【課題を解決するための手段】
【0012】
一部の実施では、リアルタイム測定はゲーティング機能を提供する。これは、挿入力及び横力を含む器具にかかる力及び/又は組織コンプライアンスなどの器具と組織との相互作用に関連するパラメーターの測定が、関心領域の撮像を開始するのに最適な時間/段階を定めるのを補助するのに使用され、その結果、挿入処置全体にわたって撮影される画像が少なくなることを意味する。画像は、例えば、医療器具が組織境界又は標的(例えば、腫瘍、病変)に到達したことをセンサー測定値が示した場合にのみ撮影されることができる。撮像はシステムによって自動的に行われることができ、或いはシステムがユーザーに撮像を開始するように促すことができる。「組織」という用語は、到達すべき標的も含むことができ、「組織境界」という用語は、標的の境界も指すことができる。
【0013】
他の実施では、リアルタイム測定は、器具と組織との相互作用に関連するパラメーターの測定を用いて挿入処置の進捗状況を監視し、医療器具がその予め計画された軌道をたどっていることを確認する、監視及び誘導機能を提供する。このようなリアルタイム監視は、器具の実際の位置を追跡するために、挿入処置全体にわたる連続的又は頻繁な撮像の必要性を排除する。
【0014】
更なる実施では、リアルタイム測定は安全機能を提供し、すなわち、器具と組織との相互作用に関連するパラメーターの測定値を用いて、医療器具が骨、血管などの禁止領域に衝突し/入ったことを検出すると臨床医に警告し、好ましくは自動的に挿入処置も停止する。
【0015】
一部の実施では、リアルタイム測定は、上記の機能(ゲーティング、監視及び誘導、及び安全)のすべて又はこれらの2つの機能の組み合わせを提供できることが理解できる。
【0016】
一部の実施では、挿入中に器具にかかる力を測定するために力センサーが使用される。挿入中に遭遇する力プロファイルは、予め計画された挿入処置から予測される力プロファイルと比較されることができる。後者は、計画された挿入経路の実行中に器具が遭遇すると予測される組織及び他の身体部分の配置及び種類から分かる。器具が新しい組織層に入ると異なる力レベルに遭遇し、力レベルは器具が患者の皮膚、脂肪組織、筋肉、又は他のこのような特徴的な組織に入るか否かにも依存する。予測される力プロファイルは、力レベル自体、局所的なピーク、測定された力の空間的な勾配などの特徴、並びにこのような特徴の組み合わせ及び順序などを含むことができる。力プロファイルは、好都合には、空間的な力プロファイルであることができるが、挿入処置の速さが予め定められている場合、時間的な力プロファイルを代わりに用いることができる。この予測される力プロファイルからのずれは、器具の予め計画された挿入経路からのずれを示すことができる。このため、このような予め計画された挿入経路からのずれを患者の撮像の必要なしに示すことができ、それにより、付随する患者及び医療従事者の放射線被曝の程度を低減する。また、挿入中に遭遇する力プロファイルが予測される力プロファイルと一致する限り、処置の過程全体にわたって患者の連続的又は頻繁な撮像を必要とせずに挿入処置を行うことができる。
【0017】
結果として生じる取るべき行動は、予測される力プロファイルからのずれの程度によって決まる。一部の実施では、予測される力プロファイルからのずれの程度に応じて、取るべき行動を特徴付ける3つのレベルがある。
(a)その限られた範囲の閾値内で力プロファイルをたどっていることを意味する、第1閾値までの所定の限られた範囲内では、行動を取る必要はなく、処置は計画どおりに継続される。
(b)第2閾値レベルのずれまでの大きなずれの場合、器具はもはや予め計画された挿入処置を十分に厳密にたどっていないが、予め計画された処置からのずれは全部の処置を中止するのに十分ではないことが理解される。代わりに、予め計画された経路からどの程度及びどの方向にずれが行われたかを判定するために1つ以上の調査画像がここで生成される。この画像又はこれらの画像を用いて、誘導される器具挿入により、器具が途中で血管又は骨のような禁止領域に入ることなく患者の意図された標的部位に到達することを確実にするために、挿入経路が修正される。予測される器具が遭遇する力プロファイルは、器具が修正された挿入経路をたどるときに予測される組織の種類及びそれらの位置の知識から、再決定されることができる。こうして、標的に到達するまで、又は予測される力プロファイルからの別のずれに遭遇するまで、力センサー出力プロファイルと修正された挿入経路から予測される力との比較を用いて、更なる撮像を必要とせずに挿入を続けることができる。
(c)ずれが更に大きく、第2閾値レベルを超えている場合には、器具が計画された挿入処置からはるかに外れていること、骨又は血管などの物体に意図せず衝突したこと、又は器具が遭遇するよう意図されていない患者の身体部分/器官への損傷の危険性があることが推測される。このような状況では、挿入処置全体が中止される。
【0018】
本方法及びこれらの方法を実施するための装置の利点は、予め計画された挿入経路をたどるのに必要とされる撮像のレベルが、従来の画像ベースの挿入処置よりも実質的に低減されることである。こうして、この力誘導ナビゲーション処置を使用することにより、実際の力プロファイルが予測される力プロファイルからある所定のレベルを超えて外れている場合にのみ画像が必要となるため、もしそうでなかったら必要とされる放射線のほんの一部のみで、正確な挿入を確実にすることができる。
【0019】
一部の実施では、例えば、器具が組織境界に到達することを示す、センサーの測定値における1つ以上のパターンを予め定めることができる。この開示全体にわたって、「パターン」という用語は、数値又は行動パターンのいずれかを指してもよいことに留意されたい。このため、予め定められたパターンは、例えば、ある測定されたレベル(例えば、力レベル)、勾配、局所的なピーク、又は上記のあらゆる組み合わせであることができる。
【0020】
こうして、本開示において記載されるシステムの例示的な実施によれば、医療器具の患者の体内への挿入を制御するためのシステムであって、
(i)医療器具を患者の体内に挿入するように構成されている挿入装置と、
(ii)医療器具と身体組織との相互作用に関連する相互作用パラメーターを測定するように構成されている少なくとも1つのセンサーと、
(iii)少なくとも1つの処理装置であって、
(a)少なくとも1つのセンサーから測定値を受信するように構成され、
(b)少なくとも1つのセンサーの測定値において1つ以上の予め定められたパターンを検出するように構成され、且つ
(c)少なくとも1つのセンサーの測定値において前記1つ以上の予め定められたパターンの少なくとも1つを検出すると、前記挿入装置と撮像装置の少なくとも1つの動作を制御するように構成されている少なくとも1つの処理装置と
を含むシステムが提供される。
【0021】
このようなシステムの少なくとも1つの処理装置は更に、センサー測定値が所定の閾値を超えているか否かを判定するように構成されることができる。少なくとも1つの処理装置は更に、挿入パラメーターとセンサー測定値との実際の相関を決定するように構成されることができ、更に前記実際の相関を挿入パラメーターとセンサー測定値との予測される相関と比較するように構成されることができる。挿入パラメーターは、例えば、挿入深度又は挿入時間であることができる。少なくとも1つの処理装置は更に、前記予測される相関を決定するように構成されることができる。
【0022】
このようなシステムでは、少なくとも1つのセンサーの測定値において1つ以上の予め定められたパターンを検出すると、挿入装置と撮像装置の少なくとも1つの動作を制御することは、患者の体内の関心領域の撮像を開始することと、関心領域の連続的な撮像を一時停止(又は休止)することと、予め計画された軌道又は修正された軌道の少なくとも1つに沿って患者の体内への医療器具の挿入を継続することと、医療器具の挿入を停止することとの1つ以上を含むことができる。
【0023】
また、このようなシステムでは、センサーの測定値における1つ以上の予め定められたパターンは、測定されたパラメーターのレベル、勾配、ピーク又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを含むことができる。少なくとも1つのセンサーは、力センサー、音響センサー、及び/又は他のあらゆる好適なセンサーを含むことができる。
【0024】
1つのセンサーを使用する場合、1つのセンサーは挿入装置又は医療器具に配置されることができる。2つのセンサーを使用する場合、1つのセンサーが挿入装置に配置され、他のセンサーが医療器具に配置されることができ、又は両方が挿入装置又は医療器具に配置されることができる。3つ以上のセンサーを使用する場合、追加のセンサーは、システムの測定プリファレンスによって必要とされるように配置されることができる。
【0025】
本開示のシステムの代替的な実施によれば、医療器具の患者の体内への挿入を制御するためのシステムであって、
(i)医療器具を患者の体内に挿入するように構成されている挿入装置と、
(ii)患者の体内への挿入中に医療器具にかかる力を測定するように構成されている力センサーと、
(iii)処理装置であって、
(a)力センサーから力の測定値を受信するように構成され、
(b)挿入パラメーターと力センサーの測定値との実際の相関を決定するように構成され、
(c)前記実際の相関を挿入パラメーターと力センサーの測定値との予測される相関と比較するように構成され、且つ
(d)前記比較の結果に基づいて挿入装置の動作を制御するように構成されている処理装置と
を含むシステムが更に提供される。
【0026】
このようなシステムの少なくとも1つの処理装置は更に、前記予測される相関を決定するように構成されることができ、前記予測される相関は、患者の体内の関心領域の1つ以上の画像及び予め計画された器具挿入軌道に基づいて決定されることができる。このような場合、少なくとも1つの処理装置は更に、関心領域の1つ以上の画像を取得/受信するように構成されることができる。また、少なくとも1つの処理装置は更に、連続的な撮像の下で処置を行う場合に関心領域の撮像を開始するように且つ/又は関心領域の撮像を一時停止又は休止するように構成されることができる。少なくとも1つの処理装置は更に、前記予め計画された軌道を計算するように構成されることができる。
【0027】
このようなシステムのいずれにおいても、力センサーによって測定される力は、医療器具にかかる軸力と横力の1つ以上であることができる。前記挿入パラメーターと力の測定値との実際の相関を決定し、実際の相関を予測される相関と比較するためにこのようなシステムで使用される挿入パラメーターは、例えば、挿入深度又は挿入時間であることができる。
【0028】
上記システムのいずれにおいても、少なくとも1つの処理装置は更に、センサー測定値の1つ以上のグラフを挿入パラメーターの関数として生成するように構成されることができる。挿入パラメーターは、挿入深度であることができ、又は挿入時間であることができる。最後に、少なくとも1つの処理装置は更に、視覚、聴覚及び触覚フィードバックの1つ以上(例えば、アラート)を生成するように構成されることができる。
【0029】
更に他の実施は、医療器具の患者の体内への挿入を制御するための方法であって、
(i)前記医療器具を患者の体内に挿入することと、
(ii)前記医療器具と前記患者の身体組織との相互作用に関連する1つ以上の相互作用パラメーターを測定することと、
(iii)前記1つ以上のパラメーターの前記測定において1つ以上の予め定められたパターンを検出することと、
(iv)前記1つ以上の予め定められたパターンの少なくとも1つを検出すると、挿入装置と撮像装置の少なくとも1つの動作を制御することと
を含む方法を含む。
【0030】
このような方法では、前記測定において前記1つ以上の予め定められたパターンを検出すると、挿入装置と撮像装置の少なくとも1つの動作を制御するステップは、患者の体内の関心領域の撮像を開始することと、関心領域の連続的な撮像を一時停止(又は休止)することと、予め計画された軌道又は修正された軌道のいずれかに沿って患者の体内への医療器具の挿入を継続することと、医療器具の挿入を停止することとの1つ以上を含むことができる。
【0031】
場合によっては、このような方法は、このような検出の際にユーザーに患者の体内の関心領域の撮像を開始するように促すステップを含むことができる。
【0032】
少なくとも1つの処理装置がこのような方法で測定するように構成されている1つ以上のパラメーターは、前記身体組織によって前記医療器具にかかる力であることができる。
【0033】
代替的な実施は、医療器具の患者の体内への挿入を制御する方法であって、
(i)医療器具を患者の体内に挿入することと、
(ii)患者の体内への挿入中に医療器具にかかる力を測定することと、
(iii)挿入パラメーターと力の測定値との実際の相関を決定することと、
(iv)実際の相関を挿入パラメーターと力の測定値との予測される相関と比較することと、
(v)比較の結果に基づいて患者の体内への医療器具の挿入を制御することと
を含む方法を更に含み得る。
【0034】
この方法は、前記予測される相関を決定するステップを更に含むことができ、前記予測される相関は、患者の体内の関心領域の1つ以上の画像及び予め計画された軌道に基づくことができる。方法は、前記1つ以上の画像を取得/受信するステップを更に含むことができ、前記予め計画された軌道を決定するステップを更に含むことができる。
【0035】
また、このような方法は、前記実際の相関の前記予測される相関からのずれが所定のレベルを超えているか否かを判定するステップを更に含むことができる。ずれが所定のレベルを超えている場合、方法は、医療器具の挿入を停止するステップを更に含むことができ、医療器具の挿入を停止する際にアラートを提供するステップを更に含むことができる。ずれが所定のレベルを超えていない場合、方法は、患者の体内の関心領域の撮像を開始するステップを更に含むことができる。撮像は不連続(例えば、CTスキャン)であることができ、又は連続的(例えば、CT透視)であることができ、撮像を開始することは、既に一時停止された連続的な撮像の再開を意味することができる。方法は、前記開始された画像に基づいて医療器具の軌道を修正するステップを更に含むことができる。このような場合、方法は、前記開始された画像と前記修正された軌道に基づいて、挿入パラメーターと力の測定値との予測される相関を補正するステップを更に含むことができ、修正された予測される相関を記憶するステップを更に含むことができる。医療器具の軌道の修正に続いて、比較の結果に基づいて患者の体内への医療器具の挿入を制御することは、前記修正された軌道に沿って患者の体内に前記医療器具を挿入することを含むことができる。
【0036】
別の実施は、医療器具の患者の体内への挿入を制御する方法であって、
(i)予め計画された軌道に沿って患者の体内に医療器具を挿入することと、
(ii)患者の体内への挿入中に医療器具にかかる力を測定することと、
(iii)1つ以上の力の測定値が所定の閾値から外れているか否かを判定することと、
(iv)1つ以上の力の測定値が所定の閾値から外れていると判定された場合に、医療器具の挿入を停止することと
を含む方法を行う。
【0037】
このような方法は、1つ以上の力の測定値が所定の閾値から外れていると判定された場合にアラートを提供するステップを更に含むことができる。
【0038】
更に他の実施は、医療器具の患者の体内への挿入を監視するためのシステムであって、
(i)医療器具を患者の体内に挿入するように構成されている挿入装置と、
(ii)患者の体内への挿入中に医療器具にかかる力を測定するように構成されている力センサーと、
(iii)少なくとも1つの処理装置であって、
(a)力センサーから力の測定値を受信するように構成され、
(b)挿入パラメーターと力センサーの測定値との実際の相関を決定するように構成され、且つ
(c)実際の相関が挿入パラメーターと力センサーの測定値との予測される相関から外れているか否かを決定するように構成されている少なくとも1つの処理装置と
を含むシステムを含み得る。
【0039】
更に他の代替的な実施は、医療器具の患者の体内への挿入を監視する方法であって、
(i)患者の体内への挿入中に医療器具にかかる力を測定することと、
(ii)挿入パラメーターと患者の体内への挿入中に医療器具にかかる力との実際の相関を決定することと、
(iii)実際の相関を挿入パラメーターと力の測定値との予測される相関と比較することと、
(iv)実際の相関が予測される相関から外れているか否かを判定することと
を含む方法を含み得る。
【0040】
本出願に記載した方法の更に他の実施によれば、医療器具挿入処置中の術中撮像を少なくする方法であって、
(i)前記医療器具の挿入経路を計算することと、
(ii)前記挿入経路を用いて前記挿入処置中に前記医療器具が遭遇すると予測される力を確認することと、
(iii)前記挿入処置に対して予測される力プロファイルを生成することと、
(iv)前記医療器具が前記挿入経路に沿って挿入されるときに前記医療器具が遭遇する力を測定することと、
(v)前記遭遇する力を前記予測される力プロファイルから予想される力と比較することと、
(vi)前記挿入処置中に必要とされる画像の数が画像ベースのナビゲーションのみに依存する挿入処置に比べて少なくなるように、前記遭遇する力が前記予測される力プロファイルから予想される力から所定のレベルよりも大きく外れている場合に関心領域の1つ以上の画像を取得することと
を含む方法が提供される。
【0041】
上記方法のいずれも、力の測定値の1つ以上のグラフを挿入パラメーターの関数として生成するステップを更に含むことができる。挿入パラメーターは、例えば、挿入深度又は挿入時間であることができる。
【0042】
上記システム及び方法の実施は、他のシステム/方法の実施に関連して上記した特徴のいずれかを含む、本開示に記載したあらゆる特徴を更に含むことができる。
【0043】
本開示全体にわたって使用される実施例は、主に患者の身体への針の挿入のためのシステム及び方法に関するものであるが、これは単純化の理由のみによるものであり、本開示の範囲は、針の挿入に限定されるものではなく、針、ポート、導入器、カテーテル、カニューレ、手術器具、流体送達器具、又は他のあらゆるこのような器具などの診断及び/又は治療目的で患者の体内に挿入されるよう意図されたあらゆる器具の挿入を含むものと理解される。
【0044】
また、「ユーザー」、「医者」、「医師」、「臨床医」、「技術者」、「医療関係者」及び「医療スタッフ」という用語は、本開示全体にわたって入れ替え可能に使用され、それらは、行われる医療処置に参加している人を指すことができる。
【0045】
更に、本開示において使用される近位及び遠位という用語は、臨床技術において通常の意味を有し、すなわち、近位とは、装置又は物体を挿入又は使用する人又は機械に最も近く且つ患者から離れた装置又は物体の端部を指し、一方、遠位とは、患者に最も近く且つ装置又は物体を挿入又は使用する人又は機械から離れた装置又は物体の端部を指す。