特許第6872871号(P6872871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6872871往復動ピストン内燃機関のためのガス供給システム及びシリンダ・ライナー、往復動ピストン内燃機関、並びに往復動ピストン内燃機関の運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872871
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】往復動ピストン内燃機関のためのガス供給システム及びシリンダ・ライナー、往復動ピストン内燃機関、並びに往復動ピストン内燃機関の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20210510BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20210510BHJP
   F02D 19/08 20060101ALI20210510BHJP
   F02M 57/02 20060101ALI20210510BHJP
   F02M 61/04 20060101ALI20210510BHJP
   F02M 61/14 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   F02M21/02 301R
   F02D19/02 E
   F02D19/08 C
   F02M21/02 S
   F02M57/02 330E
   F02M61/04 G
   F02M61/04 H
   F02M61/14 310A
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-175341(P2016-175341)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-61927(P2017-61927A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】15186519.3
(32)【優先日】2015年9月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515111358
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルセル オットー
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ヘンセル
(72)【発明者】
【氏名】インゲマル ニールンド
【審査官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−509997(JP,A)
【文献】 特開2001−132550(JP,A)
【文献】 特表2003−530512(JP,A)
【文献】 特開2006−057564(JP,A)
【文献】 特開2006−144774(JP,A)
【文献】 特表2006−527346(JP,A)
【文献】 特開2010−276004(JP,A)
【文献】 特開2013−040579(JP,A)
【文献】 特開2014−005818(JP,A)
【文献】 特開2015−068338(JP,A)
【文献】 特開2015−081600(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034796(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0025892(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1770257(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/02
F02D 19/08
F02M 21/02
F02M 57/02
F02M 61/04
F02M 61/14
F02M 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動ピストン内燃機関のためのガス供給システムであって、
前記ガス供給システムは、ガス入口ノズル(3)を有するガス入口弁(2)と、シリンダ・ライナー(41)とを有し、且つ前記往復動ピストン内燃機関のシリンダ(4)のところに配置されることができるように構成され、それにより、燃料として利用可能にされた燃料ガス(5)が、前記ガス入口ノズル(3)によって、前記ガス供給システムの取付状態において前記シリンダ(4)の燃焼空間(42)に供給されることができ、
前記ガス入口弁(2)は、弁ハウジング(21)内に配置された圧力空間(22)を有し、該圧力空間内で、前記燃料ガス(5)が、ガス供給部(23)を介して、前記運転状態において貯蔵及び前記ガス入口ノズル(3)への供給のために利用可能にされることができ、
弁軸(61)に配置された弁板(62)を有する弁体(6)が提供され、弁座(63)も提供され、前記弁座(63)は、前記圧力空間(22)から前記ガス入口ノズル(3)への前記燃料ガス(5)の供給が防止されるような封止態様で、前記弁体(6)の閉止状態において前記弁板(62)と協働し、
前記弁板(62)は、前記弁軸(61)に動作可能に接続された弁駆動部(7)によって前記弁座(63)から持ち上げられることができ、それにより前記燃料ガス(5)が、前記弁体(6)の開放状態において、前記圧力空間(22)から前記弁板(62)を越えて前記ガス入口ノズル(3)に供給されることができる
ガス供給システムにおいて、
前記ガス入口ノズル(3)は、前記シリンダ・ライナー(41)の一体構成要素であり、且つ前記シリンダ・ライナー(41)のボアとして構成され、前記ガス入口ノズル(3)のノズル軸(D)が、前記ガス入口弁(2)の弁軸(V)に対して既定の角度(α)で配置され、それにより前記燃料ガス(5)が、前記ガス供給システムの運転及び取付状態において、径方向(R)に対してゼロとは異なる角度で前記シリンダ(4)の前記燃焼空間(42)に噴射されることができることを特徴とする、ガス供給システム。
【請求項2】
前記ガス入口ノズル(3)は、前記燃焼空間側において実質的に円筒状のボア(32)として構成され、前記ボア(32)の軸(D)が前記弁軸(V)との規定の角度(α)をなす、請求項1に記載のガス供給システム。
【請求項3】
前記ガス入口ノズル(3)は、前記燃焼空間(42)から遠い側に先細領域(33)を有し、前記領域は、前記径方向(R)に前記シリンダ・ライナー(41)の外表面(411)へと開いている、請求項2に記載のガス供給システム。
【請求項4】
前記先細領域(33)は、一方の側で、前記ガス入口ノズル(3)の前記円筒状ボアへと移行する内半径(34)を備えて構成される、請求項3に記載のガス供給システム。
【請求項5】
前記燃焼空間(42)内への燃料ガスのフローを監視するため、前記弁体(6)の位置を判定する制御システムが提供される、請求項1から4までのいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項6】
前記制御システムが、経路センサ、電気又は電磁経路センサ、あるいは誘導性、容量性又は光学経路センサである、請求項5に記載のガス供給システム。
【請求項7】
前記制御システムが、信号を伝導する態様で監視ユニットに接続され、前記弁体(6)の位置が、前記監視ユニットによって前記運転状態において検出することができ、それにより、ガス入口ノズル(3)への燃料ガスの供給が、前記往復動ピストン内燃機関のクランク角に依存して、及び/又は前記往復動ピストン内燃機関のガス交換弁の位置に依存して中断され得る、請求項5又は6に記載のガス供給システム。
【請求項8】
前記弁軸(61)の駆動のための前記弁駆動部(7)が、機械式、電気式、空気圧式弁駆動部(7)、又は油圧式弁駆動部(7)である、請求項1から7までのいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項9】
前記弁体(6)を閉止するため、前記弁駆動部(7)に対して作用する、戻しばね(81)を有する回復ユニット(8)が設けられる、請求項1から8までのいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項10】
前記弁軸(61)が、軸ハウジング(9)の案内ボア(91)内で案内される、請求項1から9までのいずれか一項に記載のガス供給システム。
【請求項11】
前記案内ボア(91)は、封止圧(PA)に加圧された作動油(10)に作用されることができ、前記封止圧は、前記圧力空間(22)内の前記燃料ガス(5)の燃焼圧(BG)よりも高く、それにより前記案内ボア(91)内への前記燃料ガス(5)の進入が本質的に防止されることができる、請求項10に記載のガス供給システム。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載のガス供給システム(1)のための、縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関のシリンダ・ライナー。
【請求項13】
前記ガス入口ノズル(3)が、前記往復動ピストン内燃機関のピストンの上死点位置と下死点位置との間の領域で前記シリンダ・ライナー(41)内に設けられ、より具体的には、前記上死点位置と前記下死点位置との間の間隔の20%から80%だけ前記上死点位置から離隔されたシリンダ・ライナー(41)の領域に設けられる、請求項12に記載のシリンダ・ライナー。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか一項に記載のガス供給システム、又は請求項12又は13に記載のシリンダ・ライナーを有する往復動ピストン内燃機関であって、前記燃料ガス(5)の燃焼を行うため、及び代替的に更なる燃料の燃焼、すなわちディーゼル若しくは重燃料油の燃焼を行うための二元燃料機関である、往復動ピストン内燃機関。
【請求項15】
請求項14に記載の往復動ピストン内燃機関を運転する方法において、前記ガス供給システム(1)のエラー機能が検出され、そして前記ガス供給システム(1)に対するガス供給が中断される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれのカテゴリの独立請求項の前提部分による、往復動ピストン内燃機関のためのガス供給部、往復動ピストン内燃機関、及びガス供給部を有するシリンダ、より具体的には縦方向に掃気される2ストローク大型内燃機関のためのガス供給部を有するシリンダ、並びに往復動ピストン内燃機関の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型ディーゼル機関は、船舶用の駆動集合体として、或いは、例えば大型発電機を駆動して電気エネルギーを生成するために固定運転モードでも、しばしば使用される。これに関して、機関は一般に、かなりの期間にわたって連続運転モードで運転され、これは運転上の安全性及び可用性に関する高い要求事項を提示する。このため、保守と保守との間の特に長いインターバル、摩耗が少ないこと、並びに燃料及び運転物質の経済的な運用は、運転者にとって機械の運転に関する重要な基準である。中でも特に、かかる大型ボアの緩速運転ディーゼル機関のピストン運転挙動は、保守と保守との間のインターバルの長さ、可用性、並びに潤滑剤の消費を介した運用コスト、またしたがって経済効率にも直接関連する、決定的な因子である。
【0003】
数年にわたってますます重要になってきている更なる本質的な点は、排気ガスの質、特に排気ガス中の窒素酸化物濃度である。これに関して、対応する排気ガス値に対する法的準備及び境界値がますます厳しくなっており、近い将来、更に一層厳しくなるであろう。排気ガス境界値の維持がますます困難になり、技術的により過酷になり、したがってより高価になり、又は最終的にはそれらの維持が常識的な方法ではもはや不可能でさえあり、それによって対応する機関は作動を中止しなければならず、又は少なくとも労力及びコストに関して要求の厳しい形で改修しなければならないので、特に2ストローク大型ディーゼル機関について考慮すると、このことは、汚染物質を高度に含んだ古典的な重燃料油の燃焼、及びディーゼル油又は他の燃料物質の燃焼もますます問題になるという必然的な結果に繋がる。
【0004】
このため、実際上、いわゆる「二元燃料機関」に対する要求事項が長い期間にわたって存在しており、これは、2つの異なる種類の燃料を使用して機関を運転することができることを意味する。これに関して、多くの場合、一方では、例えば天然ガスの形態、例えば、いわゆる「液化天然ガス」(LNG)、又は自動車ガス若しくは内燃機関の運転に適した異なるガスの形態のガスを燃焼させるべきであり、他方では、ガソリン、ディーゼル、重燃料油などの異なる種類の燃焼物質、又は異なる適切な液体燃焼物質をこの同じ機関で燃焼させることができるべきである。機関は、これに関して、2ストローク機関並びに4ストローク機関であることができ、またこれに関して、小型機関、中型機関、及び大型機関でもあることができ、特に、例えば船舶の駆動集合体として、又は更に発電所で電気エネルギーを生成するのにも使用されるような、縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼルの機関でもあることができる。
【0005】
本出願の枠組みの中で、「大型ディーゼル機関」という用語、又はディーゼル運転モードの他に燃料の自己点火によって特徴付けられる大型機関など類似の用語は、燃料の外部点火によって特徴付けられるオットー運転モード、又はこれら2つの運転モードを混合した形態でも運転することができる。
【0006】
しかしながら、ガスのみを使用して運転することができ、その代わりにディーゼル、重燃料油、又は異なる燃焼物質では運転することができない機関を意味する純ガス機関も、特に許容可能な技術的要求を用いて、ガスの燃焼を通してのみ経済的に実際的な形で維持することができる排気ガスに関する高い基準が要求される場合に、ますます要求されている。かかる純ガス機関は、例えば国際公開第2010147071(A1)号パンフレットで言及されている。更なる最新技術は、例えば独国特許出願公開第102010005814(A1)号明細書で提示されている。
【0007】
機関が二元燃料機関であるか又は燃料ガス機関であるかとは無関係に、かかる機関の信頼性が高く安全な運転のためには、対応する往復動ピストン内燃機関のシリンダの燃焼空間に燃料ガスを導入するプロセスは極めて重要である。
【0008】
燃焼ガスをこの接続で往復動ピストン内燃機関の燃焼空間へと供給するガス供給システムは、特定の程度まで互いに更に影響を及ぼし、それによって異なる部分の機能性を互いに対して精密に調整しなければならない複数の異なる機能を有する。更に、ガス供給システムの精密な設計は、例えば中でも特に、所定の又は好ましい運転状態に、例えば、機関が全負荷運転モード若しくは部分負荷運転モードのどちらで運転されているか、又はこれら2つの運転モード間の変更を頻繁に実行しなければならないか否かに依存する場合がある。或いは、例えばそれが二元燃料機関又は純ガス機関のどちらであるかに依存する。或いは、ガス供給システムの固有の設計はまた、機関の構造サイズ、その出力、機関サイズ、好ましい回転速度範囲、又は当業者には知られている任意の異なる構造の変形例、又は往復動ピストン内燃機関の運転状態に依存することができる。
【0009】
特に2ストローク大型ディーゼル機関に関して、ガス供給システムは、燃焼空間に導入されるガスの量を計量する機能を有するだけでなく、4ストローク機関に関する十分な要求事項である場合が多い。2ストローク大型ディーゼル機関に関して、中でも特に、更なる要求事項は、掃気空気を用いてガス供給システムを介して導入されるガスの、適正で信頼性の高い混合であり、これは決定的なポイントである。
【0010】
更なる必須のポイントは、機関の運転安全性に関する。ガス供給システムが完全に又は部分的に故障した場合、例えば防止のために適切な安全基準がとられていない場合は多すぎるガスの量が機関の燃焼空間に導入される可能性がある。機関の燃焼空間内にあるかかる過度な多量のガスは、例えば排気ガスシステム内又は大型ディーゼル機関の掃気空気システム内での制御不能な爆発に結び付く恐れがあり、これは、対応する構成要素がオーバーヒートするか又は更には損傷するという影響を有する恐れがあるので、最悪のケースでは、機械全体が破壊され、特に公海の船舶に関しては、致命的な結果を有する可能性があり、更には船舶全体が失われる結果を有する可能性がある。
【0011】
しかしながら、かかるエラー機能の結果がそれほど劇的でない場合も、この種のさほど重篤でない誤作動も、それらと関連する望ましくない不利な点を有する恐れがある。
【0012】
例えば、ガス供給システムの欠陥により、機関の燃焼空間に導入されるガスの量がわずかに多すぎるか、又は更には少なすぎる場合、例えば窒素酸化物含量若しくは異なる排気ガス値などの排気ガス値などが、著しい悪影響を受ける可能性がある。
【0013】
しかしながら、或いはガスを用いた、例えば上述のLNGを用いた運転の際、ガス供給システムのエラー機能は、例えば不完全な燃焼に結び付き、またこのようにして、CHの高すぎる値が得られるCH漏れとして当業者には知られている現象に結び付く。対応する機関がガスでのみ運転される場合、これは、ガス運転モードにおいて、燃焼に対するガス供給システムのエラー機能の間に発生する排気ガスが、中でも特に、無視できない量のメタン排出及び/又はホルムアルデヒド排出を含む可能性があることを意味し、これは例えば、シリンダ壁における燃焼プロセス中の燃焼火炎の自発的冷却(「火炎急冷」)に由来する場合があり、或いは開いていない出口弁を有するのと同時に新鮮な空気を用いたシリンダの掃気が行われる段階で放出される場合があり、又は異なる方法で放出される場合がある。
【0014】
類似の効果が、ガスが適切でない方法で、例えば不適切な圧力で、又は噴射ジェットの不適切な幾何学形状で、規定されていない不適切な角度で、燃焼空間内の不適切な位置で導入されたとき、或いは他の任意の不適切な方法で機関の燃焼空間に導入されたときに生じる可能性がある。
【0015】
例えば、かかる運転状態により、排気ガス中のメタン濃度が相応して高いとき、機関の安全な運転モードは同様に、それによって影響を受ける可能性がある。例えば、排気ガスシステム中のメタンが、例えば排気ガス回収チューブ内、及び/又はターボチャージャの前の領域内で、又は更にはターボチャージャ内で発火するという危険が存在する。最悪の場合、排気ガスシステム中のメタンの発火は、メタンガスの発火による有害な影響を受ける、対応する構成要素の損傷に結び付く恐れがある。更に、メタンは、非常に高活性の温室ガスであり、良く知られているように、いわゆる「エネルギー効率設計指標」(EEDI)の計算に対して著しい悪影響を有する場合がある二酸化炭素の少なくとも25倍効果的である。
【0016】
また、頻繁に使用される非常に高感度の酸化触媒は、排気ガスシステムのエラー機能によって相当の影響を受ける可能性があり、そこからもたらされる結果、及び最悪の場合は、短い期間後には回復不能に既に損傷している恐れがあり、そのため、機関の更に安全で信頼性の高い運転は、少なくとも問題となり、最悪の場合は不可能にさえなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2010147071(A1)号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第102010005814(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって本発明の目的は、ガス供給システム、ガス供給システムを有する縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関のシリンダ・ライナー、それぞれ往復動ピストン内燃機関、特に、異なる種類の機関及び/又は異なる運転状態と要件に柔軟な方法で適合される、及び/又は適合させることができるガス供給システムを有する、縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関を利用可能にすることであり、それによってこれらは、潜在的に特定の場合では旧型の機関で改修させることもでき、並びに/或いは既存の機関を柔軟且つ単純に、異なる種類の運転若しくは運転状態に合わせて単純に改修及び/又は変換させることができる。これに関連して、往復動ピストン内燃機関の燃焼空間へのガスの安全な導入が信頼性高く担保されるべきであり、特に、縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関の場合だけでなく、燃焼空間内の掃気空気との理想的な混合を担保すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的を満たす本発明の主題は、独立請求項1、12、14、及び15それぞれの特徴部分によって特徴付けられる。
【0020】
それぞれの従属請求項は、本発明の特に有利な実施例に関する。
【0021】
したがって本発明は、往復動ピストン内燃機関の、特に縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関のガス供給システムに関し、ガス供給システムは、ガス入口ノズルを有するガス入口弁、並びにシリンダ・ライナーを有し、往復動ピストン内燃機関のシリンダにおいて、燃料として利用可能にされた燃焼ガスを、ガス入口ノズルを用いて、ガス供給システムの取付状態で、シリンダの燃焼空間に供給できるように配置することができるような形で構成される。これに関連して、ガス入口弁は、弁ハウジング内に配置された圧力空間を有し、その中で、貯蔵及び運転状態のガス入口ノズルへの供給のために、ガス供給部を介して燃焼ガスを利用可能にすることができる。弁軸に配置された弁板を有する弁体、並びに弁座は圧力空間内に設けられ、圧力空間からガス入口ノズルへの燃焼ガスの供給が防止される弁体の閉止状態におけるかかる封止方法で弁座が弁板と協働し、弁板は、弁軸に動作可能に接続された弁駆動部を用いて弁座から持ち上がられ、それによって燃焼ガスを、弁体の開放状態において、弁板を越えて圧力空間からガス入口ノズルに供給することができる。本発明によれば、ガス入口ノズルはシリンダ・ライナーの一体構成要素であり、シリンダ・ライナーのボアとして構成され、ガス入口ノズルのノズル軸は、燃焼ガスを、ガス供給システムの運転及び取付状態において、径方向に対して及び/又はシリンダの軸方向に対してゼロ以外の角度でシリンダの燃焼空間に噴射できるような形で、ガス入口弁の弁軸に対して既定の角度で配置される。
【0022】
したがってその角度は、ガス入口ノズルのノズル軸とガス入口弁の弁軸との間の角度を補足する角度である噴射角と呼ばれ、このことは、噴射角及びノズル軸と弁軸との間の角度が、互いを補完して180°となることを意味する。好ましくは、噴射角は10°〜80°、特に好ましくは10°〜35°となり、より具体的には噴射角は約22.5°である。
【0023】
本発明によるガス供給システムは、したがって、弁板を有する弁軸を必須要素として有する弁を有し、ガスの所望量が、一般的に油圧制御式の弁を用いて、閉止状態では弁座と封止可能に協働する弁板を介して燃焼空間に導入され、ガスは、場合によってはノズル及び適切なノズル通路を介して燃焼空間に導入される。
【0024】
このように、燃焼物質ガスを往復動ピストン内燃機関の燃焼空間に供給するガス供給システムは、その二部分設計によって、今迄のところ未知の柔軟性を有する本発明によって利用可能にされ、即ち、ガス入口弁及びガス入口ノズルはシリンダ・ライナーのボアとして構成される。ガス入口ノズルがシリンダ・ライナーの一体構成要素であるという事実により、この手段はシリンダ・ライナーのボアとして構成され、ガス入口弁に接続しなければならないことが多い別個のガス入口ノズルの製造を省略することができるので、特に単純な構造がもたらされる。したがって、シリンダ・ライナーの対応するボアによって、ガス入口ノズルを単純な形で製造することができ、例えば、往復動ピストン内燃機関の燃焼空間内における固有の燃焼条件に関する要求事項に応じて製造することができ、それによって、燃焼空間に燃焼ガスを噴射する異なる噴射条件を、単純な方法で実現することができ、それぞれの要求事項に合わせて理想的に調整することができる。
【0025】
更に、本発明のガス入口ノズルのノズル軸は、ガス供給システムの運転及び取付状態において、ゼロ以外の既定可能な噴射角で、燃焼ガスをシリンダの燃焼空間に噴射できるような形で、ガス入口弁の弁軸に対して既定の角度で配置される。したがって、それによってガス入口ノズルの2つの主な機能が同時に説明されるので、これは極めて重要であり、一方で、燃焼空間の条件に適合されたガス入口ノズルを使用することによって、様々なタイプの運転条件に対して正確な計量が可能である。また、他方では、掃気空気及び燃焼ガスの理想的な混合物を得ることができるので、理想的な燃焼が担保され、それによって特に、求められる排気ガス基準を維持することができ、他方では、噴射角の適正な選択、並びに噴射ビーム及び/又は複数の噴射ビームの幾何学形状の適正な選択によって、燃料の消費を最小限に抑えることができる。
【0026】
このことは、特定の形で互いに更に影響し得る複数の異なる機能を、本発明を用いて互いに対して精密に調整することができることを意味する。したがって、例えば、ガス供給システムの固有の設計によって、より具体的には、ガス入口ノズルを形成するボアの適切な設計によって、中でも特に、理想的には、例えば機関が一般的に全負荷運転モード若しくは部分負荷運転モードのどちらで運転されているか、又はこれら2つの運転状態間で頻繁に変更しなければならないか否か、既定の又は好ましい運転状態に焦点を当てることができる。或いは、ガス入口ノズルは、理想的には、例えば二元燃料機関又は純ガス機関のどちらであるかに応じて選択することができる。或いは、ガス供給システムの固有の設計を、また例えば、機関の構造サイズ、その出力、構造サイズ、回転速度の好ましい範囲に関する柔軟性、或いは当業者には知られている往復動ピストン内燃機関の任意の構造の変形例又は運転状態に関する柔軟性を設定することができる。本発明によるガス供給システムのみを使用することによって、例えば、ガス入口ノズルを適切に選択し、相応して構成しなければならないが、ガス入口弁はそのまま維持することができる。
【0027】
特に、2ストローク大型ディーゼル機関に関して、ガス供給システムは、機関の燃焼空間に導入されるガスの量を計量する機能を有するだけでなく、4ストローク機関に関する十分な要求事項である場合が多い。2ストローク大型ディーゼル機関に関して、中でも特に、上述したように、掃気空気を用いてガス供給システムによって導入されるガスの適正で信頼性の高い混合物は、本発明によるガス供給システムによって完全に考慮される更なる要求事項に加えて、決定的なポイントである。
【0028】
更なる指標として、ガス入口ノズルはまた、燃焼ガスと掃気空気との混合を改善するための、及び/又はシリンダへの燃焼ガスの導入を更に最適化するための、本発明による複数のノズル開口部を有することができる。次に、これらはそれぞれ、シリンダ・ライナーの個々のボアとして設けられ、好ましくは個々のボアが組み合わさってシリンダ・ライナーの壁にある共通のボアとなり、その開口部は、シリンダ・ライナーの外側にあるガス入口弁と協働する。
【0029】
また、2つのノズル開口部は、燃焼ガスを、互いに異なる2つの噴射角で燃焼空間に導入することができるような形で、互いに対して相互に異なるように整列されることが可能であり、それにより、例えば燃焼空間内における改善された分布を達成することができる。
【0030】
しかしながら、或いは、別の方法として又は同時に、2つの異なる噴射量及び/又は2つの異なる流速及び/又は2つの異なるビーム形状で、2つのノズル開口部を通して燃焼ガスを燃焼空間に導入することができるような形で、2つのノズル開口部を互いとは異なって構成することができる。これは、例えば、具体的には燃焼空間への開口部における、例えば異なる直径を有する、個々のボアのそれぞれ固有の設計によって実現することができる。
【0031】
好ましい指標は、ここでは、ガス入口ノズルが燃焼側において実質的に円筒状のボアとして構成され、その軸が弁軸(V)に対して既定の確度を含むことから成る。
【0032】
ガス入口ノズルが、径方向でシリンダ・ライナーの外表面に向かって開いている先細領域を、燃焼空間から遠い側に有するのが更に好ましい。径方向で開口部を通して、特にガス入口ノズルがガス入口弁と協働する領域、つまり弁座のすぐ下流側の領域において、燃焼ガスの特に好ましい流量を実現することができる。燃焼ガスのフロー方向から見た、ガス入口ノズルの先細領域(テーパ領域)を通して、燃焼空間への燃焼ガスの可能な限り効率的な導入を実現することができる。
【0033】
先細領域は、ガス入口ノズルの円筒状ボア内へと移行する内半径を有する側に構成されることが、特に好ましい。この方策によって、先細領域から円筒状ボア内への移行を丸形のものとして構成することができるが、特にある側において、径方向から所望の噴射方向への燃焼ガスの特に好ましい偏向を、フロー技術の観点から達成することができる。
【0034】
更なる必須のポイントは、機関の運転安全性に関する。ガス供給システムが完全に又は部分的に故障した場合、例えば、防止のために適切な安全基準がとられていない場合は多すぎるガスの量が機関の燃焼空間に導入される可能性がある。機関の燃焼空間内にあるかかる過度な多量の燃焼ガスは、例えば、排気ガスシステム内又は大型ディーゼル機関の掃気システム内での制御されない爆発に結び付く恐れがあり、これは、対応する構成要素がオーバーヒートするか又は更には損傷することに結び付く恐れがあるので、最悪のケースでは、機械全体が破壊され、特に公海の船舶に関しては、致命的な結果を有する可能性があり、更には船舶全体が失われる結果を有する可能性がある。
【0035】
しかしながら、かかるエラー機能の結果がそれほど劇的でない場合も、この種のさほど重篤でない誤作動も、望ましくない不利な点をもたらす恐れがある。
【0036】
例えば、ガス供給システムそれぞれの欠陥により、機関の燃焼空間に導入されるガスの量が多すぎるか、又は更には少なすぎる場合、例えば窒素酸化物含量若しくは異なる他の排気ガス値などが、著しい悪影響を受ける可能性がある。
【0037】
或いは、しかしながら、ガスを用いた、例えば上述のLNGを用いた運転の際、ガス供給システムのエラー機能は、例えば不完全な燃焼に結び付き、またこのようにして、高すぎる値を有するCH漏れとして当業者には知られている現象に結び付く。対応する機関がガスでのみ運転される場合、これは、ガス運転モードにおいて、燃焼に対するガス供給システムのエラー機能の間に発生する排気ガスが、中でも特に、無視できない量のメタン排出及び/又はホルムアルデヒド排出を含む可能性があることを意味し、これは例えば、シリンダ壁における燃焼プロセス中の燃焼火炎の自発的冷却(「火炎急冷」)に由来する場合があり、或いは閉じていない出口弁を有するのと同時に新鮮な空気を用いたシリンダの掃気が行われる段階で放出される場合があり、又は異なる方法で放出される場合がある。
【0038】
類似の効果が、ガスが適切でない方法で、例えば不適切な圧力で、又は噴射ジェットの不適切な幾何学形状で、望ましくない角度で、望ましくない位置で燃焼空間に、或いは異なる不適切な形で、機関の燃焼空間に導入されたときに生じる可能性がある。
【0039】
かかる運転状態により、例えば、排気ガス中のメタン濃度が相応して高いとき、機関の安全な運転が同様に、それによって影響される可能性がある。例えば、排気ガスシステム中のメタンが、例えば排気ガス回収チューブ内、及び/又はターボチャージャの前の領域内で、又は更にはターボチャージャ内で発火するという危険が存在する。最悪の場合、排気ガスシステム中のメタンの発火は、メタンガスの発火による有害な影響を受ける、対応する構成要素の損傷に結び付く恐れがある。更に、メタンは、非常に効果的な温室ガスであり、既知の方法で、いわゆる「エネルギー効率設計指標」(EEDI)の計算に対して著しい悪影響を有する場合がある二酸化炭素の少なくとも25倍効果的である。
【0040】
また、頻繁に使用される非常に高感度の酸化触媒は、排気ガス供給システムのエラー機能によって相当の影響を受ける可能性があり、そこからもたらされる結果、及び最悪の場合は、短い期間後には回復不能に既に損傷している恐れがあり、そのため、機関の更に安全で信頼性の高い運転は、少なくとも問題となり、最悪の場合には不可能にさえなる。
【0041】
また、これらの部分的に非常に重大な問題を、本発明によって信頼性高く回避することができる。
【0042】
この目的のため、本発明によるガス供給システムは、燃焼空間内への燃焼ガスフローを監視する、弁体の位置を判定する制御システムを有することができ、制御システムは経路センサ、特に電気又は電磁経路センサであり、より具体的には、誘導性、容量性、又は光学経路センサであり、それによって弁体のそれぞれの位置を、特に弁体が開いているか閉じているかを、任意の時点で信頼性高く検出することができる。
【0043】
特に好ましくは、制御システムは、これに関連して、信号通信方式で監視ユニットに接続されるので、弁体の位置を運転状態で監視ユニットによって検出することができ、したがって、往復動ピストン内燃機関のクランク角に依存して、及び/又は往復動ピストン内燃機関のガス交換弁の位置に依存して、ガス入口ノズルへの燃焼ガスの供給を防ぐことができる。このようにして、本発明を通して、ガス供給システムのエラー機能を検出するだけでなく、それよりもむしろ、エラー機能に依存して安全プロトコルを開始することが可能になり、それによって、例えばガス供給システムに対する燃料ガスの供給が自動的に防止され、往復動ピストン内燃機関は好ましくは自動的にスイッチを切られ、特に好ましくは、代替の燃焼物質、例えばディーゼル油若しくは重燃料油などの液体燃料を用いた運転モードに自動的に切り替えられる。
【0044】
ガス入口システムは、これに関連して、好ましくは、弁軸の駆動のための弁駆動部が、機械式、電気式、又は空気圧式弁駆動部、特に油圧式弁駆動部であるような形で構成され、特に好ましくは、特に弁体を閉止する戻しばねの形態の、弁駆動部に対抗して作用する回復ユニットが設けられる。
【0045】
弁軸は、実施のために特に重要な特定の実施例では、シャフトハウジングの案内ボアへと案内される。これに関連して、案内ボアは、燃焼空間内の燃焼ガスのガス圧に対抗して封止するための封止圧で加圧された作動油によって突き当たられることができ、封止圧は、好ましくは圧力空間内の燃焼ガスの燃焼圧よりも高いので、案内ボア内への燃焼ガスの浸透、及び/又は案内ボアを通る燃焼ガスの貫流を実質的に防止可能である。
【0046】
燃焼ガスが、制御不能な方法で弁軸に沿ってガス供給システムの更なる構成要素内へと入らなくなり、特に、弁軸の油圧駆動部内へと入らなくなり、このことは、弁軸で及び/又はそれに沿って生じるガス漏れがなくなること、並びに/或いは十分に制御された少量の技術的に重要でないガス漏れのみが、弁軸で及び/又はそれに沿って許容されることを意味するので、封止圧が圧力空間内の燃焼ガスの燃焼圧よりも高いことが必要である。このため、弁軸は、対応する方法で信頼性高く封鎖されなければならないが、その方法は、現在のシステムに関して、例えば対応する封止リングを用いて試みられ、結局あらゆる点でむしろより不利な点が見出されたものであり、それは、加圧された燃焼ガスに対して、又は封止リングが、例えば運転状態の間に存在する摩擦現象によって早すぎる摩耗を生じた場合にも、封止リングが十分な封止効果を示さず、このようにして最終的に、高価になりすぎ、信頼性が低くなりすぎるためである。
【0047】
また、本発明の変形によって、これらの問題が信頼性高く回避される。
【0048】
本発明は更に、上記に詳細に記載したガス供給システムのための、縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関のシリンダ・ライナーに関する。本発明によるシリンダ・ライナーは、特に、シリンダ・ライナーの壁にあるボアとして構成される一体的な構成要素としてのガス入口ノズルを有するという点で特徴付けられる。
【0049】
ガス入口ノズルは、特に好ましくは、往復動ピストン内燃機関のピストンの上死点位置と下死点位置との間の領域でシリンダ・ライナーに設けられ、より具体的には、上死点位置と下死点位置との間の間隔の20%〜80%、好ましくは45%〜65%、特に好ましくは50%〜60%だけ上死点位置から離隔されたシリンダ・ライナーの領域に配置される。即ち、示されているのは、掃気空気のための燃焼ガスの更に一層理想的な混合を、それによって達成できることだけではない。それによってまた、シリンダ・ライナー内に依然として存在する高温の排気ガスに燃焼ガス噴射され、それによって、最新技術の場合のようにシリンダ・ライナーの上死点位置の近傍で、ガス供給システムが存在するときに起こり得るような、燃焼ガスが早期に発火する可能性を回避することができる。
【0050】
本発明は更に、上述したようなガス供給システムを有する、又は上述したシリンダ・ライナーを有する往復動ピストン内燃機関に関し、往復動ピストン内燃機関は、特に好ましくは、燃焼ガスの燃焼のための、及び代替的に更なる燃料の燃焼、特にディーゼル若しくは重燃料油の燃焼のための二元燃料機関である。
【0051】
異なる実施例では、しかしながら、本発明による往復動ピストン内燃機関は、当然ながら純ガス機関であることもでき、それによって燃焼ガスのみを燃焼させることができ、つまり他の燃料は燃焼されない。
【0052】
特に、本発明はまた、本発明によるガス供給システムを有する往復動ピストン内燃機関を運転する方法に関し、上述したように、ガス供給システムのエラー機能が運転状態において検出され、ガス供給システムに対する燃焼ガス供給が中断され、往復動ピストン内燃機関のスイッチが切られ、好ましくは自動的にスイッチが切られ、特に好ましくは、例えばディーゼル油又は重燃料油などの代替燃料を有する運転モードへと自動的に移行される。
【0053】
本発明について、概略図を参照して以下に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ガス入口弁及びガス入口ノズルを有する本発明によるガス供給システムの特に好ましい実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1の概略断面図は、往復動ピストン内燃機関のシリンダ・ライナー41を参照して異なる構成要素の協働について説明するための、本発明によるガス供給システムの一実施例の原理的アセンブリを示し、内燃機関は、これに関して、縦方向の掃気を有する2ストローク大型ディーゼル機関として例示的に構成されており、当業者であれば縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関の原理的アセンブリを十分に分かっているので、明瞭にするため、この点においては更に詳細に示されない。以下、本発明によるガス供給システムの実施例は、これに関して、参照番号1で全体的に言及される。
【0056】
図1による本発明のガス供給システム1の特定の実施例は、縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関に設置され、ガス入口ノズル3を有するガス入口弁2、並びにシリンダ・ライナー41を有し、燃料として利用可能にされた燃焼ガス5を、ガス入口ノズル3を用いて、取付状態のガス供給システム1の詳細に図示されていないシリンダ4の燃焼空間42に供給できるようにして、往復動ピストン内燃機関のシリンダ4に配置することができるような形で構成される。これに関連して、ガス入口弁2は、弁ハウジング21内に配置された圧力空間22を有し、その中で、燃焼ガス5を、ガス供給部23を介して、貯蔵し運転状態においてガス・ノズル3に供給するのに利用可能にすることができる。
【0057】
弁軸61に配置された弁板62を有する弁体6、並びに弁座63は、圧力空間22自体の中に、又は圧力空間22の領域内にそれぞれ提供され、弁座63は、圧力空間22からガス入口ノズル3内への燃焼ガス5の供給が防止されるようにして、弁体6の閉止状態において、弁板2を用いて封止する形で協働する。
【0058】
この目的で、弁軸61に動作可能に接続された弁駆動部7を用いて、弁板62を弁座63から持ち上げることができ、それによって、弁体6の開放状態において、燃焼ガス5を圧力空間22から、弁板62を越えてガス入口ノズル3に供給することができる。
【0059】
本発明によれば、ガス入口ノズル3は、シリンダ・ライナー41の一体構成要素であり、シリンダ・ライナー41のボアとして構成される。燃焼空間側では、ガス入口ノズル3は実質的に円筒状のボア32として構成され、円筒状ボア32の軸はガス入口ノズル3のノズル軸(axis)Dである。ノズル軸Dは、ガス供給システム1の運転及び取付状態において、径方向Aに関して、及び/又はシリンダ4の軸方向Aに関して、ゼロ以外の既定可能な角度βで、燃焼ガス5をシリンダ4の燃焼空間42に噴射することができるような形で、ガス入口弁2の弁軸Vに対して既定の角度αで配置される。軸方向Aは、シリンダ4の長手方向軸によって決定される。
【0060】
径方向に関しては、噴射角βは、これに関連して、ガス入口ノズル3のノズル軸Dとガス入口弁2の弁軸Vとの間の角度αを補足する角度である角度を指し、このことは、ノズル軸Dと弁軸Vとの間の180°に対して、噴射角β及び角度αが互いを補足することを意味し、このように、β=180°−αは真である。好ましくは、噴射角βは、10°〜80°、特に好ましくは10°〜35°になり、より具体的には噴射角は約22.5°である。
【0061】
軸方向に関して、角度βは好ましくは90°であり、これは、燃焼ガス5が好ましくは軸方向Aに対して垂直に噴射されることを意味し、これは、図1の図面の、又はピストンの表面に平行な面内をする。
【0062】
ガス入口ノズル3は、燃焼空間42から離れた側に先細領域33を有し、領域33は燃焼ガス5のフロー方向で先細になっている。先細領域33は、径方向Rで、シリンダ・ライナー41の外表面411へと開いている。このことは、シリンダ・ライナー41の外表面411にある先細領域33の開口部の表面が、弁軸Vに対して垂直であることを意味する。ガス入口ノズル3を通る燃焼ガス5のできるだけ理想的な貫流を可能にするために、先細領域33は、一方の側に、ガス入口ノズルの円筒状のボア32内へと移行する内半径34を有して構成される。この内半径は、径方向Rからノズル軸Dの方向へと、燃焼ガス5をできるだけ理想的に偏向させる目的に役立つ。
【0063】
比較的単純なガス入口ノズル3は、これに関連して、1つのノズル開口部31のみを有する。異なる特定の実施例では、しかしながら、ガス入口ノズル3は、複数のノズル開口部31を有することもでき、その場合、各ノズル開口部はそれぞれ個々のボアとして構成される。好ましくは、これらの個々のボアは、シリンダ・ライナー41の壁内で組み合わさって共通のボアとなり、それが次にガス入口弁2と協働する。
【0064】
例えば、2つのノズル開口部31を、燃焼ガス5を2つの異なる噴射角で燃焼空間42に導入することができるような形で、互いに対して異なるように整列させることができ、並びに/或いは、2つのノズル開口部31はまた、燃焼ガス5を、2つのノズル開口部31を通して2つの異なる噴射量で、及び/又は2つの異なる流速及び/又は2つの異なるビーム形状で、燃焼空間42に導入することができるような形で、互いに異なるように構成することができる。
【0065】
ガス入口弁2は、弁座63が外表面411に入るガス入口ノズル3の開口部を覆うようにして、シリンダ・ライナー41の外表面411に取り付けられる。結果として、燃焼ガス5は、弁体6の開放状態では、圧力空間22からガス入口ノズル3を通して燃焼空間42内へと流れることができる。外表面411におけるガス入口弁2の組立ては、例えば、ねじを用いて行うことができる。これらは図1には図示されていない。
【0066】
更に、実際には、図1の明示的に示されていない制御システムは、燃焼空間42に入る燃焼ガス流を監視するため、及び弁体6の位置を判定するために提供することができ、前記制御システムは、特に好ましくは経路センサであり、特に電気又は電磁経路センサ、より具体的には誘導性、容量性、又は光学経路センサである。制御システムは、信号を伝導する形で監視ユニットに接続され、それにより、監視ユニットによって弁体6の位置を運転状態で検出することができ、往復動ピストン内燃機関のクランク角に依存して、及び/又は往復動ピストン燃焼機関のガス交換弁の位置に依存して、ガス・ノズル3への燃焼ガスの供給を自動的に防止することができる。
【0067】
弁軸61を駆動する弁駆動部7は、図1による実施例に関する油圧式弁駆動部7であり、その機能及び運転原理は一般に当業者には知られている。弁体6を閉止するため、弁駆動部7に対抗して作用する、戻しばね81の形態の回復ユニット8が設けられる。
【0068】
弁軸61は、軸ハウジング9の案内ボア91内で案内され、案内ボア91は、封止圧PAで加圧された作動油10に突き当たる(be impinged)ことができ、前記封止圧PAは、この実例では燃焼空間22内の燃焼ガス5の燃焼圧BGよりも高いので、案内ボア91内への燃焼ガス5の浸透を実質的に防止することができる。
【0069】
本発明によるガス供給システムは、好ましくは、低圧ガスシステムとして構成される。これは、燃焼ガス5がシリンダ4の燃焼空間42に噴射される噴射圧が、最大100バール(10MPa)になることを意味する。好ましくは、噴射圧は最大50バール(5MPa)、特に好ましくは最大20バール(2MPa)である。内燃機関の運転中、ガス圧、つまり燃焼ガス5がシリンダ4に噴射される圧力は、一般に一定ではなく、それよりもむしろ、例えば、燃焼機関の負荷及び回転速度に応じて変動することができる。
【0070】
本発明によるガス供給システム1、又は本発明によるシリンダ・ライナー41に関して、燃焼空間42への燃焼ガス5の噴射のため、好ましい実施例では、できるだけ低いガス圧が追求される。したがって、燃焼ガス5の最大噴射圧は、例えばわずか15バール又はそれ以下になり得る。
【0071】
できるだけ低い燃焼ガス5の噴射圧は、当然ながら、安全面に関して大きな利点を有する。更に、ガス供給システム全体を、特にシステムの封止に関して、例えば弁座63における付勢力である、かかる比較的低い運転圧に向けて設計しなければならないだけでなく、弁駆動部7の設計、並びにガス案内ライン及び/又はそれらの接続部の圧力負荷も、特に有利である。また、高圧システムの場合のように、例えば、経済面及びコスト面に関してやはり有利である350バール以上の運転圧まで、燃焼ガス5を圧縮するのに用いなければならない任意の特定の高圧圧縮機を要さない。
【0072】
精密には、燃焼ガス5のできるだけ低い噴射圧に関して、ガス入口弁2及び/又はガス入口ノズル3がシリンダ壁41内及び/又はシリンダ・ライナー内に配置され、ピストン移動の上死点位置からできるだけ広い間隔を有することが特に好ましい。これにより、つまり、燃焼ガス5をそれに対抗して噴射しなければならないシリンダ内の圧縮圧が、比較的低いままであることを達成することができる。下方への移動の際にピストンが掃気空気スリットを解放すると、縦方向に掃気される2ストローク大型ディーゼル機関に関して、掃気空気がシリンダに流れ込み始める。これは、ピストンが、後に続く上方への移動の際に、掃気空気スリットを完全に閉止するまで長期で行われる。そのときになってようやく、一般には掃気空気スリットの閉止後に、ガス交換弁(この実例では、出口弁)が閉止され、完全に閉止され、ピストンの上方への移動により、例えばピストンがその上死点位置にあるときの最大値に達するまで、シリンダ内の圧縮圧が増加し始める。
【0073】
このため燃焼ガス噴射は、好ましくは、特に高い圧縮圧がシリンダ内に存在しないときに行われ、特に好ましくは、出口弁が閉止される前に燃焼ガス5の噴射を開始する。
【0074】
このため、シリンダ壁41に設けられたガス入口ノズル3が、軸方向Aに関して上死点位置からできるだけ広い間隔を有する。他方では、ガス入口ノズル3をどこに配置できるかに関して、構造上の制限がやはり存在する。実際には、ガス供給システム1のガス入口ノズル3が、上死点位置からの間隔が、特に好ましくは上部及び下死点位置間の間隔の50%〜60%になるような高さで(軸方向Aに関して)配置されると、非常に良好な折衷案であることが示されてきた。
【0075】
掃気空気スリットの位置に関して、ガス入口ノズル3が、掃気空気スリットの上面(燃焼機関の使用の共通した運転位置に関する「上面」)からの間隔が、上死点位置から掃気空気スリットの上縁部までの間隔の、好ましくは50%未満、特に好ましくは30%〜40%であるような高さで(軸方向Aに関して)配置されると特に有利であることが見出されている。
【0076】
ガス入口ノズル3の好ましい配置はまた、燃焼ガス5の低い噴射圧が可能になること以外に、軸方向Aに関して、ガス入口ノズル3とガス交換弁及び/又は出口弁との間に大きい間隔が存在するという更なる利点を有する。これにより、他方では、噴射された燃焼ガス5の必須構成成分が、非燃焼状態では、出口弁を通して漏出する可能性を回避することができ、他方で、出口弁を閉止するのにより長い時間かかる。
【0077】
更に、ガス入口ノズル3の好ましい配置は、できるだけ均質な空気と燃焼ガスの混合物に関してやはり有利である。ピストンの圧縮工程に関して早い燃焼ガス5の噴射を通して、掃気空気スリット及び燃焼ガスは、混合物の燃焼が始まる前に密接に混合するのに十分な時間を有する。このことは、燃焼空間42内におけるできるだけ理想的な燃焼プロセスに、特にまた、燃焼空間内における汚染物質の低燃焼プロセスに結び付く。
【0078】
掃気空気及び燃焼ガス5の理想的な完全混合に関して、上述したように、燃焼ガス5が、径方向に関して、ゼロとは異なる噴射角βでシリンダ4の燃焼空間42に噴射されるのも有利である。これにより、一般的にシリンダ4内及び/又は燃焼空間42内でうねり(swell)が取り込まれた、掃気空気との特に徹底的な完全混合が、ピストンの圧縮行程で生じる。
【0079】
当然ながら、2つ以上のかかるガス供給システム1、及び/又は2つ以上のガス入口ノズル3も、シリンダにおいてガス入口弁2を備えることができる。
【0080】
本明細書に記載した本発明の実施例は、やはり用途に応じて任意の適切な方法で互いに組み合わせることができ、特に、図面に示される特定の実施例は、単なる例示として理解されるべきであることが理解される。当業者であれば、本発明の記載した実施例の有利な更なる発展例をすぐに認識し、かかる単純な更なる発展例も本発明自体によって当然網羅されることを理解する。
【符号の説明】
【0081】
1 ガス供給システム
2 ガス入口弁
3 ガス入口ノズル
4 シリンダ
5 燃焼ガス
6 弁体
7 弁駆動部
8 回復ユニット
9 軸ハウジング
10 作動油
21 弁ハウジング
22 圧力空間
23 ガス供給部
31 ノズル開口部
32 ボア
33 先細領域
34 内半径
41 シリンダ・ライナー
42 燃焼空間
61 弁軸
62 弁板
63 弁座
81 戻しばね
91 案内ボア
411 外表面
A 軸方向
BG 燃焼圧
D ノズル軸
PA 封止圧
R 径方向
V 弁軸
α 角度
β 噴射角
図1