(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電源供給部は、前記複数の電源部に電源を供給する複数の電圧レギュレータを有し、各電圧レギュレータは、対応する前記ステージが前記安定期間である時に、対応する前記電源部への電源供給を行う請求項1に記載のPLL回路。
前記ダブラは、前記発振器周波数制御部により前記逓倍周波数信号の1つの変化エッジに一致するように調整された前記発振信号の位相に、前記逓倍周波数信号の次の変化エッジの位相が一致するように前記逓倍周波数信号を調整することにより、変化エッジの時間間隔が前記参照周波数信号の半周期に一致する前記逓倍周波数信号を生成する請求項6に記載のPLL回路。
前記遅延素子列は、1つの入力が前記遅延素子の入力に接続され、残りの2つの入力の1つに遅延量選択信号が入力され、前記残りの2つの入力の別の1つに固定値が入力される3入力論理ゲートを有する請求項4から7のいずれか1項に記載のPLL回路。
前記遅延素子列は、1つの入力が前記遅延素子の入力に接続され、残りの2つの入力に遅延量選択信号が入力される3入力論理ゲートを有する請求項4から7のいずれか1項に記載のPLL回路。
入力を遅延して後段に出力するように直列に接続された複数の遅延素子をそれぞれが有する複数のステージであって、各ステージが入力信号を処理して後段のステージに出力信号を出力するように接続され、ステージの入力および出力の遷移が発生しない期間である安定期間を有し、前記複数のステージの前記安定期間が互いに重複しない複数のステージと、
前記複数のステージに対応して設けられ、電源電圧を安定化する容量素子を有する複数の電源部と、
前記複数の電源部に電源を供給する電源供給部と、を備え、
前記電源供給部は、前記複数のステージのそれぞれが前記安定期間である時に前記電源部への電源供給を行い、
ステージに含まれる遅延素子の入力および出力の遷移が発生する期間は、前記電源部が、電源供給部と遮断した状態で前記遅延素子への電源供給を行うことを特徴とする電子回路。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態のPLL回路について説明する前に、図面を参照して一般的なPLL回路について説明する。
【0023】
PLL回路は複数の回路ブロックを有し、実際にある周波数信号を出力するブロックは発振器と呼ばれる発振回路である。発振器の出力信号の周波数は、電源電圧に依存して変動するが、PLLのフィードバック制御を用いることで、電源電圧が変動した場合であっても、ある範囲内の変動であれば出力信号の周波数は一定となる。通常、この出力信号の周波数が一定となるように制御可能な範囲は、PLLのロックレンジと呼ばれる。しかし、このロックレンジを超える電源電圧の変動が起こった場合、PLLはロックが外れ、PLL回路は所望の周波数から大きく変動した周波数の信号を出力することになる。
【0024】
複数の回路が1つのチップに組み込まれるSoC (System on a Chip)においては、LDO (Low Drop Out)電圧レギュレータと呼ばれる電圧制御回路を用いて電源電圧を安定化することが行われる。
【0025】
図1は、リング型発振器を形成する複数のバッファおよびインバータに、LDO電圧レギュレータ(以下、単にLDOと称する場合がある)を介して電源電圧を供給する注入同期型PLL回路の構成を示す図であり、(A)が全体構成を、(B)がLDO電圧レギュレータの回路構成を、示す。
【0026】
図1の(A)に示すように、注入同期型PLL回路は、2個のバッファ11および12と、1個のインバータ13と、マルチプレクサ14と、LDO15と、電源電圧安定用の容量素子16と、を有する。マルチプレクサ14は、水晶発振器等から供給される安定した周波数の参照周波数信号Refの変化エッジ付近のウィンドウ期間中には参照周波数信号Refを選択し、ウィンドウ期間以外の非ウィンドウ期間中はインバータ13の出力を選択し、バッファ11の入力として出力する。非ウィンドウ期間中には、バッファ11および12とインバータ13によりリング型発振器が形成され、バッファ11および12とインバータ13における遅延量の合計の2倍を周期とする発振信号が発生される。なお、バッファ11および12は、2個のインバータを直列に接続して実現されるので、2個のバッファ11および12と1個のインバータ13は、5個のインバータからなる遅延素子列を形成する。リング型発振器は、一般に奇数個のインバータを直列にリング状に接続することにより実現される。リング型発振器については広く知られているので、説明は省略する。ウィンドウ期間中には、マルチプレクサ14が参照周波数信号Refを選択するので、リング型発振器の発振信号の変化エッジは参照周波数信号Refの変化エッジに強制的に一致される。参照周波数信号Refの周波数をf
refとし、発振信号は参照周波数信号Refの1周期中にN個のパルスを発生すると仮定すると、発振信号の周波数はN*f
refとなり、発振信号の周波数が(N-1)*f
refと(N+1)*f
refの範囲内で変動しても、発振信号の周波数は常にN*f
refに維持される。
【0027】
LDO15は、グローバル電源部10と、リング型発振器を形成するバッファ11および12とインバータ13のローカル電源部20の間に接続され、V
DDを数十から数百mV降下した電圧V
DD2をローカル電源部20に供給する。LDO15とグランドの間に接続された容量素子16は、ローカル電源部20の電圧を安定化するように機能する。
【0028】
図1の(B)に示すように、LDO15は、グローバル電源部10とローカル電源部20の間に接続されPチャネルトランジスタ17と、ローカル電源部20の電圧V
DD2を基準電圧V
refと比較する比較器18と、比較器18の出力とローカル電源部20の間に接続された容量素子19と、を有する。比較器18は、電圧V
DD2を基準電圧V
refと比較し、比較結果をPチャネルトランジスタ17のゲートに印加する。これにより、V
DD2がV
refより低い時にはPチャネルトランジスタ17がオンしてV
DD2が上昇し、V
DD2がV
refより高い時にはPチャネルトランジスタ17がオフしてV
DD2はV
ref以上には上昇しない。容量素子19は、比較器18の出力から高周波成分を除去して安定化させる。
【0029】
図1の(A)に示すように、他の回路部分(例えばデジタル回路)での電力消費に起因してグローバル電源部10の電圧V
DDに雑音(ノイズ)が発生すると、その雑音はローカル電源部20の電圧V
DD2を変動させる。また、LDO15自体も雑音を発生し、電圧V
DD2を変動させる。図示のように、電圧V
DD2の安定化のため容量素子16が設けられているが、容量素子16の容量値をあまり大きくすることはできないので、電圧V
DD2の変動は避けられない。電圧V
DD2が変動すると、PLL回路が生成する発振信号のジッタ性能を劣化させる。
【0030】
図2は、
図1の(A)に示した注入同期型PLL回路の構成および動作を示す図であり、(A)がより具体的な回路構成を、(B)がエッジ注入の基本動作を、(C)が問題点を説明する。
【0031】
図2の(A)に示すように、注入同期型PLL回路は、3個のインバータ21−23からなり、発振信号V
oscを出力するリング型発振器と、マルチプレクサ14と、参照周波数信号Refから注入ウィンドウ(Injection Window)信号Inj.Win.およびInj.Win.のパルス中央で立下るようにRefをシフトした信号V
injを発生するウィンドウ・エッジ信号生成部(Window & edge gen.)と、を有する。ウィンドウ・エッジ信号生成部は、インバータ24、ディレイライン25および26と、ANDゲート27と、を有する。インバータ24は、Refを少し遅延し、Refの立下りを立上りに反転した反転信号を出力する。ディレイライン25は、インバータ24の遅延量より少し大きい遅延量だけRefを遅延し、信号V
injを発生する。ディレイライン26は、信号V
injをさらに少し遅延する。ANDゲート27は、インバータ24の出力とディレイライン26の出力の論理積を演算し、注入ウィンドウ(Injection Window)信号Inj.Win.を出力する。ディレイライン26の出力する信号は、インバータ24の出力する信号が立上った後立下るので、Inj.Win.はパルス信号になり、ディレイライン25の出力する信号V
injは、Inj.Win.の中間位置で立下る。信号V
injは、Refを少し遅延した信号であり、以下で説明する調整動作では、信号V
injが基準の信号となる。
【0032】
図2の(B)に示すように、V
injの変化エッジ(立下りエッジ)の前後で、注入ウィンドウ信号Inj.Win.が高レベルになる。マルチプレクサ14は、Inj.Win.が高レベルの時(ウィンドウ期間中)、V
injを選択してV
oとして出力し、Inj.Win.が低レベルの時(非ウィンドウ期間中)、V
oscを選択してV
oとして出力する。したがって、V
oはV
injの変化エッジ(立下りエッジ)に同期して変化する(立下る)。
【0033】
図2の(A)の注入同期型PLL回路は、エッジ注入型と呼ばれるもので、発振信号のある周期のエッジを参照周波数信号Refの変化エッジに強制的に合わせるもので、発振信号の周期のN倍が参照周波数信号Refの周期に完全に一致するわけではない。言い換えれば、PLL回路(リング型発振器)の発振周波数は常にN*f
refに維持されるが、発振信号の周期のN倍が参照周波数信号Refの周期に完全に一致するわけではない。
【0034】
図2の(C)に示すように、発振信号が理想的な周波数(Ideal Freq.)の時には、発振信号の周期のN倍が参照周波数信号Refの周期に完全に一致し、発振信号の立下りエッジは、V
injの立下りエッジに一致する。しかし、発振信号が理想的な場合より低い周波数(Low Freq.)の時には、発振信号のInj.Win.が高レベルになる部分のパルスの幅が狭くなり、発振信号が理想的な場合より高い周波数(High Freq.)の時には、発振信号のInj.Win.が高レベルになる部分のパルスの幅が広くなる。これは、発振信号のスプリアスとして現れ、発振信号の品質を劣化させるという問題を生じる。
【0035】
リング型発振器を形成する各インバータ(またはバッファ)の遅延量を調整することにより、リング型発振器の発振信号の周波数(周期)を調整することが行われる。インバータ(またはバッファ)の遅延量の調整は、一般に入力負荷を調整することにより行われる。例えば、リング型発振器の発振信号の所定時間当たりのパルス数をカウンタで計数し、計数した値から周波数(周期)を算出し、所望の周波数(周期)になるように遅延量を調整する。しかし、上記のエッジ注入型の注入同期型PLL回路の場合、参照周波数信号Refの周期毎に強制的に位相調整が行われるため、カウンタでパルス数を計数するのでは周波数の変動を検出できない。そこで、リング型発振器のレプリカを設け、レプリカについて強制的な位相調整を行わないようにして、リング型発振器の出力する発振信号とレプリカの出力する発振信号の位相差を検出し、検出した位相差に応じてリング型発振器およびレプリカのインバータ(またはバッファ)の遅延量を調整することが提案されている。しかし、この方法は回路規模が大きくなる上、リング型発振器とレプリカを完全に同じ特性にはできないので十分な調整が行えないという問題があった。
【0036】
さらに、
図2の(A)の注入同期型PLL回路では、水晶発振器を利用して発生した参照周波数信号Refを使用するが、高精度な信号を生成できるのは50MHz程度である。上記のリング型発振器は、数十GHzの発振信号を発生することを想定しており、発振信号の変化エッジを参照周波数信号Refの変化エッジに同期させる周期が長く、その分発振信号の精度が低くなる。そのため、発振信号の変化エッジを参照周波数信号Refの変化エッジに同期させる周期を短くして、発振信号の品質を向上させることが求められている。
【0037】
以上まとめると、
図1の(A)に示した注入同期型PLL回路は、以下のような点について改善が望まれていた。
(1)電源電圧のノイズの影響を低減して、発振信号の品質を向上すること。
(2)エッジ注入による参照周波数信号Refの変化エッジへの強制的な同期に伴い発生するスプリアスを低減して、発振信号の品質を向上すること。
(3)エッジ注入による参照周波数信号Refの変化エッジへの強制的な同期を行う周期を短くして、発振信号の品質を向上すること。
以下に説明する実施形態の注入同期型PLL回路は、簡単な回路構成で、上記の問題を解決し、発振信号の品質を向上させる。
【0038】
図3は、実施形態の注入同期型PLL回路の概略構成を示す図である。
実施形態の注入同期型PLL回路は、エッジ注入型の注入同期型PLL回路であり、半導体プロセス設計で提供されるスタンダードセルを使用して構成することが想定されている。実施形態の注入同期型PLL回路は、リング型発振器31と、マルチプレクサ32と、周波数調整部33と、ダブラ34と、ウィンドウ・エッジ信号生成部(Window & edge gen.)35と、第1(粗(Coarse))LDO36と、第1容量素子37と、第2(精(Fine))LDO38と、第2容量素子39と、を有する。
【0039】
リング型発振器31は、3個のバッファ41−43およびインバータ44からなる遅延素子列と同期マルチプレクサ32により形成される。前述のように、リング型発振器は、奇数個のインバータを直列にリング状に接続することにより実現され、インバータ(バッファ)の個数は、発振信号の周波数に応じて適宜設定する。また、後述するように、バッファ41および42は、遅延量の調整単位量(分解能)が比較的大きい(粗である)ステージを形成し、バッファ43およびインバータ44は遅延量の調整単位量(分解能)が比較的小さい(精である)ステージを形成する。図示のリング型発振器31は、遅延量がデジタル処理により調整可能であるため、デジタル制御発振器(Digital Control Oscillator: DCO)と称する場合がある。
【0040】
マルチプレクサ32は、ウィンドウ・エッジ信号生成部35の出力するウィンドウ信号が高レベル(1)のウィンドウ期間中には、逓倍周波数信号を選択し、ウィンドウ信号が低レベル(1)の期間中(非ウィンドウ期間中)には、リング型発振器31(インバータ44)の出力する発振信号を選択し、リング型発振器31(バッファ41)の入力として出力すると共に、周波数N*2*f
refの発振信号として出力する。マルチプレクサ32の出力する発振信号を、DCO出力(out)と称する場合がある。
【0041】
周波数調整部33は、逓倍周波数信号とリング型発振器31(インバータ44)の出力する発振信号との位相差を検出し、検出結果に基づいて、リング型発振器31の各ステージ(バッファまたはインバータ)の遅延量を調整する。ダブラ34は、参照周波数信号Refから、変化エッジの位相を正確に1/2周期(180度)シフトした逓倍周波数信号を生成し、参照周波数信号Refの1周期中に変化エッジ(立下りエッジ)が2つある信号を出力する。
【0042】
第1(粗(Coarse))LDO36は、リング型発振器31の前側のステージを形成するバッファ41および42に電源電圧を供給し、第1容量素子37は、電源電圧の安定化機能を実現する。第2(精(Fine))LDO38は、リング型発振器31の後側のステージを形成するバッファ43およびインバータ44に電源電圧を供給し、第2容量素子39は、電源電圧の安定化機能を実現する。第1LDO36および第2LDO38は、
図1の(B)のLDO回路で実現され、図示のようなレギュレータ45とスイッチ46およびレギュレータ47とスイッチ48からなる等価回路を有する。なお、図示のように、レギュレータ45および47の出力に電圧を安定化する容量素子を接続することが望ましい。スイッチ46は、バッファ42の出力信号の値に応じて導通するか遮断(開放)するかが制御され、スイッチ48は、マルチプレクサ32の出力信号の値に応じて導通するか遮断するかが制御される。例えば、
図3は、バッファ42の出力信号の高レベルへの変化が終了してスイッチ46が導通し、マルチプレクサ32の出力信号が低レベルでスイッチ48が遮断した状態を示している。この時、LDO36により容量素子37が充電され、LDO36からバッファ41および42への電源供給が行われ、バッファ41および42のローカル電源部の電圧はグローバル電源V
DDの雑音の影響を受ける。しかし、バッファ41および42の入力および出力は変化せず安定しているので、バッファ41および42のローカル電源部への電流I
C'はゼロであり、遅延量の変動は生じない。また、LDO38による電源供給は行われず、バッファ43およびインバータ44への電源供給は、容量素子39に蓄積された電荷により行われる。したがって、バッファ43およびインバータ44のローカル電源部の電圧は、グローバル電源V
DDの雑音の影響を受けず(Noise isolation)、安定している。したがって、バッファ43およびインバータ44の入力および出力が変化しても、電源電圧が安定しているので、遅延量の変動は生じない。
【0043】
以上が、実施形態の注入同期型PLL回路の概略構成である。実施形態の注入同期型PLL回路は、これまでの注入同期型PLL回路と同様に、参照周波数信号Refと同期した高周波の発振信号を生成するが、2つのLDOによるリング型発振器31の前側と後側のステージへの電源電圧の供給、周波数調整部33およびダブラ34が、これまでのものとは異なる。まず、2つのLDOによるリング型発振器31の前側と後側のステージへの電源電圧の供給について説明する。
【0044】
図4は、実施形態の注入同期型PLL回路においてリング型発振器31の前側と後側のステージへの2つのLDOによる電源電圧供給に関係する詳細な構成を示す図であり、周波数調整部33等は図示していない。
【0045】
リング型発振器31は、遅延量の調整単位量が粗である(Coarse tuning)ステージ51と、遅延量の調整単位量が精である(Fine tuning)ステージ52と、エッジ注入(Edge injection)を行うマルチプレクサ32と、を有する。例えば、ステージ51は
図3のバッファ41および42により形成され、ステージ52は
図3のバッファ43およびインバータ44により形成される。これらの部分の詳細は後述する。
【0046】
第1のLDO(Coarse LDO)53Cは、
図3の第1(粗(Coarse))LDO36および第1容量素子37の部分に相当する。第1のLDO(Coarse LDO)53Cは、複数のLDOユニット54Cと、容量素子55Cと、比較器56Cと、デジタルループフィルタ(DLF)57Cと、パルス発生回路58Cと、を有する。LDOユニット54Cは、PチャネルトランジスタおよびNANDゲートを有する。Pチャネルトランジスタおよび容量素子55Cは、グローバル電源10とグランド間に直列に接続される。NANDゲートは、DLF57Cの出力およびパルス発生回路58Cの出力を受け、出力信号をPチャネルトランジスタのゲートに印加する。第1のLDO(Coarse LDO)53Cでは、比較器56Cが基準電圧V
refと容量素子55Cの端子電圧の差を検出し、検出した差電圧に応じてLDOの駆動力を変更する。従来のアナログ回路では、比較器の出力する差電圧に応じてLDOのPチャネルトランジスタの駆動力を変化させていたが、本実施形態では、複数のLDOユニット54Cのうち駆動するユニット数を変化させることで駆動力を変化させる。そのため、比較器56Cの出力をDLF57Cで処理し、駆動するユニット数を変化させる。これはスタンダードセルを使用することを想定しているためである。さらに、
図4ではLDOユニット54Cが点線で示したNチャネルトランジスタを有するように示されているが、これもトライステートバッファを用いたスタンダードセルのみでPチャネルトランジスタを実現するためであり、Nチャネルトランジスタは、ゲートに低レベル(0)が印加され、常時オフされる。
【0047】
パルス発生回路58Cは、ステージ51の出力信号の変化エッジ(立上りと立下りの両方のエッジ)で時間幅τ
Cのパルスを発生する。τ
Cは、発振信号の1/2周期より短く設定する。したがって、LDOユニット54CのNANDゲートの出力は、差電圧に応じてLDOを駆動する場合で且つパルスが高レベルとなる時間幅τ
Cの間低レベル(0)となり、それに応じてPチャネルトランジスタがオンする。Pチャネルトランジスタがオンすることにより、グローバル電源部10から容量素子55Cへの充電が行われる。この時の充電電流をI
Cで表す。この時、ステージ51の素子(バッファまたはインバータ)は状態を変化させないので電力をほとんど使用せず、Pチャネルトランジスタを通過する電流は、ほとんどが容量素子55Cへの充電に使用される。この時間幅τ
Cの間に容量素子55Cへの充電が十分に行えるように、駆動するLDOユニット54Cのユニット数が決定される。また、ステージ51の素子(バッファまたはインバータ)が状態を変化させる時電力が消費され、その電力は容量素子55Cからの放電により供給される。この時の放電電流をI
C'で表す。ステージ51の素子(バッファまたはインバータ)が状態を変化させる時、パルス発生回路58Cはパルスを発生しないため、LDOユニット54CのPチャネルトランジスタはオフしており、グローバル電源部10の雑音は容量素子55Cの端子電圧に影響しない。ここでは、第1のLDO(Coarse LDO)53Cの出力電圧をV
DDCで表す。
【0048】
上記のように、容量素子55Cの端子電圧は、LDOユニット54Cによる充電およびステージ51の素子の動作に伴う放電により変動する。そのため、比較器56Cによる電圧比較は、充電と放電以外の時に行うことが望ましく、ここではダブラ34の出力するダブラ出力(Doubler out)を利用して、電流供給が終わる瞬間に行う。DLF57Cも、同様に、ダブラ出力に同期して処理を行う。したがって、比較器56Cによる差電圧の検出は、ダブラ出力に同期して1回、すなわち、参照周波数信号Refの1周期に2回行われる。
【0049】
第2のLDO(Fine LDO)53Fは、
図3の第2(精(Fine))LDO38および第2容量素子39の部分に相当する。第2のLDO(Fine LDO)53Fは、第1のLDO(Coarse LDO)53Cに類似の構成を有し、遅延量の調整単位量が精である(Fine tuning)ステージ52に電源電圧を供給すること、およびパルス発生回路58Fに入力する信号がマルチプレクサ32の出力信号であること、が異なる。第2のLDO(Fine LDO)53Fは、マルチプレクサ32の出力信号の変化エッジにおける時間幅τ
Fの期間、容量素子55Fの充電を行い、ステージ52の素子の状態が変化する時に電源電圧を供給するように放電する。充電電流をI
Fで表し、放電電流をI
F'で表す。ここでは、第2のLDO(Fine LDO)53Fの出力電圧をV
DDFで表す。
【0050】
図5は、実施形態の注入同期型PLL回路における充電電流I
CおよびI
Fと、放電電流I
C'およびI
F'と、LDOの出力電圧V
DDCおよびV
DDFの変化を示すタイムチャートである。
図5において、実線が第1のLDO(Coarse LDO)53Cに関係する充電電流I
C、放電電流I
C'および出力電圧V
DDCを表し、点線が第2のLDO(Fine LDO)53Fに関係する充電電流I
Fと、放電電流I
F'と出力電圧V
DDFを表す。
【0051】
第1のLDO(Coarse LDO)53Cにおいて、τ
Cのパルスが発生される間、充電電流I
Cが流れ、容量素子55Cへの充電が行われる。この時、ステージ51の素子は状態変化を終了しており放電電流I
C'はほぼゼロであり、出力電圧V
DDCは充電により上昇する。充電電流I
Cには雑音が重畳されており、出力電圧V
DDCにも雑音が重畳されるが、τ
Cのパルス期間が終了すると、Pチャネルトランジスタがオフして出力電圧V
DDCは一定の電圧になる。この間、ステージ51の素子は状態変化しないため、遅延時間等の動作特性は変化しない。ここでは、第1のステージ53Cの素子の入力および出力が、
図5に示す程度の電源電圧の変動では変化しない期間を安定期間と称し、第2のステージ53Fについても同様である。
【0052】
出力電圧V
DDCが一定の電圧になった状態で、マルチプレクサ32の出力が変化し、第2のLDO(Fine LDO)53Fにおいてτ
Fのパルスが発生されると共に、ステージ51の入力が変化する。これに応じて、容量素子55Cからステージ51に放電電流I
C'が流れる。この時、LDOユニット54CのPチャネルトランジスタはオフしており、放電電流I
C'は容量素子55Cから供給されるので出力電圧V
DDCは徐々に低下するが、雑音は少ない。出力電圧V
DDCは徐々に低下するが、繰り返し動作において同じように変化するので、ステージ51における遅延時間等の動作特性は変化しない。
【0053】
また、第2のLDO(Fine LDO)53Fにおいてτ
Fのパルスが発生されると、第1のLDO(Coarse LDO)53Cにおいてτ
Cのパルスが発生された場合と同様に、第2のLDO(Fine LDO)53Fにおいて容量素子55Fへの充電が行われる。この時、充電電流I
Cおよび出力電圧V
DDCには雑音が重畳されるが、ステージ52は状態が変化しないので、遅延時間等の動作特性は変化しない。さらに、ステージ51の出力が変化し、第1のLDO(Coarse LDO)53Cにおいてτ
Cのパルスが発生されると、ステージ52の状態が変化し、容量素子55Fからステージ52に放電電流I
F'が流れる。この時も、放電電流I
F'は容量素子55Fから供給されるので出力電圧V
DDFは徐々に低下するが、雑音は少なく、ステージ52における遅延時間等の動作特性は変化しない。
【0054】
以上説明した通り、実施形態の注入同期型PLL回路においては、リング型発振器31の2つのステージに対応して2つのLDOを設け、2つのステージの動作タイミングに応じて2つのLDOを間欠動作させることにより、グローバル電源からの雑音およびLDO自体の雑音の影響を低減している。これにより、リング型発振器31の2つのステージの遅延時間が安定し、ジッタの小さな発振信号が得られる。
なお、
図5に示すように、充電電流I
CとI
Fの供給は同時に行われないので、
図3においてのレギュレータ45と47を1個の共通のレギュレータとし、共通のレギュレータからスイッチ46および48を介して、充電電流I
CおよびI
Fを供給することも可能である。1個または複数個のレギュレータを有する部分を電源供給部と称する。
また、
図4において、LDOユニット54Cおよび54Fをレギュレータとスイッチで構成し同様の変形を行うことも可能である。さらに、充電電流I
CおよびI
Fの供給は、ステージの素子の入力および出力が変化しなければよく、安定期間に完全に一致する必要はない。
【0055】
図6は、実施形態の注入同期型PLL回路におけるリング型発振器、周波数調整部、ダブラ、およびエッジ注入同期回路の詳細を示す図である。
図6では、2つのLDOは図示を省略している。
【0056】
図6において、デジタル制御発振器(DCO)70およびマルチプレクサ32が、リング型発振器31を形成する。インバータ66、ディレイライン67および68、およびANDゲート69が、ウィンドウ・エッジ信号生成部(Window & edge gen.)35を形成する。位相比較器(Symm.PD)61およびDCO用デジタルループフィルタ(DLF for DCO)62が、周波数調整部33を形成する。ダブラ用デジタルループフィルタ(DLF for Doubler)63、参照ダブラ(Ref.doubler)64およびセレクタ65が、ダブラ34を形成する。
【0057】
DCO70は、粗調整(Coarse tuning)ステージ71と、セレクタ72と、中位調整(Medium tuning)ステージ73と、精調整(Fine tuning)ステージ74と、を有する。例えば、粗調整(Coarse tuning)ステージ71およびセレクタ72が、
図4のステージ51に対応し、第1LDO53Cから電源電圧が供給され、中位調整(Medium tuning)ステージ73および精調整(Fine tuning)ステージ74が、
図4のステージ52に対応し、第2LDO53Fから電源電圧が供給されるが、これに限定されるものではない。DCO70の構成については後で詳細に説明する。
【0058】
インバータ66、ディレイライン67および68、およびANDゲート69からなるウィンドウ・エッジ信号生成部(Window & edge gen.)35は、
図2の(A)に示したウィンドウ・エッジ信号生成部(Window & edge gen.)と同じ構成を有し、セレクタ65の出力する信号から注入ウィンドウ(Injection Window)信号Inj.Win.および信号V
injを発生する。
【0059】
マルチプレクサ32は、例えば、
図7の(A)に示す回路構成を有する。マルチプレクサ32は、
図2の(A)で説明したのと同様に、Inj.Win.が高レベルの時(ウィンドウ期間中)、V
injを選択してDCO outとして出力し、Inj.Win.が低レベルの時(非ウィンドウ期間中)、V
oscを選択してDCO outとして出力する。
図7の(A)の回路は、V
injとV
oscに対して対称な動作を行い、V
injを選択する場合も、V
oscを選択する場合も、回路における遅延量が同じである。これにより、V
injとV
oscの位相を調整した上で、マルチプレクサ32による選択を行えば、スプリアスやpeak-to-peakのジッタを小さくできる。
【0060】
位相比較器61は、例えば、
図7の(B)に示すBang-Bang位相比較器(BBPD: Bang-Bang Phase Detector)と呼ばれるバイナリの回路構成を有する。位相比較器61は、精調整(Fine tuning)ステージ74の出力信号VoscとV
injの位相を比較する。言い換えれば、位相比較器61は、マルチプレクサ32に入力し選択される2つの信号の位相を比較する。
図7の(B)の回路は、V
injとV
oscに対して対称な動作を行い、V
injとV
oscの位相関係にかかわらず、位相差を正確に検出可能である。
【0061】
DCO用DLF62は、位相比較器61の検出した位相差がゼロになるように、DCO70の各ステージにおける遅延量を調整する。これにより、DCO70の出力する発振信号Voscの周波数が変化し、Voscの位相がV
injの位相に一致するように制御される。
【0062】
参照ダブラ(Ref.doubler)64およびセレクタ65は、参照周波数信号Refから、参照周波数信号Refの周波数の2倍の周波数のダブラ出力(Doubler out)を生成する。ダブラ用デジタルループフィルタ63は、位相比較器61の検出した位相差に基づいて、ダブラ出力の変化エッジ(立下りエッジ)が、正確に参照周波数信号Refの1/2周期シフトしたタイミングになるように調整する。周波数逓倍信号を生成する回路動作については後で詳細に説明する。
【0063】
図8は、実施形態の注入同期型PLL回路におけるエッジ注入動作とDCOの出力する発振信号V
oscの周波数調整との関係を示すタイムチャートである。
【0064】
図8は、調整前のDCO70の出力するフリーランの発振信号V
oscの周波数は、所望の周波数より若干小さい場合の例を示している。エッジ注入によりV
oscの立下りエッジは、参照周波数信号Refから生成されたV
injの立下りエッジに強制的に合わせられるが、エッジ注入が行われたパルスは、他のパルスよりデューティが小さくなる。V
injとV
oscの2つのエッジの位相比較を行えば、V
oscのエッジのV
injのエッジに対する位相の進みまたは遅れが検出できる。特に、エッジを入れ替えた直後でのフリーラン周波数とロック周波数の位相差をΔτ
DCOとすると、V
injのエッジは、参照周波数信号Refの1周期に1回(ここではダブラにより2回)生じるが、その間に発振信号V
oscは、逓倍数Nの発振を繰り返しており、位相差が蓄積されるので、再度エッジを入れ替える直前には位相差は(N−1)Δτ
DCOとなる。これにより、フリーラン周波数とロック周波数の誤差が小さい場合でも検出することが可能になる。
【0065】
次に、DCO70の構成について説明する。一般に、リング型DCOの遅延素子の構成として2種類のものが知られている。バッファは、2個のインバータを直列に接続して実現するので、以下、インバータで実現した遅延素子を例として説明する。1つは信号が通過するインバータの個数を選択する構成で、もう1つはインバータの入力に2入力のNANDゲートを負荷として接続し、NANDゲートのもう1つの入力に印加する制御信号を0/1に切り替えることでゲート容量を変化させて負荷を変化させる構成である。ここでは、粗調整(Coarse tuning)ステージ71およびセレクタ72をインバータの個数を選択する構成で実現し、中位調整(Medium tuning)ステージ73および精調整(Fine tuning)ステージ74を入力の負荷を調整する構成で実現する。
【0066】
図9は、リング型発振器を3つのステージを実現する従来例の構成と本実施形態の構成を示す図であり、(A)が従来例を、(B)が本実施形態における構成を示す。
図9の(A)に示すように、従来例では、粗調整(Coarse tuning)ステージが、直列に接続された複数のバッファ(直列に接続した2個のインバータ)とマルチプレクサ(セレクタ)で実現され、通過するバッファの個数を選択することにより、遅延量が調整できる。中位調整(Medium tuning)ステージおよび精調整(Fine tuning)ステージの遅延素子が、インバータの入力に2入力のNANDゲートを接続することにより実現され、NANDゲートの残りの入力値を変えることにより遅延量が調整できる。
【0067】
これに対して、実施形態では、
図9の(B)に示すように、粗調整(Coarse tuning)ステージ71は、通過する阻止の個数を選択することは同じであるが、マルチプレクサ(セレクタ)を使用せず、NANDゲートのみで実現される。各遅延素子は3個のNANDゲートで実現され、制御信号が低レベル(0)の時に入力信号が折り返され、高レベル(1)の時に入力信号が次段に出力される。遅延素子が複数個直列に接続され、1つの遅延素子の制御信号のみが0に、他の遅延素子の制御信号が1にセットされ、通過する遅延素子の個数が選択される。
【0068】
従来例では、直列に接続された複数のバッファには常時発振信号が入力されるために、消費電力が大きくなる。また、マルチプレクサは、パスを選択する時のオフセットが大きく、調整の線形性が低いという問題がある。これに対して、実施形態では、折返しの遅延素子から先の遅延素子は、状態が固定であり、消費電力を小さくできる。また、マルチプレクサを使用しないため、オフセットも小さい。
【0069】
さらに、従来例では、精調整(Fine tuning)ステージおよび中位調整(Medium tuning)ステージの遅延素子は、インバータの入力に2入力のNANDゲートを接続し、もう1つの入力に負荷の制御信号が入力される。これに対して、実施形態では、精調整(Fine tuning)ステージおよび中位調整(Medium tuning)ステージの遅延素子は、インバータの入力に3入力のNANDゲートを接続することにより実現される。精調整(Fine tuning)ステージの遅延素子では、NANDゲートの1つの入力にインバータの入力信号が入力され、1つの入力に負荷の制御信号が入力され、もう1つの入力は0に固定される。また、中位調整(Medium tuning)ステージの遅延素子では、NANDゲートの1つの入力にインバータの入力信号が入力され、残りの2つの入力に負荷の制御信号とその反転信号が入力される。
【0070】
図10は、従来例と本実施形態の精調整(Fine tuning)ステージにおける遅延素子を比較する図であり、(A)が従来例の回路図を、(B)が従来例のトランジスタレベルの回路構成を、(C)が実施形態の回路図を、(D)が実施形態のトランジスタレベルの回路構成を示す。
【0071】
従来例の精調整(Fine tuning)ステージにおける遅延素子は、
図10の(A)の回路を有し、そのトランジスタレベルの回路構成は
図10の(B)である。
図10の(B)の回路構成は、2入力NANDゲートの回路構成として広く知られている。制御信号(Ctrl)が0の時、Pチャネルトランジスタがオンし、Nチャネルトランジスタがオフし、入力信号Aにかかわらず、出力は1になる。制御信号(Ctrl)が1の時、Pチャネルトランジスタがオフし、Nチャネルトランジスタがオンし、入力信号Aが1の時には出力は0に、入力信号Aが0の時には出力は1になる。ここで、入力信号Aが0から1(あるいは1から0)に遷移する時の中間電位0.5V付近で負荷のNANDゲートに貫通電流が流れることで消費電力が増える。
【0072】
これに対して、本実施形態の精調整(Fine tuning)ステージにおける遅延素子は、
図10の(C)の回路を有し、そのトランジスタレベルの回路構成は
図10の(D)である。
図10の(D)の回路構成では、並列に接続された3個のPチャネルトランジスタと、3個の直列に接続されたNチャネルトランジスタが、V
DDとグランドに直列に接続される。2個のPチャネルトランジスタおよび1番目のNチャネルトランジスタのゲートには制御信号(Ctrl)が入力され、1個のPチャネルトランジスタおよび2番目のNチャネルトランジスタのゲートには入力信号Aが入力され、3番目のNチャネルトランジスタのゲートは0に固定される。
図10の(D)の回路は、
図10の(B)の回路に類似の動作を行うが、3番目のNチャネルトランジスタは常時オフであり、貫通電流の電流経路が形成されることはないので、消費電力が小さくなる。
【0073】
図11は、
図10の(D)の回路で、入力信号Aの信号線からの2番目と3番目のNチャネルトランジスタの接続ノードに対する容量値の、入力信号Aの電圧値による変化を示す図であり、実線は制御信号(Ctrl)が0の場合を、破線は制御信号(Ctrl)が1の場合を示す。
図11に示す容量値の変化が、インバータへの入力容量を変化させる。制御信号(Ctrl)が0と1で異なることによる容量値の差は、最大で0.3fF程度と小さいため、精密な遅延量の調整が可能である。
【0074】
図12は、本実施形態の中位調整(Medium tuning)ステージにおける遅延素子の構成を示す図であり、(A)が回路図を、(B)がトランジスタレベルの回路構成を示す。
本実施形態の中位調整(Medium tuning)ステージにおける遅延素子は、本実施形態の精調整(Fine tuning)ステージと類似の構成を有するが、3入力NANDゲートの1つの入力に入力信号Aが、1つの入力に制御信号(Ctrl)が、もう1つの入力に制御信号(Ctrl)の反転信号が入力されることが異なる。
図12の遅延素子は、
図10の(C)および(D)で説明したのと類似の動作を行うが、制御信号(Ctrl)が0と1で異なることによる容量値の差が、
図10の(C)および(D)の精調整(Fine tuning)ステージの遅延素子の場合より大きく、中位調整(Medium tuning)に適している。
【0075】
図13は、
図11に対応した図であり、中位調整(Medium tuning)ステージにおける遅延素子の回路で、入力信号Aの信号線からの2番目と3番目のNチャネルトランジスタの接続ノードに対する容量値の、入力信号Aの電圧値による変化を示す図であり、実線は制御信号(Ctrl)が0の場合を、破線は制御信号(Ctrl)が1の場合を示す。
図13における容量値の差は、最大で0.7fF程度であり、
図11に比べて大きく、中位の遅延量の調整に適している。
【0076】
図14は、
図9から
図13で説明した従来例と本実施形態のデジタル制御発振器(DCO)の消費電力の差を示す図であり、(A)が最大発振周波数(1.8GHz)で動作した場合を、(B)が最小発振周波数(900MHz)で動作した場合を示す。
【0077】
最大発振周波数(1.8GHz)で動作した場合、粗調整(Coarse tuning)ステージ、中位調整(Medium tuning)ステージおよび精調整(Fine tuning)ステージの消費電力は、従来例(previous)ではそれぞれ0.624mW、0.447mWおよび0.588mWであり、本実施形態(Proposed)ではそれぞれ0.06mW、0.238mWおよび0.450mWとなり、改善される。
【0078】
最小発振周波数(900MHz)で動作した場合、粗調整(Coarse tuning)ステージ、中位調整(Medium tuning)ステージおよび精調整(Fine tuning)ステージの消費電力は、従来例(previous)ではそれぞれ0.317mW、0.398mWおよび0.375mWであり、本実施形態(Proposed)ではそれぞれ0.330mW、0.121mWおよび0.230mWであり、全体として改善される。
【0079】
上記の例では、3入力NANDゲートを使用する例を示したが、3入力NORゲート等の他の論理ゲートを使用することも可能である。
【0080】
次にダブラについて説明する。
図15は、
図6において、参照ダブラ(Ref.doubler)64およびセレクタ65により形成される周波数逓倍部80の詳細な構成を示す図であり、リング型発振器(DCO)31は
図4のように簡略して示されている。
また、
図16は、周波数逓倍部80における動作を説明するタイムチャートである。
【0081】
周波数逓倍部80では、ディレイライン81およびインバータ82により、参照周波数信号Refをτ
0遅延させて反転した信号Ref'を生成する。τ
0は、Refの約1/4周期である。そして、2個のインバータ87と88および3個のNANDゲート89−91からなる排他的論理和回路により、RefとRef'のEXORを演算し、ダブラ出力(Doubler out)V
injを生成する。この時、
図16において、Refの立下りエッジ(1)はV
injの立下りエッジ(3)に対応し、Refの立上りエッジ(2)はV
injの立下りエッジ(4)に対応する。
【0082】
前述のように、エッジ注入は、信号V
injの立下りエッジで行われる。V
injには、Refの1周期Tに2つの立下りエッジ(3)および(4)があり、Refの代わりにV
injをウィンドウ・エッジ信号生成部(Window & edge gen.)35に供給することにより、エッジ注入の頻度は2倍になる。しかし、エッジ注入を行うには、2つの立下りエッジ(3)および(4)の間隔が正確にT/2であることが求められる。そこで、遅延量が調整可能なディレイライン84および85を設けて、立下りエッジ(3)および(4)の間隔が正確にT/2になるように調整する。なお、遅延量を揃えるためにディレイライン83および86を設けるが、これらは遅延量が可変である必要はない。ディレイライン84および85は、例えば、
図6のDCO70と同程度の分解能で遅延量が調整可能である。ディレイライン83の遅延量をτ
1、ディレイライン84とインバータ87の遅延量の合計をτ
pos、ディレイライン85とインバータ88の遅延量の合計をτ
neg、ディレイライン86の遅延量をτ
2とする。
【0083】
Refの立下りエッジ(1)と立上りエッジ(2)の間隔T
1は正確にT/2であることが保証されない。立下りエッジ(3)および(4)の間隔はT
1+τ
neg-τ
1であり、これがT/2になるようにτ
negを調整する。調整のアルゴリズムは、以下の通りである。
【0084】
前述のように、位相比較器61によりV
injとV
oscの位相差が検出され、DCO用DLF62によりDCO70の遅延量が調整され、V
oscの位相はRefの立下りエッジに一致する。言い換えれば、V
oscの周期のN倍がTに等しくなる。この時、V
oscの周期のN/2倍はT/2に一致する。そこで、V
injの立下りエッジ(4)を、立下りエッジ(3)に対応するV
oscの立下りエッジからV
oscの周期のN/2倍離れた立下りエッジに一致させるように、τ
negを調整する。この調整は、ダブラ用デジタルループフィルタ(DLF for Doubler)63が行う。位相比較器61は、V
injの立下りエッジ(4)でも位相差を検出しており、ダブラ用デジタルループフィルタ(DLF for Doubler)63は、位相比較器61の検出したV
injの立下りエッジ(4)でのV
oscとの位相差に基づいてディレイライン84および85の遅延量を調整する。
【0085】
このようにして、参照周波数信号Refの2倍の周波数2*f
refで、立下りエッジの間隔が、正確にRefの周期Tの半分であるダブラ出力(Doubler out)が生成される。
【0086】
以上説明したように、実施形態の注入同期型PLL回路では、
(1)LDOの間欠制御により電源電圧のノイズの影響を低減され、
(2)発振信号V
oscの位相が参照周波数信号Refの位相に一致するようにV
oscの周波数を調整するのでスプリアスの発生が低減され、
(3)Refの2倍の周波数でエッジ注入が行われるので、発振信号の品質を向上する。
【0087】
以下、実施形態の注入同期型PLL回路の効果を説明する。
図17は、LDOの間欠制御による電源供給を行う場合とLDOの間欠制御無しに電源供給を行う場合の位相雑音性能を示す図である。
図17において、破線が間欠制御無しの場合の位相雑音性能を、実線が間欠制御有りの場合の位相雑音性能を示す。
図17に示すように、間欠制御により、オフセット周波数100kHz帯の領域でフリッカ雑音が抑制され、位相雑音はおよそ4.8dB改善し、10MHz帯の領域において熱雑音が抑制され、位相雑音はおよそ2.5dB改善した。
【0088】
図18は、エッジ注入を行わない状態でLDOの間欠制御を行う場合と行わない場合、さらにLDOの間欠制御を行い且つエッジ注入を行う場合で、発振信号の周波数調整を行わず且つダブラを用いない場合と発振信号の周波数調整を行い且つダブラを用いる場合(実施形態)の位相雑音性能を示す図である。
図18において、DCOの破線がエッジ注入無しでLDOの間欠制御無しの場合を、DCOの実線がエッジ注入無しでLDOの間欠制御有りの場合を、PLLの破線がLDOの間欠制御およびエッジ注入有りで周波数調整無し且つダブラ無しの場合を、PLLの実線がLDOの間欠制御およびエッジ注入有りで周波数調整有り且つダブラ有りの場合を示す。
【0089】
エッジ注入を行わない状態でのLDOの間欠制御を行う場合と行わない場合の差は、
図17に示した通りである。エッジ注入を行うことにより、10MHz以下の周波数帯で、1次のHPF(ハイパスフィルタ)効果により、フリーランの雑音成分が抑制される。一方100kHz帯では発振器における熱雑音としてフリッカ雑音が支配的になり、1MHz帯に比べて位相雑音が大きい。この位相雑音は、周波数調整により改善される。
【0090】
図19は、ダブラを使用する効果を示すために、LDOの間欠制御を行い、エッジ注入を行い、且つ発振信号の周波数調整を行う場合で、ダブラを用いない場合とダブラを用いる場合の位相雑音性能を示す図である。
図19で、破線がダブラ無しの場合を、実線がダブラ有りの場合を示す。ダブラにより注入周波数を2倍にすることにより、10MHz帯の位相雑音が2.6dB改善された。
【0091】
以上説明した実施形態の注入同期型PLL回路は、ディスクリートな回路を使用せず、スタンダードセルを利用して実現可能であり、SoC等に搭載するのに適している。
【0092】
以上本発明の実施形態について説明したが、各種の変形例があり得ることは言うまでもない。例えば、LDOの間欠制御による電源供給の技術は、PLLに限定されず、各ステージが前段から入力を処理して後段に出力する形で複数のステージが直列に接続され、ステージの動作タイミングが異なり、同時には動作しない回路構成であれば、適用可能である。このような回路構成を有する別の回路として、例えば、PLL回路以外のリング型発振器を利用する回路、パイプライン型のADC(Analog-to-Digital Converter)等が考えられる。さらに、実施形態では、デジタル制御遅延回路を利用したPLL回路を説明したが、LDOの間欠制御による電源供給の技術は、電圧制御発振器や電流制御発振器を用いたアナログPLLや、DLL回路等にも適用可能である。
さらに、ステージの数およびLDOの数は2つに限定されず、3つ以上でもよい。
また、エッジ注入型で発振器の周波数を調整する技術は、アナログPLLや、DLL回路等にも適用可能である。