特許第6872807号(P6872807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872807
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】光造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/364 20170101AFI20210510BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20210510BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20210510BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210510BHJP
【FI】
   B29C64/364
   B29C64/264
   B29C64/106
   B33Y30/00
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-17455(P2019-17455)
(22)【出願日】2019年2月1日
(65)【公開番号】特開2020-124825(P2020-124825A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2019年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145286
【氏名又は名称】株式会社写真化学
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】廣富 剛一
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−513130(JP,A)
【文献】 特開2017−185699(JP,A)
【文献】 特開2019−006050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0071978(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第108381907(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化層を上下方向に積層することにより立体的な造形物を製造する光造形装置であって、
液状の光硬化性材料を貯留する貯留槽と、
造形面を有する造形ステージと、
前記造形ステージを前記貯留槽内で上下方向に移動させる第1の駆動部と、
第1の内部空間を有するとともに底部開口を有するリコータと、
前記リコータを前記貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動させる第2の駆動部と、
第2の内部空間を有するとともに前記第2の内部空間に負圧を発生する負圧発生ユニットと、
前記リコータの前記第1の内部空間と前記負圧発生ユニットの前記第2の内部空間とを連通させる連通部材と、
前記造形ステージの前記造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料を露光することにより光硬化層を形成する露光部とを備え、
前記負圧発生ユニットは、
前記第2の内部空間を形成するとともに大気導入口および排気開口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に設けられ、前記排気開口に向かう気流を形成するファンとを含み、
前記ケーシングの前記大気導入口は、前記ファンよりも上流の位置に設けられ、前記ファンの回転時に前記ケーシング内の気体が前記排気開口から排出されるとともに前記ケーシングの前記第2の内部空間において前記大気導入口から前記排気開口へ向かう気流が発生することにより前記ケーシングの前記第2の内部空間において前記ファンの上流に負圧が発生し、前記ファンの回転速度の調整により前記負圧が−100PaG〜−280PaGの範囲内の値に調整可能である大きさを有する、光造形装置。
【請求項2】
光硬化層を上下方向に積層することにより立体的な造形物を製造する光造形装置であって、
液状の光硬化性材料を貯留する貯留槽と、
造形面を有する造形ステージと、
前記造形ステージを前記貯留槽内で上下方向に移動させる第1の駆動部と、
第1の内部空間を有するとともに底部開口を有するリコータと、
前記リコータを前記貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動させる第2の駆動部と、
第2の内部空間を有するとともに前記第2の内部空間に負圧を発生する負圧発生ユニットと、
前記リコータの前記第1の内部空間と前記負圧発生ユニットの前記第2の内部空間とを連通させる連通部材と、
前記造形ステージの前記造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料を露光することにより光硬化層を形成する露光部とを備え、
前記負圧発生ユニットは、
前記第2の内部空間を形成するとともに大気導入口および排気開口を有するケーシングと、
前記ケーシング内に設けられ、前記排気開口に向かう気流を形成するファンとを含み、
前記ケーシングの前記大気導入口は、前記ファンよりも上流の位置に設けられ、
前記負圧発生ユニットは、
前記ファンを含むファンユニットと、
通気開口を有する負圧チャンバとを含み、
前記ファンユニットは、前記ファンを取り囲みかつ吸気開口および前記排気開口を有するファンケースを含み、
前記ケーシングは、前記負圧チャンバと前記ファンケースとにより構成され、
前記第2の内部空間は、前記負圧チャンバの内部空間および前記ファンケースの内部空間により形成され、
前記ファンユニットと前記負圧チャンバとは、前記吸気開口が前記通気開口に対向するように、かつ、前記ファンケースと前記負圧チャンバとの間に前記第2の内部空間に連通する隙間が形成されるように、配置され、
前記ファンケースと前記負圧チャンバとの間の隙間が前記大気導入口である、光造形装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記排気開口を有する負圧チャンバを含み、
前記大気導入口は前記負圧チャンバに設けられた、請求項1記載の光造形装置。
【請求項4】
前記リコータの前記第1の内部空間の圧力と大気圧との差圧を検出する差圧計をさらに備えた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光造形装置。
【請求項5】
前記差圧計により検出された差圧に基づいて、前記リコータの前記第1の内部空間の吸引圧が予め定められた負の値に維持されるように前記ファンを制御する制御部をさらに備えた、請求項4記載の光造形装置。
【請求項6】
前記ファンは、互いに反対方向に回転する第1および第2の羽根を含む反転ファンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元の造形物を製造する光造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元の造形物を製造する技術として、光造形技術が知られている。光造形技術を用いた光造形装置では、例えば、液状の光硬化性樹脂組成物等の造形材料が容器内に貯留され、支持台が造形材料の液面の下方に沈められる。製造されるべき造形物の断面形状を描くように、容器の上方に配置された露光装置から光が造形材料の液面に照射される。光が照射された造形材料の部分が硬化し、光硬化層が形成される。その後、支持台が一定量(光硬化層の厚さに相当)下降する。この場合、造形材料の表面張力等により支持台の下降だけでは、光硬化層の上面が一層分の造形材料で均一に被覆されない。
【0003】
特許文献1記載の三次元物体の高速断面積層方法では、アプリケータにより造形材料が光硬化層の上面に塗布されるとともに平滑にされる。アプリケータは、内部空間を有するとともに、底面に開口部を有する。アプリケータの内部空間は、真空供給ラインおよび圧力調整器を通して真空ポンプにより吸引される。それにより、アプリケータの内部空間には部分的に造形材料が充填される。アプリケータの下端は、造形材料の液面のやや上方に位置する。アプリケータの下端と造形材料の液面との間の隙間を埋めるメニスカスが形成される。この状態でアプリケータが水平方向に掃引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−513130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された高速断面積層方法では、真空ポンプは、圧力調整器を通してアプリケータに接続されている。アプリケータ内に造形材料を保持するために必要な吸引圧は−100PaG〜−300PaG程度の小さな負圧である。これに対して、一般的に、真空ポンプが発生する圧力は、例えば−6KPaG〜−7KPaGと極めて大きい負圧である。そのため、圧力調整器により真空ポンプの大きな吸引圧を小さな負圧に調整する必要がある。圧力調整器は、アプリケータ内から吸引される空気に大気吸入部から吸入される大気を混合させることによりアプリケータ内の負圧を真空ポンプの吸引圧に比べて大幅に減少させる。
【0006】
しかしながら、圧力調整器の大気吸入部にごみまたは埃等の異物が付着すると、圧力調整器による吸引圧が変動する。そのため、アプリケータ内の吸引圧を安定に制御するためには、高価な圧力調整器を使用する必要がある。また、圧力調整器の大気吸入部への異物の付着による圧力変動を防止するためには、圧力調整器を頻繁に洗浄する必要がある。さらに、圧力調整器の大気吸入部が詰まると、圧力調整機能が失われ、アプリケータ内の真空吸引が進み、アプリケータ内の造形材料が圧力調整器に流入する。圧力調整器への造形材料の流入を防止するためには、電磁弁等の開放弁を設ける必要がある。そのため、真空ポンプおよび圧力調整器を用いた高速断面積層方法では、部品コストおよびメンテナンスコストが高くなる。なお、アプリケータは、リコータとも呼ばれる。
【0007】
本発明の目的は、吸引式リコータ内の吸引圧を低コストで容易かつ安定に制御することが可能な光造形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る光造形装置は、光硬化層を上下方向に積層することにより立体的な造形物を製造する光造形装置であって、液状の光硬化性材料を貯留する貯留槽と、造形面を有する造形ステージと、造形ステージを貯留槽内で上下方向に移動させる第1の駆動部と、第1の内部空間を有するとともに底部開口を有するリコータと、リコータを貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動させる第2の駆動部と、第2の内部空間を有するとともに第2の内部空間に負圧を発生する負圧発生ユニットと、リコータの第1の内部空間とケーシングの第2の内部空間とを連通させる連通部材と、造形ステージの造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料を露光することにより光硬化層を形成する露光部とを備え、負圧発生ユニットは、第2の内部空間を形成するとともに大気導入口および排気開口を有するケーシングと、ケーシング内に設けられ、排気開口に向かう気流を形成するファンとを含み、ケーシングの大気導入口は、ファンよりも上流の位置に設けられ、ファンの回転時にケーシング内の気体が排気開口から排出されるとともにケーシングの第2の内部空間において大気導入口から排気開口へ向かう気流が発生することによりケーシングの第2の内部空間においてファンの上流に負圧が発生し、ファンの回転速度の調整により負圧が−100PaG〜−280PaGの範囲内の値に調整可能である大きさを有する。なお、ここでいう上流とは、排気開口に向かう気流の流れを基準とする。
【0009】
その光造形装置においては、負圧発生ユニットによりリコータの第1の内部空間に負の吸引圧が発生する。それにより、リコータの第1の内部空間に底部開口から貯留槽内の光硬化性材料が吸引される。リコータは、第2の駆動部により貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動する。それにより、ステージの造形面または光硬化層の上面に光硬化性材料が塗布される。造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料が露光部により露光されることにより、造形面上または光硬化層上に新たな光硬化層が形成される。ステージが貯留槽内の光硬化性材料の液面から1層の厚さに相当する高さだけ下降された後、上記の動作が繰り返される。それにより、ステージの造形面上に光硬化層が上下方向に積層される。
【0010】
負圧発生ユニットにおいては、ファンが回転することによりケーシング内の気体が排気開口から排出される。同時に、ケーシングの大気導入口から大気が導入されるため、ケーシングの第2の内部空間において大気導入口から排気開口へ向かう気流が発生する。それにより、ケーシングの第2の内部空間においてファンの上流に負圧が発生する。ケーシングの第2の内部空間は、連通部材によりリコータの第1の内部空間に連通しているので、リコータの第2の内部空間に負の吸引圧が発生する。
【0011】
この場合、ケーシング内に大気が導入されつつケーシング内の気体がファンにより排出されるので、ケーシング内の負圧の値は小さい。そのため、圧力調整器を設けることなくリコータ内に小さな負の吸引圧を発生させることができる。それにより、圧力調整器の部品コストおよびメンテナンスコストが不要となる。また、負圧発生ユニットとリコータとの間に圧力変動を生じやすい圧力調整器が介在しないので、リコータ内の吸引圧の変動が生じにくい。さらに、ファンの回転速度を制御することによりリコータ内の吸引圧を容易に制御することができる。したがって、吸引式リコータ内の吸引圧を低コストで容易かつ安定に制御することが可能となる。
【0012】
(2)第2の発明に係る光造形装置は、光硬化層を上下方向に積層することにより立体的な造形物を製造する光造形装置であって、液状の光硬化性材料を貯留する貯留槽と、造形面を有する造形ステージと、造形ステージを貯留槽内で上下方向に移動させる第1の駆動部と、第1の内部空間を有するとともに底部開口を有するリコータと、リコータを貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動させる第2の駆動部と、第2の内部空間を有するとともに第2の内部空間に負圧を発生する負圧発生ユニットと、リコータの第1の内部空間と負圧発生ユニットの第2の内部空間とを連通させる連通部材と、造形ステージの造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料を露光することにより光硬化層を形成する露光部とを備え、負圧発生ユニットは、第2の内部空間を形成するとともに大気導入口および排気開口を有するケーシングと、ケーシング内に設けられ、排気開口に向かう気流を形成するファンとを含み、ケーシングの大気導入口は、ファンよりも上流の位置に設けられ、負圧発生ユニットは、ファンを含むファンユニットと、通気開口を有する負圧チャンバとを含み、ファンユニットは、ファンを取り囲みかつ吸気開口および排気開口を有するファンケースを含み、ケーシングは、負圧チャンバとファンケースとにより構成され、第2の内部空間は、負圧チャンバの内部空間およびファンケースの内部空間により形成され、ファンユニットと負圧チャンバとは、吸気開口が通気開口に対向するように、かつ、ファンケースと負圧チャンバとの間に第2の内部空間に連通する隙間が形成されるように、配置され、ファンケースと負圧チャンバとの間の隙間が大気導入口である
その光造形装置においては、負圧発生ユニットによりリコータの第1の内部空間に負の吸引圧が発生する。それにより、リコータの第1の内部空間に底部開口から貯留槽内の光硬化性材料が吸引される。リコータは、第2の駆動部により貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動する。それにより、ステージの造形面または光硬化層の上面に光硬化性材料が塗布される。造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料が露光部により露光されることにより、造形面上または光硬化層上に新たな光硬化層が形成される。ステージが貯留槽内の光硬化性材料の液面から1層の厚さに相当する高さだけ下降された後、上記の動作が繰り返される。それにより、ステージの造形面上に光硬化層が上下方向に積層される。
負圧発生ユニットにおいては、ファンが回転することによりケーシング内の気体が排気開口から排出される。同時に、ケーシングの大気導入口から大気が導入されるため、ケーシングの第2の内部空間において大気導入口から排気開口へ向かう気流が発生する。それにより、ケーシングの第2の内部空間においてファンの上流に負圧が発生する。ケーシングの第2の内部空間は、連通部材によりリコータの第1の内部空間に連通しているので、リコータの第2の内部空間に負の吸引圧が発生する。
この場合、ケーシング内に大気が導入されつつケーシング内の気体がファンにより排出されるので、ケーシング内の負圧の値は小さい。そのため、圧力調整器を設けることなくリコータ内に小さな負の吸引圧を発生させることができる。それにより、圧力調整器の部品コストおよびメンテナンスコストが不要となる。また、負圧発生ユニットとリコータとの間に圧力変動を生じやすい圧力調整器が介在しないので、リコータ内の吸引圧の変動が生じにくい。さらに、ファンの回転速度を制御することによりリコータ内の吸引圧を容易に制御することができる。したがって、吸引式リコータ内の吸引圧を低コストで容易かつ安定に制御することが可能となる。
この場合、ファンケースと負圧チャンバとの間に隙間が形成されるようにファンユニットを負圧チャンバに取り付けることにより、ケーシングを構成することができるとともに、隙間を大気導入口として形成することができる。したがって、負圧発生ユニットを容易に作製することが可能となる。
【0013】
この場合、ファンケースと負圧チャンバとの間に隙間が形成されるようにファンユニットを負圧チャンバに取り付けることにより、ケーシングを構成することができるとともに、隙間を大気導入口として形成することができる。したがって、負圧発生ユニットを容易に作製することが可能となる。
【0014】
(3)ケーシングは、排気開口を有する負圧チャンバを含み、大気導入口は負圧チャンバに設けられてもよい。
【0015】
この場合、負圧チャンバに大気導入口を形成することにより負圧発生ユニットを容易に作製することができる。
【0016】
(4)光造形装置は、リコータの第1の内部空間の圧力と大気圧との差圧を検出する差圧計をさらに備えてもよい。
【0017】
この場合、差圧計により検出される差圧に基づいてリコータの第1の内部空間の吸引圧を正確かつ容易にモニタすることができる。
【0018】
(5)光造形装置は、差圧計により検出された差圧に基づいて、リコータの第1の内部空間の吸引圧が予め定められた負の値に維持されるようにファンを制御する制御部をさらに備えてもよい。
【0019】
この場合、リコータの吸引圧の値を容易かつ正確に一定に維持することができる。それにより、リコータ内に正確に一定量の光硬化性材料をさらに安定に保持することができる。
【0020】
(6)ファンは、互いに反対方向に回転する第1および第2の羽根を含む反転ファンを含んでもよい。この場合、ファンの回転速度に対する流量の直線性が高く安定した気流が形成されるので、さらに安定した負圧を発生することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リコータ内の吸引圧を低コストで容易に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る光造形装置の構成を示す模式図である。
図2】リコータの構成の一例を示す模式的斜視図である。
図3】負圧発生ユニットの模式的斜視図である。
図4】負圧発生ユニットの模式的断面図である。
図5】負圧発生ユニットの他の第1の例を示す模式的断面図である。
図6】負圧発生ユニットの他の第2の例を示す模式的断面図である。
図7】負圧発生ユニットの他の第3の例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る光造形装置について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(1)光造形装置の全体の構成
図1は実施の形態に係る光造形装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、光造形装置100は、貯留槽1、造形ステージ2、リコータ3、チューブ4a,4bおよび負圧発生ユニット5を備える。貯留槽1内には、液状の光硬化性材料21が保持される。光硬化性材料21は、例えば、液状の光硬化性樹脂組成物である。貯留槽1内には、造形ステージ2が上下動可能に設けられる。造形ステージ2は、水平な造形面2aを有する。造形面2aは、貯留槽1内の光硬化性材料21中に沈められる。
【0025】
リコータ3は、内部空間S1および底部開口BOを有し、貯留槽1内の光硬化性材料21の液面に沿って水平方向に移動可能に設けられている。負圧発生ユニット5は、負圧チャンバ51およびファンユニット52を含み、負圧を発生する。負圧チャンバ51により発生される負圧は、例えば−100PaG〜−280PaG程度である。負圧チャンバ51により発生される最大圧力は、例えば−600PaG程度である。負圧および最大圧力は、後述する大気導入口AIの開口面積によっておよそ決まり、さらに、後述するファンの回転数によって微調整が可能である。
【0026】
リコータ3と負圧チャンバ51とはチューブ4aにより接続されている。チューブ4aは、リコータ3の内部空間S1と負圧チャンバ51の内部空間とを連通させる連通部材である。後述するように、負圧チャンバ51は、リコータ3の内部空間S1に大気圧に対して負の吸引圧を与える。それにより、リコータ3の内部空間S1に底部開口BOを通して光硬化性材料21が吸引され、リコータ3内に保持される。
【0027】
光造形装置100は、差圧計6、ステージ駆動部7、リコータ駆動部8および露光部9をさらに備える。差圧計6とリコータ3とはチューブ4bにより接続されている。差圧計6は、微小な圧力差を検出する微差圧計である。チューブ4bは、リコータ3の内部空間S1と差圧計6とを連通させる。差圧計6は、リコータ3の内部空間S1の吸引圧と大気圧との差圧を検出する。ステージ駆動部7は、造形ステージ2を上下方向に移動させる。リコータ駆動部8は、リコータ3を水平方向に移動させる。
【0028】
露光部9は、光源91および偏向装置92を含む。光源91は、例えばレーザ発振器を含み、光硬化性材料21の感光性波長領域の波長を有する光Lを出射する。偏向装置92は、例えば、ガルバノミラーを含み、光源91により出射された光Lを反射するとともに、造形ステージ2の造形面2a上で光Lを走査させる。
【0029】
制御部10は、例えばCPU(中央演算処理装置)および記憶装置により構成される。記憶装置には、製造されるべき造形物の三次元形状を示す形状データが記憶される。制御部10は、光源91を制御するとともに、形状データに基づいてステージ駆動部7、リコータ駆動部8および偏向装置92を制御する。また、制御部10は、差圧計6により検出された差圧に基づいてファンユニット52を制御する。
【0030】
造形動作時には、造形面2aが貯留槽1内の光硬化性材料の液面より下方に下降する。光硬化性材料21は比較的高い粘性を有するので、短時間で造形面2aの上面の全体に拡がりにくい。そこで、光硬化性材料21を保持するリコータ3が光硬化性材料21の液面から僅かに上方に離間した状態で水平方向に移動する。この場合、リコータ3の下端は、貯留槽1内の光硬化性材料21の液面から例えば50μm〜200μm上方の位置に調整される。この状態で、リコータ3の下端と光硬化性材料21の液面との間にメニスカスが形成される。それにより、リコータ3の内部空間S1が閉空間となる。
【0031】
光硬化性材料21を保持するリコータ3が水平方向に移動することにより、造形面2aに光硬化層の1層に相当する厚みを有する光硬化性材料21が塗布される。この状態で、造形面2a上の光硬化性材料21に光Lが照射されることにより光硬化性材料21が硬化し、所望のパターンを有する光硬化層22が形成される。1つの光硬化層22が形成された後、造形ステージ2が光硬化層22の1層に相当する距離だけ下降した後、リコータ3の水平移動により光硬化層22の上面に光硬化性材料21が塗布され、光硬化層22上の光硬化性材料21に光Lが照射される。造形ステージ2の下降、リコータ3の水平移動および露光部9による露光が繰り返されることにより、複数の光硬化層22が積層される。その結果、所望の立体形状を有する三次元の造形物が製造される。
【0032】
(2)リコータ3の構成
図2はリコータ3の構成の一例を示す模式的斜視図である。図2に示すように、リコータ3は、長方形状のケース31を含む。ケース31は、図1の内部空間S1および底部開口BO(図1参照)を有する。ケース31の上面には、分岐ジョイント管34が取り付けられている。分岐ジョイント管34は、第1の分岐部34aおよび第2の分岐部34bを有する。第1の分岐部34aには図1のチューブ4aの一端が接続され、第2の分岐部34bにはチューブ4bの一端が接続される。ケース31の長手方向の下端32は、斜め下方に向かって広がるように形成されている。
【0033】
(3)負圧発生ユニット5の構成
図3は負圧発生ユニット5の模式的斜視図である。図4は負圧発生ユニット5の模式的断面図である。図3に示すように、負圧発生ユニット5は、負圧チャンバ51およびファンユニット52を含む。図3では、ファンユニット52の形状が簡略化されている。図4において、点線の矢印は空気の流れを示している。以下の図5図7においても同様である。
【0034】
負圧チャンバ51は、円筒状の周壁51a、底板51bおよび上板51cにより構成される。ファンユニット52は、負圧チャンバ51の上板51c上に取り付けられている。負圧チャンバ51の上板51cの上面とファンユニット52の下端との間には、所定の厚みを有する複数の環状のスペーサ56が取り付けられている。それにより、ファンユニット52の下端と負圧チャンバ51の上面との間に隙間GPが形成されている。
【0035】
図4に示すように、負圧チャンバ51は内部空間S2aを有する。負圧チャンバ51の上板51cの中央部には通気開口PSが形成されている。ファンユニット52は、2つのファン53a,53bおよびファンケース55を含む。2つのファン53a,53bの各々は、ファンモータおよび複数の羽根により構成される。ファンケース55は、円柱状の内部空間S2bを有するとともに、円形の吸気開口INおよび円形の排気開口EXを有する。ファンケース55内に2つのファン53a,53bが収容されている。本実施の形態では、ファンユニット52は、2つのファン53a,53bが互いに逆方向に回転する二重反転ファンユニットである。
【0036】
ファンユニット52は、負圧チャンバ51の通気開口PSとファンケース55の吸気開口INとが重なるように配置されている。また、ファンケース55の下端フランジと負圧チャンバ51の上板51cとが複数のスペーサ56を挟んでボルト61により固定されている。ファンケース55の下端と負圧チャンバ51の上面との間の隙間GPは、内部空間S2a,S2bに連通している。
【0037】
また、負圧チャンバ51の上板51cには、通気開口PSから離間した位置に、吸入孔SCが形成されている。吸入孔SCには、ジョイント管57が取り付けられている。ジョイント管57には、図1のチューブ4aの他端が接続される。
【0038】
本実施の形態では、負圧チャンバ51およびファンケース55がケーシング50を形成する。ケーシング50の内部空間S2a,S2bは、通気開口PSおよび吸気開口INを通して一体化している。ファンケース55と負圧チャンバ51との間の隙間GPは、ファン53a,53bの上流に設けられた大気導入口AIである。本実施の形態では、隙間GPの開口面積は排気開口EXの面積よりも大きい。
【0039】
(4)負圧発生ユニット5の動作
図1の制御部10の制御によりファンユニット52のファン53a,53bが回転すると、ファンケース55の吸気開口INから排気開口EXに向かう気流が発生し、負圧チャンバ51内の気体が排気開口EXから排出される。同時に、隙間GPからファン53aの上流に大気が導入され、負圧チャンバ51の内部空間S2aおよびファンケース55の内部空間S2bに隙間GPから排気開口EXへ向かう気流が発生する。ファン53a,53bの回転による隙間GPおよび排気開口EXを通る気流において隙間GPでの流路抵抗が排気開口EXでの流路抵抗よりも大きくなるように、隙間GPの開口面積または形状等が設定されている。そのため、負圧チャンバ51の内部空間S2aおよびファンケース55の内部空間S2bにおいてファン53aの上流に負圧が発生する。この場合、内部空間S2a,S2b内に大気が導入されつつ負圧チャンバ51内の気体がファン53a,53bにより排出されるので、負圧の値は小さい。
【0040】
負圧チャンバ51の内部空間S2aおよびファンケース55の内部空間S2bは、チューブ4aによりリコータ3の内部空間S1に連通しているので、リコータ3の内部空間S1に負の吸引圧が発生する。その結果、貯留槽1内の光硬化性材料21がリコータ3の底部開口BOを通して内部空間S1に吸引され、リコータ3内の下部に充填される。リコータ3の内部空間S1の上部は負圧発生ユニット5により負の吸引圧に維持される。それにより、リコータ3内に一定量の光硬化性材料21が保持される。
【0041】
一方、負圧発生ユニット5におけるファンケース55と負圧チャンバ51の上面との間に隙間GPがない場合には、ファン53a,53bにより負圧チャンバ51の内部空間S2aから排出される空気の量が不足し、ファンユニット52の吸気開口INで乱気流が発生する。それにより、リコータ3内の負の吸引圧が不安定になる。
【0042】
これに対して、本実施の形態の負圧発生ユニット5では、隙間GPからファンケース55内を経由して排気開口EXに至る気流が常時形成されるので、負圧チャンバ51内の空気の不足による乱気流の発生が防止される。それにより、リコータ3内の負の吸引圧が安定に維持される。
【0043】
リコータ3の内部空間S1の上部は一定の負の吸引圧に維持される。それにより、リコータ3内に一定量の光硬化性材料21が保持される。負圧チャンバ51の内部空間S2aの負圧の値は、ファン53a,53bの回転速度(単位時間当たりの回転数)により変化する。そのため、制御部10は、差圧計6により検出された差圧に基づいてファン53a,53bの回転速度を制御することにより、リコータ3内の負の吸引圧の値を制御することができる。本実施の形態では、制御部10は、差圧計6により検出される差圧が所定の値になるようにファン53a,53bの回転速度をフィードバック制御する。具体的には、制御部10は、ファン53a,53bに与える駆動信号(例えば、デューティ比等)を変化させることによりファン53a,53bの回転速度を容易に制御することができる。
【0044】
(5)実施例
本発明者は、実施例として、図3および図4の負圧発生ユニット5を作製し、性能の評価を行った。ファンユニット52の吸気開口INおよび排気開口EXの直径は40mmである。負圧チャンバ51の上面とファンケース55の下端との間の隙間GPの高さは2mmである。この場合、吸気開口INおよび排気開口EXの面積は、1256mmであり、隙間GPの面積は約250mmである。負圧チャンバ51の内部空間S2aの直径は125mmであり、負圧チャンバ51の内部空間S2aの高さは80mmである。
【0045】
上記の負圧発生ユニット5を用いて図1の光造形装置100を作製し、リコータ3内の吸引圧の変化を測定した。その結果、光造形装置100の運転によるリコータ3内の吸引圧の変化は8か月間で10PaG以下であり、8か月間メンテナンスが不要であった。
【0046】
なお、上記の負圧発生ユニット5の各部の寸法は一例であり、負圧発生ユニット5の各部の寸法は上記の例に限定されない。
【0047】
(6)実施の形態の効果
リコータ3内の吸引圧の最適な値は、例えば、−100PaG〜−280PaGの範囲内である。一方、本実施の形態の負圧発生ユニット5により発生される最大圧力は、例えば−600PaGであり、真空ポンプにより発生される負の圧力(例えば、−6.6KPaG)の10分の1以下である。また、制御部10がファン53a,53bの回転速度を制御することにより、負圧発生ユニット5により発生される負圧の値を容易に−100PaG〜−280PaGの範囲内の値に調整することができる。このように、本実施の形態の負圧発生ユニット5により発生される負圧は、リコータ3内の最適な吸引圧とほぼ等しいため、圧力調整器が不要となる。そのめた、圧力調整器の部品コストおよびメンテナンスコストが不要となる。
【0048】
リコータ3内の負の吸引圧が変化すると、リコータ3内に保持される光硬化性材料21の量が変化する。この場合、光硬化層22上に塗布される光硬化性材料21の厚みが一定とならない。それにより、製造される造形物の仕上がり精度が低くなる。本実施の形態の負圧発生ユニット5では、圧力調整器の大気吸入部のように微細な流路を設ける必要がないため、微細な流路にごみまたは埃等の異物が付着することによる吸引圧の変動が生じにくい。また、ファン53a,53bの回転速度を制御することによりリコータ3内の吸引圧を容易に一定の値に制御することができる。したがって、外部環境に影響されることなく、リコータ3内の吸引圧を低コストで容易かつ安定に制御することが可能となる。それにより、リコータ3内に保持される光硬化性材料21の量を一定に維持することができるので、光硬化層22上に塗布される光硬化性材料21の厚みを一定にすることができる。その結果、高い精度を有する造形物を長期間にわたって低コストで製造することが可能となる。
【0049】
また、制御部10が差圧計6により検出される差圧に基づいてリコータ3内の吸引圧を正確かつ容易にモニタすることができる。それにより、制御部10がファン53a,53bの回転速度をフィードバック制御することができる。したがって、リコータ3内の吸引圧を正確に一定の値に制御することができる。その結果、リコータ3内に正確に一定量の光硬化性材料を保持することができる。
【0050】
また、造形動作中に制御部10がリコータ3の内部空間S1の吸引圧をモニタすることができるので、何らかの不具合によりリコータ3内の吸引圧が所定の範囲(例えば、−80PaG〜−300PaG)から外れた場合に、制御部10がファン53a,53bを停止させるとともに造形動作を中断することができる。ファン53a,53bが停止すると、隙間GPおよび排気開口EXから大気が負圧チャンバ51内に導入されるため、負圧チャンバ51の内部空間S2aの負圧が瞬時に大気圧となる。このように、ファン53a,53bが開放弁として機能する。したがって、電磁弁等の開放弁を設けることなく、リコータ3内の光硬化性材料21がチューブ4aを通して負圧チャンバ51内に流入することを防止することができる。
【0051】
さらに、大きな面積を有する光硬化層22上に光硬化性材料21を塗布する場合には、制御部10がファン53a,53bの回転速度を増加させることにより、リコータ3内への光硬化性材料21の吸引速度を上げることができる。それにより、光硬化層22が大きな面積を有する場合でも、リコータ3内の光硬化性材料21が不足することがなく、光硬化層22上に光硬化性材料21を均一に塗布することができる。
【0052】
また、リコータ3の水平移動の間、貯留槽1内の光硬化性材料21とリコータ3内の光硬化性材料21とが連続しているので、光硬化性材料21の液面の泡がリコータ3内に吸引されない。それにより、造形物に泡が含まれることを防止することができる。
【0053】
さらに、リコータ3内の吸引圧の適切な値が負圧発生ユニット5において発生される負圧の値とほぼ等しいので、リコータ3内の吸引圧が設定値から変動した場合に、制御部10がファン53a,53bの回転速度を調整することによりリコータ3内の吸引圧が瞬時に設定値に復帰する。このように、設定値への吸引圧の復帰応答性が高いため、リコータ3の形状および容積の自由度が大きい。それにより、リコータ3の塗布性能を容易に改善することができる。
【0054】
また、負圧発生ユニット5のファンユニット52として二重反転ファンユニットが用いられた場合、ファンの回転速度に対する流量の直線性が高く安定した気流が形成されるので、さらに安定した負圧を発生することが可能となる。
【0055】
(7)他の実施の形態
(7−1)
図5は負圧発生ユニット5の他の第1の例を示す模式的断面図である。図5の負圧発生ユニット5では、負圧チャンバ51の上面とファンケース55の下端との間に隙間が設けられていない。負圧チャンバ51の周壁51aに一または複数の大気導入口AIが形成されている。本例では、ファンケース55および負圧チャンバ51がケーシング50を構成する。
【0056】
本例においても、ファン53aの上流においてケーシング50に大気導入口AIが設けられている。それにより、造形動作時には、ファン53a,53bが回転することにより負圧チャンバ51内の空気が排気開口EXから排出されるとともに、大気導入口AIから負圧チャンバ51の内部空間S2a,S2bを経由して排気開口EXに至る気流が発生する。それにより、負圧チャンバ51内およびファンケース55内のファン53aの上流の領域に負圧が発生する。
【0057】
(7−2)
図6は負圧発生ユニット5の他の第2の例を示す模式的断面図である。図6の負圧発生ユニット5においても、負圧チャンバ51の上面とファンケース55の下端との間に隙間が設けられていない。隙間の代わりに、負圧チャンバ51の底板51bの中央部に通気開口PSおよび排気開口EXと対向するように大気導入口AIが形成されている。負圧チャンバ51の底板51bの下面には複数の脚部58が設けられている。本例においても、ファンケース55および負圧チャンバ51がケーシング50を構成する。
【0058】
本例では、大気導入口AIがファン53aの上流でかつ排気開口EXと対向する位置に設けられているので、負圧チャンバ51の内部空間S2aの下端から排気開口EXに至る気流が効率よく形成される。それにより、負圧チャンバ51内およびファンケース55内のファン53aの上流の領域に効率よく負圧を発生することができる。
【0059】
(7−3)
図7は負圧発生ユニット5の他の第3の例を示す模式的断面図である。図7の負圧発生ユニット5では、負圧チャンバ51の上板51cの中央部に排気開口EXが形成されている。排気開口EXには、ファンユニット52aが設けられている。ファンユニット52aは、ファンケース55aおよび1つのファン53aを含む。本例では、負圧チャンバ51がケーシング50である。
【0060】
造形動作時には、ファン53aが回転することにより負圧チャンバ51内の空気が排気開口EXから排出されるとともに、大気導入口AIから負圧チャンバ51の内部空間S2を経由して排気開口EXに至る気流が発生する。それにより、負圧チャンバ51内におけるファン53aの上流の領域に負圧が発生する。
【0061】
(7−4)
図1図4の実施の形態では、ファンユニット52と負圧チャンバ51との間にスペーサ56を設けることにより隙間GPが形成されているが、他の構造により隙間GPが形成されてもよい。例えば、ファンユニット52と負圧チャンバ51との間に隙間GPが形成されるようにファンケース55が負圧チャンバ51にボルト等の固定部材により固定されてもよい。
【0062】
(7−5)
図1図7の実施の形態では、負圧チャンバ51が円筒形状を有するが、負圧チャンバ51が長方形状等の他の形状に形成されてもよい。また、大気導入口AIの位置および数は、上記実施の形態における位置および数に限定されない。1または複数のファンの上流におけるケーシング50の任意の位置に任意の数の大気導入口AIが設けられてもよい。また、隙間GP、大気導入口AIおよび排気開口EXの形状は、上記実施の形態における形状に限定されず、任意の形状を有する隙間GP、大気導入口AIおよび排気開口EXが設けられてもよい。
【0063】
(7−6)
図1図6の実施の形態では、ファンユニット52として二重反転ファンユニットが用いられるが、図1図6の実施の形態において二重反転ファンユニットの代わりに図7の例と同様に1つのファン53aを有するファンユニット52aが用いられてもよい。
【0064】
(7−7)
図1の偏向装置92はガルバノミラーに限定されず、電磁ミラー等の他の可動ミラーにより構成されてもよい。あるいは、偏向装置92は、NC(Numerically Controlled)テーブルにより光の照射位置を制御可能な複数のミラーまたは光ファイバ等の光学素子により構成されてもよい。あるいは、偏向装置92の代わりに、所望の透光パターンが形成されたマスク部材が用いられてもよい。この場合、光源91から非収束光等の面状の光がマスク部材に照射されることにより、一括方式の露光が行われる。
(8)参考形態
(8−1)本参考形態に係る光造形装置は、光硬化層を上下方向に積層することにより立体的な造形物を製造する光造形装置であって、液状の光硬化性材料を貯留する貯留槽と、造形面を有する造形ステージと、造形ステージを貯留槽内で上下方向に移動させる第1の駆動部と、第1の内部空間を有するとともに底部開口を有するリコータと、リコータを貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動させる第2の駆動部と、第2の内部空間を有するとともに第2の内部空間に負圧を発生する負圧発生ユニットと、リコータの第1の内部空間とケーシングの第2の内部空間とを連通させる連通部材と、造形ステージの造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料を露光することにより光硬化層を形成する露光部とを備え、負圧発生ユニットは、第2の内部空間を形成するとともに大気導入口および排気開口を有するケーシングと、ケーシング内に設けられ、排気開口に向かう気流を形成するファンとを含み、ケーシングの大気導入口は、ファンよりも上流の位置に設けられる。なお、ここでいう上流とは、排気開口に向かう気流の流れを基準とする。
その光造形装置においては、負圧発生ユニットによりリコータの第1の内部空間に負の吸引圧が発生する。それにより、リコータの第1の内部空間に底部開口から貯留槽内の光硬化性材料が吸引される。リコータは、第2の駆動部により貯留槽内の光硬化性材料の液面に沿って移動する。それにより、ステージの造形面または光硬化層の上面に光硬化性材料が塗布される。造形面上または光硬化層の上面上の光硬化性材料が露光部により露光されることにより、造形面上または光硬化層上に新たな光硬化層が形成される。ステージが貯留槽内の光硬化性材料の液面から1層の厚さに相当する高さだけ下降された後、上記の動作が繰り返される。それにより、ステージの造形面上に光硬化層が上下方向に積層される。
負圧発生ユニットにおいては、ファンが回転することによりケーシング内の気体が排気開口から排出される。同時に、ケーシングの大気導入口から大気が導入されるため、ケーシングの第2の内部空間において大気導入口から排気開口へ向かう気流が発生する。それにより、ケーシングの第2の内部空間においてファンの上流に負圧が発生する。ケーシングの第2の内部空間は、連通部材によりリコータの第1の内部空間に連通しているので、リコータの第2の内部空間に負の吸引圧が発生する。
この場合、ケーシング内に大気が導入されつつケーシング内の気体がファンにより排出されるので、ケーシング内の負圧の値は小さい。そのため、圧力調整器を設けることなくリコータ内に小さな負の吸引圧を発生させることができる。それにより、圧力調整器の部品コストおよびメンテナンスコストが不要となる。また、負圧発生ユニットとリコータとの間に圧力変動を生じやすい圧力調整器が介在しないので、リコータ内の吸引圧の変動が生じにくい。さらに、ファンの回転速度を制御することによりリコータ内の吸引圧を容易に制御することができる。したがって、吸引式リコータ内の吸引圧を低コストで容易かつ安定に制御することが可能となる。
(8−2)負圧発生ユニットは、ファンを含むファンユニットと、通気開口を有する負圧チャンバとを含み、ファンユニットは、ファンを取り囲みかつ吸気開口および排気開口を有するファンケースを含み、ケーシングは、負圧チャンバとファンケースとにより構成され、第2の内部空間は、負圧チャンバの内部空間およびファンケースの内部空間により形成され、ファンユニットと負圧チャンバとは、吸気開口が通気開口に対向するように、かつ、ファンケースと負圧チャンバとの間に第2の内部空間に連通する隙間が形成されるように、配置され、ファンケースと負圧チャンバとの間の隙間が大気導入口であってもよい。
この場合、ファンケースと負圧チャンバとの間に隙間が形成されるようにファンユニットを負圧チャンバに取り付けることにより、ケーシングを構成することができるとともに、隙間を大気導入口として形成することができる。したがって、負圧発生ユニットを容易に作製することが可能となる。
(8−3)ケーシングは、排気開口を有する負圧チャンバを含み、大気導入口は負圧チャンバに設けられてもよい。
この場合、負圧チャンバに大気導入口を形成することにより負圧発生ユニットを容易に作製することができる。
(8−4)光造形装置は、リコータの第1の内部空間の圧力と大気圧との差圧を検出する差圧計をさらに備えてもよい。
この場合、差圧計により検出される差圧に基づいてリコータの第1の内部空間の吸引圧を正確かつ容易にモニタすることができる。
(8−5)光造形装置は、差圧計により検出された差圧に基づいて、リコータの第1の内部空間の吸引圧が予め定められた負の値に維持されるようにファンを制御する制御部をさらに備えてもよい。
この場合、リコータの吸引圧の値を容易かつ正確に一定に維持することができる。それにより、リコータ内に正確に一定量の光硬化性材料をさらに安定に保持することができる。
(8−6)ファンは、互いに反対方向に回転する第1および第2の羽根を含む反転ファンを含んでもよい。この場合、ファンの回転速度に対する流量の直線性が高く安定した気流が形成されるので、さらに安定した負圧を発生することが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1…貯留槽,2…造形ステージ,2a…造形面,3…リコータ,4a,4b…チューブ,5…負圧発生ユニット,6…差圧計,7…ステージ駆動部,8…リコータ駆動部,9…露光部,10…制御部,21…光硬化性材料,22…光硬化層,31…ケース,32…下端,34…分岐ジョイント管,34a…第1の分岐部,34b…第2の分岐部,50…ケーシング,51…負圧チャンバ,51a…周壁,51b…底板,51c…上板,52,52a…ファンユニット,53a,53b…ファン,55,55a…ファンケース,56…スペーサ,57…ジョイント管,59,S1,S2,S2a,S2b…内部空間,60…脚部,61…ボルト,91…光源,92…偏向装置,100…光造形装置,AI…大気導入口,BO…底部開口,EX…排気開口,GP…隙間,IN…吸気開口,L…光,PS…通気開口,SC…吸入孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7