(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
【0019】
1、重合体
本発明の重合体は、ガラス転移点(Tg)が60度以上である。Tgが60度を下回ると、重合体の耐熱変色が悪化し、着色が大きくなるおそれがある。重合体のTgは、好ましくは70度以上、より好ましくは80度以上である。
【0020】
上記重合体は、上記一般式(I)で表される構成単位(構成単位(A)とも称す)と、上記一般式(II)で表される構成単位(構成単位(C)とも称す)とを含み、更に酸基を含む重合体である。好ましくは、構成単位(A)と、酸基を有する不飽和単量体に由来する構成単位(構成単位(B)とも称す)と、構成単位(C)とを含むことである。中でも、全単量体単位の合計100質量%に対し、構成単位(A)の含有割合が0.5〜50質量%、構成単位(B)の含有割合が0.5〜50質量%、構成単位(C)の含有割合が0.5〜50質量%であることがより好ましい。各含有割合の好ましい範囲は後述する。
【0021】
ここで、構成単位(A)は、上記一般式(1)で示される単量体(単量体(a)とも称す)により重合体中に形成することが好ましく、構成単位(C)は、上記一般式(2)又は(3)で表される単量体(単量体(c)とも称す)により重合体中に形成することが好ましい。従って、上記重合体は、(a)上記一般式(1)で示される単量体(a)と、(b)酸基を有する不飽和単量体(単量体(b)とも称す)と、(c)上記一般式(2)又は(3)で示される単量体(c)とを必須成分として含む単量体成分を重合させてなる重合体であることが好適である。中でも、上記重合体を構成する全単量体成分の合計100質量%に対し、単量体(a)の含有割合が0.5〜50質量%、単量体(b)の含有割合が0.5〜50質量%、単量体(c)の含有割合が0.5〜50質量%であることが好ましい。各含有割合の好ましい範囲は後述する。
【0022】
上記単量体成分は、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)を必須に含む限り、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体を含んでもよい。各単量体はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
以下、各単量体について更に説明する。
【0023】
(1)単量体(a)
単量体(a)は、上記一般式(1)で表される化合物である。以下では、単量体(a)を、「エーテルダイマー」又は「ジアルキル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート系単量体」とも称す。
【0024】
上記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜25の炭化水素基を表す。中でも、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級又は2級炭素の炭化水素基であると、耐熱性の点で好ましい。すなわちR
1及びR
2は、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基又はベンジル基を表すことが好適である。
なお、上記炭化水素基は置換基を有していてもよく、またR
1及びR
2は、同種の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0025】
単量体(a)としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
【0026】
これらの中でも、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。着色の少なさや分散性、工業的入手の容易さ等の観点から、より好ましくは、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートである。
【0027】
単量体(a)を用いると、重合の際にエーテルダイマーが環化反応して、重合体の構成単位中にテトラヒドロピラン環構造が形成されていると推測される。従って、単量体(a)由来の構成単位は、テトラヒドロピラン環構造を有していると考えられる。
【0028】
単量体(a)の含有割合は特に限定されないが、本発明の重合体を与える全単量体成分の合計100質量%に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。単量体(a)の含有割合が0.5質量%以上であると、透明性や耐熱性等の塗膜性能がより高まり、また50質量%以下であると、重合の際、ゲル化をより充分に抑制でき、低分子量の重合体を好適に得ることが可能になる。より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。全単量体単位の合計100質量%に対する構成単位(A)の含有割合も、同様の範囲であることが好ましい。なお、上記一般式(I)中のnは、重合体中の構成単位(A)の平均繰り返し単位数を表すが、構成単位(A)の含有割合が上述した範囲内になるようにnを設定することが好適である。
【0029】
(2)単量体(b)
単量体(b)は、酸基を有する不飽和単量体である。
酸基としては特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボン酸無水物基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。中でもカルボキル基が好ましい。すなわち単量体(b)は、カルボキル基を有する不飽和単量体であることが好適である。
【0030】
単量体(b)としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸等が挙げられる。なお、これらの塩(例えば、金属塩、アミン塩、有機アンモニウム塩)であってもよい。中でも、モノカルボン酸又はその塩が好ましく、モノカルボン酸の中でも、(メタ)アクリル酸が好適である。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の両方を表現した表記である。
【0031】
単量体(b)の含有割合は特に限定されないが、本発明の重合体を与える全単量体成分の合計100質量%に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。単量体(b)の含有割合が0.5質量%以上であると、アルカリ物質による可溶性が必要な場合に可溶性がより充分となり、また50質量%以下であると、溶媒に対する溶解性が向上したり、また重合体の粘度がより適切なものとなって取扱い性が良好になる。より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは5〜45質量%である。全単量体単位の合計100質量%に対する構成単位(B)の含有割合も、同様の範囲であることが好ましい。
【0032】
単量体(b)が(メタ)アクリル酸である場合、本発明の重合体は、下記一般式(III)で表される構成単位(構成単位(B’)とも称す)を有するものとなり得る。このように構成単位(A)、(B’)及び(C)を有する重合体は、本発明の好適な形態の一つである。なお、式中のR
4は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。pは、一般式(III)で表される構成単位の平均繰り返し単位数を表し、1以上の数である。
【0034】
(3)単量体(c)
単量体(c)は、上記一般式(2)又は(3)で表される化合物である。なお本発明では、単量体(c)として、上記一般式(2)で示される単量体と、上記一般式(3)で示される単量体とを併用してもよい。
【0035】
単量体(c)のうち上記一般式(3)で表される化合物を用いる場合、得られた重合体にはエポキシ基が残存していてもよい。すなわち上記重合体は、エポキシ基を有するものであってもよい。上記重合体はまた、エポキシ環が開環した構造を有してもよい。開環している場合、得られる重合体は、上記一般式(2)で表される化合物を用いた場合と同様に、上記一般式(II)で表される構成単位(C)を有することになる。なお、上記単量体成分を重合した後に、例えば光酸発生剤等の酸触媒を反応させてエポキシ環を開環させることもできる。
【0036】
単量体(c)の含有割合は特に限定されないが、本発明の重合体を与える全単量体成分の合計100質量%に対し、0.2〜50質量%であることが好ましい。単量体(c)の含有割合が0.2質量%以上であると、透明性や耐熱性等の塗膜性能がより高まり、また50質量%以下であると、重合の際、増粘を充分に抑制することができる。より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。全単量体単位の合計100質量%に対する構成単位(C)の含有割合も、同様の範囲であることが好ましい。なお、上記一般式(II)中のmは、重合体中の構成単位(C)の平均繰り返し単位数を表すが、構成単位(C)の含有割合が上述した範囲内になるようにmを設定することが好適である。
【0037】
(4)単量体(d)
上記単量体成分は、上述した単量体以外に、重合体の主鎖骨格に環構造を導入し得る単量体(d)(単量体(d)とも称す)を1種又は2種以上含んでもよい。すなわち本発明の重合体は、主鎖に、更に環構造を有する重合体であってもよく、このような形態もまた、本発明の好適な形態の一つである。
【0038】
単量体(d)としては特に限定されないが、例えば、N置換マレイミド系単量体や、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体であることが好ましい。すなわち本発明の重合体は、N置換マレイミド系単量体単位、及び/又は、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体単位を更に含むことが好適である。この場合、耐熱性や分散性(例えば色材分散性)、硬度等がより向上された硬化膜を与えることが可能になる。またα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体単位を含む場合は、密着性、硬化性、乾燥再溶解性等の製版性に寄与する性能や、色材分散性、耐熱性、透明性等がより向上された硬化膜を与えることが可能になる。
なお、上記単量体単位を含む重合体とは、例えば、単量体の重合反応や架橋反応によって当該単量体由来の構成単位を含む重合体を意味する。
【0039】
N置換マレイミド系単量体としては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等が挙げられる。中でも、着色の少なさや分散性に優れる点で、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミドが好ましく、特にN−ベンジルマレイミドが好適である。
【0040】
上記N−ベンジルマレイミドとしては、例えば、ベンジルマレイミド;p−メチルベンジルマレイミド、p−ブチルベンジルマレイミド等のアルキル置換ベンジルマレイミド;p−ヒドロキシベンジルマレイミド等のフェノール性水酸基置換ベンジルマレイミド;o−クロロベンジルマレイミド、o−ジクロロベンジルマレイミド、p−ジクロロベンジルマレイミド等のハロゲン置換ベンジルマレイミド;等が挙げられる。
【0041】
α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体としては、例えば、α−アリルオキシメチルアクリル酸、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸i−プロピル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−ブチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−アミル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ネオペンチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−ヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−ヘプチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸n−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸s−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸t−オクチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸カプリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノニル、α−アリルオキシメチルアクリル酸デシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ウンデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ラウリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸トリデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ミリスチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ペンタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セチル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ヘプタデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸ノナデシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸エイコシル、α−アリルオキシメチルアクリル酸セリル、α−アリルオキシメチルアクリル酸メリシル等の鎖状飽和炭化水素基含有α−(アリルオキシメチル)アクリレートが好ましい。その他、アルキル−(α−メタリルオキシメチル)アクリレート系単量体等も好ましい。中でも、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル(α−(アリルオキシメチル)メチルアクリレートとも称す)が特に好適である。
なお、α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体には、α−アリルオキシメチルアクリル酸等のα−(不飽和アルコキシアルキル)アクリル酸も含まれるものとする。
【0042】
α−(不飽和アルコキシアルキル)アクリレート系単量体は、例えば国際公開第2010/114077号パンフレットに開示されている製造方法により製造することができる。
【0043】
単量体(d)の含有割合は特に限定されないが、本発明の重合体を与える全単量体成分の合計100質量%に対し、0.5〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。なお、全単量体単位の合計100質量%に対する、単量体(d)に由来する構成単位(構成単位(D)とも称す)の含有割合も、同様の範囲であることが好ましい。
【0044】
(5)単量体(e)
上記単量体成分はまた、必要に応じて、その他の共重合可能な単量体(単量体(e)とも称す)を1種又は2種以上含んでもよい。
【0045】
単量体(e)としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0046】
また耐熱性に影響しない程度に、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のアルキル置換マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等の芳香族基を有するマレイミド;ブタジエン、イソプレン等のブタジエン又は置換ブタジエン化合物;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル等のエチレン又は置換エチレン化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等を、単量体(e)として用いてもよい。
【0047】
上記単量体(e)の中でも、透明性が良好で、耐熱性を損ないにくい点で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル及び/又は(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましい。
【0048】
上記単量体成分を重合する際には、必要に応じて、通常用いられる重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。
【0049】
重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得ることができる点で、全単量体成分100質量%に対し0.1〜15質量%であることが好ましい。より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0050】
上記単量体成分を重合する際には、分子量調整のために、必要に応じて、通常用いられる連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸メチル等のメルカプタン系連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、1種又は2種以上を使用することができる。中でも、連鎖移動効果が高く、残存モノマーを低減でき、入手も容易な、n−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸を用いることが好ましい。
【0051】
連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、用いる単量体の組み合わせや、反応条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、ゲル化することなく重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得ることができる点で、全単量体成分100質量%に対して0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%とするのが好ましい。
【0052】
本発明の重合体は、側鎖に重合性二重結合を含んでもよい。側鎖に重合性二重結合を持たせることにより、熱や光で硬化させることができる。その為、光硬化性樹脂組成物としたときの光に対する感度が向上し、より少ない光量で硬化し、かつ硬化後の機械強度も高くなる。側鎖に重合性二重結合を導入する方法としては、例えば、上記単量体成分を重合させてなる重合体(便宜上これを「ベースポリマー」とも称す)に、酸基と反応し得る官能基と重合性不飽和二重結合とを含む化合物(「化合物X」とも称す)を付加させる方法が挙げられる。酸基と反応し得る官能基としては特に限定されないが、エポキシ基、オキサゾリン基及び水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。
【0053】
上記化合物Xが含む重合性不飽和二重結合としては特に限定されないが、得られる重合体の反応性の点から、(メタ)アクリロイル基の有する二重結合が好ましく挙げられる。すなわち上記化合物Xは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好適である。
【0054】
上記化合物Xとして具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール等の水酸基と二重結合とを有する化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基と二重結合とを有する化合物;ビニルオキサゾリン、イソプロペニルオキサゾリン等のオキサゾリン基と二重結合とを有する化合物;等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高く、かつ反応のコントロールがしやすく、入手が容易で、しかもラジカル重合性二重結合だけでなく同時に水酸基も導入できる点から、(メタ)アクリル酸グリシジルや、(メタ)アクリル酸3 ,4−エポキシシクロヘキシルメチルが好ましい。
【0055】
本発明の重合体はまた、エポキシ基を含んでもよい。これにより、熱や光で硬化させることができる。重合体にエポキシ基を導入するには、例えば、エポキシ基を有する単量体を単量体成分として重合すればよい。エポキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等の上記一般式(3)で表される単量体の他、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル等が挙げられる。これらエポキシ基を導入するための単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0056】
本発明の重合体において、重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは2000〜200000である。重量平均分子量が200000以下であると、重合体の粘度がより適切なものとなって塗膜形成が容易になり、また2000以上であると、耐熱性が更に向上する。より好ましくは5000〜100000である。
【0057】
本発明の重合体は、酸価が20〜300mgKOH/gであることが好ましい。重合体の酸価が20mgKOH/g以上であると、アルカリ物質による可溶性が必要な場合に可溶性がより充分となり、また300mgKOH/g以下であると、重合体の粘度がより適切なものとなって塗膜形成が容易になる。より好ましくは30〜200mgKOH/g、更に好ましくは40〜180mgKOH/gである。
【0058】
上記重合体のアミン価は、好ましくは1〜200mgKOH/gである。重合体のアミン価が1mgKOH/g以上であると、色材分散性が向上し、200mgKOH/g以下であると、重合体の粘度がより適切なものとなって塗膜形成が容易になる他、樹脂の耐熱着色性が更に向上する。より好ましくは1〜150mgKOH/g、更に好ましくは2〜100mgKOH/gである。
【0059】
上述したように本発明の重合体が側鎖に重合性二重結合を有するものである場合、重合体の二重結合1つあたりの分子量である二重結合当量は、350〜4500g/molであることが好ましい。350g/mol以上であると、硬化時の着色がより抑制され、また保存安定性や溶媒に対する溶解性がより向上し、4500g/mol以下であると、光に対する感度がより充分となって現像性が向上する。より好ましくは400〜4000g/mol、更に好ましくは500〜3800g/molである。
なお、二重結合当量は、分子中に含まれる二重結合量の尺度となるものであり、同じ分子量の化合物であれば、二重結合当量の数値が大きいほど二重結合の導入量が少なくなる。重合体や二重結合を導入する化合物の仕込み量から計算できる。また、滴定及び元素分析、NMR、IR等の各種分析や示差走査熱量計法を用いて測定できる。
【0060】
本発明の重合体は、耐熱性、透明性及び硬化性に優れており、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の用途に好適に用いることができる。また重合体中に酸基(好ましくはカルボキシル基)を有するため、カラーフィルタの着色画素、ブラックマトリックス、オーバーコート、フォトスペーサーや光導波路等を作製するためのアルカリ現像型のネガ型レジスト材料等として好適に用いることができる。本発明の重合体はまた、その構造中のテトラヒドロピラン環構造を有した場合に、より良好な顔料分散性をも有するため、カラーフィルタ用着色硬化性樹脂組成物にも好適に用いることができる。本発明の重合体の用途として特に好ましくは、カラーレジスト用バインダー樹脂や、ソルダーレジスト用樹脂である。なお、本発明の重合体は、感光性アルカリ可溶性樹脂であり、良好な現像性を示すものである。
【0061】
2、硬化性樹脂組成物
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した本発明の重合体と、多官能(メタ)アクリレートとを含む。必要に応じてこれら以外の成分を含んでもよく、各含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
以下では、本発明の重合体を「(A)成分」とも称し、多官能(メタ)アクリレートを「(B)成分」とも称す。
【0062】
(1)多官能(メタ)アクリレート
多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。すなわち多官能(メタ)アクリレートの官能数は2以上であるが、感光性及び硬化性がより高まる観点から、3以上であることが好ましい。より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上である。また、硬化収縮をより抑制する観点から、10以下であることが好ましく、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
ここで、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基及び/又はアクリロイル基を意味するが、本発明では、反応性により優れる観点からアクリロイル基が好ましい。すなわち上記多官能(メタ)アクリレートは、アクリロイル基を2個以上有する化合物であることが特に好適である。
【0063】
多官能(メタ)アクリレートの分子量は特に限定されないが、取り扱いの観点から、例えば、2000以下が好適である。より好ましくは1000以下である。また、100以上が好適である。
【0064】
多官能(メタ)アクリレートとしては特に限定されないが、例えば、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0065】
(2)重合開始剤
上記硬化性樹脂組成物を硬化させる際に光又は熱重合開始剤を用いてもよい。すなわち上記硬化性樹脂組成物は、必要に応じて光又は熱重合開始剤を含んでもよい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;等の他、フェニルグリオキシリックメチルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノンが好ましい。
【0067】
熱重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;が挙げられる。
【0068】
(3)溶媒
上記硬化性樹脂組成物は、必要に応じて希釈剤としての溶媒を含有するものであってもよい。なお、上記硬化性樹脂組成物は、ネガ型硬化性樹脂組成物であることが好適である。
【0069】
溶媒としては、上記(A)、(B)成分や、必要に応じて含有させる重合開始剤の各成分を均一に溶解し、かつ各成分と反応しないものであれば、特に制限はない。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
【0070】
溶媒の含有量は、樹脂組成物を使用する際の最適粘度に応じて適宜設定すればよい。例えば、樹脂100質量部に対し、900質量部以下であることが好ましく、より好ましくは500質量部以下である。下限値としては、樹脂100質量部に対し、30質量部以上であることが好ましく、より好ましくは60質量部以上である。上記数値範囲に制御することで、組成物の取り扱い性や保存安定性、更には塗布作業時の効率が向上する。
【0071】
(4)その他成分
上記硬化性樹脂組成物はまた、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、染料、顔料、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、重合禁止剤、重合遅延剤、重合促進剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤等の公知の添加剤を含有するものであってもよい。顔料としては、種々の有機又は無機着色剤を1種又は2種以上用いることができ、有機着色剤としては、染料、有機顔料、天然色素等を用いることができる。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、カラーフィルタ、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子等の保護膜を形成するための材料等に好適に用いることができる。
【0073】
3、積層体
本発明の積層体は、基板上に、上記重合体又は硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化層が配置してなる。このような積層体として好ましくは、カラーフィルタである。すなわち基板上に、上記重合体又は硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化層が配置してなるカラーフィルタは、本発明の好適な形態の一つである。なお、基板上に配置される硬化層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0074】
上記積層体において、基板として用いられる材料は、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、PET等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂等の透明材料や、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。これらのうち2種以上が積層してなるものを、基板として使用することもできる。
【0075】
以下では、積層体がカラーフィルタである場合について、説明する。
従来、液晶表示装置等の高品質化のために、カラーフィルタの輝度向上が求められている。だが、本発明の重合体や硬化性樹脂組成物の硬化物は熱着色し難いため、この硬化物からなる硬化層を有するカラーフィルタは、輝度低下が少なく、それゆえ従来の要求に充分に応えることができるものである。
【0076】
ここで、カラーフィルタとは、画像のカラー化に必要な、透明基板上に少なくとも3原色の微細な画素とそれらを区切るブラックマトリクスを有する光学フィルタである。3原色としては一般に、赤(R)・緑(G)・青(B)が用いられる。カラーフィルタを構成する部材としては、具体的には、3原色(RGB)画素、樹脂ブラックマトリックス、保護膜及び柱状スペーサー等があるが、本発明のカラーフィルタは、上記フィルタを構成する各部材の少なくとも1つが、上述した本発明の重合体又は硬化性樹脂組成物を硬化させて形成されたものであればよい。
【0077】
上記カラーフィルタにおいて、3原色(RGB)画素、樹脂ブラックマトリックス、保護膜及び柱状スペーサーとなる硬化層は、(A)成分が酸基を有する重合体である場合の硬化性樹脂組成物によって形成されていることが好ましい。また、RGB画素を形成する場合の硬化性樹脂組成物は、赤・緑・青の各3原色の顔料を含み、樹脂ブラックマトリックスを形成する場合の硬化性樹脂組成物は、黒色の顔料を含み、保護膜又は柱状スペーサーを形成する場合の硬化性樹脂組成物は、顔料を含まなくてもよい。なお、顔料を含む場合には、分散剤をも含有させることが好ましい。
【0078】
本発明のカラーフィルタは、例えば、次のようにして作製することができるが、この方法のみに限られるものではない。
1)まず、下記1−1)〜1−3)の工程を、黒色顔料を含む硬化性樹脂組成物を用いて行い、基板上に樹脂ブラックマトリックスを形成する。
1−1)顔料を含む硬化性樹脂組成物を、透明基板(好ましくは無アルカリガラス等のガラスや、透明プラスチック等)上に、スピンコート法やスプレー法等の公知の方法でコートし、乾燥し、塗膜を作製する。コート法としてはスピンコート法が好ましく用いられる。乾燥条件としては、室温〜120度(好ましくは60〜100度の温度)で、10秒〜60分(好ましくは30秒〜10分)、常圧又は真空下で加熱乾燥する方法が好ましい。
【0079】
1−2)その後、所望のパターン形状に応じた開口部を設けたフォトマスク(パターニングフィルム)を、上記1−1)で得た塗膜の上に接触状態で又は非接触状態で載せ、光を照射し、硬化させる。ここで、光とは、可視光のみならず、紫外線、X線、電子線等の放射線を意味するが、紫外線が最も好ましい。紫外線源としては、一般に高圧水銀ランプが好適に使用される。
【0080】
1−3)光照射後、溶剤、水、アルカリ水溶液等で現像を行う。これらの中でも、環境への負荷が少なく高感度の現像を行うことができる点で、アルカリ水溶液を用いることが好ましい。アルカリ成分としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。アルカリの濃度としては0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜3重量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。アルカリ濃度が上記範囲内にあると、重合体や硬化性樹脂組成物の溶解性が適切となって、現像性が高まる。アルカリ水溶液には、界面活性剤を添加してもよい。
【0081】
2)次に、硬化性樹脂組成物の顔料を赤(R)、緑(G)、青(B)と順次変えて、上記1−1)〜1−3)の工程を繰り返し行い、R、G、Bの画素を形成して、RGB画素を作製する。
【0082】
3)次に、基板上に形成されたRGB画素の保護や表面平滑性を向上させる目的で、必要に応じて、保護膜を形成する。更に、上記カラーフィルタが液晶表示装置用カラーフィルタである場合には、柱状スペーサーを形成することが好ましい。柱状スペーサーは、スペーサーを形成すべき面に硬化性樹脂組成物を所望のスペーサーの高さとなるような厚みに塗工し、上記1−1)〜1−3)の工程を経て作製することができる。
【0083】
ここで、カラーフィルタを作製する際には、各部材の作成時に、現像後加熱して(ポストベーク)硬化を更に進行させ、かつ溶媒が残存している場合はこれを完全に除去させることが好ましい。ポストベークの際の温度としては120〜300度が好ましい。120度以上であると、硬化の進行がより進み、塗膜強度が高まり、300度以下であると、画素の着色や熱分解等が生じるおそれが充分に抑制されて、塗膜の平滑性が向上する。より好ましくは150〜250度、更に好ましくは180〜230度である。
なお、ポストベークは、各部材形成における現像後に行っても良いし、全ての部材を形成した後に行っても良い。
【0084】
本発明の重合体及び硬化性樹脂組成物は、上述した高温環境下においても耐熱性を有するため、カラーフィルタの部材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。各合成例・比較合成例や各実施例・比較例における分析は以下のようにして行った。
【0086】
1、重合体物性
(1)重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定装置(「Shodex GPC System−21H」、昭和電工製)を用い、ポリスチレン換算で測定した。
【0087】
(2)重合体溶液中の重合体濃度
重合体溶液1gにアセトン4gを加えて溶解させた溶液を常温で自然乾燥させ、さらに5時間減圧乾燥(160度/5mmHg)した後、デシケータ内で放冷し重量を測定した。そして、重量減少量から、重合体溶液の不揮発分を算出し、これを重合体濃度とした。
【0088】
(3)酸価
重合体溶液1〜2gに、アセトン90ml及び水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/LのKOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(「COM−555」、平沼産業製)を用いて滴定し、溶液の酸価を測定した。そして、溶液の酸価と重合体濃度から、重合体の酸価を算出した。
【0089】
(4)ガラス転移点(Tg)
重合体溶液をガラス基盤に塗布し、50度、減圧下にて24時間乾燥後、アセトンに再溶解させ、再度50度、減圧下にて24時間乾燥することにより揮発成分を除去して得られた固形分についてDSC(示差走査熱量計法、測定機器「セイコーDSC6200」)を用いて、窒素気流下、昇温速度10度/minでJIS−K7121(2012年)に準拠し測定した。
【0090】
2、硬化物物性(耐熱性)
試験片をホットプレートにて250度で2時間加熱し、室温に冷却してから分光色差計(「EE−6000」、日本電色工業製)を用いて、耐熱試験後のb
*値を測定した。
【0091】
実施例1
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、(a)成分:ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート(以下「MD」と称する)20質量部、(b)成分:メタクリル酸(以下「MAA」と称する)15質量部、(c)成分:メタクリル酸グリセロール(以下「GLMA」と称する)10質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(以下「CHMA」と称する)40質量部、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)15質量部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名「パーブチルO」、日本油脂社製;以下「PBO」と称する)3質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」と称する)40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−ドデカンチオール(以下「n−DM」と称する)4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90度まで昇温した。反応槽の温度が90度に安定してから、モノマー滴下槽及び連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90度に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110度にした。3時間110度を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40質量%の重合体溶液1を得た。重合体の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/g、Tgは116度であった。
【0092】
実施例2
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MD20質量部、MAA15質量部、GLMA5質量部、CHMA40質量部、MMA20質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−DM4質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90度まで昇温した。反応槽の温度が90度に安定してから、モノマー滴下槽及び連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90度に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110度にした。3時間110度を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40質量%の重合体溶液2を得た。重合体の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/g、Tgは119度であった。
【0093】
比較合成例1
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MAA15質量部、GLMA10質量部、CHMA40質量部、MMA20質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽としてn−DM3質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90度まで昇温した。反応槽の温度が90度に安定してから、モノマー滴下槽及び連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90度に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110度にした。3時間110度を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40質量%の比較重合体溶液1を得た。重合体の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/g、Tgは104度であった。
【0094】
比較合成例2
反応槽として冷却管を付けたセパラブルフラスコを準備し、他方、モノマー滴下槽として、MD10質量部、アクリル酸12質量部、GLMA10質量部、アクリル酸シクロヘキシル51質量部、MMA17質量部、PBO3質量部、PGMEA40質量部をよく攪拌混合したものを準備し、連鎖移動剤滴下槽として、n−DM3質量部、PGMEA32質量部をよく攪拌混合したものを準備した。
反応槽にPGMEA71質量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながらオイルバスで加熱して反応槽の温度を90度まで昇温した。反応槽の温度が90度に安定してから、モノマー滴下槽及び連鎖移動剤滴下槽から滴下を開始した。滴下は、温度を90度に保ちながら、それぞれ135分間かけて行った。滴下が終了してから60分後に昇温を開始して反応槽を110度にした。3時間110度を維持した後、室温まで冷却し、濃度が40質量%の比較重合体溶液2を得た。重合体の重量平均分子量は10000、酸価は100mgKOH/g、Tgは53度であった。
【0095】
実施例3
実施例1で得られた重合体溶液1を100質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「ライトアクリレートDPE−6A」、共栄社化学株式会社製;以下「DPE−6A」と称する)20部、光開始剤(商品名「イルガキュア907」、チバ・ガイギー社製;以下「Irg907」と称する)2部、PGMEA55部を均一になるよう攪拌混合し、硬化性樹脂組成物1を得た。
得られた硬化性樹脂組成物1を、スピンコーターを用いて無アルカリガラス板上に全乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布し、ホットプレートにて100度で3分間乾燥した後、超高圧水銀ランプを用いて照射量が100mJ/cm
2となるように紫外線を照射した。照射後、更にホットプレートにて230度で30分間乾燥させ試験片1を得た。そしてこの試験片1を用いて上記の方法で耐熱性を評価した。耐熱試験後のb
*値を測定したところ0.3であった。
【0096】
実施例4
重合体溶液1を重合体溶液2に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、硬化性樹脂組成物2を調整した後、同様に試験片2を作成して耐熱性を評価した。耐熱試験後のb
*値を測定したところ0.4であった。
【0097】
比較例1
重合体溶液1を比較重合体溶液1に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、硬化性樹脂組成物3を調整した後、同様に比較用試験片1を作成して耐熱性を評価した。耐熱試験後のb
*値を測定したところ2.1であり、実施例3と比べると黄色みを帯びていた。
【0098】
比較例2
重合体溶液1を比較重合体溶液2に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、硬化性樹脂組成物4を調整した後、同様に比較用試験片2を作成して耐熱性を評価した。耐熱試験後のb
*値を測定したところ5.1であり、実施例3や実施例4と比べると黄色みを帯びていた。
【0099】
以上の実施例及び比較例の結果から、以下の事項を確認した。
実施例1〜4で用いた重合体は、上記一般式(I)で表される構成単位(A)と、上記一般式(II)で表される構成単位(C)とを含み、更に酸基を含む重合体であって、ガラス転移点が60℃以上である重合体である。より具体的にいうと、単量体(a)、(b)及び(c)を含む単量体成分を重合させてなる重合体であって、Tgが60℃以上である重合体である。これに対し、比較例1で用いた重合体は構成単位(A)を含まず、比較例2で用いた重合体は構成単位(C)を含まない。このような相違の下、硬化物の耐熱試験後のb
*値を比較すると、実施例1〜4では、b
*値が著しく小さいことが確認された。従って、上記構成の重合体とすることによって初めて、耐熱性、透明性と共に極めて優れた塗膜を形成することができることが分かった。それゆえ、本発明の重合体及びこれを含む硬化性樹脂組成物は、例えば、レジスト材料、各種コーティング剤、塗料等の用途において好適に用いることができる。また本発明によれば、例えば、パターンの欠損や現像残渣のない良好な品質のカラーフィルタを提供することができる。