特許第6872812号(P6872812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872812
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】水中太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02S 10/40 20140101AFI20210510BHJP
   H02S 40/10 20140101ALI20210510BHJP
   H02S 20/10 20140101ALI20210510BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20210510BHJP
   B63B 35/38 20060101ALI20210510BHJP
   B63B 59/04 20060101ALI20210510BHJP
   E02B 1/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H02S10/40
   H02S40/10
   H02S20/10 Z
   B63B35/00 T
   B63B35/38 B
   B63B59/04 Z
   E02B1/00 301Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-163124(P2019-163124)
(22)【出願日】2019年9月6日
(65)【公開番号】特開2021-44870(P2021-44870A)
(43)【公開日】2021年3月18日
【審査請求日】2020年3月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年6月28日に、「工学部 工学研究科 工学研究所 研究室紹介 研究施設紹介」(2019年6月28日,第14頁,神奈川大学工学研究所)にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】由井 明紀
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0168235(US,A1)
【文献】 特開2010−219495(JP,A)
【文献】 特開2001−267615(JP,A)
【文献】 特開2017−044099(JP,A)
【文献】 特開2013−026243(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155499(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第109251457(CN,A)
【文献】 G.M. Tina et al.,"Optical and thermal behavior of submerged photovoltaic solar panel: SP2",Energy,2012年,Vol.39,pp.17-26
【文献】 Gregory G. Hahn Jr. et al.,"Assessing Solar Power for Globally Migrating Marine and Submarine Systems",IEEE Journal of Oceanic Engineering,2019年 7月,Vol.44,pp.693-706
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02 − 31/078
H01L 31/18 − 31/20
H01L 51/42 − 51/48
H02S 10/00 − 10/40
H02S 30/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルを水面下に設置した水中太陽光発電システムであって、
前記太陽光発電パネルは、ロータス効果又はハス効果を発揮する微細加工をパネル表面に施して水中生物又は水中植物の付着を抑制する付着抑制処理が施されていることを特徴とする水中太陽光発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水中太陽光発電システムにおいて、
前記水面は、海水面であることを特徴とする水中太陽光発電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水中太陽光発電システムにおいて、
前記太陽光発電パネルは、前記水面から1m以内の水中に設置されることを特徴とする水中太陽光発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水中太陽光発電システムにおいて、
前記太陽光発電パネルは、前記水面から30cm以内の水中に設置されることを特徴とする水中太陽光発電システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水中太陽光発電システムにおいて、
水面の高さが変動しても水面下に前記太陽光発電パネルを維持する水面下維持手段を有することを特徴とする水中太陽光発電システム。
【請求項6】
請求項5に記載の水中太陽光発電システムにおいて、
前記水面下維持手段は、水面に浮かぶ浮体と、前記浮体に前記太陽光発電パネルを連結する連結部材とから構成されることを特徴とする水中太陽光発電システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模な大きな太陽光発電システムを構築するためには、太陽光発電パネルを設置するための広大な土地を確保することが課題となっていた。この課題に対応するため、近年、海、湖、沼、池、川、貯水池などの水面を太陽光発電パネルの設置スペースとして活用する水上太陽光発電システムが提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、水面に浮かぶ太陽電池パネル(太陽光発電パネル)を備えた浮遊式水上太陽光発電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−7874号公報
【特許文献2】特開2011−238890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、水面を太陽光発電パネルの設置スペースとして活用する従来の水上太陽光発電システムは、太陽光発電パネルを水面上に配置するものである。そのため、パネル表面上に塵や埃等の異物が付着したり、海水が乾燥してパネル表面上に塩分が堆積したりすることによる発電効率の低下が問題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、太陽光発電パネルを水面下に設置したことを特徴とする水中太陽光発電システムを提供するものである。
本発明によれば、太陽光発電パネルが水面下(海、湖、沼、池、川などの水中)に設置されるため、パネル表面が常に水に覆われた状態となる。そのため、太陽光発電パネルが水面上に設置される場合に生じていた塵や埃などの異物の付着や海水の塩分堆積が抑制される。特に、パネル表面に接する水に流れが生じる場合には、パネル表面の洗浄効果が得られ、異物付着や塩分堆積の抑制効果が高い。
ここで、本発明は、太陽光発電パネルが水面下に設置されるため、水面での太陽光の反射、水中での太陽光の減衰などにより、太陽光発電パネルを水面上に設置する場合よりも、太陽光の届く光量が少ない。しかしながら、水面上に設置される太陽光発電パネルは、上述のとおり、パネル表面への異物の付着や塩分堆積により発電効率が低下するのに対し、本発明では、このような発電効率の低下が抑制される。したがって、長期的使用の観点で見れば、本発明に係る水中太陽光発電システムは、水面上に太陽光発電パネルを設置するシステムと比べて、発電効率が劣るようなことはない。
特に、水面下であっても、水面に近い水中に太陽光発電パネルを設置する場合には、本発明者らの実験により、水中での太陽光の減衰はほとんど影響がないことに加え、水中における太陽光発電パネルの冷却効果は水面上の太陽光発電パネルに比べて高い。そのため、長期的使用の観点で見たとき、本発明に係る水中太陽光発電システムは、水面上に太陽光発電パネルを設置するシステムと比べて、むしろ発電効率において有利となり得る。特に、赤道付近の海上(洋上)などの場所であれば、水面での太陽光の反射率を抑えることができるので、高い発電効率を実現できる。
【0006】
なお、本明細書において、「水面」あるいは「水中」という用語における「水」とは、淡水に限らず海水も含み、主として水を主成分とする液体を意味するが、特定の液体に制限されるものではなく、あらゆる液体を含む「液体」と同義である。すなわち、本発明は、あらゆる液体の液面下に太陽光発電パネルを設置するものを含む。
【0007】
また、本発明は、前記水中太陽光発電システムにおいて、前記水面は、海水面であることを特徴とする。
本発明によれば、広大な土地を確保できない場合でも、広大な海水面を活用して、大規模な大きな太陽光発電システムを構築することができる。
【0008】
また、本発明は、前記水中太陽光発電システムにおいて、前記太陽光発電パネルは、前記水面から1m以内の水中に設置されることを特徴とする。
高い発電効率を実現するうえでは、水中での太陽光の減衰を抑制するために、なるべく水面に近い水中に太陽光発電パネルを設置するのが望ましい。そして、水面から1m以内であれば、比較的透明度の高い水中において、十分な発電効率を実現することが可能である。
【0009】
また、本発明は、前記水中太陽光発電システムにおいて、前記太陽光発電パネルは、前記水面から30cm以内の水中に設置されることを特徴とする。
水面から30cm以内(より好ましくは20cm以内)であれば、幅広い水中環境下において、十分な発電効率を実現することが可能である。
【0010】
また、本発明は、前記水中太陽光発電システムにおいて、水面の高さが変動しても水面下に前記太陽光発電パネルを維持する水面下維持手段を有することを特徴とする。
上述したとおり、高い発電効率を実現するうえでは、水中での太陽光の減衰を抑制するために、なるべく水面に近い水中に太陽光発電パネルを設置するのが望ましい。しかしながら、海、湖、貯水池などの水面の高さは大きく変動しやすいため、太陽光発電パネルの位置(高さ)が水面の高さ変動によらずに一定である構成では、太陽光発電パネルが水面上に長期間露出してしまうおそれがある。このような長期間の露出が起きると、その露出中に付着する異物や堆積物がパネル表面上に強固に付着してしまい、その後に太陽光発電パネルが水中に戻っても、その異物や堆積物を水によって除去できず、発電効率を回復させることが困難となるという問題が生じる。
本発明によれば、水面下維持手段により、水面の高さ変動が生じても太陽光発電パネルを水面下に維持できるので、太陽光発電パネルが水面上に長期間露出してしまうのを避けることができ、上述の問題を回避できる。
【0011】
また、本発明は、前記水中太陽光発電システムにおいて、前記水面下維持手段は、水面に浮かぶ浮体と、前記浮体に前記太陽光発電パネルを連結する連結部材とから構成されることを特徴とする。
本発明によれば、浮体の浮力と太陽光発電パネルの重量とのバランス及び連結部材の長さ等を適切に調整することで、簡易な構成で、太陽光発電パネルを水面近くの水中に安定して維持することができる。なお、太陽光発電パネルの重量が不足するような場合には、太陽光発電パネルに錘部材を連結してもよい。このような錘部材を利用すれば、太陽光発電パネルの種類等に関わりなく、太陽光発電パネルを水面近くの水中に安定して維持することができる。
【0012】
また、本発明は、前記水中太陽光発電システムにおいて、前記太陽光発電パネルは、水中生物又は水中植物の付着を抑制する付着抑制処理が施されていることを特徴とする。
本発明によれば、水中に設置される太陽光発電パネルに水中生物又は水中植物が付着することが抑制されるので、水中生物又は水中植物の付着による発電効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、太陽光発電パネルに付着する塵や埃等の異物や堆積物による発電効率の低下が抑制された太陽光発電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における水中太陽光発電システムの概略構成を示す説明図。
図2】同水中太陽光発電システムの太陽光発電パネル及び浮体を模式的に示す斜視図。
図3】太陽光発電パネルを設置する水深と太陽光発電パネルの発電量(出力電圧)との関係を確認する実験の結果を示すグラフ。
図4】太陽光発電パネルを設置する水温と太陽光発電パネルの発電量(出力電圧)との関係を確認する実験の結果を示すグラフ。
図5】太陽光発電パネルを設置する海中の塩分濃度と太陽光発電パネルの発電量(出力電圧)との関係を確認する実験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を、広大な海面を活用した水中太陽光発電システムに適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態における水中太陽光発電システム10の概略構成を示す説明図である。
図2は、本実施形態における水中太陽光発電システム10の太陽光発電パネル1及び浮体2を模式的に示す斜視図である。
【0016】
本実施形態の水中太陽光発電システム10は、主に、太陽光発電パネル1と、水面である海面100Aに浮かぶ浮体2と、浮体2に太陽光発電パネル1を連結する連結部材としての連結ワイヤー3と、太陽光発電パネル1に連結される錘部材4とから構成される。また、本実施形態の水中太陽光発電システム10は、浮体2を水面上の所定位置に係留させる係留部材5が浮体2に連結されており、潮の流れなどによって浮体2が所定位置から離れて流されないようにしている。
【0017】
また、本実施形態の水中太陽光発電システム10は、地上に設置された送電設備20と送電ケーブル21によって接続されている。送電ケーブル21は、海底に敷設または埋設された電力伝送路を形成する少なくとも1以上のケーブルで構成される。水中太陽光発電システム10で発電した電力は、送電ケーブル21を通じて送電設備20へ送電され、送電設備20から送電される。
【0018】
なお、水中太陽光発電システム10で発電した電力を送電する送電設備20は、地上(陸地)だけでなく、海上あるいは海中に配置してもよく、送電方法も有線によるものに限らず、マイクロ波などの無線によるものであってもよい。また、水中太陽光発電システム10で発電した電力を使用して稼働する電力機器が水中太陽光発電システム10の近くの海上あるいは海中に存在する場合には、送電設備20や送電ケーブル21は不要となる。
【0019】
太陽光発電パネル1は、太陽光エネルギーを直流の電気エネルギーに変換する複数のPVパネルと、各PVパネルで発電された電力を集電して送電ケーブル21から送電設備20へ送電する方式に対応した状態に変換し、送電ケーブル21から送り出す電力変換器とから構成される。
【0020】
太陽光発電パネル1のPVパネルは、一般に流通しているものを利用できるが、本実施形態ではPVパネルが海面下(海中100)に設置されるため、相応の防水処理を施すことが望まれる。また、海水に常時接するので、塩分に対する耐性処理を施すことも望まれる。
【0021】
また、太陽光発電パネル1は、海面下(海中100)に設置されるため、水中生物又は水中植物の付着を抑制する付着抑制処理を施すのが好ましい。付着抑制処理としては、公知の薬剤などをコーティングする処理や、ロータス効果(ハス効果)を発揮するような微細加工をパネル表面に施す処理などが挙げられる。
【0022】
浮体2は、錘部材4に連結された太陽光発電パネル1が連結されていても浮力により水面に浮かぶことができる。本実施形態の浮体2は、太陽光発電パネル1の周囲を取り囲むように矩形状に配置されており、その四隅それぞれに、太陽光発電パネル1の四隅それぞれに連結された連結ワイヤー3が接続されている。なお、太陽光発電パネル1の外形(複数のPVパネルの配列)や浮体2の形状などに特に制限はない。
【0023】
連結ワイヤー3は、海面100Aから所定距離以内(所定の水深範囲内)に太陽光発電パネル1を維持できる長さに設定されている。本実施形態においては、太陽光発電パネル1が錘部材4の重さで下方へ引っ張られるため、浮体2に連結された連結ワイヤー3は、太陽光発電パネル1によって下方へ引っ張られ、常に張った状態になる。このように連結ワイヤー3が常に張った状態が維持されるため、潮の満ち引きや波などによって海面100Aの高さが変動しても、その海面100Aの高さ変動に応じて浮体2が上下動し、これに連動して太陽光発電パネル1も上下動する結果、太陽光発電パネル1が常に海面100Aから所定距離以内(所定の水深範囲内)に維持される。
【0024】
特に、太陽光発電パネル1の高い発電効率を実現するうえでは、海中100での太陽光の減衰を抑制するために、なるべく海面100Aに近い海中100に太陽光発電パネル1を設置するのが望ましい。具体的には、比較的透明度の高い場合には、おおよそ海面100Aから1m以内で、十分な発電効率を実現することが可能である。好ましくは 海面100Aから30cm以内、より好ましくは20cm以内であれば、より幅広い水中環境下において、十分な発電効率を実現することが可能である。特に、比較的透明度の高い場合には、後述する実験で示すように、海上や地上(陸地)に太陽光発電パネル1が設置される場合と同等以上の発電効率を実現することができる。
【0025】
なお、太陽光発電パネル1の位置(高さ)が海面100Aの高さ変動によらずに一定であるような構成を採用してもよい。例えば、海底に敷設した土台から延びる支柱上に太陽光発電パネル1を設置するような構成を採用してもよい。ただし、このような構成だと、海面100Aの高さ変動によって、海面100Aから太陽光発電パネル1までの距離が変動することになる。そのため、例えば、太陽光発電パネル1の位置(高さ)を海面近くの海中100に設定すると、海面100Aの高さ変動によって太陽光発電パネル1が海面上に長期間露出してしまうおそれがある。このような長期間の露出が起きると、その露出中に付着する異物や堆積物がパネル表面上に強固に付着してしまい、その後に太陽光発電パネルが海中100に戻っても、その異物や堆積物を水によって除去できず、発電効率を回復させることが困難となるという問題が生じる。逆に、太陽光発電パネル1の位置(高さ)を海面100Aから離れた海中100に設定すると、海面100Aから太陽光発電パネル1までの距離が長すぎて、海中100での太陽光の減衰が大きく、十分な太陽光が太陽光発電パネル1に届かないため、十分な発電効率を得ることができない。
【0026】
したがって、本実施形態のように、太陽光発電パネル1が海面100Aから所定距離以内(所定の水深範囲内)に維持される構成とすれば、太陽光発電パネル1が安定して海中100に維持される結果、太陽光発電パネル1が海上に露出して異物や堆積物がパネル表面上に強固に付着するような事態を回避でき、異物や堆積物による発電効率の低下を抑制することができる。しかも、太陽光発電パネル1を安定して海中100の所定水深範囲に維持できる結果、太陽光発電パネル1を常に海面付近の浅い水深範囲(水深30cm以内)に設置することができ、海中100での太陽光の減衰の影響をほとんど受けずに、高い発電効率を実現することができる。
【0027】
錘部材4は、浮体2の浮力との関係で、海面100Aの高さ変動が生じても安定して連結ワイヤー3を張った状態できる程度の重さに適宜設定される。もし、太陽光発電パネル1の重さが十分に重く、太陽光発電パネル1だけで安定して連結ワイヤー3を張った状態できるようであれば、錘部材4は必ずしも必要ない。
【0028】
本実施形態では、説明の簡略化のため、浮体2に取り囲まれた太陽光発電パネル1を1つだけ備えた水中太陽光発電システム10を例に挙げて説明するが、浮体2に取り囲まれた太陽光発電パネル1を2つ以上備えた例であってもよい。このとき、各太陽光発電パネル1については、互いの浮体2間を連結するようにして各位置がバラバラにならないようにするのが好ましい。
【0029】
また、太陽光発電パネル1を構成するPVパネルの数、あるいは、太陽光発電パネル1の数は、水中太陽光発電システム10の設備容量や設置可能面積などに応じて増減することができる。また、水中太陽光発電システム10の設置場所の形状などに応じて、太陽光発電パネル1を構成するPVパネルの配置、あるいは、複数の太陽光発電パネル1の配置を適宜調整することが可能である。
【0030】
また、本実施形態における太陽光発電パネル1は、そのパネル面が水面に対して略平行となるように配置されているが、パネル面の仰角は水中太陽光発電システム10が設置される緯度に応じて適宜選択されることが望ましい。また、太陽光発電パネル1のパネル面の仰角を変更する手段を設けて、緯度や太陽高度などに応じてパネル面の仰角を調整できるようにしてもよい。
【0031】
本実施形態のように、太陽光発電パネル1が海面下(水面下)に設置する構成においては、海面100Aでの太陽光の反射、水中での太陽光の散乱、減衰などにより、太陽光発電パネル1を海面上又は地上に設置する場合よりも、太陽光の届く光量が少ない。しかしながら、海面上あるいは地上に設置される太陽光発電パネルは、パネル表面への異物(黄砂、鳥の糞など)の付着や塩分等の堆積物により発電効率が低下するのに対し、本実施形態では、パネル表面が海中100にあるので、このような異物や堆積物の付着が抑制され、異物や堆積物による発電効率の低下が抑制される。したがって、長期的使用の観点で見れば、本実施形態に係る水中太陽光発電システム10は、海面上あるいは地上に太陽光発電パネルを設置するシステムと比べて、発電効率が劣るようなことはない。
【0032】
特に、後述の実験のとおり、海面下であっても、海面100Aに近い海中100に太陽光発電パネル1を設置すれば、海中100での太陽光の錯乱や減衰の影響が小さい。しかも、海中100における太陽光発電パネルの冷却効果は海面上や地上の太陽光発電パネルに比べて高い。そのため、長期的使用の観点で見たとき、本実施形態に係る水中太陽光発電システムは、海面上や地上に太陽光発電パネルを設置するシステムと比べて、むしろ発電効率において有利となり得る。
【0033】
次に、本発明者が行った各種実験について説明する。
まず、太陽光発電パネル1を設置する水深と太陽光発電パネル1の発電量(出力電圧)との関係を確認する実験を行った。
この実験では、太陽光発電パネル1を構成するPVパネルを沈めた水槽に、恒温下で1日間放置した水道水(24.4℃)を徐々に加えてPVパネルの水深を深くしていき、その後、その水槽から徐々に水を抜いて水深を浅くしていき、その間のPVパネルの出力電圧を測定した。なお、本実験は、PVパネルとして、下記の表1に示す仕様の単結晶シリコン製の市販ソーラーパネル(20W,SN Solar Technology社製)を用い、室内の蛍光灯下にて行った。このとき、水槽側面から入射する光の影響を避けるために、水槽側面は全周とも遮光カバーで覆った。なお、海上の太陽光下と室内の蛍光灯下とでは同じ照度であっても発電量に違いは出るが、照度と出力電圧との関係はいずれも同じ比例関係を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
図3は、この実験結果を示すグラフである。
図3に示すように、水深0〜200mmの範囲では、出力電圧はほぼ一定であり、むしろ水深が深くなるにつれてわずかながら出力電圧が上昇している。なお、室温22.4℃の大気中(水深0mm)でのPVパネルの出力電圧は、13.12Vである。
【0036】
この実験結果から、この程度の浅い水深範囲であれば、水中にPVパネルを設置する場合であっても、水面上での反射や水中での散乱、減衰による影響は小さく、大気中のPVパネルと同程度の発電効率が得られることがわかる。むしろ、大気中(水深0mm)でのPVパネルの出力電圧に対し、水深が深くなるにつれてわずかながら出力電圧が上昇しているのは、水深が深くなるにつれてPVパネルから水への伝熱効率が上がり、PVパネルの冷却効率が上がったためだと推察される。
【0037】
次に、太陽光発電パネル1を設置する水温と太陽光発電パネル1の発電量(出力電圧)との関係を確認する実験を行った。
図4は、この実験結果を示すグラフである。
本実験では、上述した実験と同じ設備を用い、同一照度下(蛍光灯下)における水温と出力電圧との関係を求めるために、実験を3回、異なる日に実施した。低温状態は水槽に氷とドライアイスを入れて水温を調整し、高温状態はお湯を入れて水温を調整した。図4に示すように、水温の低下に比例して出力電圧が高くなることが確認された。また、いずれの実験日でも、水温が同じであれば同じ出力電圧が得られ、その再現性は高い。
【0038】
次に、太陽光発電パネル1を設置する海中100の塩分濃度と太陽光発電パネル1の発電量(出力電圧)との関係を確認する実験を行った。
図5は、この実験結果を示すグラフである。
海中100の塩分濃度は、その海域によって差があるが、最大でも5wt%である。本実験では、水道水に海水から採取した塩を混合した疑似海水を用い、水深10mm、水温23.1℃の環境下において、塩分濃度が出力電圧に及ぼす影響を調べた。図5に示すように、塩分濃度が0〜5wt%の範囲内では、塩分濃度の差による出力電圧への影響は認められない。
【0039】
なお、本発明に係る水中太陽光発電システムは、海面を活用するものに限らず、湖、沼、池、川、貯水池(ダムを含む。)などの水面を活用する場合にも同様に適用可能である。
また、このような屋外の水面に限らず、屋内のプールの水面を活用するなど、あらゆる水面に対して活用することが可能である。
更には、水以外の液体の液面に対して活用することも可能である。例えば、熱伝導性の高い液体の液面下(液中)に太陽光発電パネルを設置すれば、太陽光発電パネルの冷却効果の高い水中太陽光発電システムが実現できる。また、例えば、パネル表面の洗浄効果が高い液体の液面下(液中)に太陽光発電パネルを設置すれば、異物や堆積物などの付着による発電効率の低下を抑制する効果の高い水中太陽光発電システムが実現できる。
【符号の説明】
【0040】
1 :太陽光発電パネル
2 :浮体
3 :連結ワイヤー
4 :錘部材
5 :係留部材
10 :水中太陽光発電システム
20 :送電設備
21 :送電ケーブル
100A :海面
図1
図2
図3
図4
図5