【実施例】
【0037】
本発明の実施例として、
図1の構成を備えた水中洗浄機を用いてウォータージェットピーニングを行った場合を以下に示す。その前にまず、真水を用いて、深い水槽により液面から処理対象面までの水深を従来の条件設定である500mmと、従来より浅い200mmとに関して、従来より低い噴射圧力、15,27,35MPaの3つの場合で対象物Wとして各種アルミ材(A5052)と鉄材(S50C)の平板に対し、
図2の整流器の無いホーン型の噴射ノズル10で下向き噴射によるウォータージェットピーニングテストを行った。その結果を、処理対象面に発生したピーニング痕の状況による評価として表1に示す。
【0038】
なお、ピーニング評価は、
図5の模式図で示すように、処理対象面全体にピーニング痕が高密度で満遍なく見られた場合を優れたピーニング効果として評価Aとし、この評価Aよりピーニング痕の密度が小さいものを評価Bとし、さらにピーニング痕がまばらで浅いものを評価Cとした。そして、ピーニング痕自体がさらに微小で数少ないものから目視による確認が困難であるものを評価D(不図示)とした。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果からわかるように、対象物Wがアルミ材であれば(テストNo.1〜4)、従来より低い範囲の噴射圧力15〜35MPaであっても評価Aの優れたピーニング処理結果が見られた。特に液面から処理対象面までの水深Dが200mm(テストNo.4)という従来より大幅に浅い条件であっても良好にピーニングが行えることが判った。評価Aの場合、いずれも水面からノズル下端までの水深dは100mmである。鉄材の場合は、ノズル下端までの水深dを50mmとしても評価Dは変わらなかった。
【0041】
次に、
図1に示す水中洗浄機にて、市販の防食剤含有洗浄液を用いて20〜40℃の範囲内でアルミ材(A5052)に対してウォータージェットピーニングテストを行った。結果を表2に示す。まず、
図2に示す噴射ノズル10の整流器15無しとしたホーンノズルを用いて、液面から処理対象面までの水深Dを200mmと固定して、噴射圧力を7〜35MPa、液面からノズル下端までの水深d=50〜150mmの範囲での噴射(テストNo.7〜15)と、噴射圧力を7〜40MPaの範囲で変更しつつ、液面から処理対象面までの水深D=80〜300mm、ノズル下端までの水深d=30〜100mmとした場合での噴射(テストNo.16〜19)によるウォータージェットピーニングテストを行った。次いで、液面から処理対象面までの水深Dを300mmに固定して噴射ノズル10で整流器15有り(表2中の*1印付き)としたホーンノズルからの噴射(テストNo.20〜22)によるウォータージェットピーニングテストを行った。
【0042】
また、
図4に示す循環阻害体9としての邪魔板(9A,9B)を載置台3に装着した(表2中の*2印付き)場合のホーン型の噴射ノズル10による噴射(テストNo.23〜27)についても処理面までの水深D=50〜250mm、ノズル下端までの水深d=50〜250の範囲でウォータージェットピーニングテストを行った。さらに、
図3に示した急拡大型の噴射ノズル20を用いた場合の噴射(テストNo.28,29)によるウォータージェットピーニングテストも行った。
【0043】
第1洗浄液としてデタージェントL-120A(商品名、株式会社ネオス製、原液成分;ジエタノールアミン(3%未満)・トリエタノールアミン合計10〜20%、可溶化材1%未満、有機酸アミン塩類10〜20%、界面活性剤1%未満、防腐剤1%未満、防食材3%未満、水65〜75%)の3%希釈液と、第2洗浄液としてVP−W(商品名、株式会社ネオス製、原液成分;トリエタノールアミン3〜10%、有機酸アミン塩類5〜15%、無機塩類10〜20%、防食剤10〜20%、水45〜55%)の3%希釈液とを用いた。ノズル噴射口径は1.4mm〜2.1mmの範囲で、噴射圧力、流量に応じて適宜選択された。
【0044】
【表2】
【0045】
まず、
図1の水中洗浄機において、真水で噴射圧力15MPaの低圧条件でのウォータージェットピーニングテスト(No.9)で表1の場合と同様に評価Aのピーニング痕が確認できたのに対して、第1洗浄液でこれより少し高圧の噴射圧力35MPaでウォータージェットピーニングテストを行うと、ノズル下端までの水深dを100mmとした場合も50mmとした場合も(No.7,8)、殆どピーニング痕が生じなかった。これに対し、第2洗浄液を用いた場合では、第1洗浄液の場合と同じ噴射圧力35MPaでも評価Bの良好なピーニング効果が見られ(No.15)、さらに噴射圧力15MPaでノズル下端までの水深d=100mmと真水(No.9)と同じ条件とした場合(No.12)で真水と同等の評価Aであった。ノズル下端までの水深dを150mm(No.10)、または50mmとした(No.11)場合も、各々評価Bと評価Cでそれなりにピーニング痕は生じていた。
【0046】
これら洗浄液の違いは、界面活性剤の含有の有無によると考えられる。これは、界面活性剤を含む洗浄液は空気の溶解を促進し、そして空気の溶解はキャビテーションの発生を抑圧するためである。界面活性剤を含まない第2洗浄液においては、液面から処理対象面までの水深Dが200mmと従来より浅い条件としても、真水と同等のウォータージェットピーニングが可能であることが確認できた。
【0047】
さらに第2洗浄液について、噴射圧力の違いに対応してウォータージェットピーニングの結果を比較すると、噴射圧力7MPaと低すぎると(No.13,19)ピーニング痕が僅かにしか発生せず、噴射圧力40MPaと高い場合(No.16)でも評価Dであったが、15〜30MPaの噴射圧力の範囲(No.12,14,20,21,23,24,26〜29)で最も優れた結果が得られている。
【0048】
良好な結果が得られた第2洗浄液について、液面から処理対象面までの水深Dを250mm以上と比較的距離を大きくとり、また噴射圧力が25MPa以下の比較的低い設定においては、
図2(b)に示すようなキャビテーション安定器としての整流器15をノズル本体の上流に備えておくことで、ホーン型、急拡大型のいずれの噴射ノズルの場合(No.20〜23,28)も評価AおよびBという良好な結果が得られた。特に噴射圧力が25MPaあれば、整流器15の利用によって評価Aという優れたピーニング効果が得られている(No.20,23)。また、30MPaと比較的高い噴射圧力で邪魔板(9A,9B)を設置することによって液面変動を抑制した場合(No.24,26,27)では、ノズル下端までの水深dが50mmと浅い場合(No.25の評価B)以外はいずれも評価Aと優れた結果が得られた。
【0049】
以上の結果から、水系洗浄液を用いても液面から処理対象面までの水深Dが100mm以上300mm以下で充分なウォータージェットピーニングを行うことができ、150mm以上250mm以下で最も優れたウォータージェットピーニングが可能である。よって、従来のウォータージェットピーニングが行われていた水槽より浅い洗浄槽で300mmより浅い水深Dとなった場合、即ち水深Dが150mm以上、300mm未満、例えば250mmまでとした場合で良好なウォータージェットピーニングが可能である。このとき好適な噴射圧力は15MPa以上35MPa以下であり、より望ましくは15MPa以上25MPa以下であることが確認された。さらに、以上の結果において、評価Cまでを含む良好な結果が得られた条件として、液面からノズル下端までの水深dは、50mm以上250mm以下であった。
【0050】
また、水系洗浄液として、界面活性剤を含まなければ、防食剤含有洗浄液を使用できることも確認された。これにより、水中洗浄機で洗浄が行われた機械部品に対して、同じ水中洗浄機で且つ同種の洗浄液を用いてピーニング処理を行うことが可能であることが確認された。
【0051】
なお、洗浄液の含有成分として、ピーニング処理に、即ち良好なキャビテーション噴流の発生に寄与するものを特定できれば、実際のウォータージェットピーニングを行う際に洗浄液としてその成分が必ず含まれるものを選択することができ、さらにはその成分の添加調整によってより大きなピーニング効果を期待することも可能と思われる。
【0052】
そこで、以上の実施例で確認された第2洗浄液において、キャビテーション噴流の発生に寄与する成分としてまずトリエタノールアミンが考えられる。アミン化合物は防食剤として広く利用されている。この防食性は、アミン化合物の窒素を含む極性部分が金属表面に吸着すると同時にそれ以外の非極性鎖が外側向きに配列された構造となる吸着層で金属表面を覆う成膜作用による。そこで、市販品でアミン化合物のみを含みその他の成分を含まないものの水溶液を用いて
図1の水中洗浄機でウォータージェットピーニングテストを行った。
【0053】
具体的には、第3洗浄液として、pHコウジョウザイ(商品名、株式会社ネオス製、原液成分;モノ-n-プロパノールアミン40〜45%およびジイソプロパノールアミン10%未満でアミン類合計45〜55%、水45〜55%)の2.5%希釈液と、第4洗浄液として、QUAKERCLEAN(商標)680VDA(商品名、Quaker Chemical Corporation製、原液成分;モノエタノールアミン10〜15%、水95〜90%)の3%希釈液とについて、アルミ材(A5052)に対し、噴射圧力15MPaおよび20MPaにおいて、液面から処理対象面までの水深Dが200mm前後、液面からノズル下端までの水深dが70〜155mmという前述の望ましい条件範囲内でウォータージェットピーニングテストを行った(テストNo.30〜33)。その結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
表3の結果から、第3洗浄液および第4洗浄液のように、アミン化合物のみを含有する洗浄液であっても、ある程度以上のピーニング効果が得られることが判った。また同じ第3洗浄液でも、評価Bであった条件(No.30)から噴射圧力と処理対象面までの水深D、ノズル下端までの水深dを若干変更し、邪魔板を設けた場合(No.31)に評価Aという優れたピーニング効果が得られることが判った。本テストでは、アミンのみを含む洗浄液が二種類でしかもそれぞれ一種の濃度だけでの検討であったが、その他のアミン化合物やまた濃度等の条件設定によっては、より優れたピーニング効果が得られるものを特定する可能性が期待できる。