、緑及び青の光を出射する有機EL素子を備える構成を示したが、各画素92が、さらに、白色光を出射する有機EL素子を備えてもよい。また、各画素92が一つの色の光を出射する有機EL素子だけを備えてもよい。また、
図9に示される例では、画素92毎にカソード電源線VCATが形成されているが、複数の画素92毎に一つのカソード電源線VCATが形成されてもよい。
【0049】
また、カソード電源線VCATを、第一電極241と同一の材料を用いて、同一工程で形成する例を示したが、カソード電源線VCATの少なくとも一部を、画素回路90などに含まれる薄膜トランジスタを形成する層と同一の材料を用いて薄膜トランジスタと同一工程で形成してもよい。
【0050】
画素回路90において発生する現象の説明に戻る。
図6に示される有機EL素子24の第二電極は、複数の画素回路90において共用されているため、一つの画素回路90における第二電極の電位低下に伴って、当該画素回路の近傍に配置された他の画素回路90の第二電極の電位も低下する(
図6の矢印(1)参照)。当該他の画素回路90の第二電極の電位低下に伴って、第二電極とEL容量素子22とを介して接続される第一電極の電位も低下する(
図6の矢印(2)参照)。このとき、当該他の画素回路90において、閾値補償制御が行われている場合(
図4の時点T4から時点T5までの期間にある場合)、第一電極の電位、つまり、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位Vsが低下することで、適切に閾値電圧の補償が行われない場合がある。つまり、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位Vsが低下することで、容量素子20が保持する電圧(
図6の矢印(3)参照)が、閾値電圧より高くなる。このような現象が発生しても、引き続き閾値補償動作期間が続けば、容量素子20及びEL容量素子22の充放電が行われることによって、容量素子20が保持する電圧は、駆動トランジスタTDの閾値電圧に近付く。しかしながら、上記現象が、閾値補償動作期間(
図2の時点T4から時点T5までの期間)の終了間際に発生した場合には、容量素子20が保持する電圧が、閾値電圧より高い状態のまま、閾値電圧補償期間が終了する。このため、当該他の画素回路90において、データ信号に相当する電圧が印加される場合、容量素子20が保持する電圧が、データ信号に相当する電圧より高くなる。これに伴い、有機EL素子24の輝度がデータ信号に対応する輝度より高くなる。
【0051】
このように、一つの画素回路90における初期化制御に伴って、他の画素回路90における有機EL素子24の輝度がデータ信号に対応する輝度より高くなり得る。しかしながら、表示部902のうち、垂直走査方向の走査の終端近傍の画素では、閾値補償制御の期間中に、他の画素回路90で初期化制御が行われていないため、このような輝度の増大現象は発生しない。このような現象について、図面を用いて説明する。
【0052】
図10は、従来技術の表示装置900の一フレーム期間における画素回路90の第二電極(つまり、カソード)の電位波形を示すグラフである。
図10は、複数の画素回路90が行列状に配置された表示部902における有機EL素子24の第二電極の電位を示す。表示部902では、複数の画素回路90のすべての第二電極が繋がっている。つまり、複数の画素回路90のすべての第二電極は、単一の導電膜で形成されている。
図10では、表示部902における垂直走査の向きが表示部902の上側の行から下側の行へ向かう向きである場合の波形が示されている。
【0053】
図11A〜
図11Dは、それぞれ、従来技術の表示装置900の時点t=ta〜tdにおいて閾値補償制御を受ける画素回路90が含まれる行、及び、初期化制御を受ける画素回路90が含まれる行の表示部902における位置を示す概略図である。
図11A〜
図11Dにおいて、閾値補償制御を受ける画素回路90が含まれる行がR1a〜R1dで、初期化制御を受ける画素回路90が含まれる行がR2a〜R2dで、それぞれ示される。
【0054】
図11A〜
図11Cに示されるように、時点t=tcまでは、画素回路90が閾値補償制御を受ける際に、他の画素回路90(行R2a〜R2c)において、初期化制御が行われる。これにより、
図5を用いて説明したとおり、当該他の画素回路90の第二電極の電位は、カソード電源線VCATの電位より低くなる。ここで、第二電極は、すべての画素回路90で繋がっているため、時点t=tcまでに閾値補償制御を受ける画素回路90の有機EL素子24の第二電極の電位は、第二電極と接触抵抗25を介して接続されたカソード電源線VCATの電位(1.4V程度)より低くなる(
図10参照)。このため、時点t=tcまでは、有機EL素子24の輝度は、データ信号に対応する輝度より高くなる。
【0055】
一方、時点t=tcより後の時点では、画素回路90が閾値補償制御を受ける際に、他の画素回路90において、初期化制御が行われない。つまり、すべての画素回路90において、初期化制御が行われない。このように、時点t=tcより後の時点では、第二電極の電位を低下させる要因がないため、
図10に示されるように、第二電極の電位は、カソード電源線VCAT(1.4V程度)の電位とほぼ等しくなる。したがって、時点t=tcより後の時点で閾値補償制御を受ける画素回路90の有機EL素子24の第二電極の電位は、カソード電源線VCATの電位とほぼ等しくなる。このため、有機EL素子24の輝度は、データ信号に対応する輝度となる。
【0056】
以上のような現象が発生することで、
図3に示されるように、表示部902の下方に他の領域より輝度が低い領域902aが発生する。
【0057】
そこで、本開示は、有機EL素子を用いる表示装置において、上述したような輝度ムラを低減することを目的とする。
【0058】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルを制御する制御回路とを備え、前記表示パネルは、前記表示パネルの表示領域に行列状に配置された複数の画素回路と、前記表示領域の外側に配置された一つ以上のダミー画素回路とを有し、前記複数の画素回路の各々は、第一電極及び第二電極を有する有機EL素子と、電圧を保持するための容量素子と、前記有機EL素子の第一電極と接続され、前記容量素子に保持された電圧に応じた電流を前記有機EL素子に供給する駆動トランジスタとを有し、前記一つ以上のダミー画素回路の各々は、第一ダミー電極及び第二ダミー電極を有し、前記第二ダミー電極として前記第二電極を前記有機EL素子と共有するダミー容量素子を有し、前記制御回路は、前記複数の画素回路の各々に対して、前記駆動トランジスタの閾値電圧を補償する閾値補償制御を行う期間内に、前記複数の画素回路の他の少なくとも一つの画素回路に対して前記有機EL素子の前記第一電極の電位を初期化する初期化制御、及び、前記ダミー容量素子の前記第一ダミー電極の電位を初期化するダミー初期化制御の少なくとも一方を行う。
【0059】
これにより、複数の画素回路のすべてにおいて、閾値補償動作の期間中に、有機EL素子の第二電極の電位を低下させることができる。これにより、複数の画素回路間における動作条件の差を低減できる。このため、本開示に係る表示装置では、輝度ムラを低減させることができる。
【0060】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記制御回路は、行列状に配置された前記複数の画素回路のうち発光させる画素回路を垂直走査方向に走査し、前記一つ以上のダミー画素回路は、前記表示領域に対して前記垂直走査方向に配置されてもよい。
【0061】
これにより、ダミー画素回路が配置された領域に向かって、発光させる画素回路を走査することで、ダミー画素回路を初期化制御する際に閾値補償制御を行う画素回路と、ダミー画素回路との距離を低減できる。これにより、ダミー画素回路の初期化制御によって生じる有機EL素子の第二電極の電位低下の影響を、閾値補償制御を受けている画素回路により確実に与えることができる。
【0062】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記一つ以上のダミー画素回路は、行列状の前記複数の画素回路のうち、最後に走査される行の画素回路と隣り合う領域に配置されてもよい。
【0063】
これにより、ダミー画素回路を初期化制御する際に閾値補償制御を行う画素回路と、ダミー画素回路との距離を低減できる。
【0064】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記一つ以上のダミー画素回路は、前記表示領域に対して前記垂直走査方向の両側に配置されてもよい。
【0065】
これにより、画素回路の垂直走査の向きが垂直方向のどちらの向きである場合においても、ダミー画素回路を初期化制御する際に閾値補償制御を行う画素回路と、ダミー画素回路との距離を低減できる。
【0066】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、行列状に配置された前記複数の画素回路のうち、最後に走査される行の少なくとも一方の端に位置する画素回路の前記垂直走査方向には、前記一つ以上のダミー画素回路は配置されなくてもよい。
【0067】
これにより、表示パネルのダミー画素回路が配置されていない角部に空きスペースを設けることができる。
【0068】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記一つ以上のダミー画素回路は、前記複数の画素回路の水平走査方向に並べられた複数の領域に配置されてもよい。
【0069】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記一つ以上のダミー画素回路は、行列状に配置され、前記一つ以上のダミー画素回路の配置の行数は、前記表示パネルの一フレーム期間のうち垂直ブランキング期間に含まれる水平走査期間数と等しくてもよい。
【0070】
これにより、垂直ブランキング期間にわたって、画素回路と同様にダミー画素回路を走査することで、表示装置の輝度ムラを抑制できる。
【0071】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記一つ以上のダミー画素回路は、行列状に配置され、行列状に配置された前記一つ以上のダミー画素回路の各行におけるダミー画素回路の個数は、前記表示領域から遠ざかるにしたがって減少してもよい。
【0072】
これにより、有機EL素子の輝度が、垂直方向に徐々に低下するため、輝度ムラが目立ち難くすることができる。また、ダミー画素回路が配置されていない表示パネルの角部に空きスペースを設けることができる。
【0073】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記一つ以上のダミー画素回路は、行列状に配置され、前記一つ以上のダミー画素回路の配置の行数は、前記表示パネルの一フレーム期間のうちブランキング期間に含まれる水平走査期間数より少なくてもよい。
【0074】
このような構成において、一フレーム周期において、特定の行に含まれるダミー画素回路に対して、複数回、初期化制御を行うことで、閾値補償制御を受ける期間に他の画素回路90が初期化制御されないすべての画素回路に対して、閾値補償制御を受ける期間に、ダミー画素回路の初期化制御を行うことができる。
【0075】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記表示パネルは、前記複数の画素回路に初期化電圧を供給する初期化電源線を備え、前記初期化電源線は、前記複数の画素回路の水平走査方向に延びる水平走査方向配線と、前記複数の画素回路の垂直走査方向に延びる垂直走査方向配線とを有し、前記垂直走査方向配線は、前記水平走査方向配線より単位長さ当たりの抵抗が大きくてもよい。
【0076】
これにより、初期化電源線の電位変動量を抑制しつつ、電位変動回数の増加の影響を抑制することができる。
【0077】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記画素回路は、参照電圧が印加される参照電源線と、前記参照電源線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続される参照トランジスタと、前記有機EL素子に供給する電流に対応する電圧が印加されるデータ信号線と、前記データ信号線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続される書込みトランジスタとをさらに有してもよい。
【0078】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記参照トランジスタは、書込みトランジスタよりLDD(Lightly Doped Drain)長が大きくてもよい。
【0079】
これにより、画素回路の参照トランジスタにおけるリーク電流を低減できる。
【0080】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記参照トランジスタは、書込みトランジスタよりチャネル長に対するチャネル幅の比が小さくてもよい。
【0081】
これにより、画素回路の参照トランジスタにおけるリーク電流を低減できる。
【0082】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記参照トランジスタは、書込みトランジスタよりゲート数が多くてもよい。
【0083】
これにより、画素回路の参照トランジスタにおけるリーク電流を低減できる。
【0084】
また、本開示の一態様に係る表示装置において、前記参照トランジスタは、二つのゲートと、チャネル層を形成する半導体層とを有し、前記半導体層の平面視において、前記二つのゲートの間に配置される前記半導体層は、L字状の形状を有してもよい。
【0085】
これにより、画素回路の参照トランジスタにおけるリーク電流を低減できる。
【0086】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、並びに、工程の順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0087】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0088】
また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、各図において縮尺等は必ずしも一致していない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0089】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る表示装置について説明する。
【0090】
[1−1.全体構成]
まず、本実施の形態に係る表示装置9の全体構成について図面を用いて説明する。
図12は、本実施の形態に係る表示装置9の機能構成を示すブロック図である。表示装置9は、例えば、有機ELディスプレイなどの画像表示装置である。
図12に示されるように、表示パネル10と、制御回路3とを備える。表示装置9は、電源回路6をさらに備える。表示パネル10は、表示部2と、走査線駆動回路4と、信号線駆動回路5とを有する。
【0091】
制御回路3は、表示パネル10を制御する回路であり、外部から映像信号を受信し、当該映像信号で表される画像が表示部2において表示されるように、走査線駆動回路4、信号線駆動回路5を制御する。
【0092】
電源回路6は、表示装置9の動作用の電圧を、表示装置9の各部に供給する。
【0093】
表示部2は、表示パネル10の表示領域Paに行列状に配置された複数の画素回路90と、表示領域の外側(ダミー領域Pd)に配置された一つ以上のダミー画素回路90dとを有する。行列状に配置された複数の画素回路90の各行には同じ行に配置される複数の画素回路90に共通に接続される制御信号線が設けられ、当該行列の各列には同じ列に配置される複数の画素回路90に共通に接続されるデータ信号線SIGが設けられる。
【0094】
複数の画素回路90の各々は、上述した従来技術の画素回路90と同様の構成を有する。画素回路90は、
図2に示されるように、第一電極及び第二電極を有する有機EL素子24と、電圧を保持するための容量素子20とを有する。画素回路90は、さらに、有機EL素子24の第一電極と接続され、容量素子20に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子に供給する駆動トランジスタTDを有する。画素回路90は、さらに、参照トランジスタTREFと、書込みトランジスタTWSと、初期化トランジスタTINIとを有する。複数の画素回路90の各々には、走査線駆動回路4から出力される各制御信号を供給する参照信号線REF、書込み信号線WS及び初期化信号線INIが接続される。また、複数の画素回路90の各々には、信号線駆動回路5から出力されるデータ信号を供給するデータ信号線SIGが接続される。
【0095】
一つ以上のダミー画素回路90dについて図面を用いて説明する。
図13は、本実施の形態に係る表示装置9のダミー画素回路90dの一例を示す回路図である。
図13に示されるように、一つ以上のダミー画素回路90dの各々は、第一ダミー電極及び第二ダミー電極を有するダミー容量素子22dを有する。ダミー画素回路90dは、第二ダミー電極として第二電極を画素回路90の有機EL素子24と共有する。
【0096】
図13に示される例では、ダミー画素回路90dは、有機EL素子24に代えて、ダミー容量素子22dを有する点において、画素回路90と相違し、その他の点において一致する。つまり、ダミー画素回路90dは、ダミー容量素子22dと、容量素子20と、駆動トランジスタTDと、参照トランジスタTREFと、書込みトランジスタTWSと、初期化トランジスタTINIとを有する。
【0097】
ダミー容量素子22dの第一ダミー電極は、ダミー容量素子22dの二つの電極のうち、駆動トランジスタTDのソース電極sに接続される電極である。ダミー容量素子22dの第二ダミー電極は、ダミー容量素子22dの二つの電極のうち、カソード電源線VCATに接続される電極である。第二ダミー電極は、複数の画素回路90の有機EL素子24の第二電極と同一の導電膜で形成されてもよい。
【0098】
ダミー画素回路90dには、走査線駆動回路4から出力される各制御信号を供給する参照信号線REF、書込み信号線WS及び初期化信号線INIが接続される。また、ダミー画素回路90dには、信号線駆動回路5から出力されるデータ信号を供給するデータ信号線SIGが接続される。
【0099】
ダミー容量素子22dとして、例えば、有機EL素子24を用いることができる。これにより、ダミー画素回路90dの構成を画素回路90と共通化できるため、表示パネル10の製造工程を単純化できる。また、検査工程において、ダミー容量素子22dとしての有機EL素子24を発光させることで、ダミー画素回路90dの動作を容易に検査できる。また、検査工程において、ダミー画素回路90dを動作させ、有機EL素子24を発光させることで、有機EL素子24の発光効率、電流−電圧特性及び色度を検査できる。このようにダミー画素回路90dを用いて、有機EL素子24の検査を行うことで、複数の画素回路90を用いずに、有機EL素子24の評価を行うことができる。このため、複数の画素回路90の有機EL素子24を劣化させることなく、有機EL素子24の検査を行うことができる。
【0100】
また、ダミー画素回路90dに接続する各信号線を、複数の画素回路90に接続する各信号線とは別に引き出しておけば、当該信号線を用いてダミー画素回路90dだけに信号を供給できる。これにより、検査用の機器をより簡素化できる。
【0101】
ダミー容量素子22dとして、有機EL素子24を用いる場合、ダミー画素回路90dにおけるダミー容量素子22dとしての有機EL素子24が発光した場合に光を外部に漏らさないために、有機EL素子24の発光面にブラックマトリックスを設けてもよい。ブラックマトリックスは、ダミー画素回路90dの検査後に設けられてもよい。このようなブラックマトリックスの形成工程は、例えば、ダミー画素回路90dの検査後にブラックマトリックスが形成されたカラーフィルタを表示パネルに貼ることで実現できる。また、ダミー画素回路90dにデータ信号として黒色に対応する信号(黒データ)を印加してもよい。これにより、ダミー画素回路90dにおける消費電力を低減できる。
【0102】
ダミー容量素子22dとして、有機EL素子24のEL容量素子22と同等の容量を有する容量素子を用いてもよい。このようなダミー容量素子22dとして、例えば、有機EL素子24のうち、発光層だけを取り除いた素子を用いてもよい。これにより、発光しない素子をダミー容量素子22dとして用いることができるため、発光面にブラックマトリックスを配置したり、ダミー画素回路90dに黒データを印加したりしなくてよい。
【0103】
また、ダミー容量素子22dとして、第一ダミー電極と第二ダミー電極との間に、有機EL素子24の二つの電極間に積層される各層のうち、少なくとも一つの層を積層した素子を用いてもよい。これにより、第一ダミー電極と第二ダミー電極との間に積層する層を適宜選択することで、有機EL素子24よりも、第一ダミー電極と第二ダミー電極との間の膜厚が薄いダミー容量素子22d、つまり、容量の大きいダミー容量素子22dを実現できる。このようなダミー容量素子22dとして用いることで、第一ダミー電極と第二ダミー電極との間のカップリングを、より増大できる。したがって、初期化制御の際に、第一ダミー電極の電位低下に伴う第二ダミー電極の電位低下をより確実に実現できる。
【0104】
また、ダミー容量素子22dとして、最も容量の大きい発光色の有機EL素子24だけを用いてもよい。つまり、表示装置9の複数の画素回路90では、RGB又はRGBWの3〜4色の発光色の有機EL素子24が用いられるが、それらの有機EL素子24のうち、最も容量の大きいものだけでダミー容量素子22dが形成されてもよい。例えば、青色の発光色を有する有機EL素子24だけでダミー容量素子22dが形成されてもよい。これにより、第一ダミー電極と第二ダミー電極との間のカップリングをより増大でき、かつ、ダミー容量素子22dの製造工程を単純化できる。
【0105】
また、ダミー容量素子22dとして、有機EL素子24を用いる場合に、ダミー画素回路間に有機EL素子24を区画するためのバンク又はリブを設けなくてもよい。これにより、ダミー容量素子22dとしての有機EL素子24の開口率を高めることができるため、ダミー容量素子22dの容量を増大できる。
【0106】
また、ダミー容量素子22dとして、第一ダミー電極と第二ダミー電極との間をバンク又はリブで埋めた素子を用いてもよい。このような構成において、バンク又はリブの膜厚を変更できる場合には、当該膜厚を薄くしてもよい。これにより、ダミー容量素子22dの容量を増大できる。
【0107】
また、ダミー容量素子22dとして、第一ダミー電極と第二ダミー電極との間を任意の絶縁膜で埋めた素子を用いてもよい。このような構成において絶縁膜の膜厚を変更できる場合には、膜厚を調整することで、ダミー容量素子22dの容量を調節してもよい。
【0108】
走査線駆動回路4は、制御信号線を介して、画素回路90に対し、画素回路90の動作を制御するための制御信号を供給する。本実施の形態では、走査線駆動回路4は、制御信号として、参照信号、初期化信号及び書込み信号を出力する。参照信号、初期化信号及び書込み信号は、それぞれ、参照信号線REF、初期化信号線INI及び書込み信号線WSを介して、参照トランジスタTREF、初期化トランジスタTINI及び書込みトランジスタTWSに供給される。走査線駆動回路4は、ダミー画素回路90dにも制御信号を供給してもよい。
【0109】
信号線駆動回路5は、データ信号線SIGを介して、画素回路90に対し、発光輝度に対応するデータ信号を供給する。信号線駆動回路5は、ダミー画素回路90dにもデータ信号を供給してもよい。
【0110】
制御回路3は、表示装置9の動作を制御する回路であり、外部から映像信号を受信し、当該映像信号で表される画像が表示部2の表示領域Paに表示されるように、走査線駆動回路4及び信号線駆動回路5を制御する。
【0111】
電源回路6は、表示装置9の動作用の電圧を、表示装置9の各部に供給する。
【0112】
[1−2.動作]
本実施の形態の表示装置9の動作について説明する。本実施の形態に係る表示装置9においては、制御回路3は、複数の画素回路90に対して、従来技術の表示装置900の制御回路903と同様に、
図4のタイミングチャートを用いて説明したとおりの動作を行う。さらに、本実施の形態に係る表示装置9においては、制御回路3は、複数の画素回路90の各々に対して、駆動トランジスタTDの閾値電圧を補償する閾値補償制御を行う期間内に、複数の画素回路90の他の少なくとも一つの画素回路90に対して有機EL素子24の第一電極の電位を初期化する初期化制御、及び、ダミー画素回路90dにおけるダミー容量素子22dの第一ダミー電極の電位を初期化するダミー初期化制御の少なくとも一方を行う。以下、本実施の形態に係る表示装置9の動作について、従来技術の表示装置900の動作と比較しながら説明する。
【0113】
本実施の形態に係る表示装置9においては、従来技術の表示装置900と同様に、画素回路90に対して、閾値補償制御を行う期間内に、他の画素回路90に対して初期化制御を行わない場合がある(
図11D参照)。本実施の形態に係る表示装置9では、このような場合には、制御回路3は、ダミー画素回路90dにおけるダミー容量素子22dの第一ダミー電極の電位を初期化するダミー初期化制御を行う。これにより、画素回路90に対して初期化制御を行う場合と同様に、ダミー容量素子22dの第一ダミー電極の電位が低下する。ここで、ダミー容量素子22dは、第二ダミー電極として、有機EL素子24の第二電極を共有する。このため、第一ダミー電極の電位を低下させることで、有機EL素子24の第二電極の電位を低下させることができる。これにより、複数の画素回路90のすべてにおいて、閾値補償動作の期間中に、有機EL素子24の第二電極の電位を低下させることができる。これに伴い、従来技術の表示装置900について説明したように、データ信号に対応する輝度より高い輝度で有機EL素子24を発光させることができる。このため、本実施の形態に係る表示装置9では、
図3を用いて説明したような従来技術の表示装置900において発生する輝度ムラを低減させることができる。
【0114】
また、本実施の形態に係る表示装置9においては、従来技術の表示装置900と同様に、制御回路3は、行列状に配置された複数の画素回路90のうち発光させる画素回路90を垂直方向(つまり、
図12の上下方向)に走査する。また、
図12に示されるように、一つ以上のダミー画素回路90dは、表示領域Paに対して垂直走査方向に配置される。
【0115】
この場合、ダミー画素回路90dが配置された領域に向かって、発光させる画素回路90を走査することで、ダミー画素回路90dを初期化制御する際に閾値補償制御を行う画素回路90と、ダミー画素回路90dとの距離を低減できる。つまり、
図12に示される例では、発光させる画素回路90を
図12の上から下に向けて走査することで、ダミー画素回路90dを初期化制御する際に閾値補償制御を行う画素回路90と、ダミー画素回路90dとの距離を低減できる。これにより、ダミー画素回路90dの初期化制御によって生じる有機EL素子24の第二電極の電位低下の影響を、閾値補償制御を受けている画素回路90により確実に与えることができる。
【0116】
なお、ダミー画素回路90dの行数は、閾値補償制御を受ける期間に他の画素回路90が初期化制御されない画素回路90が含まれる行数より少なくてもよい。
【0117】
例えば、ダミー画素回路90dは一行だけ配置されてもよい。ダミー画素回路90dは表示領域Paと異なり一フレームの間発光させる必要がないことから、同一のダミー画素回路90dを一水平走査期間毎に初期化されられれば、一行だけ配置してもよい。ダミー画素回路90dが一行だけ配置される場合には、一水平走査期間内で、初期化制御と、次の初期化制御の際に電位が変化するように、初期化電圧とは異なる別の電圧を第一ダミー電極に入力すれば、第二電極の電位低下を実現できる。初期化電圧と異なる電圧を入力する際に、第二ダミー電極に、初期化とは逆方向の電位変化が容量結合により伝わる可能性があるため、初期化電圧と異なる電圧は、ダミー画素回路90dの第一ダミー電極にゆっくりと充電し、容量結合が起きにくいようにすることが好ましい。
【0118】
以上のような制御を行うことなく単純な制御でダミー初期化制御を行うためには、ダミー画素回路90dは、少なくとも二行配置されればよい。この場合、少なくとも二行のダミー画素回路90dのうち、一行分において初期化制御を実施し、残る行において、初期化電圧と異なる電圧を印加する。このように、初期化制御と、初期化電圧と異なる電圧の印加とを繰り返し実施する。
【0119】
初期化制御、及び、初期化電圧と異なる電圧の印加の周期は、ダミー画素回路90dの行数により異なる。当該行数が二であれば、一水平走査期間毎に、初期化制御と、初期化電圧と異なる電圧の印加とを交互に繰り返す。三行以上ある場合には一水平走査期間毎に順に初期化制御を行う行を変え、初期化制御を行わない行において、初期化電圧と異なる電圧の印加を行う。
【0120】
なお初期化電圧と異なる電圧を印加するために要する時間より、初期化制御終了時点から次の初期化制御開始時点までの時間の方が長い場合には、電圧を印加せずに、状態を保持しておく期間を設けてもよい。
【0121】
また、初期化電圧と異なる電圧は、例えば、参照電圧又はデータ信号の電圧であってもよいし、画素回路90において用いられる電圧以外の電圧(
図23を用いて後述するダミー用信号線Vaに印加された電圧など)であってもよい。
【0122】
また、本実施の形態に係る表示装置9においては、一つ以上のダミー画素回路90dは、行列状の複数の画素回路90のうち、最後に走査される行の画素回路90と隣り合う領域に配置される。
【0123】
これにより、ダミー画素回路90dを初期化制御する際に閾値補償制御を行う画素回路90と、ダミー画素回路90dとの距離を低減できる。なお、最後に走査される行の画素回路90と隣り合う領域とは、表示領域Paの外部であって、最後に走査される行の画素回路90と、それと対向する表示パネル10の端縁との間の領域を意味する。例えば、当該領域は、最後に走査される行の画素回路90と接する領域だけに限定されない。画素回路90とダミー画素回路90dとの間に他の回路などが介在してもよい。
【0124】
また、以上では、閾値補償制御を行う際に、初期化制御及びダミー初期化制御の一方を行ったが、両方を同時に行ってもよい。例えば、初期化制御を行う際に、ダミー初期化制御を行うことで、輝度の微調整を行ってもよい。
【0125】
[1−3.ダミー領域の変形例]
本実施の形態に係るダミー画素回路90dが配置されるダミー領域Pdの変形例について、図面を用いて説明する。
図14〜
図20は、それぞれ本実施の形態の第1〜第7の変形例に係るダミー領域Pdの配置を示す表示パネル10の概略平面図である。
【0126】
図14に示されるように、ダミー領域Pdは、表示領域Paの上下方向の両側に配置されてもよい。つまり、一つ以上のダミー画素回路90dは、表示領域Paに対して垂直走査方向の両側に配置されてもよい。これにより、画素回路90の走査の向きが垂直走査方向のどちらの向きである場合においても、ダミー画素回路90dを初期化制御する際に閾値補償制御を行う画素回路90と、ダミー画素回路90dとの距離を低減できる。つまり、例えば、画素回路90の走査の向きが上向きである場合には、上側のダミー画素回路90dを用いて輝度ムラを低減できる。
【0127】
また、
図15に示されるように、ダミー領域Pdの水平走査方向(
図15の水平方向)における長さは、表示領域Paの水平走査方向における長さより短くてもよい。つまり、行列状に配置された複数の画素回路90のうち、最後に走査される行の少なくとも一方の端に位置する画素回路90の垂直走査方向には、ダミー画素回路90dは、配置されなくてもよい。これにより、表示パネル10のダミー画素回路90dが配置されていない角部に空きスペースを設けることができる。このような空きスペースには、例えば、表示パネル10のIDなどの情報を記入したり、製造業者のマークを記入したりしてもよい。これにより、表示パネル10の寸法を拡大することなく、表示パネル10にIDなどを記入できる。また、ダミー画素回路90dの水平走査方向における個数は、必ずしも複数の画素回路90の水平走査方向における個数と同数でなくても、表示装置9における輝度ムラを低減できる。
【0128】
また、
図16に示されるように、ダミー領域Pdは、複数の画素回路90の水平走査方向において分離されていてもよい。つまり、一つ以上のダミー画素回路90dは、複数の画素回路90の水平走査方向に並べられた複数の領域に配置されてもよい。このような配置によっても、表示装置9における輝度ムラを低減できる。
【0129】
また、
図16に示されるように、複数の信号線駆動回路DCをダミー領域Pdに対して垂直走査方向に隣り合う位置に配置する場合に、信号線駆動回路DCと表示部2とを接続する配線の時定数を調整するためにダミー画素回路90dを用いることができる。
図16に示される配線Wa及び配線Wbのように、信号線駆動回路DCと表示部2とを接続する配線の長さは異なり得る。
図16に示される例では、配線Waの長さは、配線Wbの長さより小さい。この場合、一般に配線Waの方が、配線Wbより時定数が小さくなる。そこで、配線Waが接続される列には、ダミー画素回路90dを配置し、配線Wbが接続される列には、ダミー画素回路90dを配置しない。これにより、配線Waの経路においては、配線Waの時定数にダミー画素回路90dの時定数が加えられるため、配線Waの経路全体における時定数を、配線Wbの経路全体における時定数に近づけることができる。このように、各配線の経路全体における時定数の差を低減できる。
【0130】
以上のように、本レイアウト方法によれば、ダミー画素回路90dは、輝度ムラを低減するほかに、配線時定数の差を小さくすることができる。これにより、配線時定数の差による所定階調における信号線電圧の充電率違いによる輝度ムラを低減することができる。つまり、本レイアウト方法によれば、二つの輝度ムラを同時に低減できる利点がある。
【0131】
ダミー画素回路90dの行数が、垂直ブランキング期間に含まれる水平走査期間数以上であれば、ダミー画素回路90dに対して、画素回路90に引き続き垂直走査方向に順次走査を行うことで、常に初期化制御が行われるため第二電極の電位をほぼ一定に維持できる。一方、ダミー画素回路90dの行数決定方法の別の考え方としては、
図11A〜
図11Dに示す閾値補償制御を行う行(
図11A〜
図11DのR1a〜R1d)が存在する期間には必ず初期化制御を行う画素回路90の行(
図11A〜
図11CのR2a〜R2c)、又は、ダミー初期化制御を行うダミー画素回路90dの行が存在するようにする。
【0132】
図11Aに示される例では、表示領域Paにおける上端の行から行R2aまでの行数と、行R2aまでの行数との差に相当する分だけ、表示部902の下側にダミー画素回路90dを追加すれば、
図11Dの場合(時点t=tcより後の場合)でも、ダミー画素回路90dで初期化制御を実施できる。
【0133】
また、
図17に示されるように、ダミー領域Pdにおいて、一つ以上のダミー画素回路90dは、行列状に配置されてもよい。その際、一つ以上のダミー画素回路90dの配置の行数は、表示パネル10の一フレーム期間のうち垂直ブランキング期間に含まれる水平走査期間数と等しくてもよい。これにより、垂直ブランキング期間にわたって、画素回路90と同様にダミー画素回路90dを走査することで、表示装置9の輝度ムラを抑制できる。
【0134】
また、
図18に示されるように、ダミー領域Pdにおいて、一つ以上のダミー画素回路90dは、行列状に配置され、行列状に配置された一つ以上のダミー画素回路90dの各行におけるダミー画素回路90dの個数は、表示領域Paから遠ざかるにしたがって減少してもよい。ダミー画素回路90dを行毎に初期化する場合、各行におけるダミー画素回路90dの個数が減少するほど、画素回路90の有機EL素子24の第二電極に対する電位低下効果は低減する。つまり、有機EL素子24の輝度は低下する。しかしながら、
図18に示される例では、有機EL素子24の輝度が、垂直走査方向に徐々に低下するため、輝度ムラが目立ち難い。また、
図15に示される例と同様に、ダミー画素回路90dが配置されていない表示パネル10の角部に空きスペースを設けることができる。
【0135】
なお、ここでは、一つ以上のダミー画素回路90dを「行列状に配置」との記載が表す構成には、各行におけるダミー画素回路90dの個数が等しい構成だけでなく、各行におけるダミー画素回路90dの個数が異なる構成も含まれる。
【0136】
また、
図19に示されるように、ダミー領域Pdにおいて、一つ以上のダミー画素回路90dは、行列状に配置され、一つ以上のダミー画素回路90dの配置の行数は、表示パネル10の一フレーム期間のうちブランキング期間に含まれる水平走査期間数より少なくてもよい。このような構成においても、例えば、一フレーム周期において、特定の行に含まれるダミー画素回路90dに対して、複数回、初期化制御を行ってもよい。これにより、閾値補償制御を受ける期間に他の画素回路90が初期化制御されないすべての画素回路90に対して、閾値補償制御を受ける期間に、ダミー画素回路90dの初期化制御を行うことができる。
【0137】
また、
図19の仮想ダミー領域Pdiで示されるように、ダミー領域の形状を三角形状としてもよい。この場合にも、一つ以上のダミー画素回路90dの配置の行数を、表示パネル10の一フレーム期間のうち垂直ブランキング期間に含まれる水平走査期間数と等しくてもよい。さらに、
図19の仮想ダミー領域Pdiに含まれるダミー画素回路90dの動作のタイミングを変えることなく、配置位置を代替ダミー領域Pdrに移動させてもよい。これにより、表示パネル10の額縁幅を縮小することができる。
【0138】
また、
図20に示されるように、一つ以上のダミー画素回路90dは、一行分だけ配置されてもよい。このような構成においても、一行分のダミー画素回路90dに対して、一水平走査期間毎に繰り返し初期化制御を行うことで、表示装置9の輝度ムラを低減できる。
【0139】
[1−4.ダミー画素回路の変形例]
本実施の形態に係るダミー画素回路90dの回路構成の変形例について、図面を用いて説明する。
図21〜
図23は、それぞれ本実施の形態の第8〜第10の変形例に係るダミー画素回路の回路構成を示す回路図である。
【0140】
図21に示されるダミー画素回路90d1は、複数の画素回路90の第二電極と接続されるダミー容量素子22d、ダミー容量素子22dの第一ダミー電極の電位を変化させるための手段として、参照トランジスタTREF及び初期化トランジスタTINIを備える。
【0141】
参照トランジスタTREF及び初期化トランジスタTINIを画素回路90と同様に動作させることにより、第二電極の電位を変動させることができる。なお、
図21に示す例では、ダミー容量素子22dとして、有機EL素子24を用いる構成が示されているが、ダミー容量素子22dの構成として上述した任意の構成を採用できる。ダミー容量素子22dの構成については、以下の各変形例についても同様である。
【0142】
また、
図21では第二電極の電位を変化させるために必要な最低限の構成が示されているが、ダミー画素回路90d1は、画素回路90に存在する、データ信号線SIG及び書込みトランジスタTWS、駆動トランジスタTDのうちの一つ又は複数を備えてもよい。
【0143】
図22に示されるダミー画素回路90d2は、
図21に対して、参照電源線VREF及び参照トランジスタTREFに変えて、データ信号線SIG及び書込みトランジスタTWSを用いた構成を有する。
【0144】
データ信号線SIG及び初期化電源線VINIによりダミー容量素子22dの第一ダミー電極の電位を変動させることによって、第二電極の電位を変化させる。なお、
図22では第二電極の電位を変化させるために必要な最低限の構成が示されているが、ダミー画素回路90d2は、画素回路90に存在する、データ信号線SIG及び書込みトランジスタTWS、駆動トランジスタTDのうちの一つ又は複数を備えてもよい。
【0145】
図23に示されるダミー画素回路90d3は、データ信号線SIG及び書込みトランジスタTWS、並びに、参照電源線VREF及び参照トランジスタTREFに代えて、スイッチングトランジスタTZ及びダミー用信号線Vaを備える点において、画素回路90と相違し、その他の点で一致する。このような構成においては、例えば、ダミー用信号線Vaに参照電圧と同程度の電圧を印加する。さらに、スイッチングトランジスタTZを制御信号線SWによって制御することで、ダミー用信号線Vaに印加された電圧をダミー容量素子22dの第一ダミー電極に印加できる。続いて、初期化トランジスタTINIを用いて初期化制御を行うことで、上記各ダミー画素回路と同様に、ダミー容量素子22dの第二電極の電位を変動させることができる。
【0146】
図23に示されるダミー画素回路90d3においては、ダミー用信号線Vaに印加される電圧は、画素回路90に印加する電圧用の電源を用いて印加されてもよいし、別の電源によって印加されてもよい。別の電源を用いる場合には、ダミー用信号線Vaと有機EL素子24との間に電圧を印加することで、有機EL素子24の電流と電圧及び発光量との関係を取得できる。さらに、ダミー用信号線VaをRGB又はRGBWの発光色を有するダミー画素回路90d3毎に別々に設けることで、各発光色の有機ELの電流と電圧及び発光量との関係を取得できる。
【0147】
なお、画素回路及びダミー画素回路の構成は、以上の構成に限定されない。例えば、画素回路90において、アノード電源線VCCと駆動トランジスタTDとの間にさらにスイッチングトランジスタを挿入した回路構成なども採用し得る。また、画素回路及びダミー画素回路は、参照トランジスタTREF、参照信号線REF及び参照電源線VREFを備えなくてもよい。例えば、書込みトランジスタTWS及び駆動トランジスタTDの二つのトランジスタだけを用いる画素回路及びダミー画素回路も実現可能である。このような画素回路などにおいては、データ信号線に印加する信号電圧を変動させ、当該信号電圧によって、第二電極の電位を変動させることができる。
【0148】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る表示装置について説明する。本実施の形態に係る表示装置は、実施の形態1に係る表示装置9の初期化電源線VINIの電位変動を抑制するための構成を有する。以下、本実施の形態に係る表示装置9の初期化電源線VINIの構成について説明する。
【0149】
[2−1.初期化電源線構成]
実施の形態1に係る表示装置9においては、行列状に配置された画素回路90を行毎に走査する構成を有する。このような構成において、初期化電源線VINIとして、行毎に線状に設けられた、言わば一次元の配線を用いる場合、同一行に存在する各画素回路90におけるEL容量素子22の放電が一本の配線に集中する。このため、特に、表示パネル10の端部付近に配置された給電部から遠い位置、つまり、表示パネル10の中央部に位置する配線の部分では、電位が上昇する。この現象について、図面を用いて説明する。
【0150】
図24Aは、実施の形態1に係る表示装置9の各行の初期化電源線VINIの電位の波形を示す模式的なグラフである。
図24Aにおいては、初期化電源線VINIとして一次元の配線を用いた場合における、初期化電源線VINIの表示パネル10の中央部における電位が示されている。
図24Aに示される時点T21〜T28は、それぞれ、1〜8行目の画素回路90における初期化制御の開始時点(
図4の時点T2)である。
【0151】
図24Aに示されるように、各行の初期化電源線VINIの電位が上昇する。このような初期化電源線VINIの電位変動は、有機EL素子24の第一電極及び第二電極の電位変動に繋がるため、表示装置9の輝度ムラの原因となり得る。
【0152】
そこで、本実施の形態では、初期化電源線VINIの電位変動を抑制する構成とするために、初期化電源線VINIとして二次元の配線を用いる。つまり、本実施の形態では、水平走査方向及び垂直走査方向に格子状に形成された配線を初期化電源線VINIとして用いる。このような初期化電源線VINIにおける電位変動について図面を用いて説明する。
【0153】
図24Bは、本実施の形態に係る表示装置の各行の初期化電源線VINIの電位の波形を示す模式的なグラフである。
図24Bにおいては、初期化電源線VINIとして二次元の配線を用いた場合における、初期化電源線VINIの表示パネルの中央部における電位が示されている。
図24Bに示される時点T21〜T28は、それぞれ、1〜8行目の画素回路90における初期化制御の開始時点(
図4の時点T2)である。
【0154】
図24Bに示されるように、本実施の形態に係る二次元の配線からなる初期化電源線VINIにおいては、
図24Aに示される一次元の配線からなる初期化電源線VINIより、電位変動量が小さい。ただし、本実施の形態に係る初期化電源線VINIにおいては、行間において、電位変動が伝わるため、一フレーム周期における各行の電位変動回数が増大する。このような現象について、図面を用いて説明する。
【0155】
図25は、本実施の形態に係る初期化電源線VINIの構成を示す模式的な配線図である。
図25においては、初期化電源線VINIの水平走査方向配線61(実線)及び垂直走査方向配線62(太い破線)が示されている。また、
図25には、有機EL素子24の第二電極(カソード)が配線64として細い破線で示されている。さらに、
図25には、有機EL素子24のEL容量素子22が示されている。なお、
図25には、初期化電源線VINIと有機EL素子24の第二電極との間に接続される、EL容量素子22以外の素子については、記載が省略されている。
【0156】
図25に示されるように、本実施の形態に係る表示パネルは、複数の画素回路90に初期化電圧を供給する初期化電源線VINIを備える。初期化電源線VINIは、複数の画素回路90の水平走査方向に延びる水平走査方向配線61と、複数の画素回路90の垂直走査方向に延びる垂直走査方向配線62とを有する。
【0157】
本実施の形態においては、
図25に示されるように、例えば、一つの水平走査方向配線61の点Bにおける初期化電源線VINIの電位変動が、垂直走査方向配線62を介して他の水平走査方向配線61の点Aに伝わる。これにより、
図24Bに示されるように、各行の初期化電源線VINIが一フレーム周期において複数回変動する。
【0158】
以上のように、初期化電源線VINIに垂直走査方向配線62を設けることで、初期化電源線VINIの電位変動量は抑制できるが、変動回数が増加する。
【0159】
また、
図25に示されるように、初期化電源線VINIの電位変動は、EL容量素子22を介して有機EL素子24の第二電極(
図25の配線64)に伝わるため、輝度ムラの原因となる。
【0160】
そこで、本実施の形態では、初期化電源線VINIの垂直走査方向配線62は、水平走査方向配線61より単位長さ当たりの抵抗が大きい構成を採用する。これにより、初期化電源線VINIの電位変動量を抑制しつつ、電位変動回数の増加の影響を抑制することができる。
【0161】
なお、水平走査方向配線61及び垂直走査方向配線62の各抵抗値は、表示パネルの寸法などに応じて適宜最適化されてもよい。また、各抵抗値は、配線材料、配線幅などによって適宜調整されてもよい。
【0162】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る表示装置について説明する。本実施の形態に係る表示装置は、上記輝度ムラの原因と成り得る画素回路90におけるリーク電流を抑制できる構成を有する。以下、本実施の形態に係る画素回路90について説明する。
【0163】
[3−1.リーク電流]
まず、実施の形態1に係る表示装置9の画素回路90におけるリーク電流について図面を用いて説明する。
図26は、実施の形態1に係る画素回路90の駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位Vgの波形を示すグラフである。
図26においては、参照信号線REF、初期化信号線INI、書込み信号線WS及びデータ信号線SIGに入力される各信号の波形も併せて示されている。なお、各信号の波形は、
図4に示される波形と同様である。
【0164】
図26に示されるように、時点T2において初期化制御が行われ、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位が−3V程度に低下し、容量素子20を介して、ゲート電極gの電位Vgも低下する。これにより、ゲート電極gの電位Vgが書込みトランジスタTWS及び参照トランジスタTREFのオフ電位よりも低くなるため、これらのトランジスタにおいてリーク電流が発生する。これに伴い、ゲート電極gの電位Vgが上昇する。
図26に示されるΔVが、リーク電流に伴う電位の上昇量である。
【0165】
ここで、書込みトランジスタTWS及び参照トランジスタTREFにおけるリーク電流の輝度ムラに対する影響について説明する。
【0166】
まず、書込みトランジスタTWSにおいて、リーク電流が発生する場合について説明する。この場合、書込みトランジスタTWSに接続されるデータ信号線SIGから容量素子20に電流が流れるため、データ信号の電圧が低下する。つまり、有機EL素子24の輝度は低下する。ここで、上記輝度ムラが発生する領域(つまり輝度が低くなる領域)の画素回路90において、データ信号が書き込まれるタイミングでは、他の領域の画素回路90においてデータ信号が書き込まれるタイミングと比較して、複数の画素回路90のうち初期化制御を受けている画素回路90の個数が少ない。このため、輝度ムラが発生する領域の画素回路90に書き込まれるデータ信号の電圧低下量は、他の領域の画素回路90より小さい。つまり、書込みトランジスタTWSにおけるリーク電流は、輝度ムラが発生する領域の輝度を他の領域より高くする。このため、書込みトランジスタTWSにおけるリーク電流は、上記輝度ムラの原因とは考えにくい。
【0167】
次に、参照トランジスタTREFにおいて、リーク電流が発生する場合について説明する。
【0168】
この場合、参照トランジスタTREFに接続される参照電源線VREFから容量素子20に電流が流れるため、参照電源線VREFの電圧である参照電圧Vrefが低下する。ここで、有機EL素子24の発光期間に流れる電流Idsは以下の式(1)で表されるように、参照電圧Vrefに依存する。
【0170】
式(1)において、μ、W及びLは、それぞれ、駆動トランジスタTDのチャネル層におけるキャリアの移動度、チャネル幅、及び、チャネル長を表す。Vsigは、データ信号の電圧を表す。Coled及びCsは、それぞれ、EL容量素子22の容量、及び、容量素子20の容量をそれぞれ表す。Vthは、駆動トランジスタTDの閾値電圧を表す。
【0171】
式(1)に示されるように、参照電圧Vrefが変動することにより、有機EL素子24に流れる電流Idsが変動する。参照電圧Vrefは、上述のとおり、参照トランジスタTREFにおけるリーク電流量によって変動し得るため、参照電圧Vrefの変動量が、画素回路90毎に異なる場合、輝度ムラが発生し得る。
【0172】
ここで、参照トランジスタTREFを介して、参照電源線VREFから画素回路90の駆動トランジスタTDのゲート電極gにリーク電流が流れる期間は、一つの画素回路90については、一フレームのうち
図4に示される時点T2〜T3の期間である。
【0173】
表示装置9全体について考えると、リーク電流が流れる画素回路90の行数の全行数に対する割合は、(T3−T2)/(一水平走査期間)となる。表示部902のうち暗くなる領域902a以外の領域では、参照電源線VREFが供給する画素回路90へのリーク電流の総和はおおよそ(T3−T2)/(一水平走査期間)×(一行に配置される画素回路数)×(一画素回路あたりリーク電流)となる。しかし、領域902aでは、データ信号書き込み時の参照電源線VREFからのリーク電流の和は、初期化制御を受けている画素回路90の行数が少なくなっていることから、(T3−T2)/(一水平走査期間)×(一行に配置される画素回路数)×(一画素回路あたりリーク電流)より小さくなる。
【0174】
その結果、領域902aの書き込み時の参照電圧Vrefは、他の領域での参照電圧Vrefより高くなる。したがって、式(1)に示されるとおり、電流Idsが減少するため、領域902aにおける輝度が他の領域の表示領域Paの輝度より低くなる。
【0175】
以上のように、参照トランジスタTREFにおけるリーク電流が上記輝度ムラの原因となり得るため、本実施の形態に係る画素回路90においては、参照トランジスタTREFにおけるリーク電流を低減する。
【0176】
[3−2.画素回路構成]
次に、本実施の形態に係る画素回路90の構成について図面を用いて説明する。
図27は、本実施の形態に係る画素回路90の配線レイアウトを示す図である。
図27は、表示パネル10の平面視における画素回路90のレイアウトを示す。
【0177】
図27に示されるように、初期化電源線VINI、アノード電源線VCC及び参照電源線VREFと、それらの電源線に接続される初期化トランジスタTINI、駆動トランジスタTD、書込みトランジスタTWS及び参照トランジスタTREFとが配置されている。
図27に示されるように、画素回路90は、駆動トランジスタTDと、参照電圧が印加される参照電源線VREFと、参照電源線VREFと駆動トランジスタTDのゲート電極gとの間に接続される参照トランジスタTREFと、有機EL素子24に供給する電流に対応する電圧が印加されるデータ信号線SIGと、データ信号線SIGと駆動トランジスタTDのゲート電極gとの間に接続される書込みトランジスタTWSとをさらに有する。なお、画素回路90における容量素子20及び駆動トランジスタTDの配線レイアウトの詳細は、図面を簡略化するために省略されている。
【0178】
図27に示されるような画素回路90の参照トランジスタTREFにおけるリーク電流を低減するために、本実施の形態では、参照トランジスタTREFのLDD(Lightly Doped Drain)長は、書込みトランジスタTWSより大きい。これにより、参照トランジスタTREFにおけるリーク電流を低減できる。さらに、本実施の形態では、
図27に示されるように、参照トランジスタTREFにおいて、参照信号線REFが二か所においてポリシリコン層からなる半導体層と重なっている。ここで、参照信号線REFは、参照トランジスタTREFのゲート電極として機能する配線であることから、本実施の形態に係る参照トランジスタTREFは、ダブルゲート型のトランジスタとなる。また、参照トランジスタTREFは、シングルゲート型のトランジスタである書込みトランジスタTWSよりゲート数が多い。これにより、参照トランジスタTREFにおいては、二つのゲートによって電流を遮断できるため、リーク電流を低減できる。
【0179】
また、
図27に示されるように、参照トランジスタTREFは、二つのゲートと、チャネル層を形成する半導体層(
図27のポリシリコン層)とを有し、半導体層の平面視において、二つのゲートの間に配置される半導体層は、L字状の形状を有する。これにより、二つのゲートの間のLDD長を大きくできる。
【0180】
また、上述したように、画素回路90の初期化制御時に、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位が低下する。このため、参照トランジスタTREFにおけるソース電極及びドレイン電極は、画素回路90における有機EL素子24の発光時と、初期化制御時とで逆転する。
図27に示されるように、参照トランジスタTREFの二つのゲートの間のLDD長を長くすることで、ソース電極及びドレイン電極がどちらに転じた場合においても、リーク電流を低減することができる。
【0181】
また、画素回路90において、参照トランジスタTREFのゲート数は3以上であってもよい。このような参照トランジスタTREFについて、図面を用いて説明する。
図28は、本実施の形態に係る参照トランジスタTREFの電極形状の概要を示す模式図である。
図28においては、半導体層PSの平面視における電極形状が示されている。
【0182】
図28に示されるように、参照信号線REFを、三か所において半導体層PSと重ねることで、トリプルゲート型のトランジスタを実現できる。これにより、参照トランジスタTREFにおけるリーク電流をより一層低減できる。
【0183】
また、画素回路90において、参照トランジスタTREFは、書込みトランジスタTWSよりチャネル長に対するチャネル幅の比が小さくてもよい。このような参照トランジスタTREFについて、図面を用いて説明する。
図29は、本実施の形態に係る参照トランジスタTREFの電極形状の概要を示す模式図である。
図29においては、半導体層PSの平面視における電極形状が示されている。
【0184】
図29に示される参照トランジスタTREFのチャネル幅Wを小さく、チャネル長Lを長くすることで、チャネル長Lに対するチャネル幅Wの比W/Lを小さくできる。このように、参照トランジスタTREFのチャネル長に対するチャネル幅の比を小さくすることで、参照トランジスタTREFにおけるリーク電流を低減できる。
【0185】
以上のように、本実施の形態では、参照トランジスタTREFにおけるリーク電流を低減することによって、表示装置の輝度ムラを低減できる。
【0186】
(他の実施の形態)
以上、本開示に係る表示装置について、実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示に係る表示装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本実施の形態に係る表示装置を内蔵した各種機器も本開示に含まれる。