特許第6872931号(P6872931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872931
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】インバート施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   E21D11/10 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-33736(P2017-33736)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2018-138738(P2018-138738A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
(72)【発明者】
【氏名】高倉 克彦
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−102369(JP,A)
【文献】 特開2000−257389(JP,A)
【文献】 特開2003−322000(JP,A)
【文献】 特開昭61−151398(JP,A)
【文献】 特開2014−111861(JP,A)
【文献】 米国特許第04396313(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E02D 29/00
E02D 29/045−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル断面中央の一方側を供用させた状態で、他方側においてインバート施工を行う先施工工程と、
トンネル断面中央の他方側を供用させた状態で、一方側においてインバート施工を行う後施工工程と、を備える供用中のトンネルのインバート施工方法であって、
前記先施工工程は、既設道路の一方側部分を第一仮設通行路として開放した状態で行う作業として、
他方側のインバート掘削を行う第一掘削作業と、
前記第一掘削作業により露出した地山に対してインバートコンクリートを打ち込み、養生して他方側インバートを形成する第一打設作業と、
前記他方側のインバート上に支保部材を介して覆工板を敷設して第二仮設通行路を構築する通行路仮設作業と、を備えており、
前記後施工工程は、第二仮設通行路を開放した状態で行う作業として、
一方側のインバート掘削を行う第二掘削作業と、
前記第二掘削作業により露出した地山に対してインバートコンクリートを打ち込み、養生して一方側インバートを形成する第二打設作業と、
行路を構築する通行路構築作業と、を備えており、
前記第二打設作業において、前記一方側インバートの端部を前記他方側インバートに接続することで一方側から他方側に連続するインバートを形成し、
前記通行路構築作業において前記一方側インバート上を埋め戻すとともに通行路の一方側部分を形成した後、前記通行路の一方側部分を第三仮設通行路として開放した状態で、前記第二仮設通行路の撤去、他方側インバート上の埋め戻しおよび前記通行路の一方側部分に接続する通行路の他方側部分の施工を行うことを特徴とするインバート施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバート施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
供用後のトンネルにおいて、何らかの原因により盤ぶくれが生じて、路盤が浮き上がる場合がある。盤ぶくれの対策工としては、盤ぶくれが生じた箇所に対してインバートを施工するのが最も効果的である。
供用中のトンネルにおいてインバートを施工する場合は、掘削、インバートコンクリートの打設・養生および埋め戻しを片側ずつ行う、いわゆる半割施工を採用するのが一般的である。ところが、一般的な道路トンネルにおいて半割施工を実施する場合には、トンネル中央部でのインバート施工を行う際に道路幅員を縮小する必要がある。一方、高速道路等、道路幅員を縮小することができないトンネルでは、通行止めにした状態で施工を行う必要があった。
【0003】
そのため、特許文献1には、通行止めを要することなく、供用中のトンネルにおいてインバート施工を行う施工方法として、中央部を除いた左右のインバートを施工するとともに、インバートの中央部に対応する箇所に挿入された鋼管により左右のインバートを接続する方法が開示されている。
また、特許文献2には、中央部を除いた左右のインバートを施工するとともに、一方のインバートを施工する際に、インバートの中央部に対応する位置から土塊を抜き出すことにより形成された隙間にコンクリートを打設することにより、トンネル中央部において左右のインバートを接続する施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−111861号公報
【特許文献2】特開2016−102369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のインバート施工方法は、インバートの構造が複雑であるとともに、鋼管の圧入等の施工に手間がかかるため、工期が長くなる。
また、特許文献2のインバート施工方法も同様に、土塊の抜き出しに手間がかかるため工期が長くなる。また、供用中の道路の下側を掘削するため、施工を慎重に行う必要がある。
このような観点から、本発明は、安全かつ早期に施工を行うことが可能なインバート施工方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明のインバート施工方法は、トンネル断面中央の一方側を供用させた状態で他方側においてインバート施工を行う先施工工程と、トンネル断面中央の他方側を供用させた状態で一方側においてインバート施工を行う後施工工程とを備える、いわゆる半割施工方法を採用するものである。前記先施工工程は、既設道路の一方側部分を第一仮設通行路として開放した状態で行う作業として、他方側のインバート掘削を行う第一掘削作業と、前記第一掘削作業により露出した地山に対してインバートコンクリートを打ち込み、養生して他方側インバートを形成する第一打設作業と、前記他方側のインバート上に支保部材を介して覆工板を敷設して第二仮設通行路を構築する通行路仮設作業とを備えている。また、前記後施工工程は、第二仮設通行路を開放した状態で行う作業として、一方側のインバート掘削を行う第二掘削作業と、記第二掘削作業により露出した地山に対してインバートコンクリートを打ち込み、養生して一方側インバートを形成する第二打設作業と、行路を構築する通行路構築作業とを備えている。そして、前記第二打設作業において、前記一方側インバートの端部を前記他方側インバートに接続することで一方側から他方側に連続するインバートを形成し、前記通行路構築作業において前記一方側インバート上を埋め戻すとともに通行路の一方側部分を形成した後、前記通行路の一方側部分を第三仮設通行路として開放した状態で、前記第二仮設通行路の撤去、他方側インバート上の埋め戻しおよび前記通行路の一方側部分に接続する通行路の他方側部分の施工を行うことを特徴としている。
【0007】
かかるインバート施工方法によれば、トンネル内を全面的に通行止めにすることなく、供用中のトンネルに対してインバートを施工することができる。そのため、盤ぶくれ等に起因する浮き上がりを効果的に防止することができる。また、トンネル底部に対して連続したインバートを設置するため、構造が複雑ではなく、施工性に優れている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインバート施工方法によれば、安全かつ早期にトンネルのインバートを施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るトンネルを示す断面図である。
図2】先行施工工程の作業状況を示す断面図であって、(a)は第一掘削作業、(b)は第一打設作業である。
図3】(a)は先行施工工程の通行路仮設作業を示す断面図、(b)は後行施工工程の第二掘削作業を示す断面図である。
図4図3(b)に続く後行施工工程の作業状況を示す断面図であって、(a)は第二打設作業、(b)は通行路構築作業である。
図5】(a)および(b)は、図4(b)に続く通行路構築作業を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、図1に示すように、供用中の道路トンネル(以下、単に「トンネル1」という。)に対して、盤ぶくれ防止を目的として、全面的に通行止めにすることなく、インバート2を新設する場合について説明する。
本実施形態のトンネル1は、アーチ状の覆工コンクリート11により側壁及び頂部が被覆されていて、底部にはインバートを備えておらず、既設道路3が地山に直接構築されている。なお、既設道路3の下側中央部には、中央排水路4が形成されている。
【0011】
本実施形態のインバート施工方法は、トンネル断面中央Cの一方側(本実施形態では右側)を供用させた状態で他方側(本実施形態では左側)においてインバート施工を行う先施工工程と、トンネル断面中央Cの他方側を供用させた状態で一方側においてインバート施工を行う後施工工程とを備える、いわゆる半割施工方法である。
【0012】
先行施工工程は、第一掘削作業と、第一打設作業と、通行路仮設作業とを備えている。
先行施工工程では、図2(a)に示すように、既設道路3の右側部分を仮設通行路5として開放する。なお、仮設通行路5は、車道51の左右に路肩52,52を確保しておく。仮設通行路5のトンネル断面中央C側の端部には、必要に応じて防護柵等の安全設備6を設置しておく。
【0013】
第一掘削作業では、トンネル断面中央Cの左側部分のインバート掘削(以下、「第一インバート掘削」という。)を行う。
第一インバート掘削に先立ち、既設の付帯設備(避難通路等)を撤去し、覆工コンクリート11および支保工(吹付けコンクリートや鋼製支保工)12の脚部に足付けコンクリート部材21を形成する。足付けコンクリート部材21の施工が完了したら、バックホウ等の掘削機Mを利用して、トンネル1の底部を掘削する。第一インバート掘削は、道路中心(トンネル断面中央C)よりも左側であって、中央排水路4から所定の間隔を確保できるように行う。すなわち、第一インバート掘削では、既設道路3の中央部を含めた右側部分を残置させた状態で、トンネル1の底部の左側部分を掘削する。第一インバート掘削の掘削深度および形状は、新設するインバート2の断面形状および寸法に応じて決定する。
【0014】
第一打設作業は、図2(b)に示すように、第一掘削作業により露出した地山に対してインバートコンクリートを打ち込み、養生して、トンネル1のインバート2の左側部分(左インバート22)を形成する。このとき、左インバート22の左側端部は、足付けコンクリート部材21に接続する。また、必要に応じてインバートコンクリートを締め固める。なお、インバート2(左インバート22)の厚さは、地山状況等に応じて適宜決定する。また、インバート2には、必要に応じて鉄筋を配筋してもよい。
【0015】
通行路仮設作業では、図3(a)に示すように、左インバート22上に仮設通行路5を構築する。仮設通行路5は、左インバート22上に形成された支保部材53を介して覆工板54を敷設することにより形成する。覆工板54は、道路(既設道路3)の路面以上の高さ位置において、トンネル1の側壁の近傍からトンネル断面中央部までの範囲に敷設する。すなわち、仮設通行路5(右端に敷設された覆工板54)の右端部は、既設道路3の残置部分の左端部上に、片持ち梁上に張り出している。なお、仮設通行路5の構造は限定されるものではなく、例えば、トンネル軸方向に沿って仮桟橋を架設することにより形成してもよい。仮設通行路5は、通行路として必要な幅員(図2(a)に示す車道51および左右の路肩52の幅)を確保している。また、仮設通行路5のトンネル断面中央C側の端部には、必要に応じて防護柵等の安全設備6を設置しておく。
【0016】
後施工工程は、第二掘削作業と、第二打設作業と、通行路構築作業とを備えている。
後施工工程では、図3(b)に示すように、覆工板54により形成された仮設通行路5を開放する。第二掘削作業では、トンネル中央部および右側(一方側)部分のインバート掘削(以下、「第二インバート掘削」という。)を行う。第二インバート掘削に先立ち、既設の付帯設備を撤去し、覆工コンクリート11および支保工(吹付けコンクリートや鋼製支保工)12の脚部に足付けコンクリート部材21を形成する。足付けコンクリート部材21の施工が完了したら、バックホウ等の掘削機Mを利用して、トンネル1の底部を掘削する。このとき、仮設通行路5(覆工板54)の下側も含めて掘削する。
【0017】
第二打設作業では、図4(a)に示すように、第一掘削作業により露出した地山に対してインバートコンクリートを打ち込み、養生して、トンネル1の右側のインバート2(右インバート23)を形成する。右インバート23は、左端部を左インバート22に接続するとともに、右端部を足付けコンクリート部材21に接続する。また、必要に応じてインバートコンクリートを締め固める。
【0018】
通行路構築作業では、インバート2上に本設道路7を構築する。まず、図4(b)に示すように、右インバート23上を埋め戻すとともに、幅方向中央部に中央排水路4を配設する。次に、中央排水路4の上方を含めて本設道路(通行路)7の右側部分の舗装を行う。このとき、本設道路7の側溝も敷設する。本設道路7の右側部分の施工が完了したら、図5(a)に示すように、この本設道路7の右側部分を仮設通行路5として開放し、支保部材53および覆工板54(図4(b)参照)を撤去する。そして、図5(a)および(b)に示すように、トンネル1の左側部分の埋め戻し、側溝の敷設および舗装を行い、本設道路7を完成させる。
【0019】
以上、本実施形態のインバート施工方法によれば、トンネル1内を全面的に通行止めにすることなく、供用中のトンネル1に対してインバート2を施工することができる。そのため、供用中のトンネル1に対して、盤ぶくれ等に起因する浮き上がりを効果的に防止することができる。
また、支保部材53を介して敷設された覆工板54により仮設通行路5を形成しているため、標準的な内空断面のトンネルであっても、仮設通行路5の幅員を縮小せずに、中央部の掘削を行うことができる。その結果、トンネル底部に対して連続したインバート2を施工することができる。また、インバート2は、トンネル1の横断方向に対して一体に連続しているため、盤ぶくれ対策工として、効果的であり、なおかつ、安定性に優れている。したがって、施工性に優れており、ひいては、短期間で効果的な盤ぶくれ防止対策を行うことができる。
また、仮設通行路5を構成する覆工板54は、支保部材53により支持されているため、安全性に優れている。
【0020】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
インバート2を新設するトンネル1は、道路トンネルに限定されるものではない。
また、前記実施形態では、トンネル1の左側を先に施工する場合について説明したが、施工の順序は限定されるものではなく、右側を先に施工してもよい。
【符号の説明】
【0021】
1 トンネル
2 インバート
3 既設道路
4 中央排水路
5 仮設通行路
6 安全設備
7 本設道路(通行路)
C トンネル断面中央
図1
図2
図3
図4
図5