(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
推進部に駆動力を与える主機及び推進電動機と、前記推進電動機に電力を供給する複数の主発電機とを備えた船舶に搭載される運航計画装置のコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記船舶の現在の運転に関する情報であって、少なくとも前記船舶の使用可能燃料量を示す情報を含む状態情報を取得する情報取得ステップと、
前記船舶の将来の運転に関する情報であって、前記主機及び前記推進電動機の運転の組み合わせを示す計画推進モード情報と、複数の前記主発電機の運転の組み合わせを示す計画運転区分情報とを取得する計画取得ステップと、
前記使用可能燃料量と、前記計画推進モード情報と、前記計画運転区分情報とに基づいて、前記船舶が航走可能な距離を示す予測航続距離を計算する航続距離計算ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る運航計画システム1について、
図1〜
図8を参照しながら説明する。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る運航計画システムの概略を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る運航計画システム1は、監視制御盤100と、推進プラント20と、電源プラント30と、船内負荷40と、複数のセンサ50と、運航計画装置10と、を備えている。
【0016】
監視制御盤100は、船舶の運転に関連する各機器の監視及び制御を行う。
【0017】
推進プラント20は、船舶に推力を与えるための設備である。
図1に示すように、推進プラント20は、左舷及び右舷に一つずつ設けられたプロペラP1及びP2(推進部)と、主機GT1及びGT2と、推進電動機M1及びM2と、減速機RG1及びRG2とを備えている。なお、以降の説明において、プロペラP1及びP2、主機GT1及びGT2、推進電動機M1及びM2、減速機RG1及びRG2をそれぞれ「プロペラP」、「主機GT」、「推進電動機M」、「減速機RG」とも称する。
推進プラント20は、主機GT及び推進電動機Mから与えられる駆動力によってプロペラPを回転させることにより、船舶に推力を与える。即ち、主機GT及び推進電動機Mは、推進プラント20におけるプロペラPの動力源である。
【0018】
主機GTは、例えばガスタービンであり、燃料を燃焼したエネルギーを回転エネルギーに変換して出力する。そして、出力された回転エネルギーは、減速機RGを介してプロペラPに伝達され、プロペラPを回転させる動力となる。
【0019】
推進電動機Mは、後述の電源プラント30から供給される電力により回転駆動され、回転エネルギーを出力する。そして、出力された回転エネルギーは、減速機RGを介してプロペラPに伝達され、プロペラPを回転させる動力となる。
【0020】
減速機RGは、主機GT及び推進電動機Mの一方、または、両方からの回転エネルギーを減速して、プロペラPに伝達する。
【0021】
電源プラント30は、推進プラント20及び船内負荷40に電力を供給するための設備である。
図1に示すように、電源プラント30は、複数の主発電機G(G1〜G4)を備えている。本実施形態では、電源プラント30は、四台の主発電機G1〜G4を備えている。また、例えば、二台の主発電機G1及びG2はディーゼルエンジン(ディーゼル主発電機)であり、二台の主発電機G2及びG3はガスタービン(ガスタービン主発電機)である。以降の説明において、主発電機G1〜G4を総称して「主発電機G」とも称する。
なお、電源プラント30は複数の主発電機を備えていればよく、他の実施形態では、例えば主発電機は四台より少なくても多くてもよい。また、複数の主発電機は、異なる数のディーゼル主発電機及びガスタービン主発電機の組み合わせにより構成されていてもよいし、ディーゼル主発電機またはガスタービン主発電機のみで構成されていてもよい。
また、
図1に示すように、主発電機G1〜G4のそれぞれは、切替器31を介して推進プラント20の推進電動機M及び船内負荷40と接続される。切替器31は、監視制御盤100の制御に基づいて、主発電機G1〜G4それぞれから推進電動機Mへの電力供給を遮断または許可する。
【0022】
船内負荷40は、船内の各所に設けられ、電力を消費する複数の負荷LDを有する。負荷LDは、例えば、照明、空調等の電気機器である。
負荷LDのそれぞれは、電源プラント30の切替器31を介して主発電機Gと接続される。
【0023】
センサ50は、船舶内の各部に複数設けらており、船舶の現在の運転に関する状態情報を検出する。
状態情報とは、船舶の速力、推進モード、使用可能燃料量、主機GT及び主発電機G(以下、原動機とも称する)の運転状態(例えば出力、燃料消費量、運転時間、吸気温度、排ガス温度、軸馬力、起動回数)、推進電動機Mの運転状態(例えば出力、消費電力)、負荷LDの運転状態(例えば電源ON/OFF状態、負荷消費電力)等を含む。
また、センサ50は、検出した状態情報を、LANを介して監視制御盤100及び運航計画装置10の少なくとも一方に出力する。
【0024】
運航計画装置10は、船舶の運航計画の策定を支援するための装置である。
運航計画とは、船舶の経路、速力、運転パターン等を予め規定したものである。本実施形態では、運航計画装置10は、運航計画の策定を支援するための各種情報を監視制御盤100に出力する。
運転パターンとは、主機GT、推進電動機M、及び複数の主発電機Gのうち運転させる機器の組み合わせを示すものであり、推進プラント20の推進モードと、電源プラント30の運転区分とを含む。
推進モードは、推進プラント20の主機GT及び推進電動機Mのうち、プロペラPの動力源として運転させる機器の組み合わせを示す。例えば、推進モードは、推進電動機MのみをプロペラPの動力源とする「モードA(電気推進モード)」、主機GTのみをプロペラPの動力源とする「モードB(機械推進モード)」、主機GT及び推進電動機MをプロペラPの動力源とする「モードC(複合推進モード)」の三つのモードを有する。
運転区分は、電源プラント30の複数の主発電機G1〜G4のうち、推進電動機M及び船内負荷40への電力の供給源として運転させる機器の組み合わせを示す。
【0025】
(運航計画システムの機能構成)
図2は、本発明の一実施形態に係る運航計画システムの機能構成を示す図である。
まず、
図2を参照して、監視制御盤100の機能構成について説明する。
図2に示すように、監視制御盤100は、操作部101と、表示部102と、通信インタフェース(I/F)103と、CPU110と、を備えるコンピュータである。
【0026】
操作部101は、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置であり、操作者の操作を受け付ける。
表示部102は、液晶ディスプレイ等の表示装置であり、各種情報を表示する。
通信I/F103は、LANを介して推進プラント20、電源プラント30、船内負荷40、センサ50との間で各種命令及び情報の送受信を行う。また、通信I/F103は、LANまたは専用回線を介して運航計画装置10との間で各種情報の送受信を行う。
【0027】
CPU110は、制御部110Aを有している。
制御部110Aは、操作者が操作部101を介して運航計画の入力等の操作を行うと、当該操作に基づいて、推進プラント20、電源プラント30、船内負荷40の各機器を制御する制御信号を出力する。
【0028】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る運航計画装置10のハードウェア構成について説明する。
図2に示すように、運航計画装置10は、通信インタフェース(I/F)11と、主記憶装置12と、補助記憶装置13と、入出力インタフェース(I/F)14と、CPU15と、を備えるコンピュータである。
【0029】
通信I/F11は、LANを介して推進プラント20、電源プラント30、船内負荷40、センサ50との間で各種情報の送受信を行う。
また、通信I/F11は、LANまたは専用回線を介して監視制御盤100との間で各種情報の送受信を行う。
なお、通信I/F11は、推進プラント20、電源プラント30、船内負荷40、センサ50との間で各種情報の送受信を、監視制御盤100を介して行うようにしてもよい。
【0030】
CPU15は、補助記憶装置13に記憶されているプログラムを読み出して主記憶装置12に展開し、当該プログラムに従って各種処理を実行する。
補助記憶装置13の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置13は、運航計画装置10のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、入出力I/F14または通信I/F11を介して運航計画装置10に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信I/F11を介して運航計画装置10に配信される場合、配信を受けた運航計画装置10が当該プログラムを主記憶装置12に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置13は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0031】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る運航計画装置10のソフトウェア構成について説明する。
CPU15は、
図4に示すように、情報取得部15Aと、計画取得部15Bと、航続距離計算部15Cと、燃料消費計算部15Dと、滞洋時間計算部15Eと、補正部15Fとを有している。
【0032】
情報取得部15Aは、船舶の現在の運転に関する情報であって、少なくとも船舶の使用可能燃料量を示す情報を含む状態情報を取得する。このとき、情報取得部15Aは、通信I/F11を介して複数のセンサ50が検出した状態情報を取得してもよいし、監視制御盤100が複数のセンサ50から収集した状態情報を取得するようにしてもよい。
また、情報取得部15Aは、取得した状態情報を補助記憶装置13に記憶して蓄積する。
【0033】
計画取得部15Bは、船舶の将来の運転に関する情報であって、船舶が計画する主機GT及び推進電動機Mの運転の組み合わせを示す計画推進モード情報と、複数の主発電機Gの運転の組み合わせを示す計画運転区分情報とを取得する。
また、計画取得部15Bは、計画航走距離情報と、計画速力情報と、計画船内電力情報と、帰港計画情報とを取得する。
計画推進モード情報及び計画運航区分情報は、船舶の今後の運航において用いる予定の推進モード及び運航区分を示す情報である。
計画航走距離情報は、船舶が航走予定の距離(mile)を速力別に示す情報である。即ち、計画航走距離情報は、どの速力でどのくらいの距離を航走する予定であるかを、速力別に示す情報である。
計画速力情報は、船舶が航走予定の速力(kt)を示す情報である。
計画船内電力情報は、船内負荷40で使用される予定の船内電力(kW)を示す情報である。
帰港計画情報は、船舶がある地点から帰港するために残しておく燃料量(残量計画)を示す情報であり、帰港時に予定される航走距離、速力等に応じて任意の燃料量(t)が指定される。
なお、これらの情報は、監視制御盤100の操作部101を介して、操作者により任意の値が入力される。計画取得部15Bは、操作者により入力された各情報を、監視制御盤100から通信I/F11を介して取得する。
【0034】
航続距離計算部15Cは、使用可能燃料量と、計画推進モード情報と、計画運転区分情報とに基づいて、船舶が航走可能な距離を示す予測航続距離を計算する。
航続距離計算部15Cは、計算した予測航続距離を、通信I/F11を介して監視制御盤100に出力する。そうすると、予測航続距離は、監視制御盤100の表示部102に表示される。
【0035】
燃料消費計算部15Dは、計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画航走距離情報とに基づいて船舶の予測燃料消費量を計算する。
燃料消費計算部15Dは、計算した予測燃料消費量を、通信I/F11を介して監視制御盤100に出力する。そうすると、予測燃料消費量は、監視制御盤100の表示部102に表示される。
【0036】
滞洋時間計算部15Eは、使用可能燃料量と、計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画速力情報とに基づいて、船舶が洋上に滞在可能な時間を示す予測滞洋時間を計算する。
なお、滞洋時間計算部15Eは、帰港計画情報に基づいて、使用可能燃料量から帰港のために使用する予定の燃料量を減じた上で、予測滞洋時間を計算するようにしてもよい。また、滞洋時間計算部15Eは、計画船内電力情報に基づいて、船内負荷40で使用される電力を加味した予測滞洋時間を計算するようにしてもよい。
滞洋時間計算部15Eは、計算した予測滞洋時間を、通信I/F11を介して監視制御盤100に出力する。そうすると、予測滞洋時間は、監視制御盤100の表示部102に表示される。
【0037】
補正部15Fは、状態情報に基づいて、補助記憶装置13に記憶されている原動機(主機GT及び主発電機G)別の燃料消費特性を補正する。
燃料消費特性は原動機の経年劣化等により変化する。このため、補正部15Fは、所定周期(例えば1年)ごとに補助記憶装置13に蓄積された状態情報に基づいて、燃料消費特性を補正する。なお、所定周期は、操作者により、監視制御盤100の操作部101を介して任意の周期を設定することができる。
【0038】
また、運航計画装置10から出力された予測航続距離、予測燃料消費量、及び予測滞洋時間は、監視制御盤100の表示部102に表示される。操作者は、表示部102に表示されたこれらの情報を参照して、船舶の運航計画を決定する操作を、操作部101を介して行う。そうすると、監視制御盤100の制御部110Aは、操作者の操作に基づいて、推進プラント20、電源プラント30に対し、決定された運航計画に応じた運転を行うことを指示する制御信号を出力する。
【0039】
(運航計画装置の処理フロー)
図3は、本発明の一実施形態に係る運航計画装置の第1の処理フローである。
図4は、本発明の一実施形態に係る運航計画装置の機能を説明する第1の図である。
以下、
図3〜
図4を参照して、運航計画装置10が予測航続距離を計算する処理について説明する。
【0040】
運航計画装置10において予測航続距離を計算する処理を実行する場合、まず、操作者は、任意の計画推進モード情報及び計画運転区分情報を監視制御盤100の操作部101を介して入力し、運航計画装置10に計算の実行を指示する操作を行う。
このとき、操作者は、計画推進モード情報及び計画運転区分情報の組み合わせ(運転パターン)を複数入力してもよい。本実施形態では、例えば操作者は三つの運転パターンを入力可能であるとする。
操作者が操作部101を介して入力操作を行うと、運航計画装置10の計画取得部15Bは、
図3に示すように、計画推進モード情報と、計画運転区分情報とを取得する(ステップS100)。
【0041】
次に、航続距離計算部15Cは、情報取得部15Aが取得した使用可能燃料量と、計画取得部15Bが取得した計画推進モード情報及び計画運転区分情報とに基づいて、船舶が航走可能な距離を示す予測航続距離を、速力別に計算する(ステップS101)。
航続距離計算部15Cは、計画推進モード情報及び計画運転区分情報で指定された運転を行った場合に原動機が消費する予測燃料消費量を、補助記憶装置13に予め記憶されている燃料消費特性を用いて船舶の速力別に計算する。燃料消費特性は、原動機の燃料消費量の指標となる情報であり、原動機の種類(ディーゼルエンジン、ガスタービン)別及び機種(ディーゼルエンジンの機種、ガスタービンの機種)別の燃料消費特性が予め補助記憶装置13に記憶されている。
そして、航続距離計算部15Cは、使用可能燃料量と、計算した予測燃料消費量とに基づいて、速力別の予測航続距離を計算する。
【0042】
例えば、
図4に示すように、操作者は、運転パターン1〜3のそれぞれを入力したとする。また、
図4の例では、操作者は、運転パターン1の計画推進モード情報として「モードA(電気推進モード)」を指定し、計画運転区分情報として「主発電機G1を船内負荷40への電力供給源とし、主発電機G2を推進電動機Mへの電力供給源として運転させる」運転区分を指定したとする。
このとき、航続距離計算部15Cは、まず、運転パターン1の予測航続距離を速力別に計算する。
具体的には、航続距離計算部15Cは、運転パターン1で指定された計画推進モード情報及び計画運転区分情報に基づいて、どの原動機(主機GT及び主発電機G)を運転させるかを特定する。上述の例では、運転パターン1は、主発電機G1及びG2を運転させることを示している。
運転させる原動機を特定すると、航続距離計算部15Cは、現在船内負荷40に供給されている電力(負荷消費電力)を維持し、且つ、船舶を各速力で航走させるために原動機が消費する燃料量を予測する。航続距離計算部15Cは、情報取得部15Aが取得した状態情報に含まれる負荷消費電力に応じた出力を得るために主発電機G1が要する燃料量を、主発電機G1の燃料消費特性を用いて予測する。また、航続距離計算部15Cは、速力に応じた出力を得るために主発電機G2が要する燃料量を、主発電機G2の燃料消費特性を用いて予測する。なお、推進モードと運転区分の組み合わせにより、発揮可能な速力は限られている。例えば、運転パターン1では、0kt〜6ktまでの速力が発揮可能であるとする。この場合、航続距離計算部15Cは、発揮可能な速力領域に含まれる速力(即ち、0kt〜6ktまでの速力)について、原動機が要する燃料量を予測する。
そして、航続距離計算部15Cは、使用可能燃料量と、速力別に原動機が消費すると予測された燃料量とに基づいて、運転パターン1における速力別の予測航続距離を計算する。
航続距離計算部15Cは、同様の処理を繰り返し、運転パターン2及び3における速力別の予測航続距離についても計算する。
【0043】
航続距離計算部15Cは、このように計算した運転パターン別、速力別の予測航続距離を、通信I/F11を介して監視制御盤100に出力する。そうすると、
図4に示すように、監視制御盤100の表示部102には、運転パターン別、速力別の予測航続距離が表示される。
操作者は、表示部102に表示された予測航続距離を参照して、船舶の経路、速力、運転パターン等を含む運航計画を策定する。また、操作者は、予測航続距離を参照して、運転パターン1〜3に設定した計画推進モード情報及び計画運転区分情報をさらに変更し、運航計画装置10に計算を実行を指示する操作を行ってもよい。運航計画装置10は、操作者から監視制御盤100を介して計算を実行する指示を受け付ける度に、上述の処理を実行して、変更された各種情報に基づいて速力別の予測航続距離を計算する。
【0044】
図5は、本発明の一実施形態に係る運航計画装置の第2の処理フローである。
図6は、本発明の一実施形態に係る運航計画装置の機能を説明する第2の図である。
以下、
図5〜
図6を参照して、運航計画装置10が予測燃料消費量を計算する処理について説明する。
【0045】
運航計画装置10において予測燃料消費量を計算する処理を実行する場合、まず、操作者は、任意の計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画航走距離情報とを監視制御盤100の操作部101を介して入力し、運航計画装置10に計算の実行を指示する操作を行う。このとき、操作者は、計画推進モード情報及び計画運転区分情報の組み合わせである運転パターンを複数(例えば三つ)入力してもよい。
そうすると、運航計画装置10の計画取得部15Bは、
図5に示すように、計画推進モード情報と、計画運転区分情報とを取得する(ステップS200)。
【0046】
次に、計画取得部15Bは、速力別の計画航走距離情報を取得する(ステップS201)。
図6の例では、計画取得部15Bは、速力3ktで1000マイル航走し、速力6ktで5000マイル航走することを示す計画航走距離情報を取得する。なお、操作者は、
図6に示すように、使用しない速力については0マイルを入力するようにしてもよい。
【0047】
次に、燃料消費計算部15Dは、計画取得部15Bが取得した計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画航走距離情報とに基づいて船舶の予測燃料消費量を計算する(ステップS202)。
例えば、操作者は、運転パターン1の計画推進モード情報として「モードA(電気推進モード)」を指定し、計画運転区分情報として「主発電機G1を船内負荷40への電力供給源とし、主発電機G2を推進電動機Mへの電力供給源として運転させる」運転区分を指定したとする。
燃料消費計算部15Dは、まず、運転パターン1において運転させる原動機を特定するとともに、計画航走距離情報にしたがって船舶を航走させるために原動機が消費する予測燃料消費量を、燃料消費特性を用いて計算する。即ち、燃料消費計算部15Dは、運転パターン1において速力3ktで1000マイル航走した場合の予測燃料消費量と、速力6ktで5000マイル航走した場合の予測燃料消費量とを、それぞれ計算する。
また、このとき、燃料消費計算部15Dは、船内負荷40に現在供給されている電力(負荷消費電力)を維持するために原動機(主発電機G1)が消費する燃料量を加味して、予測燃料消費量を計算するようにしてもよい。
なお、推進モードと運転区分の組み合わせにより、発揮可能な速力は限られている。例えば、運転パターン1では、6ktまでの速力が発揮可能であるとする。この場合、燃料消費計算部15Dは、発揮可能な速力領域に含まれる速力、即ち、6kt以下の速力対する予測燃料消費量のみを計算する。
燃料消費計算部15Dは、同様の処理を繰り返し、運転パターン2及び3における予測燃料消費量についても計算する。
【0048】
燃料消費計算部15Dは、このように計算した予測燃料消費量を、通信I/F11を介して監視制御盤100に出力する。そうすると、
図6に示すように、監視制御盤100の表示部102には、計画航走距離情報に基づき計算された予測燃料消費量(使用燃料)が運転パターン別に表示される。なお、指定された運転パターンにおいて発揮可能な速力領域に含まれない速力については、予測燃料消費量は表示されず、
図6のように発揮可能な速力領域外であることを示す「−」を代わりに表示してもよい。
操作者は、表示部102に表示された予測燃料消費量を参照して、船舶の経路、速力、運転パターン等を含む運航計画を策定する。また、操作者は、予測燃料消費量を参照して、運転パターン1〜3に設定した計画推進モード情報及び計画運転区分情報と、計画航走情報とをさらに変更し、運航計画装置10に計算を実行を指示する操作を行ってもよい。運航計画装置10は、操作者から監視制御盤100を介して計算を実行する指示を受け付ける度に、上述の処理を実行して、変更された各種情報に基づいて予測燃料消費量を計算する。
【0049】
図7は、本発明の一実施形態に係る運航計画装置の第3の処理フローである。
図8は、本発明の一実施形態に係る運航計画装置の機能を説明する第3の図である。
以下、
図7〜
図8を参照して、運航計画装置10が予測滞洋時間を計算する処理について説明する。
【0050】
運航計画装置10において予測滞洋時間を計算する処理を実行する場合、まず、操作者は、任意の計画速力情報と、計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画船内電力情報と、帰港計画情報とを監視制御盤100の操作部101を介して入力し、運航計画装置10に計算の実行を指示する操作を行う。
そうすると、運航計画装置10の計画取得部15Bは、
図7に示すように、計画速力情報と、計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画船内電力情報と、帰港計画情報とを取得する(ステップS300)。
なお、計画船内電力情報は、初期値として、状態情報に含まれる負荷消費電力に基づいて、現在船内負荷40において消費されている電力(船内電力)が予め入力されていてもよい。また、操作者は、船内負荷40で使用する予定の機器(負荷LD)に応じて、船内電力として任意の値を入力してもよい。
【0051】
次に、滞洋時間計算部15Eは、情報取得部15Aが取得した使用可能燃料量と、計画取得部15Bが取得した計画推進モード情報、計画運転区分情報、計画速力情報、計画船内電力情報、及び帰港計画情報とに基づいて、船舶が洋上に滞在可能な時間を示す予測滞洋時間を計算する(ステップS301)。
例えば、
図8に示すように、操作者は、計画速力情報として「1kt」、計画推進モード情報として「モードA(電気推進)」、計画運転区分情報として「運転区分3」、計画船内情報及び帰港計画情報として任意の船内電力(kW)及び残量計画(t)を入力したとする。
滞洋時間計算部15Eは、計画推進モード情報及び計画運転区分情報に基づいて、どの原動機(主機GT及び主発電機G)を運転させるかを特定するとともに、船舶の速力を計画速力(1kt)に維持するために要する電力(推進電力)を予測する。そして、滞洋時間計算部15Eは、計画船内電力情報で指定された船内電力と、推進電力とを得るために原動機が消費する燃料量(燃料使用量)を、燃料消費特性を用いて予測する。このとき、滞洋時間計算部15Eは、所定の時間ごと(例えば一時間ごと)の推進電力及び燃料使用量(t/h)を予測するようにしてもよい。
そして、滞洋時間計算部15Eは、使用可能燃料量と、予測された燃料使用量と、帰港計画情報で指定された残量計画(帰港用に残す燃料量)とに基づいて、船舶の予測滞洋時間を計算する。
さらに、滞洋時間計算部15Eは、使用可能燃料量と、残量計画と、予測された燃料使用量とに基づいて、所定の時間ごとの使用可能燃料量の推移を予測するようにしてもよい。
【0052】
滞洋時間計算部15Eは、このように計算した予測滞洋時間を、通信I/F11を介して監視制御盤100に出力する。また、滞洋時間計算部15Eは、予測滞洋時間の計算に用いた船内電力と、推進電力と、燃料使用量と、所定の時間ごとの使用可能燃料量の推移とを監視制御盤100に出力するようにしてもよい。
そうすると、
図8に示すように、監視制御盤100の表示部102には、運航計画装置10から出力された予測滞洋時間が表示される。さらに、表示部102は、運航計画装置10から出力された船内電力(kW)と、推進電力(kW)と、燃料使用量(t/h)と、所定の時間ごとの使用可能燃料量(t)の推移とをグラフ化して操作者に提示するようにしてもよい。このとき、表示部102は、センサ50から取得した状態情報に基づいて、現在及び過去における速力、推進モード、運転区分、船内電力、推進電力、燃料使用量、使用可能燃料量の推移をあわせて表示するようにしてもよい。この場合、表示部102は、状態情報に基づく実績値と、運航計画装置10による予測値とを区別するために、どの値が現在の値であるかを示すマーク(例えば、
図8の矢印)を表示するようにしてもよい。
操作者は、表示部102に表示された予測滞洋時間を含む各種情報を参照して、船舶の経路、速力、運転パターン等を含む運航計画を策定する。また、操作者は、各種情報を参照して、計画推進モード情報、計画運転区分情報、計画速力情報、計画船内電力情報、帰港計画情報をさらに変更し、運航計画装置10に計算を実行を指示する操作を行ってもよい。運航計画装置10は、操作者から監視制御盤100を介して計算を実行する指示を受け付ける度に、上述の処理を実行して、変更された各種情報に基づいて予測滞洋時間を計算する。
【0053】
(作用効果)
上述のように、本実施形態に係る運航計画装置10は、船舶の現在の運転に関する情報であって、少なくとも船舶の使用可能燃料量を示す情報を含む状態情報を取得する情報取得部15Aと、船舶の将来の運転に関する情報であって、主機GT及び推進電動機Mの運転の組み合わせを示す計画推進モード情報と、複数の主発電機Gの運転の組み合わせを示す計画運転区分情報とを取得する計画取得部15Bと、使用可能燃料量と、計画推進モード情報と、計画運転区分情報とに基づいて、船舶が航走可能な距離を示す予測航続距離を計算する航続距離計算部15Cと、を備える。
このようにすることで、運航計画装置10は、船舶の主機GT、推進電動機M、及び主発電機Gの運転組み合わせ(運転パターン)に応じた予測航続距離を計算することができる。これにより、運航計画装置10は、船舶の航続距離を予測する精度を向上させることができる。また、操作者は、運航計画装置10から出力された予測航続距離を参照することにより、適切な運転パターンを含む運航計画を策定することができる。
【0054】
また、航続距離計算部15Cは、運転パターン別、且つ、速力別に予測航続距離を計算する。
このようにすることで、航続距離計算部15Cは、船舶の運転パターン及び速力に応じた精度の高い予測航続距離を計算することができる。また、操作者は、運航計画装置10から出力された速力別の予測航続距離を参照することにより、速力と航続距離とのバランスを考慮した、適切な運航計画を策定することができる。
【0055】
また、運航計画装置10は、船舶の予測燃料消費量を計算する燃料消費計算部15Dをさらに備える。
計画取得部15Bは、船舶が航走予定の距離を速力別に示す計画航走距離情報をさらに取得し、燃料消費計算部15Dは、計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画航走距離情報とに基づいて、船舶の速力別の予測燃料消費量を計算する。
このようにすることで、運航計画装置10は、船舶がどのような運転パターン及び速力で、どのくらいの距離を航走するかに応じた、より正確な予測燃料消費量を計算することができる。また、操作者は、運航計画装置10から出力された予測燃料消費量を参照することにより、船舶の速力と燃料消費量とのバランスを考慮した、適切な運航計画を策定することができる。
【0056】
また、燃料消費計算部15Dは、船内負荷40に現在供給されている電力(負荷消費電力)を維持するために原動機が消費する燃料量を加味して、予測燃料消費量を計算するようにしてもよい。
このようにすることで、燃料消費計算部15Dは、より正確な予測燃料消費量を計算することができる。
【0057】
また、運航計画装置10は、船舶が洋上に滞在可能な時間を示す予測滞洋時間を計算する滞洋時間計算部15Eをさらに備える。
計画取得部15Bは、船舶が航走予定の速力を示す計画速力情報をさらに取得し、滞洋時間計算部15Eは、使用可能燃料量と、計画推進モード情報と、計画運転区分情報と、計画速力情報とに基づいて、予測滞洋時間を計算する。
従来のシステムでは、滞洋時間を予測する機能は考慮されていない。しかしながら、上述の実施形態に係る運航計画装置10は、船舶の運転パターンと、計画速力情報とに基づいて、滞洋時間を精度よく予測することが可能である。また、操作者は、運航計画装置10から出力された予測滞洋時間を参照することにより、船舶の滞洋時間を考慮した適切な運航計画を策定することができる。
【0058】
また、運航計画装置10は、状態情報に基づいて、補助記憶装置13に記憶されている原動機(主機GT及び主発電機G)別の燃料消費特性を補正する補正部15Fをさらに備える。
このようにすることで、補正部15Fは、原動機の経年劣化、季節変動等に応じて変化する状態情報に基づいて、燃料消費特性を補正することができる。これにより、航続距離計算部15C、燃料消費計算部15D、及び滞洋時間計算部15Eにおける計算精度をさらに向上させることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、上述の実施形態では、監視制御盤100と、運航計画装置10とが異なるコンピュータに実装されている態様について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、監視制御盤100の操作部101、表示部102、制御部110Aの各機能を運航計画装置10に実装するようにしてもよい。