【実施例】
【0022】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、ガラス製フラスコに塩化ビニリデン共重合ラテックス(旭化成株式会社製、商品名:サランラテックス L502、固形分50質量%)を93質量部取り、ステンレス製の撹拌羽で撹拌しながら、粘性調整剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカノール UH−420、固形分30質量%)2質量部と、結晶化阻害剤としてのジブチルジグリコール(日本乳化剤株式会社製)5質量部とを添加して、高防湿性接着剤組成物を得た。
【0023】
次に、本実施例で得られた高防湿性接着剤組成物について、最低造膜温度、透湿抵抗、接着強さ、材料破断率をそれぞれ次のようにして測定した。結果を表1に示す。
【0024】
〔最低造膜温度〕
本実施例で得られた高防湿性接着剤組成物を、各温度環境下で平滑なアルミニウム箔上にフィルムアプリケーターを用いて100μmの厚さに塗布し、透明な膜を形成する温度と膜を形成しない温度との境界を測定し、透明な膜を形成する温度を最低造膜温度とする。
【0025】
〔透湿抵抗〕
JIS A 1324「建築材料の透湿性測定方法」5.2カップ法に基づいて測定する。
【0026】
まず、本実施例で得られた高防湿性接着剤組成物を、ボード紙に接着剤を200g/m
2の量で塗布し、2日間養生したものを試料とする。次に、前記試料の表面に予め透湿させる範囲がわかるように印を付け、吸湿剤として所定量の塩化カルシウムを収容した透湿カップに前記試料を取り付ける。
【0027】
前記透湿カップは、250mm角、深さ30mmの内寸を備える下部に、300mm角、深さ30mmの内寸を備える上部が連設され、下部と上部との間に段差部が形成されている。前記吸湿剤は前記透湿カップの下部に収容されており、前記試料は前記段差部に取り付けられる。
【0028】
次に、前記透湿カップに取り付けられた前記試料の周囲をアルミニウムテープでシールする一方、該試料の透湿させる範囲以外の部分をパラフィンワックスでシールし、透湿させる範囲以外からの透湿が生じないようにする。
【0029】
次に、前記透湿カップを、23℃、相対湿度50%の環境の恒温恒湿槽内に静置し、所定の時間間隔毎に質量を測定し、その質量変化から次式に従って透湿抵抗(m
2sPa/ng)を求める。
【0030】
透湿抵抗(m
2sPa/ng)=(P
1−P
2)×A/G
P
1:恒温恒湿槽内の空気の水蒸気圧(1405.5Pa、23℃、相対湿度50%の環境の水蒸気圧)
P
2:透湿カップ内の空気の水蒸気圧(0Pa)
A:透湿面積(透湿させる範囲の面積、m
2)
G:測定時間毎の質量の増加量(ng/s)
〔接着強さ、材料破断率〕
本実施例で得られた高防湿性接着剤組成物を、ラワン合板と合板裏打ちしたMDF(中密度繊維板)との接着面に200g/m
2の塗布量(乾燥前の塗布量)で塗布し、20℃の環境下、圧締圧力0.01MPa、圧締時間1時間の条件で接着し、試験面積40mm×40mm、試験速度3.0mmの条件で平面引張り試験を行い、接着強さと材料破断率とを求めた。
【0031】
〔実施例2〕
本実施例では、塩化ビニリデン共重合ラテックス(旭化成株式会社製、商品名:サランラテックス L502、固形分50質量%)を90質量部、粘性調整剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカノール UH−420、固形分30質量%)を5質量部、結晶化阻害剤としてのジブチルジグリコール(日本乳化剤株式会社製)を5質量部とした以外は、実施例1と全く同一にして高防湿性接着剤組成物を得た。
【0032】
次に、本実施例で得られた高防湿性接着剤組成物について、最低造膜温度、透湿抵抗、接着強さ、材料破断率を、実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0033】
〔比較例1〕
本比較例では、塩化ビニリデン共重合ラテックス(旭化成株式会社製、商品名:サランラテックス L502、固形分50質量%)のみを接着剤組成物とした。
【0034】
次に、本比較例の接着剤組成物について、最低造膜温度、透湿抵抗、接着強さ、材料破断率を、実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0035】
〔比較例2〕
本比較例では、塩化ビニリデン共重合ラテックス(旭化成株式会社製、商品名:サランラテックス L502、固形分50質量%)を95質量部、粘性調整剤(株式会社ADEKA製、商品名:アデカノール UH−420、固形分30質量%)を5質量部とし、結晶化阻害剤を全く用いなかった以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を得た。
【0036】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、最低造膜温度、透湿抵抗、接着強さ、材料破断率を、実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から、塩化ビニリデン樹脂を含むエマルジョン(塩化ビニリデン共重合ラテックス)と、塩化ビニリデン樹脂の結晶化を阻害する結晶化阻害剤としてのジブチルジグリコールとを含む実施例1、2の高防湿性接着剤組成物によれば、最低造膜温度が5℃と低く、接着強さ及び材料破断率が大きく優れた接着性能を備える上、透湿抵抗も高く、塗布対象物に優れた防湿性を付与することができることが明らかである。
【0039】
一方、塩化ビニリデン樹脂を含むエマルジョン(塩化ビニリデン共重合ラテックス)のみからなるか、塩化ビニリデン樹脂を含むエマルジョン(塩化ビニリデン共重合ラテックス)と粘性調整剤とを含み、前記結晶化阻害剤を含まない比較例1、2の接着剤組成物によれば、透湿抵抗は実施例1、2よりも高いものの、最低造膜温度が23℃と高く、接着強さ及び材料破断率が小さく実質的に接着性能を備えていないことが明らかである。