(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴンドラ部は、要救助者が搭乗する空間が外気から遮断されておらず機外に露出していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の回転翼航空機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、様々な事業分野への無人航空機の応用が進められている。現在の主流となっている無人航空機である小型のマルチコプターは、一般に、各ロータがDCモータとこれに装着された固定ピッチプロペラとにより構成されており、制御部であるフライトコントローラが個々のロータの回転数を調節することで機体の姿勢制御および操舵を行う。このようなマルチコプターはその制御機能の多くがソフトウェアで実現されているため、機械的要素が少なく、機体設計の自由度やメンテナンス性に優れている。
【0005】
例えば乗客を輸送する無人航空機(いわゆるパッセンジャードローン)など、重量物を運搬する無人航空機をマルチコプターで実現しようとする場合、部品の耐久性や、安全性、可搬性、保管時のスペース効率、航続時間の制約など、種々の課題の要求度合が小型のマルチコプターよりも高くなる。機体が大型化・複雑化するほどこのような課題の困難性は高くなる。
【0006】
このような問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、簡易な構造で人を輸送可能な回転翼航空機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の無人航空機は、機外から操縦可能であり、複数のロータを有する機体部と、人が搭乗可能なゴンドラ部と、前記ゴンドラ部内に向けられた撮影手段と、音声出力手段と、を備えることを要旨とする。これにより回転翼航空機の操縦者またはそのチームは、搭乗者の様子を確認しながら機体を操縦することが可能となる。
【0008】
このとき、前記ゴンドラ部の底部は前記複数のロータよりも低い位置に配置され、前記複数のロータのうち軸間距離が最長となる一対のロータ(以下、基準回転翼という)の軸間距離は、上下方向における前記基準回転翼の回転面の位置から前記ゴンドラ部の底部までの距離よりも長いことが好ましい。推力源であるロータの位置と搭乗者の重心位置とが上下に離れている場合、その距離が長くなるほど搭乗者が生じさせるモーメントは大きくなる。かかるモーメントは飛行中の機体の姿勢を乱し、また必要な姿勢変化を妨げる要因になる。上記構成の回転翼航空機は、ロータ(基準回転翼)の回転面の位置からゴンドラ部の底部までの距離がロータの軸間距離よりも短くされていることにより、上記モーメントによる機体の姿勢への影響が緩和される。
【0009】
また、搭乗者がロータよりも高い位置に搭乗する場合、搭乗者の衣服や髪、持ち物などがロータに吸い込まれないよう、搭乗者をロータから隔離するキャビンタイプの客室(上記特許文献1の
図1に示されるような客室)が必要となる。本発明の回転翼航空機では、ゴンドラ部の底部がロータよりも低い位置に配置されるため、このような事故を未然に防止することができる。これにより、簡易な構造のゴンドラ部を採用することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記ゴンドラ部は、人が搭乗する空間が外気から遮断されていない構造としてもよい。ゴンドラ部の搭乗空間を機外に露出させることにより、キャビンタイプの客室に比べてゴンドラ部を小型化・軽量化することができる。また、扉の開閉が必要な客室に比べ、人の乗り降りをスムーズに行うことができる。
【0011】
また、本発明において、前記ゴンドラ部は、人が搭乗可能な床面または座面と、上下に延びる複数の柱部と、を有し、前記床面または前記座面は前記複数の柱部に固定されていることが好ましい。人の搭乗に必要となる最小限の部品でゴンドラ部を構成することにより、ゴンドラ部のサイズや重量を最小化することができる。
【0012】
また、本発明の回転翼航空機は、前記複数の柱部が前記機体部の不可動部に固定され、飛行中に前記機体部が傾いたときには前記ゴンドラ部もこれに連動して傾く構造にしてもよい。機体部とゴンドラ部とが固定されている場合、飛行中にゴンドラ部が振り子状に揺れ続けることが抑えられる一方、機体部はゴンドラ部のモーメントの影響を直に受けることとなる。本発明の回転翼航空機は、ロータ(基準回転翼)の回転面の位置からゴンドラ部の底部までの距離がロータの軸間距離よりも短くされており、これにより上記モーメントによる姿勢への影響が緩和される。そのため機体部とゴンドラ部とが直接固定される構造を採用した場合でも、安定して飛行を行うことができる。
【0013】
また、本発明において、前記機体部は、前記複数のロータを支持する複数のアームと、前記複数のアームを支持するハブ部である胴部と、を有し、前記複数の柱部は前記胴部に支持されることが好ましい。このとき、前記複数の柱部は上下に伸縮可能であることがより好ましい。柱部を例えばテレスコピック構造にすることで、回転翼航空機の可搬性や保管時のスペース効率を改善することができる。
【0014】
また、本発明において、前記機体部は、前記複数のロータを支持する複数のアームと、前記複数のアームを支持するハブ部である胴部と、を有し、前記アームは、前記胴部との接続部を回転中心として上下に旋回可能であることが好ましい。アームを折り畳み式にすることにより、回転翼航空機の可搬性や保管時のスペース効率を改善することができる。
【0015】
また、前記ゴンドラは、人が起立可能な床面を有し、前記ゴンドラ部の底部は前記床面であってもよい。
【0016】
また、本発明の回転翼航空機は、前記ゴンドラ部内に向けられた映像表示手段、前記ゴンドラ部内に向けられた前記音声出力手段、および/または、前記ゴンドラ部内に配置された音声入力手段を備えることが好ましい。これにより回転翼航空機の操縦者またはそのチームは、搭乗者と会話したり搭乗者の様子を確認したりしながら機体を操縦することが可能となる。
【0017】
また、本発明の回転翼航空機は、前記ゴンドラに搭乗した人に装着させるヘルメットをさらに備え、前記ヘルメットは、音声入力手段および音声出力手段を有することが好ましい。搭乗者が装着するヘルメット内に音声入力手段と音声出力手段とを設けることにより、搭乗者は回転翼航空機の操縦者等の第三者と、水平回転翼の風切り音等のノイズを抑えつつ会話することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本発明の回転翼航空機によれば、簡易な構造で人を輸送することが可能となり、例えば部品の耐久性や、可搬性、保管時のスペース効率、必要な航続時間の確保など、パッセンジャードローンの実運用にあたっての様々な課題のハードルを下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明するマルチコプター10は水平回転翼である複数のロータ30を備える回転翼航空機である。マルチコプター10は機外から操縦される無人航空機であり、要救助者を一人ずつピックアップして近くの安全な場所へ避難させることをその目的としている。なお、本発明でいう「水平回転翼」とは、回転軸の軸線方向が鉛直に向けられ、回転面が水平面となる回転翼をいう。回転軸や回転面を多少傾けたものであっても、その推力が主に上方への成分で構成されるものであれば本発明の「水平回転翼」に含まれる。
【0021】
また、以下の説明における「上下」とは、各図に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向を意味しており、Z
1側を「上」、Z
2側を「下」とする。「前後」とは、同座標軸のX軸に平行な方向を意味しており、X
1側を「前」、X
2側を「後ろ」とする。同様に、「左右」とは、同座標軸のY軸に平行な方向を意味しており、Y
1側を「右」、Y
2側を「左」とする。また、「水平」とは、同座標軸に示されるXY平面方向を意味している。
【0022】
(構成概要)
図1は、マルチコプター10の外観を示す斜視図である。
図2は、マルチコプター10に要救助者が搭乗したときの様子を示す斜視図である。
図1および
図2に示されるように、マルチコプター10は、要救助者の搭乗部であるゴンドラ部Pと、ロータ30の揚力によりゴンドラ部Pを吊り上げる機体部Bと、により構成されている。なお、
図2では図示を省略しているが、要救助者は機体部Bまたはゴンドラ部Pに接続された安全帯を着用している。
【0023】
(機体部)
本形態の機体部Bは、4基のロータ30を支持する4本のアーム40と、これらのアーム40を支持するハブ部である胴部50と、を有している。アーム40は胴部50から前後左右に水平に延びており、ロータ30は各アーム40の先端に固定されている。胴部50は、胴部50に取り付けられた電装類を保護するボディカバー59を有している。
【0024】
アーム40は円筒パイプからなる軸体であるアームパイプ41を有しており、ロータ30はその先端に取り付けられている。ロータ30は、モータ31(
図8参照)と、モータ31の出力軸に装着された折畳式固定ピッチプロペラ32(以下、単に「プロペラ32」という)とにより構成されている。本形態のモータ31はアームパイプ41の先端に被せられたモータカバー33に覆われている。各アームパイプ41の根元部分には、ロータ30の回転速度を制御するESC36(electronic speed control)(
図8参照)が収容されたESCケース42が取り付けられている。
【0025】
(ゴンドラ部)
ゴンドラ部Pは、パイプ材や平板材を組み合わせて構成されたケージ(檻)状の搭乗部である。ゴンドラ部Pのパイプ材や平板材にはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)や金属材料が用いられており、ゴンドラ部Pは要救助者一人分の体重を十分な余裕をもって支持することができる。
【0026】
ゴンドラ部Pは、要救助者が起立した姿勢で搭乗する床面74と、上下に延びる4本の柱部71とを有している。床面74は、これら柱部71に囲まれた中に配置されており、柱部71に固定されている。
【0027】
図1および
図2に示されるように、本形態のゴンドラ部Pは、要救助者が搭乗する空間が外気から遮断されておらず、機外に露出している。本形態のマルチコプター10はこのような簡易な構造のゴンドラ部Pを備えていることにより、例えば搭乗空間を壁で完全に覆うキャビンタイプの客室を備える構成に比べ、搭乗部が顕著に小型化・軽量化されている。また、乗り降りに際して扉の開閉が必要となるキャビンタイプの客室に比べ、本形態のゴンドラ部Pは要救助者がスムーズに乗り降りすることができる。
【0028】
本形態の柱部71は4本の円筒パイプにより構成されている。柱部71はその上端部が胴部50に固定されており、下端部は床面74の四隅に固定されている。右側の2本の柱部71および左側の2本の柱部71は、それぞれ、前後に延びる円筒パイプである補強部72で連結されている。また、前側の2本の柱部71は、タブレット端末Tを支持する左右に延びる円筒パイプであるタブレットアーム73で連結されている。補強部72またはタブレットアーム73で連結された各柱部71は、これら補強部72およびタブレットアーム73を介して互いのたわみを制限し合い、これによりゴンドラ部Pの剛性が高められている。
【0029】
タブレット端末Tは、ゴンドラ部Pの内側に向けられた撮影手段であるカメラ81、映像表示手段であるディスプレイ82、および、音声出力手段であるスピーカー83を有している。また、左前の柱部71には、搭乗者の顔の位置にマイク84が取り付けられている。これにより例えばマルチコプター10の操縦者や救助スタッフは、要救助者の状態や被災現場の状況、他の要救助者の有無などを要救助者に質問したり、離陸前に要救助者に対して安全確保のための指示をしたり、飛行中の要救助者の様子を確認したりすることができる。特にカメラ81は、安全帯が指示通り適切に装着されていることを確認したり、飛行中の要救助者の意識の有無、表情、顔色など把握する上で有意である。
【0030】
なお、
図2に示されるように、要救助者がヘルメットを装着可能な状態にあるときには、ヘルメットに設けられたスピーカー83およびマイク84を使用してもよい。これにより搭乗者はロータ30の風切り音等のノイズを避けつつ、マルチコプター10の操縦者や救助スタッフと会話することが可能となる。
【0031】
本形態の床面74は、略正方形の板面を上下に向けて上下に平行に並べて配置された2枚のプレート741の上面である。これらプレート741にはマルチコプター10のスキッド75が接続されている。
【0032】
また、本形態のマルチコプター10は要救助者を起立した姿勢で搭乗させる構成とされているが、例えば要救助者を座らせて輸送する座面を柱部71に固定してもよい。その他、床面74をより広く設けて要救助者を横たえて搭乗させる構成も考えられる。
【0033】
(機体構造)
図3は、マルチコプター10の機体構造の特徴を示す図である。
図3(a)はマルチコプター10の平面図である。
図3(b)はマルチコプター10の正面図であり、ロータ30(後述する基準回転翼30a)の軸間距離L
1と、ロータ30の回転面から床面74までの距離L
2との関係を示している。
【0034】
本形態のマルチコプター10は、ゴンドラ部Pが機体部Bの下に配置されている。マルチコプター10が有するロータ30のうち軸間距離が最長となる一対のロータ30を基準回転翼30aとよぶものとして、基準回転翼30aである左右のロータ30の軸間距離L
1は、上下方向におけるロータ30aの回転面の位置からゴンドラ部Pの底部である床面74までの距離L
2よりも長い。なお、本形態のロータ30は機体部Bの中心からの距離がどれも等しく、前後のロータ30の軸間距離も左右のロータ30の軸間距離も同じである。そのため前後のロータ30を基準回転翼30aとしてもよい。
【0035】
推力源であるロータ30の位置と搭乗者の重心位置とが上下に離れている場合、その距離が長くなるほど搭乗者が生じさせるモーメントは大きくなる。かかるモーメントは飛行中のマルチコプター10の姿勢を乱し、またマルチコプター10が移動するために必要な機体部Bの姿勢変化を妨げる要因となる。本形態のゴンドラ部Pは、柱部71が機体部Bの不可動部に移動不能に固定されており、飛行中に機体部Bが傾いたときにはゴンドラ部Pもこれに連動して傾く。本形態のマルチコプター10は固定ピッチのプロペラ32を有しており、機体を水平に飛行させる際には機体部Bを傾ける必要がある。一方、ゴンドラ部Pとその搭乗者の重量は、傾いた機体部Bの姿勢を水平に戻す方向へ作用する。
【0036】
本形態のマルチコプター10は、ロータ30(基準回転翼30a)の回転面の位置からゴンドラ部Pの床面74までの距離が基準回転翼30aの軸間距離よりも短くされていることにより、上記モーメントによるマルチコプター10の姿勢への影響が抑えられている。なお、ゴンドラ部Pは常にその全体が機体部Bの下に配置されている必要はなく、ゴンドラ部Pの底部である床面74がロータ30よりも低い位置に配置されていれば上述の姿勢安定化効果の少なくとも一部は得られる。
【0037】
搭乗者がロータ30よりも高い位置に搭乗する場合、搭乗者の衣服や髪、持ち物などがロータ30に吸い込まれないよう、搭乗者をロータ30から完全に隔離するキャビンタイプの客室が必要となる。本形態のマルチコプター10では、ゴンドラ部Pがロータ30よりも下に配置されているためこのような事故は生じない。これにより搭乗空間が外気にされされる簡易な構造のゴンドラ部Pを採用することが可能とされている。
【0038】
本形態では、ゴンドラ部Pが機体部Bに固定されていることにより、マルチコプター10の飛行中にゴンドラ部Pが振り子状に揺れ続けることが抑えられる。その一方、機体部Bはゴンドラ部Pのモーメントの影響を直に受けることとなる。上でも述べたように、本形態のマルチコプター10は、ロータ30(基準回転翼30a)の回転面の位置からゴンドラ部Pの床面74までの距離が基準回転翼30aの軸間距離よりも短くされており、これにより上記モーメントによる姿勢への影響が軽減されている。そのため本形態のマルチコプター10のように機体部Bとゴンドラ部Pとが直接固定される構造を採用した場合でも、マルチコプター10を安定して飛行させることができる。
【0039】
なお、機体部Bとゴンドラ部Pの接続構造は本形態のものには限られず、例えばマルチコプター10を前進させる垂直回転翼を機体部Bに別途搭載してもよく、機体部Bの傾きを吸収してゴンドラ部Pの姿勢を一定に維持する姿勢安定化機構を介してゴンドラ部Pを支持してもよい。その他、水平飛行時の機体部Bの傾きを抑える方法として、例えば各ロータ30のプロペラ32を可変ピッチプロペラにしたりすることが考えられる。
【0040】
このように本形態のマルチコプター10は、その用途を要救助者の速やかな輸送に特化し、人の搭乗部であるゴンドラ部Pを必要最小限の部品で簡易な構造にすることにより、例えば部品の耐久性や、可搬性、保管時のスペース効率、必要な航続時間の確保など、パッセンジャードローンの実運用にあたっての様々な課題を現実的に解消可能としている。
【0041】
(折り畳み構造)
本形態のマルチコプター10は、そのアーム40およびゴンドラ部Pをコンパクトに折り畳むことができる。これによりマルチコプター10の運搬時や保管時におけるスペース効率が高められる。
図4は、マルチコプター10のアーム40およびゴンドラ部Pを折り畳んだ状態を示す斜視図である。
【0042】
マルチコプター10のアーム40は、胴部50との接続部45を回転中心としてその先端を上下に旋回させることができる。マルチコプター10を運搬または保管するときには、アーム40の先端を下に向けるように折り畳み、マルチコプター10を使用するときにはアーム40を水平に展開する。また、ゴンドラ部Pはテレスコピック構造の柱部71を有しており、柱部71を上下に伸縮させることができる。また、本形態のマルチコプター10はプロペラ32も折畳式プロペラであり、マルチコプター10の運搬・保管の都度取り外す必要がない。
【0043】
胴部50は、略8角形の板面を有する2枚のプレートであるセンタープレート51を有している。これら2枚のプレートはその板面を上下に向けて上下に平行に並べて配置されている。センタープレート51の内側には、柱部71の上端部が固定される円筒形状の固定具である4つの柱部ホルダ52と、接続部45を回転可能に支持する固定具である4つのアームホルダ53とが固定されている。アームホルダ53は平面視コの字型に形成された軸受部材である。センタープレート51にはアームホルダ53の配置箇所に切欠き511が設けられており、これにより接続部45はセンタープレート51に接触することなく回転することができる。
【0044】
図5は、アーム40が折り畳まれたときの接続部45およびアームホルダ53の状態を示す平面図(a)および正面図(b)である。
図6は、アーム40が水平に展開されたときの接続部45およびアームホルダ53の状態を示す平面図(a)および正面図(b)である。
【0045】
胴部50のアームホルダ53と、アーム40の接続部45とは、アーム40の先端を上下に旋回可能に支持するヒンジ機構と、水平に展開されたアーム40の位置を固定するロック機構とを構成している。
【0046】
アームホルダ53および接続部45には、ピン91,92が挿通されるピン穴が形成されている。
図5に示されるように、アームホルダ53のピン穴531は、接続部45のピン穴451に重ねられる。これらピン穴531,451にピン91が挿通されることにより、接続部45はピン穴451を回転中心として回転可能に支持される。
【0047】
図6に示されるように、アームホルダ53のピン穴532は、アーム40が水平に展開されたときに接続部45のピン穴452に重ねられる。これらピン穴532,452にピン92が挿通されることによりアーム40は水平に展開された状態でその位置が固定される。
【0048】
(アームの展開補助構造)
図7は、折り畳まれたアーム40を水平に展開するときの作業者の負担を軽減する構造を示す模式図である。
【0049】
アーム40は、その支持するロータ30の動力源であるバッテリー37が装着されるバッテリー保持部であるバッテリーケース43を有している。そして、アーム40の回転中心Aをその軸線方向から見たときに、回転中心Aを通る鉛直線Vにより区分けされる2つの領域のうち、胴部50の中心側の領域(
図7視左側)を回転中心Aの背部としたときに、バッテリーケース43に装着されたバッテリー37の重心位置Gは、アーム40の旋回により移動する軌道R上の一部において、回転中心Aの背部に配置される。
【0050】
本形態のアーム40は、バッテリー37の重心位置Gがアーム40の長手方向(
図7視上下方向)における回転中心Aの位置よりもアーム40の後端側にある。そのため、バッテリー37の重心位置Gはバッテリー37の旋回軌道R上の少なくとも一部においてアーム40の回転中心Aの背部を通る。アーム40が旋回する角度範囲のうち、バッテリー37の重心位置Gが回転中心Aの背部に配置される範囲では、バッテリー37の重量がアーム40の先端を持ち上げるように作用する。これにより作業者はバッテリー37の重量を利用してアーム40を持ち上げることができる。
【0051】
また、本形態のバッテリーケース43には複数のバッテリー37が装着される。本形態のマルチコプター10では、バッテリー37の総重量が大きくなるほど作業者は容易にアーム40を持ち上げることが可能となる。なお、本形態のマルチコプター10は作業者が人力でアーム40を水平展開する仕様とされているが、例えばサーボや油圧機構などを用いた昇降装置を使ってアーム40を持ち上げる場合にも、昇降装置に要求される性能要件を下げることができる。
【0052】
また、本形態のアーム40は、アームパイプ41とバッテリーケース43とを接続するリフト部44を有している。リフト部44を回転中心Aの軸線に沿う方向から見たときに、つまりリフト部44を
図7に示される方向から見たときに、リフト部44は、バッテリー37の重心位置Gと回転中心Aとの距離rを長くするように、つまりバッテリー37の重心位置Gを回転中心Aから遠ざけるようにバッテリーケース43を支持している。バッテリー37の重心位置Gと回転中心Aとの距離rを長くすることにより、バッテリー37の重量によるモーメントを大きくすることができる。これにより作業者はより容易にアーム40を持ち上げることが可能となる。
【0053】
本形態のバッテリーケース43は、作業者がバッテリー37を容易に着脱できるように、アーム40を折り畳んだときにバッテリーケース43の開口が作業者側を向くように配置されている。ここで、例えばアーム40が折り畳まれているときのバッテリーケース37の初期位置を、本形態においてアーム40が水平展開されたときのバッテリーケース37の位置(
図7において破線で示されるバッテリー37の位置)に変更すれば、アーム40が折り畳まれた状態から水平に展開されるまでの全範囲において作業者の負担を軽減することができる。なおその場合、バッテリーケース43とセンタープレート51との干渉を防ぐため、例えばセンタープレート51の切欠き511をより大きくしたり、切欠き511が極端に大きくなることを防ぐようにバッテリーケース43の構造を変更したり、リフト部44の形状を変更したりする必要がある。
【0054】
マルチコプター10は要救助者を輸送するいわゆるパッセンジャードローンであり、比較的大型の無人航空機である。ロータ30を含むアーム40は一本で10kg程度の重量があり、さらに、一本のアーム40に装着されるバッテリー37も10kg程度の重量がある。マルチコプター10は緊急時に用いられる機体であり、出動時には少人数で速やかに離陸準備を行えることが好ましい。本形態のマルチコプター10は、マルチコプター10の一部であるバッテリー37の重量を利用してアーム40の展開を補助することにより、救助スタッフの人数が限られている場合でも、現場において速やかにマルチコプター10の離陸準備を整えることができる。
【0055】
また、本形態のアーム40は、ロータ30、ESC36、およびバッテリーケース43を備えている。これによりロータ30がアーム40を単位としてユニット化されており、機体設計時にロータ30数の増減を簡便に行うことが可能とされている。
【0056】
(機能構成)
図8はマルチコプター10の機能構成を示すブロック図である。本形態のマルチコプター10は、制御部であるフライトコントローラFC、ロータ30、および、操縦者(オペレータ端末61)との通信を行う通信装置62を備えている。また、操縦者と救助スタッフは、要救助者側のカメラ81等のコミュニケーションツールC1と通信可能なコミュニケーションツールC2であるカメラ86、ディスプレイ87、スピーカー88、およびマイク89を備えている。
【0057】
フライトコントローラFCはその主構成として制御装置20を備えている。制御装置20は、中央処理装置であるCPU21と、RAMやROM・フラッシュメモリなどの記憶装置からなるメモリ22とを有している。
【0058】
フライトコントローラFCはさらに、IMU25(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)、GPS受信器26、気圧センサ27、電子コンパス28、およびレーザ測距センサ29を含む飛行制御センサ群Sを有しており、これらは制御装置20に接続されている。
【0059】
IMU25はマルチコプター10の傾きを検出するセンサであり、主に3軸加速度センサおよび3軸角速度センサにより構成されている。GPS受信器26は、正確には航法衛星システム(NSS:Navigation Satellite System)の受信器である。GPS受信器26は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)または地域航法衛星システム(RNSS:Regional Navigational Satellite System)から現在の経緯度値を取得する。気圧センサ27は、検出した気圧高度からマルチコプター10の海抜高度(標高)を特定する高度センサである。電子コンパス28には3軸地磁気センサが用いられており、電子コンパス28はマルチコプター10の機首の方位角を検出する。また、本形態のマルチコプター10は機体から下に向けられたレーザ測距センサ29を有しており、これにより地面や床面からの対地高度を取得することができる。
【0060】
フライトコンローラFCは、これら飛行制御センサ群Sにより、機体の傾きや回転のほか、飛行中の経緯度、高度、および機首の方位角を含む自機の位置情報を取得することが可能とされている。
【0061】
なお、本形態の飛行制御センサ群Sは一例であり、フライトコンローラFCを構成するセンサ類は本形態の組み合わせには限られない。例えば、気圧センサ27を省略した構成や、レーザ測距センサ29を視差や赤外線・超音波など他の方式の測距センサにすることが考えられる。また、GPS受信器26が電波を受信不能な場所では、機体の水平移動をオプティカルフローセンサや画像認識等で検知することが考えられる。その他、レーザ測距センサ29を追加して、上下前後左右の周辺物との距離を測定し、その距離からマルチコプター10の空間位置を特定することも可能である。
【0062】
制御装置20は、マルチコプター10の飛行時における姿勢や基本的な飛行動作を制御するプログラムである飛行制御プログラムFSを有している。飛行制御プログラムFSは、飛行制御センサ群Sから取得した情報を基にESC36を介して個々のロータ30の回転数を調節し、機体の姿勢や位置の乱れを補正しながらマルチコプター10を飛行させる。なお、本形態のマルチコプター10では固定ピッチプロペラのロータ30が採用されているが、例えば可変ピッチプロペラを備えるロータを採用し、そのピッチ角を個々に制御して飛行動作を制御することもできる。また、ロータ30の駆動源もモータ31には限られず、例えば機体部Bにエンジンを固定し、その駆動力を動力伝達機構で各ロータ30に分岐させることも考えられる。
【0063】
制御装置20はさらに、マルチコプター10を自律飛行させるプログラムである自律飛行プログラムAPを有している。そして、制御装置20のメモリ22には、マルチコプター10の目的地や経由地の経緯度等の座標、飛行中の高度や速度などが指定されたパラメータである飛行計画FPが登録されている。自律飛行プログラムAPは、オペレータ端末61からの指示を開始条件として、飛行計画FPに従ってマルチコプター10を自律的に飛行させる。自律飛行プログラムAPは、例えば要救助者のピックアップ後にマルチコプター10を離陸地点に戻すときや、要救助者が複数人いて同じ経路を繰り返し飛行させる場合などに用いられる。
【0064】
このように、本形態のマルチコプター10は高度な飛行制御機能を備えた無人航空機である。ただし、本発明の無人航空機はマルチコプター10の形態には限定されず、例えば飛行制御センサ群Sから一部のセンサが省略された機体や、自律飛行機能を備えず手動操縦のみにより飛行可能な機体を用いることもできる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。