(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872967
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】ガスバーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
F23D14/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-95942(P2017-95942)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-194191(P2018-194191A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一浩
(72)【発明者】
【氏名】深谷 岳士
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−280515(JP,A)
【文献】
特開平10−019208(JP,A)
【文献】
特開2012−154572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する混合管の下流端に連設されて内部に混合ガスの分布室となる空間が形成された板金製のバーナボディと、該バーナボディ上に設けて外周に火炎が形成される環状のバーナヘッドとを備えるガスバーナにおいて、
該バーナヘッドは、環状の上部壁と、該上部壁の外側端から下方に突出する環状の外周壁と、前記上部壁の内側端に形成された環状の内周壁と、前記外周壁の周方向に間隔を存して多数形成された溝とを備え、
前記バーナボディは、前記バーナヘッドの前記上部壁の下方に対向して前記分布室を上下に分割する環状の中板部と、該中板部に形成されて前記分布室の上下を連通させる連通孔と、前記中板部の外側に設けられて前記バーナヘッドの前記外周壁が着座することにより前記外周壁の各溝の下面となって炎孔を形成する環状の着座部と、前記中板部の内側に設けられて前記バーナヘッドの前記内周壁の側面に当接することにより前記バーナヘッドを位置決めする位置決め部とを備え、
前記位置決め部は、前記中板部よりも上方に配設され、
前記バーナボディの前記着座部と前記中板部と前記位置決め部とは、単一の金属板により一体に形成されていることを特徴とするガスバーナ。
【請求項2】
請求項1記載のガスバーナにおいて、
前記バーナボディは、前記位置決め部に隣接する位置に、前記バーナヘッドの内周側の下面に当接する下部当接部を備えることを特徴とするガスバーナ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のガスバーナにおいて、
前記バーナボディは、前記バーナヘッドの内周側の上面に当接する上部当接部を備えることを特徴とするガスバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナヘッドの外周に沿って火炎を形成すガスバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガスバーナは、バーナボディ上にバーナヘッドを載置することによりバーナヘッドの周端に沿って多数の炎孔が形成される。
【0003】
バーナヘッドは、環状の外周壁を備え、外周壁の下面には多数の溝が形成されている。バーナボディには、バーナヘッドを載置した時に外周壁が着座する着座部が設けられている。バーナボディの着座部は上向きの平坦面であり、バーナヘッドの外周壁が着座すると、着座部が溝の底部となって炎孔が形成される。
【0004】
バーナボディ内部に形成されている分布室には、混合管で生成された燃料ガスと一次空気との混合ガスが供給され、分布室から各炎孔に供給された混合ガスが火炎を形成する。
【0005】
また、バーナヘッドは、外周壁よりも内側に位置して下方に延びる筒状の内周壁を備えている。バーナボディは、バーナヘッドの内周壁の側面に気密に当接する筒状の位置決め部を備え、位置決め部によってバーナヘッドの外周壁とバーナボディの着座部との対応位置が位置決めされる(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−154572号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種のガスバーナは、バーナボディを板金製とすることで軽量化が図られる。そして、板金製のバーナボディは、複数の部品を連結することにより形成されている。具体的には、上記特許文献1記載のもののように、着座部を備える板金部品と位置決め部を備える板金部品とを互いにカシメ連結することによって構成されている。
【0008】
これによると、着座部を備える板金部品と位置決め部を備える板金部品との連結部分での組み付け精度が低下しやすく、両板金部品同士に僅かな位置ずれが生じやすい。着座部を備える板金部品と位置決め部を備える板金部品との間で位置ずれが生じると、その影響により、バーナヘッドの外周壁とバーナボディの着座部との対応位置がずれて、各炎孔の形状が均一に形成されなくなる。これによって、バーナヘッドの外周に沿った多数の炎孔の各々の形状がばらつき、火炎の大きさが不揃いとなったり、燃焼不良が生じて熱分布性能が低くなる不都合があった。
【0009】
上記の点に鑑み、本発明は、バーナヘッドの外周に沿って均等な火炎を形成して、良好な燃焼と高い熱分布性能とを得ることができるガスバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する混合管の下流端に連設されて内部に混合ガスの分布室となる空間が形成された板金製のバーナボディと、該バーナボディ上に設けて外周に火炎が形成される環状のバーナヘッドとを備えるガスバーナにおいて、該バーナヘッドは、環状の上部壁と、該上部壁の外側端から下方に突出する環状の外周壁と、前記上部壁の内側端に形成された環状の内周壁と、前記外周壁の周方向に間隔を存して多数形成された溝とを備え、前記バーナボディは、前記バーナヘッドの前記上部壁の下方に対向して前記分布室を上下に分割する環状の中板部と、該中板部に形成されて前記分布室の上下を連通させる連通孔と、前記中板部の外側に設けられて前記バーナヘッドの前記外周壁が着座することにより前記外周壁の各溝の下面となって炎孔を形成する環状の着座部と、前記中板部の内側に設けられて前記バーナヘッドの前記内周壁の側面に当接することにより前記バーナヘッドを位置決めする位置決め部とを備え、
前記位置決め部は、前記中板部よりも上方に配設され、前記バーナボディの前記着座部と前記中板部と前記位置決め部とは、単一の金属板により一体に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記バーナボディの前記着座部と前記中板部と前記位置決め部とが単一の金属板により一体に形成されているので、前記位置決め部と前記着座部との間には従来のような連結部分は存在しない。よって、前記位置決め部と前記着座部との間には組み付け精度の低下に伴う位置ずれが生じることはなく、バーナヘッドの内周壁が位置決め部に位置決めされていれば、バーナボディの着座部に対するバーナヘッドの外周壁の着座位置も精度よく位置決めされる。
【0012】
これにより、バーナヘッドの外周に沿った多数の炎孔の各々の形状がばらつくことが防止されるので、バーナヘッドの外周に沿って均等な火炎を形成することができ、良好な燃焼と高い熱分布性能とを得ることができる。
【0013】
また、本発明において、前記バーナボディは、前記位置決め部に隣接する位置に、前記バーナヘッドの内周側(前記内周壁等)の下面に当接する下部当接部を備えることが好ましい。
【0014】
下部当接部は、バーナヘッドの内周側を下方から支える。位置決め部と下部当接部とでバーナヘッドを位置決めすることにより、バーナボディの着座部に対するバーナヘッドの外周壁の着座位置も一層精度よく位置決めされる。
【0015】
更に、下部当接部は、位置決め部に隣接する位置に設けられていることにより、バーナヘッドの外周に沿って形成される火炎から比較的遠い位置にある。これにより、下部当接部の熱変形は少なく、バーナヘッドを安定した状態で精度よく支持することができる。
【0016】
また、本発明において、前記バーナボディは、前記バーナヘッドの内周側(前記内周壁等)の上面に当接する上部当接部を備えることが好ましい。
【0017】
これにより、位置決め部と上部当接部とでバーナヘッドが位置決めされるので、バーナボディの着座部に対するバーナヘッドの外周壁の着座位置も一層精度よく位置決めされる。
【0018】
更に、上部当接部は、バーナヘッドの内周側(前記内周壁等)を上方から押えることにより、バーナボディの上方向へのバーナヘッドの離反を防止することができる。これによれば、例えば、熱変形等によりバーナヘッドがバーナボディから浮き上がることが防止できるので、バーナボディの着座部に対するバーナヘッドの外周壁の着座状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態のガスバーナを示す斜視図。
【
図3】本実施形態のガスバーナにおいてバーナヘッドを取り除いて示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のガスバーナ1は、図示しない調理装置、具体的にはガス炊飯器に搭載される比較的大型のものであり、
図1に示すように、混合管2と、バーナボディ3と、バーナヘッド4とを備えている。
【0021】
混合管2は、図示しないガスノズルから噴出する燃料ガスを一次空気と共に取り入れることにより燃料ガスと一次空気との混合ガスを生成する。
【0022】
混合管2の下流端には、バーナボディ3が連設されている。混合管2とバーナボディ3とは板金製であり、バーナボディ3は、
図2に示すように、基体部5と、基体部5上に設けられてバーナヘッド4を載置する載置部材6と、載置部材6の内周に沿って設けられた内筒部材7とを備えている。
【0023】
図2に示すように、基体部5は、混合管2と連続して形成され、下部材8と上部材9とを外側周辺部の第1カシメ部10を介して互いに気密に連結することにより形成されている。下部材8と上部材9とは、中空の混合管2を形成していると共に、混合管2の下流に連続する中空の第1分布室11を形成している。
【0024】
図2に示すように、載置部材6は、単一の板材に絞り加工を施すことにより形成されており、第1分布室11の天面を形成している上部材9の上壁に重合する中板部12と、中板部12の外側に位置してバーナヘッド4の後述する外周壁25が着座する環状の着座部13と、中板部12の内側に位置してバーナヘッド4を位置決めする位置決め部14とを備えている。
【0025】
着座部13は、外側に向かって上方に傾斜する環状の平坦面であり、中板部12の外周縁から起立する環状の外側壁15の上縁に連設されている。
【0026】
中板部12の内周縁には、起立する環状の内側壁16が連設されている。内側壁16の上縁には、内側方向に平坦に延びる環状の段差面17(下部当接部)が連設されている。段差面17の内周縁には、上方に延びる筒状の位置決め部14が連設されている。
【0027】
中板部12と外側壁15と内側壁16との間には、第2分布室18が形成される。中板部12には、
図2及び
図3に示すように、基体部5の第1分布室11の天面を形成する上部材9の一部を貫通して第1分布室11と第2分布室18とを連通させる連通孔19が形成されている。
【0028】
図2に示すように、載置部材6は、中板部12の連通孔19の内周に形成され第2カシメ部20を介して基体部5に連結されている。なお、本来であれば、バーナボディ3は単一の分布室を持つが、本実施形態のように載置部材6を備えることで、中板部12によって分布室が第1分布室11と第2分布室18とで上下に分割された状態で構成される。このため、第1分布室11に供給された混合ガスは連通孔19を通って第2分布室18に供給される。
【0029】
内筒部材7は、載置部材6の内側に位置し、下端部に形成された第3カシメ部21によって下部材8と上部材9とをその内側周辺部で連結している。内筒部材7は、その上縁から連続して外側に張り出す鍔状部22(上部当接部)を備えている。更に、鍔状部22の外周端部には、下方に屈曲する屈曲部23が形成されている。
【0030】
バーナヘッド4は、鋳物等で形成された環状のブロック体であり、上部壁24と、上部壁24の外周に沿って形成された外周壁25と、上部壁24の内周に沿って形成された内周壁26とを備えている。
【0031】
外周壁25は、上部壁24の外側端から下方に突出しており、その下面には内方から外方に向かって延びる溝27が周方向に所定間隔を存して複数形成されている。外周壁25は、バーナボディ3の載置部材6が備える着座部13の上面に着座する。これにより、外周壁25の溝27と載置部材6の着座部13とによって、外向きに火炎を形成する複数の外周炎孔28(炎孔)が形成される。また、上部壁24には、上向きに火炎を形成する複数の内周炎孔29が形成されている。
【0032】
内周壁26は、上部壁24の内側端から上方に起立する形状を有しており、位置決め部14が内周壁26の内側面に当接することによりバーナヘッド4を位置決めする。このとき、位置決め部14は、単一の金属板材によって着座部13と一体に形成されていることにより、組み付け精度の影響を受けることが殆どなく、バーナヘッド4の外周壁25の着座位置が精度よく位置決めされる。
【0033】
また、バーナヘッド4の外周壁25が載置部材6の着座部13に着座しているとき、内周壁26の下面に載置部材6の段差面17(下部当接部)が当接し、バーナヘッド4を支持した状態となる。載置部材6の段差面17は、外周炎孔28の火炎から比較的遠い位置にあるため、載置部材6の段差面17の熱変形は少ない。これにより、バーナヘッド4は、安定した状態で精度よく支持される。
【0034】
また、バーナヘッド4の内周壁26の下面に載置部材6の段差面17が当接しているとき、内周壁26の上面に内筒部材7の鍔状部22(上部当接部)が当接する。これにより、バーナヘッド4の内周壁26は、位置決め部14が内側から当接するだけでなく、載置部材6の段差面17と内筒部材7の鍔状部22とで上下から挟持されるので、動きが確実に規制され、高い精度で位置決めされた状態となる。
【0035】
更に、内筒部材7の鍔状部22は、バーナヘッド4の内周壁26を上方から押えているので、例えば、熱の影響等で、バーナボディ3からのバーナヘッド4の浮き上がりを少なくすることができ、バーナヘッド4の外周壁25が載置部材6の着座部13から離反することを防止することができる。そしてこれにより、バーナヘッド4の薄肉化も図ることができ、軽量化することができる。
【0036】
また、鍔状部22の外周端部に形成されている屈曲部23により、鍔状部22の変形に対する強度が向上する。これにより、バーナボディ3に対するバーナヘッド4の位置決めを強固としながら、内筒部材7の材料となる金属板材を薄肉として軽量化することができる。
【0037】
以上のように、バーナボディ3に対してバーナヘッド4を確実に位置決めすることができるので、バーナヘッド4の外周に沿って均等な火炎を形成して、良好な燃焼と高い熱分布性能とを得ることができる。これにより、本実施形態のガスバーナ1はガス炊飯器に好適に用いて、炊飯時の炊きムラの発生を防止することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、内筒部材7と下部材8と上部材9とが別部材とされているものを示したが、内筒部材7と下部材8とを単一の金属板材で一体に形成することも可能である。この場合には、図示しないが、内筒部材7と下部材8との境界にカシメ部(第3カシメ部21に相当する)を形成し、このカシメ部により上部材9を連結すればよい。
【0039】
また、上記実施形態のもの以外に、
図4に示すように、バーナヘッド30の内周壁31が、上部壁32の内側端から下方に延びる形状を有している場合には、載置部材33に内周壁31の外側面に当接してバーナヘッド30を位置決めする構成の位置決め部34を設けることが好ましい。
【0040】
このとき、載置部材33の内側壁35の上縁には、内側方向に平坦に延びる環状の平坦面36(下部当接部)を連設し、バーナヘッド30の内周壁31に隣接する位置の下面に平坦面36を当接させる。これによっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
また、上記実施形態においては、
図2に示すように、鍔状部22(上部当接部)及び屈曲部23が形成された内筒部材7を設けたものを示したが、内筒部材7を設けなくてもよい。即ち、
図5に示すように、バーナヘッド37の内周壁38に当接して位置決めする載置部材39の位置決め部40の上縁に、鍔状部41(上部当接部)及び屈曲部42を連設してもよい。また、位置決め部40の下方には、段差面43(下部当接部)が連設されている。これによれば、内筒部材が不要となって部品点数を削減することができると共に、バーナボディ44を軽量化することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…ガスバーナ、2…混合管、3,44…バーナボディ、4,30,37…バーナヘッド、11…第1分布室(分布室)、12…中板部、13…着座部、14,34,40…位置決め部、17,43…段差面(下部当接部)、18…第2分布室(分布室)、19…連通孔、22,41…鍔状部(上部当接部)、24,32…上部壁、25…外周壁、26,31,38…内周壁、27…溝、28…外周炎孔(炎孔)、36…平坦面(下部当接部)。