(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記飛散防止カーテンの一部分であって、前記換気ダクトがトンネル延伸方向に前後移動する通路に、前記飛散防止カーテンをトンネル延伸方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記換気ダクトは、
前記貫通孔の内部を通って、前記飛散防止カーテンよりも切羽側へ移動可能であり、
前記貫通孔の内部を通って、前記飛散防止カーテンよりも坑口側へ移動可能である請求項1〜3のいずれか1項に記載のトンネル工事用装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るトンネル工事用装置1の好適な実施例について、図面を参照しながら説明する。以下の説明及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきではない。
【0021】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有する。
「トンネルの延伸方向」とは、図中に「前後方向」と示す方向であり、「トンネルの横断方向」とは、図中に「横断方向」と示す方向であり、前記延伸方向と前記横断方向は直行するものである。
【0022】
「トンネルの延伸方向に前後移動する」という概念には、トンネルの坑口側から切羽側へ移動すること(前方移動)と、切羽側から坑口側へ移動すること(後方移動)の両方が含まれる。なお、「トンネルの前方」とは、切羽側をいい、「トンネルの後方」とは、坑口側をいう。また、トンネルの「左側」「右側」とは、切羽側から坑口側を見たときを基準とする。また、「飛石」とは、発破によって切羽の岩盤が破砕されて細かくなり、この発破の衝撃で坑口側へ飛散する破砕された石(破砕石)のことをいう。
【0023】
「トンネルの天井壁」とは、
図17に示すように、トンネル横断方向の中央地点を基準点BPと仮定し、その基準点BPから地面と垂直方向に垂直仮想線L1を延在させた後、垂直仮想線L1から横断方向左側に傾けた左側仮想線L2と、垂直仮想線L1から横断方向右側に傾けた右側仮想線L3との間の角度θが120度以内の範囲にあるトンネル壁面をいう。なお、垂直仮想線L1と左側仮想線L2の間の角度αと、垂直仮想線L1と右側仮想線L3の間の角度βは同じ角度である。また、左側側壁と地面の接点P1から前記基準点BPまでの距離N1と、右側側壁と地面の接点P2から前記基準点BPまでの距離N2は同じ長さである。
【0024】
「トンネルの側壁」とは、トンネルの壁面のうち、前述のトンネル天井壁よりも下側に位置する壁面をいう。
【0025】
(第1実施形態)
本発明に係るトンネル工事用装置1の第1実施形態の正面図を
図1および
図2に示した。この第1実施形態について詳述する。
【0026】
(ガイドレール40)
トンネル坑内の上部には、坑口側から切羽側へ向かって、ガイドレール40が設けられている。このガイドレール40は、トンネル工事においてトンネル坑内の切羽側の空気を換気する換気ダクト9の移動に用いる第1レール3と、 トンネル工事の発破において破砕石の坑口側への飛散を防止する飛散防止カーテン2の移動に用いる第2レール33と、を有している。第1実施形態では、ガイドレール40を以下の方法によってトンネルの天井壁15に固定している。
【0027】
なお、
図5等に示すように、第2レール33がトンネル延伸方向に延在する距離は、第1レール3がトンネル延伸方向に延在する距離よりも短い。具体的には、第2レール33がトンネル延伸方向に延在する距離を10〜25mm程度にすることが好ましく、10〜15mm程度にすることが好ましい。第2レール33は、飛散防止カーテン2やカーテンレール5を移動させるためのものであるため、飛散防止カーテン2を移動させる範囲に第2レール33を設ければ十分だからである。また、第1実施形態においては、飛散防止カーテン2やカーテンレール5の移動は、第2レール33と対向レール4を通じて行われる。したがって、第2レール33と対向レール4のトンネル延伸方向の長さを同じにすることが好ましい。同様の理由により、トンネル延伸方向の位置について、第2レール33を設ける位置と対向レール4を設ける位置を同じにすることが好ましい。
【0028】
(吊下体13)
図1等に示す第1実施形態では、トンネルの延伸方向に沿って所定間隔を空けながら複数の吊下体13が天井壁15から吊り下げられている。
図1〜
図4に示した吊下体13は、一端側に設けた固定具29と、他端側に設けたフック24と、固定具29とフック24の間に設けたチェーン23を有している。吊下体13の固定具29は、トンネル壁面(天井壁15が好ましい)に固定されており、その固定具29から高さ方向下方にチェーン23が垂下し、チェーン23の下端部にフック24が位置している。なお、吊下体13として、例えばレバーブロック(登録商標)、タンバックルなどを用いることができる。
【0029】
(天井連結体22)
吊下体13のフック24には、天井連結体22が取り付けられている。
図3等に示す第1実施形態の天井連結体22は、一端側に設けられたリング26と、他端側に対面して設けられた2つのガイドレール移動用車輪6、6と、リング26とガイドレール移動用車輪6、6を繋ぐ中間体27を有している。吊下体13のフック24を天井連結体22のリング26の貫通孔に挿入することで、吊下体13と天井連結体22を連結している。天井連結体22の下端部に前記ガイドレール移動用車輪6、6が位置しており、このガイドレール移動用車輪6、6の間に、第1レール3の上部が挿入されて、支持されている。
【0030】
(第1レール3)
図3等に示す第1実施形態の第1レール3はH鋼であるが、I形鋼や山形鋼など、任意の形状のものに変更してもよい。第1レール3の素材としては、例えばスチール、アルミなどを用いることができる。この第1レール3(H鋼)の上端部に位置し、ほぼ水平方向に延在する上フランジ部3aは、ガイドレール移動用車輪6、6の上面に乗った状態になっている。そして、第1レール3はこのガイドレール移動用車輪6、6の上面を摺動しながら、トンネル延伸方向に前後移動する。
【0031】
第1レール3(H鋼)の中間部に位置し、ほぼ垂直方向に延在するウェブ部3bは、対面するガイドレール移動用車輪6、6の間の隙間を通って、下方へと延在している。そして、第1レール3(H鋼)の下端部に位置し、ほぼ垂直方向に延在する下フランジ部3cは、後述するダクト連結体41のダクト移動用車輪42と摺動可能に接している。
【0032】
(レール連結体32)
第1レール3のウェブ部3bからは、レール連結体32が横断方向にほぼ水平方向に延在している。なお、
図3ではレール連結体32がほぼ水平方向に延在しているが、ほぼ水平方向に限られるものではなく、例えば下方または上方へ向かって傾きながら延在していてもよい。このレール連結体32は、トンネルの横断方向の左側へ延在する左延在部32Lと、トンネルの横断方向の右側へ延在する右延在部32Rとを有している。左延在部32Lと右延在部32Rのどちらか一方のみを設けても良いが、左右の重力バランスを良くするため、両方設けることが好ましい。また、レール連結体32の上面には、レール連結体の強度を補強するために、補強体43を設けることが好ましい。なお、第1レール3のウェブ部3bとレール連結体32は、溶接によって一体化したり、ボルトやナット等の公知の締結手段を用いて一体化したりすることが好ましい。
【0033】
(第2レール33)
レール連結体32の左延在部32Lの横断方向左側には、第2レール33が設けられている。
図3等に示した第1実施形態では、左延在部32Lの左端部の下側に、
図3の断面視で箱状の左側第2レール33Lが設けられている。なお、左延在部3Lと左側第2レール33Lは、溶接によって一体化したり、ボルトやナット等の公知の締結手段を用いて一体化したりすることが好ましい。この左側第2レール33Lの底部の中央部に貫通孔33Hが設けられており、中央部以外の部分(周辺部)には貫通孔33Hが設けられていない。前記箱状の左側第2レールの内部には、カーテンレール移動用車輪34が設けられている。このカーテンレール移動用車輪34は、左側第2レール33Lの底部の周辺部の上面に乗った状態になっており、その周辺部の上を走行することで、トンネルの延伸方向に前後移動する構成になっている。なお、
図3の断面視で、左側第2レール33Lの内部には、カーテンレール移動用車輪34が2つ設けられており、そのカーテンレール移動用車輪34、34は、ほぼ水平方向に延在する連結軸44によって連結されている。そして、この連結軸44の中間部分には、下方へ延在する支持軸45が取り付けられており、この支持軸45は左側第2レール33Lの底部に設けた貫通孔33Hを通って下方へと延在し、その下端部が後述するダクトフレーム30と連結されている。そして、ダクトフレーム30にカーテンレール用フレーム18が固定され、カーテンレール用フレーム18にはカーテンレール5が固定され、カーテンレールからは飛散防止カーテン2が吊り下げられている。そのため、飛散防止カーテン2は、第1レールに沿って、第1レールの移動とは別個に、前後移動することが可能である。
【0034】
同様に、
図3の実施形態では、右延在部32Rの右端部の下側に右側第2レール33Rが設けられている。この右側第2レール33Rの形態は左側第2レール33Lと同じであるため、ここでは詳細の記載を省略する。
【0035】
また、以上の記載は、
図3に示した第1実施形態を詳述するものであるが、左側第2レール33Lの形状は箱型に限られるものではなく、任意の形状に変更することができる。同様に、貫通孔33Hを設ける位置を変更したり、左側第2レール33Lの内部に設けるカーテンレール移動用車輪34の数を1個または3個以上に変更したりこともできる。
【0036】
(ダクト連結体41)
前述したように、
図3等に示した第1実施形態において、第1レール3の下フランジ部3cには、ダクト連結体41のダクト移動用車輪42が摺動可能に接している。なお、ダクト移動用車輪42はダクト連結体41の一部分を構成するものである。
【0037】
図3に示した断面視におけるダクト連結体41は、横断方向にほぼ水平に延在する底部41aと、前記底部41aの左側端部および右側端部からそれぞれほぼ垂直に上方へ延在する側壁部41b、41bと、を有する。そして、側壁部41b、41bには、それぞれ横断方向中央側へ向かってほぼ水平に延在する車軸46、46が取り付けられており、各車軸46、46の先端部にダクト移動用上車輪42a、42aがそれぞれ取り付けられている。ダクト移動用上車輪42a、42aの下端は、下フランジ部3cの上面と接しており、ダクト移動用上車輪42a、42aが下フランジ部3cの上をトンネル延伸方向に前後移動する構成になっている。
【0038】
また、底部41aの左側端部および右側端部には、それぞれ上方へ向かってほぼ垂直に延在する車軸47、47が取り付けられている。なお、この車軸47、47の位置は、前記側壁部41b、41bよりも横断方向中央側に位置している。そして、この車軸47、47の上端部にダクト移動用横車輪42b、42bがそれぞれ取り付けられている。ダクト移動用横車輪42b、42bの横断方向中央側の端面は、下フランジ部3cの側面と接しており、ダクト移動用横車輪42b、42bが下フランジ部3cの横面と接しながらトンネル延伸方向に前後移動する構成になっている。なお、このダクト移動用横車輪42b、42bは、ダクト連結体41の過度な横移動を防ぐとともに、トンネル延伸方向への前後移動の性能を向上させるためのものであるが、必須の部品ではなく、省くことも可能である。
【0039】
ダクト連結体41の底部41aは、ボルトやナット等によって、換気ダクト9の上部と連結されている。そのため、換気ダクト9は、第1レールの移動とは別個に、また、飛散防止カーテンの移動とも別個に、第1レールに沿って、トンネル延伸方向に前後移動することが可能である。なお、換気ダクト9のトンネル延伸方向の前後移動は、
図6に示す換気ダクト移動用モーター35によって行われる。
【0040】
(ガイドレール40の移動)
以上のように、
図3等に示した第1実施形態では、吊下体13、天井連結体22を介して、天井壁15からガイドレール3が吊り下げられている。そして、前記吊下体13および天井連結体22は移動せず、前記ガイドレール移動用車輪21を介して、第1レール3がトンネルの延伸方向に移動可能な構成となっている。ガイドレール40のトンネル延伸方向の移動は、
図6に示すガイドレール移動用モーターによって行われる。
【0041】
また、第1実施形態では、レール連結体32によって第1レール3と第2レール33が連結されて一体になっている。そのため、第1レール3がトンネルの延伸方向に前後移動すると第2レール33も第1レール3と一緒にトンネル延伸方向に前後移動することになる。そのため、第1レール3を移動させるためのモーターと、第2レール33を移動させるためのモーターをそれぞれ別個に設ける必要がなくなり、イニシャルコストやランニングコストの低減を図ることができる。
【0042】
さらに、ダクト移動用車輪42が第1レール3を走ることによって、第1レール3並びに第2レール33および飛散防止カーテン2の移動とは別個に、換気ダクト9がトンネル延伸方向に前後移動することができる。すなわち、第1レール3や第2レール33や飛散防止カーテン2がトンネル延伸方向に前後移動するか否かに関わらず、換気ダクト9は独自にトンネル延伸方向に前後移動することが可能である。
【0043】
また、カーテンレール移動用車輪34が第2レール33を走ることによって、第1レール3並びに第2レール33および換気ダクト9の移動とは別個に、飛散防止カーテン2がトンネル延伸方向に前後移動することができる。すなわち、第1レール3や第2レール33や換気ダクト9がトンネル延伸方向に前後移動するか否かに関わらず、飛散防止カーテン2は独自にトンネル延伸方向に前後移動することが可能である。
【0044】
以上の内容をまとめると、ガイドレール40(第1レール3並びに第2レール33)、飛散防止カーテン2および換気ダクト9は、それぞれ別個にトンネル延伸方向に前後移動可能な構成となっている点に特徴を有する。
【0045】
したがって、例えば発破を開始する前に、ガイドレール40に沿って、飛散防止カーテン2のみを切羽近傍へ移動させ、それと反対に換気ダクト9を坑口側へ退避させる制御が可能となる。また、例えば発破が終了した時点で、迅速に換気ダクト9を切羽側へ移動させて切羽近傍に設置し、その換気ダクト9を用いて切羽近傍の空気を換気して、切羽近傍の作業空間の空気を迅速に清浄化させることができる。また、ズリの搬出工程で、切羽近傍に飛散防止カーテン2があると搬出作業の邪魔になるため、飛散防止カーテン2を迅速に坑口側へ移動させて切羽から離し、切羽近傍に留められた破砕石を坑口側へ搬出することができる。
【0046】
なお、ダクト移動用車輪42が第1レール3を走るとは、ダクト移動用車輪42が第1レール3と摺動しながら移動することを指す。
図3等に示した第1実施形態では、ダクト移動用上車輪42aが第1レール3の下フランジ面3cの上を走行するとともに、ダクト移動用横車輪42bが第1レール3の下フランジ部3cの横を走行する形態になっているが、このような形態に限られるものではない。例えば、ダクト移動用上車輪42aとダクト移動用横車輪42bのどちらか一方のみを設ける形態にしてもよい。そのほか、ダクト移動用車輪42が第1レール3の下フランジ面3cの下を走行する形態にしてもよい。また、第1レール3の上フランジ部3aやウェブ部3bを走行する形態にしてもよい。さらに、前述したように、第1レール3をH鋼ではなく、他の任意の形状に変更してもよい。他の形状に変更した場合、ダクト移動用車輪42が第1レール3の上面、側面および下面の少なくともいずれか1つと摺動しながら移動するようにしてもよい。
【0047】
同様に、カーテンレール移動用車輪34が第2レール33を走るとは、カーテンレール移動用車輪34が第2レール33と摺動しながら移動することを指す。
図3等に示した第1実施形態では、カーテンレール移動用車輪34が第2レール3の底部の上面の上を走行する形態にしているが、このような形態に限られるものではない。例えば、第2レール33の形態をH鋼などの任意の形状に変更して、カーテンレール移動用車輪34が第2レール33の上面、側面および下面の少なくともいずれか1つと摺動しながら移動するようにしてもよい。
【0048】
また、
図3等に示した第1実施形態では、第1レール3がガイドレール移動用車輪6の上面の上を走る形態にしているが、このような形態に限られるものではない。なお、第1レール3がガイドレール移動用車輪6を走るとは、第1レール3がガイドレール移動用車輪と摺動しながら移動することを指す。
【0049】
(変形例)
なお、以上の説明は一例であって、必ずしもこれらの部材を用いなければならないものではない。例えば、吊下体13を用いずに、天井壁15に対して、天井連結体22を直に固定してもよい。また、ガイドレール3をトンネル延伸方向へ移動させることが困難になるが、吊下体13と天井連結体22を用いずに、天井壁15に対して、ガイドレール3を直に固定してもよい。
【0050】
また、
図1等に示す第1実施形態では、ガイドレール3をトンネルの右側に設けたが、ガイドレール3の設置場所をトンネルの左側や中央部などに変更してもよい。特に、後述する対向レール4を設けない場合は、トンネル横断方向の中央部にガイドレール3を設けることが好ましい。トンネル中央部にガイドレール3を設け、そのガイドレール3に飛散防止カーテン2の横断方向中央部を固定することによって、飛散防止カーテン2がトンネル延伸方向に移動するときにバランスが取りやすくなる。
【0051】
(換気ダクト9)
換気ダクト9は、トンネル内の換気に用いられるものであり、特にトンネル切羽近傍の作業空間の空気を清浄化するために用いられる。具体的には、坑口側に図示しない送風機を設け、換気ダクト9を介して、トンネル外の新鮮な空気を切羽14の作業空間へ送る。または、坑口側に図示しない吸引機を設け、切羽14の作業空間で発生した汚染空気を、換気ダクト9を介して吸引し、吸引した汚染空気を、図示しない除塵機で除塵した後、トンネル坑口側へ放出する。
【0052】
この換気ダクト9としては、風管一般(硬質風管をも含む)を使用することができる。ただし、経済性や施工性の観点から、軟質性を有する風管(軟質風管)を使用するのが好ましく、軟質性及び難燃性を有する風管を使用するのがより好ましい。軟質性を有する風管としては、ターポリンからなる風管を好適に使用することができる。
【0053】
(飛散防止カーテン2)
トンネル工事用装置1は飛散防止カーテン2を備えている。この飛散防止カーテン2としてバルーンカーテンを用いてもよいが、網を用いるほうが好ましい。バルーンカーテンは、発破時の爆風の影響を受けやすく、切羽14から30m以上離間させる必要があるが、網の飛散防止カーテン2、網の目を爆風が通過するため、爆風の影響を受けづらく、切羽14に近づけることができるからである。詳しくは、切羽14から10m〜20m程度離れた位置に網の飛散防止カーテン2を配置しても、発破時の爆風によって損傷する可能性は低い。そのため、切羽14の近傍(切羽14から15m以内)に網の飛散防止カーテン2を配置し、発破による飛石を切羽14近傍に留め、発破後に行う飛石の収集作業を容易にすることが好ましい。
【0054】
網の飛散防止カーテン2としては、漁網、ワイヤ網、安全ネットなどを用いることができる。特に、漁網は入手しやすく安価であるとともに、強度も高いため、本発明に用いる飛散防止カーテン2として好適である。網の飛散防止カーテン2として要求される強度は、JIS L 1096A:2010(ストリップ法)によって測定したとき、例えば、引張強さ400N以上、伸び率70%以上のものが好ましく、引張強さ500N以上、伸び率80%以上のものがより好ましい。このような強度を実現するため、網を構成する繊維の素材として、例えばベクトラン(登録商標)、ベクトランにポリエステルを混紡したもの、アラミド繊維、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、ビニロンなどを用いることが好ましい。そして、前記強度を確保するため、例えば直径470μm〜1500μmの繊維を6〜20本束ねて捻ったロープを編みこんだ網を用いることが好ましい。また、結節として、蛙又網、ラッセル網、無結節網などを用いることができ、結束強度の観点から蛙又網やラッセル網を用いることが好ましい。網の形状は、例えば菱形になる菱目、正方形になる角目を挙げることができる。そのほか、前記強度のほか、耐切創性や耐水性を兼ね備えた網を用いることが好ましい。耐水性のあるロープを用いることで、トンネル内の湧水や漏水で濡れることによって強度が劣化することを防止できる。
【0055】
網の目合いは、飛散防止カーテン2によって堰き止める飛石の大きさを考慮して、任意に決定することができる。目合いを小さくするほど、飛石を堰き止める効果が高くなる。例えば、角目の網の目合いを10mmにした場合、Feret径が10mmより大きい飛石は、飛散防止カーテン2によって堰き止められることが多い。他方、Feret径が10mm以下の飛石は、飛散防止カーテン2の網の空隙を通り抜けて、坑口側へと飛散することが多くなる。厳密には、飛石が飛散する速度、網の形状、飛石が飛散防止カーテン2に当たる場所(網の空隙に近いかどうか)等の要因によっても、飛石が飛散防止カーテン2を通過して坑口側へ飛散するかが変わる。しかし、網を通過する飛石の大きさと網の目合いに、相当の因果関係があることが明らかである。したがって、網の目合いは、堰き止めたい飛石の大きさと同じにするか、堰き止めたい飛石の大きさよりも1mm〜5mm程度小さくすることが好ましい。
【0056】
他方、飛散防止カーテン2の網の目合いを小さくするほど、爆風の影響を受けやすくなり、飛散防止カーテン2が損傷しやすくなるので注意が必要である。
【0057】
以上の各要素を考慮すると、飛散防止カーテン2の網の目の大きさを8mm〜20mmにすることが好ましく、10mm〜15mmにすることがさらに好ましい。
【0058】
図1等に示した第1実施形態においては、3枚の飛散防止カーテン2が設けられている。トンネルの横断方向の左側に配置した左側飛散防止カーテン2Lと、トンネルの横断方向の右側に配置した右側飛散防止カーテン2Rである。そして、前記左側飛散防止カーテン2Lと右側飛散防止カーテン2Rの間に、中央飛散防止カーテン2Cが配置されている。中央飛散防止カーテン2Cは、後述するカーテンレール5から吊り下げられており、カーテンレール5がトンネル延伸方向に前後移動すると、そのカーテンレール5と一緒にトンネル延伸方向に前後移動する構造になっている。
【0059】
なお、カーテン2としてバルーンカーテン2を用いることもできる。この場合は、カーテン2の内部の空気を少し抜いて、カーテン2をトンネル壁面10、15から離間させてから移動させる。
【0060】
(貫通孔55)
図1等に示した第1実施形態においては、換気ダクト9がトンネル延伸方向に前後移動する通路に、飛散防止カーテン2をトンネル延伸方向に貫通する貫通孔55が設けられている。具体的には、トンネルの右側に位置する右側飛散防止カーテン2Rのうち、断面視で、換気ダクト9と重なる位置に貫通孔が設けられている。この貫通孔55を設けることによって、飛散防止カーテン2の位置に関わらず、換気ダクト9がトンネル延伸方向に移動することを可能にしている。例えば、発破後に切羽近傍の作業空間の空気を迅速に清浄化するため、換気ダクト9を飛散防止カーテン2よりも切羽側に移動させる必要がある。このとき、飛散防止カーテン2に貫通孔55を設けることで、換気ダクト9が貫通孔55を通って、飛散防止カーテン2を超えた切羽側へ迅速に移動することができる。また、支保工の組み立て作業等を行う段階において、飛散防止カーテン2を移動させずに、切羽側の換気ダクト9が前記貫通孔55を通って、飛散防止カーテン2よりも坑口側の位置に移動することが可能である。
【0061】
(ダクトフレーム30)
図1等に示した第1実施形態では、貫通孔55の周囲にダクトフレーム30を設けている。このダクトフレーム30を設けることによって、貫通孔55の形状維持が容易になる。特に、飛散防止カーテン2は発破時に爆風を受けるため、貫通孔55の形状が崩れやすい。そのため、ダクトフレーム30による貫通孔55の形状維持は重要である。
【0062】
また、
図1等に示した第1実施形態において、ダクトフレーム30はカーテンレール用フレーム18に隣接している。このダクトフレーム30とカーテンレール用フレーム18は、例えば、溶接によって固定したり、ボルトやナット等を用いて固定したりすることができる。前述のように、ダクトフレーム30にはカーテンレール移動用車輪34が取り付けられているため、第2レール33に沿って、カーテンレール移動用車輪34がトンネル延伸方向に前後移動することによって、ダクトフレーム30、カーテン用フレーム18およびカーテン2等が一体となって、トンネル延伸方向に前後移動する。このように、ダクトフレーム30は、カーテンレール移動用車輪34を取り付けるための部品として用いることができるという利点もある。なお、ダクトフレーム30のトンネル延伸方向の前後移動は、
図4に示す対向レール移動用兼カーテンレール移動用モーター37によって行われる。後述する対向レール4を設けない場合は、カーテンレールを移動させるためのモーターをダクトフレーム40に取り付けるようにしてもよい。
【0063】
(その他のカーテン)
第1実施形態では設けていないが、前記中央飛散防止カーテン2Cの上方にも別のカーテンを設けても良い。
【0064】
(左側飛散防止カーテン2L、右側飛散防止カーテン2R)
左側飛散防止カーテン2Lはカーテンレール用フレーム18の左側端部に取り付けられており、右側飛散防止カーテン2Rはダクトフレーム30に取り付けられている。そのため、左側飛散防止カーテン2Lおよび右側飛散防止カーテン2Rは、中央飛散防止カーテン2Cとともに、トンネル延伸方向に前後移動する構成になっている。
【0065】
また、
図1等に図示していないが、左側飛散防止カーテン2Lおよび右側飛散防止カーテン2Rの側壁側端部に係止ロープを取り付けても良い。この係止ロープの端部に係止具を取り付け、この係止具を介して、トンネル側壁10に左側飛散防止カーテン2L、右側飛散防止カーテン2Rをそれぞれ固定するようにしてもよい。
【0066】
(対向レール4)
図1等に示した第1実施形態では、トンネルの右側に設けたガイドレール40と平行に、トンネルの左側に対向レール4を設けている。
図4等に示す第1実施形態の対向レール4はH鋼であるが、I形鋼や山形鋼など、任意の形状のものに変更してもよい。
【0067】
図4に示すように、この対向レール4も、ガイドレール40と同様に、天井壁15から吊下体13によって吊り下げられている。吊下体13は天井連結体22を吊り下げており、天井連結体22の対向レール移動用車輪60、60の上に、対向レール4の上フランジ部4aが乗った状態になっている。そして、対向レール4はこの対向レール移動用車輪60、60の上面を摺動しながら、トンネル延伸方向に前後移動する。なお、対向レール4のトンネル延伸方向の前後移動は、
図4に示す対向レール移動用兼カーテンレール移動用モーター37によって行われる。第1実施形態では、対向レール4を移動させるためのモーターとカーテンレール用フレーム18を移動させるためのモーターを一緒にしているが、別々のモーターによって動かすようにしてもよい。
【0068】
対向レール4(H鋼)の中間部にはほぼ垂直方向に延在するウェブ部4bが設けられている。このウェブ部4bは、上フランジ部4aから対面する対向レール移動用車輪60、60の間の隙間を通って下方へと延在している。対向レール4(H鋼)の下端部にはほぼ水平方向に延在する下フランジ部4cが設けられている。この下フランジ部4cは、カーテンレール用フレーム連結体61のカーテンレール用フレーム移動用車輪62と摺動可能に接している。カーテンレール用フレーム連結体61はカーテンレール用フレーム18と連結されており、カーテンレール移動用車輪62が対向レール4の下フランジ部4cを走ることによって、カーテンレール用フレーム18がトンネル延伸方向に前後移動する構造になっている。
【0069】
図4に示す対向レール4の周辺部の構造について、
図3に示すダクトレール40の周辺部の構造とほぼ同じである。そのため、繰り返しの説明を省略する。
【0070】
なお、61aはカーテンレール連結体61の底部であり、61bはカーテンレール連結体61の側壁部である。また、67は底部61aから上方へ向かってほぼ垂直に延在する車軸であり、63はカーテンレールダクト移動用横車輪
である。66は側壁部61bからほぼ水平方向に延在する車軸であり、62はカーテンレールダクト移動用上車輪である。
【0071】
また、
図9〜
図13等に示すように、トンネル横断方向とほぼ平行な状態を保ちながら、カーテンレール用フレーム18をトンネル延伸方向に前後移動させることが好ましい。そのため、ダクト連結体41とカーテンフレーム連結体61は、同じ方向かつ同じ速度で、トンネル延伸方向に前後移動させることが好ましい。
【0072】
(カーテンレール用フレーム18)
図1等に示した第1実施形態では、カーテンレール用フレーム18とダクトフレーム30によって、ガイドレール40と対向レール4の間を掛け渡している。詳しくは、ガイドレール40や対向レール4の延在方向と交差する方向(各レール3、4を横断する方向)にカーテンレール用フレーム18が延在しており、カーテンレール用フレーム18の左側端部が対向レール4と連結され、ガイドレール40(第1実施形態ではガイドレール40のうちの第2レール33)がダクトフレーム30と連結されている。なお、カーテンレール用フレーム18の右側端部とダクトフレーム30の左側端部も連結されている。
【0073】
カーテンレール用フレーム18とダクトフレーム30は、ガイドレール40や対向レール4に沿ってトンネル延伸方向に移動する。また、カーテンレール用フレーム18の切羽側にはカーテンレール5が連結されており、カーテンレール5から下方に飛散防止カーテン2が取り付けられている。そのため、カーテンレール用フレーム18とダクトフレーム30の移動によって、飛散防止カーテン2もトンネル延伸方向に前後移動する。
【0074】
なお、
図5等の平面視において、ガイドレール40とカーテンレール用フレーム18の間の角度を90度(垂直)にしているが、この角度に限られるものでなく、任意の角度に変更可能である。具体的には、前記角度を70度〜120度にすることが好ましく、80度〜100度にすることがより好ましい。対向レール4とカーテンレール用フレーム18の間の角度についても、ガイドレール40とカーテンレール用フレーム18の間の角度と同様である。
【0075】
このカーテンレール用フレーム18は任意の形状にすることができる。例えば、
図1等の第1実施形態に示すように、正面視において梯子形状にすることができる。そのほかの形状にする場合は、爆風に耐える強度を持たせるように設計することが肝要である。
【0076】
また、カーテンレール用フレーム18は省いても良い。カーテンレール用フレーム18を設けない場合は、例えば、カーテンレール5をダクトフレーム30と直接連結する形態にすることができる。この例の場合、カーテンレール5が変形しないように、カーテンレール5の強度を高めることが好ましい。
【0077】
(カーテンレール5)
カーテンレール用フレーム18の切羽側には、カーテンレール5が取り付けられている。
図8に示した第1実施形態では、カーテンレール用フレーム18の上部切羽側にL字金具70が取り付けられており、このL字金具70の下面にカーテンフレーム5が固定されている。この固定は、溶接によって一体化したり、ボルトやナット等の公知の締結手段を用いて一体化したりすることが好ましい。なお、第1実施形態とは異なり、カーテンレール5をカーテンレール用フレーム18に直接取り付けても良い。
【0078】
カーテンレール5はトンネルの横断方向にほぼ水平に延在している。第1実施形態におけるカーテンレール5の横断方向の長さは、カーテンレール用フレーム18の横断方向の長さよりも少し短くなっている。詳しくは、
図1や
図2に示すように、正面視で、カーテンレール5の右端部はダクトフレーム30の左端部と接する程度の位置にあり、カーテンレール5の左端部は対向レール4の近傍位置にある。なお、カーテンレール用フレーム18の左端部は、ダクトフレーム30が設けられた位置を超えて、さらに左側へと延在している。
【0079】
なお、
図8に示すように、側面視におけるカーテンレール5の形状は、箱型形状をしている。このカーテンレール5の底部の中央部には貫通孔5Hが設けられており、中央部以外の部分(周辺部)には貫通孔5Hが設けられていない。箱状のカーテンレール5の内部には、カーテン移動用車輪21が設けられている。このカーテンレール移動用車輪21は、カーテンレール5の底部の周辺部の上面に乗った状態になっており、その周辺部の上を走行することで、トンネルの横断方向に左右移動する構成になっている。なお、
図8の側面視で、カーテンレール5の内部には、カーテン移動用車輪21が2つ設けられており、そのカーテンレール移動用車輪21、21は、ほぼ水平方向に延在する連結軸21aによって連結されている。そして、この連結軸21aの中間部分には、下方へ延在する支持軸21bが取り付けられており、この支持軸21bはカーテンレール5の底部に設けた貫通孔5Hを通って下方へと延在し、その下端部が後述する飛散防止カーテン2の上端部と連結されている。以上の構成によって、飛散防止カーテン2は、カーテンフレーム5やカーテンレール用フレーム18と一緒に、トンネル延伸方向に前後移動することが可能である。なお、
図8の側面視においては、カーテンフレーム5が図面の手前側に位置し、ダクトフレーム30が図面の奥側に位置している。
【0080】
カーテンレール移動用車輪21、21、連結軸21aおよび支持軸21bを含むものをランナー16と称する。カーテンレール5には前記ランナー16が複数個取り付けられている。そして、このランナー16のカーテン移動用車輪21がトンネルの横断方向(カーテンレール5の延在方向)に左右移動することによって、カーテン2の開閉が行われる。第1実施形態においては、
図2に示すように、ランナー16がトンネル横断方向の右側へ移動することによって、中間カーテン2Cが開かれた状態になり、
図1に示すように、ランナー16がトンネル横断方向の左側へ移動することによって、中間カーテン2Cが閉じられた状態になる。図示しないが、第1実施形態とは逆に、ランナー16がトンネル横断方向の左側へ移動することによって、中間カーテン2Cが開かれた状態になり、ランナー16がトンネル横断方向の右側へ移動することによって、中間カーテン2Cが閉じられた状態になるようにしてもよい。また、中間カーテン2Cを2枚に分割して、左側の中間カーテン2Cのランナー16が左側へ移動するとともに、右側の中間カーテン2Cのランナー16が右側へ移動することによって、中間カーテン2Cが開かれた状態になり、左側の中間カーテン2Cのランナー16が右側へ移動するとともに、右側の中間カーテン2Cのランナー16が左側へ移動することによって、中間カーテン2Cが閉じられた状態になるようにしてもよい。なお、
図1や
図2等に示す第1実施形態においては、ランナー16を手動で移動させる構成にしているが、ランナー移動用モーターを設けて自動で移動させるように変更してもよい。
【0081】
なお、
図1や
図2等に示した第1実施形態においては、左側カーテン2Lや右側カーテン2Rの開閉を行わない。中間カーテン2Cを開くことによって、十分な大きさの開口部31が生じるからである。図示しないズリ搬出機械等は、開口部31を通って飛散防止カーテン2よりも切羽側へ移動し、反対に、開口部31を通って飛散防止カーテン2よりも坑口側へ移動する。
【0082】
(支持部材19)
図1や
図2に示した第1実施形態では、トンネル天井壁15の近傍に支持部材19を設けている。この支持部材19は、カーテンレール用フレーム18の両端部と中央部から上方へ延在した縦部材19Lと、当該縦部材19Lの上端部間を連結する横部材19Sからなる。この縦部材19L、横部材19S、フレーム18で囲まれた内部空間に、上側カーテン2T(図示形態では略半円形状である)を固定している。この上側カーテン2Tの素材としては、ポリカーボネートパネルを用いることができる。そのほか、例えば前記左側カーテン2L、右側カーテン2Rおよび中間カーテン2Cと同様のものを用いてもよい。この上側カーテン2Tを開閉可能にしても良いが、開閉しない形態であっても良い。カーテンレール用フレーム18の下方は、重機などが通行するため、中間カーテン2Cを開閉可能にする必要があるが、カーテンレール用フレーム18の上方については、そのような必要がないからである。
【0083】
(照明装置)
図示していないが、ガイドレール40の換気ダクト9の先端部分と、対向レール4に、それぞれ照明装置を取り付けるようにしてもよい。このような位置に取り付けることによって、照明装置がトンネル延伸方向に移動可能となる。発破時には、照明装置を飛散防止カーテン2より坑口側の位置まで退避させることによって飛石による損傷を防止し、発破時以外は、飛散防止カーテン2よりも切羽側へ移動させることによって切羽14でのズリ搬出作業等を行いやすくする。この照明装置は、カーテンレール用フレーム18の切羽側に取り付けて、カーテンレール用フレーム18と一体となって移動させてもよい。
【0084】
本発明に係るトンネル工事用装置1は、下記のような様々な効果を奏する。
(ガイドレール40の主な効果)
ガイドレール40に沿って飛散防止カーテン2がトンネル延伸方向に前後移動するため、飛散防止カーテン2の移動が容易であり、省力化を図ることができる。また、発破を行わないときは、中間カーテン2Cを開くことによって、吹付け機、ドリルジャンボ、ダンプカー等の通行が容易である。なお、中間カーテン2Cを開くともに、左側カーテン2Lや右側カーテン2Lも開くようにしてもよい。この場合、吹付け機、ドリルジャンボ、ダンプカー等の通行がより容易となる。
【0085】
また、換気ダクト9などと一緒に照明装置を移動させることにより、照明装置の移動も容易になる。
【0086】
(網のカーテンの主な効果)
飛散防止カーテン2として網のカーテンを用いた場合は、飛散防止カーテン2が飛石を受け止めるときに、立体的にしなりながら(網目の形状も変化しながら)、飛石の衝撃を吸収し、飛散防止カーテン2の切羽側に落下させる。そのため、人頭大の大きな飛石も柔軟に受け止め、減速および落下させることができる。
【0087】
また、網のカーテンの繊維に多少の破断や損傷があったとしても、使用することができるため、耐久性に優れている。ワイヤーロープによる網のカーテンは、切創性や曲げに弱いが、ベクトラン等の柔軟性のある繊維を用いれば、前記の不具合を解消することができる。
【0088】
網のカーテンは通気抵抗が低く、爆風を逃すことができるため、バルーンカーテンに比べて、損傷が少ないという利点がある。バルーンカーテンは、カーテンによってトンネル横断面を密閉するため、発破時に生じる爆風(膨張ガス)の影響を受けやすい。そのため、爆風の影響を下げるために、切羽14からバルーンカーテンまでの空間体積を大きくしなければならない。しかし、網のカーテンの場合は、このようなことを考慮せずに、切羽14の近傍にカーテンを配置することができる。例えば、バルーンカーテン2を用いる場合、切羽14から30m以上(強力な爆薬を用いる場合は50m以上)離間させる必要であるが、網のカーテン2用いる場合は、例えば切羽14から10m程度に接近させることも可能である。
【0089】
以上のように、網のカーテンを切羽14の近傍に設けることによって、飛石を切羽14の近傍に集めることができる。また、飛散防止カーテン2を切羽14近傍に配置することで、自走式クラッシャーの退避場所も、切羽14に近づけることができる。例えば、バルーンカーテンを用いる場合、自走式クラッシャーを切羽14から50m程度離れた位置まで退避させる必要があったが、網のカーテンを用いることで、切羽14から15m程度の位置まで退避すれば済むことになる。
【0090】
以上の結果、自走式クラッシャーが移動する距離が短くなるとともに、飛石掻き寄せ積み込み作業が容易になるため、作業効率を向上させることができる。
【0091】
本来、自走式クラッシャーは移動を想定していない機械であるため、当該機械の足回りの劣化を避けるため、走行距離を短くした方がよく、前記移動距離の低減は大きな利点である。また、走行距離が短くなることで、燃費を削減することも可能である。さらに、従来の自走式クラッシャーは、工期を短くするために、バックで高速走行していた。そのため、接触損傷事故の可能性が高かったが、走行距離が短くなることにより、このような危険性を減らすことができる。
【0092】
また、照明装置を網のカーテンよりも坑口側へ退避させた場合であっても、網の隙間から切羽14を照らすことができるため、切羽14近傍の視認性が高くなり、作業の安全性が高くなる。
【0093】
換気を行う際に、網目から通気することができるため、換気設備で送気や吸引を行う際の効果が高い。
バルーンカーテンを用いた場合、発破時に生じた汚染空気を切羽14近傍に閉じ込めるため、その汚染空気の排出に時間がかかるが、網のカーテンを用いることで、このような不都合が解消される。
【0094】
また、バルーンカーテンは特別仕様であるため高価である。それとともに、バルーンが破れたときの補修費用が高い。さらに、バルーンカーテンを構成するシートが破れると、バルーンが膨らまなくなるため、繊細に扱う必要がある。本発明において、網のカーテンとして漁網を用いた場合、バルーンカーテンなどを用いた場合よりも、イニシャルコストやランニングコストを大幅に低減させることができるとともに、その扱いも容易となる。
【0095】
さらに、網のカーテンを用いた場合、小さな飛石、粉じん、音などは、飛散防止カーテン2を通って坑口側へ移動する。しかし、10mm以下の小さな飛石が坑口側へ飛散したとしても、後続の機械に与える影響は少ない。また、粉じんや音は、換気設備や坑口防音扉などによって、別途対策することも可能である。
【0096】
本発明においては、飛石、粉じん、音という3つをすべて堰き止めるバルーンカーテンがオーバースペックであり、それが原因でイニシャルコストが高くなっていることに着目した。
【0097】
本発明に係るトンネル工事用装置1の飛散防止カーテン2に網のカーテンを用いると、トンネル工事用装置1のイニシャルコストを低減させることが可能になる。なお、前記特許文献1や2のカーテンも爆風を通過させるものであるが、特別な態様のカーテンであるため高価である。網のカーテンとして、容易に入手可能な漁網を用いると、特許文献1や2のカーテンよりもさらにイニシャルコストを下げることができる。
【0098】
(第1摺動体、第2摺動体)
本発明に係るトンネル工事用装置は、第1レール3と摺動可能に接続された第1摺動体と、第2レール33と摺動可能に接続された第2摺動体を有することが好ましい。第1摺動体としては、ダクト移動用車輪42(例えば、ダクト移動用上車輪42aやダクト移動用横車輪42b)を例示することができ、第2摺動体としては、カーテン移動用車輪34を例示することができる。前記第1摺動体や第2摺動体は、前述のような車輪に限られるものではなく、例えば磁石を内蔵し、その磁石の磁力によって移動するものであってもよい。
【0099】
(トンネル工事方法)
一般的な山岳トンネル(NATM)の施工手順は、(1)掘削工程、(2)ズリ搬出工程、(3)コンクリート一次吹付け工程、(4)支保工建て込み工程、(5)コンクリート二次吹付け工程、(6)ロックボルト工程を有する。そして、(6)ロックボルト工程を終えた後に再び(1)掘削工程に戻る。なお、前記(1)掘削工程は、(1−1)装薬工程、(1−2)発破準備工程、(1−3)発破工程、(1−4)切羽換気工程を有する。また、(1−4)切羽換気工程と(2)ズリ搬出工程は、発破後処理工程に相当する。本発明に係るトンネル工事方法の第1実施形態について、
図9〜
図13を参照しつつ、以下に詳述する。なお、
図9〜
図13において示したトンネル工事装置は、前述の本発明に係る第1実施形態のトンネル工事装置である。
【0100】
(1.掘削工程)
(1−1.装薬工程)
装薬工程における平面図を
図9に示す。切羽14から坑口側に15〜20m程度離れた位置に飛散防止カーテン2を設置し、その飛散防止カーテン2よりもさらに坑口側に5〜10m程度離れた位置に換気ダクト9(詳しくは、換気ダクト9の切羽側先端部を指す。以下、トンネル工事方法の各工程の説明において同じ。)を配置している。
【0101】
(1−2.発破準備工程)
装薬工程を終えた後の発破準備工程では、飛散防止カーテン2と換気ダクト9をともに切羽側へ移動させる。この発破準備工程を終えた状態の平面図を
図10に示した。
【0102】
発破によって破砕石が坑口側へ飛散するが、飛散する範囲が広範囲になると、ズリ搬出機械を前後移動させる距離が増えるなど、その後のズリ搬出作業に労力がかかる。そのため、破砕石は切羽近傍に留めることが好ましい。そのため、
図10に示すように、発破準備工程において、飛散防止カーテン2を切羽近傍に配置することが好ましい。具体的には、飛散防止カーテン2を切羽14から坑口側に10〜25m程度離れた位置に設置することが好ましく、10〜15m程度離れた位置に設置することがより好ましい。切羽14から飛散防止カーテン2までの前後方向の距離が10mよりも短いと、飛散防止カーテン2が発破時の爆風によって破損するおそれがある。他方、切羽14から飛散防止カーテン2までの前後方向の距離が25mよりも長いと、破砕石が坑口側の広い範囲に飛散することになるため、後のズリ搬出工程の労力が増大する。
【0103】
他方、換気ダクト9の位置が切羽14に近いと、発破によって坑口側へ飛散する破砕石や爆風などによって、換気ダクト9が損傷してしまうおそれがある。そのため、飛散防止カーテン2よりも坑口側の位置に換気ダクト9を配置することが重要である。また、飛散防止カーテン2として網のカーテンを用いるような場合、網のカーテンの網目よりも小さな破砕石が飛散防止カーテン2を通り抜けて坑口側へ飛散するおそれがある。同時に、爆風も飛散防止カーテン2の網目を通って坑口側へ移動する。そのため、飛散防止カーテン2よりも坑口側の位置といえども、換気ダクト9を飛散防止カーテン2の近くに配置することには損傷のリスクがある。そこで、換気ダクト9は飛散防止カーテン2から坑口側に5m以上離れた位置に設置することが好ましく、飛散防止カーテン2から坑口側に10m以上離れた位置に設置することがより好ましい。他方、換気ダクト9を切羽14から離しすぎてしまうと、後の(1−4)の切羽換気工程において、換気ダクト9を切羽近傍まで移動させる時間が長くなり、迅速な換気を行いづらい。そのため、飛散防止カーテン2と前記飛散防止カーテン2よりも坑口側に位置する換気ダクト9の間の距離を10m以内にすることが好ましく、前記距離を5m以内にすることがより好ましい。
【0104】
(1−3.発破工程)
発破工程では、
図10に示す平面視の状態で発破を行う。
【0105】
(1−4.切羽換気工程)
発破工程で発破を行うことによって、切羽近傍に大量の微粒子が新たに発生し、切羽近傍の空間の大気環境が急激に悪化する。そのため、
図11に示すように、切羽換気工程おいて、換気ダクト9を迅速に切羽側へ移動させて、切羽近傍の空気の清浄化を図る。なお、
図11は換気ダクト9を切羽側に移動させた後の状態を示したものである。切羽14から換気ダクト9までの距離は、5〜15mにすることが好ましく、5〜10mにすることが好ましい。5mよりも短いと、切羽14と換気ダクト9の距離が近くなりすぎる。そのため、切羽14に極めて近い位置の空気は清浄化できるが、切羽14から坑口側へ少し離れた位置の空気を清浄化しづらい。反対に、15mよりも長いと、切羽14と換気ダクト9の距離が長くなりすぎる。そのため、切羽14近傍の空気を清浄化しづらい。
【0106】
なお、換気ダクト9を切羽側へ移動させる際には、飛散防止カーテン2の移動は行わない。前述のトンネル工事用装置のように、換気ダクト9と飛散防止カーテン2をトンネル延伸方向に別々に移動できるような構造にすることで、切羽換気工程のように、換気ダクト9のみを移動させたいときに有益である。なお、換気ダクト9は、飛散防止カーテン2に設けられた貫通孔55を通って、飛散防止カーテン2よりも切羽側へ移動する。
【0107】
(2)ズリ搬出工程
切羽換気工程後のズリ搬出工程では、ズリ搬出機械を用いて、発破によって生じた飛散石を坑口側へ搬出する。このズリ搬出機械としては、例えばタイヤによってトンネル床面を走行するものを挙げることができ、ズリを収集して搬出するためにトンネル切羽近傍を動き回ることになる。そのため、
図12に示すように、飛散防止カーテン2を坑口側へ移動させ、ズリ搬出機械によるズリの収集・搬出の妨げにならないようにすることが好ましい。具体的には、ズリ搬出機械の妨げにならないように、例えば切羽14から坑口側に20m以上離れた位置に飛散防止カーテン2を移動させることが好ましい。
【0108】
また、
図12に示すように、
図11に示した状態から換気ダクト9を若干(5〜10m程度)切羽側へ移動させることが好ましい。ズリ搬出機械(例えば、クローラショベルやダンプトラック)のディーゼルエンジンから排気ガス(NOxやCOが含まれる)が排出されたり、ショベルで土砂を持ち上げたときに粉塵が発生したりするため、換気が必要だからである。
【0109】
(3)コンクリート一次吹付け工程
ズリを搬出した後は、コンクリートの一次吹付けを行う。コンクリート一次吹付け工程の平面図を
図13に示した。このコンクリート一次吹付け工程では、
図12に示した状態から換気ダクト9を所定の位置に移動させることが好ましい。具体的には、トンネル延伸方向における切羽14から換気ダクト9までの距離を、切羽断面積の等価直径の1倍以内にすることが好ましい。すなわち、切羽断面積と同一の面積を有する真円の直径を等価直径といい、切羽14から換気ダクト9までの距離がこの等価直径よりも短くなるようにすることが好ましい。ただし、換気ダクト9の位置が切羽14に近すぎるとコンクリートの吹き付け作業の邪魔になるため、換気ダクト9をコンクリートの吹き付け作業に支障がない位置(切羽から5〜10m)まで離すことが好ましい。
【0110】
(4)支保工建て込み工程
(6)ロックボルト工程
コンクリートの一次吹付けを終えた後は、(4)支保工を建て込み、(5)コンクリートの二次吹付けを行い、(6)ロックボルトを打設する。(4)支保工建て込み工程、(6)ロックボルト工程では、換気ダクト9をトンネル延伸方向に後退させ、
図9に示す状態にする。切羽近傍の側壁や天井壁に対して、支保工を立て込み、ロックボルトを打設するため、換気ダクト9が切羽近傍にあると、これらの作業の邪魔になるからである。なお、一次吹付け工程の平面図(
図13)に示すように、飛散防止カーテン2は既に坑口側に位置しているため、支保工の建て込み、ロックボルトの打設の邪魔にはならない。そのため、飛散防止カーテン2を移動させる必要は特にない。
【0111】
(5)コンクリート二次吹付け工程
(4)支保工建て込み工程と(6)ロックボルト工程の間に、コンクリートの二次吹付けを行う。コンクリートの吹付けを行うと、切羽近傍に微粒子が大量に発生し、切羽近傍の空気が汚染される。そのため、切羽近傍の空気を清浄化するために、換気ダクト9を再び切羽近傍まで移動させることが好ましい。換気ダクト9を移動させる位置は、
図13に示すコンクリート一次吹付け時と同じでよい。なお、コンクリート吹付け時のコンクリートが飛散防止カーテン2に付着しないようにするため、
図13に示すように、飛散防止カーテン2は坑口側へ退避させることが好ましい。
【0112】
(第2実施形態)
本発明に係るトンネル工事用装置は、前述の第1実施形態に限られるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、
図14と
図15に示したような第2実施形態にすることができる。この第2実施形態のようにダクトフレーム30を省略することも可能である。なお、
図14に示すように、ダクトフレーム30を省略すると、右側カーテン2Rの面積が小さくなってしまうというデメリットがある。
【0113】
第2実施形態では、第1レール3と第2レール33を別々に設けており、第1実施形態のようなレール連結体32を有していない。第1レール3やダクト連結体41等については、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0114】
この第2実施形態では、第2レール33の形状を第1実施形態とは異なる形状とし、具体的には第1レール3と同じH鋼にしている。33aが上フランジ部であり、33bがウェブ部であり、33cが下フランジ部である。
【0115】
また、第2レール33の下方には、ダクト連結体41と同じ構造のガイドレール連結体141を設けている。142がダクト移動用車輪であり、142aがダクト移動用上車輪であり、142bがダクト移動用横車輪であり、146と147が車軸である。また、141aが底部であり、141bが側壁部である。
【0116】
第2レール33やガイドレール連結体141等については、構造が同じであるため、説明を省略する。
【0117】
なお、第2実施形態では、ダクトフレーム30を用いないため、第2レール33をカーテンレール用フレーム18に接続している。
【0118】
また、第2実施形態のように、第1レール3と第2レール33を別体にすると、トンネルの掘削に伴って、第1レール3と第2レール33を別々のモーターを用いて、トンネル延伸方向に移動させる必要があるため、イニシャルコストやランニングコストが増加してしまう。そこで、
図15に示すように、第1レール3と第2レール33の間を橋渡すようにレール連結体132を設け、第1レール3と第2レール33のどちらか一方のレールを移動させれば、それにつられて、他方のレールも移動する構造にすることが好ましい。
【0119】
(第3実施形態)
本発明に係る第3実施形態を
図16に示した。この
図16に示すように、第2レール33の周辺の構造に関して、
図3に示した第1実施形態を上下逆転させてもよい。詳しくは、
図16に示した第3実施形態では、第2レール33と支持軸45の位置を第1実施形態から上下逆転させている。正面視で、箱型に形成された第2レール33の上面が、カーテン移動用車輪34の上に摺動可能に乗った状態になっており、第2レール33の上面がカーテン移動用車輪34の上をトンネル延伸方向に移動することにより、カーテン2がトンネル延伸方向に移動する構造になっている。その他の説明は前述の重複となるため省略する。
【0120】
また、第3実施形態では、ダクト連結体41を設けずに、ボルトやナット等の既知の締結手段を用いて、第1レール3を換気ダクト9に直接連結している。そして、第1レール3の上フランジ部3aがダクト移動用車輪42の上に摺動可能に乗った状態になっており、第1レール3の上フランジ部3aがダクト移動用車輪42の上をトンネル延伸方向に移動することにより、換気ダクト9がトンネル延伸方向に移動する構造になっている。
【0121】
ダクト移動用車輪42は、車輪連結体50に連結している。この車輪連結体50は、高さ方向に延在する縦連結体50aと、横断方向に延在する横連結体50bを有し、縦連結体50aと横連結体50bはその中間部分で連結されて一体になっている。具体的には、縦連結体50aの高さ方向中間部分に横連結体50bがボルトやナットによって接続されており(溶接等で接続してもよい)、その接続部分を起点として(接続部分を基端部とする)、横連結体50bが左右にそれぞれ延在する構成になっている。横連結体50bの先端部の下面には、支持軸45と連結軸44を介して、カーテン移動用車輪34が取り付けられている。
【0122】
車輪連結体50aの上部には、横断方向に延在する連結軸50cが形成されており、この連結軸50cの両端部にそれぞれ車輪連結体移動用車輪80、80が取り付けられている。この車輪連結体移動用車輪80、80は、連結部材22の中間体27の下面27aの上に摺動可能に乗った状態になっており、車輪連結体移動用車輪80、80が中間体27の下面27aの上をトンネル延伸方向に移動することにより、車輪連結体50がトンネル延伸方向に移動する構造になっている。
【0123】
(トンネル工事用装置、トンネル工事方法の効果)
本発明は、飛散防止カーテン2がガイドレール40に沿って移動する構成である。このような構成にすることで、トンネル延伸方向への飛散防止カーテン2の移動が容易になり、トンネルの掘削の進行に合わせて、随時飛散防止カーテン2を切羽側へ移動させることができる。その結果、切羽14と飛散防止カーテン2の間の距離が短くなり、破砕石が拡散せずに切羽近傍に集まるため、破砕石の掻き寄せ積み込み作業が楽になり、作業効率が向上する。
【0124】
また本発明では、飛散防止カーテン2の移動に用いる第1レール3と換気ダクト9の移動に用いる第2レール33を別々に用意した。そのため、飛散防止カーテン2と換気ダクト9を別々にトンネル延伸方向に移動させることができる。例えば、飛散防止カーテン2と換気ダクト9の移動速度を変えたり、移動距離を変えたりすることができる。また、例えば飛散防止カーテン2を切羽側へ移動させ、換気ダクト9を坑口側へ移動させるなど、別々の方向に移動させることが可能である。また、飛散防止カーテン2と換気ダクト9の一方のみを移動させ、他方を移動させないという制御も可能となる。このような細やかな制御を可能にしたことで、例えば、(1)掘削工程、(2)ズリ搬出工程、(3)コンクリート一次吹付け工程、(4)支保工建て込み工程、(5)コンクリート二次吹付け工程、(6)ロックボルト工程において、飛散防止カーテン2と換気ダクト9を必要な位置に迅速に配置することができる。
【0125】
また、ダクト連結体32によって第1レール3と第2レール33を連結することにより、第1レール3と第2レール33を一体で移動させることが可能である。そのため、第1レール3を動かすためのモーターと、第2レール33を動かすためのモーターをそれぞれ別々に用意する必要がなくなり、イニシャルコストとランニングコストの低減を図ることができる。
【0126】
さらに、既設の設備(既設の第1レール3及び換気ダクト9)がある場合は、その第1レール3にダクト連結体32と第2レール33を取り付けることによって、本発明に係るトンネル工事用装置にすることができるため、イニシャルコストの低減を図ることができる。
【0127】
また、ガイドレール40のみを用いる場合と比べて、ガイドレール40と対向レール4を用いる場合の方が、カーテンレールフレーム18を支持する箇所が増える。その結果、カーテンレールフレーム18をより安定的にトンネル延伸方向へ移動させることができる。
【0128】
また、照明装置をガイドレールに沿って移動させるようにすると、従来よりも照明装置を容易に移動できるとともに、移動時間も短くなる。
【0129】
換気ダクト9と照明装置を一体化させる、またはガイドレール40と照明装置を一体化させることで、トンネル延伸方向への移動の制御が容易になる。発破作業に伴って、換気ダクト9やガイドレール40と、照明装置が移動するタイミングが同じになることが多いため、このような一体化が有効である。なお、照明装置、換気ダクト9およびガイドレール40のすべてを一体にしても良い。また、照明装置を対向レール4に沿って移動させてもよい。照明装置の移動が容易になるとともに、移動時間を短縮できる。
【0130】
また、飛散防止カーテン2がバルーンの場合、飛散防止カーテン2を移動させる度に空気を出し入れしなければならない。ガイドレール40を用いて飛散防止カーテン2を移動させる場合であっても、飛散防止カーテン2がトンネル周壁と擦れないようにするため、多少の空気の出し入れが必要となる。そこで、飛散防止カーテン2に網のカーテンを用いることで、空気の出し入れが不要となり、飛散防止カーテン2の移動が容易になり、移動時間を短縮できる。
【0131】
またバルーンカーテンは発破時の爆風によって破損する可能性が高い。そのため、切羽から所定距離(例えば50m以上)離して、バルーンカーテンを設置する必要がある。それに対して、飛散防止カーテン2が網のカーテンである場合は、爆風が網目を通り過ぎるため、爆風によって破損する危険性が少なくなる。その結果、切羽と飛散防止カーテン2(網)の間の距離を短くすることができ、破砕石を切羽近傍に留めることができる。
【0132】
なお、爆風を通過させる飛散防止カーテン2として、前記特許文献1や2のようなものも存在する。しかし、前記特許文献記載のカーテンは特注品になるため、イニシャルコストが高い。本発明の飛散防止カーテン2を一般的に入手可能なもの(例えば漁網)にすることで、イニシャルコストを大幅に抑えることができる。