(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした改質ガスの凝縮水を排出するための排水ラインを備える燃料電池システムにおいては、還流ラインから排水ラインを介して改質燃料ガス(水素)が外部へ排出されないようにするために排水ラインにフロート式のドレンバルブを設置することが考えられる。ドレンバルブは、還流ラインに凝縮水が溜まっていない状態では閉弁して改質燃料ガス(水素)の排出を防止し、還流ラインに凝縮水が溜まると、フロートが浮いて開弁することで、溜まった凝縮水を外部へ排水する。但し、こうしたドレンバルブを設置することは、システムを複雑化させ、コストの増加を招いてしまう。
【0005】
本発明の燃料電池システムは、簡易な構成で、還流ラインを流れる改質ガスが外部へ漏れるのを防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料電池システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の燃料電池システムは、水素を含む改質ガスと酸素を含む酸化剤ガスとに基づいて発電する燃料電池を備える燃料電池システムであって、原燃料ガスを供給する原燃料ガス供給装置と、前記原燃料ガスに含まれる硫黄分を水素を用いて脱硫する脱硫器と、水を蓄える水タンクと、前記脱硫器で脱硫された原燃料ガスを前記水タンク内の水を用いて改質して前記改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された改質ガスの一部を前記脱硫器に環流させる環流ラインと、前記環流ライン内の改質ガスに含まれる水分を排出する排水ラインと、前記排水ラインに設けられ、滞留する水によって前記排水ラインを水封する水封部と、水源から給水弁を介して前記水タンクへ水を供給する給水ラインと、前記給水ラインにおける前記給水弁と前記水タンクとの間に設けられた水精製器と、前記給水ラインの前記水精製器の上流側で分岐し、前記給水ラインを流れる水の一部を前記水封部に供給する分岐ラインと、前記給水弁を制御する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の第1の燃料電池システムでは、原燃料ガス供給装置と脱硫器と水タンクと改質器とを備えるものにおいて、改質器で生成された改質ガスの一部を脱硫器に環流させる環流ラインと、環流ライン内の改質ガスに含まれる水分を排出する排水ラインと、排水ラインに設けられ滞留する水によって排水ラインを水封する水封部と、水源から給水弁を介して水タンクへ水を供給する給水ラインと、給水ラインにおける給水弁と水タンクとの間に設けられた水精製器と、給水ラインの水精製器の上流側で分岐し給水ラインを流れる水の一部を水封部に供給する分岐ラインとを設ける。これにより、水タンクへの給水に伴って水封部に水を供給して排水ラインを水封することができる。この結果、簡易な構成で、還流ラインを流れる改質ガスが外部へ漏れるのを防止することができる。ここで、「水封部」は、U字状に屈曲して水を滞留可能なU字部を例示することができる。
【0009】
こうした本発明の第1の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記給水ラインを流れる水の流量を少なくとも2段階に変化させて前記水タンクと前記水封部とに水が供給されるよう前記給水弁を制御するものとしてもよい。こうすれば、給水ラインを流れる水の流量を比較的多くすることで、給水ラインの水位を分岐ラインの分岐位置を超えてオーバーフローさせ、オーバーフローさせた水を水封部に供給することができる。また、給水ラインを流れる水の流量を比較的少なくすることで、給水ラインの水位を分岐ラインの分岐位置よりも下げ、給水ラインの水が分岐ラインへ流れ込むのを抑制しつつ、水タンクに水を供給することができる。
【0010】
また、本発明の第1の燃料電池システムにおいて、前記水精製器は、前記水タンクの所定水位よりも低い位置に設けられるものとしてもよい。こうすれば、水精製器の上部まで水を満たすことができるため、システム運転中に仮に改質ガスが排水ラインを介して給水ラインに流入した場合であっても、改質ガスが水精製器に触れないようにして水精製器の劣化を抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明の第1の燃料電池システムにおいて、可燃ガスのガス漏れを検出するための可燃ガスセンサを備え、前記制御装置は、前記可燃ガスセンサによりガス漏れが検出されたとき、前記水封部に水が供給されるよう前記給水弁を制御するものとしてもよい。こうすれば、システムの運転中に排水ライン(水封部)が水封されていない場合には、改質ガスが排水ラインを介して外部へ排出されるため、可燃ガスセンサを用いて排水ラインの水封の有無を判断することができる。そして、可燃ガスセンサによりガス漏れが検出された場合に水封部に水を供給するから、排水ラインをより確実に水封して以降のガス漏れを防止することができる。この態様の本発明の第1の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記可燃ガスセンサによりガス漏れが検出されたときに前記水封部に水が供給されるよう前記給水弁を制御したにも拘わらず前記可燃ガスセンサによるガス漏れの検出が継続されると、システムの運転を停止するものとしてもよい。こうすれば、排水ラインが水封されていないこと以外の何らかの異常によってガス漏れが発生したと判断してシステムの運転を停止するから、安全性を確保することができる。
【0012】
本発明の第2の燃料電池システムは、水素を含む改質ガスと酸素を含む酸化剤ガスとに基づいて発電する燃料電池を備える燃料電池システムであって、原燃料ガスを供給する原燃料ガス供給装置と、前記原燃料ガスに含まれる硫黄分を水素を用いて脱硫する脱硫器と、水を蓄える水タンクと、前記脱硫器で脱硫された原燃料ガスを前記水タンク内の水を用いて改質して前記改質ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成された改質ガスの一部を前記脱硫器に環流させる環流ラインと、前記環流ライン内の改質ガスに含まれる水分を排出する排水ラインと、前記排水ラインに設けられ、滞留する水によって前記排水ラインを水封する水封部と、水源から給水弁を介して前記水タンクへ水を供給する給水ラインと、前記給水ラインにおける前記給水弁と前記水タンクとの間に設けられた水精製器と、前記水タンクからオーバーフローした水を前記水封部に供給するオーバーフローラインと、前記給水弁を制御する制御装置と、を備えることを要旨とする。
【0013】
この本発明の第2の燃料電池システムでは、原燃料ガス供給装置と脱硫器と水タンクと改質器とを備えるものにおいて、改質器で生成された改質ガスの一部を脱硫器に環流させる環流ラインと、環流ライン内の改質ガスに含まれる水分を排出する排水ラインと、排水ラインに設けられ滞留する水によって排水ラインを水封する水封部と、水源から給水弁を介して水タンクへ水を供給する給水ラインと、給水ラインにおける給水弁と水タンクとの間に設けられた水精製器と、水タンクからオーバーフローした水を水封管に供給可能なオーバーフローラインとを設ける。これにより、水タンクへの給水時に水タンクをオーバーフローさせることで水封部に水を供給することができる。この結果、簡易な構成で、還流ラインを流れる改質ガスが外部へ漏れるのを防止することができる。ここで、「水封部」は、U字状に屈曲して水を滞留可能なU字部を例示することができる。
【0014】
こうした本発明の第2の燃料電池システムにおいて、前記水精製器には、該水精製器を通過した水を前記水タンクへ吐出する吐出管が連結され、前記吐出管は、吐出口が前記水タンク内の水に浸漬される位置まで延在されているものとしてもよい。こうすれば、システム運転中に仮に排水ラインからオーバーフローラインを介して水タンク内に改質ガスが流入した場合であっても、改質ガスが水精製器に触れることがなく、水精製器の劣化を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の第2の燃料電池システムにおいて、可燃ガスのガス漏れを検出するための可燃ガスセンサを備え、前記制御装置は、前記可燃ガスセンサによりガス漏れが検出されたとき、前記水タンクをオーバーフローさせて前記水封部に水が供給されるよう前記給水弁を制御するものとしてもよい。こうすれば、システムの運転中に排水ライン(水封部)が水封されていない場合には、改質ガスが排水ラインを介して外部へ排出されるため、可燃ガスセンサを用いて排水ラインの水封の有無を判断することができる。そして、可燃ガスセンサによりガス漏れが検出された場合に水封部に水を供給するから、排水ラインをより確実に水封して以降のガス漏れを防止することができる。この態様の本発明の第2の燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記可燃ガスセンサによりガス漏れが検出されたときに前記水封部に水が供給されるよう前記給水弁を制御したにも拘わらず前記可燃ガスセンサによるガス漏れの検出が継続されると、システムの運転を停止するものとしてもよい。こうすれば、排水ラインが水封されていないこと以外の何らかの異常によってガス漏れが発生したと判断してシステムの運転を停止するから、安全性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は第1実施形態の燃料電池システム10の構成の概略を示す構成図であり、
図2は第1実施形態の燃料電池システムが備える自動給水装置70の構成の概略を示す構成図である。第1実施形態の燃料電池システム10は、
図1に示すように、水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガス(エア)との供給を受けて発電する燃料電池スタックFCを有する発電ユニット20と、発電ユニット20の発電に伴って発生する熱を回収して給湯する貯湯タンク101を有する給湯ユニット100と、システム全体を制御する制御装置90とを備える。
【0019】
発電ユニット20は、改質水と原燃料ガス(例えば天然ガスやLPガス)との供給を受けてこれらを加熱することにより改質水を蒸発させて水蒸気を生成すると共に原燃料ガスを予熱する気化器32と、気化器32からの原燃料ガスを水蒸気改質反応により改質して水素を含む改質ガス(燃料ガス)を生成する改質器33と、改質器33から改質ガス供給管34を介して供給される改質ガスとエアとにより発電する燃料電池スタックFCとを含む発電モジュール30と、気化器32に原燃料ガスを供給する原燃料ガス供給装置40と、燃料電池スタックFCにエアを供給するエア供給装置50と、改質水タンク57内の改質水を気化器32に供給する改質水供給装置55と、発電モジュール30で発生した排熱を回収する排熱回収装置60と、改質水タンク57に必要な水を供給するための自動給水装置70とを備える。
【0020】
気化器32と改質器33と燃料電池スタックFCは、断熱性材料により形成された箱型のモジュールケース31内に収容されている。モジュールケース31内には、燃料電池スタックFCの起動や、気化器32における水蒸気の生成、改質器33における水蒸気改質反応に必要な熱を供給するための燃焼部35が設けられている。燃焼部35には燃料電池スタックFCを通過した燃料オフガス(アノードオフガス)と酸化剤オフガス(カソードオフガス)とが供給され、これらの混合ガスを点火ヒータ36により点火して燃焼させることにより、燃料電池スタックFCや気化器32、改質器33を加熱する。燃料オフガスおよび酸化剤オフガスの燃焼により生成される燃焼排ガスは、燃焼触媒37を介して熱交換器62へ供給される。燃焼触媒37は、燃焼部35で燃え残った燃料ガスを触媒によって再燃焼させる酸化触媒である。
【0021】
排熱回収装置60は、発電モジュール30から燃焼排ガスが供給される熱交換器62と貯湯水を貯蔵する貯湯タンク101とを接続して貯湯水の循環路を形成する循環配管61を有する。循環配管61には、循環ポンプ63が設けられており、循環ポンプ63を駆動することにより、熱交換器62による貯湯水と燃焼排ガスとの熱交換により貯湯水を加温すると共に加温した貯湯水を貯湯タンク101へ貯湯する。熱交換器62は凝縮水供給管66を介して改質水タンク57に接続されると共に排気ガス排出管67を介して外気と接続されている。熱交換器62に供給された燃焼排ガスは、貯湯水との熱交換により水蒸気成分が凝縮され、凝縮された水(凝縮水)が図示しない水精製器によって浄化されて改質水タンク57に回収される。また、残りの排気ガス(ガス成分)は、排気ガス排出管67を介して外気へ排出される。
【0022】
原燃料ガス供給装置40は、ガス供給源1と気化器32とを接続する原燃料ガス供給管41を有する。原燃料ガス供給管41には、ガス供給源1側から順に、原燃料ガス供給弁(2連弁)42,43、オリフィス44、原燃料ガスポンプ45、脱硫器46が設けられており、原燃料ガス供給弁42,43を開弁した状態で原燃料ガスポンプ45を駆動することにより、ガス供給源1からの原燃料ガスを脱硫器46を通過させて気化器32へ供給する。気化器32へ供給された原燃料ガスは、気化器32を経て改質器33へ供給され、改質ガス(燃料ガス)へと改質される。脱硫器46は、原燃料ガスに含まれる硫黄化合物を水素を用いて除去するものであり、例えば、硫黄化合物を水素と反応させて硫化水素を発生させる水素化分解触媒と、硫化水素を取り込んで除去する超高次脱硫剤とを収容している。水素化分解触媒としては、例えば、Co−Mo系触媒やNi−Mo系触媒を用いることができ、超高次脱硫剤としては、例えば、Cu−Zn系脱硫剤やCu−Zn−Al系脱硫剤を用いることができる。超高次脱硫剤は、200℃〜300℃(好ましくは250℃〜300℃)の高温下において優れた脱硫作用を発揮する。このため、脱硫器46は、燃焼部35を有するモジュールケース31から熱伝達可能に当該モジュールケース31と近接または接触するように配置されている。また、原燃料ガス供給管41の原燃料ガス供給弁43とオリフィス44との間には、当該原料ガス供給管41内の原燃料ガスの圧力を検出する圧力センサ47が設けられ、オリフィス44と原燃料ガスポンプ45との間には、原料ガス供給管41を流れる原燃料ガスの単位時間当たりの流量を検出する流量センサ48が設けられている。
【0023】
改質器33で生成された改質ガスを燃料電池スタックFCへ供給する改質ガス供給管34には、改質ガスの一部を脱硫器46に還流させて脱硫に必要な水素を供給するための還流管(還流ライン)38が連結されている。還流管38は、その一端側が改質ガス供給管34に接続され、その他端側が原燃料ガス供給管41における原燃料ガスポンプ45の上流側(
図1中、オリフィス44と原燃料ガスポンプ45との間)に接続される。還流管38には、改質ガス供給管34から脱硫器46に還流させる改質ガスの流量を調整するためのオリフィス39が設けられている。
【0024】
また、還流管38には、当該還流管38を流れる際に改質ガスが冷却されて凝縮された凝縮水を排出するための排水管(排水ライン)76が連結されている。排水管76は、その一端側が還流管38におけるオリフィス39の上流側に接続され、その他端側がU字部76uを介して水分を排出するための排水出口部77とガス成分を排出するための大気開放部78とに接続されている。U字部76uは、水が滞留可能にU字状に屈曲し、還流管38を流れる改質ガス中のガス成分(水素)が排水管76を通って外部(大気開放部78)へ排出されないよう滞留した水によって排水管76を水封する水封部である。
【0025】
エア供給装置50は、外気と連通するフィルタ52と燃料電池スタックFCとを接続するエア供給管51を有する。エア供給管51には、エアブロワ53が設けられており、エアブロワ53を駆動することにより、フィルタ52を介して吸入したエアを燃料電池スタックFCへ供給する。また、エア供給管51には、エアブロワ53の下流側に、当該エア供給管51を流れるエアの単位時間当たりの流量を検出する流量センサ54が設けられている。
【0026】
改質水供給装置55は、改質水を貯蔵する改質水タンク57と気化器32とを接続する改質水供給管56を有する。改質水供給管56には、改質水ポンプ58が設けられており、改質ポンプ58を駆動することにより、改質水タンク57の改質水を気化器32へ供給する。気化器32へ供給された改質水は、気化器32で水蒸気とされ、改質器33における水蒸気改質反応に利用される。改質水タンク57には、
図2に示すように、タンク内の改質水の水位が所定水位(満水位近傍)に到達したことを検出するための水位センサ59が設けられている。なお、水位センサ59は、例えば、水位の上昇に伴ってフロートが上昇し、水位が所定水位に達すると、接点がオンからオフまたはオフからオンするフロート式水位センサを用いることができる。
【0027】
自動給水装置70は、
図1,
図2に示すように、水源(水道配管)と改質水タンク57とを接続する給水管71を有する。給水管71には、水源側から順に、給水弁(電磁弁)72、逆止弁73、水精製器74が設けられており、給水弁72を開弁することにより、水源からの水道水を水精製器74を介して改質水タンク57へ供給する。給水弁72は、本実施形態では、ノーマルクローズ型の2ポート2ポジション弁であり、1周期に対する開弁時間の割合(デューティ比)を調整することにより、給水管71へ供給する水の流量を調整することができる。
【0028】
水精製器74は、水精製材としてイオン交換樹脂を収容しており、水がイオン交換樹脂の樹脂層を通過することにより水に含まれる不純物を除去して純水化する。水精製器74は、常時、水に浸漬された状態となるように、改質水タンク57の所定水位(満水位近傍)よりも低い位置に設置されている。これにより、U字部76uに水が滞留していないときに排水管76から給水管71へ改質ガスが流入しても、水精製器74のイオン交換樹脂に直接触れることがなく、イオン交換樹脂の劣化を抑制することができる。
【0029】
図3は、自動給水装置70の一部(破線で囲まれた領域)を拡大して示す部分拡大図である。給水管71には、当該給水管71を流れる水の一部をU字部76uへ供給するための分岐管75が連結されている。分岐管75は、その一端側が給水管71における水精製器74の上流側(
図2中、逆止弁73と水精製器74との間)に接続されると共にその他端側が排水管76におけるU字部76uの上流側に接続され、給水管71側からU字部76u側に向かって斜め下方に延在するように設けられている。この自動給水装置70では、水精製器74のイオン交換樹脂(樹脂層)を通過可能な水の流量(所定流量Qw)を超える流量で水源から給水管71に水が供給されると、給水管71における水精製器74の上流側で水が滞留していき、やがて滞留した水の水位が分岐管75の分岐位置を超えてオーバーフローし、オーバーフローした分の水が分岐管75へ流れ込む。これにより、給水管71からU字部76uに水を供給して、U字部76に滞留した水により排水管76を水封することができる。
【0030】
燃料電池スタックFCは、酸素イオン伝導体からなる固体電解質と、固体電解質の一方の面に設けられたアノードと、固体電解質の他方の面に設けられたカソードとを備える固体酸化物燃料電池セルが積層されたものとして構成されており、アノードに供給される燃料ガス中の水素とカソードに供給されるエア中の酸素とによる電気化学反応によって発電する。燃料電池スタックFCの出力端子にはDC/DCコンバータとインバータとを含むパワーコンディショナ81を介して商用電源2から負荷4への電力ライン3が接続されており、燃料電池スタックFCからの直流電力は、パワーコンディショナ81による電圧変換および直流/交流変換を経て商用電源2からの交流電力に付加されて負荷4に供給される。パワーコンディショナ81から分岐した電力ラインには電源基板82が接続されている。電源基板82は、原燃料ガス供給弁42,43や原燃料ガスポンプ45、エアブロワ53、改質水ポンプ58、循環ポンプ63、給水弁72、水位センサ59、可燃ガスセンサ86、圧力センサ47、流量センサ48,54などの補機類に直流電力を供給する直流電源として機能する。
【0031】
筐体22には、吸気口22aと排気口22bとが設けられている。吸気口22a付近には外気を取り込んで筐体22の内部を換気するための換気ファン24が設けられ、排気口22b付近には可燃ガスのガス漏れを検出するための可燃ガスセンサ86が設けられている。可燃ガスセンサ86は、例えば、触媒燃焼式可燃ガスセンサを用いることができる。触媒燃焼式可燃ガスセンサは、酸化触媒を含む検出素子と酸化触媒を含まない補償素子とによりブリッジ回路が構成されたものである。検出素子は、可燃ガスが触れると触媒燃焼反応により発熱して抵抗値が変化するため、ブリッジ回路の平衡が崩れ、ブリッジ回路の出力端子には不均衡電圧が出力される。不均衡電圧とガス濃度との間には比例関係を有するため、不均衡電圧を測定することによりガス濃度を検出することができる。例えば、爆発下限界濃度付近のガス濃度に対応するセンサ出力(不均衡電圧)を閾値に定めることで、センサ出力が閾値以上のときに、ガス漏れが生じていると判断することができる。なお、可燃ガスセンサとしては、半導体式可燃ガスセンサや、熱線半導体式可燃ガスセンサ、固体電解質式可燃ガスセンサなどを用いてもよい。
【0032】
制御装置90は、CPU91を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU91の他に処理プログラムを記憶するROM92と、データを一時的に記憶するRAM93と、計時を行なうタイマ94と、図示しない入出力ポートと、を備える。制御装置90には、圧力センサ47や流量センサ48,54、水位センサ59、可燃ガスセンサ86などからの各種検出信号が入力ポートを介して入力されている。また、制御装置90からは、換気ファン24のファンモータへの駆動信号や原燃料ガス供給弁42,43のソレノイドへの駆動信号、原燃料ガスポンプ45のポンプモータへの駆動信号、エアブロワ53のブロワモータへの駆動信号、改質水ポンプ58のポンプモータへの駆動信号、循環ポンプ63のポンプモータへの駆動信号、給水弁72のソレノイドへの駆動信号、パワーコンディショナ81のインバータやDC/DCコンバータへの制御信号、点火ヒータ36への駆動信号、各種情報を表示する表示パネル85への表示信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0033】
次に、こうして構成された燃料電池システム10の動作、特に、自動給水装置70に関連する動作について説明する。
図4は、制御装置90のCPU91により実行される自動給水制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、システムを起動する際に実行される。
【0034】
自動給水制御ルーチンが実行されると、制御装置90のCPU91は、まず、第1デューティ比D1で給水弁72のオンオフ駆動を繰り返し(S100)、所定時間が経過するのを待つ(S110)。ここで、第1デューティ比D1は、水精製器74(イオン交換樹脂)を通過する水の流量(所定流量Qw)よりも多い流量で給水管71に水を供給するためのデューティ比である。また、所定時間は、給水管71に滞留する水の水位が分岐管75の分岐位置よりも上側の初期管理水面位置L1(
図2参照)まで上昇するのに必要な時間であり、予め実験的に求めることができる。これにより、給水管71に滞留する水を分岐管75の分岐位置よりも上側にオーバーフローさせ、オーバーフローさせた水を分岐管75を介して排水管76のU字部76uに供給して、排水管76を水封させることができる。
【0035】
CPU91は、所定時間が経過したと判定すると、第1デューティ比D1よりも小さい第2デューティ比D2で給水弁72のオンオフ駆動を繰り返し(S120)、水位センサ59がオンされる(改質水タンク57の水位が所定水位(満水位近傍)に到達する)のを待つ(S130)。ここで、第2デューティ比D2は、上記初期管理水面位置L1からU字部水封後管理水面位置L2付近に給水管71に滞留する水の水位が下がるように、上記所定流量Qwよりも少ない流量で給水管71に水を供給するためのデューティ比である。改質水タンク57の水位が所定水位に到達すると、給水弁72を閉弁して(S140)、自動給水制御ルーチンを終了する。このように、U字部76uを水封した後は、給水管71に供給する水の流量を少なくし、給水管71に滞留する水が分岐管75の分岐位置を超えてオーバーフローしないようにするから、分岐管75に水が流れ込むのを抑制しつつ、所定水位(満水位近傍)まで改質水タンク57に水を供給することができる。
【0036】
次に、可燃ガスセンサ86により可燃ガスのガス漏れが検出されたときの動作について説明する。
図5は、制御装置90のCPU91により実行されるガス漏れ時給水制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、可燃ガスセンサ86のセンサ出力が閾値以上となったとき(ガス漏れが発生したと判断されたとき)に実行される。
【0037】
ガス漏れ時給水制御ルーチンが実行されると、制御装置90のCPU91は、まず、自動給水制御ルーチンのS100,S110と同様に、第1デューティ比D1で給水弁72のオンオフ駆動を繰り返し(S200)、上記所定時間が経過するのを待つ(S210)。即ち、排水管76のU字部76uに水封用の水が供給されるよう給水弁72を駆動制御する。所定時間が経過すると、給水弁72を閉弁し(S220)、可燃ガスセンサ86によりガス漏れが検出されなくなったか否か、即ち可燃ガスセンサ86のセンサ出力が閾値未満となったか否かを判定する(S230)。可燃ガスセンサ86によりガス漏れが検出されなくなったと判定すると、U字部76uの水封によって改質ガスの漏れは解消されたと判断して、ガス漏れ時給水制御ルーチンを終了する。一方、可燃ガスセンサ86によりガス漏れが検出され続けていると判定すると、排水管76以外の箇所からガス漏れが生じていると判断し、燃料電池システム10を異常停止させて(S240)、ガス漏れ時給水制御ルーチンを終了する。なお、本実施形態では、CPU91は、燃料電池システム10の異常停止に伴い、表示パネル85にガス漏れが発生した旨の警告表示を行なう。
【0038】
以上説明した第1実施形態に係る燃料電池システム10は、改質器33で生成された改質ガスの一部を脱硫器46に環流させる環流管38と、環流管38を流れる改質ガス中の水分(凝縮水)を排出する排水管76と、排水管76に設けられた水封用のU字部76uと、水源から給水弁72を介して改質水タンク57へ水を供給する給水管71と、給水管71における給水弁72と改質水タンク57との間に設けられた水精製器74と、給水管71における水精製器74の上流側から分岐して給水管71を流れる水の一部をU字部76uに供給可能な分岐管75とを備える。これにより、改質水タンク57への給水に伴ってU字部76uに水を供給することができ、U字部76uで排水管76を水封することができる。この結果、簡易な構成で、還流管38の改質ガスが外部へ排出されるのを防止することができる。
【0039】
また、第1実施形態に係る燃料電池システム10は、システムを起動する際に、第1デューティ比D1で給水弁72をオンオフ駆動した後、第1デューティ比D1よりも小さい第2デューティ比D2で給水弁72をオンオフ駆動する。これにより、給水管71を流れる水の流量を比較的多くすることで、給水管71の水位を分岐管75の分岐位置を超えてオーバーフローさせ、オーバーフローさせた水を分岐管75を介してU字部76uに供給することができる。また、給水管71を流れる水の流量を比較的少なくすることで、給水管71の水位を分岐管75の分岐位置よりも下げ、給水管71の水が分岐管75へ流れ込むのを抑制しつつ、改質水タンク57側に水を供給することができる。
【0040】
さらに、第1実施形態に係る燃料電池システム10は、改質水タンク57の所定水位(満水位近傍)よりも低い位置に水精製器74を設置するから、水精製器74の上部まで水を満たすことができ、システム運転中に仮に改質ガスが排水管76を介して給水管71に流入した場合であっても、改質ガスが水精製器74に直接触れないようにして水精製器74の劣化を抑制することができる。
【0041】
また、第1実施形態に係る燃料電池システム10は、可燃ガスセンサ86によりガス漏れが検出されると、排水管76のU字部76uに水が供給されるよう給水弁72を制御する。システムの運転中に排水管76(排水管76)が水封されていない場合には、還流管38の改質ガスが排水管76,大気開放部78を介して外部へ排出されるため、可燃ガスセンサ86を用いてU字部76uの水封の有無を判定することができる。そして、ガス漏れが検出されると、U字部76uに水を供給することにより、U字部76uをより確実に水封して以降のガス漏れを防止することができる。もとより、U字部76uに水を供給しても、可燃ガスセンサ86によりガス漏れが継続して検出されているときには、システムを異常停止するから、安全性を確保することができる。
【0042】
第1実施形態では、燃焼排ガスの凝縮水を浄化する水精製器と、水源(水道配管)からの水道水を浄化する水精製器74とを別々に設けるものとしたが、1つの水精製器74を共用してもよい。この場合、凝縮水供給管66からの燃焼排ガスの凝縮水が水精製器74を介して改質水タンク57へ供給されるように、凝縮水供給管66を給水管71における水精製器74の上流側に連結すればよい。
【0043】
第1実施形態では、給水弁72をオンオフ駆動する際のデューティ比を水精製器74を通過する水の流量(所定流量Qw)よりも多い量の水を供給するための第1デューティ比D1と少ない量の水を供給するための第2デューティ比D2との2段階に変化させるものとした。しかしながら、変化させる流量(デューティ比)は、2段階に限られず、3段階以上に変化させてもよい。また、流量(デューティ比)を徐々に変化させてもよい。
【0044】
第1実施形態では、水精製器74を、改質水タンク57の所定水位よりも低い位置に設置するものとしたが、改質水タンク57の所定水位よりも高い位置に設置するものとしてもよい。
【0045】
次に、第2実施形態の燃料電池システムについて説明する。
図6は、第2実施形態の燃料電池システムが備える自動給水装置170の構成の概略を示す構成図であり、
図7は、自動給水装置170の一部(破線で囲まれた領域)を拡大して示す部分拡大図である。第2実施形態の自動給水装置170の給水管171には、水源(水道配管)側から順に給水弁72,逆止弁73,水精製器174が設けられている。水精製器174は、イオン交換樹脂を収容し、改質水タンク157の上方に設置される。水精製器174には、イオン交換樹脂(樹脂層)を通過した水を改質水タンク157へ吐出する吐出管174oが連結されている。吐出管174oは、その吐出口が改質水タンク157内の水に常時浸漬されるように改質水タンク157の所定水位よりも低い位置まで下方に延在している。
【0046】
改質水タンク157には、タンク内の改質水の水位が所定水位(満水位近傍)に達したことを検出するための水位センサ159(フロート式水位センサなど)が設けられている。また、改質水タンク157の上部(上面)には、タンク上部に溜まったガスを排出するための大気開放部178が接続されている。
【0047】
また、自動給水装置170は、改質水タンク157の満水時にオーバーフローした水を排水管176のU字部176uに供給するためのオーバーフロー管175を備える。オーバーフロー管175は、その一端側が改質水タンク157の側壁157sの上部に接続されると共にその他端側がU字部176uの下流側端部(
図7中、左上端部)に接続され、改質水タンク157側からU字部176u側に向かって斜め下方に延在するように設けられている。これにより、満水位を超えて改質水タンク157に水を供給することにより、改質水タンク157をオーバーフローした分の水をオーバーフロー管175を介してU字部176uに供給することができる。また、U字部176uの下流側端部には、U字部176uの容量を超えて流入される水を排水するための排水出口部177が接続されている。
【0048】
次に、こうして構成された第2実施形態の燃料電池システムの動作、特に、自動給水装置170に関連する動作について説明する。
図8は、制御装置90のCPU91により実行される自動給水制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、システムを起動する際に実行される。
【0049】
自動給水制御ルーチンが実行されると、制御装置90のCPU91は、まず、上記第1デューティ比D1で給水弁72のオンオフ駆動を繰り返し(S300)、水位センサ159がオンされる(改質水タンク157の水位が所定水位(満水位近傍)に到達する)のを待つ(S310)。改質水タンク157の水位が所定水位(満水位近傍)に到達すると、更に上記第1デューティ比D1で給水弁72のオンオフ駆動を所定時間だけ繰り返し(S320,S330)、所定時間が経過すると、給水弁72を閉弁して(S340)、自動給水制御ルーチンを終了する。これにより、改質水タンク157に満水位を超えて水を供給して、改質水タンク157をオーバーフローさせ、オーバーフローした分の水をU字部176uに供給して、排水管176を水封させることができる。なお、所定時間は、排水管176(U字部176u)の水封に必要な量の水が供給されるまでの時間であり、予め実験的に求めることができる。
【0050】
次に、可燃ガスセンサ86により可燃ガスのガス漏れが検出されたときの動作について説明する。
図9は、制御装置90のCPU91により実行されるガス漏れ時給水制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、可燃ガスセンサ86のセンサ出力が閾値以上となったとき(ガス漏れが発生したと判断されたとき)に実行される。
【0051】
ガス漏れ時給水制御ルーチンが実行されると、制御装置90のCPU91は、まず、
図8の自動給水制御ルーチンのS300〜S340と同じ処理を実行して(S400〜S440)、U字部176uに水を供給し、可燃ガスセンサ86によりガス漏れが検出されなくなったか否かを判定する(S450)。可燃ガスセンサ86によりガス漏れが検出されなくなったと判定すると、U字部176uの水封によって改質ガスの漏れは解消されたと判断して、ガス漏れ時給水制御ルーチンを終了する。一方、可燃ガスセンサ86によりガス漏れが検出され続けていると判定すると、排水管176以外の箇所からガス漏れが生じていると判断し、燃料電池システム10を異常停止させて(S460)、ガス漏れ時給水制御ルーチンを終了する。
【0052】
このように、第2実施形態の燃料電池システムにおいても、第1実施形態の燃料電池システムと同様の効果、即ち、改質水タンク57への給水に伴ってU字部76uに水を供給することで、還流管38の改質ガスが外部へ排出されるのを防止することができる効果を奏することができる。
【0053】
本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。本実施形態では、原燃料ガス供給装置40が「原燃料ガス供給装置」に相当し、脱硫器46が「脱硫器」に相当し、改質水タンク57が「水タンク」に相当し、改質器33が「改質器」に相当し、還流管38が「還流ライン」に相当し、排水管76が「排水ライン」に相当し、U字部76uが「水封部」に相当し、給水管71が「給水ライン」に相当し、給水弁72が「給水弁」に相当し、水精製器74が「水精製器」に相当し、分岐管75が「分岐ライン」に相当し、制御装置90が「制御装置」に相当する。また、可燃ガスセンサ86が「可燃ガスセンサ」に相当する。また、改質水タンク157が「水タンク」に相当し、給水管171が「給水ライン」に相当し、水精製器174が「水精製器」に相当し、オーバーフロー管175が「オーバーフローライン」に相当する。また、吐出管174oが「吐出管」に相当する。
【0054】
なお、本実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、本実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、本実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0055】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。