(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記降り地点決定部による前記降り地点の決定、及び前記乗り地点決定部による前記乗り地点の決定が、選択された降り地点条件及び乗り地点条件に基づいて自動的に行われる請求項1に記載の走行経路生成装置。
【背景技術】
【0002】
トラクタによる耕耘作業やコンバインによる刈取り収穫作業などを、自動走行によって行うことが提案されている。圃場の形状はそれぞれ異なっており、自動走行を行うためには、圃場の外形に関連づけられた走行経路を生成する必要がある。
【0003】
特許文献1には、圃場における耕耘作業を自動走行によって行うトラクタが開示されている。この耕耘作業は、圃場周辺領域を周回作業する回り作業と、圃場周辺領域(枕地とも称せられる)で180°旋回を行いながら圃場の中央領域(圃場周辺領域の内側領域)の直進作業を繰り返す往復直進作業とに分けて行われる。その際、往復直進作業の開始点から終了点に至る折り返し行程数、及び回り作業の開始点から終了点に至る周回数が、作業車両の諸元を含む作業条件に基づいて決定される。往復直進作業を先に行い、その後に回り作業を行うこと、及びこの回り作業の開始点を圃場の出入口に最も近い角部近傍とすることも提案されている。
【0004】
特許文献2による圃場作業車は、圃場情報格納部から読み出された圃場の地形データを基本条件として、自動走行のための走行経路を算出する経路算出部を備えている。この経路算出部は、地形データから圃場の外形を求め、設定された走行開始地点から始まって走行終了地点で終わる走行経路を算出する。その際、圃場には、その畦や農道から圃場に出入りするための場所が決められている場合が少なくないので、特許文献2では、走行開始地点が圃場の入口位置によって規定され、走行終了地点が圃場の出口位置によって規定されることが提案されている。経路算出部により走行経路が算出されると、GPSモジュールから得られる測位データ(緯度経度データ)に基づいて自車位置を求め、当該走行経路上を走行機体が正確に走行するように、運転支援ユニットがこの圃場作業車の運転を支援する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、圃場作業車が圃場に出入りするための出入口が圃場毎に決まっている。一般的に、圃場は周辺の農道や畦から低くなっており、出入口の走行面は傾斜しており、その幅も狭い。そのような出入口を通過するために高度な操舵が必要となる。したがって、そのような出入口を圃場作業車が通過する際には、自動走行は困難であり、手動走行に頼ることになる。このため、出入口を出発点とし、出入口を終点とする、圃場を網羅する走行経路を生成しても、出入口と、圃場作業車が自動走行で容易に走行できる地点との間の区間は、運転者が圃場作業車に乗り込んで手動走行することになる。つまり、圃場作業車は手動走行で出入口を通過して圃場に入り、自動走行が開始する地点で運転者は圃場作業車を降りて徒歩で畦に戻る。さらに、自動走行が容易な走行経路部分の自動走行が終了すると、運転者は圃場作業車まで徒歩で向かい、圃場作業車に乗り込んで、手動走行で出入口を通り抜けて圃場作業車を圃場の外に出す。特許文献1や特許文献2からも明らかなように、従来の技術では、このような手動運転と自動運転との切り替わりは考慮されておらず、ましてやそのような切り替わりの際に生じる運転者の圃場内の歩行は、全く考慮されていなかった。運転者が待機する場所から遠く離れた位置で、手動運転と自動運転との切り替わりが行われると、運転者は、圃場内を長く歩行しなければならない不都合が生じる。
【0007】
本発明の課題は、手動運転と自動運転との切り替わり時に必要となる運転者の圃場内の歩行を考慮した、走行経路生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による、圃場作業車の自動走行のための走行経路を生成する走行経路生成装置は、圃場の外形データ及び出入口を含む圃場データを入力する圃場データ入力部と、前記圃場を網羅する
前記走行経路を生成する走行経路生成部と、前記走行経路において前記圃場作業車から運転者が降りる降り地点を決定する降り地点決定部と、前記走行経路において前記圃場作業車に運転者が乗り込む乗り地点を決定する乗り地点決定部と、前記走行経路における前記降り地点から前記乗り地点までの間の走行経路部分を自動走行用走行経路と規定するとともに、前記走行経路における前記出入口と前記降り地点との間及び前記乗り地点と前記出入口との間の走行経路部分を手動走行用走行経路と規定する走行経路区分け部とを備え、
前記走行経路生成部には、周回経路決定部と基準直線決定部と内側経路決定部と進入・退出経路決定部とが含まれており、
前記周回経路決定部は、前記圃場の外周領域を周回走行するための周回走行経路を決定し、
前記内側経路決定部は、直進経路と当該直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる、前記外周領域の内側に位置する中央領域を走行するための内側走行経路を決定し、
前記進入・退出経路決定部は、農道から前記出入口の通過方向に沿って延びて前記圃場内で前記内側走行経路と接続する進入経路と、前記周回走行経路に接続して前記圃場から前記出入口の前記通過方向に沿って延びて農道に抜ける退出経路とを決定し、
前記走行経路生成部は、前記進入経路、前記内側走行経路、前記周回走行経路、前記退出経路を順次つなぐことにより、前記走行経路を生成
し、
前記降り地点が前記出入口のスロープの延長線上である前記進入経路における前記出入口を過ぎた付近で畦に近接するように決定され、前記乗り地点が前記出入口の前記スロープの延長線上である前記退出経路における前記出入口の手前で前記畔に近接するように決定され、かつ、前記降り地点及び前記乗り地点における前記圃場作業車の乗降口が前記畦に向き合うように決定される。
【0009】
この構成によれば、出入口を考慮して圃場を網羅するように生成された走行経路において、運転者が圃場作業車から降りる降り位置及び運転者が圃場作業車に乗り込む乗り位置が適切に決定され、これに基づいて、手動走行用走行経路と自動運転用走行経路とが規定される。このため、運転者の圃場作業車に対する乗り降りが行われる手動運転と自動運転との移行場所は、適切な位置となり、運転者の圃場内での不適切な歩行が回避される。さらに、先に決定された周回走行経路の内側に位置する内側走行経路が、基準直線に基づいて決定され、周回走行経路の走行方向は、出入口の通過方向に基づいて、作業車が周回走行経路からスムーズに出入口を通り抜けて圃場外に出るように、決定することができる。これにより、作業済みの地面を荒らしてしまうような作業車の出入口付近での大きな操舵角による作業車の旋回が回避される。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記降り地点決定部による降り地点の決定、及び前記乗り地点決定部による乗り地点の決定が、ユーザの操作入力に基づいて行われる。この構成では、圃場の特性や出入口の形状や圃場作業車の仕様に応じて、運転者が所望する位置で、運転者の圃場作業車に対する乗り降りが行われる。
【0011】
また、種々の条件を考慮して、最適な位置で、手動走行用走行経路と自動運転用走行経路が自動的に区分けされ、当該位置で運転者の圃場作業車に対する乗り降りが行われることも、好適である。これにより、運転者の不注意によって、不適切な位置に、降り地点と乗り地点とが決まってしまうことが回避される。この目的のため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記降り地点決定部による前記降り地点の決定、及び前記乗り地点決定部による前記乗り地点の決定が、選択された降り地点条件及び乗り地点条件に基づいて自動的に行われる。その際に用いられる好ましい乗り地点条件と降り地点条件として、前記出入口のスロープの延長線上に近接すること、前記出入口の付近の畦に近接すること、及び前記圃場作業車の乗降口が畦に向き合うことなどが挙げられる。このような条件を満たすことで、圃場作業車から畦からへの徒歩、及び畦から圃場作業車への徒歩が、運転者や圃場にとって適切なものとなる。
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を用いて、本発明による走行経路生成装置の実施形態の1つを説明する。この実施形態では、圃場作業車は、車体1に作業装置30を装備したトラクタであり、圃場を走行経路に沿って作業走行する。
図1には、圃場の出入口の外に停車したトラクタが、手動走行で出入口を通過して圃場内に入り、自動走行に切り替えて、圃場の大部分を作業走行し、最後に再び手動走行に切り替えて、自動走行で困難なコーナ領域を手動走行し、出入口を通過して圃場外に抜け出す走行経路の例が示されている。
図1の例では、手動運転で、農道から出入口を通過し、出入口近くの畦際に設定された降り地点(
図1においてOPで示されている)で停車し、運転者がトラクタを降りる。この降り地点からトラクタは自動走行に切り替えられ、設定された走行経路に沿って、作業走行を開始する。最外周の畦に隣接する領域だけを残す走行経路の位置に乗り地点(
図1においてIPで示されている)が設定されており、この乗り地点でトラクタは停車し、自動走行から手動走行に切り替えられる。この乗り地点は、畦際に設定されているので、畦から運転者はトラクタに乗り込む。最外周の畦に隣接する領域は、手動走行で作業され、最終的には出入口を通り抜けて農道に入る。もちろん、最外周の畦に隣接する領域も、自動走行で作業し、出入口を通り抜ける経路だけを手動走行で走行するようにしてもよい。しかしながら、圃場の出入口は幅の狭いスロープになっており、自動走行が困難であるため、手動走行が用いられる。
【0015】
図1に例示された走行経路は、圃場作業では良く用いられている走行経路であり、実質的には、直進経路と各直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる内側走行経路、圃場の外周領域を周回する周回走行経路、農道から出入口を通過して圃場に進入する進入経路、圃場から出入口を通過して農道に抜ける退出経路から構成される。つまり、圃場は、外周領域と、外周領域の内側に位置する中央領域とに区分けされ、中央領域には内側走行経路が設定され、外周領域には周回走行経路が設定される。外周領域は、Uターン経路に必要なスペースを確保するための領域であり、その幅は、作業車の作業幅と最小旋回半径とに基づいて決定される。内側走行経路における直進経路の間隔は作業車の作業幅、詳しくはオーバーラップを考慮した作業幅となる。なお、
図1においては、直進経路は記号SL、Uターン経路は記号TL、内側走行経路は記号IL、周回走行経路は記号CL、進入経路は記号ML1、退出経路は記号ML2で示されている。直進経路とUターン経路とからなる内側走行経路は、自動走行に適した走行経路であり、実際の圃場では、この内側走行経路が圃場を網羅する走行経路の大部分となる。
【0016】
図2に示されているように、このトラクタは、前輪11と後輪12とによって支持された車体1の中央部に運転室20が設けられている。車体1の後部には油圧式の昇降機構31を介してロータリ耕耘装置である作業装置30が装備されている。前輪11は操向輪として機能し、その操舵角を変更することでトラクタの走行方向が変更される。前輪11の操舵角は操舵機構13の動作によって変更される。操舵機構13には自動操舵のための操舵モータ14が含まれている。手動走行の際には、前輪11の操舵は運転室20に配置されているステアリングホイール22の操作によって行われる。運転室20には、ユーザによる指令を受け付けるとともにユーザに情報を提供する汎用端末4が装備されている。トラクタのキャビン21には、衛星測位モジュール80が設けられている。衛星測位モジュール80の構成要素として、GNSS(global navigation satellite system)信号(GPS信号を含む)を受信するための衛星用アンテナがキャビン21の天井領域に取り付けられている。なお、この衛星測位モジュール80には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、衛星測位モジュール80とは別の場所に設けてもよい。
【0017】
図3には、このトラクタに構築されている制御系が示されている。この実施形態の制御系は、グラフィカルユーザインターフェースを備えた汎用端末4である第1制御ユニットと、トラクタの車体1や作業装置30の制御を行う制御ユニット5と、トラクタの走行開始と走行停止とを外部から無線で制御するためのリモコン84とを備えている。本発明による走行経路生成装置は経路生成モジュール6としてモジュール化され、汎用端末4に組み込まれている。
【0018】
汎用端末4は、経路生成モジュール6以外に、通信制御部40やタッチパネル60など、一般的なコンピュータシステムの諸機能を備えている。汎用端末4は、車載LAN、無線通信、有線通信などによって、制御ユニット5とデータ交換可能に接続されている。さらに、汎用端末4は、遠隔地の管理センタKSに構築された管理コンピュータ100とも、無線回線やインターネットを通じて、データ交換可能である。また、汎用端末4をタブレットコンピュータや携帯電話などで構成し、トラクタの制御系とデータ交換可能に接続すれば、汎用端末4をトラクタの外に持ち出して、使用することも可能である。
【0019】
この実施形態では、圃場の地図上の位置や圃場を取り巻く農道等の配置などを含む圃場情報が、管理コンピュータ100の圃場情報格納部101に格納されており、この圃場情報は、作業すべき圃場を見つけ出すために必要となる。管理コンピュータ100は、指定された圃場での作業内容を記述した作業計画書を管理している作業計画管理部102も備えている。汎用端末4は、管理コンピュータ100にアクセスし、圃場情報格納部101から圃場情報を、そして作業計画管理部102から作業計画書をダウンロードすることができる。あるいは、汎用端末4は、USBメモリなどの記録媒体を通じて圃場情報や作業計画書を入力することも可能である。
【0020】
経路生成モジュール6は、走行経路を生成する機能部として、圃場データ入力部61、走行経路生成部62、降り地点決定部63、乗り地点決定部64、走行経路区分け部65を備えている。走行経路生成部62は、基本的な走行経路を生成するため、周回経路決定部621、基準直線決定部622、内側経路決定部623、進入・退出経路決定部624を備えている。経路生成モジュール6の各機能部の基本的な役割を、
図4に示されている走行経路生成処理の流れ図を用いて説明する。
【0021】
圃場データ入力部61は、作業対象となる圃場の外形とを示す圃場外形データと当該圃場の出入口の位置や形状を示す出入口位置データを入力し、ワーキングメモリエリアに展開する。周回経路決定部621は、圃場の外周領域を周回走行するための周回走行経路を決定する。トラクタの作業幅(正確にはオーバーラップ幅を考慮した作業幅)と適正旋回半径とに基づいて、Uターンに必要な距離を算出し、その距離が確保できる作業幅の整数倍の値を幅とする周回領域が周回走行経路のために割り与えられる外周領域として決定される。外周領域が決定されると周回走行経路の周回数が決まる。一般的な耕耘作業では、2周から3周の周回走行経路に相当する領域が外周領域として設定される。
図1に示しているように、外周領域の内側の領域が中央領域となる。
【0022】
基準直線決定部622は、圃場の基準辺に平行に延びるとともに、所定間隔で中央領域を埋め尽くす基準直線を決定する。この基準直線は、中央領域における走行経路のベースとなる。このような基準直線の決定は、内側走行経路を生成するための前処理である。その際、圃場の基準辺として、一般的には、圃場の外形が作り出す近似多角形の最長辺が採用される。
図4の例では、外形が台形(四角形)の最長辺が基準辺として選択されており、この基準辺に平行で、かつ作業幅で中央領域を埋め尽くす基準直線が設定されている。内側経路決定部623は、中央領域内の基準直線を直進経路とし、各直線経路をUターン経路でつないで連続した内側走行経路を生成する。
【0023】
次いで、進入・退出経路決定部624が、農道から出入口を通過して圃場に進入し、内側走行経路と接続する進入経路、及び周回走行経路に接続して圃場から出入口を通過して農道に抜ける退出経路を決定する。耕耘作業の場合、先に内側走行経路の沿った作業走行を行い、次いで周回走行経路に沿った作業走行を行って、そのまま出入口を通って圃場から出るやり方が一般的である。したがって、進入経路は、出入口の通過方向に沿って延びて内側走行経路の端点にスムーズにつながるように決定され、退出経路は、出入口の通過方向に沿って延びて周回走行経路にスムーズにつながるように決定される。走行経路生成部62は、このようにして決定された、進入経路、内側走行経路、周回走行経路、退出経路を順次つなぐことにより、この圃場をトラクタが走行するための基本的な走行経路を生成する。
【0024】
降り地点決定部63は、走行経路生成部62によって生成された基本的な走行経路において、好ましくは進入経路の出入口を通過して外周領域に入った経路部分において、所定の降り地点条件に適合する位置を降り地点として決定する。農道でトラクタに乗り込んだ運転者は、進入経路に沿ってトラクタを外周領域に進入させ、この降り地点でトラクタを停車させ、手動運転から自動運転に切り替えた後、トラクタから降りる。その後、リモコン84を用いて自動運転をスタートさせる。
【0025】
乗り地点決定部64は、走行経路生成部62によって生成された基本的な走行経路において、好ましくは退出経路の出入口から離れた外周領域における経路部分において、所定の乗り地点条件に適合する位置を乗り地点として決定する。この乗り位置でトラクタは停止する。停止したトラクタに乗り込んだ運転者は、退出経路に沿ってトラクタを手動走行し、出入口を通過して、トラクタを農道まで走行させる。
図1の例では、退出経路に一周分の周回走行経路を含まれているが、出入口を通過するだけの短い退出経路を選択してもよい。
【0026】
降り地点及び乗り地点を決定するための降り地点条件及び乗り地点条件は、入口のスロープの延長線上に近接すること、出入口の付近の畦に近接すること、圃場作業車の乗降口が畦に向き合うことなどである。基本的には、圃場作業車から畦からへの徒歩、及び畦から圃場作業車への徒歩が運転者とって容易となるように降り地点条件及び乗り地点条件が設定される。なお、降り地点条件及び乗り地点条件を共通にしてもよいし、降り地点及び乗り地点を共通の地点としてもよい。
【0027】
降り地点決定部63及び乗り地点決定部64は、予め設定された条件とアルゴリズムによって自動的に降り地点及び乗り地点を決定する代わりに、ユーザの操作入力に基づいて決定することも可能である。そのようなユーザの操作入力は、タッチパネル60に表示された進入経路、退出経路、周回走行経路に対して、降り地点及び乗り地点を指定することで、実現する。
【0028】
さらに、走行経路区分け部65は、走行経路における降り地点から乗り地点までの間の走行経路部分を自動走行経路(自動走行用走行経路)と規定するとともに、走行経路における出入口と降り地点との間及び乗り地点と出入口との間の走行経路部分を手動走行経路(手動走行用走行経路)と規定する。つまり、走行経路区分け部65は、降り地点と乗り地点とに基づいて、走行経路生成部62によって生成された基本的な走行経路を、手動走行経路と自動走行経路とに区分けし、最終的な走行経路を生成し、制御ユニット5に与える。
【0029】
図3に示すように、トラクタの制御系の中核要素である制御ユニット5には、入出力インタフェースとして機能する、出力処理部7、入力処理部8、通信処理部70が備えられている。出力処理部7は、トラクタに装備されている、車両走行機器群71、作業装置機器群72、報知デバイス73などと接続している。車両走行機器群71には、操舵モータ14や、図示されていないが変速機構やエンジンユニットなど車両走行のために制御される機器が含まれている。作業装置機器群72には、作業装置30の駆動機構や、作業装置30を昇降させる昇降機構31などが含まれている。報知デバイス73には、ディスプレイやランプやスピーカが含まれている。報知デバイス73は、走行注意事項や自動操舵走行での目標走行経路からの外れなど、注意情報や警告情報を運転者や監視者に報知するために用いられる。通信処理部70は、制御ユニット5で処理されたデータを管理コンピュータ100に送信するとともに、管理コンピュータ100から種々のデータを受信する機能を有する。さらに、通信処理部70は、リモコン84からのリモコン指令を入力する。
【0030】
入力処理部8は、衛星測位モジュール80、走行系検出センサ群81、作業系検出センサ群82、自動/手動切替操作具83などと接続している。走行系検出センサ群81には、エンジン回転数や変速状態などの走行状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群82には、作業装置30の位置や傾きを検出するセンサ、作業負荷などを検出するセンサなどが含まれている。自動/手動切替操作具83は、自動操舵で走行する自動走行モードと手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択するスイッチである。
【0031】
さらに、制御ユニット5には、走行制御部50、作業制御部54、自車位置算出部53、走行経路設定部55、報知部56が備えられている。自車位置算出部53は、衛星測位モジュール80から送られてくる測位データに基づいて、自車位置を算出する。車両走行機器群71を制御する走行制御部50には、このトラクタが自動走行(自動操舵)と手動走行(手動操舵)の両方で走行可能に構成されているため、手動走行制御部51と自動走行制御部52とが含まれている。手動走行制御部51は、運転者による操作に基づいて車両走行機器群71を制御する。自動走行制御部52は、走行経路設定部55で設定された走行経路と自車位置との間の方位ずれ及び位置ずれを算出し、自動操舵指令を生成する。この自動操舵指令は、出力処理部7を介して操舵モータ14に出力される。自動走行制御部52は、リモコン84からの停止指令に基づいてトラクタを停止させるとともに、リモコン84からの開始指令に基づいてトラクタの走行を開始させる。作業制御部54は、作業装置30の動きを制御するために、作業装置機器群72に制御信号を与える。報知部56は、運転者や監視者に必要な情報を報知するための報知信号(表示データや音声データ)を生成して、計器パネルに組み込まれた報知デバイス73に与える。
【0032】
走行経路設定部55は、経路生成モジュール6によって生成された手動走行経路(手動走行用走行経路)と自動走行経路(自動走行用走行経路)を汎用端末4から通信処理部70を介して受け取り、トラクタの目標走行経路として設定する。
【0033】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、1台の圃場作業車で圃場を作業走行するための走行経路の生成が取り扱われていた。最近提案されている、自動走行可能な圃場作業車を複数台用いて、圃場を作業走行する協調走行制御システムは、運転者によって手動走行される親作業車と、この親作業車の管理下で無人で自動走行される1台以上の子作業車とから構成されている。子作業車は、実際の作業走行を実施する前に、圃場外で乗り込んだ運転者による手動走行で、出入口を通過して、圃場内の適当な位置まで移動する。その後、運転者が子作業車から降りて、親作業車に乗り換える。子作業車は無人で、有人の親作業車と協調して自動走行を実施する。子作業車は作業走行の終了後に、適当な位置で停車する。停車した子作業車に再び運転者が乗り込んで、手動走行で出入口を通過して、圃場を抜け出す。このような子作業車における手動走行と自動走行の切り替え時に必要となる運転者の乗り降りは、本発明の走行経路生成装置によって生成される走行経路によって、スムーズに行われることができ、運転者の負担が軽減される。つまり、本発明の走行経路生成装置は、協調走行制御システムにおける子作業車に、良好に適用することができる。
(2)
図3で示された機能ブロック図における各機能部は、主に説明目的で区分けされている。実際には、各機能部は他の機能部と統合または複数の機能部に分けることができる。例えば、経路生成モジュール6を管理コンピュータ100に構築し、管理コンピュータ100で生成された走行経路を作業車の制御ユニット5にダウンロードする構成を採用してもよい。また、経路生成モジュール6を作業車の制御ユニット5内に構築してもよい。
(3)上述した実施形態では、多角形で示された圃場の最長辺を基準辺としていたが、多角形で示された圃場の、ユーザによって指定された辺を基準辺としてもよい。さらには、多角形の辺に基づく仮想辺(例えば、多角形の対辺や隣接する辺を繋ぐ辺など)を基準辺とすることも可能である。
(4)上述した実施形態では、作業走行する走行経路は、実質的に、直進経路と各直進経路同士をつなぐUターン経路とからなる内側走行経路と、圃場の外周領域を周回走行するための周回走行経路とから構成されていたが、これに代えて、圃場を渦巻き状に走行する渦巻き走行経路やその他の走行経路を採用してもよい。
(5)上述した実施形態では、作業車として、ロータリ耕耘機を作業装置30として装備したトラクタを、作業車として取り上げたが、そのようなトラクタ以外にも、例えば、田植機、施肥機、コンバインなどの農作業車にも適用可能である。