【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形装置は、ベースプレートと、
前記ベースプレート上に形成された粉末層を選択的に固化するように前記粉末層にビームを照射するためのビーム照射ユニットと、前記粉末層上にガス流れを形成するためのガス流れ形成ユニットと、を備え、前記ビーム照射ユニットは、前記ガス流れの流れ方向において互いに異なる位置に設けられた2台以上の複数のスキャナを含む。
【0009】
本願発明者の鋭意検討の結果、ガス流れの流れ方向における下流側からビームを照射する場合、鉛直方向に対するビームの照射角が相対的に大きい場合と比較して、鉛直方向に対するビームの照射角が相対的に小さい場合の方が、ビームがヒュームに遮られにくく、ビームに対するヒュームの影響が小さくなる傾向があることが明らかとなった。
【0010】
そこで、上記(1)に記載の三次元積層造形装置では、上記のように、ガス流れの流れ方向における互いに異なる位置に複数のスキャナを設けている。かかる構成では、一つのスキャナによってベースプレート上の造形可能領域全体を走査する場合と比較して、造形可能領域の面積をガス流れの流れ方向に分割して、ガス流れの流れ方向において一個のスキャナが走査する範囲を狭くすることができる。このため、一つのスキャナによってベースプレート上の造形可能領域全体を走査する場合と比較して、鉛直方向に対するビームの照射角を小さくすることができる。
【0011】
これにより、ビームがヒュームに遮られにくくなり、ビームに対するヒュームの影響を低減することができる。したがって、ヒュームに起因する造形品質の低下を抑制することができる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の三次元積層造形装置において、前記ビーム照射ユニットを制御するコントローラを更に備え、前記ベースプレートは、前記複数のスキャナにそれぞれ対応するように前記ガス流れの流れ方向に沿って配列された複数の造形可能領域を含み、前記コントローラは、前記複数のスキャナによって前記造形可能領域の各々に対して前記ビームを走査するよう構成される。
【0013】
上記(2)に記載の三次元積層造形装置によれば、一つのスキャナによってベースプレート上の造形可能領域全体を走査する場合と比較して、コントローラの制御によって造形可能領域の面積をガス流れの流れ方向に分割して、ガス流れの流れ方向において一個のスキャナが走査する範囲を狭くすることができる。このため、一つのスキャナによってベースプレート上の造形可能領域全体を走査する場合と比較して、鉛直方向に対するビームの照射角を小さくすることができる。
【0014】
これにより、ビームがヒュームに遮られにくくなり、ビームに対するヒュームの影響を低減することができる。したがって、ヒュームに起因する造形品質の低下を抑制することができる。
【0015】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の三次元積層造形装置において、前記コントローラは、前記複数のスキャナによって前記造形可能領域の各々に対して前記ビームを同時に照射する同時照射モードを実行可能に構成される。
【0016】
上記(3)に記載の三次元積層造形装置によれば、三次元積層造形装置における造形処理のスループットを向上することができる。なお、コントローラは、同時照射モードを実行せずに、スキャナ毎に個別のタイミングでビームの照射を実行させてもよい。すなわち、コントローラは、1つのスキャナによるビームの照射の終了後に他のスキャナにビームの照射を実行させてもよい。
【0017】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載の三次元積層造形装置において、前記コントローラは、前記同時照射モードを実行する場合に、前記複数の造形可能領域に対して前記流れ方向に直交する方向において互いに異なる位置に照射するように前記スキャナを制御するよう構成される。
【0018】
上記同時照射モードを実行する場合において、複数の造形可能領域に対して、ガス流れの流れ方向に直交する方向において同一位置にビームを照射する場合ガス流れの流れ方向において上流側のスキャナによるビームの照射位置から生じたヒュームは、ガス流れによって下流側に流れて、下流側のスキャナからのビームを遮ってしまう。
【0019】
この点、上記(4)に記載の三次元積層造形装置によれば、上記のように、同時照射モードを実行する場合に、複数の造形可能領域に対して、ガス流れの流れ方向に直交する方向において互いに異なる位置にビームを照射することにより、上流側のスキャナによるビームの照射位置から生じたヒュームがガス流れによって下流側に流れても、下流側のスキャナのビームが当該ヒュームから影響を受けにくくなる。したがって、ヒューム16に起因する造形品質の低下を抑制することができる。
【0020】
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係る三次元積層造形方法は、三次元積層造形装置のベースプレート上の粉末層にビームを照射して選択的に固化する三次元積層造形方法において、前記ベースプレート上に上流から下流に向かうガス流れを形成するステップと、第一のスキャナを通して照射するビームの位置と、第二のスキャナを通して照射するレーザの位置とが異なるように各ビームの照射位置を決定するステップと、前記第一のスキャナは、前記ベースプレート上の前記ガス流れの上流側の造形可能領域にレーザを照射するステップと、前記第二のスキャナは、前記ベースプレート上の前記ガス流れの下流側の造形可能領域にレーザを照射するステップと、を備える。
【0021】
上記(5)に記載の三次元積層造形方法によれば、第一のスキャナ及び第二のスキャナによって適切な位置から各造形可能領域にビームを照射することでビームに対するヒュームの影響を低減することができる。したがって、ヒュームに起因する造形品質の低下を抑制することができる。
【0022】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)に記載の三次元積層造形方法において、前記上流側の造形可能領域と前記下流側の造形可能領域の両方にビームを照射する領域がまたがるか判定するステップと、前記第一のスキャナか前記第二のスキャナのどちらかを選択するステップと、前記上流側の造形可能領域と前記下流側の造形可能領域の両方にビームを照射する領域がまたがると判定した場合に、選択された前記スキャナが、前記上流側の造形可能領域と前記下流側の造形可能領域のうち該スキャナに対応する本来の造形可能領域に隣接する造形可能領域にレーザを照射するステップと、をさらに備える。
【0023】
上記(6)に記載の三次元積層造形方法によれば、第一のスキャナ及び第二のスキャナによって適切な位置から上流側の造形可能領域と下流側の造形可能領域とにまたがってビームを照射することでビームに対するヒュームの影響を低減することができる。なお、上記(6)において、第一のスキャナか第二のスキャナのどちらかを選択するステップで第一のスキャナが選択された場合には、上記「本来の造形可能領域」とは上流側の造形可能領域を意味し、「本来の造形可能領域に隣接する造形可能領域」とは下流側の造形可能領域を意味する。また、第一のスキャナか第二のスキャナのどちらかを選択するステップで第二のスキャナが選択された場合には、上記「本来の造形可能領域」とは下流側の造形可能領域を意味し、「本来の造形可能領域に隣接する造形可能領域」とは上流側の造形可能領域を意味する。