特許第6872945号(P6872945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872945
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   E02F9/26 B
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-61427(P2017-61427)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162631(P2018-162631A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】中野 寿身
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博史
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−212528(JP,A)
【文献】 特開2011−137345(JP,A)
【文献】 特開2016−205088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーム、アーム、及び作業具を垂直方向に回動可能に連結して構成され、建設機械の車体に垂直方向に回動可能に支持された多関節型のフロント作業機と、
前記フロント作業機の前記ブーム、アーム、及び作業具をそれぞれ操作するための操作信号を出力する操作装置と、
前記ブーム、アーム、及び作業具のそれぞれの姿勢情報を検出する姿勢情報検出装置と、
前記姿勢情報検出装置により検出された姿勢情報と、掘削対象の目標形状の情報である設計面情報と、前記操作装置からの前記操作信号とに基づいて情報処理を行う情報処理装置とを備えた建設機械において、
前記情報処理装置は、
前記姿勢情報に基づいて前記作業具上に設定された作業点の前記車体に対する相対位置を演算する作業点位置演算部と、
前記設計面情報に基づいて掘削作業の対象となる目標面を設定する目標面設定部と、
前記目標面の目標角度および目標高さに基づいた主操作判定テーブルを用いて、前記目標面に対して前記ブーム前記アームのいずれの操作が主操作となるかを判定する主操作判定部と、
前記掘削作業を行う場合に、前記ブーム及び前記アームの操作のうち前記主操作とは異なる他の操作である従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を前記主操作の操作量及び操作方向に応じて演算し、前記従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を教示装置に表示する推奨操作演算部とを備え、
前記推奨操作演算部は、前記操作装置が操作されていない場合に、前記目標面に対応する掘削作業で想定される前記主操作の操作量及び操作量を仮定した擬似操作量及び擬似操作方向を設定し、前記ブーム及び前記アームの操作のうち前記主操作とは異なる他の操作である従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を前記主操作の擬似操作量及び擬似操作方向に応じて演算し、前記従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を教示装置に表示することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記推奨操作演算部は、前記従操作の推奨操作量及び推奨操作方向と同時に、前記主操作の操作量及び操作方向を前記教示装置に表示することを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械において、
前記教示装置は、前記主操作に対応する前記操作装置の操作方向に対応して延在する表示領域の表示を、前記主操作の操作方向に対応して変化させることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械において、
前記教示装置は、前記従操作に対応する前記操作装置の操作方向に対応して延在する表示領域の表示を、前記従操作の推奨操作方向に対応して変化させることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械(例えば、油圧ショベル)によって元の地形を3次元の目標地形に施工する際に、掘削作業におけるオペレータの操作を支援する操作支援システムがある。このような操作支援システムとしては、例えば、従来の施工に用いられていた丁張りの代わりに目標地形とバケットなどの作業具の位置関係をモニタ上に表示するマシンガイダンスを行うものや、目標地形と作業具の位置との偏差に応じて建設機械を半自動で制御するマシンコントロールを行うものなどが知られている。
【0003】
また、例えば、特許文献1には、掘削作業を精度よく行うことを可能とすることを目的として、目標地形である設計面と作業具であるバケットの刃先との位置関係を示す画像と、バケットの最近接位置と設計面との間の距離を示す情報とを含む案内画面を表示部に表示する油圧ショベルの表示システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/114869号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、油圧ショベルのブームやアーム、バケット等によって構成されるフロント装置よりも十分下方の地形を水平な目標地形に施工する作業(いわゆる、水平引き作業)において、オペレータは、アームの操作によって設計面に平行な方向の掘削速度を調節し、ブームの操作によって掘削高さを調整する。このような場合、オペレータは、上記従来技術で教示されるようなバケットの最近接位置と設計面との間の距離を示す情報(以降、距離情報を称する)を参照することによってブームの操作を適切に行うことができる。
【0006】
しかしながら、フロント装置に対する設計面の位置によっては、距離情報だけではオペレータによる適切な操作が困難な場合がある。すなわち、例えば、目標地形として切り立った壁面を掘削するような場合、バケットを設計面に沿って上方から下方に移動させると、ブーム支点の高さを境にアームに必要な動作方向(目標面の高さ方向の速度)が逆転してしまう。つまり、オペレータによるアームの操作方向も逆転してしまうため、距離情報だけでは適切な操作を行うことが困難である。また、フロント装置よりも高所の水平引き作業、或いは、下方手前側の壁面を目標地形とする掘削作業を行うような場合には、掘削高さを調節するためブームの操作によってアームに必要な掘削速度が大きく変化してしまう。つまり、オペレータはブームの操作によって生じるアームに必要な速度の変化に対応しなければならず、この場合にも距離情報だけで十分な掘削精度を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、オペレータに適切な操作を分かりやすく伝えることができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、ブーム、アーム、及び作業具を垂直方向に回動可能に連結して構成され、建設機械の車体に垂直方向に回動可能に支持された多関節型のフロント作業機と、前記フロント作業機の前記ブーム、アーム、及び作業具をそれぞれ操作するための操作信号を出力する操作装置と、前記ブーム、アーム、及び作業具のそれぞれの姿勢情報を検出する姿勢情報検出装置と、前記姿勢情報検出装置により検出された姿勢情報と、掘削対象の目標形状の情報である設計面情報と、前記操作装置からの前記操作信号とに基づいて情報処理を行う情報処理装置とを備えた建設機械において、前記情報処理装置は、前記姿勢情報に基づいて前記作業具上に設定された作業点の前記車体に対する相対位置を演算する作業点位置演算部と、前記設計面情報に基づいて掘削作業の対象となる目標面を設定する目標面設定部と、前記目標面の目標角度および目標高さに基づいた主操作判定テーブルを用いて、前記目標面に対して前記ブーム前記アームのいずれの操作が主操作となるかを判定する主操作判定部と、前記掘削作業を行う場合に、前記ブーム及び前記アームの操作のうち前記主操作とは異なる他の操作である従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を前記主操作の操作量及び操作方向に応じて演算し、前記従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を教示装置に表示する推奨操作演算部とを備え、前記推奨操作演算部は、前記操作装置が操作されていない場合に、前記目標面に対応する掘削作業で想定される前記主操作の操作量及び操作量を仮定した擬似操作量及び擬似操作方向を設定し、前記ブーム及び前記アームの操作のうち前記主操作とは異なる他の操作である従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を前記主操作の擬似操作量及び擬似操作方向に応じて演算し、前記従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を教示装置に表示するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、オペレータに適切な操作を分かりやすく伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図である。
図2】油圧ショベルに搭載される操作支援システムを概略的に示す図である。
図3】情報処理装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図4】目標面と車体との位置関係を模式的に示す側面図である。
図5】目標面の目標面角度および目標面高さをそれぞれ変化させて主操作を判定した場合の判定結果を示す図である。
図6】推奨操作演算部による従操作指示情報の演算処理を示すフローチャートである。
図7】教示装置が配置される運転室内の様子を模式的に示す図である。
図8】教示装置の表示内容を示す図である。
図9】第2の実施の形態に係る情報処理装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図10】第2の実施の形態に係る教示装置の表示内容を示す図である。
図11】第3の実施の形態に係る油圧ショベルに搭載される操作支援システムを概略的に示す図である。
図12】第3の実施の形態に係る教示装置及び補助教示装置が配置される運転室内の様子を模式的に示す図である。
図13】第3の実施の形態に係る教示装置及び補助教示装置の表示内容を比較のために並べて示す図である。
図14】第4の実施の形態に係る教示装置及び補助教示装置が配置される運転室内の様子を模式的に示す図である。
図15】第4の実施の形態に係る補助教示装置の表示内容を示す図である。
図16】第5の実施の形態に係る情報処理装置の詳細を示す機能ブロック図である。
図17】第5の実施の形態に係る推奨操作演算部による従操作指示情報の演算処理を示すフローチャートである。
図18】目標面とフロント装置の種々の位置関係をそれぞれ例示する図である。
図19】目標面とフロント装置の種々の位置関係をそれぞれ例示する図である。
図20】目標面とフロント装置の種々の位置関係をそれぞれ例示する図である。
図21】目標面とフロント装置の種々の位置関係をそれぞれ例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、建設機械の一例として、フロント作業機の先端に作業具としてバケットを備える油圧ショベルを例示して説明するが、バケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルに本発明を適用することも可能である。
【0012】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1図8を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図である。
【0014】
図1において、油圧ショベル600は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム11、アーム12、バケット(作業具)8)を連結して構成された多関節型のフロント装置(フロント作業機)15と、車体を構成する上部旋回体10及び下部走行体9とを備え、上部旋回体10は下部走行体9に対して旋回可能に設けられている。また、フロント装置15のブーム11の基端は上部旋回体10の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム12の一端はブーム11の基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム12の他端にはバケットリンク8aを介してバケット8が垂直方向に回動可能に支持されている。ブーム11、アーム12、バケット8、上部旋回体10、及び下部走行体9は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回油圧モータ4、及び左右の走行油圧モータ3b(ただし、一方の走行油圧モータのみ図示)によりそれぞれ駆動される。
【0015】
ブーム11、アーム12、及びバケット8は、フロント装置15を含む平面上で動作し、以下ではこの平面を動作平面と称することがある。つまり動作平面とは、ブーム11、アーム12、及びバケット8の回動軸に直交する平面であり、ブーム11、アーム12、及びバケット8の幅方向の中心に設定することができる。
【0016】
オペレータが搭乗する運転室16には、フロント装置15の油圧アクチュエータ5〜7、及び上部旋回体10の旋回油圧モータ4を操作するための操作信号を出力する操作レバー(操作装置)である右操作レバー装置1c及び左操作レバー装置1dと、下部走行体9の左右の走行油圧モータ3bを操作するための操作信号を出力する走行用右操作レバー装置1a及び走行用左操作レバー装置1bとが設けられている。
【0017】
操作レバー1c,1dはそれぞれ前後左右に傾倒可能であり、操作信号であるレバーの傾倒量、すなわちレバー操作量を電気的に検知する図示しない検出装置を含み、検出装置が検出したレバー操作量を制御装置の一部を構成する情報処理装置100(図2参照)に電気配線を介して出力する。つまり、操作レバー1c,1dの前後方向または左右方向に、油圧アクチュエータ4〜7の操作がそれぞれ割り当てられている。
【0018】
ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回油圧モータ4、及び左右の走行油圧モータ3bの動作制御は、エンジンや電動モータなどの原動機(本実施の形態では、エンジン14)によって駆動される油圧ポンプ装置2から各油圧アクチュエータ3b,4〜7に供給される作動油の方向及び流量をコントロールバルブ20で制御することにより行う。コントロールバルブ20は、図示しないパイロットポンプから電磁比例弁を介して出力される駆動信号(パイロット圧)により行われる。操作レバー1c,1dからの操作信号に基づいて制御装置で電磁比例弁を制御することにより、各油圧アクチュエータ3b,4〜7の動作が制御される。ブーム11はブームシリンダ5の伸縮により上部旋回体10に対して上下方向に回動され、アーム12はアームシリンダ6の伸縮によりブーム11に対して上下及び前後方向に回動され、バケット8はバケットシリンダ7の伸縮によりアーム12に対して上下及び前後方向に回動される。
【0019】
なお、操作レバー1c,1dは油圧パイロット方式であってもよく、それぞれオペレータにより操作される操作レバー1c,1dの操作方向及び操作量に応じたパイロット圧をコントロールバルブ20に駆動信号として供給し、各油圧アクチュエータ3b,4〜7を駆動するように構成しても良い。
【0020】
ブームシリンダ5には、ブームシリンダ5のボトム側圧力を検出するブームボトム圧力センサ17aと、ブームシリンダ5のロッド側圧力を検出するブームロッド圧力センサ17bとが備えられている。また、アームシリンダ6には、アームシリンダ6のボトム側圧力を検出するアームボトム圧力センサ17cが備えられている。なお、本実施の形態では、ブームシリンダ5及びアームシリンダ6に圧力センサ17a〜17cを備える場合を例示しているが、例えば、コントロールバルブ20、或いは、コントロールバルブ20と各油圧アクチュエータ5,6を繋ぐ配管の途中に圧力センサを設けるように構成しても良い。
【0021】
ブーム11の上部旋回体10との連結部近傍と、アーム12のブーム11との連結部近傍と、バケットリンク8aと、上部旋回体10とには、それぞれ、姿勢センサとして慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)13a〜13dが配置されている。慣性計測装置13aは水平面に対するブーム11の角度(ブーム角度)を検出するブーム姿勢センサであり、慣性計測装置13bは水平面に対するアーム12の角度(アーム角度)を検出するアーム姿勢センサであり、慣性計測装置13cは水平面に対するバケットリンク8aの角度を検出するバケット姿勢センサである。また、慣性計測装置13dは、水平面に対する上部旋回体10の傾斜角度(ロール角、ピッチ角)を検出する車体姿勢センサである。
【0022】
慣性計測装置13a〜13dは、角速度及び加速度を計測するものである。慣性計測装置13a〜13dが配置された上部旋回体10や各被駆動部材8,11,12が静止している場合を考えると、各慣性計測装置13a〜13dに設定されたIMU座標系における重力加速度の方向(つまり、鉛直下向き方向)と、各慣性計測装置13a〜13dの取り付け状態(つまり、各慣性計測装置13a〜13dと上部旋回体10や各被駆動部材8,11,12との相対的な位置関係)とに基づいて、上部旋回体10や各被駆動部材8,11,12の水平面に対する角度を検出することができる。ここで、慣性計測装置13a〜13cは、ブーム11、アーム12、及びバケット(作業具)8のそれぞれの姿勢情報(角度信号)を検出する姿勢情報検出装置を構成している。
【0023】
なお、姿勢情報検出部は慣性計測装置に限られるものではなく、例えば、傾斜角センサを用いても良い。また、各被駆動部材8,11,12の連結部分にポテンショメータを配置し、上部旋回体10や各被駆動部材8,11,12の相対的な向き(姿勢情報)を検出し、検出結果から各被駆動部材8,11,12の姿勢(水平面に対する角度)を求めても良い。また、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、及びバケットシリンダ7にそれぞれストロークセンサを配置し、ストローク変化量から上部旋回体10や各被駆動部材8,11,12の各接続部分における相対的な向き(姿勢情報)を算出し、その結果から各被駆動部材8,11,12の姿勢(水平面に対する角度)を求めるように構成しても良い。
【0024】
図2は、油圧ショベルに搭載される操作支援システムを概略的に示す図であり、図3は情報処理装置の詳細を示す機能ブロック図である。
【0025】
図2において、油圧ショベル600に搭載される操作支援システム500は、油圧ショベル600の動作を制御するための種々の機能を有する制御装置の一部を構成し、オペレータの掘削作業を支援するための情報(支援情報)を生成する情報処理装置100と、運転室16に配置されてオペレータに掘削作業の支援情報などを教示する液晶パネルなどの教示装置(表示装置)200とを有している。情報処理装置100には、左右の操作レバー装置1c,1dからの操作信号と、各慣性計測装置13a〜13dからの検出信号(角度信号:姿勢情報)と、設計面情報入力装置18からの設計面情報とが入力されており、これらの入力に基づいて情報処理を行っている。
【0026】
設計面情報入力装置18は、複数の目標面(線分)が連なって設定された掘削対象の目標形状の情報(目標形状情報)である設計面情報を情報処理装置100に入力するものである。設計面情報入力装置18は、例えば記憶装置であり、作業機械の位置情報と掘削対象の目標形状(例えば法面形状)の3次元形状をポリゴンで定義した3次元施工図面とを用いて演算された目標形状情報が記憶されている。
【0027】
なお、情報処理装置100は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、CPUによる処理を実行するための各種プログラムを格納するROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disc Drive)などの記憶装置と、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM(Random Access Memory)とを含むハードウェアを用いて構成されている。
【0028】
図3において、情報処理装置100は、作業点位置演算部110、目標面設定部120、目標面距離演算部130、主操作判定部140、及び推奨操作演算部150を有している。
【0029】
作業点位置演算部110は、慣性計測装置13a〜13dからの角度信号(姿勢情報)に基づいて、バケット(作業具)8上に設定された作業点の車体(上部旋回体10)に対する相対位置を演算し、作業点位置として教示装置200に送信するとともに、目標面設定部120と目標面距離演算部130へ出力する。ここで、バケット(作業具)8上に設定する作業点は、例えば、バケット8のつめ先中心とする。なお、作業点位置を表す座標系としては、ブーム11の回動中心を原点Oとして車体に固定し、上部旋回体10の前方にx軸、上方にz軸を設定したフロント座標系を用いる。
【0030】
目標面設定部120は、作業点位置演算部110で演算された作業点位置に基づいて、設計面情報入力装置18から入力される設計面情報から作業対象となる目標面を抽出し、教示装置200に送信するとともに、目標面距離演算部130と主操作判定部140へ出力する。なお、設計面情報からの目標面の抽出には種々の方法が適用できるが、例えば、作業点に対して鉛直下方にある設計面を目標面としてもよい。また、作業点の鉛直下方に設計面が存在しない場合は、作業点に対して前方あるいは後方にある設計面を目標面としてもよい。
【0031】
図4は、目標面と車体との位置関係を模式的に示す側面図である。なお、図4においては図示の簡単のために油圧アクチュエータ5〜7の図示を省略している。
【0032】
図4に示すように、フロント座標系において、目標面設定部120で設定される目標面の車体前方を基準とした目標面の傾き、すなわち、目標面のx軸とのなす角を目標面角度と定義する。また、目標面のブーム11の回動中心からの垂直距離、すなわち、目標面とフロント座標系の原点Oの距離を目標面高さと定義する。例えば、フロント座標系のx軸に平行で原点Oと同じ高さに上向きに設定された目標面例を考えると、目標面角度および目標面高さはそれぞれ0(ゼロ)になる。また、目標面例よりも車体前方側(x軸正側)が下がるような傾斜の目標面では目標面角度が正になり、目標面例よりも車体前方側が上がるような傾斜の目標面では目標面角度が負になる。また、また、目標面例よりも上方にある目標面(つまり、フロント座標系の原点Oが目標面の表面側に無い場合)では目標面高さが正になり、目標面例よりも下方にある目標面(つまり、フロント座標系の原点Oが目標面の表面側にある場合)では目標面高さが負になる。
【0033】
目標面距離演算部130は、目標面設定部120で設定された目標面から作業点位置演算部110で演算された作業点位置までの距離である目標面距離を演算し、教示装置200に送信するとともに、推奨操作演算部150へ出力する。
【0034】
主操作判定部140は、目標面設定部120で設定された目標面に対してフロント装置15で掘削作業を行う場合に、ブーム11とアーム12のいずれの操作が主たる操作である主操作となるかを判定するものである。主操作判定部140は、目標面設定部120で設定された目標面の目標面角度と目標面高さとに応じて主操作を判定し、主操作判定として推奨操作演算部150へ出力する。
【0035】
ここで、掘削作業における主たる操作(主操作)とは、フロント装置15を動作させる場合の動作方向の主成分となる動きをする被駆動部材(本実施の形態ではブーム11又はアーム12)に該当する操作のことである。つまり、ある目標面に沿って作業点を移動させるように掘削作業を行う場合に、ブーム11又はアーム12のうち動作速度や動作量が大きい方を主操作とする。この主操作は、作業点の位置や移動方向によってブーム11又はアーム12いずれの操作が該当するかは異なるが、目標面(目標面角度および目標面高さ)が決まれば、その目標面に対する掘削作業における主操作も一意に決まる。
【0036】
例えば、第1の判定方法としては、作業点が目標面上を移動した場合の車体(上部旋回体10)に対するブーム11の角度変化量とブーム11に対するアーム12の角度変化量を公知の幾何学計算を用いて演算し、これらの比較に基づいて、角度変化量の大きい方の操作を主操作と判定する。また、第2の判定方法としては、作業点が目標面上にある状態でブーム11及びアーム12を回動駆動させた場合のブーム角速度に対する作業点の水平方向の速度成分と、アーム角速度に対する作業点の水平方向の速度成分とを演算し、これらの比較に基づいて、移動速度の大きい方の操作を主操作と判定してもよい。なお、図示しないが、本実施の形態では、目標面情報や姿勢情報などの情報に基づいて、掘削作業での目標面に対するバケット(作業具)8の姿勢が変わらないように制御する場合を示している。
【0037】
図5は、目標面の目標面角度および目標面高さをそれぞれ変化させて主操作を判定した場合の判定結果を示す図である。
【0038】
図5において、主操作の判定結果は、幾何学的に作業点が届かない位置であり掘削作業が出来ない領域(掘削不可領域)51,52と、ブーム11の角度変化量が比較的大きいためブーム11の操作を主操作として判定する領域(ブーム主操作領域)53と、アーム角速度に応じた作業点の水平方向の速度成分が比較的小さいためブーム11操作を主操作として判定する領域(ブーム主操作領域)54と、アーム12の操作を主操作として判定するその他の領域(アーム主操作領域55)と有している。ここで、図5は、目標面の目標面角度および目標面高さを入力とし、主操作の判定結果(主操作判定)を出力として与える主操作判定テーブルということができる。
【0039】
なお、図5では、第1及び第2の判定方法を例示して説明したが、他の判定方法を用いて主操作の判定を行ってもよい。また、図5では、第1及び第2の判定方法の両方を用いて主操作を判定した結果を合わせて一つの判定結果としたが、例えば、第2の判定方法のみを用いて主操作の判定結果(主操作判定テーブル)を設定してもよい。この場合には、図5に示した主操作の判定結果に対してブーム主操作領域54が無くなってアーム主操作領域となった判定結果が得られる。また、例えば、第1の判定方法のみを用いて主操作の判定結果(主操作判定テーブル)を設定した場合には、図5に示した主操作の判定結果に対してブーム主操作領域53の範囲が縮小された判定結果が得られる。また、主操作の判定結果(主操作判定テーブル)の各領域は、上部旋回体10やフロント装置15を構成する部材の構造や相対的な駆動可能範囲から幾何学的に決まるものであり、目標面の目標面角度や目標面高さの原点Oや、原点Oを通る各座標軸に対して対称であるとは限らない。
【0040】
推奨操作演算部150は、目標面設定部120で設定された目標面(目標面角度)と、目標面距離演算部130で演算された目標面距離と、主操作判定部140の判定結果(主操作判定)と、操作レバー(操作装置)1c,1dからの操作信号とに基づいて、従操作に係る支援情報である従操作指示情報を演算し、教示装置(表示装置)200に出力する。従操作指示情報は、従操作の推奨値である従操作の推奨操作量および推奨操作方向、現在操作量(操作方向の情報を含む)などの情報を含んでいる。
【0041】
図6は、推奨操作演算部による従操作指示情報の演算処理を示すフローチャートである。
【0042】
図6において、推奨操作演算部150は、まず、主操作と判定したフロント装置15の被駆動部材(ブーム11又はアーム12)の操作信号に基づいて主操作の被駆動部材の角速度(主操作角速度)を演算する(ステップS100)。例えば、ブーム11が主操作である場合は、ブーム操作信号に応じてブームシリンダ5の伸縮速度を演算し、ブーム角度信号に基づきブームシリンダの伸縮速度をブーム角速度に変換する。アームが主操作である場合も同様に、アーム操作信号に応じてアームシリンダ6の伸縮速度を演算し、アーム角度信号に基づきアームシリンダの伸縮速度をアーム角速度に変換する。なお、ブーム11及びアーム12の慣性計測装置13b,13cからの角度信号を微分することで主操作角速度を演算してもよい。
【0043】
続いて、目標面距離に基づいて目標面に対する垂直方向の目標速度である目標上下速度を演算する(ステップS110)。目標面距離が正の場合、すなわち作業点が目標面から離れている場合は目標上下速度を負とし、目標面距離が負の場合、すなわち作業点が目標面へ侵入している場合は目標上下速度を正とする。これにより、作業点が目標面に沿って動作するように目標上下速度が演算される。
【0044】
続いて、主操作角速度と目標上下速度とに基づいて、角度信号に応じて従操作目標角速度を演算する(ステップS120)。例えば、ブーム11の操作が主操作である場合は、以下の式(1)を用いて従操作であるアーム12の目標角速度ω2tを演算する。
【0045】
【数1】
【0046】
ここで、vztは目標上下速度であり、ωはブーム角速度である。また、a21及びa22は公知のヤコビ行列の成分であって、目標角速度と角度信号とに基づいて演算されるものであり、それぞれ、ブーム角速度およびアーム角速度に応じた目標面上における作業点の垂直方向速度を演算するときの係数である。
【0047】
また、同様に、アーム12の操作が主操作である場合は、以下の式(2)を用いて従操作であるブーム11の目標角速度ω1tを演算する。
【0048】
【数2】
【0049】
同様に、vztは目標上下速度であり、ωはアーム角速度であり、a21及びa22は公知のヤコビ行列の成分である。
【0050】
続いて、従操作の目標角速度に基づいて、従操作の推奨値である従操作量目標値(推奨操作量)及び推奨操作方向を演算する(ステップS130)。
【0051】
続いて、主操作判定、操作信号、従操作量目標値に基づいて、従操作指示情報を生成し、教示装置200へ送信する(ステップS140)。従操作指示情報は従操作(ブーム11又はアーム12)の操作指示情報であり、ブーム11が主操作である場合は従操作のアーム12の推奨操作量および推奨操作方向を、アーム12が主操作である場合はブーム11の推奨操作量および推奨操作方向を従操作指示情報として送信する。
【0052】
図7は、教示装置が配置される運転室内の様子を模式的に示す図である。また、図8は、教示装置の表示内容を示す図である。
【0053】
図7に示すように、運転室16には、オペレータが座る座席16aの前方左右にそれぞれ設けられた操作レバー(操作装置)である右操作レバー装置1c及び左操作レバー装置1dと、オペレータが車外を見る際に視界を妨げないように座席16a右側の右操作レバー装置1c前方に配置された教示装置200とが設置されている。図7では、右操作レバー装置1cの前後方向にブーム上げ操作及びブーム下げ操作が割り当てられ、左操作レバー装置1dの前後方向にアームダンプ操作及びアームクラウド操作が割り当てられている。なお、運転室16内に配置される走行用右操作レバー装置1a及び走行用左操作レバー装置1bを含む他の構成については図示及び説明を省略する。
【0054】
図8に示すように、教示装置200には、情報処理装置100で判定された従操作名を表示する従操作名表示部201と、従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び、現在操作量を示す従操作表示部202と、現在の目標面とフロント装置15の位置関係を表示する作業装置動作表示部203とが表示されている。図8では、フロント装置15の前方に対向する切り立った壁面を目標面として掘削作業を行う場合を例示している。この場合、アーム12が従操作であり、従操作名表示部201には従操作として「アーム」の表示がなされている。
【0055】
従操作表示部202は、従操作に対応する操作レバー1cの操作方向(つまり、前後方向)に対応して上下方向に延在する表示領域を有しており、表示領域に表示される図形の上下方向の位置や、表示領域に表示される図形の強調表示の有無などによって従操作の推奨操作量および推奨操作方向を示している。
【0056】
従操作表示部202には、操作レバー1cが操作されていない状態であることを示す図形(非操作表示)202b(ここでは、円形の図形で例示する)が表示領域の上下方向のほぼ中央部に配置されている。また、従操作表示部202には、推奨操作量及び推奨操作方向を示す図形(推奨操作量表示)202a(ここでは、2つの三角形を伴う方形の図形で例示する)が表示領域の上下方向のいずれかの位置(図8では非操作表示202bの下側)に配置されている。また、従操作表示部202の表示領域の上下方向において、非操作表示(図形202b)及び推奨操作量表示(図形202a)以外の部分を補完するように、他の複数の図形202c(ここでは、図形202aの方向を指す矢印形状の図形で例示する)が配置されている。
【0057】
従操作表示部202においては、非操作表示(図形202b)から見て、操作レバー1dの前方向への操作(アームダンプ操作)に対応する上方向がアームダンプを、操作レバー1dの後方向への操作(アームクラウド操作)に対応する下方向がアームクラウドを示している。また、非操作表示(図形202b)からの上下方向の距離によって操作レバー1dの操作量を示している。従操作表示部202において、現在の操作レバー1dの操作量は、該当する操作量および操作方向の図形を他の図形よりも強調表示(現在操作量表示)することにより示す。また、従操作表示部202において、操作レバー1dの推奨操作量及び推奨操作方向は、非操作表示(図形202b)から見た推奨操作量表示(図形202a)の表示位置、すなわち、非操作表示(図形202b)からの距離および方向で示す。
【0058】
図8では、操作レバー1dの推奨操作方向がアームクラウド方向であって、推奨操作量が図形202bから図形202aの3個分の距離で表される操作量である場合を例示している。また、現在は操作レバー1dが操作されておらず、図形202bが他の図形よりも強調表示されている場合を例示している。
【0059】
なお、図8ではアーム12が従操作である場合を例示して説明したが、ブーム11が従操作である場合にも同様に表示される。すなわち、ブーム11が従操作である場合には、従操作名表示部201に従操作として「ブーム」の表示がなされ、操作レバー1cの前方向への操作(ブーム下げ操作)に対応する上方向がブーム下げを、操作レバー1cの後方向への操作(ブーム上げ操作)に対応する下方向がブーム上げを示すように非操作表示(図形202b)や推奨操作量表示(図形202a)、他の複数の図形202cなどが表示される。
【0060】
作業装置動作表示部203には、現在の目標面とフロント装置15の位置関係が表示されている。図8では、前述のように、フロント装置15の前方に対向するようにz軸に沿って設定された目標面の掘削作業を行う場合を例示している。なお、作業装置動作表示部203には現在の目標面とフロント装置15の位置関係のみが表示されるが、図8では説明のために目標面とフロント装置15の3つの位置関係を同時に示している。
【0061】
例えば、図8の状態において、作業装置動作表示部203に示すフロント装置15の状態203aから状態203bを経て状態203cまでバケット8(作業点)が動作するように主操作であるブーム11を操作すると、従操作であるアーム12の推奨操作量表示(図形202a)の表示位置が図形202aの位置から図形202bの位置を経て図形202cの位置まで移動する。
【0062】
このように、従操作に対応する操作装置の操作方向に対応して延在する表示領域の表示を、従操作の推奨操作方向に対応して変化させることにより、従操作の推奨操作量及び推奨操作方向をオペレータに教示することができる。つまり、操作レバー1dの操作方向と教示装置200の表示内容の方向が一致しているので、オペレータは、教示装置200からの情報によって、作業点(つまり、作業具であるバケット8)を目標面に沿って動作させるための従操作の適切な推奨操作量および推奨操作方向を直感的に理解しやすくなり、また、主操作であるブーム11を操作するとともに、従操作表示部202の現在操作量表示(強調表示)が推奨操作量表示(図形202a)に一致するように従操作であるアーム12の操作を行うことで、作業点(つまり、作業具であるバケット8)を目標面に沿って容易に動作させることができる。
【0063】
以上のように構成した本実施の形態の効果を図18図21を参照しつつ説明する。
【0064】
図18図21は、目標面とフロント装置の種々の位置関係をそれぞれ例示する図である。なお、図18図21においては、車体9,10や油圧アクチュエータ5〜7の図示を省略する。
【0065】
例えば、図18に示すように、油圧ショベルのブームやアーム、バケット等によって構成されるフロント装置よりも十分下方の地形を水平な目標地形に施工する作業(いわゆる、水平引き作業)において、オペレータは、アームの操作によって設計面に平行な方向の掘削速度を調節し、ブームの操作によって掘削高さを調整する。このような場合、オペレータは、上記従来技術で教示されるようなバケットの最近接位置と設計面との間の距離を示す情報(以降、距離情報を称する)を参照することによってブームの操作を適切に行うことができる。
【0066】
しかしながら、フロント装置に対する設計面の位置によっては、距離情報だけではオペレータによる適切な操作が困難な場合がある。すなわち、例えば、図19に示すように、目標地形として切り立った壁面を掘削するような場合、バケットを設計面に沿って上方から下方に移動させると、ブーム支点の高さを境にアームに必要な動作方向(目標面の高さ方向の速度)が逆転してしまう。具体的には、図19におけるフロント装置15の姿勢151のようにバケット8がフロント座標系の原点Oよりも高い位置に有る場合にブーム下げ動作を行いながらアームクラウド動作を行うとバケット8が目標地形に沿って移動するが、姿勢152のようにバケット8がフロント座標系の原点Oよりも低い位置に有る場合にブーム下げ動作を行いながらアームクラウド動作を行うとバケット8が目標地形から離脱してしまう。つまり、オペレータによるアームの操作方向が逆転してしまうため、距離情報だけでは適切な操作を行うことが困難である。
【0067】
また、図20に示すように、フロント装置15よりも高所の水平引き作業、或いは、図21に示すように、下方手前側の壁面を目標地形とする掘削作業を行うような場合には、掘削高さを調節するためブームの操作によってアームに必要な掘削速度が大きく変化してしまう。つまり、オペレータはブームの操作によって生じるアームに必要な速度の変化に対応しなければならず、この場合にも距離情報だけで十分な掘削精度を得ることは困難であった。
【0068】
これに対して本実施の形態においては、ブーム11、アーム12、及びバケット(作業具)8を垂直方向に回動可能に連結して構成され、油圧ショベル600(建設機械)の車体(上部旋回体10、下部走行体9)に垂直方向に回動可能に支持された多関節型のフロント装置15と、フロント装置15のブーム11、アーム12、及びバケット8をそれぞれ操作するための操作信号を出力する操作レバー(操作装置)1c,1dと、ブーム11、アーム12、及びバケット8のそれぞれの姿勢情報を検出する慣性計測装置13a〜13c(姿勢情報検出装置)と、慣性計測装置13a〜13cの検出情報と、掘削対象の目標形状の情報である設計面情報と、操作レバー1c,1dからの操作信号とに基づいて情報処理を行う情報処理装置100とを備えた油圧ショベル600において、情報処理装置100は、姿勢情報に基づいてバケット8上に設定された作業点の車体9,10に対する相対位置を演算する作業点位置演算部110と、設計面情報に基づいて掘削作業の対象となる目標面を設定する目標面設定部120と、目標面に沿って作業点を移動させる場合にブーム11及びアーム12のいずれの操作が主たる操作である主操作であるかを判定する主操作判定部140と、掘削作業を行う場合に、ブーム11及びアーム12の操作のうち主操作とは異なる他の操作である従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を主操作の操作量及び操作方向に応じて演算し、従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を教示装置(表示装置)200に表示する推奨操作演算部150とを備えて構成したので、オペレータに適切な操作を分かりやすく伝えることができる。
【0069】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図9及び図10を参照しつつ説明する。
【0070】
本実施の形態は、教示装置に従操作指示情報(従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び現在操作量)と併せて主操作指示情報(主操作の現在操作量及び推奨操作方向)を表示するものである。
【0071】
図9は、情報処理装置の詳細を示す機能ブロック図である。また、図10は、教示装置の表示内容を示す図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0072】
図9において、情報処理装置100Aは、作業点位置演算部110、目標面設定部120、目標面距離演算部130、主操作判定部140、及び推奨操作演算部150Aを有している。
【0073】
推奨操作演算部150Aは、目標面設定部120で設定された目標面(目標面角度)と、目標面距離演算部130で演算された目標面距離と、主操作判定部140の判定結果(主操作判定)と、操作レバー(操作装置)1c,1dからの操作信号とに基づいて、第1及び第2操作指示情報(従操作指示情報又は主操作指示情報)を演算し、教示装置200に送信する。
【0074】
第1操作指示情報はブーム操作に関する操作指示情報であり、第2操作指示情報はアーム操作に関する操作指示情報である。つまり、ブーム11の操作が主操作である場合には、第1操作指示情報として主操作指示情報(主操作の現在操作量及び推奨操作方向)を生成して送信し、第2操作指示情報として従操作指示情報(従操作の推奨操作量及び推奨操作方向)を生成して送信する。また、アーム12の操作が主操作である場合には、第1操作指示情報として従操作指示情報を生成して送信し、第2操作指示情報として主操作指示情報を生成して送信する。
【0075】
図10に示すように、教示装置200には、情報処理装置100で判定された従操作名を表示する従操作名表示部201と、従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び、現在操作量を示す従操作表示部202と、情報処理装置100Aで判定された主操作名を表示する主操作名表示部204と、主操作の現在の操作量および操作方向を示す主操作表示部205と、現在の目標面とフロント装置15の位置関係を表示する作業装置動作表示部203とが表示されている。図8では、フロント装置15の前方に対向する切り立った壁面を目標面として掘削作業を行う場合を例示している。この場合、アーム12が従操作でありブーム11が主操作であるので、従操作名表示部201には従操作として「アーム」の表示がなされ、主操作名表示部204には主操作として「ブーム」の表示がなされている。
【0076】
主操作表示部205は、主操作に対応する操作レバー1cの操作方向(つまり、前後方向)に対応して上下方向に延在する表示領域を有しており、表示領域に表示される図形の形状や、表示領域に表示される図形の強調表示の有無などによって主操作の現在操作量および推奨操作方向を示している。
【0077】
主操作表示部205には、操作レバー1cが操作されていない状態であることを示す図形(非操作表示)205a(ここでは、円形の図形で例示する)が表示領域の上下方向のほぼ中央部に配置されている。また、主操作表示部205には、操作レバー1cの推奨操作方向を示す複数の図形(推奨操作方向表示)205b(推奨操作方向を指す矢印形状の図形で例示する)が図形(非操作表示)205aの上下方向のいずれか(図10では非操作表示205aの上側)に並べて配置されている。また、主操作表示部205の表示領域の上下方向において、非操作表示(図形205a)及び推奨操作方向表示(図形205b)以外の部分を補完するように、他の複数の図形205c(ここでは、方形の図形で例示する)が配置されている。
【0078】
主操作表示部205においては、非操作表示(図形205a)から見て、操作レバー1cの前方向への操作(ブーム下げ操作)に対応する上方向がブーム下げを、操作レバー1cの後方向への操作(ブーム上げ操作)に対応する下方向がブーム上げを示している。また、非操作表示(図形205a)からの上下方向の距離によって操作レバー1cの操作量を示している。主操作表示部205において、現在の操作レバー1cの操作量は、該当する操作量および操作方向の図形を他の図形よりも強調表示(現在操作量表示)することにより示す。また、主操作表示部205において、操作レバー1cの推奨操作方向は、非操作表示(図形205a)から見た推奨操作方向表示(図形205b)の表示方向で示す。図8では、操作レバー1cの推奨操作方向がブーム下げ方向であって、現在操作量が図形205aから図形205bの3個分の距離で表される操作量である場合を例示している。
【0079】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0080】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
また、教示装置200に従操作指示情報(従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び現在操作量)と併せて主操作指示情報(主操作の現在操作量及び推奨操作方向)を表示するように構成したので、オペレータにどの操作から行うべきかを分かり易く伝えることができる。
【0082】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図11図13を参照しつつ説明する。
【0083】
本実施の形態は、第2の実施の形態において教示装置とは別に補助教示装置を備え、情報処理装置で演算された第1及び第2操作指示情報(従操作指示情報又は主操作指示情報)を、教示装置と補助教示装置に分けて送信するものである。
【0084】
図11は、油圧ショベルに搭載される操作支援システムを概略的に示す図である。図中、第1及び第2の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0085】
図11において、操作支援システム500Bは、油圧ショベル600の動作を制御するための種々の機能を有する制御装置の一部を構成し、オペレータの掘削作業を支援するための情報(支援情報)を生成する情報処理装置100Aと、運転室16に配置されてオペレータに掘削作業の支援情報などを教示する液晶パネルなどの教示装置(表示装置)200及び補助教示装置(表示装置)300とを有している。情報処理装置100Aには、左右の操作レバー装置1c,1dからの操作信号と、各慣性計測装置13a〜13dからの検出信号(角度信号:姿勢情報)と、設計面情報入力装置18からの設計面情報とが入力されており、これらの入力に基づいて情報処理を行っている。
【0086】
情報処理装置100Aは、ブーム操作に関する操作指示情報である第1操作指示情報(従操作指示情報又は主操作指示情報)を演算して教示装置200に送信するとともに、アーム操作に関する操作指示情報である第2操作指示情報(従操作指示情報又は主操作指示情報)を演算して補助教示装置300に送信する。つまり、ブーム11の操作が主操作である場合には、第1操作指示情報として主操作指示情報(主操作の現在操作量及び推奨操作方向)を生成して送信し、第2操作指示情報として従操作指示情報(従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び現在操作量)を生成して送信する。また、アーム12の操作が主操作である場合には、第1操作指示情報として従操作指示情報を生成して送信し、第2操作指示情報として主操作指示情報を生成して送信する。
【0087】
図12は、教示装置及び補助教示装置が配置される運転室内の様子を模式的に示す図である。また、図13は、教示装置及び補助教示装置の表示内容を比較のために並べて示す図である。
【0088】
図12に示すように、運転室16には、オペレータが座る座席16aの前方左右にそれぞれ設けられた操作レバー(操作装置)である右操作レバー装置1c及び左操作レバー装置1dと、オペレータが車外を見る際に視界を妨げないように座席16a右側の右操作レバー装置1c前方に配置された教示装置200と、同様にオペレータが車外を見る際に視界を妨げないように座席16a左側の左操作レバー装置1d前方に配置された補助教示装置300とが設置されている。なお、補助教示装置300は、例えばスマートフォンなどの携帯端末でもよく、補助教示装置ホルダ301に設置される。
【0089】
図12では、右操作レバー装置1cの前後方向にブーム上げ操作及びブーム下げ操作が割り当てられ、左操作レバー装置1dの前後方向にアームダンプ操作及びアームクラウド操作が割り当てられている。なお、運転室16内に配置される走行用右操作レバー装置1a及び走行用左操作レバー装置1bを含む他の構成については図示及び説明を省略する。
【0090】
図13に示すように、ブーム操作に対応する右操作レバー装置1c前方に配置された教示装置200にはブーム操作に関する第1操作指示情報に基づいた表示がなされ、アーム操作に対応する左操作レバー装置1d前方に配置された補助教示装置300にはアーム操作に関する第2操作指示情報に基づいた表示がなされる。図13では、フロント装置15の前方に対向する切り立った壁面を目標面として掘削作業を行う場合を例示している。この場合、アーム12が従操作でありブーム11が主操作であるので、教示装置200には情報処理装置100Aで第1操作指示情報として生成された従操作指示情報に基づいた表示がなされ、補助教示装置300には第2操作指示情報として生成された主操作指示情報に基づいた表示がなされる。
【0091】
つまり、アーム12が従操作でありブーム11が主操作であるので、教示装置200には、情報処理装置100Aで判定された主操作名を表示する主操作名表示部204と、主操作の現在の操作量および操作方向を示す主操作表示部205と、現在の目標面とフロント装置15の位置関係を表示する作業装置動作表示部203とが表示される。また、補助教示装置300には、情報処理装置100Aで判定された従操作名を表示する従操作名表示部201と、従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び、現在操作量を示す従操作表示部202とが表示される。補助教示装置300の従操作名表示部201には従操作として「アーム」の表示がなされ、教示装置200の主操作名表示部204には主操作として「ブーム」の表示がなされている。
【0092】
その他の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0093】
以上のように構成した本実施の形態においても第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
また、教示装置200と補助教示装置300をそれぞれ表示対象とする操作量に対応した操作レバー1c,1dの近くに配置するように構成したので、オペレータがより直感的に適切な操作を理解しやすくなる。
【0095】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態を図14及び図15を参照しつつ説明する。
【0096】
本実施の形態は、第3の実施の形態において操作レバーのパターンが変更された場合に対応した表示を行うようにしたものである。
【0097】
図14は、教示装置及び補助教示装置が配置される運転室内の様子を模式的に示す図である。また、図15は、補助教示装置の表示内容を示す図である。図中、第1〜第3の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0098】
図14に示すように、運転室16には、オペレータが座る座席16aの前方左右にそれぞれ設けられた操作レバー(操作装置)である右操作レバー装置1c及び左操作レバー装置1dと、オペレータが車外を見る際に視界を妨げないように座席16a右側の右操作レバー装置1c前方に配置された教示装置200と、同様にオペレータが車外を見る際に視界を妨げないように座席16a左側の左操作レバー装置1d前方に配置された補助教示装置300Cとが設置されている。
【0099】
図14では、右操作レバー装置1cの前後方向にブーム上げ操作及びブーム下げ操作が割り当てられ、左操作レバー装置1dの左右方向にアームダンプ操作及びアームクラウド操作が割り当てられている。なお、運転室16内に配置される走行用右操作レバー装置1a及び走行用左操作レバー装置1bを含む他の構成については図示及び説明を省略する。
【0100】
図15に示すように、アーム操作に対応する左操作レバー装置1d前方に配置された補助教示装置300Cには、アーム操作に関する第2操作指示情報に基づいた表示がなされる。図15では、アーム12が従操作であり、補助教示装置300には、第2操作指示情報として生成された主操作指示情報に基づいた表示がなされる場合を例示する。この場合、補助教示装置300Cには、情報処理装置100Aで判定された従操作名を表示する従操作名表示部201と、従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び、現在操作量を示す従操作表示部202Cとが表示される。補助教示装置300Cの従操作名表示部201には従操作として「アーム」の表示がなされる。
【0101】
従操作表示部202Cは、従操作に対応する操作レバー1dの操作方向(つまり、左右方向)に対応して左右方向に延在する表示領域を有しており、表示領域に表示される図形の形状や、表示領域に表示される図形の強調表示の有無などによって従操作の現在操作量および推奨操作方向を示している。
【0102】
従操作表示部202Cには、操作レバー1dが操作されていない状態であることを示す図形(非操作表示)202b(ここでは、円形の図形で例示する)が表示領域の左右方向のほぼ中央部に配置されている。また、従操作表示部202Cには、推奨操作量及び推奨操作方向を示す図形(推奨操作量表示)202a(ここでは、2つの三角形を伴う方形の図形で例示する)が表示領域の左右方向のいずれかの位置(図8では非操作表示202bの右側)に配置されている。また、従操作表示部202Cの表示領域の左右方向において、非操作表示(図形202b)及び推奨操作量表示(図形202a)以外の部分を補完するように、他の複数の図形202c(ここでは、図形202aの方向を指す矢印形状の図形で例示する)が配置されている。
【0103】
その他の構成は第3の実施の形態と同様である。
【0104】
以上のように構成した本実施の形態においても第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、操作レバーのパターンが変更された場合においても、その操作レバーに対応する補助教示装置300(または、教示装置200)を変更後の操作レバーのパターンに合わせた方向(例えば横方向)に向けて設置するように構成したので、操作レバーの方向と補助教示装置300(または、教示装置200)の表示内容の方向が一致するため、オペレータがより直感的に適切な操作を理解しやすくなる。
【0106】
<第5の実施の形態>
本発明の第5の実施の形態を図16及び図17を参照しつつ説明する。
【0107】
本実施の形態は、第2の実施の形態において主操作の操作量及び操作方向に基づいて演算及び表示されていた従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を、オペレータによるレバー操作がなされていない場合にも予測的に演算及び表示するようにしたものである。
【0108】
図16は、情報処理装置の詳細を示す機能ブロック図である。図中、第1及び第2の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0109】
図16において、情報処理装置100Dは、作業点位置演算部110、目標面設定部120、目標面距離演算部130、主操作判定部140、推奨操作演算部150D、及び加算演算子170を有している。
【0110】
推奨操作演算部150Dは、目標面設定部120で設定された目標面(目標面角度)と、目標面距離演算部130で演算された目標面距離と、主操作判定部140の判定結果(主操作判定)と、操作レバー(操作装置)1c,1dからの操作信号とに基づいて、第1及び第2操作指示情報(従操作指示情報又は主操作指示情報)を演算し、教示装置200に送信する。また、推奨操作演算部150Dは、操作レバー(操作装置)1c,1dからの操作信号が無い場合には、擬似的に主操作の被駆動部材の角速度(擬似主操作角速度)の演算を行うとともに、擬似主操作角速度に対応する角度信号(擬似姿勢信号)を擬似的に生成して加算演算子170に出力する。推奨操作演算部150Dは、擬似姿勢信号に基づいて作業点位置演算部110の演算結果を擬似的に取得することにより、目標面距離演算部130の演算結果を擬似的に取得し、結果として擬似的に従操作目標角速度を得る。なお、擬似姿勢信号は、擬似主操作角速度および従操作目標角速度をそれぞれ積分したものである。
【0111】
加算演算子170は、情報処理装置100Dへの角度信号(姿勢信号)の入力部に設けられており、慣性計測装置13a〜13dから情報処理装置100Dに入力される角度信号(姿勢信号)に、推奨操作演算部150Dで擬似的に生成した角度信号(擬似姿勢情報)を加算して、作業点位置演算部110及び推奨操作演算部150Dに出力する。
【0112】
図17は、推奨操作演算部による従操作指示情報の演算処理を示すフローチャートである。
【0113】
図17において、推奨操作演算部150Dは、まず、操作信号に基づいて操作レバー1c,1dが操作されているかどうかを判定し(ステップS200)、判定結果がYESの場合には、主操作と判定したフロント装置15の被駆動部材(ブーム11又はアーム12)の操作信号に基づいて主操作の被駆動部材の角速度(主操作角速度)を演算する(ステップS210)。また、ステップS200での判定結果がNOの場合、すなわち、操作レバー1c,1dが操作されていないと判定した場合には、擬似的に主操作の被駆動部材の角速度(擬似主操作角速度)の演算を行う(ステップS211)。
【0114】
ステップS210又はS211において、主操作角速度又は擬似主操作角速度が演算されると、続いて、目標面距離に基づいて目標面に対する垂直方向の目標速度である目標上下速度を演算する(ステップS220)。続いて、主操作角速度又は擬似主操作角速度と目標上下速度とに基づいて、角度信号に応じて従操作目標角速度を演算する(ステップS230)。続いて、従操作の目標角速度に基づいて、従操作の推奨値である従操作量目標値(推奨操作量)及び推奨操作方向を演算する(ステップS240)。続いて、主操作判定、操作信号、従操作量目標値に基づいて、従操作指示情報を生成し、主操作指示情報とともに教示装置200へ送信する(ステップS250)。
【0115】
ここで、操作信号に基づいて操作レバー1c,1dが操作されているかどうかを再度判定し(ステップS260)、判定結果がNOの場合には、擬似主操作角速度に対応する角度信号(擬似姿勢信号)を擬似的に生成して加算演算子170を介して情報処理装置100Dに入力する角度加算値演算処理を行い(ステップS261)、処理を終了する。また、ステップS260での判定結果がYESの場合には、加算演算子170に出力している角度信号(擬似姿勢信号)を0(ゼロ)にリセットする角度加算値初期化処理を実行し(ステップS270)、処理を終了する。
【0116】
その他の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0117】
以上のように構成した本実施の形態においても第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0118】
また、オペレータによる操作がなされていない場合は、オペレータの操作開始前に目標動作およびまたは推奨操作が教示装置200へ表示され、オペレータが適切な操作を理解しやすくなる。
【0119】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0120】
(1)上記の実施の形態では、ブーム11、アーム12、及び作業具(例えば、バケット8)を垂直方向に回動可能に連結して構成され、建設機械(例えば、油圧ショベル600)の車体(例えば、上部旋回体10及び下部走行体9)に垂直方向に回動可能に支持された多関節型のフロント装置15と、フロント装置15のブーム11、アーム12、及び作業具をそれぞれ操作するための操作信号を出力する操作装置(例えば、操作レバー1c,1d)と、ブーム11、アーム12、及びバケット8のそれぞれの姿勢情報を検出する姿勢情報検出装置(例えば、慣性計測装置13a〜13c)と、姿勢情報検出装置の検出情報と、掘削対象の目標形状の情報である設計面情報と、操作装置からの操作信号とに基づいて情報処理を行う情報処理装置100とを備えた建設機械において、情報処理装置100は、姿勢情報に基づいて作業具上に設定された作業点の車体に対する相対位置を演算する作業点位置演算部110と、設計面情報に基づいて掘削作業の対象となる目標面を設定する目標面設定部120と、前記目標面の目標角度および目標高さに基づいた主操作判定テーブルを用いて、前記目標面に対して前記ブーム11前記アーム12のいずれの操作が主操作となるかを判定する主操作判定部140と、掘削作業を行う場合に、ブーム11及びアーム12の操作のうち前記主操作とは異なる他の操作である従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を主操作の操作量及び操作方向に応じて演算し、従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を教示装置(例えば、教示装置200)に表示する推奨操作演算部150とを備え、前記推奨操作演算部は、前記操作装置が操作されていない場合に、前記目標面に対応する掘削作業で想定される前記主操作の操作量及び操作量を仮定した擬似操作量及び擬似操作方向を設定し、前記ブーム及び前記アームの操作のうち前記主操作とは異なる他の操作である従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を前記主操作の擬似操作量及び擬似操作方向に応じて演算し、前記従操作の推奨操作量及び推奨操作方向を教示装置に表示するものとした。
【0121】
このように構成することにより、オペレータに適切な操作を分かりやすく伝えることができる。また、オペレータによる操作がなされていない場合は、オペレータの操作開始前に目標動作およびまたは推奨操作が教示装置へ表示され、オペレータが適切な操作を理解しやすくなる。
【0122】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記推奨操作演算部は、前記従操作の推奨操作量及び推奨操作方向と同時に、前記主操作の操作量及び操作方向を前記教示装置に表示するものとした。
【0123】
このように、教示装置に従操作指示情報(従操作の推奨操作量、推奨操作方向、及び現在操作量)と併せて主操作指示情報(主操作の現在操作量及び推奨操作方向)を表示するように構成したので、オペレータにどの操作から行うべきかを分かり易く伝えることができる。
【0124】
(3)また、上記の実施の形態では、(2)の建設機械において、前記教示装置は、前記主操作に対応する前記操作装置の操作方向に対応して延在する表示領域の表示を、前記主操作の操作方向に対応して変化させるものとした。
【0125】
このように、操作レバーの操作方向と教示装置の表示内容の方向が一致しているので、オペレータは、教示装置からの情報によって、主操作の操作量および操作方向を直感的に理解しやすくなる。
【0126】
(4)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記教示装置は、前記従操作に対応する前記操作装置の操作方向に対応して延在する表示領域の表示を、前記従操作の推奨操作方向に対応して変化させるものとした。
【0127】
このように、操作レバーの操作方向と教示装置の表示内容の方向が一致しているので、オペレータは、教示装置からの情報によって、作業点(つまり、作業具であるバケット8)を目標面に沿って動作させるための従操作の適切な推奨操作量および推奨操作方向を直感的に理解しやすくなる。
【0130】
<付記>
なお、上記の実施の形態においては、エンジン等の原動機で油圧ポンプを駆動する一般的な油圧ショベルを例に挙げて説明したが、油圧ポンプをエンジン及びモータで駆動するハイブリッド式の油圧ショベルや、油圧ポンプをモータのみで駆動する電動式の油圧ショベル等にも本発明が適用可能であることは言うまでもない。
【0131】
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0132】
1…フロント装置(フロント作業機)、1a…走行用右操作レバー装置、1b…走行用左操作レバー装置、1c…右操作レバー装置(操作装置)、1d…左操作レバー装置(操作装置)、2…油圧ポンプ装置、3b…走行油圧モータ、4…旋回油圧モータ、5…ブームシリンダ、6…アームシリンダ、7…バケットシリンダ、8…バケット(作業具)、8a…バケットリンク、9…下部走行体、10…上部旋回体、11…ブーム、12…アーム、13a〜13d…慣性計測装置(IMU)、14…エンジン(原動機)、15…フロント装置(フロント作業機)、16…運転室、16a…座席、17a〜17c…圧力センサ、18…設計面情報入力装置、20…コントロールバルブ、51…掘削不可領域、52…掘削不可領域、53,54…ブーム主操作領域、55…アーム主操作領域、100,100A,100D…情報処理装置、110…作業点位置演算部、120…目標面設定部、130…目標面距離演算部、140…主操作判定部、150,150A,150D…推奨操作演算部、170…加算演算子、200…教示装置(表示装置)、201…従操作名表示部、202,202C…従操作表示部、202a…推奨操作量表示、202b…非操作表示、202c…図形、203…作業装置動作表示部、204…主操作名表示部、205…主操作表示部、205a…非操作表示、205b…推奨操作方向表示、205c…図形、300…補助教示装置(表示装置)、301…補助教示装置ホルダ、500,500B…操作支援システム、600…油圧ショベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18
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図21