特許第6872797号(P6872797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872797
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】標的結合ペプチドの安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20210510BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20210510BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20210510BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20210510BHJP
【FI】
   C07K19/00
   C07K14/47ZNA
   C40B40/10
   !C12N15/12
【請求項の数】21
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-559228(P2017-559228)
(86)(22)【出願日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2016089017
(87)【国際公開番号】WO2017115828
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-257646(P2015-257646)
(32)【優先日】2015年12月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】門之園 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 科江
【審査官】 福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−520426(JP,A)
【文献】 特表2011−514149(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/175305(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/045252(WO,A1)
【文献】 PLoS One,2014年,Vol.9, No.8,e103397, pp.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 1/00−15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場タンパク質のループ構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である前記足場タンパク質において、前記置換領域を3〜15のアミノ酸からなる標的結合ペプチドに置換することを特徴とする標的結合ペプチドの安定化方法。
【請求項2】
前記足場タンパク質の鎖長が、20〜130である、請求項1に記載の標的結合ペプチドの安定化方法。
【請求項3】
前記足場タンパク質がドメイン構造を含むタンパク質である、請求項1又は2に記載の標的結合ペプチドの安定化方法。
【請求項4】
前記足場タンパク質が、結晶構造解析又はNMR溶液構造解析されたタンパク質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の標的結合ペプチドの安定化方法。
【請求項5】
前記連続基準ペプチドの長さと、標的結合ペプチドの長さとが同じである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の標的結合ペプチドの安定化方法。
【請求項6】
前記置換領域が3〜15のアミノ酸鎖長である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の標的結合ペプチドの安定化方法。
【請求項7】
ループ構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を有する足場タンパク質候補において、前記置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換し、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質を選択する足場タンパク質のスクリーニング方法。
【請求項8】
前記足場タンパク質の鎖長が、20〜130である、請求項7に記載の足場タンパク質のスクリーニング方法。
【請求項9】
前記足場タンパク質がドメイン構造を含むタンパク質である、請求項7又は8に記載の足場タンパク質のスクリーニング方法。
【請求項10】
前記足場タンパク質が、結晶構造解析又はNMR溶液構造解析されたタンパク質である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の足場タンパク質のスクリーニング方法。
【請求項11】
前記置換領域が3〜15のアミノ酸鎖長である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の足場タンパク質のスクリーニング方法。
【請求項12】
置換領域が除去された20〜130残基の鎖長の足場タンパク質であって、
前記置換領域が足場タンパク質のループを含む構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の領域であり、そして前記置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である、
足場タンパク質(但し、フィブロネクチンIII型第10(10Fn3)ドメイン由来の足場タンパク質、及びIgGのCH2ドメイン由来の足場タンパク質を除く)
【請求項13】
配列番号8で表されるオメガコノトキシンMVIIAから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号8で表されるアミノ酸配列の第2〜7アミノ酸、又は第9〜14アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項14】
配列番号9で表されるRalGEFのRas結合ドメインから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号9で表されるアミノ酸配列の第41〜46アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項15】
配列番号10で表されるsAb軽鎖(3PGF)のCLドメインから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号10で表されるアミノ酸配列の第30〜35アミノ酸、又は第44〜49アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項16】
配列番号11で表されるValpha24(-) NKT TCRのIgドメインから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号11で表されるアミノ酸配列の第45〜50アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項17】
配列番号12で表されるCXCL4L1から置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号12で表されるアミノ酸配列の第6〜11アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項18】
配列番号13で表されるCXCL13から置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号13で表されるアミノ酸配列の第5〜10アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項19】
配列番号14で表されるオメガアガトキシンから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号14で表されるアミノ酸配列の第28〜33アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項20】
配列番号15で表されるMu−アガトキシンから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号15で表されるアミノ酸配列の第3〜8アミノ酸である、請求項12に記載の足場タンパク質。
【請求項21】
請求項12〜20に記載の足場タンパク質における除去された置換領域を、3〜15のアミノ酸からなる標的結合候補ペプチドと置換している、標的結合ペプチドをスクリーニングするためのライブラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的結合ペプチドの安定化方法に関する。本発明によれば、標的結合ペプチドの構造を安定させることができる。
【背景技術】
【0002】
最近、バイオテクノロジー技術を利用したペプチド、核酸、又はタンパク質などを用いたバイオ医薬品の開発が進められている。例えば、抗体医薬、又は活性部位を中心に設計されたペプチド医薬などが開発され、それらの活性物質と、標的分子の結合が、種々の分析を駆使して解析されている。
これらのバイオ医薬品の中で、ペプチド医薬品の第一世代は、ヒトの体内で分泌されるホルモンなどの生理活性物質(アミノ酸の縮合体)を医薬品として用いるものであったが、最近は前記のように活性部位を設計したり、またファージディスプレイ法などによりペプチドをスクリーニングしたりすることにより、さらに標的分子に対する結合活性の優れたペプチド医薬品の開発が進められている。このような標的分子に特異的に強く結合する標的結合ペプチド(機能性ペプチド)は疾患治療薬だけでなく、診断薬としても有望であり、優れた標的結合ペプチドの選択が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−151386号公報
【特許文献2】特開2015−84694号公報
【特許文献3】特開2014−237599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、標的分子に結合する標的結合ペプチドについて、研究していたところ、標的結合ペプチドは、3〜15アミノ酸程度の比較的短鎖のペプチドであるため、単独では、構造がゆらぐことが分かってきた。そして、標的結合ペプチドは、構造がゆらぐために、標的分子との結合が不安定となった。
本発明者らは、ゆらぎを抑制した標的結合ペプチドは、自由に構造変化できるペプチドよりも、標的分子に対する特異性が高く、結合力も強いことを見出した。すなわち、構造のゆらぎを抑制した標的結合ペプチドは、標的分子に対する特異性が高く、そして結合力が強いことから、新たな創薬シーズとなると考えられた。
従って、本発明の目的は、標的結合ペプチドのゆらぎを抑制する方法を提供することである。すなわち、標的結合ペプチドの安定化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、標的結合ペプチドの安定化方法について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、特定の足場タンパク質のループを含む構造領域を標的結合ペプチドに置換することによって、標的結合ペプチドのゆらぎが抑制され、標的結合ペプチドが安定化することを見出した。そして、前記足場タンパク質は、ループを含む構造領域であって、根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である領域を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質であることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]足場タンパク質のループ構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である前記足場タンパク質において、前記置換領域を3〜15のアミノ酸からなる標的結合ペプチドに置換することを特徴とする標的結合ペプチドの安定化方法、
[2]前記足場タンパク質の鎖長が、20〜130である、[1]に記載の標的結合ペプチドの安定化方法、
[3]前記足場タンパク質がドメイン構造を含むタンパク質である、[1]又は[2]に記載の標的結合ペプチドの安定化方法、
[4]前記足場タンパク質が、結晶構造解析又はNMR溶液構造解析されたタンパク質である、[1]〜[3]のいずれかに記載の標的結合ペプチドの安定化方法、
[5]前記連続基準ペプチドの長さと、標的結合ペプチドの長さとが同じである、[1]〜[4]のいずれかに記載の標的結合ペプチドの安定化方法、
[6]前記置換領域が3〜15のアミノ酸鎖長である、[1]〜[5]のいずれかに記載の標的結合ペプチドの安定化方法、
[7]ループ構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を有する足場タンパク質候補において、前記置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換し、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質を選択する足場タンパク質のスクリーニング方法、
[8]前記足場タンパク質の鎖長が、20〜130である、[7]に記載の足場タンパク質のスクリーニング方法、
[9]前記足場タンパク質がドメイン構造を含むタンパク質である、[7]又は[8]に記載の足場タンパク質のスクリーニング方法、
[10]前記足場タンパク質が、結晶構造解析又はNMR溶液構造解析されたタンパク質である、[7]〜[9]のいずれかに記載の足場タンパク質のスクリーニング方法、
[11]前記置換領域が3〜15のアミノ酸鎖長である、[7]〜[10]のいずれかに記載の足場タンパク質のスクリーニング方法、
[12]置換領域が除去された20〜130残基の鎖長の足場タンパク質であって、前記置換領域が足場タンパク質のループを含む構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の領域であり、そして前記置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である、足場タンパク質、
[13]配列番号7で表されるフィブロネクチンIII型から置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号7で表されるアミノ酸配列の第24〜29アミノ酸、第51〜56アミノ酸、又は第24〜30アミノ酸配列である、[12]に記載の足場タンパク質、
[14]配列番号8で表されるオメガコノトキシンMVIIAから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号8で表されるアミノ酸配列の第2〜7アミノ酸、又は第9〜14アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[15]配列番号9で表されるRalGEFのRas結合ドメインから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号9で表されるアミノ酸配列の第41〜46アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[16]配列番号10で表されるsAb軽鎖(3PGF)のCLドメインから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号10で表されるアミノ酸配列の第30〜35アミノ酸、又は第44〜49アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[17]配列番号11で表されるValpha24(-) NKT TCRのIgドメインから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号11で表されるアミノ酸配列の第45〜50アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[18]配列番号12で表されるCXCL4L1から置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号12で表されるアミノ酸配列の第6〜11アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[19]配列番号13で表されるCXCL13から置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号13で表されるアミノ酸配列の第5〜10アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[20]配列番号14で表されるオメガアガトキシンから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号14で表されるアミノ酸配列の第28〜33アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[21]配列番号15で表されるMu−アガトキシンから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号15で表されるアミノ酸配列の第3〜8アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、
[22]配列番号56で表されるIgG1 CH2ドメインから置換領域が除去された足場タンパク質であって、前記置換領域が配列番号56で表されるアミノ酸配列の第46〜51アミノ酸である、[12]に記載の足場タンパク質、及び
[23][12]〜[22]に記載の足場タンパク質における除去された置換領域を、3〜15のアミノ酸からなる標的結合候補ペプチドと置換している、標的結合ペプチドをスクリーニングするためのライブラリー、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の標的結合ペプチドの安定化方法によれば、標的結合ペプチドのゆらぎを抑制し、安定化することができる。また、標的結合ペプチドは、短鎖であるため、そのままでは、生体内で急速に分解されてしまうが、本発明の標的結合ペプチドの安定化方法により、生体内で分解されにくくなり、治療薬として生体内における半減期を延長させることができる。また、標的結合ペプチドとして抗体の抗原結合部位を用いることにより、抗原結合部位を安定化することができる。従って、安定化された抗原結合部位を有する足場タンパク質は、抗体医薬の抗体代替分子として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の標的結合ペプチドの安定化方法を模式的に示した図である。
図2】フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番(配列番号7)の第24〜29アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質1(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図3】フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番(配列番号7)の第51〜56アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質2(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図4】オメガコノトキシンMVIIA(1TTK)の1〜25番(配列番号8)の第2〜7アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質3(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図5】オメガコノトキシンMVIIA(1TTK)の1〜25番(配列番号8)の第9〜14アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質4(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図6】RalGEFのRas結合ドメイン(2RGF)の11〜97番(配列番号9)の第41〜46アミノ酸(RalGEFの第51〜56アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質5(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図7】sAb軽鎖(3PGF)の111〜213番のアミノ酸であるCLドメイン(配列番号10)の第30〜35アミノ酸(sAb軽鎖の第140〜145アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質6(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図8】sAb軽鎖(3PGF)の111〜213番のアミノ酸であるCLドメイン(配列番号10)の第44〜49アミノ酸(sAb軽鎖の第154〜159アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質7(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図9】sValpha24(−)NKT TCR(4EN3)の1〜99番のアミノ酸であるIgドメイン(配列番号11)の第45〜50アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質8(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図10】CXCL4L1(4HSV)の9〜54番のアミノ酸(配列番号12)の第6〜11アミノ酸(CXCL4L1の第14〜19アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質9(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図11】CXCL13(4ZAI)の10〜55番のアミノ酸(配列番号13)の第5〜10アミノ酸(CXCL13の第14〜19アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質10(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図12】フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の第24〜30アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質11(A)、前記置換領域を7連続アラニンペプチド、7連続グリシンペプチド、7連続プロリンペプチド、及び7連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域を他の7連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図13】オメガアガトキシンIVA(1OVA)の1〜48番のアミノ酸(配列番号14)の第28〜33アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質12(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図14】Muアガトキシン−I(1EIT)の1〜36番のアミノ酸(配列番号15)の第3〜8アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質13(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図15】Grb2 SH2ドメイン(3WA4)の57〜152番のアミノ酸(配列番号16)の第85〜90アミノ酸(Grb2 SH2ドメインの第141〜146アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質1(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図16】エラフィン(1FLE)の11〜57番のアミノ酸(配列番号17)の第14〜19アミノ酸(エラフィンの第24〜29アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質2(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図17】フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の第62〜67アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質3(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図18】βspectrin由来CHドメイン(1BKR)の2〜109番のアミノ酸(配列番号18)の第50〜55アミノ酸(βspectrin由来CHドメインの第51〜56アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質4(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図19】Grb7タンパク質由来のRAドメイン(1WGR)の1〜100番のアミノ酸(配列番号19)の第44〜49アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質5(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図20】MEKK3のPB1ドメイン(2PPH)の1〜93番のアミノ酸(配列番号20)の第46〜51アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質6(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図21】Ephrin type-B receptor 4のSAMドメイン(2QKQ)の908〜968番のアミノ酸(配列番号21)の第28〜33アミノ酸(Ephrin type-B receptor 4のSAMドメインの第935〜940アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質7(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図22】Protein kinase C, deltaのC1ドメイン(2YUU)の1〜83番のアミノ酸(配列番号22)の第39〜44アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質8(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図23】Human intersectin-1タンパク質のEH 1ドメイン(3FIA)の6〜103番のアミノ酸(配列番号23)の第28〜33アミノ酸(Human intersectin-1タンパク質のEH 1ドメインの第33〜38アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質9(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図24】ZO-1 MAGUKタンパク質のPDZドメイン(3TSV)の420〜512番のアミノ酸(配列番号24)の第35〜40アミノ酸(ZO-1 MAGUKタンパク質のPDZドメインの第454〜459アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質10(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図25】Fyn SH3ドメイン(3UA7)の81〜143番のアミノ酸(配列番号25)の第33〜38アミノ酸(Fyn SH3ドメインの第113〜118アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質11(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図26】Cytochrome c(3ZCF)の4〜103番のアミノ酸(配列番号26)の第18〜23アミノ酸(Cytochrome cの第21〜26アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質12(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図27】Muscarinic toxin 2(1FF4)の1〜65番のアミノ酸(配列番号27)の第48〜53アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質13(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
図28】IgG1 CH2ドメイン(4DZ8)の238〜341番のアミノ酸(配列番号56)の第46〜51アミノ酸(IgG1 CH2ドメインの第283〜288アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質14(A)、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(B)、及び前記置換領域をHBP、IBP、及び他の6連続アミノ酸ペプチドに置換した場合の根平均二乗揺らぎ値(C)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1]標的結合ペプチドの安定化方法
本発明の標的結合ペプチドの安定化方法は、足場タンパク質のループを含む構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である前記足場タンパク質において、前記置換領域を3〜15のアミノ酸からなる標的結合ペプチドに置換することを特徴とする。
【0009】
《足場タンパク質》
足場タンパク質は、ループ構造を有する限りにおいて、限定されるものではない。本発明に用いる足場タンパク質においては、ループを含む構造中の3〜15のアミノ酸からなる置換領域を、標的結合ペプチドと置換する。すなわち、前記足場タンパク質は、標的結合タンパク質を挿入するために、ループ構造を有するものである。
【0010】
タンパク質は、αへリックス、βシートを有し、ループ構造は、αへリックス及びβシート、αへリックス及びαへリックス、又はβシート及びβシート等をつなぐ部分である。
αへリックスは、1本のポリペプチド主鎖が、規則正しくらせん状の構造を示すものであり、すべてのペプチド結合が水素結合を形成している。従って、エネルギー的に安定な状態の構造である。らせん状構造は右巻きであり、アミノ酸残基の側鎖は、らせん状構造の外側に突き出している。らせん状構造の1ピッチは0.54nmであり、1ピッチの間に3.6アミノ酸残基が存在する。αへリックスは、多くの球状タンパク質に存在する二次構造である。また、アミノ酸残基には、αへリックスを形成しやすいものと、αへリックスを破壊しやすいものとがある。
βシートは、平行に配置された2本のポリペプチド主鎖が、水素結合によって固定された構造である。2本のポリペプチド主鎖の方向が同じ構造を平行βシートと称し、反対方向の構造を逆平行βシートと称することがある。また、βシートは3本以上のポリペプチド鎖が平行に並んでいてもよい。βシートは、球状タンパク質の骨組みになっている場合が多い。アミノ酸残基には、βシートを形成しやすいものと、βシートを形成しにくいものが存在する。
タンパク質の三次構造においては、前記のαへリックス及びβシートの二つの二次構造が、ひも状のループ構造によって結合されている。ループ構造の長さ及び構造は、特に限定されないが、3〜20アミノ酸からなるものが多い。また、2〜4アミノ酸残基からなり、ポリペプチド主鎖がU字型のループ構造を、ターンと称することがある。
多くのタンパク質では、いくつかのαへリックス及びβシート等が、ループ構造によって連結され、独立した球状のドメイン構造を形成している。ドメイン構造は、通常20〜350のアミノ酸残基の鎖長を有しており、そして前記αへリックス、βシート、及びループ構造の二次構造の組み合わされた三次構造である。そして、2つ以上のドメイン構造が組み合わされて、1つのタンパク質を形成していることが多い。
タンパク質の二次構造であるαへリックス、βシート及びループ構造、並びに三次構造であるドメイン構造は、タンパク質のアミノ酸配列から、ソフトウエアによって予測することもできる。しかしながら、正確にはタンパク質の結晶構造解析又はNMR溶液構造解析により、αへリックス、βシート、ループ構造、及びドメイン構造を同定することができる。
従って、前記足場タンパク質は、限定されるものでないが、好ましくは結晶構造解析又はNMR溶液構造解析された足場タンパク質である。結晶構造解析又はNMR溶液構造解析された足場タンパク質であることにより、ループを含む構造を正確に特定することが可能である。
【0011】
《ドメイン構造》
本発明に用いる足場タンパク質は、限定されるものではないが、好ましくはドメイン構造を含む。例えば、実施例3又は4に記載の足場タンパク質は、ドメイン構造を有するものではないが、充分にペプチドの揺らぎを抑制することができる。しかしながら、足場タンパク質全体の安定性を向上させるために、ドメイン構造を含むものが好ましい。また、足場タンパク質は、ドメイン構造からなるものでもよい。ドメイン構造は、αへリックス、βシート、及びループ構造を含む。ドメイン構造に含まれるαへリックス、βシート、及びループ構造のそれぞれの数は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではない。しかしながら、αへリックスは好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜8である。βシートは、好ましくは1〜25であり、さらに好ましくは1〜10である。ループ構造は、好ましくは1〜30であり、さらに好ましくは1〜12である。足場タンパク質は、ドメイン構造を含むことにより、ループ構造の置換領域に組み込まれた標的結合ペプチドを効果的に安定化させることができる。
【0012】
《ループ構造》
本発明に用いる足場タンパク質はル−プ構造を含む。足場タンパク質のループ構造は、αへリックス及びβシート等を結合させる構造である。ループ構造のアミノ酸配列の長さは、特に限定されるものではないが、好ましくは3〜20アミノ酸であり、より好ましくは3〜15アミノ酸である。ループ構造は、タンパク質のアミノ酸配列から、ソフトウエアによって予測することもできるが、タンパク質の結晶構造解析又はNMR溶液構造解析から特定されたループ構造が好ましい。
【0013】
《置換領域》
足場タンパク質のループ構造は、置換領域を含む。置換領域は、標的結合ペプチドと置換される領域である。置換領域は、足場タンパク質の野生型のアミノ酸配列において根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である領域である限りにおいて、その野生型のアミノ酸配列は限定されない。置換領域の野生型のアミノ酸の鎖長は、標的結合ペプチドを安定化できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、好ましくは3〜15アミノ酸であり、より好ましくは3〜13アミノ酸であり、さらに好ましくは4〜10アミノ酸であり、さらに好ましくは5〜8アミノ酸であり、最も好ましくは6又は7アミノ酸である。
【0014】
《連続基準ペプチド》
本発明に用いる足場タンパク質は、置換領域を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ(RMSF)値が1.5Å以下である。連続基準ペプチドの長さは、特に限定されるものではないが、好ましくは3〜15アミノ酸であり、好ましくは4〜12アミノ酸であり、より好ましくは5〜10アミノ酸であり、更に好ましくは5〜8アミノ酸であり、最も好ましくは6又は7アミノ酸である。例えば、本明細書において、6連続アラニンペプチドとは、Ala−Ala−Ala−Ala−Ala−Ala(A6:配列番号1)である。6連続グリシンペプチドとは、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly(G6:配列番号2)である。6連続プロリンペプチドとは、Pro−Pro−Pro−Pro−Pro−Pro(P6:配列番号3)である。6連続セリンペプチドとは、Ser−Ser−Ser−Ser−Ser−Ser(S6:配列番号4)である。表1に纏めて記載する。
【0015】
【表1】
【0016】
《根平均二乗揺らぎ値》
前記本発明に用いる足場タンパク質は、置換領域が連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドに置換された場合に、それらの連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ(RMSF)値が1.5Å以下である。RMSF値は、分子動力学計算によって求めることができる。具体的には、足場タンパク質の結晶構造あるいはNMR溶液構造の置換領域を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、又は連続セリンペプチドに置換した分子モデルを構築し、Amber14プログラムパッケージでそれぞれのペプチドのRMSF値を計算する。Amber ff14SB force field、GB/SA implicit solvent modelを使い、スーパーコンピューターTSUBAME2.5において10 nsの計算を行う。
これらの4つの連続基準ペプチドのRMSF値が1.5Å以下である場合は、標的結合ペプチドを、安定化することができる。連続アミノ酸ペプチドのRMSF値は、好ましくは1.4Å以下であり、より好ましくは1.3Å以下であり、さらに好ましくは1.2Å以下であり、最も好ましくは1.1Å以下である。RMSF値が1.5Å以下であることにより、標的結合ペプチドを効果的に安定化させることができる。
【0017】
《標的結合ペプチド》
本発明の標的結合ペプチドは、標的分子と結合することのできるペプチドである限りにおいて、特に限定されるものではない。しかしながら、例えば、HER2結合ペプチド(HBP:Gly−Asp−Gly−Phe−Tyr−Ala:配列番号54)、インテグリン結合ペプチド(IBP:Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro:配列番号55)、アンギオテンシンII(H-Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Phe-OH:配列番号5)、又はオキシトシン(Cys-Tyr-Ile-Gln-Asn-Cys-Pro-Leu-Gly:配列番号6)を挙げることができる。これらの標的結合ペプチドを、足場タンパク質の置換領域と置換することにより、安定化させることができる。
標的結合ペプチドの長さは、例えば3〜15アミノ酸であり、好ましくは4〜12アミノ酸であり、より好ましくは5〜10アミノ酸であり、更に好ましくは5〜8アミノ酸であり、最も好ましくは6又は7アミノ酸である。
【0018】
《連続基準ペプチドと標的結合ペプチドとの長さ》
前記連続基準ペプチドと標的結合ペプチドとの長さの関係は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではない。例えば、6連続基準ペプチドに置換した場合に根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質の置換領域を、7アミノ酸鎖長の標的結合ペプチドに置換しても、標的結合ペプチドを安定化することができる。しかしながら、好ましくは、6連続基準ペプチドに置換した場合に根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質の置換領域を、6アミノ酸鎖長の標的結合ペプチドに置換する。連続基準ペプチドと標的結合ペプチドとの長さが同じであることによって、より効果的に標的結合ペプチドを安定化することができるからである。
すなわち、連続基準ペプチドが3アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは3アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが4アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは4アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが5アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは5アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが6アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは6アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが7アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは7アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが8アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは8アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが9アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは9アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが10アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは10アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが11アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは11アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが12アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは12アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが13アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは13アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが14アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは14アミノ酸鎖長が好ましい。連続基準ペプチドが15アミノ酸鎖長の場合は、標的結合ペプチドは15アミノ酸鎖長が好ましい。
【0019】
《NMR》
核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:以下、NMRと称することがある)は、外部静磁場に置かれた原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用する現象であるが、核磁気共鳴によるスペクトルを得る核磁気共鳴分光法(Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy)をNMRと称することもある。NMR法により固体試料や溶液試料の化合物の化学構造及び立体構造の解析、分子内の運動性等の解析を行うことができる。
本発明においては、NMR法によって、足場タンパク質のαへリックス、βシート、ループ構造、及びドメイン構造を同定することができる。更に、NMR法によって、置換された標的結合ペプチドの揺らぎを同定することができる。
【0020】
本発明に用いる足場タンパク質及び置換領域の具体的な例としては、限定されるものではないが、フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の第24〜29アミノ酸の置換領域を挙げることができる。フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の第51〜56アミノ酸の置換領域を挙げることができる。オメガコノトキシンMVIIA(1TTK)の1〜25番のアミノ酸(配列番号8)の第2〜7アミノ酸の置換領域を挙げることができる。オメガコノトキシンMVIIA(1TTK)の1〜25番のアミノ酸(配列番号8)の第9〜14アミノ酸の置換領域を挙げることができる。RalGEFのRas結合ドメイン(2RGF)の11〜97番のアミノ酸(配列番号9)の第41〜45(RalGEFの第51〜56アミノ酸)の置換領域を挙げることができる。sAb軽鎖(3PGF)の111〜213番のアミノ酸であるCLドメイン(配列番号10)の第30〜35アミノ酸(sAb軽鎖の第140〜145アミノ酸)の置換領域を挙げることができる。sAb軽鎖(3PGF)の111〜213番のアミノ酸であるCLドメイン(配列番号10)の第44〜49アミノ酸(sAb軽鎖の第154〜159アミノ酸)の置換領域を挙げることができる。Valpha24(-) NKT TCR(4EN3)の1〜99番のアミノ酸であるIgドメイン(配列番号11)の第45〜50アミノ酸の置換領域を挙げることができる。CXCL4L1(4HSV)の9〜54番のアミノ酸(配列番号12)の第6〜11アミノ酸(CXCL4L1の第14〜19アミノ酸)の置換領域を挙げることができる。CXCL13(4ZAI)の10〜55番のアミノ酸(配列番号13)の第5〜10アミノ酸(CXCL13の第14〜19アミノ酸)の置換領域を挙げることができる。フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の第24〜30アミノ酸の置換領域を挙げることができる。オメガアガトキシン(1OAV)の1〜48番のアミノ酸(配列番号14)の第28〜33アミノ酸の置換領域を挙げることができる。Mu−アガトキシン(1EIT)の1〜36番のアミノ酸(配列番号15)の第3〜8アミノ酸の置換領域を挙げることができる。IgG1 CH2ドメイン(4DZ8)の238〜341番のアミノ酸(配列番号56)の第46〜51アミノ酸(IgG1 CH2ドメインの第283〜288アミノ酸)の置換領域を挙げることができる。
【0021】
前記足場タンパク質のループ構造の置換領域候補を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの基準連続ペプチドに置換することによって、足場タンパク質の標的結合ペプチド固定性を確認することができる。すなわち、置換領域候補を、基準連続ペプチドに置換し、そしてそれらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値を計算する。根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である場合、足場タンパク質の標的結合ペプチドの固定性が良好であることを確認することができる。
従って、本明細書は、足場タンパク質のループを含む構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換し、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下であることを確認することによって、標的結合ペプチドを安定化できる足場タンパク質の同定方法を開示する。前記同定方法における足場タンパク質、置換領域、連続基準ペプチド、標的結合ペプチド、及び根平均二乗揺らぎ値等は、上記に記載のものである。
【0022】
本発明の標的結合ペプチドの安定化方法による安定化された標的結合ペプチドを含む足場タンパク質は、ペプチド医薬として、用いることができる。また、本発明の標的結合ペプチドの安定化方法における標的結合ペプチドを標的結合ペプチド候補とすることにより、安定化された標的結合ペプチド候補を含む足場タンパク質は、標的結合ペプチドライブラリーとして用いることができる。
【0023】
[2]足場タンパク質のスクリーニング方法
本発明の足場タンパク質のスクリーニング方法は、ループ構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を有する足場タンパク質候補において、前記置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換し、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質を選択することを特徴とする。前記連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質は、その置換領域に標的結合ペプチドを組込んだ場合に、標的結合ペプチドを安定化することができる。
【0024】
本発明のスクリーニング方法においてスクリーニングされる足場タンパク質候補の鎖長、置換領域、ドメイン構造、及びループ構造などの特徴は、前記連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値を除いて、前記「[1]標的結合ペプチドの安定化方法」の足場タンパク質と同じであり、前記連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質を本発明のスクリーニング方法によって選択できる。また、根平均二乗揺らぎ(RMSF)値の測定は、前記の方法によって実施することができる。
【0025】
具体的な足場タンパク質のスクリーニング方法は、ループ構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の置換領域を有する足場タンパク質候補を決定し、置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換して、RMSF値を計算する。そして、この4つの連続基準ペプチドの全てのRMSF値が1.5Å以下である足場タンパク質を選択する。
【0026】
[3]足場タンパク質
本発明の足場タンパク質は、置換領域が除去された20〜130残基の鎖長の足場タンパク質であって、前記置換領域が足場タンパク質のループを含む構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の領域であり、そして前記置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である足場タンパク質である。本発明の足場タンパク質は、前記[1]標的結合ペプチドの安定化方法」に記載の足場タンパク質である。本発明の足場タンパク質の置換領域を3〜15のアミノ酸からなる標的結合ペプチドに置換すると、標的結合タンパク質を得ることができる。
【0027】
1つの足場タンパク質としては、配列番号7で表されるフィブロネクチンIII型から置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号7で表されるアミノ酸配列の第24〜29アミノ酸、第51〜56アミノ酸、又は第24〜30アミノ酸配列である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号8で表されるオメガコノトキシンMVIIAから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号8で表されるアミノ酸配列の第2〜7アミノ酸、又は第9〜14アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号9で表されるRalGEFのRas結合ドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号9で表されるアミノ酸配列の第41〜46アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号10で表されるsAb軽鎖(3PGF)のCLドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号10で表されるアミノ酸配列の第30〜35アミノ酸、又は第44〜49アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号11で表されるValpha24(-) NKT TCRのIgドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号11で表されるアミノ酸配列の第45〜50アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号12で表されるCXCL4L1から置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号12で表されるアミノ酸配列の第6〜11アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号13で表されるCXCL13から置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号13で表されるアミノ酸配列の第5〜10アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号14で表されるオメガアガトキシンから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号14で表されるアミノ酸配列の第28〜33アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号15で表されるMu−アガトキシンから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号15で表されるアミノ酸配列の第3〜8アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
また1つの足場タンパク質としては、配列番号56で表されるIgG1 CH2ドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号56で表されるアミノ酸配列の第46〜51アミノ酸である足場タンパク質を挙げることができる。
【0028】
[4]ライブラリー
本発明のライブラリーは、前記足場タンパク質における除去された置換領域を、3〜15のアミノ酸からなる標的結合候補ペプチドと置換されたものであり、標的結合ペプチドをスクリーニングするためのライブラリーである。
すなわち、標的結合候補ペプチド及び20〜130残基の鎖長の足場タンパク質を含むタンパク質を含むライブラリーであって、前記標的結合候補ペプチドが3〜15のアミノ酸からなる標的結合候補ペプチドであり、そして足場タンパク質の置換領域と置換されており、前記置換領域が足場タンパク質のループを含む構造における根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下の領域であり、そして前記置換領域を連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下であるライブラリーである。
【0029】
1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号7で表されるフィブロネクチンIII型から置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号7で表されるアミノ酸配列の第24〜29アミノ酸、第51〜56アミノ酸、又は第24〜30アミノ酸配列であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号8で表されるオメガコノトキシンMVIIAから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号8で表されるアミノ酸配列の第2〜7アミノ酸、又は第9〜14アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号9で表されるRalGEFのRas結合ドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号9で表されるアミノ酸配列の第41〜46アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号10で表されるsAb軽鎖(3PGF)のCLドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号10で表されるアミノ酸配列の第30〜35アミノ酸、又は第44〜49アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号11で表されるValpha24(-) NKT TCRのIgドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号11で表されるアミノ酸配列の第45〜50アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号12で表されるCXCL4L1から置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号12で表されるアミノ酸配列の第6〜11アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号13で表されるCXCL13から置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号13で表されるアミノ酸配列の第5〜10アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号14で表されるオメガアガトキシンから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号14で表されるアミノ酸配列の第28〜33アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号15で表されるMu−アガトキシンから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号15で表されるアミノ酸配列の第3〜8アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
また1つのライブラリーとしては、足場タンパク質が配列番号56で表されるIgG1 CH2ドメインから置換領域を除去したものであり、前記置換領域が配列番号56で表されるアミノ酸配列の第46〜51アミノ酸であるライブラリーを挙げることができる。
【0030】
標的結合候補ペプチドは、特に限定されるものではなく、薬剤スクリーニングなどに用いるペプチドライブラリーのペプチドなどを用いることができる。
【0031】
(作用)
本発明の標的結合ペプチドの安定化方法において、標的結合ペプチドの揺らぎが抑制される理由は、完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
図1に示すように、本発明において提示される標的結合ペプチドは、標的分子に結合するタンパク質である。すなわち、足場タンパク質の表面に提示され、標的分子と結合することが好ましい。従って、足場タンパク質の置換領域は、足場タンパク質の表面のループ構造に存在するものであり、換言すれば置換領域はループ構造であるか、ループ構造を含むものである。また、置換領域が表面に存在することは、タンパク質の結晶構造解析又はNMR溶液構造解析によって確認することができるため、好ましくは、足場タンパク質は結晶構造解析又はNMR溶液構造解析が行われたタンパク質である。更に、置換領域は、野生型のペプチドの根平均二乗揺らぎ値(RMSF値)が1.5Å以下の領域を選択することが好ましく、野生型のペプチドの揺らぎが小さい置換領域を選択することにより、標的結合ペプチドの揺らぎを抑制することが可能になると推定される。しかしながら、野生型のペプチドの揺らぎが小さい領域を選択したとしても、揺らぎの小ささが野生型ペプチド自体の配列によることも考えられる。本発明においては、置換領域のペプチドを、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドに置換した場合に、それらのペプチドの根平均二乗揺らぎ値が1.5Å以下である置換領域に標的結合ペプチドを組み込むことにより、確実に標的結合ペプチドの揺らぎを抑制することができると考えられる。このことは、比較例3〜13に示すように、足場タンパク質の野生型ペプチドのRMSF値が1.5Å以下であっても、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドのいずれかのペプチドのRMSF値が1.5Åを超えると、すべての組み込みペプチドのRMSF値を1.5Å以下に抑制できないことから理解できる。一方、実施例1〜11に示すように、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドのすべてのRMSF値が1.5Å以下であると、すべての組み込みペプチドのRMSF値を1.5Å以下に抑制できる。すなわち、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドは、標的結合ペプチドの揺らぎの優れた指標となるものである。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0033】
《実施例1》
本実施例では、NMR溶液構造解析されたフィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の平均RMSF値が0.8Åである第24〜29アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質1を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図2A)。第24〜29アミノ酸配列は、APAVTV(配列番号28)である。
まず、前記置換領域を6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、6連続プロリンペプチド、及び6連続セリンペプチドの連続基準ペプチドに置換して、根平均二乗揺らぎ値を計算した。そこで分子モデルを構築し、Amber14プログラムパッケージでそれぞれのペプチドの根平均二乗揺らぎ値を計算した。Amber ff14SB force field、GB/SA implicit solvent modelを使い、スーパーコンピューターTSUBAME2.5において10 nsの計算を行った。
図2Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
【0034】
次に、前置置換領域を、HBP(Gly−Asp−Gly−Phe−Tyr−Ala)、及びIBP(Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro)のペプチドに置換し、根平均二乗揺らぎ値を計算した。HBP及びIBPの平均RMSF値は、0.75Å及び0.71Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図2C)。更に、置換領域をシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、トレオニン、バリン、トリプトファン、又はチロシンのそれぞれの6連続アミノ酸ペプチドに置換し、根平均二乗揺らぎ値を計算した。全ての6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図2C)。
【0035】
《実施例2》
本実施例では、NMR溶液構造解析されたフィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の平均RMSF値が0.91Åである第51〜56アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質2を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図3A)。第51〜56アミノ酸配列は、PGSKST(配列番号29)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質2を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図3Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。HBP及びIBPの平均RMSF値は、0.94Å及び1.41Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図3C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図3C)。
【0036】
《実施例3》
本実施例では、NMR溶液構造解析されたオメガコノトキシンMVIIA(1TTK)の1〜25番のアミノ酸(配列番号8)の平均RMSF値が0.73Åである第2〜7アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質3を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図4A)。第2〜7アミノ酸配列は、KGKGAK(配列番号30)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質3を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図4Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、0.99Å及び0.75Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図4C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図4C)。
【0037】
《実施例4》
本実施例では、NMR溶液構造解析されたオメガコノトキシンMVIIA(1TTK)の1〜25番のアミノ酸(配列番号8)の平均RMSF値が0.73Åである第9〜14アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質4を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図5A)。第9〜14アミノ酸配列は、SRLMYD(配列番号31)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質4を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図5Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、1.39Å及び1.37Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図5C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図5C)。
【0038】
《実施例5》
本実施例では、NMR溶液構造解析されたRalGEFのRas結合ドメイン(2RGF)の11〜97番のアミノ酸(配列番号9)の平均RMSF値が1.10Åである第41〜46アミノ酸(RalGEFの第51〜56アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質5を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図6A)。第41〜46アミノ酸配列は、LEEEEP(配列番号32)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質5を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図6Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、1.02Å及び1.05Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図6C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図6C)。
【0039】
《実施例6》
本実施例では、結晶構造解析されたsAb軽鎖(3PGF)の111〜213番のアミノ酸であるCLドメイン(配列番号10)の平均RMSF値が0.84Åである第30〜35(sAb軽鎖の第140〜145アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質6を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図7A)。第30〜35アミノ酸配列は、YPREAK(配列番号33)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質6を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図7Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、1.17Å及び1.27Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図7C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図7C)。
【0040】
《実施例7》
本実施例では、結晶構造解析されたsAb軽鎖(3PGF)の111〜213番のアミノ酸であるCLドメイン(配列番号10)の平均RMSF値が0.75Åである第44〜49アミノ酸(sAbの第154〜159アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質7を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図8A)。第44〜49アミノ酸配列は、LQSGNS(配列番号34)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質7を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図8Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、1.15Å及び0.90Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図8C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図8C)。
【0041】
《実施例8》
本実施例では、結晶構造解析されたValpha24(-) NKT TCR(4EN3)の1〜99番のアミノ酸であるIgドメイン(配列番号11)の平均RMSF値が0.57Åである第45〜50アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質8を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図9A)。第45〜50アミノ酸配列は、RIEKVE(配列番号35)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質8を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図9Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、0.84Å及び0.85Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図9C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図9C)。
【0042】
《実施例9》
本実施例では、結晶構造解析されたCXCL4L1(4HSV)の9〜54番のアミノ酸(配列番号12)の平均RMSF値が1.06Åである第6〜11アミノ酸(CXCL4L1の第14〜19アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質9を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図10A)。第6〜11アミノ酸配列は、KTTSQV(配列番号36)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質9を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図10Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、1.35Å及び1.11Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図10C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図10C)。
【0043】
《実施例10》
本実施例では、結晶構造解析されたCXCL13(4ZAI)の10〜55番のアミノ酸(配列番号13)の平均RMSF値が1.46Åである第5〜10アミノ酸(CXCL13の第14〜19アミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質10を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図11A)。第第5〜10アミノ酸配列は、VQESSV(配列番号37)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質10を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図11Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
HBP及びIBPの平均RMSF値は、1.20Å及び1.05Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図11C)。更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図11C)。
【0044】
《実施例11》
本実施例では、NMR溶液構造解析されたフィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の平均RMSF値が0.83Åである第24〜30アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質11を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図12A)。第24〜30アミノ酸配列は、APAVTVR(配列番号38)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質11を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図12Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
他の7連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図13C)。
【0045】
《実施例12》
本実施例では、結晶構造解析されたオメガアガトキシン(1OAV)の1〜48番のアミノ酸(配列番号14)の平均RMSF値が1.21Åである第28〜33アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質12を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図13A)。第28〜33アミノ酸配列は、SIMGTN(配列番号39)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質12を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図13Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。HBP及びIBPの平均RMSF値は、1.24Å及び1.09Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図13C)。
更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図13C)。
【0046】
《実施例13》
本実施例では、結晶構造解析されたMu−アガトキシン(1EIT)の1〜36番のアミノ酸(配列番号15)の平均RMSF値が0.54Åである第3〜8アミノ酸を置換領域とする足場タンパク質13を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図14A)。第3〜8アミノ酸配列は、VPENGH(配列番号40)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質13を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図14Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。HBP及びIBPの平均RMSF値は、0.86Å及び0.74Åであり、標的結合ペプチドの構造のゆらぎを抑制することができた(図14C)。
更に、他の6連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図14C)。
【0047】
《実施例14》
本実施例では、結晶構造解析されたIgG1(4DZ8)の238〜341番のアミノ酸であるCH2ドメイン(配列番号56)の平均RMSF値が0.98Åである第46〜51アミノ酸(IgG1の283〜288のアミノ酸)を置換領域とする足場タンパク質14を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図28A)。第46〜51アミノ酸配列は、EVHNAK(配列番号57)である。
足場タンパク質1に代えて、足場タンパク質14を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図28Bに示すように4つの連続基準ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Å以下であった。
他の7連続アミノ酸ペプチドの根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以下であり、ゆらぎが抑制されていた(図28C)。
【0048】
実施例1〜14の足場タンパク質の特徴を表2に示す。
【表2】
【0049】
《比較例1》
本比較例では、Grb2 SH2ドメイン(3WA4)の57〜152番のアミノ酸(配列番号16)の平均RMSF値が1.70Åである第85〜90アミノ酸(Grb2の141〜146番のアミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質1を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図15A)。第85〜90アミノ酸配列は、SRNQQI(配列番号41)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質1を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図15Bに示すように6連続アラニンペプチド及び6連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続システインペプチドなどの4つのペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図15C)。
【0050】
《比較例2》
本比較例では、エラフィン(1FLE)の11〜57番のアミノ酸(配列番号17)の平均RMSF値が1.73Åである第14〜19アミノ酸(エラフィンの24〜29番のアミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質2を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図16A)。第14〜19アミノ酸配列は、AMLNPP(配列番号42)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質2を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図16Bに示すように6連続グリシンペプチド及び6連続プロリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続システインペプチドなど10のペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図16C)。
【0051】
比較例1及び2に示すように、ループ含む置換領域の野生型アミノ酸配列の平均RMSF値が1.5Åを超える場合、標的結合ペプチドの構造の揺らぎを抑制することは困難であった。
【0052】
《比較例3》
本比較例では、フィブロネクチンIII型(1TTG)の1〜94番のアミノ酸(配列番号7)の平均RMSF値が1.02Åである第62〜67アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質3を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図17A)。第62〜67アミノ酸配列は、LKPGVD(配列番号43)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質3を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図17Bに示すように6連続グリシンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続イソロイシンペプチドなど2つのペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図17C)。
【0053】
《比較例4》
本比較例では、βspectrin由来CHドメイン(1BKR)の2〜109番のアミノ酸(配列番号18)の第50〜55アミノ酸(βspectrin由来CHドメインの第51〜56アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質4を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図18A)。第50〜55アミノ酸配列は、FDKLKK(配列番号44)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質4を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図18Bに示すように6連続グリシンペプチド及び6連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。比較足場タンパク質4に6連続グルタミンペプチドおよび標的結合ペプチドHBPを挿入した場合、根平均二乗揺らぎ値は1.5Å以上となり、ゆらぎが抑制できなかった(図18C)。
【0054】
《比較例5》
本比較例では、Grb7タンパク質由来のRAドメイン(1WGR)の1〜100番のアミノ酸(配列番号19)の平均RMSF値が1.44Åである第44〜49アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質5を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図19A)。第44〜49アミノ酸配列は、HALSDE(配列番号45)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質5を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図19Bに示すように6連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続アスパラギン酸ペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図19C)。
【0055】
《比較例6》
本比較例では、MEKK3のPB1ドメイン(2PPH)の1〜93番のアミノ酸(配列番号20)の平均RMSF値が1.04Åである第46〜51アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質6を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図20A)。第46〜51アミノ酸配列は、NNELSI(配列番号46)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質6を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図20Bに示すように6連続アラニンペプチド及び6連続プロリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、IBPなどの4つペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図20C)。
【0056】
《比較例7》
本比較例では、Ephrin type-B receptor 4のSAMドメイン(2QKQ)の908〜968番のアミノ酸(配列番号21)の平均RMSF値が1.46Åである第28〜33アミノ酸(Ephrin type-B receptor 4のSAMドメインの第935〜940アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質7を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図21A)。第28〜33アミノ酸配列は、SFELVS(配列番号47)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質7を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図21Bに示すように6連続グリシンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続アスパラギン酸ペプチドなどの3つのペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図21C)。
【0057】
《比較例8》
本比較例では、Protein kinase C, deltaのC1ドメイン(2YUU)の1〜83番のアミノ酸(配列番号22)の平均RMSF値が1.15Åである第39〜44アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質8を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図22A)。第39〜44アミノ酸配列は、WGLNKQ(配列番号48)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質8を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図22Bに示すように6連続プロリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続バリンペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図22C)。
【0058】
《比較例9》
本比較例では、Human intersectin-1タンパク質のEH 1ドメイン(3FIA)の6〜103番のアミノ酸(配列番号23)の平均RMSF値が1.07Åである第28〜33アミノ酸(Human intersectin-1タンパク質のEH 1ドメインの第33〜38アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質9を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図23A)。第28〜33アミノ酸配列は、KPISGF(配列番号49)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質9を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図23Bに示すように6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、及び6連続プロリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、HBPなどの3つのペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図23C)。
【0059】
《比較例10》
本比較例では、ZO-1 MAGUKタンパク質のPDZドメイン(3TSV)の420〜512番のアミノ酸(配列番号24)の平均RMSF値が0.98Åである第35〜40アミノ酸(ZO-1 MAGUKタンパク質のPDZドメインの第454〜459アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質10を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図24A)。第35〜40アミノ酸配列は、SPAAKE(配列番号50)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質10を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図24Bに示すように6連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続グルタミン酸ペプチドなどの5つのペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図24C)。
【0060】
《比較例11》
本比較例では、Fyn SH3ドメイン(3UA7)の81〜143番のアミノ酸(配列番号25)の平均RMSF値が1.04Åである第33〜38アミノ酸(Fyn SH3ドメインの第113〜118アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質11を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図25A)。第33〜38アミノ酸配列は、NSSEGD(配列番号51)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質11を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図25Bに示すように6連続グリシンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、6連続アスパラギン酸ペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図25C)。
【0061】
《比較例12》
本比較例では、Cytochrome c(3ZCF)の4〜103番のアミノ酸(配列番号26)の平均RMSF値が0.84Åである第18〜23アミノ酸(Cytochrome cの第21〜26アミノ酸)を置換領域とする比較足場タンパク質12を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図26A)。第18〜23アミノ酸配列は、EKGGKH(配列番号52)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質12を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図26Bに示すように6連続アラニンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、IBPなど2つのペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図26C)。
【0062】
《比較例13》
本比較例では、Muscarinic toxin 2(1FF4)の1〜65番のアミノ酸(配列番号27)の平均RMSF値が1.30Åである第48〜53アミノ酸を置換領域とする比較足場タンパク質13を用いて、ペプチドの安定化を実施した(図27A)。第48〜53アミノ酸配列は、KVDNND(配列番号53)である。
足場タンパク質1に代えて、比較足場タンパク質13を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返した。
図27Bに示すように6連続アラニンペプチド、6連続グリシンペプチド、及び6連続セリンペプチドの根平均二乗揺らぎ値は、1.5Åを超えていた。HBP、IBP及び他の6連続アミノ酸ペプチドのうち、HBPなど5つのペプチドの平均RMSF値は、1.5Åを超えており、構造のゆらぎを抑制することができなかった(図27C)。
【0063】
比較例3〜13に示すように、ループ含む置換領域の野生型アミノ酸配列の平均RMSF値が1.5Å以下であっても、連続アラニンペプチド、連続グリシンペプチド、連続プロリンペプチド、及び連続セリンペプチドの連続基準ペプチドのいずれかのペプチドの平均RMSF値が1.5Åを超えた場合、標的結合ペプチドの構造の揺らぎを抑制することはできなかった。
【0064】
比較例1〜13の足場タンパク質の特徴を表3に示す。
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の標的結合ペプチドの安定化方法は、ペプチド医薬に用いる標的結合ペプチドの標的分子への結合を改善することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変法や改良は本発明の範囲に含まれる。
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]