特許第6872914号(P6872914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872914
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20210510BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H01L21/30 567
   H05B3/00 310D
   H05B3/00 370
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-14409(P2017-14409)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-125342(P2018-125342A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】門間 徹
(72)【発明者】
【氏名】福本 靖博
(72)【発明者】
【氏名】西 幸治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 茂宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
(72)【発明者】
【氏名】城 憲一郎
【審査官】 冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−286197(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/151651(WO,A1)
【文献】 特開2002−083671(JP,A)
【文献】 特開2003−059626(JP,A)
【文献】 特開平10−307495(JP,A)
【文献】 特開2012−151247(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0269614(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0083843(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0039189(KR,A)
【文献】 特開平11−204413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30、21/302、21/3065、21/46−21/461、21/67−21/683
H05B 1/00−3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱する熱処理装置であって、
その上面に基板を載置する平板形状のホットプレートと、
前記ホットプレートに内蔵され、前記ホットプレートを加熱するメインヒータと、
前記ホットプレートに内蔵され、前記ホットプレートを加熱する補助ヒータと、
前記ホットプレートの温度を測定する温度測定部と、
前記メインヒータおよび前記補助ヒータの出力を制御するヒータ制御部と、
を備え、
前記ヒータ制御部は、前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記メインヒータによる加熱に加えて前記補助ヒータの出力を増加させて前記補助ヒータによる前記ホットプレートの加熱を行わせ
前記ヒータ制御部は、前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記ホットプレートの温度を復帰させるのに必要なヒータの操作出力量を算定し、前記操作出力量に対する前記メインヒータの不足出力量を前記補助ヒータに補填させることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記補助ヒータは、少なくとも前記ホットプレートに載置される基板の下面の全面に対向するように、前記メインヒータの下方に設けられることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の熱処理装置において、
前記メインヒータは複数のゾーンに分割されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
基板を加熱する熱処理方法であって、
その上面に基板を載置する平板形状のホットプレートに内蔵されたメインヒータによって前記ホットプレートを加熱する主加熱工程と、
前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記メインヒータによる加熱に加えて前記ホットプレートに内蔵された補助ヒータによって前記ホットプレートを加熱する補助加熱工程と、
を備え
前記補助加熱工程では、前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記ホットプレートの温度を復帰させるのに必要なヒータの操作出力量を算定し、前記操作出力量に対する前記メインヒータの不足出力量を前記補助ヒータに補填させることを特徴とする熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハーや液晶表示装置用ガラス基板等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)を加熱する熱処理装置および熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、半導体や液晶ディスプレイなどの製品は、上記基板に対して洗浄、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、層間絶縁膜の形成、熱処理、ダイシングなどの一連の諸処理を施すことにより製造されている。これらの諸処理のうち熱処理は、典型的には、所定温度に温調されている平板形状のホットプレート上に基板を載置して加熱する熱処理装置によって行われる。例えば、特許文献1には、ヒータを内蔵したホットプレートに基板を載置して加熱する熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−238690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなホットプレートを用いた熱処理装置においては、何らかの熱外乱が生じたとき、例えば新たな常温の基板がホットプレート上に載置されたときには瞬間的にホットプレートの温度が下がるため、ヒータの出力を増加させてホットプレートの温度を設定温度に戻そうとする。しかし、ホットプレートの温度が大きく低下したときには、温調器の内部演算による操作出力量がヒータの最大出力を超える場合がある。このような場合には、熱量が不足することとなり、ホットプレートが設定温度に復帰するのに長時間を要するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱外乱が生じた場合にホットプレートの温度を迅速に復帰させることができる熱処理装置および熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板を加熱する熱処理装置において、その上面に基板を載置する平板形状のホットプレートと、前記ホットプレートに内蔵され、前記ホットプレートを加熱するメインヒータと、前記ホットプレートに内蔵され、前記ホットプレートを加熱する補助ヒータと、前記ホットプレートの温度を測定する温度測定部と、前記メインヒータおよび前記補助ヒータの出力を制御するヒータ制御部と、を備え、前記ヒータ制御部は、前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記メインヒータによる加熱に加えて前記補助ヒータの出力を増加させて前記補助ヒータによる前記ホットプレートの加熱を行わせ、前記ヒータ制御部は、前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記ホットプレートの温度を復帰させるのに必要なヒータの操作出力量を算定し、前記操作出力量に対する前記メインヒータの不足出力量を前記補助ヒータに補填させることを特徴とする。
【0008】
また、請求項の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記補助ヒータは、少なくとも前記ホットプレートに載置される基板の下面の全面に対向するように、前記メインヒータの下方に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項の発明は、請求項の発明に係る熱処理装置において、前記メインヒータは複数のゾーンに分割されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項の発明は、基板を加熱する熱処理方法において、その上面に基板を載置する平板形状のホットプレートに内蔵されたメインヒータによって前記ホットプレートを加熱する主加熱工程と、前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記メインヒータによる加熱に加えて前記ホットプレートに内蔵された補助ヒータによって前記ホットプレートを加熱する補助加熱工程と、を備え、前記補助加熱工程では、前記ホットプレートに熱外乱が生じたときに、前記ホットプレートの温度を復帰させるのに必要なヒータの操作出力量を算定し、前記操作出力量に対する前記メインヒータの不足出力量を前記補助ヒータに補填させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1から請求項の発明によれば、ホットプレートに熱外乱が生じたときに、メインヒータによる加熱に加えて補助ヒータの出力を増加させて補助ヒータによるホットプレートの加熱を行わせるため、メインヒータに加えて補助ヒータによる加熱も行われることとなり、熱外乱が生じた場合にホットプレートの温度を迅速に復帰させることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、ホットプレートに熱外乱が生じたときに、メインヒータによる加熱に加えてホットプレートに内蔵された補助ヒータによってホットプレートを加熱するため、メインヒータに加えて補助ヒータによる加熱も行われることとなり、熱外乱が生じた場合にホットプレートの温度を迅速に復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す図である。
図2】複数のゾーンに分割されたメインヒータを示す平面図である。
図3】ホットプレートに熱外乱が発生したときのホットプレートの温度変化を示す図である。
図4】ホットプレートに熱外乱が発生したときのメインヒータおよび補助ヒータの出力制御を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す図である。熱処理装置1は、主たる構成要素として、円板形状の基板W(例えば、半導体ウェハー)を載置するホットプレート10、ホットプレート10に内蔵されたメインヒータ20および補助ヒータ30、ホットプレート10の温度を測定する温度センサ40、ホットプレート10の上方を覆うカバー50、並びに、メインヒータ20および補助ヒータ30の出力を制御するヒータ制御部60を備える。
【0019】
ホットプレート10は、高い熱伝導率を有する金属材料(例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等)にて形成された円形の平板形状のプレートである。ホットプレート10の上面には、基板Wの下面に直接接触して当該基板Wを支持するための複数のプロキシミティピン11が立設されている。プロキシミティピン11は、セラミックスにて形成されている。基板Wは、複数のプロキシミティピン11によって支持されることにより、ホットプレート10の上面から微小間隔を隔ててホットプレート10に載置されることとなる。
【0020】
円形のホットプレート10の上面の径は基板Wの径よりも大きい。すなわち、ホットプレート10に載置される円形の基板Wの下面全面はホットプレート10の上面と対向することとなる。なお、熱処理装置1にて処理対象となる円形の基板Wの径は特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。処理対象となる基板Wのサイズに応じて、ホットプレート10の径も当該基板Wの径より大きな適宜の大きさとされる。
【0021】
ホットプレート10の内部には、メインヒータ20および補助ヒータ30の2つの加熱源が内蔵されている。メインヒータ20は、通電によって発熱する面状加熱体である。本実施形態においては、メインヒータ20は複数のゾーンに分割されている。図2は、複数のゾーンに分割されたメインヒータ20を示す平面図である。図2に示すように、ホットプレート10の中心部に円板状の中心メインヒータ20aが設けられ、その周りにメインヒータ20aと同心円上に円環状の中間メインヒータ20bが設けられている。そして、メインヒータ20bの周囲の円環状の領域を周方向に4等分割して4つの周縁メインヒータ20cが設けられている。6つのメインヒータ間には、若干の隙間が形成されている。なお、複数のゾーンに分割された中心メインヒータ20a,中間メインヒータ20b,周縁メインヒータ20cを特に区別する必要のない場合は単にメインヒータ20とする。
【0022】
図1に戻り、メインヒータ20は、主電力供給部21からの電力供給を受けて発熱する。主電力供給部21は、中心メインヒータ20a、中間メインヒータ20bおよび4つの周縁メインヒータ20cと個別に接続されており、ヒータ制御部60の制御下にてそれらに個別に電力供給を行う。すなわち、中心メインヒータ20a、中間メインヒータ20bおよび4つの周縁メインヒータ20cのヒータ出力はヒータ制御部60によって個別に制御されることとなり、それらが異なる温度となるように制御されることもある。
【0023】
一方、補助ヒータ30は、通電によって発熱する1枚の面状加熱体である。すなわち、メインヒータ20は複数のゾーンに分割されているのに対して、補助ヒータ30は分割されていない。補助ヒータ30は、少なくともホットプレート10に載置される基板Wの下面の全面に対向するように、メインヒータ20の下方に設けられている。よって、補助ヒータ30は、複数に分割された中心メインヒータ20a、中間メインヒータ20bおよび4つの周縁メインヒータ20cの全ての下方を覆うように設けられることとなる。
【0024】
補助ヒータ30は、補助電力供給部31に接続されており、補助電力供給部31からの電力供給を受けて発熱する。補助電力供給部31は、ヒータ制御部60による制御に従って補助ヒータ30に電力供給を行う。すなわち、補助ヒータ30のヒータ出力はヒータ制御部60によって制御されている。
【0025】
また、ホットプレート10内部の上面近傍には温度センサ40が設けられている。温度センサ40は、ホットプレート10の上面の温度を測定する。温度センサ40は、中心メインヒータ20a、中間メインヒータ20bおよび4つの周縁メインヒータ20cに対応して複数(本実施形態では6個)設けられていても良い。この場合、中心メインヒータ20a、中間メインヒータ20bおよび4つの周縁メインヒータ20cのそれぞれの上方に個別に温度センサ40が設けられることとなる。温度センサ40によって測定されたホットプレート10の温度はヒータ制御部60に伝達される。
【0026】
また、ホットプレート10の上方にはカバー50が設置されている。カバー50は、下方が開放された筒形状を有している。カバー50は、リフタ51によって処理位置(図1の実線位置)と待機位置(図1の二点鎖線位置)との間で昇降可能とされている。リフタ51によってカバー50が処理位置に下降すると、ホットプレート10の上面とカバー50の内側に密閉空間またはカバー50の下端とホットプレート10の上面との間にわずかな隙間が形成された半密閉空間が形成される。逆にリフタ51がカバー50を待機位置に上昇させると、ホットプレート10の上方が開放される。
【0027】
ヒータ制御部60は、主電力供給部21および補助電力供給部31からそれぞれメインヒータ20および補助ヒータ30に供給する電力を調整してメインヒータ20および補助ヒータ30の出力を制御する。ヒータ制御部60のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、ヒータ制御部60は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。ヒータ制御部60のCPUが所定の処理プログラムを実行することによってメインヒータ20および補助ヒータ30の出力制御が行われる。ヒータ制御部60は、温度センサ40とも接続されており、温度センサ40の測定結果を監視する。
【0028】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、例えば、ホットプレート10に対して基板Wの受け渡しを行うときに使用する昇降可能なリフトピンやカバー50の内側空間に対する処理ガスの供給および排気を行う給排気機構等を備えている。
【0029】
上記構成を有する熱処理装置1にて基板Wの加熱処理を行うときには、まずカバー50が待機位置に上昇した状態でホットプレート10の上面に基板Wが載置される。厳密には、基板Wは複数のプロキシミティピン11によってホットプレート10の上面から微小間隔を隔てて支持される。ホットプレート10は、メインヒータ20によって基板Wの処理に必要とされる処理温度(設定温度)に予め加熱されている。基板Wは、ホットプレート10に載置されることによって、ホットプレート10からの熱伝導により昇温する。基板Wの処理温度は例えば110℃である。また、熱処理装置1による基板Wの加熱処理は、例えば、レジスト膜を成膜するためのベーク処理や露光後ベーク処理である。
【0030】
また、ホットプレート10に基板Wが載置された後、カバー50が処理位置に下降してホットプレート10の上方を覆うことによって、基板Wの加熱効率を高めるとともに、加熱により基板Wの塗布膜等からガスが発生した場合にはそのガスを回収して排出する。所定時間の基板Wの加熱処理が終了した後、カバー50が再び待機位置に上昇し、基板Wがホットプレート10から搬出される。
【0031】
ホットプレート10の温度が安定状態のときには、ホットプレート10はメインヒータ20のみによって加熱されている。すなわち、補助ヒータ30の出力はゼロである。ホットプレート10の温度が安定状態のときとは、ホットプレート10に温度の変動がほとんど生じていない状態である。例えば、ホットプレート10に載置された基板Wが既に処理温度に昇温している場合やホットプレート10に基板Wが載置されていない場合等にはホットプレート10の温度が安定状態となる。
【0032】
ホットプレート10の温度が安定状態のときには、ヒータ制御部60が温度センサ40の温度測定結果に基づいて、ホットプレート10が設定温度を維持するようにメインヒータ20の出力を制御する。メインヒータ20は複数のゾーンに分割されているため、ヒータ制御部60は、中心メインヒータ20a、中間メインヒータ20bおよび4つの周縁メインヒータ20cの出力を個別に制御する。例えば、中間メインヒータ20bに対応する温度センサ40の温度測定結果が設定温度よりも若干低くなった場合には、その中間メインヒータ20bの出力を少し増加する。逆に、例えば、中心メインヒータ20aに対応する温度センサ40の温度測定結果が設定温度よりも若干高くなった場合には、その中心メインヒータ20aの出力を少し減少する。すなわち、ホットプレート10の温度が安定状態のときには、ヒータ制御部60はホットプレート10が設定温度を維持するようにメインヒータ20の出力を微調整するのである。
【0033】
ここで、ホットプレート10に熱外乱が生じたときには、ヒータ制御部60がメインヒータ20に加えて補助ヒータ30の出力を増加させる。図3は、ホットプレート10に熱外乱が発生したときのホットプレート10の温度変化を示す図である。また、図4は、ホットプレート10に熱外乱が発生したときのメインヒータ20および補助ヒータ30の出力制御を示す図である。図4の上段にはメインヒータ20の出力を示し、下段には補助ヒータ30の出力を示す。
【0034】
ホットプレート10に熱外乱が生じたときとは、何らかの要因によってホットプレート10の温度が大きく変動した場合である。例えば、ホットプレート10に新たな常温の基板Wが載置されてホットプレート10の温度が大きく低下した場合やカバー50内に大流量でガス供給がなされてホットプレート10の温度が大きく低下した場合である。なお、設定温度にまで昇温されているホットプレート10に生じる熱外乱は、ほとんどの場合ホットプレート10の温度を急激に下げる方向の外乱である。
【0035】
図3および図4に示す例は、ホットプレート10に新たな常温の基板Wが載置された場合である。時刻t1よりも以前は、ホットプレート10に基板Wが載置されておらず、ホットプレート10の温度は安定状態を保っている。ホットプレート10の温度が安定状態のときには、ヒータ制御部60はホットプレート10が設定温度T1を維持するようにメインヒータ20の出力を制御する。
【0036】
時刻t1にホットプレート10の上面に常温の基板Wが載置される。設定温度T1に昇温しているホットプレート10の上面に常温の基板Wが載置されると、ホットプレート10から基板Wへの熱伝導によって、基板Wの温度が上昇する一方でホットプレート10の温度は設定温度T1から瞬間的に大きく低下する。なお、基板Wの熱容量に比較してホットプレート10の熱容量は顕著に大きいため、ホットプレート10の温度が大きく低下するとは言っても設定温度T1から数度程度の低下ではある。
【0037】
ホットプレート10の温度低下は温度センサ40の温度測定によって検知され、ヒータ制御部60に伝達される。ヒータ制御部60は、温度センサ40を介してホットプレート10の温度低下を検知すると(つまり熱外乱の発生を検知すると)、ホットプレート10の温度を設定温度T1に復帰させるのに必要なヒータの操作出力量を算定する。操作出力量とは、演算によって求められたヒータ出力の理論値である。
【0038】
ヒータ制御部60によって算定されたヒータの操作出力量を図4の上段に点線で示す。メインヒータ20の出力が図4の点線に沿って推移すると、熱外乱によって一旦低下したホットプレート10の温度が迅速に設定温度T1に復帰することとなる。ところが、図4に示すように、ヒータ制御部60によって算定されたヒータの操作出力量はメインヒータ20の最大出力MV1を超えることがある。つまり、メインヒータ20の出力が飽和するのである。メインヒータ20の出力を最大出力MV1より大きくすることは当然に不可能である。そうすると、熱外乱によってホットプレート10の温度が低下したときには、ヒータ制御部60の制御によってメインヒータ20の実際の出力は最大出力MV1となるものの、演算によって求められたヒータの操作出力量に比較して図4の斜線部分に相当する熱量が不足することとなる。その結果、図3の点線で示すように、ホットプレート10が設定温度T1に復帰するのに長時間(t3−t1)を要することとなる。
【0039】
そこで、本実施形態においては、ヒータ制御部60がメインヒータ20に加えて補助ヒータ30の出力を増加させるのである。時刻t1よりも以前のホットプレート10の温度が安定状態のときには、補助ヒータ30の出力はゼロである。また、メインヒータ20の出力は最大出力MV1未満である。時刻t1に常温の基板Wがホットプレート10に載置されて熱外乱が発生すると、ヒータ制御部60がホットプレート10の温度を設定温度T1に復帰させるのに必要なヒータの操作出力量を算定する。そして、その操作出力量がメインヒータ20の最大出力MV1を超えている場合(つまり、メインヒータ20の出力が飽和する場合)には、ヒータ制御部60は、メインヒータ20の出力を最大出力MV1に制御するとともに、補助ヒータ30の出力も増加させる。図4の下段に示すように、ヒータ制御部60は、演算によって求めたヒータの操作出力量に比較してメインヒータの最大出力MV1が不足する出力分を補助ヒータ30が出力するように制御する。
【0040】
これにより、演算によって求めたヒータの操作出力量に対するメインヒータ20の不足出力量(図4の斜線部分)が補助ヒータ30によって補填されることとなり、ホットプレート10全体としては演算によって求められたヒータの操作出力量にてメインヒータ20および補助ヒータ30が出力するように制御されることとなる。その結果、図3の実線で示すように、メインヒータ20のみによってホットプレート10を温調した図3の点線に比較してホットプレート10の温度を短時間(t2−t1)にて設定温度T1に復帰させることができる。
【0041】
本実施形態においては、ホットプレート10の温度が安定状態のときには、補助ヒータ30の出力はゼロであり、ホットプレート10はメインヒータ20のみによって加熱されている。これは、ホットプレート10の温度が安定状態のときには、ホットプレート10の温度がほとんど変動しないため、メインヒータ20のみの出力であっても十分に足りるためである。
【0042】
一方、新たな常温の基板Wが載置される等によってホットプレート10に熱外乱が生じたときには、ホットプレート10の温度を設定温度T1に復帰させるのに必要なヒータの操作出力量が演算によって求められる。そして、求められたヒータの操作出力量がメインヒータ20の最大出力MV1を超えている場合(メインヒータ20の出力が飽和する場合)には、当該操作出力量に対するメインヒータ20の不足出力分を補助ヒータ30によって補填するようにヒータ制御部60が補助ヒータ30の出力を制御する。その結果、ホットプレート10全体としては上記操作出力量と等しい出力量にてメインヒータ20および補助ヒータ30が出力することとなり、熱外乱が生じた場合にホットプレート10の温度を迅速に設定温度T1に復帰させることができる。
【0043】
ここで、出力能力の大きなメインヒータ20を用いれば、すなわち最大出力MV1の大きなメインヒータ20を用いれば、補助ヒータ30を使用しなくても上記操作出力量にてメインヒータ20を出力させてホットプレート10の温度を迅速に復帰させることが可能なようにも考えられる。しかしながら、出力能力の大きなメインヒータ20は、原理的に僅かな制御信号の変動であってもその出力値が大きく変動する。そうすると、ホットプレート10の温度が安定状態のときであっても、メインヒータ20の出力が大きく変動することがあり、その結果ホットプレート10の温度安定性が損なわれるおそれがある。このような理由により、出力能力の比較的小さいメインヒータ20に加えて補助ヒータ30を設け、ホットプレート10の温度が安定状態のときにはメインヒータ20のみに出力させるとともに、熱外乱発生時にはメインヒータ20の出力不足分を補助ヒータ30に出力させるのが好ましい。このようにすれば、ホットプレート10の温度が安定状態のときには良好な温度安定性を得ることができるとともに、熱外乱が生じた場合にはホットプレート10の温度を迅速に復帰させることが両立できるのである。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、メインヒータ20が6つのゾーンに分割されていたが、これに限定されるものではなく、複数のゾーンに分割されていれば良い。例えば、処理対象となる基板Wの径がφ450mmであれば、メインヒータ20が10のゾーンに分割されていても良い。
【0045】
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板Wは円形の半導体ウェハーであっても良いし、矩形のガラス基板であっても良い。基板Wが矩形のガラス基板の場合は、ホットプレート10も矩形の平板形状のプレートとなるが、ホットプレート10にメインヒータ20および補助ヒータ30を備えることにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 熱処理装置
10 ホットプレート
20 メインヒータ
20a 中心メインヒータ
20b 中間メインヒータ
20c 周縁メインヒータ
21 主電力供給部
30 補助ヒータ
31 補助電力供給部
40 温度センサ
50 カバー
60 ヒータ制御部
図1
図2
図3
図4