(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バリア層の成膜において、前記光変換膜全体を包含する大きさの開口を有したマスクを成膜方向からみて前記開口内に前記光変換膜を包含するように位置を合わせて、前記バリア層を成膜するとともに、
前記バッファ層の成膜において、前記光変換膜全体を包含する大きさで、かつ、前記バリア層の成膜時よりも狭い開口を有したマスクを成膜方向からみて前記開口内に前記光変換膜を包含するように位置を合わせて、前記バッファ層を成膜することを特徴とする請求項1に記載の光変換フィルムの製造方法。
前記バリア層の成膜において、前記光変換膜全体を包含する大きさの開口を有したマスクを成膜方向からみて前記開口内に前記光変換膜を包含するように位置を合わせて、前記バリア層を成膜するとともに、
前記バッファ層の成膜において、成膜時の圧力をバリア層成膜時より高くすることを特徴とする請求項1に記載の光変換フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のものは、ラミネートしたバリアフィルムの側面端部において量子ドットが含まれる光変換フィルムが露出しており、ここから水分や酸素が浸入するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、光変換フィルムの側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、バリアフィルムの第1主面に接触し周囲に前記バリアフィルムが存在するように前記バリアフィルムよりも小面積の光変換膜を成膜し、
前記バリアフィルムの第1主面に接触する前記光変換膜の面を第2主面としたときに、少なくとも前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲に接触するように前記光変換膜を覆うバリア膜を
プラズマCVD又は蒸着により成膜した後、
前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲における前記バリア膜を残して、少なくとも前記バリアフィルムを切断してなり、
前記バリアフィルムに成膜した前記光変換膜は、前記バリア膜の成膜前に硬化させるものであり、
前記バリア膜は、バッファ層及び前記バッファ層よりも高い密度のバリア層を少なくとも各1層含んで成膜された複層であり、
前記バッファ層及び前記バリア層は、前記光変換膜の前記第1主面及び側面全周囲を覆うように成膜されることを特徴とする光変換フィルムの製造方法を提供するものである。
【0009】
この構成により、光変換フィルムの側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。
【0010】
前記バリア膜の成膜において、
前記光変換膜全体を包含する大きさの開口を有したマスクを、成膜方向からみて前記開口内に前記光変換膜を包含するように位置を合わせて
前記バリア膜を成膜し、
前記バリアフィルムの切断において、
前記成膜方向からみてマスクされた位置で前記バリアフィルムを切断する構成としてもよい。
【0011】
この構成により、
バリア膜の成膜されていない箇所を形成することができ、そこを切断することにより、光変換膜の第1主面及び側面全周囲におけるバリア膜を損なうことなくバリアフィルムを切断することができる。
【0012】
前記バリア膜は、前記バッファ層を成膜した後、前記バリア層を成膜する構成としてもよい。
【0013】
前記バリア層の成膜において、前記光変換膜全体を包含する大きさの開口を有したマスク
を成膜方向からみて前記開口内に前記光変換膜を包含するように位置を合わせて
、前記バリア層を成膜するとともに、
前記バッファ層の成膜において、前記光変換膜全体を包含する大きさで、かつ、前記バリア層の成膜時よりも狭い開口を有したマスク
を成膜方向からみて前記開口内に前記光変換膜を包含するように位置を合わせて
、前記バッファ層を成膜する構成としてもよい。
【0014】
前記バリア層の成膜において、前記光変換膜全体を包含する大きさの開口を有したマスク
を成膜方向からみて前記開口内に前記光変換膜を包含するように位置を合わせて
、前記バリア層を成膜するとともに、
前記バッファ層の成膜において、成膜時の圧力をバリア層成膜時より高くする構成としてもよい。
【0015】
前記バリア膜を成膜した後、
前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲における前記バリア膜を残して、前記光変換膜の外側における前記バリア膜を切断し、
さらに、前記バリア膜の上から再度バリア膜を成膜し、
少なくとも前記バリアフィルムを切断するする構成としてもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために本発明は、バリアフィルムを搬送する搬送手段と、
前記バリアフィルムの第1主面に接触する光変換膜を成膜して硬化させる光変換膜成膜手段と、
前記バリアフィルムの第1主面に接触する前記光変換膜の面を第2主面としたときに、少なくとも前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲に接触するように前記光変換膜を覆うバリア膜を
プラズマCVD又は蒸着により成膜するバリア膜成膜手段と、
前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲における前記バリア膜を残して、少なくとも前記バリアフィルムを切断する切断手段と、を備え、
前記バリア膜成膜手段が成膜する前記バリア膜は、バッファ層及び前記バッファ層よりも高い密度のバリア層を少なくとも各1層含み、前記バッファ層及び前記バリア層は、前記光変換膜の前記第1主面及び側面全周囲を覆うように成膜されるものであることを特徴とする光変換フィルム製造装置を提供するものである。
この構成により、光変換フィルムの側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明は、
光変換膜の第2主面全域が前記光変換膜よりも広い面積のバリアフィルムに接し、第1主面及び側面全周囲がバリア膜に接している光変換フィルムであって、
前記バリアフィルム及び前記バリア膜は光を透過し、
前記バリア膜は、バッファ層及び前記バッファ層よりも高い密度のバリア層を少なくとも各1層含んで成膜された複層であり、
前記バッファ層及び前記バリア層は、前記光変換膜の前記第1主面及び側面全周囲を覆っており、前記バッファ層の外縁よりも前記バリア層の外縁の方が、外側に位置することを特徴とする光変換フィルムを提供するものである。
この構成により、光変換フィルムの側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
以下、本発明の実施例1を
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施例1における光変換フィルム製造装置の構成を説明する図である。
図2は、本発明の実施例1における光変換フィルムの製造方法を説明する図である。
【0020】
光変換フィルム製造装置100は、
図1に示すように、ロール状に巻かれたバリアフィルム101を引き出してX方向(下流)へと連続搬送する搬送手段140と、バリアフィルム101の上面(第1主面)に光変換膜102を成膜する光変換膜成膜手段110と、光変換膜成膜手段110の下流に位置し、少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲に接触するように光変換膜102を覆うバリア膜103を成膜するバリア膜成膜手段120と、バリア膜成膜手段120の下流に位置し、光変換膜102の上面(第1主面)及び側面におけるバリア膜103を残して、光変換膜102の外側における少なくともバリアフィルム101を切断する切断手段130を備えている。
【0021】
ここで、少なくともバリアフィルム101を切断すると説明する理由は、切断位置においてバリアフィルム101の上面(第1主面)にバリア膜103が成膜されない場合があり、その場合は、バリア膜103を切断する必要がないからである。一方、バリアフィルム101の上面(第1主面)にバリア膜103が成膜されている場合は、バリア膜103及びバリアフィルム101を切断する必要がある。
【0022】
搬送手段140は、バリア膜成膜手段120と切断手段130との間に位置し、バリアフィルムロール141に巻かれたバリアフィルム101を引き出して下流に搬送するようにテンションをかける駆動ローラ143、及び、保護フィルムが巻かれた保護フィルムロール144から保護フィルム106を引き出すようにテンションをかけるとともに光変換膜102に保護フィルム106をラミネートするラミネートローラ142等を備えている。また、駆動ローラ143は図示しない駆動装置によって駆動される。
【0023】
光変換膜成膜手段110は、塗布ヘッド111と、光変換膜102を加熱して硬化させる硬化手段112を備えている。塗布ヘッド111は、Y方向に幅広の形状を有したノズルから光変換膜102をバリアフィルム101上にY方向に一定の幅で、また一定の厚さに、そして液晶ディスプレイに対応した面積に間歇的に吐出して成膜することができる。
【0024】
バリア膜成膜手段120は、プラズマCVD装置によって、少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲に接触するように光変換膜102を覆うバリア膜103を成膜する。ここで、少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲に接触するように成膜すると説明する理由は、
図2(c)に示すように、バリア膜103がバリアフィルム101の上面にも接触して成膜される場合があるからである。この場合もバリアフィルム101上にバリア膜103が成膜されることは、必ずしも必要ではなく、少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲に接触するように光変換膜102を覆うバリア膜103が成膜されればよい。
【0025】
切断手段130は、レーザカッター131により光変換膜102の外側におけるバリアフィルム101を少なくとも切断して、液晶ディスプレイに対応した大きさの光変換フィルム109とする。光変換フィルム109は、ロボット等により、順次、台に積み重ねられる。ここで、光変換膜102の外側におけるバリアフィルム101を少なくとも切断すると説明した理由は、上述したように、切断位置においてバリア膜103がバリアフィルム101の上面に接触して成膜される場合もあるが、成膜されない場合もあるからである。つまり、バリア膜103がバリアフィルム101上に成膜されていない場合は、バリアフィルム101を切断すれば足りる。一方、バリア膜103がバリアフィルム101の上面に接触して成膜される場合は、バリア膜103及びバリアフィルム101を切断する必要がある。
【0026】
なお、実施例1における光変換膜製造装置100は、ロール状に巻かれたバリアフィルムを搬送手段140により引き出して、順次、光変換膜成膜手段110、バリア膜成膜手段120、及び切断手段130へと搬送する構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、枚葉式の製造を行うために、小片のバリアフィルムを供給して、光変換膜成膜手段110、バリア膜成膜手段120、切断手段130へと順次搬送する構成としてもよい。そして、小片のサイズが液晶ディスプレイのサイズに対応したサイズであれば、切断を行わなくてもよい。
【0027】
また、実施例1における光変換膜成膜手段110は、塗布ヘッド111と硬化手段112で構成したが、必ずしもこれに限定されず、他の手段によって光変換膜102を成膜してもよい。例えば、プラズマCVD装置や蒸着装置やUV硬化装置等を用いて成膜することができる。
【0028】
さらに、実施例1におけるバリア膜成膜手段120は、プラズマCVD装置で構成するようにしたが、必ずしもこれに限定されず、他の手段によってバリア膜103を成膜してもよい。例えば、蒸着装置や塗布装置等を用いて成膜することができる。
【0029】
さらに、実施例1における切断手段130は、レーザカッター131で構成するようにしたが、必ずしもこれに限定されず、他の手段によってバリア膜103及びバリアフィルム101を切断するように構成してもよい。例えば、金属やセラミックの刃物によるカッター等を用いて切断することができる。
【0030】
次に、
図2を参照しながら、実施例1における光変換フィルムの製造方法を説明する。まず、ロール状に巻かれたバリアフィルム101を引き出す(
図2(a))。バリアフィルム101は、基材104の上面(第1主面)にバリア層105が成膜されたものである。本発明においては、バリア層105が成膜された面をバリアフィルム101の第1主面と定義する。このバリア層105は、水分や酸素の浸入を防止することができる。基材104は、25〜150μmの厚さを有したポリエステルフィルム(PETやPENフィルム)等の透明な物質からなっている。またバリア層105は、透明な無機物からなり平均0.2μmの厚さを有している。具体的には、シリコン系膜であってもよく、Si並びにO(酸素)及び/又はN(窒素)を含んでいてもよい。つまりバリア膜103は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜であってもよい。そして、透明な基材104と透明なバリア層105とからなるバリアフィルム101は、光を透過させることができる。
【0031】
次に、引き出されたバリアフィルム101の上面(第1主面)に接触して光変換膜102を液晶ディスプレイに対応する大きさに光変換膜成膜手段110により成膜する(
図2(b))。なお、
図2では、光変換膜102を2列に間歇的に成膜しているが、必ずしもこれに限定されない、例えば、1列に間歇的に成膜してもよいし、3列以上であってもよい。2列以上の光変換膜102を成膜する場合の光変換膜102間の距離は、1cm程度あれば充分である。光変換膜102は、
図8に示すように樹脂中に量子ドット1を含んだ量子ドット樹脂膜、すなわち光変換膜2からなっている。量子ドット1は青色光に対して赤色を発光する量子ドット及び緑色を発光する量子ドットを含んでいる。その結果、量子ドット樹脂膜からなる光変換膜102に青色光を照射すると、赤色及び緑色が発光するとともに青色光はそのまま透過して、RGBの光の三原色に変換される。
【0032】
次に、少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲に接触するように光変換膜102を覆うバリア膜103をバリア膜成膜手段120により成膜する(
図2(c))。この際に、光変換膜102の外側におけるバリアフィルム101上面にもバリア膜103が成膜されてもよく、少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲に接触するように光変換膜102を覆うバリア膜103が成膜されればよい。このバリア膜103は、無機物からなり透明な性質を有している。具体的には、シリコン系膜であってもよく、Si並びにO(酸素)及び/又はN(窒素)を含んでいてもよい。つまりバリア膜103は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜であってもよい。バリア膜103で光変換膜102を覆うことにより、光変換膜102への水分や酸素の浸入を防止することができる。
【0033】
最後に、切断手段130により、光変換膜102の外側における少なくともバリアフィルム101を切断して(
図2(d))、液晶ディスプレイの大きさに対応した光変換フィルム109を作成する(
図2(e))。この際、上述したように、バリアフィルム101上にもバリア膜103が成膜されている場合は、バリア膜103及びバリアフィルム101を切断する。光変換フィルム109は、量子ドットによって光変換をするものであるから、量子ドットフィルムともいえる。
【0034】
このように実施例1で作成された光変換フィルム109は、光変換膜102の上面(第1主面)、及び側面全周囲がバリア膜103で覆われ、光変換膜102の下面(第2主
面)はバリアフィルム101で覆われているから、光変換膜102への水分や酸素の浸入を防止することができ、光変換機能の劣化を防ぐことができる。特に、光変換膜102の側面全周囲がバリア膜103で覆われることにより、側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。また、バリアフィルム101もバリア膜103も透明の物質で構成されているため、光変換フィルム109は青色光を透過させ、量子ドットにより青色光の一部を赤色光及び緑色光に変換して出射するという機能を満足することができる。
【実施例2】
【0035】
本発明の実施例2について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、本発明の実施例2における光変換フィルム製造装置の構成を説明する図である。
図4は、本発明の実施例2における光変換フィルムの製造方法を説明する図である。
【0036】
本発明の実施例2における光変換フィルム製造装置200は、実施例1における光変換フィルム製造装置100に対して、バリア膜成膜手段220の構成が異なっているのみで他の構成は実施例1と同じである。すなわち、バリア膜成膜手段220は、成膜用のマスク221を備えていて、光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲にバリア膜203を成膜する際に、光変換膜102全体を包含する大きさの開口を有したマスク221を成膜方向からみてこの開口内に光変換膜102を包含するように位置を合わせて成膜する。その際、2列以上の光変換膜102を成膜する場合、マスク221の開口の大きさは、
ひとつの光変換膜102全体を包含し隣接する光変換膜102は重ならない大きさとするとよい。マスク221はループ状になっていて搬送されているバリアフィルム101の搬送速度に合わせて、マスク221も同期して搬送する構成となっている。
【0037】
実施例2における光変換フィルム製造装置200においても、実施例1における光変換フィルム製造装置100と同様に、バリアフィルムロール141に巻かれたバリアフィルム101が搬送手段140によって引き出され、下流へと搬送される。そして、光変換膜成膜手段110における塗布ヘッド111と硬化手段112によってバリアフィルム101の上面(第1主面)に光変換膜102を液晶ディスプレイに対応した大きさに間歇的に成膜される。そして、バリア膜成膜手段220では、プラズマCVD装置によって少なくとも光変換膜102の第1主面及び側面全周囲に接触するように前記光変換膜を覆うバリア膜203を成膜する。
【0038】
実施例2におけるバリア膜成膜手段220では、マスク221を用いてバリア膜203を成膜しているので、光変換膜12の外側では
図4(c)に示すように、マスクによって成膜されるバリア膜203の厚さが次第に薄くなっていてバリア膜203の外縁の外側ではバリアフィルム101上にバリア膜203は成膜されていない。したがって、バリア膜203の外縁の外でバリアフィルム101を切断すれば、バリア膜203の側面に切断面が生じることなく完全に光変換膜102を覆った状態にすることができる。
【0039】
切断手段130では、実施例1と同様に、レーザカッター131により光変換膜102の外側における少なくともバリアフィルム101を切断して、液晶ディスプレイに対応した大きさの光変換フィルム209を作成する。光変換フィルム209は、ロボット等により、順次、台に積み重ねられる。
【0040】
次に、実施例2における光変換フィルムの製造方法について、
図4を参照しながら説明する。実施例2においても光変換膜102を成膜するまでは実施例1と同じであるので、
図4では、バリアフィルム101の引き出し及び光変換膜102の成膜に関する記載を省略している。また、これらの部分の説明を省略する。
【0041】
バリアフィルム101の上面(第1主面)に光変換膜102が成膜された後に、バリア膜成膜手段220によってバリア膜203を成膜する。バリア膜203は、実施例1と同様に、無機物からなり透明な性質を有している。具体的には、シリコン系膜であってもよく、Si並びにO(酸素)及び/又はN(窒素)を含んでいてもよい。つまりバリア膜203は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜であってもよい。バリア膜203で光変換膜102を覆うことにより、光変換膜102への水分や酸素の浸入を防止することができる。
【0042】
実施例2におけるバリア膜成膜手段220では、上述のようにマスク221を用いて成膜を行っているので、プラズマCVD装置でバリア膜203を成膜した結果、
図4(c)に示すようにマスク221で遮られた部分ではバリア膜203が裾野を描くように薄くなり最終的にはバリア膜203の上面がバリアフィルム101に接触するようになって、バリア膜203の外縁の外側ではバリア膜203はバリアフィルム101上に成膜されない。
【0043】
次に、切断手段130にて、光変換膜102の外側におけるバリア膜203の上面がバリアフィルム101に接触した外縁の外側でバリアフィルム101を切断して(
図4(d))、液晶ディスプレイに対応した大きさの光変換フィルム209を作成する(
図4(e))。この場合、切断場所にバリア膜203は存在しないので、バリア膜203を切断する必要がなく、バリアフィルム101を切断すれば足りる。
【0044】
このように実施例2で作成された光変換フィルム209は、光変換膜102の上面(第1主面)、及び側面全周囲がバリア膜203で覆われ、光変換膜102の下面(第2主面)はバリアフィルム101で覆われているから、光変換膜102への水分や酸素の浸入を防止することができ、光変換機能の劣化を防ぐことができる。特に、光変換膜102の側面全周囲がバリア膜203で覆われることにより、側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。また、バリアフィルム101もバリア膜203も透明な物質で構成されているため、光変換フィルム209は青色光を透過させ、量子ドットにより青色光の一部を赤色光及び緑色光に変換して出射するという機能を満足することができる。
【実施例3】
【0045】
本発明の実施例3について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、本発明の実施例3におけるバリア膜の構成を説明する図である。実施例3は、バリア膜303がバリア層とバッファ層とを積層するように構成した点で実施例2とは異なる。
【0046】
実施例3では、実施例2におけるバリア膜成膜手段220を連続して複数台並べて、第2バッファ層362、第2バリア層352、第1バッファ層361、第1バリア層351の順に成膜を繰り返して、
図5のようなバリア膜303を作成する。第1バッファ層361、第2バッファ層362を成膜することによって、バリア膜303のフレキシブル性及び光変換膜102との密着性を向上させることができる。
【0047】
つまり、
図5に示すように、実施例3におけるバリア膜303は、最外面から第1バリア層351、第1バッファ層361、第2バリア層352、第2バッファ層362と、バリア層とバッファ層とが交互に積層される。第1バッファ層361及び第2バッファ層362は、無機物からなる透明な層である。無機物とは、有機物を除く物質であり、具体的には炭素骨格を持たない物質である。つまり、無機物には、合成/天然樹脂及び炭素骨格(炭化水素骨格を含む)を有するその他化合物は含まれない。第1バッファ層、第2バッファ層を設けることによりバリア膜303のフレキシブル性及び光変換膜102との密着性を向上することができる。
【0048】
具体的には、第1バッファ層361及び第2バッファ層362はシリコン系膜であってもよい。例えば、第1バッファ層361及び第2バッファ層362は、H、C及びSiを含むシリコン系であってもよい。また第1バッファ層361と第2バッファ層362の組成とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
第1バリア層351及び第2バリア層352は、透明の無機物からなり、第1バッファ層361及び第2バッファ層362よりも高い密度を有する。第1バリア層351及び第2バリア層352の密度は具体的な数値に限定されるものではないが、水分や酸素が光変換膜102に到達することを防止できる程度であればよい。第1バリア層351及び第2バリア層352は、具体的には、シリコン系膜であってもよく、Si並びにO(酸素)及び/又はN(窒素)を含んでいてもよい。つまり第1バリア層351及び第2バリア層352は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜であってもよい。また、第1バリア層351の組成と第2バリア層352の組成とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
図5に示すように、Z方向に平行な断面において、傾斜部分370における第1バリア層351、第2バリア層352、第1バッファ層361、第2バッファ層362の厚みは、外縁371に近づく程徐々に減少する。また、第1バッファ層361、第2バッファ層362の外縁(X−Y方向における端部)よりも第1バリア層351、第2バリア層352の外縁(X−Y方向における端部)の方が、外側に位置している。つまり、第1バリア層351、第2バリア層352は、外縁371まで達しており、第1バッファ層361、第2バッファ層362はそれよりも内側までしか設けられていない。
【0051】
図5の構成をより具体的に説明すると、最下層の第2バッファ層362の全体は、第2バッファ層362の最も近くに配置された第2バリア層352に覆われている。よって、第2バリア層352は、第2バリア層352の外縁が第2バッファ層362の外縁を囲むように配置されている。また、第1バッファ層361の全体も、その上に形成された第1バリア層351によって覆われている。よって、第1バリア層351は、第1バリア層351の外縁が第1バッファ層361の外縁を囲むように配置されている。
【0052】
このように、第1バリア層351は、第1バリア層351の外縁が第1バッファ層361の外縁を囲むように成膜するには、例えば、プラズマCVD装置でバリア層を成膜する場合は、マスクの開口サイズをバッファ層成膜時は狭く、バリア層成膜時は広くする方法を採用することができる。または、マスクと成膜対象物との距離をバッファ層成膜時は小さく、バリア層成膜時は大きくする方法を採用してもよい。さらに、成膜時のCVD装置内の圧力をバッファ層成膜時よりバリア層成膜時の方が低くすることにより、バッファ層成膜時よりもバリア層をマスクとバリアフィルムの間隙に入り込みやすくすることができる。
【0053】
X−Y平面において、第1バッファ層361の外縁から第1バリア層351の外縁までの距離、及び、第2バッファ層362の外縁から第2バリア層352までの距離は、光変換膜102への酸素及び水分の浸入を防ぐことができる程度に設定されればよい。例えば、数十nm又は数百nm程に設定可能である。
【0054】
なお、第1バリア層351と第2バリア層352とが直接重なっている部分では、層の境界を認識することは難しいが、
図5では、説明の便宜上、2つの層の間に境界が存在しているように描かれている。
【0055】
なお、第1バッファ層361の外縁及び第2バッファ層362の外縁の位置はX−Y平面において、一致していてもよいし、互いに異なっていてもよい。また、第1バリア層351の外縁及び第2バリア層352の外縁の位置はX−Y平面において、一致していてもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0056】
実施例3におけるバリア膜303のように、バッファ層とバリア層とが各2層の場合のバリア性(水蒸気透過度)は、測定した結果、5×10
−3g/m
2/dayであり、充分なバリア性が得られている。この測定結果は、100μm厚のPENフィルムの片面にバッファ層とバリア層とを各2層(1層あたり30nm厚)成膜して測定した結果である(測定器はAQUATRAN(モコン社)で、環境は40℃×90%RH)。
【0057】
なお、実施例3においては、バリア層及びバッファ層を各2層の複層としたが、必ずしもこれに限定されず、少なくともバリア層及びバッファ層が各1層含む複層であればよく、バリア層及びバッファ層を各3層以上設けてもよい。
【0058】
このように、実施例3における光変換フィルム309は、バリア膜303の最外面の全体がバリア層351で覆われることによって、第1バッファ層361及び第2バッファ層362がバリア膜303の表面から外に露出しない。バッファ層はバリア層より密度が低いことによりフレキシブル性が高い代わりにバリア性は低いが、バリア膜303の最外面の全体がバリア層351で覆われることによって、第1バッファ層361及び第2バッファ層362の露出部分から光変換膜102への水分や酸素の浸入が効果的に抑制され、光変換機能の劣化を防ぐことができる。特に、光変換膜103の側面全周囲がバリア膜303で覆われることにより、側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。また、バリアフィルム101もバリア膜303も透明な物質で構成されているため、光変換フィルム309は青色光を透過させ、量子ドットにより青色光の一部を赤色光及び緑色光に変換して出射するという機能を満足することができる。
【実施例4】
【0059】
本発明の実施例4について、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
図6は、本発明の実施例4における光変換フィルム製造装置の構成を説明する図である。
図7は、本発明の実施例4における光変換フィルムの製造方法を説明する図である。
【0060】
実施例4は、実施例1における光変換膜及びバリア膜を成膜した後、バリア膜とバリアフィルムのうちバリア層のみを切断する点、及びその後、再度バリア膜を成膜して、最後にバリアフィルムの基材を切断する点で実施例1に対して異なっている。
【0061】
実施例4における光変換フィルム製造装置400は、
図6に示すように、実施例1で説明したものと同じ光変換膜成膜手段110、バリア膜成膜手段120の下流に、切断手段430とバリア膜成膜手段420と切断手段435とが配置されていて、搬送手段140によりバリアフィルム101が搬送される。
【0062】
実施例1と同様に光変換膜成膜手段110では、バリアフィルム101の上面(第1主面)に光変換膜102を成膜し、バリア膜成膜手段120では、少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)と側面全周囲に、プラズマCVD装置により、バリア膜103を成膜する。切断手段430では、光変換膜102の外側におけるバリア膜103とバリアフィルム101のうちバリア層105とをレーザカッター431で切断する。
【0063】
切断手段430の下流には、バリア膜成膜手段420が配置されている。バリア膜成膜手段420では、基材104、バリア層105、光変換膜102、及びバリア膜103全体を覆うように、プラズマCVD装置によりバリア膜403を成膜する。
【0064】
バリア膜成膜手段420の下流には、切断手段435が配置され、レーザカッター436により、バリア膜403と光変換膜102の外側のバリアフィルム101のうち基材104を切断して、液晶ディスプレイに対応した大きさの光変換フィルム409を作成する。
【0065】
次に、
図7を参照しながら、実施例4における光変換膜の製造方法について説明する。少なくとも光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲にバリア膜103が成膜されるまでは、実施例1で説明した通りである。なお、
図7において、バリアフィルム101に引き出し、及び光変換膜102の成膜の工程は省略している。
【0066】
バリアフィルム101の上面(第1主面)に光変換膜102が成膜された後に、バリア膜成膜手段120によってバリア膜103を成膜する。バリア膜103は、実施例1と同様に、無機物からなり透明な性質を有している。具体的には、シリコン系膜であってもよく、Si並びにO(酸素)及び/又はN(窒素)を含んでいてもよい。つまりバリア膜103は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜であってもよい。バリア膜103で光変換膜102を覆うことにより、光変換膜102への水分や酸素の浸入を防止することができる。
【0067】
バリア膜103が成膜されたら、次に、切断手段430にて光変換膜102の上面(第1主面)及び側面全周囲におけるバリア膜103の外側の基材104を残して、バリア膜103及びバリアフィルム101のバリア層105を切断する(
図7(d−1))。
【0068】
次に、バリア膜成膜手段420で、バリア膜103、バリア層105、及び基材104を覆うようにバリア膜403を成膜する(
図7(d−2))。
【0069】
そして、最後に、切断手段435にて、バリア膜403と基材104を切断して(
図7(d−3))、液晶ディスプレイに対応した大きさの光変換フィルム409を作成する(
図7(e))。
【0070】
このように実施例4で作成された光変換フィルム409は、光変換膜102の上面(第1主面)、及び側面全周囲がバリア膜103で覆われるとともに、二重にバリア膜403で覆われ、光変換膜102の下面(第2主面)はバリアフィルム101のバリア層105で覆われているから、光変換膜102への水分や酸素の浸入を防止することができ、光変換機能の劣化を防ぐことができる。特に、光変換膜102の側面全周囲がバリア膜403で覆われることにより、側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。また、バリア膜103がバッファ層とバリア層との積層構造である場合に、バリア膜103の切断面からバッファ層が露出することをバリア膜403で防ぐことができる。また、バリア膜403はバリア層の単層で構成されていることが好ましい。また、バリアフィルム101もバリア膜103、403も透明の物質で構成されているため、光変換フィルム409は青色光を透過させ、量子ドットにより青色光の一部を赤色光及び緑色光に変換して出射するという機能を満足することができる。
【実施例5】
【0071】
実施例5は、実施例1〜実施例4で作成された光変換フィルム109、209、309.409を適用した液晶ディスプレイの構造を、
図8を参照しながら説明する。
【0072】
図8における光変換フィルムAは、実施例1〜実施例4で作成された光変換フィルム109、光変換フィルム209、光変換フィルム309、又は光変換フィルム409のいずれかを示しており、これらは上述したようにサイズの異なる2種類の量子ドット1が分散して含まれた量子ドット樹脂膜である光変換膜2をバリア膜、バリアフィルムで封止した光変換フィルムである。光変換フィルムAの下面にはバックライト4が配置され、青色LED9が発光した青色光を光変換フィルムAに入射させる。量子ドット1は、入射する光の波長を変換する部材であるから、光変換フィルムAに青色が入射すると、2種類の量子ドット1から赤色及び緑色が発光するとともに、青色は光変換フィルムAを透過することによって、RGBの三原色が偏光板5、液晶セル6、カラーフィルタ7、ガラスもしくはプラスチックフィルム8を通して外部に出射する。これによって色域が向上した液晶ディスプレイを実現することができる。
【0073】
このとき、光変換フィルム109、209、309.409におけるバリアフィルム101は透明で光を透過させるから、バックライト4の青色光が量子ドット樹脂膜2への到達を妨げない。また、光変換フィルム109、209、309.409におけるバリア膜103、203、303、403は、透明で光を透過させるから、光変換膜2からの青色光、赤色光、緑色光の出射を妨げることはない。
【0074】
そして、水分や酸素に接触すると光酸化反応により発光強度が低下するとういう問題を持つ量子ドット1は、上述したように、バリア膜、バリアフィルムによって光変換膜2の側面端部も含めて効果的に覆われているから、水分や酸素の浸入を効果的に防ぐことができ、光変換機能の劣化を防ぐことができる。
【0075】
このように、バリアフィルムの第1主面に接触し周囲に前記バリアフィルムが存在するように前記バリアフィルムよりも小面積の光変換膜を成膜し、前記バリアフィルムの第1主面に接触する前記光変換膜の面を第2主面としたときに、少なくとも前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲に接触するように前記光変換膜を覆うバリア膜を成膜した後、前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲における前記バリア膜を残して、少なくとも前記バリアフィルムを切断してなることを特徴とする光変換フィルムの製造方法により、光変換フィルムの側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。
【0076】
また、バリアフィルムを搬送する搬送手段と、前記バリアフィルムの第1主面に接触する光変換膜を成膜する光変換膜成膜手段と、前記バリアフィルムの第1主面に接触する前記光変換膜の面を第2主面としたときに、少なくとも前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲に接触するように前記光変換膜を覆うバリア膜を成膜するバリア膜成膜手段と、前記光変換膜の第1主面及び側面全周囲における前記バリア膜を残して、少なくとも前記バリアフィルムを切断する切断手段とを備えたことを特徴とする光変換フィルム製造装置により、光変換フィルムの側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。
【0077】
さらに、光変換膜の第2主面全域が前記光変換膜よりも広い面積のバリアフィルムに接し、第1主面及び側面全周囲がバリア膜に接している光変換フィルムであって、前記バリアフィルム及びバリア膜は光を透過することを特徴とする光変換フィルムにより、光変換フィルムの側面端部からの水分や酸素の浸入を防止することができる。