(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術をそのまま無線中継機に適用することはできない。つまり、MOVは静電容量が大きく、正常時(落雷により雷サージ電流が発生していない状態のとき)でも高周波信号を減衰させてしまうため、高周波信号である無線信号を中継機によって適切に中継することができない。
【0006】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、列車無線システムで用いられる無線中継機の構成要素の全てを雷被害から保護する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示による避雷器は、過大電流から保護対象を保護するための避雷器であって、保護対象に入力される信号を伝搬させるための内部導体および外部導体と、第1のスイッチング素子と、第2のスイッチング素子と、接地端子と、を備えている。ここで、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とは、内部導体と外部導体との間で直列に接続されている。また、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子のそれぞれの動作電圧は、内部導体および外部導体を伝搬する信号に含まれる電源の電圧値よりも大きく設定されている。また、第1のスイッチング素子の静電容量は、第2のスイッチング素子の静電容量よりも小さい。さらに、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との合成静電容量は、正常時において入力される信号が内部導体および外部導体を減衰上の支障がなく伝搬する静電容量に設定されている。
【0008】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
【0009】
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、列車無線システムで用いられる無線中継機の構成要素の全てを雷被害から保護することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、列車無線システムにおける無線中継機を雷サージ電流等の過大電流から保護するための「列車無線システム用同軸避雷器」及び「この避雷器を備えた列車無線システム」に関するものである。当該避雷器では、内部導体と外部導体とが同軸構成となっており、内部導体と外部導体との間において2つのスイッチング素子(例えば、MOVとGDT)が直列に接続されている。また、外部導体が接地されている。当該避雷器は、列車無線システムにおける各無線中継機の前段(入力側)と後段(出力側)のそれぞれに挿入される。そして、過大電流が避雷器に流れ込んだ場合、2つのスイッチング素子が動作し、低抵抗状態になるため、過大電流は内部導体から外部導体を伝わり、接地に放流される。このようにすることにより、保護対象である無線中継機を雷被害から保護することが可能となる。なお、以下説明する本実施形態では、避雷器を無線中継機の前段と後段にそれぞれ挿入する形態とした。
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0014】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0015】
<列車無線システムの概略構成>
図1は、列車無線システム1の概略構成例を示す図である。
図1においては、新幹線を例としているが、その他、在来の列車についても適用可能である。
【0016】
列車無線システム1は新幹線5と基地局(基地局の上流には、例えばデータサーバやクライアント装置が接続されるようにしても良い)2との間でLCX(漏洩同軸ケーブル:Leaky Coaxial cable)を用いて通信を行うシステムであり、アンテナ機能を有する漏洩同軸ケーブルであるLCX4を用いて当該通信が実現される。列車無線システム1は、一例として、無線信号を出力する基地局2と、LCX4に接続され、一定の距離を隔てて配置される複数の無線中継機3と、を備えている。漏洩同軸ケーブルであるLCX4は新幹線5のレールに沿って設置されているため、新幹線5は、適宜、LCX4から無線信号を取得し、かつLCX4に情報を送信することができるようになっている。なお、新幹線5には、移動局装置(例えば、無線通信機)等が搭載されている。
【0017】
複数の無線中継機3が一定距離間隔で配置されるのは、無線信号はLCX4を介して伝送される間に減衰してしまうため、減衰した無線信号を各無線中継機3で増幅するためである。
【0018】
LCX4には、上記無線信号(例えば、400MHz帯の高周波信号)と、無線中継機3を駆動するための電源(例えば、400〜430Vの交流電源)とが重畳されて生成された重畳信号が伝送される。
【0019】
当該列車無線システム1においては、例えばデジタル通信方式を用いることにより、従来のアナログシステムと同一周波数帯域内であっても無線回数線を増加させたり、伝送速度を向上させたりすることが可能となっている。
【0020】
<無線中継機の内部構成及び雷サージ電流の影響について>
図2は、無線中継機3の内部構成例を示す図である。無線中継機3は、無線中継機筺体31内に、2つの電力重畳器32と、トランス33と、信号増幅器34と、を備え、無線中継機筺体31が地面に設置されて構成される。
【0021】
信号入力側の電力重畳器32は、LCX4内を伝送されてきた重畳信号を交流電源と無線信号とに分離する。トランス33は、電力重畳器32で重畳信号が分離されて得られた交流電源の電圧値を変換(信号増幅器34の動作電圧まで降圧)し、信号増幅器34に供給すると共に、信号出力側の電力重畳器32には分離されて得られた交流電源をそのまま供給する。信号増幅器34は、信号入力側の電力重畳器32で分離された無線信号を増幅して出力する。出力側の電力重畳器32は、信号増幅器34で増幅された無線信号とトランス33から供給された交流電源を再度重畳してLCX4に出力する。
【0022】
このような構成を備える無線中継機3に雷対策が施されていない場合、雷サージ電流が無線中継機3に侵入する経路は以下の3つが考えられる。
i)無線中継機3の通信ラインに雷サージ電流が流れる。この場合、被害を受ける機器は、電力重畳器32、及び信号増幅器34である。
ii)無線中継機3の電源ラインに雷サージ電流が流れる。この場合、被害を受ける機器は、電力重畳器32、トランス33、及び信号増幅器34である。
iii)電力重畳器32と筐体接地35との間で絶縁破壊を起こし、電力重畳器32から筐体接地35へ雷サージ電流が流れる。この場合、被害を受ける機器は、電力重畳器32である。
【0023】
なお、雷の極性は正と負の両方があるため、逆に地面から雷サージ電流が侵入し、LCX4に逃げていくケースもある。
【0024】
以上のような場合、無線中継機3に対して何も雷対策を施していなければ無線中継機3が破損し、交換しなければならない。無線中継機3の交換数及び交換作業は膨大となり、新幹線5の運行業務にも支障が生じ、金銭的被害も非常に大きくなる可能性がある。
【0025】
そこで、本開示の実施形態で提案するように、各無線中継機3の入力側及び出力側にそれぞれ避雷器を設置し、雷サージ電流の侵入を防ぐようにしている。
【0026】
<避雷器を設置した無線中継機>
図3は、本実施形態による避雷器6が設置された無線中継機3周辺の構成例を示す図である。無線中継機3の構成及び動作については上述したのでここでは省略する。
【0027】
図3に示されるように、本実施形態による避雷器6は、無線中継機3の信号入力側と信号出力側のそれぞれに設置(挿入)される。避雷器6が無線中継機3に取り付けられた場合、LCX4に落雷したことにより発生する雷サージ電流の無線中継機3への侵入は、当該避雷器6によってブロックされ、避雷器6を介して接地に放流される。
【0028】
このように、雷サージ電流の無線中継機3への侵入を防止することができるので、無線中継機3の全ての構成要素を雷被害から保護することができるようになる。なお、雷サージ電流が接地に放流される場合、無線中継機3による重畳信号(無線信号+交流電源)の受信も同時にブロックされることになるが、ブロックされる期間は非常に短い(例えば、1ms程度)ため、列車運行上問題になるレベルではない。
【0029】
<避雷器の外観構成>
図4は、本実施形態による避雷器6の外観構成を示す図である。ただし、一部は内部の構成が示されている。
【0030】
避雷器6は、内部導体61と、外部導体62と、内部導体61と外部導体62との間に直列に配置されたGDT(Gas Discharge Tube)63及びMOV(Metal Oxide Varistor)64と、アース端子65と、を備えている。
【0031】
電源系統に設置する避雷器の回路にはMOVを使用することが一般的であるため、列車無線システム1のLCX4に設置する避雷器6についてもMOV64を使用している。しかしながら、LCX4には、交流電源だけでなく高周波の無線信号も重畳されている。MOV64は静電容量が大きく(一般的には10000pF前後)、高周波信号を大きく減衰させてしまうため、MOV単体の回路では高周波信号である無線信号を通すことが出来ない。そこで、本開示の実施形態では、静電容量の小さいGDT(例えば10pF以下のもの)63をMOV64と直列に接続(接続の順番は問わない)し、全体の静電容量を下げる(例えば5pF以下程度)ことで、無線信号も通せるようにしている。
【0032】
LCX4と無線中継機3との間には、図示しないが中継用同軸ケーブルが介在している。中継用同軸ケーブルの一方(LCX4側)の端部および他方(無線中継機3側)の端部にはそれぞれ接続用のコネクタが設けられており、避雷器6を取り付ける際には、避雷器6の同軸ケーブル取付部を中継用同軸ケーブルの他方の端部に接続し、避雷器6の無線中継機取付部を無線中継機3の同軸ケーブル取付部に接続する。
このように避雷器6は容易に取付が可能な構成となっている。
【0033】
なお、本実施形態では、GDT63とMOV64を用いているが、GDT63やMOV64と同様な性質を有する素子であれば適用可能である。以下にそれぞれの特徴について示す。
(1)MOVの特徴
(i)動作電圧以上の電圧が掛かると急激に電気抵抗が低くなる性質を有するスイッチング素子であること
(ii)動作電圧がAC430V以上であること
(iii)続流防止のため、動作後に一定電圧となる特性を有すること
(iv)大きな雷サージ電流に耐え得ること
(2)GDTの特徴
(i)動作電圧以上の電圧が掛かると放電するスイッチング素子であること
(ii)動作電圧がAC430V以上であること
(iii)動作後に低抵抗(低電圧)に移行する特性を有すること
(iv)大きな雷サージ電流に耐え得ること
(v)端子間静電容量が非常に小さく高周波信号を減衰上の支障がなく伝搬させることができること
【0034】
<避雷器の内部回路構成>
図5は、本実施形態による避雷器6の回路構成を示す図である。避雷器6は、内部導体61と、外部導体62と、GDT63と、MOV64と、を備えている。GDT63とMOV64とは、内部導体61と外部導体62との間で直列回路を構成している。内部導体61は、LCX4及び無線中継機3と接続される。また、外部導体62は、接地(アース端子65を介して)されている。
【0035】
避雷器6が動作していないとき、つまり雷サージ電流が流入していないとき(正常時)には、重畳信号に含まれる交流電源の電圧値(例えば、AC400V)がGDT63およびMOV64のそれぞれの動作電圧よりも小さい。このため、GDT63及びMOV64は動作せず、LCX4で伝送されてきた重畳信号(無線信号+交流電源)は、そのまま避雷器を通過し、無線中継機3に入力される。
【0036】
また、GDT63とMOV64との合成静電容量は、避雷器6が動作していないとき(正常時)において、無線信号(例えば、400MHz帯の高周波信号)が避雷器6の内部導体61及び外部導体62を減衰上の支障がなく伝搬するような値に設定される必要がある。
【0037】
<避雷器動作中の雷サージ電流の放流経路>
図6は、避雷器6の動作中における雷サージ電流の放流経路を示す図である。LCX4を伝搬してきた雷サージ電流は、避雷器6の内部導体61にそのまま侵入する。雷サージ電流が発生した場合、掛かる電圧は例えば1500V以上となる(GDT63とMOV64の動作電圧の合計値以上となる)ため、GDT63とMOV64のスイッチがONとなる。両素子のスイッチがONとなると低抵抗状態となるため、素子側に雷サージ電流が流れやすくなる。GDT63及びMOV64を通過した雷サージ電流は、外部導体62を伝わり、外部導体62から接地(アース端子65を介して)に逃げていくことになる。雷電圧は、そもそもLCX4と地面(大地)との間に掛かるものであるため、地面に逃げていく性質を有している。よって、地面に対してスイッチングすれば、雷サージ電流は自然と地面に流れていくものである。
【0038】
そして、避雷器6は、雷サージ電流の放流後、GDT63とMOV64のスイッチがOFFになる(高抵抗状態に戻る)ため、自己復帰することとなる。
【0039】
<まとめ>
本開示の実施形態による避雷器6は、無線中継機に入力される重畳信号を伝搬させるための内部導体61および外部導体62と、第1のスイッチング素子(例えばGDT63)と、第2のスイッチング素子(例えば、MOV64)と、接地端子(アース端子65)と、を備えている。ここで、内部導体61と外部導体62とは同軸で構成され、避雷器6の内部導体61には中継用同軸ケーブルを介して漏洩同軸ケーブル(LCX4)の内部導体が接続され、避雷器6の外部導体62には中継用同軸ケーブルを介してLCX4の外部導体が接続される。また、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とは、避雷器6の内部導体61と外部導体62との間で直列に接続されている。さらに、第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子のそれぞれの動作電圧は、避雷器6の内部導体61および外部導体62を伝搬する重畳信号に含まれる電源の電圧値よりも大きく規定されている。また、第1のスイッチング素子の静電容量は、第2のスイッチング素子の静電容量よりも小さい。そして、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との合成静電容量は、正常時において重畳信号が内部導体および外部導体を減衰上の支障がなく伝搬するような静電容量に設定されている。この第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との合成静電容量は5pF以下が好ましいが、あくまで例示であって、重畳信号が内部導体および外部導体を減衰上の支障がなく伝搬するような静電容量であればよい。このような構成を備える避雷器6では、過大電圧(雷サージ電圧)が印加されると、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子がONとなり、低抵抗状態となる。そして、雷サージ電流が、内部導体61から第1のスイッチング素子及び第2のスイッチング素子を経由し、外部導体62に伝わり、接地端子から地面に放流される。このようにすることにより、無線中継機3内に雷サージを侵入させないため、無線中継機3内の全構成要素(全機器)について雷対策を施すことが可能となる。また、避雷器6は同軸コネクタで構成されているので着脱が容易であり、施工(メンテナンス、交換を含む)の手間を低減できる。さらに、列車無線システムにおいて、避雷器6を設置することが必要な箇所は、無線中継機3の導入出口(入力側及び出力側)のみで済むため、無線中継機3内のスペースを圧迫しないという効果も期待できる。