(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モノマー成分は、炭素原子数が6以上10以下の鎖状アルキル基をエステル末端に有するアクリレートを該モノマー成分の50重量%以上含む、請求項1に記載の粘着シート。
前記モノマー成分は、炭素原子数が6以上10以下の鎖状アルキル基をエステル末端に有するアクリレートを該モノマー成分の90重量%以上含む、請求項1に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0019】
本明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
【0020】
この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
【0021】
この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。上記アクリル系ポリマーの典型例は、アクリル系モノマーを50重量%を超えて含むモノマー成分の重合物である。好ましい一態様において、上記モノマー成分に占めるアクリル系モノマーの割合は、凡そ70重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)であり得る。
【0022】
ここに開示される粘着シートは、非剥離性の基材(支持基材)の片面または両面に上記粘着剤層を有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナーに保持された形態等の基材レスの粘着シート(すなわち、非剥離性の基材を有しない粘着シート)であってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0023】
両面粘着タイプの基材レス粘着シート(基材レス両面粘着シート)の構成例を
図1,2に示す。
図1に示す粘着シート1は、基材レスの粘着剤層21の両面21A,21Bが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有する。
図2に示す粘着シート2は、基材レスの粘着剤層21の一方の表面(粘着面)21Aが、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有し、これを巻回すると、粘着剤層21の他方の表面(粘着面)21Bが剥離ライナー31の背面に当接することにより、他面21Bもまた剥離ライナー31で保護された構成とできるようになっている。ここに開示される技術は、粘着シートの厚さを小さくする観点から、このような基材レスの形態で好ましく実施され得る。あるいは、ここに開示される粘着シートは、特に図示しないが、非剥離性の基材(支持基材)の両面に粘着剤層を有する基材付き両面粘着シートの形態であってもよい。
【0024】
<粘着剤層>
ここに開示される粘着シートは、ベースポリマーとしてのアクリル系ポリマーと、防錆剤と、を含む粘着剤層を含んで構成されている。ここで、ベースポリマーとは、粘着剤層に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0025】
(アクリル系ポリマー)
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーは、典型的には、アルキル(メタ)アクリレートを50重量%以上含み、必要に応じて該アルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー成分の重合物である。上記モノマー成分の主モノマーがアルキル(メタ)アクリレートであるアクリル系ポリマーが好ましい。ここで主モノマーとは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分における主成分、すなわち該モノマー成分に50重量%を超えて含まれる成分をいう。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH
2=C(R
11)COOR
12 (1)
ここで、上記式(1)中のR
11は水素原子またはメチル基である。また、R
12は炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
12がC
1−14の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R
12がC
1−10の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0027】
R
12がC
1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、典型的には50重量%超であり、例えば70重量%以上とすることができ、85重量%以上としてもよく、90重量%以上としてもよい。また、モノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、典型的には100重量%未満であり、通常は99.5重量%以下とすることが適当であり、98重量%以下(例えば97重量%未満)としてもよい。このような組成のモノマー成分によると、部材の保持性能に優れた粘着シートが得られやすい。
【0029】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーは、上記モノマー成分が、炭素原子数5以上のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリレート(以下「C
5以上アルキル(メタ)アクリレート」ともいう。)を50重量%以上含む。かかるモノマー組成のアクリル系ポリマーによると、C
1−4アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとするモノマー組成のアクリル系ポリマーに比べて、より比誘電率の低い粘着剤層が形成される傾向にある。粘着剤層の比誘電率が低いことは、感圧センサ(例えば、抵抗方式の感圧センサ)に貼り付けて用いられることが想定される粘着シートにおいて、該感圧センサの信号を損ないにくい(例えば、信号強度を低下させにくい)等の観点から有利となり得る。このような粘着シートは、典型的には両面粘着シートの形態で、例えば抵抗方式の感圧センサの固定等に好ましく用いられ得る。C
5以上アルキル(メタ)アクリレートとしては、C
5−20アルキル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
【0030】
モノマー成分に占めるC
5−20アルキル(メタ)アクリレート(例えば、C
6−14アルキル(メタ)アクリレート)の割合は、例えば50重量%以上(典型的には50重量%超)とすることができる。このようなモノマー組成によると、粘着性能がよく、かつ比誘電率が3以下の粘着剤層が得られやすい。より比誘電率を低くする観点から、モノマー成分に占めるC
5−20アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば55重量%以上であってよく、70重量%以上であってもよい。一態様において、モノマー成分に占めるC
5以上アルキル(メタ)アクリレートの割合は、85重量%以上であってよく、90重量%以上であってもよい。一方、良好な部材保持性能を得る観点から、モノマー成分に占めるC
5−20アルキル(メタ)アクリレートの割合は、通常、99重量%以下とすることが適当であり、98重量%以下(例えば97重量%未満)としてもよい。
【0031】
ここに開示される技術は、上記モノマー成分がC
6−10アルキルアクリレート(例えばC
8−10アルキルアクリレート)を30重量%以上含む態様で好ましく実施され得る。このようにC
6−10アルキルアクリレートを所定以上含むモノマー組成によると、比誘電率が低く、かつ粘着特性のよい粘着剤層が得られやすい。かかる観点から、モノマー成分に占めるC
6−10アルキルアクリレートの割合は、50重量%以上としてもよく、70重量%以上としてもよく、85重量%以上としてもよく、90重量%以上としてもよい。一方、良好な部材保持性能を得る観点から、モノマー成分に占めるC
6−10アルキルアクリレートの割合は、通常、99重量%以下とすることが適当であり、98重量%以下(例えば97重量%未満)としてもよい。
【0032】
C
6−10アルキルアクリレートの具体例としては、特に限定されないが、例えばヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、イソヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート等が挙げられる。好適例として、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート等が挙げられる。
【0033】
ここに開示される技術は、また、上記モノマー成分がC
5−20(典型的にはC
6−14、例えばC
6−10)の分岐アルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリレートを20重量%以上含む態様で好ましく実施され得る。このように分岐C
5−20アルキル(メタ)アクリレートを所定以上含むモノマー組成によると、比誘電率の低い粘着剤層が得られやすい。かかる観点から、モノマー成分に占める分岐C
5−20アルキル(メタ)アクリレートの割合は、30重量%以上としてもよく、50重量%以上としてもよく、70重量%以上としてもよく、85重量%以上としてもよく、90重量%以上としてもよい。一方、良好な部材保持性能を得る観点から、モノマー成分に占める分岐C
5−20アルキル(メタ)アクリレートの割合は、通常、99.5重量%以下とすることが適当であり、98重量%以下(例えば97重量%未満)としてもよい。
【0034】
分岐C
5−20アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、例えばイソヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。一態様において、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート等の分岐C
5−20アルキルアクリレート(例えば、分岐C
6−10アルキルアクリレート)を好ましく採用することができる。
【0035】
ここに開示される技術は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含む態様で好ましく実施され得る。モノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含むことにより、せん断方向への衝撃に対して良好な耐久性(せん断衝撃耐性;例えば、後述する衝撃接着強さにより評価され得る。)を示す粘着シートが得られやすくなる。また、粘着剤層と被着体(固定対象の部材等)との密着性向上にも有利となり得る。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イソクロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等);等が例示される。これらは、いずれか1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましいカルボキシ基含有モノマーとして、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MAA)が挙げられる。AAが特に好ましい。
【0036】
モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの含有量は、例えば、該モノマー成分の0.2重量%以上(典型的には0.5重量%以上)とすることができ、通常は1重量%以上とすることが適当であり、2重量%以上としてもよく、3重量%以上としてもよい。カルボキシ基含有モノマーの含有量を3重量%超とすることにより、より高い効果(例えば、衝撃接着強さを向上させる効果)が発揮され、より部材の保持性能に優れた粘着シートが実現され得る。かかる観点から、一態様において、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、モノマー成分の3.2重量%以上とすることができ、3.5重量%以上としてもよく、4重量%以上としてもよく、4.5重量%以上としてもよい。カルボキシ基含有モノマーの含有量の上限は特に制限されないが、防錆剤の使用量を低減しやすくする観点から、例えば15重量%以下とすることができ、12重量%以下としてもよく、10重量%以下としてもよい。ここに開示される技術は、カルボキシ基含有モノマーの含有量がモノマー成分の7重量%以下(典型的には7重量%未満、例えば6.8重量%以下、または6.0重量%以下)である態様でも好ましく実施され得る。
【0037】
アルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。また、副モノマーは、粘着剤層の比誘電率の調節にも役立ち得る。副モノマーとしては、例えば、以下のような官能基含有モノマーを、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
水酸基含有モノマー:例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート。
アミド基含有モノマー:例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
エポキシ基を有するモノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
シアノ基含有モノマー:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル。
ケト基含有モノマー:例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート。
窒素原子含有環を有するモノマー:例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン。
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
【0038】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分が上述のような官能基含有モノマーを含む場合、該モノマー成分における官能基含有モノマーの含有量は特に限定されない。官能基含有モノマーの使用による効果を適切に発揮する観点から、モノマー成分における官能基含有モノマーの含有量は、例えば0.1重量%以上とすることができ、通常は0.5重量%以上とすることが適当であり、1重量%以上としてもよい。また、主モノマーやカルボキシ基含有モノマーとの関係で粘着性能のバランスをとりやすくする観点から、モノマー成分における官能基含有モノマーの含有量は、通常、40重量%以下とすることが適当であり、20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下(例えば5重量%以下)としてもよい。ここに開示される技術は、モノマー成分が官能基含有モノマーを実質的に含まない態様(例えば、モノマー成分が実質的にアルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーのみからなる態様)でも好ましく実施され得る。ここで、モノマー成分が官能基含有モノマーを実質的に含まないとは、少なくとも意図的には官能基含有モノマーを用いないことをいい、例えば0.05重量%以下(典型的には0.01重量%以下)程度の官能基含有モノマーが非意図的に含まれることは許容され得る。
【0039】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、凝集力向上等の目的で、上述した副モノマー以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分の例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の、1分子中に2以上(例えば3以上)の重合性官能基(例えば(メタ)アクリロイル基)を有する多官能モノマー;等が挙げられる。
【0040】
かかる他の共重合成分の量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、使用による効果を適切に発揮する観点から、通常は0.05重量%以上とすることが適当であり、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着性能のバランスをとりやすくする観点から、モノマー成分における他の共重合成分の含有量は、通常、20重量%以下とすることが適当であり、10重量%以下(例えば5重量%以下)としてもよい。ここに開示される技術は、モノマー成分が他の共重合成分を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。ここで、モノマー成分が他の共重合成分を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には他の共重合成分を用いないことをいい、他の共重合成分が例えば0.01重量%以下程度、非意図的に含まれることは許容され得る。
【0041】
アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が凡そ−15℃以下(例えば凡そ−75℃以上−15℃以下)となるように設計されていることが適当である。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーの合成に用いられるモノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
【0042】
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料に記載の値を用いるものとする。例えば、以下に挙げるモノマーについては、該モノマーのホモポリマーのガラス転移温度として、以下の値を使用する。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
イソノニルアクリレート −60℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
酢酸ビニル 32℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0043】
上記で例示した以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度については、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。上記Polymer Handbookにも記載されていない場合には、特開2007−51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0044】
特に限定するものではないが、被着体(例えば、固定対象の部材)に対する密着性の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ−25℃以下であることが有利であり、好ましくは凡そ−35℃以下、より好ましくは凡そ−40℃以下である。より高い密着性を得る観点から、一態様において、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ−50℃以下であってよく、凡そ−55℃以下であってもよく、例えば凡そ−60℃以下であってもよい。また、アクリル系ポリマーのTgは、典型的には−75℃以上であり、通常は−70℃以上とすることが適当である。ここに開示される技術は、アクリル系ポリマーのTgが凡そ−75℃以上40℃以下(例えば、凡そ−70℃以上−55℃以下)である態様で好ましく実施され得る。アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
【0045】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際の重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜170℃程度(典型的には40℃〜140℃程度)とすることができる。
【0046】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1〜4の一価アルコール類);tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0047】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005〜1重量部程度(典型的には凡そ0.01〜1重量部程度)の範囲から選択することができる。
【0048】
上記溶液重合によると、アクリル系ポリマーが有機溶媒に溶解した形態の重合反応液が得られる。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施して得られたアクリル系ポリマー溶液を含む粘着剤組成物から形成されたものであり得る。上記アクリル系ポリマー溶液としては、上記重合反応液を必要に応じて適当な粘度(濃度)に調製したものを使用し得る。あるいは、溶液重合以外の重合方法(例えば、エマルション重合、光重合、バルク重合等)でアクリル系ポリマーを合成し、該アクリル系ポリマーを有機溶媒に溶解させて調製したアクリル系ポリマー溶液を用いてもよい。
【0049】
ここに開示される技術において、ベースポリマー(すなわちアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば凡そ10×10
4〜500×10
4の範囲であり得る。粘着性能の観点から、ベースポリマーのMwは、凡そ30×10
4〜200×10
4(より好ましくは凡そ45×10
4〜150×10
4、典型的には凡そ65×10
4〜130×10
4)の範囲にあることが好ましい。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgelGMH−H(S)、東ソー社製)を用いることができる。
【0050】
(防錆剤)
ここに開示される技術における粘着剤層は、防錆剤を含有する。防錆剤は、金属の錆(さび)や腐食を防ぐ化合物を含む。防錆剤としては、特に限定されないが、例えば、アミン化合物、アゾール系化合物、亜硝酸塩類、安息香酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ジシクロヘキシルアミン安息香酸塩、尿素、ウロトロピン、チオ尿素、カルバミン酸フェニル、シクロヘキシルアンモニウム−N−シクロヘキシルカルバメート(CHC)等を有効成分とするものが挙げられる。防錆剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
上記アミン化合物としては、例えば2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジエチルエタノールアミン、アンモニアやアンモニア水等のヒドロキシ基含有アミン化合物;モルホリン等の環状アミン;シクロヘキシルアミン等の環状アルキルアミン化合物;3−メトキシプロピルアミン等の直鎖状アルキルアミン等が挙げられる。また、亜硝酸塩類としては、例えば、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト(DICHAN)、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト(DIPAN)、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム等が挙げられる。
【0052】
アクリル系粘着剤との相溶性や金属腐食防止効果の観点から、一態様において、ヘテロ原子を2個以上含む五員環芳香族化合物であって、それらのヘテロ原子の少なくとも1個が窒素原子であるアゾール系化合物を有効成分とするアゾール系防錆剤を好ましく採用し得る。上記アゾール系化合物としては、従来から銅等の金属の防錆剤として使用されてきたアゾール系化合物を適宜採用し得る。ここに開示される技術は、例えば、使用する防錆剤の50重量%以上(例えば75重量%以上)がアゾール系防錆剤である態様で好ましく実施され得る。防錆剤として実質的にアゾール系防錆剤のみを含む態様であってもよい。
【0053】
アゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、セレナゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、テトラゾール、1,2,3,4−チアトリアゾール等のアゾール類;これらの誘導体;これらのアミン塩;これらの金属塩;等が挙げられる。アゾール類の誘導体の例としては、アゾール環と他の環、例えばベンゼン環との縮合環を含む構造の化合物が挙げられる。具体例としては、インダゾール、ベンゾイミダゾール、(すなわち、1,2,3−トリアゾールのアゾール環とベンゼン環とが縮合した構造の1,2,3−ベンゾトリアゾール)、ベンゾチアゾール等、および、さらにこれらの誘導体であるアルキルベンゾトリアゾール(例えば、5−メチルベンゾトリアゾール、5−エチルベンゾトリアゾール、5−n−プロピルベンゾトリアゾール、5−イソブチルベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール)、アルコキシベンゾトリアゾール(例えば5−メトキシベンゾトリアゾール)、アルキルアミノベンゾトリアゾール、アルキルアミノスルホニルベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール(例えば4−ニトロベンゾトリアゾール)、ハロベンゾトリアゾール(例えば5−クロロベンゾトリアゾール)、ヒドロキシアルキルベンゾトリアゾール、ヒドロベンゾトリアゾール、アミノベンゾトリアゾール、(置換アミノメチル)−トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N−アルキルベンゾトリアゾール、ビスベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、アミノベンゾチアゾール等、これらのアミン塩、これらの金属塩等が挙げられる。アゾール類の誘導体の他の例として、非縮合環構造のアゾール類誘導体、例えば3−アミノ−1,2,4−トリアゾールや5−フェニル−1H−テトラゾール等のように非縮合のアゾール環上に置換基を有する構造の化合物が挙げられる。アゾール系化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
アゾール系防錆剤として使用し得る化合物の好適例として、ベンゾトリアゾール系化合物を有効成分とするベンゾトリアゾール系防錆剤が挙げられる。ここに開示される技術は、例えば、上記防錆剤がベンゾトリアゾール系防錆剤である態様で好ましく実施され得る。このような態様において、金属腐食防止性がよく、かつ部材の保持性能に優れた粘着シートが好適に実現され得る。
【0055】
上記ベンゾトリアゾール系化合物としては、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であれば、特に限定されないが、下記式(2)で表される構造を有することが、より優れた腐食防止効果が得られるという観点から好ましい。
【0057】
ここで、上記式(2)において、R
1はベンゼン環上の置換基であって、例えば炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数6〜14のアリール基、カルボキシ基、炭素原子数2〜6のカルボキシアルキル基、アミノ基、モノまたはジ−C
1−10アルキルアミノ基、アミノ−C
1−6アルキル基、モノまたはジ−C
1−10アルキルアミノ−C
1−6アルキル基、メルカプト基、炭素原子数1〜6のアルコキシカルボニル基、等の置換基から選択され得る。上記式(2)中のnは0〜4の整数であり、nが2以上である場合、上記式(2)に含まれるn個のR
1は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。上記式(2)中のR
2は、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数6〜14のアリール基、アミノ基、モノまたはジ−C
1−10アルキルアミノ基、アミノ−C
1−6アルキル基、モノまたはジ−C
1−10アルキルアミノ−C
1−6アルキル基、メルカプト基、炭素原子数1〜12のアルコキシカルボニル基、等の置換基から選択され得る。R
1とR
2とは、同一であってもよく異なってもよい。式(2)で表わされるベンゾトリアゾール系化合物の好適例として、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0058】
粘着剤層における防錆剤(例えばアゾール系防錆剤)の含有量は特に限定されず、例えば、ベースポリマー100重量部に対して0.01重量部以上(典型的には0.05重量部以上)とすることができる。より良好な金属腐食防止効果を得る観点から、上記含有量は、0.1重量部以上であってよく、0.3重量部以上でもよく、0.5重量部以上でもよい。一方、粘着剤の凝集力(例えば耐熱凝集力)を高める観点から、防錆剤の含有量の上限は特に制限されず、所望の防錆効果が得られるように設定することができる。防錆剤が粘着特性に与える影響を抑制する観点や経済性の観点から、防錆剤の使用量は、例えば、ベースポリマー100重量部に対して15重量部以下とすることができ、通常は10重量部以下とすることが適当であり、8重量部以下としてもよく、7重量部以下としてもよく、5重量部以下としてもよく、3重量部以下としてもよい。
【0059】
特に限定するものではないが、一態様において、粘着剤層における防錆剤(例えばアゾール系防錆剤)の含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分に含まれるカルボキシ基含有モノマー10重量部当たり、0.2重量部以上に相当する量とすることができる。上記カルボキシ基含有モノマー10重量部当たりの防錆剤の含有量は、0.5重量部以上であってもよく、1重量部以上でもよく、1.5重量部以上でもよい。カルボキシ基含有モノマー10重量部当たりの防錆剤の含有量の増大により、金属腐食防止効果が向上する傾向にある。また、金属腐食防止効果と部材の保持性能とを好適に両立する観点から、カルボキシ基含有モノマー10重量部当たりの防錆剤の含有量は、例えば20重量部以下とすることができ、通常は10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下(例えば3重量部以下)としてもよい。
【0060】
(粘着付与樹脂)
ここに開示される技術における粘着剤層には、粘着付与樹脂を含有させることができる。これにより、粘着シートの剥離強度を高め、部材の保持性能を向上させ得る。粘着付与樹脂としては、フェノール系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、変性テルペン系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の、公知の各種粘着付与樹脂から選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0061】
フェノール系粘着付与樹脂の例には、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂およびロジンフェノール樹脂が含まれる。
テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン−フェノール共重合体樹脂)と、テルペン類の単独重合体または共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。このようなテルペンフェノール樹脂を構成するテルペン類の好適例としては、α−ピネン、β−ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペン類が挙げられる。水素添加テルペンフェノール樹脂とは、このようなテルペンフェノール樹脂を水素化した構造を有する水素添加テルペンフェノール樹脂をいう。水添テルペンフェノール樹脂と称されることもある。
アルキルフェノール樹脂は、アルキルフェノールとホルムアルデヒドから得られる樹脂(油性フェノール樹脂)である。アルキルフェノール樹脂の例としては、ノボラックタイプおよびレゾールタイプのものが挙げられる。
ロジンフェノール樹脂は、典型的には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類および不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を包含する。)のフェノール変性物である。ロジンフェノール樹脂の例には、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合する方法等により得られるロジンフェノール樹脂が含まれる。
【0062】
テルペン系粘着付与樹脂の例には、α−ピネン、β−ピネン、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン類(典型的にはモノテルペン類)の重合体が含まれる。1種のテルペン類の単独重合体であってもよく、2種以上のテルペン類の共重合体であってもよい。1種のテルペン類の単独重合体としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。変性テルペン樹脂の例としては、上記テルペン樹脂を変性したものが挙げられる。具体的には、スチレン変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示される。
【0063】
ここでいうロジン系粘着付与樹脂の概念には、ロジン類およびロジン誘導体樹脂の双方が包含される。ロジン類の例には、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水素添加、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);が含まれる。
【0064】
ロジン誘導体樹脂は、典型的には上記のようなロジン類の誘導体である。ここでいうロジン系樹脂の概念には、未変性ロジンの誘導体および変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジンおよび重合ロジンを包含する。)の誘導体が包含される。例えば、未変性ロジンとアルコール類とのエステルである未変性ロジンエステルや、変性ロジンとアルコール類とのエステルである変性ロジンエステル等のロジンエステル類;例えば、ロジン類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;例えば、ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;例えば、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体(ロジンエステル類、不飽和脂肪酸変性ロジン類および不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類を包含する。)のカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;例えば、ロジン類または上記の各種ロジン誘導体の金属塩;等が挙げられる。ロジンエステル類の具体例としては、未変性ロジンまたは変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)のメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0065】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
【0066】
粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。凝集力向上の観点から、一態様において、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上)である粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。ここに開示される技術は、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量を100重量%として、そのうち50重量%超(より好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)が上記軟化点を有する粘着付与樹脂である態様で好ましく実施され得る。例えば、このような軟化点を有するフェノール系粘着付与樹脂(テルペンフェノール樹脂等)を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂は、例えば、軟化点が凡そ135℃以上(さらには凡そ140℃以上)のテルペンフェノール樹脂を含んでいてもよい。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されない。被着体に対する密着性向上の観点から、一態様において、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下)の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定することができる。
【0067】
粘着剤層が粘着付与樹脂を含む場合において、該粘着付与樹脂の使用量は特に限定されず、例えばベースポリマー100重量部に対して1〜100重量部程度の範囲で適宜設定し得る。剥離強度を向上させる効果を好適に発揮する観点から、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、通常、5重量部以上とすることが適当であり、10重量部以上とすることが好ましく、15重量部以上としてもよい。また、凝集力の観点から、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の使用量は、通常、50重量部以下とすることが適当であり、40重量部以下としてもよく、30重量部以下としてもよい。
【0068】
好ましい一態様として、上記粘着付与樹脂が1種または2種以上のフェノール系粘着付与樹脂(典型的にはテルペンフェノール樹脂)を含む態様が挙げられる。ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂の総量を100重量%として、そのうち凡そ25重量%以上(より好ましくは凡そ30重量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の総量の凡そ50重量%以上がテルペンフェノール樹脂であってもよく、凡そ80重量%以上(例えば凡そ90重量%以上)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95〜100重量%、さらには凡そ99〜100重量%)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
【0069】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術の一態様において、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が20mgKOH/gより高い粘着付与樹脂を含み得る。なかでも水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂が好ましい。以下、水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を「高水酸基価樹脂」ということがある。このような高水酸基価樹脂を含む粘着付与樹脂によると、被着体に対する密着性に優れ、かつ凝集力の高い粘着剤層が実現され得る。一態様において、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が50mgKOH/g以上(より好ましくは70mgKOH/g以上)の高水酸基価樹脂を含んでいてもよい。
【0070】
上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)〜(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B−C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の重量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
【0071】
高水酸基価樹脂としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを用いることができる。高水酸基価樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、高水酸基価樹脂として、水酸基価が30mgKOH/g以上のフェノール系粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。好ましい一態様では、粘着付与樹脂として、少なくとも水酸基価30mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を使用する。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好都合である。
【0072】
ここに開示される技術は、水酸基価が凡そ70mgKOH/g以上(例えば70〜150mgKOH/g程度)の粘着付与樹脂を含む態様で好ましく実施され得る。このような水酸基価を有する粘着付与樹脂は、C
5−20アルキル(メタ)アクリレート(例えばC
6−10アルキルアクリレート)を多く含むモノマー組成のアクリル系ポリマーに対して、より良好な相溶性を示す傾向にある。例えば、このような水酸基価を有するフェノール系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)を好ましく採用し得る。
【0073】
高水酸基価樹脂の水酸基価の上限は特に限定されない。ベースポリマーとの相溶性等の観点から、高水酸基価樹脂の水酸基価は、通常、凡そ200mgKOH/g以下が適当であり、好ましくは凡そ180mgKOH/g以下、より好ましくは凡そ160mgKOH/g以下、さらに好ましくは凡そ140mgKOH/g以下である。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂が水酸基価30〜160mgKOH/gの高水酸基価樹脂(例えばフェノール系粘着付与樹脂、好ましくはテルペンフェノール樹脂)を含む態様で好ましく実施され得る。一態様において、水酸基価70〜160mgKOH/gの高水酸基価樹脂を好ましく採用し得る。あるいは、水酸基価30〜80mgKOH/g(例えば30〜65mgKOH/g)の高水酸基価樹脂を用いてもよい。
【0074】
特に限定するものではないが、高水酸基価樹脂を使用する場合、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、例えば凡そ25重量%以上とすることができ、凡そ30重量%以上が好ましく、凡そ50重量%以上(例えば凡そ80重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)がより好ましい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95〜100重量%、さらには凡そ99〜100重量%)が高水酸基価樹脂であってもよい。
【0075】
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤層は、上述のようなアクリル系ポリマーおよび防錆剤と、必要に応じて用いられ得る粘着付与樹脂と、架橋剤と、を含む粘着剤組成物を用いて好適に形成され得る。架橋剤としては、特に限定されず、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属塩系架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される技術における粘着剤層は、上記架橋剤を、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等で含有し得る。上記架橋剤は、典型的には、専ら架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれている。
【0076】
一態様において、イソシアネート系架橋剤を好ましく採用し得る。イソシアネート系架橋剤の使用により、良好な部材保持性能を示す粘着シートが好適に実現され得る。モノマー成分の組成にカルボキシ基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーをベースポリマーとする態様では、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を用いることが特に有意義である。かかるアクリル系ポリマーとイソシアネート系架橋剤との組合せにより、粘着剤層の凝集力(例えば、80℃程度の高温における凝集力)を効果的に向上させ得る。
【0077】
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2−エチレンジイソシアネート;1,2−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−テトラメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5−ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0079】
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2−シクロヘキシルジイソシアネート、1,3−シクロヘキシルジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2−シクロペンチルジイソシアネート、1,3−シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0080】
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0081】
好ましい多官能イソシアネートとして、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA−100」、東ソー社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
【0082】
イソシアネート系架橋剤の使用量は特に限定されない。例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、凡そ0.5重量部以上とすることができる。より高い凝集力(特に耐熱凝集力)を得る観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば1.0重量部以上とすることができ、1.5重量部以上としてもよい。一方、被着体に対する密着性向上の観点から、上記イソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、アクリル系ポリマー100重量部に対して10重量部以下とすることが適当であり、8重量部以下としてもよく、5重量部以下(例えば3重量部以下)としてもよい。一態様において、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量を、凡そ1重量部以上凡そ7重量部以下(例えば凡そ1.5重量部以上凡そ5重量部以下)とすることができる。
【0083】
好ましい一態様において、イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤を組み合わせて用いることができる。ここで非イソシアネート系架橋剤とは、イソシアネート系架橋剤とは架橋性官能基の種類が異なる架橋剤のことをいう。防錆剤としてアゾール系防錆剤を含む態様では、イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤を組み合わせて用いることが特に有意義である。本発明者は、アゾール系防錆剤を含む組成においてイソシアネート系架橋剤を用いると、該イソシアネート系架橋剤の働きが損なわれやすくなることを見出した。例えば、上述のようにモノマー成分中にカルボキシ基含有モノマーを含むアクリル系ポリマーとイソシアネート系架橋剤との組合せにより凝集力の向上を図ろうとする場合、防錆剤としてアゾール系防錆剤を用いると、凝集力の向上効果が十分に発揮され難くなることがあり得る。イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤とを組み合わせて用いることにより、アゾール系防錆剤を含む構成においても凝集力と金属腐食防止性とを好適に両立させることができる。
【0084】
イソシアネート系架橋剤と組み合わせて用いられる非イソシアネート系架橋剤の種類は特に制限されず、例えば上述した各種架橋剤のうちイソシアネート系架橋剤以外ものから適宜選択することができる。非イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
好ましい一態様において、非イソシアネート系架橋剤としてエポキシ系架橋剤を採用することができる。エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく用いることができる。1分子中に3〜5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
特に限定するものではないが、エポキシ系架橋剤の具体例として、例えばN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD−C」および商品名「TETRAD−X」、DIC社製の商品名「エピクロンCR−5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX−512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC−G」等が挙げられる。
【0087】
エポキシ系架橋剤の使用量は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0重量部を超えて凡そ1重量部以下(典型的には凡そ0.001〜0.5重量部)とすることができる。凝集力の向上効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.002重量部以上とすることが適当であり、凡そ0.005重量部以上が好ましく、凡そ0.008重量部以上がより好ましい。また、被着体に対する密着性向上の観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.2重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.1重量部以下とすることが好ましく、凡そ0.05重量部未満がより好ましく、凡そ0.03重量部未満(例えば凡そ0.025重量部以下)がさらに好ましい。
【0088】
ここに開示される技術において、イソシアネート系架橋剤の含有量と非イソシアネート系架橋剤(例えばエポキシ系架橋剤)の含有量との関係は特に限定されない。非イソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/50以下とすることができる。被着体に対する密着性と凝集力とをより好適に両立する観点から、非イソシアネート系架橋剤の含有量は、重量基準で、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/75以下とすることが適当であり、凡そ1/100以下(例えば1/150以下)とすることが好ましい。また、イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤(例えばエポキシ系架橋剤)とを組み合わせて用いることによる効果を好適に発揮する観点から、通常、非イソシアネート系架橋剤の含有量は、イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/1000以上、例えば凡そ1/500以上とすることが適当である。
【0089】
(その他の添加剤)
粘着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じてレベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤が含まれていてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0090】
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、紫外線や電子線等のような活性エネルギー線の照射により効果する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着特性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。
【0091】
(粘着剤層の形成)
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。支持基材を有する構成の粘着シートでは、例えば、該支持基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を支持基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、例えば、後述する剥離ライナーの表面を好ましく利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0092】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40〜150℃程度とすることができ、通常は60〜130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
【0093】
粘着剤層の厚さは特に制限されない。粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ100μm以下が適当であり、好ましくは凡そ70μm以下、より好ましくは凡そ50μm以下(例えば凡そ30μm以下)である。粘着剤層の厚さの下限は特に制限されないが、被着体に対する密着性の観点からは、凡そ4μm以上とすることが有利であり、好ましくは凡そ6μm以上、より好ましくは凡そ10μm以上(例えば凡そ15μm以上)である。
【0094】
(粘着剤層の比誘電率)
ここに開示される粘着シートは、300kHzにおける比誘電率が3以下(典型的には3未満)である粘着剤層を含む。ここで比誘電率とは、JIS K6911に定義されている誘電率のことをいう。粘着剤層の300kHzにおける比誘電率は、JIS K6911に準じて測定することができる。後述する実施例においても同様である。以下、特記しない場合、この明細書において比誘電率とは、300kHzにおける比誘電率のことをいう。粘着剤層の比誘電率が低いことは、感圧センサ(例えば、抵抗方式の感圧センサ)に貼り付けて用いられることが想定される粘着シートにおいて、該感圧センサにおける電気信号を損ないにくいという観点から好ましい。比誘電率の低い粘着剤層を含む粘着シートは、典型的には両面粘着シート(好ましくは、基材レスの両面粘着シート)の形態で、例えば抵抗方式の感圧センサの固定等に好ましく用いられ得る。かかる観点から、粘着剤層の比誘電率は、例えば2.9以下であってよく、2.7以下であってもよい。ここに開示される技術は、比誘電率が2.6以下(例えば2.5以下)の粘着剤層を含む粘着シートの態様でも好ましく実施され得る。粘着剤層の比誘電率の下限は特に制限されないが、金属腐食防止性と部材の保持性能とを高レベルで両立する粘着シートが得られやすいことから、通常は1.5以上が適当であり、典型的には1.8以上であり、2.0以上であってもよく、2.2以上であってもよい。
粘着剤層の比誘電率は、例えば、ベースポリマーを構成するモノマー成分の組成(例えば、主モノマーの種類、カルボキシ基含有モノマーの使用量、官能基含有モノマーの使用の有無および使用量等)、架橋剤の使用量等により調節することができる。
【0095】
<支持基材>
ここに開示される粘着シートが片面粘着タイプまたは両面粘着タイプの基材付き粘着シートの形態である態様において、粘着剤層を支持(裏打ち)する基材としては、樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。樹脂フィルムの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン製フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム;塩化ビニル樹脂フィルム;酢酸ビニル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン等が挙げられる。紙の例としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
【0096】
なお、ここでいう不織布は、主として粘着テープその他の粘着シートの分野において使用される粘着シート用不織布を指す概念であって、典型的には一般的な抄紙機を用いて作製されるような不織布(いわゆる「紙」と称されることもある。)をいう。また、ここでいう樹脂フィルムとは、典型的には非多孔質の樹脂シートであって、例えば不織布とは区別される(すなわち、不織布を含まない)概念である。上記樹脂フィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
【0097】
支持基材の厚さは特に限定されない。粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、支持基材の厚さは、例えば凡そ200μm以下(例えば凡そ100μm以下)とすることができる。粘着シートの使用目的や使用態様に応じて、支持基材の厚さは、凡そ70μm以下であってよく、凡そ30μm以下でもよく、凡そ10μm以下(例えば凡そ5μm以下)でもよい。支持基材の厚さの下限は特に制限されない。粘着シートの取扱い性(ハンドリング性)や加工性等の観点から、支持基材の厚さは、通常は凡そ2μm以上が適当であり、好ましくは凡そ5μm以上、例えば凡そ10μm以上である。
【0098】
支持基材の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、支持基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の支持基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。
【0099】
<剥離ライナー>
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成、粘着シートの作製、使用前の粘着シートの保存、流通、形状加工等の際に、剥離ライナーを用いることができる。剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0100】
<粘着シート>
ここに開示される粘着シート(粘着剤層を含み、支持基材を有する構成ではさらに支持基材を含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されない。粘着シートの総厚さは、例えば凡そ300μm以下とすることができ、薄型化の観点から、通常は凡そ200μm以下が適当であり、凡そ100μm以下(例えば凡そ70μm以下)であってもよい。粘着シートの厚さの下限は特に限定されないが、通常は凡そ4μm以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ6μm以上、より好ましくは凡そ10μm以上(例えば凡そ15μm以上)である。なお、基材レスの粘着シートでは、粘着剤層の厚さが粘着シートの厚さとなる。
【0101】
ここに開示される粘着シートは、後述する実施例に記載の方法で行われる衝撃接着強さ試験において、0.25mJ/cm
2以上の衝撃接着強さを示すものであり得る。このような粘着シートは、せん断方向への衝撃に対する耐久性に優れた接合手段となり得る。したがって、例えば、落下や衝突による衝撃に曝されることが想定される携帯電子機器における部材固定手段として好ましく用いられ得る。ここに開示される技術によると、衝撃接着強さ0.30mJ/cm
2以上(より好ましくは0.35mJ/cm
2以上、例えば0.40mJ/cm
2以上)のせん断衝撃耐性を示す粘着シートが提供され得る。衝撃接着強さの上限は特に制限されず、例えば1.00mJ/cm
2以下であり得る。他の特性(例えば保持力)との両立をより高レベルで実現しやすくする観点から、衝撃接着強さは、例えば0.70mJ/cm
2以下であってよく、0.60mJ/cm
2以下であってもよい。
衝撃接着強さは、例えば、ベースポリマーを構成するモノマー成分の組成(例えば、カルボキシ基含有モノマーの使用量、官能基含有モノマーの使用の有無および使用量)、架橋剤の使用量等により調節することができる。
【0102】
ここに開示される粘着シートは、後述する実施例に記載の方法で行われる腐食性試験において、65℃、90%RHの条件において銅板の変色が目視で認められるようになるまでの時間が200時間以上であることが好ましく、500時間以上であることがより好ましい。このような金属腐食防止性を有する粘着シートは、電子機器の部材(例えば、表面に銅等による導電性の回路パターンが印刷された基板や、該基板を少なくとも一部に備ええる感圧センサ等の電子部品)を固定する用途に好適である。
【0103】
ここに開示される粘着シートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)に対する室温剥離強度、すなわちPETを被着体として室温(23℃)において測定される180度剥離強度(以下「対PET室温剥離強度」ともいう。)が、15N/25mm以上(より好ましくは17N/25mm以上、例えば19N/25mm以上)であることが好ましい。このような粘着シートは、PETやポリイミド等のような樹脂材料により構成された表面を少なくとも一部に有する部材の固定に適している。ここに開示される技術の一態様によると、対PET室温剥離強度が20N/25mm以上(例えば22N/25mm以上)である粘着シートが提供され得る。対PET室温剥離強度の上限は特に制限されないが、良好な凝集力との両立を容易とする観点から、例えば40N/25mm以下であってよく、30N/25mm以下であってもよい。
【0104】
対PET室温剥離強度は、次のようにして測定することができる。具体的には、厚さ50μmのPETフィルム(商品名「ルミラーS10」、東レ社製)をステンレス鋼板に両面粘着テープで固定したものを被着体として使用する。粘着シートを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットした測定サンプルを用意し、23℃、50%RHの環境下にて上記測定サンプルの粘着面を上記被着体の表面(PETフィルムの表面)に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z0237:2009に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(N/25mm)を測定する。万能引張圧縮試験機としては、例えばミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG−1kN」を用いることができる。基材レスの両面粘着シートでは、該粘着シートの一方の粘着面(測定対象の粘着面とは反対側の面)に適当な樹脂フィルムを貼り付けて裏打ちした後に、その裏打ちされた粘着シートを上記のサイズにカットして測定サンプルを作製するとよい。裏打ち用フィルムとしては、例えば東レ社製の商品名「ルミラーS10」を使用するとよい。後述の実施例においても同様である。
【0105】
<用途>
ここに開示される粘着シートは、典型的には両面粘着シートの形態で、部材を固定する用途に好ましく利用され得る。上記両面粘着シートは、基材レスでもよく、基材付きでもよい。薄型化の観点から、一態様において、基材レスの両面粘着シートの形態が好ましく採用され得る。
ここに開示される粘着シートは、例えば、携帯電子機器における部材固定用途に好適である。上記携帯電子機器の非限定的な例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。ここに開示される粘着シートは、例えば、このような携帯電子機器のうち感圧センサを備える携帯電子機器内において、感圧センサと他の部材とを固定する目的で好ましく利用され得る。好ましい一態様では、粘着シートは、画面上の位置を指示するための装置(典型的にはペン型、マウス型の装置)と位置を検出するための装置とで、画面に対応する板(典型的にはタッチパネル)の上で絶対位置を指定することを可能とする機能を備える電子機器(典型的には携帯電子機器)内において、感圧センサと他の部材とを固定するために用いられ得る。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0106】
ここに開示される粘着シートは、例えば、携帯電子機器における感圧センサの固定に好ましく用いられ得る。すなわち、粘着シートの一方の粘着面が感圧センサに貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。貼付け対象(被着体)となる感圧センサの好適例として、タッチパネル用の感圧センサが挙げられる。例えば、指押し等の強さを識別して応答することが可能なタッチパネル用感圧センサの固定に、ここに開示される粘着シートは好ましく用いられ得る。そのような感圧センサは、例えば、指押し等による応力変化を抵抗値に読み替えることで単なる接触(タッチ)と押込みとを区別し得るように構成され得る。このような感圧センサは、好ましくはディスプレイモジュールの背面側(例えば、液晶パネルを備える携帯電子機器では、典型的にはバックライトよりも背面側)に配置され、一態様においてディスプレイパネルの最も背面側に配置され得る。貼付け対象である感圧センサは、典型的には、フレキシブル印刷回路基板(FPC)を少なくとも一部に備える。上記FPCは、電気絶縁体からなる層(絶縁層)を備えており、この絶縁層の表面に、導電性材料(典型的には銅または銅合金)によって回路パターンが形成されている。FPCには、要求性能、機能に応じて導電性または絶縁性の層がさらに設けられ得る。そのようなFPCは、複数の回路基板が積層された多層構造を有するものであり得る。ここに開示される粘着シートは、典型的には、感圧センサを構成するFPCの裏面(回路パターン形成面とは反対側の表面)に貼り付けられる。より具体的には、粘着シートは、感圧センサの裏面を構成する絶縁層に貼り付けられる。
【0107】
上記のような絶縁層を構成する絶縁材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆるアラミド樹脂等)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー等の樹脂材料(典型的にはプラスチック材)を好ましく用いることができる。なかでも、耐熱性に優れるポリイミド系樹脂は感圧センサ用の絶縁層構成材料として好ましく用いられており、この用途に利用される粘着シートは、ポリイミド樹脂に対して良好な接着性を示すことが望ましい。なお、絶縁層の表面には、粘着シートとの密着性を確保するため、各種の表面処理(例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、粗面化処理、加水分解処理等)が施され得る。上記感圧センサの構成要素としての絶縁層の厚さは、特に限定されないが、凡そ2μm以上が適当であり、通常は4μm以上(典型的には8μm以上、例えば15μm以上)である。絶縁層の上限は特に限定されず、凡そ120μm以下(典型的には40μm以下、例えば25μm以下)である。なお、絶縁層表面への回路パターン(典型的には銅等の金属パターン)の形成は、公知の方法を適宜採用、改変して行うことができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0108】
また、粘着シートの他方の粘着面(感圧センサを固定する粘着面とは反対面に位置する粘着面)は、各種の物体(例えば部材)に貼り付けられる。典型的には、各種電子機器の構成部材に貼り付けられる。特に限定されるものではないが、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン等の携帯電子機器の筐体やモーター、基板、カバー、あるいはFPCの裏面に配置される電磁波シールドや補強板等の裏面部材に、ここに開示される粘着シートの他方の粘着面は貼り付けられ得る。ここに開示される粘着シートは、薄厚であっても良好な接着機能を発揮し得るので、小型化や省スペースに対する要求が顕著な携帯電子機器用途に好ましく利用され得る。
【0109】
上記感圧センサの固定対象物(例えば電磁波シールドや補強板等の裏面部材)を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、銀、金、鉄、錫、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、亜鉛等、またはこれらの2種以上を含む合金等の金属材料や、上記絶縁層構成材料として例示した各種樹脂材料、アルミナ、ジルコニア、ソーダガラス、石英ガラス、カーボン等の無機材料等が挙げられる。なかでも、銅やアルミニウム、ステンレス等の金属材料や、ポリイミド系樹脂やアラミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂等の樹脂材料(典型的にはプラスチック材)が広く用いられている。また、上記固定対象物は、単層構造、多層構造のいずれの形態であってもよく、粘着シートを貼り付ける表面(貼付け面)には、各種の表面処理が施されていてもよい。特に限定されるものではないが、固定対象物の一例として、厚さが1μm以上(典型的には5μm以上、例えば60μm以上、さらには120μm以上)1500μm以下(例えば800μm以下)程度の裏面部材が挙げられる。
【0110】
ここに開示される粘着シートは、その一方の粘着面を感圧センサに貼り合わせた後に、他方の粘着面を物体(例えば、携帯電子機器を構成する他の部材)に貼り付ける態様で好ましく用いられる。この態様では、感圧センサに貼り付けられた粘着シートは、感圧センサとの積層構造体において粘着剤層として機能する。かかる粘着剤層付き感圧センサは、感圧センサ側とは反対側に位置する他方の粘着面が剥離ライナーに保護された状態であり得る。上記剥離ライナーは、感圧センサの固定対象である物体に貼り付ける際に上記他方の粘着面から除去される。あるいは、他の一態様では、粘着シートは、その他方の粘着面を物体(感圧センサの固定対象物。例えば部材)に貼り合わせた後に、一方の粘着面を感圧センサに貼り付けて用いられる。その場合、物体に貼り付けられた粘着シート(粘着剤層ともいえる。)の一方の粘着面は、感圧センサに貼り付けられる前は、剥離ライナーで保護された状態であり得る。粘着シートを用いて感圧センサを物体に固定した後には、物体(例えば部材)と、感圧センサと、該物体と該感圧センサとを接合する粘着剤層と、を備える積層構造を有する電子機器(典型的には携帯電子機器)が得られる。
【0111】
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) ベースポリマーおよび防錆剤を含有する粘着剤層を含む粘着シートであって、
上記ベースポリマーはアクリル系ポリマーであり、
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素原子数5以上のアルキル基をエステル末端に有する(メタ)アクリレートを該モノマー成分の凡そ50重量%以上含み、
上記粘着剤層は、300kHzにおける比誘電率が3以下である、粘着シート。
(2) 上記モノマー成分は、C
5−20アルキル(メタ)アクリレートを凡そ50重量%以上(好ましくは凡そ70重量%以上、例えば凡そ90重量%以上、典型的には凡そ99重量%以下)含む、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 上記モノマー成分は、C
6−10アルキルアクリレートを凡そ30重量%以上(好ましくは凡そ50重量%以上、例えば凡そ70重量%以上、または凡そ90重量%以上、典型的には凡そ99重量%以下)含む、上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
(4) 上記モノマー成分は、C
5−20分岐(メタ)アルキルアクリレートを凡そ20重量%以上(好ましくは凡そ30重量%以上、例えば凡そ70重量%以上、または凡そ90重量%以上、典型的には凡そ99重量%以下)含む、上記(1)から(3)のいずれかに記載の粘着シート。
(5) 上記モノマー成分はカルボキシ基含有モノマーを含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着シート。
(6) 上記モノマー成分における上記カルボキシ基含有モノマーの含有量は、凡そ3重量%超(例えば凡そ3.5重量%以上、または凡そ4重量%以上、典型的には凡そ15重量%以下、例えば7重量%未満)である、上記(5)に記載の粘着シート。
(7) 上記粘着剤層は粘着付与樹脂を含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着シート。
(8) 上記粘着付与樹脂の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以上凡そ50重量部以下である、上記(7)に記載の粘着シート。
(9) 上記粘着付与樹脂として、水酸基価が凡そ30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む、上記(7)または(8)に記載の粘着シート。
(10) 上記粘着付与樹脂として、水酸基価が凡そ70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む、上記(7)〜(9)のいずれかに記載の粘着シート。
(11) 上記粘着付与樹脂としてテルペンフェノール系樹脂を含む、上記(7)〜(10)のいずれかに記載の粘着シート。
(12) 上記粘着剤層は、水酸基価が凡そ30〜160mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂を、上記ベースポリマー100重量部に対して凡そ10〜50重量部含む、上記(7)に記載の粘着シート。
(13) 上記粘着剤層は、水酸基価が凡そ70〜160mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂を、上記ベースポリマー100重量部に対して凡そ10〜50重量部含む、上記(7)に記載の粘着シート。
(14) PETに対する室温剥離強度が凡そ15N/25mm以上(例えば凡そ20N/25mm以上、典型的には凡そ40N/25mm以下、例えば凡そ30N/25mm以下)である、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の粘着シート。
(15) アルミニウムに対する室温剥離強度が凡そ15N/25mm以上(例えば凡そ17N/25mm以上、典型的には凡そ40N/25mm以下、例えば凡そ30N/25mm以下)である、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の粘着シート。
(16) PETに対する耐熱剥離強度が凡そ9N/25mm以上(例えば凡そ9.5N/25mm以上、典型的には凡そ30N/25mm以下)である上記(1)〜(15)のいずれかに記載の粘着シート。
(17) アルミニウムに対する耐熱剥離強度が凡そ5N/25mm以上(例えば凡そ10N/25mm以上、典型的には凡そ30N/25mm以下、例えば凡そ20N/25mm以下)である、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の粘着シート。
(18) 衝撃接着強さが凡そ0.30mJ/cm
2以上(例えば凡そ0.40mJ/cm
2以上、典型的には凡そ1.00mJ/cm
2以下、例えば凡そ0.70mJ/cm
2以下)である、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の粘着シート。
(19) 上記防錆剤はアゾール系防錆剤を含む、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(20) 上記アゾール系防錆剤は、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾールおよびカルボキシベンゾトリアゾールからなる群から選択される少なくとも1種のベンゾトリアゾール系化合物を含む、上記(19)に記載の粘着シート。
(21) 上記防錆剤の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して凡そ0.1重量部以上凡そ10重量部以下(例えば凡そ0.5重量部以上凡そ5重量部以下)である、上記(1)〜(20)のいずれかに記載の粘着シート。
(22) 上記モノマー成分はカルボキシ基含有モノマーを含み、
上記防錆剤の含有量は、上記カルボキシ基含有モノマー10重量部当たり、凡そ0.2重量部以上凡そ10重量部以下である、上記(1)〜(21)のいずれかに記載の粘着シート。
(23) 上記粘着剤層は、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属塩系架橋剤およびシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一種の架橋剤を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層である、上記(1)〜(22)のいずれかに記載の粘着シート。
(24) 上記架橋剤はイソシアネート系架橋剤を含む、上記(23)に記載の粘着シート。
(25) 上記粘着剤組成物における上記イソシアネート系架橋剤の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して凡そ0.5重量部以上凡そ10重量部以下である、上記(24)に記載の粘着シート。
(26) 上記架橋剤は、非イソシアネート系架橋剤をさらに含む、上記(24)または(25)に記載の粘着シート。
(27) 上記非イソシアネート系架橋剤はエポキシ系架橋剤を含む、上記(26)に記載の粘着シート。
(28) 上記粘着剤組成物における上記非イソシアネート系架橋剤(例えばエポキシ系架橋剤)の含有量は、重量基準で、上記イソシアネート系架橋剤の含有量の凡そ1/1000以上凡そ1/50以下である、上記(26)または(27)に記載の粘着シート。
(29) 上記粘着剤層の厚さが凡そ10μm以上凡そ50μm以下である、上記(1)〜(28)のいずれかに記載の粘着シート。
(30) 基材レスの両面粘着シートとして構成されている、上記(1)〜(29)のいずれかに記載の粘着シート。
(31) ベースポリマーと、アゾール系防錆剤と、粘着付与樹脂と、を含有する粘着剤層を含む粘着シートであって、
上記ベースポリマーはアクリル系ポリマーであり、
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、C
6−10アルキルアクリレートを50重量%以上(好ましくは70重量%以上、例えば90重量%以上)含み、
上記モノマー成分は、該モノマー成分の3.5重量%以上10重量%以下のカルボキシ基含有モノマーを含み、
上記粘着剤層における上記アゾール系防錆剤の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して0.5重量部以上6重量部以下であり、
上記粘着付与樹脂は、水酸基価30〜150mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を、上記ベースポリマー100重量部に対して10重量部以上50重量部以下含み、
上記粘着剤層は、300kHzにおける比誘電率が1.5以上2.7以下である、粘着シート。
(32) 携帯電子機器において部材の固定に用いられる、上記(1)〜(31)のいずれかに記載の粘着シート。
(33) 上記部材は感圧センサ(例えば、抵抗方式の感圧センサ)である、上記(32)に記載の粘着シート。
(34) 感圧センサ(例えば、抵抗方式の感圧センサ)と、携帯電子機器を構成する他の部材と、上記感圧センサと上記他の部材とを接合する粘着シートと、を備える積層構造を有する携帯電子機器であって、
上記粘着シートは、上記(1)〜(31)のいずれかに記載の粘着シートである、携帯電子機器。
【実施例】
【0112】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明における「部」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0113】
<粘着シートの作製>
(例1)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としての2EHA95部およびAA5部と、重合溶媒としての酢酸エチル212部とを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.3部の過酸化ベンゾイルを適宜加え、60℃で5時間溶液重合し、その後75℃で3時間熟成(エージング)して、アクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは約70×10
4であった。
上記アクリル系ポリマー溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対して、1,2,3−ベンゾトリアゾール(商品名「BT−120」、城北化学工業社製)0.8部と、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターS−145」、軟化点約145℃、水酸基価70〜110mgKOH/g、ヤスハラケミカル社製;以下「粘着付与樹脂B」という。)20部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液、東ソー社製)2部およびエポキシ系架橋剤(商品名「TETRAD−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン、三菱瓦斯化学社製)0.01部とを加え、攪拌混合して粘着剤組成物を調製した。
厚さ38μmのポリエステル製剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF」、三菱ポリエステル社製)の剥離面に上記粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、厚さ25μmのポリエステル製剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF」、厚さ25μm、三菱ポリエステル社製)の剥離面を貼り合わせた。このようにして、両面が上記2枚のポリエステル製剥離ライナーで保護された厚さ25μmの基材レス両面粘着シートを得た。
【0114】
(例2〜5)
例1に係る粘着剤組成物の調製において、モノマー成分、粘着付与樹脂および架橋剤の種類と使用量を表1に示すように設定した。その他の点については例1と同様にして、例2〜5に係る粘着剤組成物をそれぞれ調製し、該粘着剤組成物を用いて基材レス両面粘着シートを作製した。
なお、表1中の「粘着付与樹脂A」は、ヤスハラケミカル社製の商品名「YSポリスターT−115」(テルペンフェノール樹脂、軟化点約115℃、水酸基価30〜60mgKOH/g)である。
【0115】
(例6)
2EHA66部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)15部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)18部から構成されるモノマー混合物に、光重合開始剤0.07部(BASF製の商品名「イルガキュア184」と商品名「イルガキュア651」とを1:1の重量比で使用)を配合し、粘度が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。次に、該プレポリマー組成物100部に、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)とメチルメタクリレート(MMA)との低重合物(共重合組成:DCPMA/MMA=60/40)10部、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.25部、シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業株式会社製)0.3部および1,2,3−ベンゾトリアゾール(商品名「BT−120」、城北化学工業社製)0.2部添加し、混合して粘着剤組成物(硬化前組成物)を得た。
上記粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製剥離ライナー(商品名「MRF50」、三菱樹脂株式会社製)上に最終的な厚み(粘着剤層の厚み)が25μmとなるように塗布し、その塗布層をPET製剥離ライナー(商品名「MRF38」、三菱樹脂株式会社製)で被覆して酸素を遮断した後、照度5mW/cm
2の紫外線を300秒間照射して硬化させることにより、両面が剥離ライナーで保護されている厚さ25μmの基材レス両面粘着シートを得た。
【0116】
得られた両面粘着シートを23℃、50%RHの環境下で1日間養生した後、該両面粘着シートについて以下の評価試験を行った。
【0117】
<評価試験>
[PETに対する剥離強度の測定]
23℃、50%RHの測定環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ50μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。その測定サンプルの他方の粘着面について、上述した方法で対PET室温剥離強度(N/25mm)を測定した。
また、23℃、50%RHの環境下で上記対PET室温剥離強度の測定と同様にして測定サンプルを被着体(PETフィルムの表面)に貼り付けた後、85℃の測定環境下において、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で対PET耐熱剥離強度(N/25mm)を測定した。結果を表1に示した。
【0118】
[アルミニウムに対する剥離強度の測定]
被着体として厚さ3mmのアルミニウム板を用いた他は上記PETに対する剥離強度の測定と同様にして、対アルミニウム室温剥離強度および対アルミニウム耐熱剥離強度を測定した。結果を表1に示した。
【0119】
[衝撃接着強さの測定]
JIS K6855(国際規格ISO 9653に対応する。)に基づく振り子形接着せん断衝撃試験機を使用して、衝撃接着強さを測定した。試験片としては、各例に係る基材レス両面粘着シートを10mm角にカットした粘着シート片を用いて、10mm角、5mm厚のステンレス鋼(SUS304)板を別のステンレス鋼(SUS304)板の上に35Nの荷重で10秒間加圧接着した後、室温において48時間養生したものを使用した。測定は、ハンマーエネルギー2.75J、ハンマー速度(衝撃速度)3.5m/秒の条件で行った。
【0120】
[腐食性試験]
両面粘着シートの一方の粘着面に、厚さ200μmの透明なPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、これを厚さ25μmの銅箔の両面に貼り合わせた後、10mm角の正方形状に裁断することにより、PETフィルム/両面粘着シート/銅箔/両面粘着シート/PETフィルムの構造を有する積層体サンプルを作製した。このサンプルを85℃、85%RHの高温多湿条件下に保存した。保存開始から200時間後および500時間後において、PETフィルム越しに銅箔を目視で観察し、外観変化の有無を以下の3段階で評価した。結果を表1に示した。
E:500時間後の観察において変色は認められなかった(腐食防止性に優れる)。
G:500時間後の観察においてサンプルの角部に若干の変色が認められたが、200時間後の観察では変色は認められなかった(腐食防止性良好)。
P:200時間後の観察において明らかな変色が認められた(腐食防止性に乏しい)。
【0121】
[比誘電率測定]
各例に係る粘着剤層(基材レス両面粘着シート)を銅箔と電極の間に挟み、以下の装置により、周波数300kHzにおける比誘電率を測定した。測定は3サンプルを作製し、それらの3サンプルの測定値の平均を誘電率とした。なお、粘着剤層の周波数300kHzでの比誘電率は、JIS K6911に準じて、下記条件で測定した。結果を表1に示した。
測定方法:容量法(装置:Agilent Technologies E4980A Precision LCR Meter使用)
電極構成:12.1mmΦ、0.5mm厚みのアルミニウム板
対向電極:3oz 銅板
測定環境:23℃、55%RH
【0122】
【表1】
【0123】
表1に示されるように、モノマー成分におけるC
5以上のアルキル(メタ)アクリレートの含有量の多い例1〜3の粘着シートは、せん断衝撃耐性が高く、金属腐食防性に優れ、かつ3以下の比誘電率を示すものであった。一方、C
1−4アルキル(メタ)アクリレートを主成分とする例4の粘着シートの比誘電率は3以上であり、カルボキシ基含有モノマーの使用量がより多い例5では比誘電率がさらに上昇した。NVPやHEAを多く用いた例6の粘着シートも比誘電率が3以上であった。
【0124】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を
限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々
に変形、変更したものが含まれる。