(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前提条件提示部は、前記対象エリア内で利用されるエネルギーの種類に関する条件、前記対象エリア内における空調方式に関する条件、及び前記対象エリアにおける断熱性能に関する条件のうち、少なくとも一つの条件についての前記候補を提示することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機器提案装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る機器提案装置及び機器提案方法について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0018】
また、以下では、建設予定の住宅(厳密には、販売物件の住宅)を対象エリアの一例に挙げて説明することとする。ただし、対象エリアについては、住宅に限定されるものではなく、住宅以外の建物、例えば商業ビル、工場内の建屋、店舗等であってもよい。あるいは、イベント会場、公園及び商店街等、建物以外のエリア(地区、地域)を対象エリアとして設定してもよい。
【0019】
<<本実施形態に係る機器提案装置の概要>>
先ず、本実施形態に係る機器提案装置(以下、本装置1)の概要について説明する。本装置1は、コンピュータによって構成され、本実施形態では、住宅販売会社の従業員(以下、単に従業員)が利用するパソコンによって構成されている。
【0020】
具体的に説明すると、従業員は、住宅の販促ツールとして本装置1を用いることにより、販売物件の住宅で利用されるエネルギー関連機器の組み合わせを決定し、当該組み合わせを住宅購入者に対して提案する。なお、従業員は、本実施形態において「ユーザ」に相当する。
【0021】
ここで、「エネルギー関連機器」とは、住宅におけるエネルギー需給に関与する機器であり、家電機器等のエネルギー消費機器、空調機器、給湯機器、換気機器、照明機器、水道利用機器、発電設備等のエネルギー供給機器、コジェネレーションシステムの構成機器、断熱材や保温材若しくは遮光材が組み込まれた建材、HEMS(Home Energy Management System)構築用のホームゲートウェイ等が該当する。
【0022】
また、エネルギー関連機器は、上述したように複数種類存在する。このため、従業員は、本装置1を用いて、複数種類のエネルギー関連機器の中から住宅内での利用機器の組み合わせを提案することになる。
【0023】
本装置1の用途について詳細に説明すると、本装置1は、住宅での利用機器の組み合わせとして、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)を実現する機器の組み合わせを提案するために用いられる。ここで、「ZEH」とは、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなる住宅であり、下記4つの条件(Z1)〜(Z4)をすべて満たす住宅である。
(Z1)平成25年省エネルギー基準に規定された強化外皮基準に適合していること。
(Z2)再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量が削減されていること。
(Z3)再生可能エネルギーを導入していること。
(Z4)再生可能エネルギーの導入によって一次エネルギー消費量が実質上0以下になること。
【0024】
ここで、「一次エネルギー消費量」とは、再生可能エネルギー導入による省エネルギー効果を考慮して計算され、省エネルギー法で建築設備として位置付けられた設備(具体的には、空気調和設備、換気設備、照明設備、給湯設備)により消費される一次エネルギーを意味する。また、「基準一次エネルギー消費量」とは、平成25年省エネルギー基準に則った算出方法にて算出された一次エネルギー消費量を意味する。なお、本実施形態において、一次エネルギー消費量は、「対象エリア内でのエネルギー消費量」に相当し、基準一次エネルギー消費量は、「対象エリア内でのエネルギー消費量の基準値」に相当する。
【0025】
本装置1によれば、住宅購入予定者が購入を検討している住宅について、ZEHを実現するためのエネルギー関連機器の組み合わせ(以下、ZEH実現機器群)が適切且つ簡単に特定されるようになる。この結果、従業員は、住宅購入予定者に対して適切にZEH実現機器群を提案することが可能となる。
【0026】
従業員が本装置1を用いてZEH実現機器群を提案する手順について概説すると、従業員は、先ず、本装置1にインストールされているプログラム(以下、機器提案プログラム)を起動する。これにより、本装置1のディスプレイに
図1の入力画面が表示されるようになる。
図1は、機器提案用の入力画面の一例を示す図である。なお、同図に図示された入力画面のデザインやレイアウト等については、あくまでも一例であり、ユーザの嗜好や本装置1の仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0027】
従業員は、
図1に図示の入力画面を通じて、ZEH実現機器群を特定するために必要な事項を入力する。なお、入力事項については後の項で改めて説明する。入力完了後、従業員が入力画面中に設けられた提案実行ボタンBをクリックすると、本装置1が各種データ処理を実行し、最終的に
図2に図示の出力画面が本装置1のディスプレイに表示されるようになる。
図2は、機器提案用の出力画面の一例を示す図である。なお、同図に図示された出力画面のデザインやレイアウト等については、あくまでも一例であり、ユーザの嗜好や本装置1の仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0028】
出力画面には、
図2に示すように、本装置1が特定したZEH実現機器群が表示されている。また、出力画面には、上記ZEH実現機器群を利用したときの住宅での年間エネルギー消費量、及び、上記ZEH実現機器群の導入費用が併せて表示される。ちなみに、住宅での年間エネルギー消費量については、一次エネルギー消費量に換算された値となっている。
【0029】
従業員は、ZEH実現機器群が表示された出力画面を住宅購入予定者に見せる等して、当該ZEH実現機器群を住宅購入予定者に提案する。この際、前述したように、出力画面にはZEH実現機器群を導入した場合の省エネ効果及び導入費用が併せて表示されているので、従業者は、これらの情報を確認しながらZEH実現機器群を提案することが可能となる。
【0030】
<<本実施形態に係る機器提案装置の構成について>>
次に、本装置1の構成について
図3を参照しながら説明する。
図3は、本装置1の構成を示すブロック図である。本装置1は、前述したようにコンピュータによって構成され、より具体的には従業員が利用するパソコンによって構成されている。当該パソコンのハードウェア構成は、一般的なパソコンと同様の構成となっており、
図3に示すように、CPU1a、ROMやRAMからなるメモリ1b、ハードディスクドライブ1c、キーボードやマウス等からなる入力機器1d、ディスプレイ等からなる出力機器1eが備えられている。なお、上記のパソコンに外付けされたプリンタが出力機器1eとして更に備えられていてもよい。
【0031】
また、上記のパソコンは、通信用インターフェース1fを介してデータベースサーバ2と通信可能である。パソコンは、上記のデータベースサーバ2にアクセスして同サーバに蓄積された各種情報を読み出してダウンロードする(取得する)ことが可能である。
【0032】
また、ハードディスクドライブ1cには、上記のパソコンを機器提案装置として機能させるための機器提案プログラムが格納されている。この機器提案プログラムがCPU1aによって読み取られて実行されることにより、本装置1を構成するパソコンが機器提案に関する種々の機能を発揮するようになる。
【0033】
本装置1の機能について説明すると、本装置1は、
図4に図示の機能部を備えており、具体的には、エリア特性情報取得部11、予算情報取得部12、前提条件提示部13、選択結果受付部14、演算実行部15、条件記憶部16、条件指定部17、機器特定部18及び出力部19を備えている。
図4は、本装置1の機能についての説明図である。
【0034】
上記の各機能部は、本装置1を構成するパソコンのハードウェア機器(具体的には、CPU1a、メモリ1b、ハードディスクドライブ1c、入力機器1d及び出力機器1e)がソフトウェアとしての機器提案プログラムと協働することで実現される。以下、それぞれの機能部について説明する。
【0035】
エリア特性情報取得部11は、住宅でのエネルギー需給に関係する当該住宅の特性についての情報(すなわち、エリア特性情報)を取得するものである。具体的に説明すると、エリア特性情報取得部11は、
図1に図示の入力画面(厳密には、画面中に設けられた「購入予定住宅」の入力欄)を通じて住宅識別情報の入力を受け付ける。住宅識別情報とは、住宅購入予定者が購入を検討している住宅を識別するための情報であり、当該住宅が建設される地域の地番や当該住宅に割り当てられたID等が該当する。そして、エリア特性情報取得部11は、住宅識別情報の入力を受け付けると、データベースサーバ2にアクセスする。
【0036】
データベースサーバ2には、
図5に示すように、エリア特性情報が住宅別に蓄積されている。
図5は、データベースサーバ2に記憶されている機器提案用の各種情報に関する説明図である。具体的に説明すると、データベースサーバ2には、エリア特性情報として、住宅が建設される地域の断熱地域区分及び日射地域、当該住宅の延床面積及び各部屋面積、住宅の屋根形状、屋根の勾配、屋根の配向(方位)等が蓄積されている。また、エリア特性情報は、
図5に示すように住宅識別情報と関連付けられている。
【0037】
エリア特性情報取得部11は、データベースサーバ2に蓄積されたエリア特性情報のうち、
図1の入力画面にて入力された住宅識別情報と対応するエリア特性情報を読み出し、読み出した当該エリア特性情報をデータベースサーバ2からダウンロード(取得)する。
【0038】
なお、本実施形態では、エリア特性情報を取得するにあたり、データベースサーバ2に蓄積されたエリア特性情報の中から住宅識別情報をキーとして検索し、ヒットしたエリア特性情報をデータベースサーバ2からダウンロードすることとした。ただし、これに限定されるものではなく、入力画面を通じてエリア特性情報を直接入力し、その入力を受け付けることで当該エリア特性情報を取得する形でもよい。
【0039】
また、エリア特性情報は、上記事項(具体的には
図5に示された事項)に限定されるものではなく、上記事項以外の事項、例えば、住宅の構造(木造構造であるか、あるいは鉄骨構造であるか等)に関する情報が含まれていてもよい。
【0040】
予算情報取得部12は、住宅内にエネルギー関連機器を導入するための予算の金額についての情報(以下、予算情報)を取得するものである。具体的に説明すると、データベースサーバ2は、
図1に図示の入力画面(厳密には、画面中に設けられた「予算金額」の入力欄)を通じて予算情報の入力を受け付けることで予算情報を取得する。なお、ユーザは、予算の金額を任意に設定することが可能であるが、例えば、ZEH達成住宅を購入する者に対して交付される補助金の金額を予算の金額として設定するとよい。
【0041】
前提条件提示部13は、住宅内でエネルギー関連機器を利用する場合の前提条件についての候補をユーザに対して提示するものである。具体的に説明すると、前提条件提示部13は、
図1に図示の入力画面(厳密には、入力画面中、記号P1、P2及びP3が付された領域)を通じて上記前提条件の候補を提示する。
【0042】
ここで、前提条件について説明すると、前提条件は、住宅でのエネルギー管理事項の内容を示すものであり、住宅でのエネルギー消費量(一次エネルギー消費量)を試算する上で必要な情報となる。ここで、エネルギー管理事項とは、住宅におけるエネルギー需給に関係する事項であり、利用エネルギーの種類、エネルギー消費/供給の方式、エネルギー関連機器の設計仕様(性能、構造及び運転管理値等)、コジェネレーションシステムの導入の有無、HEMSによる監視や宅内機器の遠隔制御の有無等が該当する。
【0043】
本実施形態では、住宅内で利用されるエネルギーの種類に関する条件、住宅内における空調方式に関する条件、及び住宅における断熱性能に関する条件が前提条件として設定されている。そして、前提条件提示部13は、それぞれの前提条件について選択可能な候補を入力画面に表示することで、当該候補をユーザに対して提示する。
【0044】
具体的に説明すると、利用エネルギーの種類に関する条件については、入力画面中の領域P1にて3つの候補が提示されており、本実施形態では「オール電化」、「ガス併用」及び「どちらでもよい」という候補がラジオボタン付きで提示される。また、空調方式については、入力画面中の領域P2にて3つの候補が提示されており、本実施形態では「全館空調」、「間欠空調」及び「どちらでもよい」という候補がラジオボタン付きで提示される。また、断熱性能については、外皮熱損失量(q値)、暖房期日射熱取得量(mh値)及び冷房期日射熱取得量(mc値)という項目に細分化され、それぞれの項目についてプルダウン形式で候補が提示される。
【0045】
なお、前提条件については、特に限定されるものではなく、上述した条件以外の条件が更に追加されてもよい。また、各前提条件について設定される候補の内容及び数についても特に限定されるものではなく、それぞれ任意に設定することが可能である。
【0046】
選択結果受付部14は、前提条件提示部13が提示した各前提条件の候補に対するユーザの選択結果を受け付けるものである。具体的に説明すると、選択結果受付部14は、
図1に図示の入力画面を通じて従業員が選択動作を行うことにより、各前提条件の候補に対するユーザの選択結果を受け付ける。例えば、従業員は、利用エネルギーの種類に関する条件について提示された候補(
図1中、領域P1に表示された候補)の中からいずれか一つの候補を選択し、その候補のラジオボタンをチェックする。選択結果受付部14は、かかる入力操作を通じて、利用エネルギーの種類に関する条件についての候補に対するユーザの選択結果を取得する。また、ユーザは、断熱性能に関する条件について提示された候補(
図1中、領域P3においてプルダウン形式で表示された候補)の中からいずれか一つの候補をプルダウン選択する。選択結果受付部14は、かかる入力操作を通じて、断熱性能に関する条件についての候補に対するユーザの選択結果を取得する。
【0047】
ちなみに、断熱性能(具体的にはq値、mh値及びmc値)に関する条件ついては、上記のようにプルダウン形式で表示された候補の中から所望の候補をプルダウン選択させる構成の他、入力欄を設けて当該欄に上記の値を直接入力させる構成であってもよい。
【0048】
演算実行部15は、住宅でのエネルギー需給に関する演算を実行するものである。本実施形態において、演算実行部15は、下記3種類の演算を実行する。
(L1)基準一次エネルギー消費量の算出
(L2)最安機器導入時のエネルギー消費量の算出
(L3)必要発電容量の算出
以下、それぞれの演算内容について説明する。
【0049】
(L1)基準一次エネルギー消費量を算出する演算について
基準一次エネルギー消費量を算出する演算では、住宅購入予定者が購入を検討している住宅でのエネルギー消費量の基準値を算出(試算)する。詳しく説明すると、エリア特性情報取得部11が取得したエリア特性情報に基づいて、住宅での基準一次エネルギー消費量を算出する。より詳細に説明すると、本演算では、住宅の仕様に関する情報(エリア特性情報)に基づいて、当該仕様の下で一般的に消費されるエネルギー量を算出し、具体的には、
図6に示すように空調、換気、給湯及び照明の各々についてエネルギー消費量を一次エネルギー消費量ベースで算出する。
図6は、演算実行部15による演算の結果を示す図である。
【0050】
なお、本演算では、選択結果受付部14が受け付けた各前提条件についてのユーザの選択結果が反映される。すなわち、演算実行部15は、住宅での基準一次エネルギー消費量を算出する際、各前提条件の候補のうち、ユーザによって選択された候補の内容に従って算出する。例えば、利用エネルギーの種類に関する条件について提示された候補のうち、「オール電化」という候補を従業員が選択した場合、演算実行部15は、住宅内でオール電化を採用した場合の基準一次エネルギー消費量を算出する。
【0051】
(L2)最安機器導入時のエネルギー消費量を算出する演算について
最安機器導入時のエネルギー消費量を算出する演算では、住宅での利用機器として最も安価な機器を選定し、選定された最安機器を住宅で利用した場合のエネルギー消費量を算出する。詳しく説明すると、本演算において演算実行部15は、先ず、エリア特性情報取得部11が取得したエリア特性情報、及び、選択結果受付部14が受け付けた各前提条件についてのユーザの選択結果に基づいて最安機器を選定する。より具体的に説明すると、演算実行部15は、データベースサーバ2にアクセスし、同サーバに蓄積されている機器情報を読み出す。機器情報とは、エネルギー関連機器に関する情報である。
【0052】
データベースサーバ2には、
図5に示すように、多数のエネルギー関連機器の機器情報が登録されている。ちなみに、
図5に示すケースでは、機器情報として、機器名称、機器種別、定格出力、エネルギー消費機器に該当するときの年間エネルギー消費量、エネルギー供給機器に該当するときのエネルギー供給能力及び購入金額が記憶されている。ただし、機器情報については、上記の内容に限られず、上記内容以外の情報(例えば、機器メーカー等)が含まれていてもよい。
【0053】
演算実行部15は、エリア特定情報が示す内容と、各前提条件について従業員が選択した候補の内容とに基づいて、住宅で利用すべきエネルギー関連機器(具体的には、空調機器、給湯機器、換気機器及び照明機器)の機器仕様を決定する。そして、演算実行部15は、データベースサーバ2に蓄積されている機器情報のうち、上記の機器仕様を満たす機器の情報を読み出す。この際、演算実行部15は、機器仕様を満たす機器のうち、購入金額が最も安い機器を機器種別毎に特定し、特定した最安機器の機器情報を読み出す。
【0054】
その後、演算実行部15は、読み出した最安機器の機器情報に基づいて、当該最安機器を住宅に導入した場合の年間エネルギー消費量を算出し、具体的には、
図6に示すように空調、換気、給湯及び照明の各々についてエネルギー消費量を一次エネルギー消費量ベースで算出する。この際、演算実行部15は、各前提条件について従業員が選択した候補の内容に従ってエネルギー消費量を算出する。例えば、利用エネルギーの種類に関する条件について提示された候補のうち、「オール電化」という候補を従業員が選択した場合、演算実行部15は、住宅内でオール電化を採用した場合のエネルギー消費量を算出する。
【0055】
(L3)必要発電容量を算出する演算について
必要発電容量を算出する演算では、住宅内でのエネルギー消費量を賄うのに必要な発電設備の容量を算出する。詳しく説明すると、演算実行部15は、上記の演算L2にて算出した最安機器導入時のエネルギー消費量をすべて太陽光パネルの発電にて賄う場合を想定し、必要な太陽光パネルの発電容量を算出する。この際、演算実行部15は、エリア特性情報取得部11が取得したエリア特性情報、特に、屋根の形状、勾配及び方位に基づいて必要な発電容量を算出する。なお、本実施形態では、
図6に示すように方位別に必要な発電容量を算出することになっている。より厳密に説明すると、発電量が大きくなる方位から優先的に発電容量を確保していき、当該方位で太陽光パネルの積載上限に達した場合には次の方位にて発電容量を確保するという手順に従って方位別の必要発電容量を算出する。
【0056】
条件記憶部16は、ZEH実現機器群に関して設定された提案条件を記憶するものである。提案条件とは、提案対象となるZEH実現機器群(エネルギー関連機器の組み合わせ)が満たすべき条件である。なお、本実施形態において、条件記憶部16は、複数の提案条件、具体的には第一の提案条件、第二の提案条件及び第三の提案条件を記憶している。
【0057】
それぞれの提案条件について概説すると、第一の提案条件は、ZEH達成用の標準的な条件であり、具体的には、ZEH実現機器群に係る各機器を住宅で利用した場合の一次エネルギー消費量(以下、設定一次エネルギー消費量)をZEH達成量以下に抑えるという条件である。ここで、ZEH達成量とは、演算実行部15によって算出された基準一次エネルギー消費量と、予め設定された削減率とに基づいて求められる値であり、具体的には、削減率に相当する量だけ基準一次エネルギー消費量から減じて得られる量である。なお、本実施形態では削減率が20%に設定されているため、ZEH達成量は、基準一次エネルギー消費量の80%に相当する量となる。
【0058】
第二の提案条件は、コストパフォーマンスを優先した条件であり、具体的には、太陽光パネルを採用するよりもコストパフォーマンス面で有利な機器が有る場合に、当該機器を太陽光パネルの代わりに導入するという条件である。つまり、第二の提案条件の下では、太陽光パネルの設置費用よりも購入価格が安く、且つ、太陽光パネルの発電容量よりも大きな節電量(あるいは発電量)が見込める機器が存在する場合に、当該機器をZEH実現機器群に加えることになる。
【0059】
第三の提案条件は、省エネルギー効果を優先した条件であり、具体的には、予算情報取得部12が取得した予算情報が示す金額(すなわち、予算金額)の範囲内で省エネルギー効果を最大化させるという条件である。換言すると、第三の提案条件は、ZEH実現機器群中の機器の導入費用の総額を予算金額以下にしつつ、得られる省エネルギー効果を最大化させるという条件である。したがって、第三の提案条件の下では、より省エネルギー効果が高い機器が存在する場合、機器導入費用の合計額が予算金額の範囲内である限り、当該機器をZEH実現機器群に加えることになる。
【0060】
条件指定部17は、条件記憶部16に記憶された三つの提案条件の中から所望の条件をユーザに指定させ、その指定結果を受け付けるものである。具体的に説明すると、条件指定部17は、
図1に図示の入力画面(厳密には、図中、記号P4が付された領域)に三つの提案条件をラジオボタン付きで表示する。ユーザは、上記の入力画面に表示された三つの提案条件のうち、所望の提案条件を指定し、その条件に付されたラジオボタンをチェックする。条件指定部17は、かかる入力操作を通じて、提案条件に対するユーザの指定結果を取得する。なお、一度に指定し得る提案条件の数は、一つであってもよく、あるいは複数(二つ又は三つ)であってもよい。
【0061】
機器特定部18は、ユーザによって指定された提案条件を満たすZEH実現機器群を特定するものである。また、機器特定部18は、ZEH実現機器群を特定する際、演算実行部15による演算の結果に基づいて特定する。具体的に説明すると、機器特定部18は、演算実行部15が算出した各値、厳密には、住宅での基準一次エネルギー消費量、最安機器導入時のエネルギー消費量、及び必要な太陽光パネルの発電容量に基づいてZEH実現機器群を特定する。なお、ZEH実現機器群を特定する手順については、後の項で説明する。
【0062】
出力部19は、機器特定部18によって特定されたZEH実現機器群を出力するための処理を実行するものである。具体的に説明すると、出力部19は、ZEH実現機器群を示す出力画面のデータを生成して当該データを展開する。これにより、本装置1のディスプレイには、ZEH実現機器群が表示された
図2に図示の出力画面が描画されるようになる。
【0063】
また、本実施形態では、同図に示すように、ZEH実現機器群の他、ZEH実現機器群に係る各機器を住宅で利用した場合の一次エネルギー消費量(すなわち、設定一次エネルギー消費量)と、ZEH実現機器群の導入費用とが併せて出力画面に表示される。換言すると、出力部19は、出力画面のデータを生成するにあたり、設定一次エネルギー消費量及び機器導入費用が出力画面中に表示されるように上記データを生成する。
【0064】
なお、本実施形態では、本装置1のディスプレイに描画された出力画面を通じてZEH実現機器群の特定結果を出力したが、これに限定されるものではない。例えば、ZEH実現機器群の特定結果を示す画像(文字画像)をプリンタによって印刷することで当該特定結果を出力してもよい。
【0065】
<<本実施形態に係る機器提案方法について>>
次に、本装置1を用いた機器提案方法、分かり易くは、ZEH実現機器群の提案方法について説明する。かかる方法は、本発明の機器提案方法に相当し、以下に説明する機器提案フローによって実現されている。すなわち、下記の機器提案フローでは、本発明の機器提案方法が採用されており、機器提案フロー中の各ステップは、本発明の機器提案方法の構成要素に相当する。
【0066】
以下、
図7〜
図10を参照しながら機器提案フローの流れについて詳しく説明する。
図7は、機器提案フローの流れを示す図である。
図8は、第一の提案条件が指定された場合の機器特定工程(以下、第一の機器特定工程)の手順を示す図である。
図9は、第二の提案条件が指定された場合の機器特定工程(以下、第二の機器特定工程)の手順を示す図である。
図10は、第三の提案条件が指定された場合の機器特定工程(以下、第三の機器特定工程)の手順を示す図である。
【0067】
機器提案フローは、本装置1を構成する従業員のパソコン(コンピュータ)によって実施され、具体的には、従業員が機器提案プログラムを起動させるために行う操作(例えば、機器提案プログラムのアイコンをクリックする操作)を契機にして開始される。機器提案フローでは、先ず、
図1に図示の入力画面がパソコンのディスプレイに描画される(S001)。この入力画面には、住宅内でエネルギー関連機器を利用する場合の前提条件について複数設定された候補が選択可能な状態で表示されている。
【0068】
つまり、ステップS001では、入力画面がディスプレイに描画されることで、前提条件の候補が従業員に提示される形になる。かかる意味で、本ステップS001は、前提条件提示工程に該当すると言える。なお、入力画面には、ZEH実現機器群に関して複数設定された提案条件が選択可能な状態で表示されている。
【0069】
次に、従業員は、上記の入力画面を通じて必要事項を入力する。従業員のパソコンは、当該入力を受け付ける(S002)。これにより、上記のパソコンは、住宅識別情報、予算情報、前提条件についての候補に対する従業員の選択結果、及び提案条件に対する従業員の指定結果を取得するようになる。以上のように本ステップS002では、入力画面を通じた入力操作が行われることにより、上記のパソコンが、前提条件についての候補に対する従業員の選択結果を受け付けるようになる。かかる意味で、本ステップS002は、選択結果受付工程に該当すると言える。
【0070】
入力完了後、従業員が所定の操作(例えば、
図1に図示した入力画面中の提案実行ボタンBをクリックする操作)を行うと、これをトリガーとして従業員のパソコンがデータベースサーバ2にアクセスする。そして、パソコンは、データベースサーバ2に蓄積されているエリア特定情報のうち、前ステップS002にて取得した住宅識別情報に関連付けられた情報を読み出してダウンロード(取得)する(S003)。その後、上記のパソコンは、ステップS002及びS003で取得した情報に基づいて、上述した演算L1、L2及びL3を順次実行する(S004〜S006)。なお、これらのステップS004〜S006は、演算実行工程に該当する。
【0071】
具体的に説明すると、上記のパソコンは、住宅購入予定者が購入を検討している住宅での基準一次エネルギー消費量を算出(試算)する(S004)。この際、パソコンは、ステップS003で取得したエリア特定情報、及び、ステップS002で取得した前提条件の候補に対する従業員の選択結果に基づいて算出する。
【0072】
また、上記のパソコンは、最安機器導入時の一次エネルギー消費量を算出する(S005)。具体的に説明すると、ステップS003で取得したエリア特定情報、及び、ステップS002で取得した前提条件の候補に対する従業員の選択結果に基づいて、住宅で利用すべきエネルギー関連機器の機器仕様を決定する。その上で、パソコンは、データベースサーバ2にアクセスし、同サーバに蓄積されている機器情報のうち、上記の機器仕様を満たす最安機器の情報を読み出す。その後、パソコンは、読み出した最安機器の機器情報に基づいて、最安機器導入時の一次エネルギー消費量を算出する。この際も、ステップS002で取得した前提条件の候補に対する従業員の選択結果、すなわち、従業員が選択した前提条件の候補の内容に従って一次エネルギー消費量を算出する。
【0073】
さらに、上記のパソコンは、前ステップS005で算出した最安機器導入時のエネルギー消費量をすべて賄うのに必要な太陽光パネルの容量を算出する(S006)。この際、パソコンは、ステップS003で取得したエリア特性情報に基づき、必要な発電容量を方位別に算出する。
【0074】
以上までの演算を終えた後、従業員のパソコンは、各ステップ(具体的には、S004〜S006)での演算結果に基づいてZEH実現機器群を特定する。具体的に説明すると、上記のパソコンは、ZEH実現機器群を特定するにあたり、従業員が指定した提案条件を特定し、その提案条件を満たすZEH実現機器群を特定する。より詳しく説明すると、従業員が第一の提案条件を指定した場合(S007でYes)、従業員のパソコンは、機器特定工程として第一の機器特定工程を実施し、第一の提案条件を満たすZEH実現機器群を特定する(S008)。
【0075】
第一の機器特定工程の流れについて
図8を参照しながら説明すると、先ず、ステップ005で選ばれた最安機器の組み合わせを仮にZEH実現機器群として設定する(S021)。次に、同じくステップS005で算出された最安機器導入時の一次エネルギー消費量を特定する(S022)。そして、特定した一次エネルギー消費量がZEH達成量(つまり、基準一次エネルギー消費量の80%に相当する量)を下回るか否かを判定する(S023)。そして、一次エネルギー消費量がZEH達成量を下回ると判定した場合には、最安機器の組み合わせをZEH実現機器群として特定し、これを以てZEH実現機器群を確定する(S025)。
【0076】
一方で、ステップS022で特定した一次エネルギー消費量がZEH達成量を下回っていないと判定した場合、データベースサーバ2に機器情報が登録されているエネルギー関連機器のうち、最安機器よりも費用対効果が大きい機器を選び、当該機器と最安機器とを入れ換える(S024)。この際、費用対効果が最も大きい機器を優先的に選ぶのが好適である。そして、機器入れ換え後の一次エネルギー消費量がZEH達成量を下回るまでステップS024を繰り返す。最終的に一次エネルギー消費量がZEH達成量を下回った時点での機器の組み合わせをZEH実現機器群として特定し、これを以てZEH実現機器群を確定する(S025)。
【0077】
機器提案フローの説明に戻ると、従業員が第二の提案条件を指定した場合(S009でYes)、従業員のパソコンは、機器特定工程として第二の機器特定工程を実施し、第二の提案条件を満たすZEH実現機器群を特定する(S010)。
【0078】
第二の機器特定工程の流れについて
図9を参照しながら説明すると、先ず、ステップ005で選ばれた最安機器の組み合わせを仮にZEH実現機器群として設定する(S031)。次に、データベースサーバ2に機器情報が登録されているエネルギー関連機器の中に、太陽光パネルの設置費用よりも購入金額が安く、且つ、太陽光パネルの発電容量よりも大きな節電量(あるいは発電量)が見込める機器が存在するか否かを判定する(S032)。そして、上記の要件に該当する機器が存在しないと判定した場合には、最安機器の組み合わせをZEH実現機器群として特定し、これを以てZEH実現機器群を確定する(S034)。
【0079】
一方で、該当機器が存在すると判定した場合、当該機器と太陽光パネルとを入れ換える(S033)。厳密には、該当機器の節電量(あるいは発電量)に相当する容量の太陽光パネルと、上記の該当機器とを入れ換える。なお、該当機器が複数存在する場合には、その台数の分だけステップS0033を繰り返す。そして、該当機器がすべて加えられた段階の機器の組み合わせをZEH実現機器群として特定し、これを以てZEH実現機器群を確定する(S034)。
【0080】
機器提案フローに戻って説明すると、従業員が第三の提案条件を指定した場合(S011でYes)、従業員のパソコンは、機器特定工程として第三の機器特定工程を実施し、第三の提案条件を満たすZEH実現機器群を特定する(S012)。
【0081】
第三の機器特定工程の流れについて
図10を参照しながら説明すると、先ず、ステップ005で選ばれた最安機器の組み合わせを仮にZEH実現機器群として設定する(S041)。次に、データベースサーバ2に機器情報が登録されているエネルギー関連機器の中に、最安機器よりも省エネルギー効果が大きい機器が存在するか否かを判定する(S042)。そして、上記の要件に該当する機器が存在しないと判定した場合には、最安機器の組み合わせをZEH実現機器群として特定し、これを以てZEH実現機器群を確定する(S045)。
【0082】
一方で、該当機器が存在すると判定した場合、当該該当機器を導入したときの機器導入費用の総額が、ステップS002で取得した予算情報が示す予算金額の範囲内にあるか否かを更に判定する(S043)。このとき、機器導入費用の総額が予算金額の範囲を超えると判定した場合には、最安機器の組み合わせをZEH実現機器群として特定し、これを以てZEH実現機器群を確定する(S045)。これに対し、機器導入費用の総額が予算金額の範囲内であると判定した場合には、該当機器(すなわち、省エネルギー効果がより大きい機器)と最安機器の中のいずれかの機器(すなわち、省エネルギー効果がより小さい機器)とを入れ換える(S044)。この際、省エネルギー効果が最も大きい機器を優先的に選び、また、最安機器の中で省エネルギー効果が低い機器から順に入れ換えるのが好適である。
【0083】
なお、現時点でZEH実現機器群の候補となっている機器より省エネルギー効果が大きい機器が存在し、かつ、当該機器を導入した場合の費用総額が予算金額の範囲内である限り、上記のステップS044が繰り返される。そして、より大きい省エネルギー効果が得られる機器がなくなった時点での機器の組み合わせ、あるいは機器導入費用の総額が予算金額を超える直前の時点での機器の組み合わせをZEH実現機器群として特定し、これを以てZEH実現機器群を確定する(S045)。
【0084】
以上までに説明してきた機器特定工程おいて、ユーザが指定した提案条件を満たすZEH実現機器群が特定(確定)されると、従業員のパソコンは、
図7に示すように、その特定結果を示す出力画面データを生成する。そして、上記のパソコンは、生成した出力画面データを展開することで上記の特定結果を出力する(S013)。これにより、パソコンのディスプレイには
図2に図示の出力画面が描画され、当該出力画面を通じてZEH実現機器群の特定結果、すなわち、ZEH実現機器群に係る各エネルギー関連機器のリストが表示(出力)されるようになる。つまり、本ステップS013は、出力工程に相当し、本ステップS013を経て、従業員は、出力されたZEH実現機器群を住宅購入予定者に対して提案する。
【0085】
そして、出力画面にてZEH実現機器群が表示(提示)された時点で機器提案フローが完了する。
【0086】
<<本実施形態に係る機器提案装置の有効性について>>
本装置1によれば、購入予定の住宅において利用するエネルギー関連機器の組み合わせとして、当該住宅がZEHを実現するような組み合わせ(すなわち、ZEH実現機器群)を適切且つ簡単に特定することが可能となる。このような機能により、住宅販売会社の従業員は、本装置1を販促ツールとして活用した場合、住宅購入予定者に対してZEH実現機器群を提案し、住宅購入予定者との間の商談等を良好に進めることが可能となる。
【0087】
また、本装置1では、ZEH実現機器群を提案するにあたり、住宅内でエネルギー関連機器を利用する場合の前提条件についての候補をユーザ(従業員)に提示する。そして、ユーザが選択した候補の内容に従って一次エネルギー消費量等の演算を実行し、その演算結果に基づいてZEH実現機器群を特定する。このようにして特定されたZEH実現機器群は、ユーザの意思を反映したものとなる。厳密には、従業員が住宅でのエネルギー管理事項に対する要望や嗜好を住宅購入予定者から聴き出し、その内容を提案事項としてのZEH実現機器群に反映させることが可能となる。以上のように本装置1によれば、ZEH実現機器群を提案する際、ユーザの意思を反映したものを提案することが可能となる。
【0088】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明の機器提案装置及び機器提案方法について具体例を挙げて説明したが、上記の実施形態は、あくまでも一例であり、他の実施形態も考えられる。例えば、上記の実施形態では、本装置1の機能が一台のコンピュータによって実現されていることとした。具体的に説明すると、上記の実施形態では、エリア特性情報取得部11、予算情報取得部12、前提条件提示部13、選択結果受付部14、演算実行部15、条件記憶部16、条件指定部17、機器特定部18及び出力部19のすべてが一台のパソコン(詳しくは、従業員のパソコン)によって実現されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、上述した機能の一部を別のコンピュータ(従業員のパソコンと通信可能な状態で接続された他のパソコン)によって実現させてもよい。
【0089】
また、上記の実施形態では、ZEH実現機器群に関する提案条件として、ZEH達成用の標準的な条件(第一の提案条件)、コストパフォーマンスを優先した条件(第二の提案条件)、及び省エネルギー効果を優先した条件(第三の提案条件)が設定されていることとした。ただし、提案条件については、上述の内容に限定されず、他の提案条件(例えば、ランニングコストを最小化するという条件)が含まれていてもよい。
【0090】
また、上記の実施形態では、住宅販売会社の従業員が販促ツールとして本装置1を用いるケースを例に挙げて説明した。すなわち、上記の実施形態では、従業員が本装置1のユーザであることとしたが、これに限定されるものではない。つまり、住宅購入予定者がユーザとして本装置1を使用してもよい。かかる場合には、住宅購入予定者が本装置1を利用して、購入検討物件である住宅についてZEH実現機器群を自ら提案することになる。
【0091】
また、上記の実施形態では、住宅購入予定者が購入を検討している住宅について、ZEHを実現するためのエネルギー関連機器の組み合わせ(ZEH実現機器群)を提案する目的で本装置1を用いることとした。ただし、これに限定されるものではなく、住宅における光熱費を一定額以下に抑えるためのエネルギー関連機器の組み合わせを提案する目的で本装置1を用いてもよい。