(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂と、
銅塩と、
アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、
黒色色素である光透過性色素とを含む、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物からなる透過樹脂部材と、
ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂と、
銅塩と、
アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、
光吸収性色素とを含む、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物からなる吸収樹脂部材とが一部においてレーザー溶着によって接合している成形品であって、
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量aと、
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量bの質量比である、a:bが、0.8:1.2〜1.2:0.8である成形品。
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物と前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物が、それぞれ、ガラス繊維を20〜40質量%の割合で含有する、請求項1に記載の成形品。
ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂と、
銅塩と、
アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、
黒色色素である光透過性色素とを含む、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物と、
ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂と、
銅塩と、
アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、
光吸収性色素とを含む、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物と、
を有するキットであって、
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量aと、
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量bの質量比である、a:bが、0.8:1.2〜1.2:0.8であるレーザー溶着用キット。
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物と前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物が、それぞれ、ガラス繊維を20〜40質量%の割合で含有する、請求項6に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明の成形品は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂と、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、光透過性色素とを含む、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物からなる透過樹脂部材と、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂と、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、光吸収性色素とを含む、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物からなる吸収樹脂部材とが一部において接合している成形品であって、前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量aと、前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量bの質量比である、a:bが、0.8:1.2〜1.2:0.8であることを特徴とする。
このように、透過樹脂部材と吸収樹脂部材の両方に、樹脂成分として、特定のポリアミド樹脂を用い、かつ、安定剤として、無機系安定剤を用い、さらに、無機系安定剤の比率を透過樹脂部材と吸収樹脂部材とでほぼ同量とすることにより、高いレーザー溶着強度を維持しつつ、湿熱条件下に置いた後の成形品の透明樹脂部材と吸収樹脂部材の界面における色移りの抑制に成功したものである。特に、樹脂成分として、特定のポリアミド樹脂を用いることにより、湿熱試験後も高い強度の保持に成功したものである。
【0013】
<透明樹脂部材>
本発明における透明樹脂部材は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物から形成される。レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、銅塩およびハロゲン化物を含み、さらに、ガラス繊維、タルク、離型剤などを含んでいてもよい。以下、これらの成分について詳細に説明する。
【0014】
<<ポリアミド樹脂>>
本発明におけるレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(以下、「特定ポリアミド樹脂」ということがある)を含む。
ここで、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位から構成されるとは、特定ポリアミド樹脂を構成するアミド結合がジカルボン酸とジアミンの結合によって形成されていることをいう。従って、特定ポリアミド樹脂には、ジカルボン酸由来の構成単位と、ジアミン由来の構成単位以外の構成単位や、末端基等の他の部位を含みうる。さらに、微量の添加剤や不純物等が含まれる場合もあるであろう。本発明で用いるポリアミド樹脂は、その95質量%以上が、ジカルボン酸由来の構成単位またはジアミン由来の構成単位であることが好ましい。
【0015】
特定ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミンであっても、パラキシリレンジアミンであっても、両者の混合物であってもよいが、少なくとも、パラキシリレンジアミンを含むことが好ましい。
さらには、特定ポリアミド樹脂では、ジアミン由来の構成単位の30〜100モル%がパラキシリレンジアミンに由来することが好ましい。残りのジアミン成分に由来する構成単位は、0〜70モル%がメタキシリレンジアミンに由来することが好ましい。
【0016】
キシリレンジアミン以外のジアミンは、芳香族ジアミンでも、脂肪族ジアミンでもよい。
直鎖または分岐脂肪族ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
また、脂環式ジアミンとしては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカンが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレンが挙げられる。
特定ポリアミド樹脂において、ジアミンは、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
【0017】
特定ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上が、一層好ましくは95モル%以上が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸がさらに好ましく、セバシン酸が特に好ましい。
炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、スベリン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸が例示される。
特定ポリアミド樹脂において、ジカルボン酸は、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
特定ポリアミド樹脂としては、具体的には、特開2014−145004号公報に記載のポリアミド樹脂であって、特定ポリアミド樹脂に相当するものが例示され、メタキシリレンアジパミド(MXD6)、メタ/パラ混合キシリレンアジパミド(ポリアミドMP6)、メタ/パラ混合キシリレンセバサミド(ポリアミドMP10)、パラキシリレンセバサミド(ポリアミドPXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド等が好ましい。本発明においては、これらポリアミドホモポリマーもしくはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0019】
特定ポリアミド樹脂のガラス転移点は、40〜180℃であることが好ましく、60〜130℃であることがより好ましい。
特定ポリアミド樹脂の数平均分子量は、5000〜45000であることが好ましく、10000〜25000であることがより好ましい。
特定ポリアミド樹脂の融点は、170℃以上であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましい。
【0020】
特定ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は50〜200μ当量/gが好ましく、60〜150μ当量/gがより好ましい。
【0021】
レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物における、特定ポリアミド樹脂の量は、50質量%以上であることが好ましく、58質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが一層好ましい。上限値については、特に定めるものではないが、例えば、98質量%以下とすることができる。
特定ポリアミド樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0022】
<<他の樹脂成分>>
本発明で用いるレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、特定ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂ならびにポリアミド樹脂以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。
特定ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂としては、ラクタムの重縮合物、ω−アミノカルボン酸の重縮合物等の各種ポリアミド樹脂、特定ポリアミド樹脂以外の、ジアミンおよびジカルボン酸の重縮合物であるポリアミド樹脂、ならびに、これらの共重合ポリアミド樹脂が例示される。
具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66などが例示される。
【0023】
ポリアミド樹脂以外の他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明で用いるレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の樹脂成分を実質的に配合しない構成としてもよく、例えば、ポリアミド樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量の5質量%以下、さらには、1質量%以下、特には、0.4質量%以下とすることもできる。
【0024】
<<銅塩>>
本発明におけるレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、銅塩を含む。銅塩に用いられる銅は、第1銅、第2銅の何れでもよく、その具体例としては、ハロゲン化銅が挙げられ、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅が好ましく、ヨウ化銅がより好ましい。
銅塩は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の0.01〜5質量%の範囲で含まれることが好ましく、0.01〜3質量%の範囲で含まれることがより好ましく、0.01〜2質量%の範囲で含まれることがさらに好ましく、0.03〜1質量%の範囲で含まれることが一層好ましい。
銅塩は、1種のみでもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0025】
<<ハロゲン化物>>
本発明におけるレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方を含む。本発明ではアルカリ金属のハロゲン化物が好ましい。
アルカリ金属としては、ナトリウムおよびカリウムが好ましく、カリウムがより好ましい。
アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムが好ましく、マグネシウムおよびカルシウムがより好ましい。
ハロゲン化物を構成するハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示され、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が好ましく、臭素原子およびヨウ素原子がより好ましく、ヨウ素原子がさらに好ましい。
本発明で用いるハロゲン化物としては、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。
ハロゲン化物は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の0.1〜10質量%の範囲で含まれることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲で含まれることがより好ましく、0.1〜3質量%の範囲で含まれることがさらに好ましい。
ハロゲン化物は、1種のみでもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0026】
レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物において、銅塩とハロゲン化物の質量比(ハロゲン化物/銅塩)は、1〜10であることが好ましく、3〜7であることがより好ましく、4〜6であることがさらに好ましい。このような比率とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0027】
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量aは、組成物中、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜3.5質量%であることがより好ましく、0.3〜3.0質量%であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
本発明で用いるレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、また、有機系安定剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、上記合計量aの5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。有機系安定剤を実質的に含まないことにより、有機溶剤等に付着あるいは浸漬した時に有機系安定剤が溶出することを抑制できる。特に、本発明では、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物とレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物の両方が有機系安定剤を実質的に含まないことが好ましい。
本発明では無機系安定剤を用いることにより、レーザーに対する耐性を確保することができる。
【0028】
<<光透過性色素>>
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、光透過性色素を含む。
本発明で用いる光透過性色素は、通常、レーザー溶着に用いるレーザーを透過する黒色色素である限り特に定めるものではない。
具体的には、ニグロシン、ナフタロシアニン、アニリンブラック、フタロシアニン、ポルフィリン、ペリレン、ペリノン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体、およびインモニウム染料等が挙げられる。
市販品としては、オリエント化学工業社製の着色剤である、e−BIND LTW−8731H、e−BIND LTE−8701H等が例示される。
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物における光透過性色素の含有量は、組成物の0.001質量%以上であることが好ましく、0.006質量%以上であることがより好ましく、さらには、0.018質量%以上、0.024質量%以上、0.030質量%以上、0.050質量%以上であってもよい。上限値としては、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.06質量%以下であってもよい。光透過性色素は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、カーボンブラックを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば、前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の0.0001質量%以下であることをいう。
【0029】
<<ガラス繊維>>
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
【0030】
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、長さ1〜10mmに切りそろえた「チョップドストランド」、長さ10〜500μm程度に粉砕した「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
【0031】
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、さらには2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落番号0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明におけるガラス繊維は、ガラスビーズやガラスフレークであってもよい。ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、ポッターズ・バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さが0.05〜1mmの燐片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
【0033】
本発明で用いるガラス繊維は、特に、重量平均繊維径が1〜20μm、カット長が1〜10mmのガラス繊維が好ましい。ここで、ガラス繊維の断面が扁平の場合、重量平均繊維径は、同じ面積の円における重量平均繊維径として算出する。
本発明で用いるガラス繊維は、集束剤で集束されていてもよい。この場合の集束剤としては、ウレタン系集束剤が好ましい。
【0034】
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を20〜40質量%の割合で含有することが好ましく、25〜35質量%の割合で含むことが好ましい。
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0035】
<<タルク>>
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、結晶化を促進することができる。
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物における、タルクの配合量は、組成物に対し、0.05〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.15〜5質量%であることがさらに好ましく、0.2〜1.0質量%であることが特に好ましい。タルクは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0036】
<<離型剤>>
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0037】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸の塩としては、上記脂肪族カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が例示される。
【0038】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族または脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0039】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0040】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0041】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5,000以下である。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
【0042】
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物に対し、0.001〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましい。離型剤は、1種のみでもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0043】
<<他の成分>>
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、ガラス繊維以外のフィラー、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
<<レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の製造方法>>
前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどで溶融混練することによってレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物を製造することができる。
【0045】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによってレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物を製造することもできる。
【0046】
<吸収樹脂部材>
本発明における吸収樹脂部材は、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物から形成される。レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、銅塩、ハロゲン化物および光吸収性色素を含み、さらに、ガラス繊維、タルク、離型剤などを含んでいてもよい。
【0047】
<<ポリアミド樹脂>>
本発明におけるレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0048】
<<銅塩>>
本発明におけるレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、銅塩を含む。銅塩の詳細は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる銅塩と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0049】
<<ハロゲン化物>>
本発明におけるレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方を含む。ハロゲン化物の詳細は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれるハロゲン化物と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0050】
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量bは、組成物中、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜3.5質量%であることがより好ましく、0.3〜3.0質量%であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
本発明で用いるレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、また、有機系安定剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、上記合計量bの5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
<<光吸収性色素>>
本発明におけるレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、光吸収性色素を含む。光吸収性色素としては、照射するレーザー光波長の範囲に極大吸収波長を有するものであることが好ましい。具体的には、本発明では、波長800nm〜1100nm(さらには、800〜1064nm)の範囲に極大吸収波長を有するものが好ましく、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。なかでも、無機顔料は一般に隠ぺい力が強く好ましく、黒色顔料がさらに好ましい。これらの光吸収性色素は2種以上組み合わせて使用してもよい。光吸収性色素の配合量は、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に対し、1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。
【0052】
<<ガラス繊維>>
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、ガラス繊維を含むことが好ましい。ガラス繊維の詳細は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれるガラス繊維と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0053】
<<タルク>>
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、タルクを含むことが好ましい。本発明では、タルクを配合することにより、結晶化を促進することができる。
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物における、タルクの配合量は、組成物に対し、0.05〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.8〜5質量%であることがさらに好ましく、1.0〜3質量%であることが特に好ましい。タルクは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明では、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれるタルクの量と、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれるタルクの量の質量比(レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物/レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物)が2〜8であることが好ましく、3〜7であることがより好ましく、4〜6であることがさらに好ましい。このような比率とすることにより、吸収材側材料は降温結晶化温度が上がり、すなわち固化速度が早くなることで接合時の変形リスクの軽減が可能であり、透過側材料は、レーザー光線の透過率が下がることなく安定した溶着が可能になる。
【0054】
<<離型剤>>
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、離型剤を含むことが好ましい。離型剤の詳細は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる離型剤と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0055】
<<他の成分>>
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分の詳細は、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる他の成分と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0056】
<<レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物の製造方法>>
前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物は、上述のレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の製造方法と同様の方法によって製造できる。
【0057】
<透過樹脂部材と吸収樹脂部材の関係>
次に、本発明における透過樹脂部材と吸収樹脂部材の関係について述べる。
本発明の成形品では、透過樹脂部材と吸収樹脂部材が一部において接合している。かかる接合は、レーザー光照射によって達成される。
本発明では、透過樹脂部材に含まれるポリアミド樹脂と、吸収樹脂部材に含まれるポリアミド樹脂の種類の80質量%以上が共通することが好ましく、90質量%以上が共通することがより好ましい。このような構成とすることにより、レーザー溶着性が向上する傾向にある。
本発明では、透過樹脂部材に含まれる銅塩と、吸収樹脂部材に含まれる銅塩の種類の80質量%以上が共通することが好ましく、90質量%以上が共通することがより好ましい。このような構成とすることにより、色移りをより効果的に抑制できる傾向にある。
本発明では、透過樹脂部材に含まれるハロゲン化物と、吸収樹脂部材に含まれるハロゲン化の種類の80質量%以上が共通することが好ましく、90質量%以上が共通することがより好ましい。このような構成とすることにより、色移りをより効果的に抑制できる傾向にある。
【0058】
本発明では、透過樹脂部材と、吸収樹脂部材の組成の70質量%以上が共通することが好ましく、80質量%以上が共通することがより好ましい。このような構成とすることにより、レーザー溶着性が向上する傾向にある。
【0059】
本発明では、透過樹脂部材(すなわち、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物)に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量aと、吸収樹脂部材(すなわち、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物)に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量bの質量比である、a:bが、0.8:1.2〜1.2:0.8であり、0.9:1.1〜1.1:0.9であることが好ましい。安定剤を配合することにより、レーザー溶着による接合面付近の材料の劣化を抑制でき、高い溶着強度を達成できる。さらに、安定剤の質量比を上記範囲とすることにより、色移りも効果的に抑制できる。
【0060】
キット
本発明のキットは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂と、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、光透過性色素とを含む、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物と、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂と、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物の少なくとも一方と、光吸収性色素とを含む、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物と、を有するキットであって、前記レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量aと、前記レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれる、銅塩と、アルカリ金属のハロゲン化物と、アルカリ土類金属のハロゲン化物の合計量bの質量比である、a:bが、0.8:1.2〜1.2:0.8である。
レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の詳細、および、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物の詳細は、上述の成形品のところで述べたレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物、および、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物とレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物の好ましい関係は、上記透過樹脂部材と吸収樹脂部材の関係のところで述べた事項と同じである。
【0061】
本発明のキットは、後述する実施例に記載の溶着強度に従ってレーザー溶着したときの溶着強度が、5kN以上であることが好ましく、10kN以上であることがより好ましい。前記溶着強度の上限値については特に定めるものではないが、例えば、20kN以下とすることができる。
さらに、本発明のキットは、後述する実施例に記載の湿熱試験後の強度保持率を、60%以上とすることができる。
【0062】
成形品の製造方法
本発明の成形品の製造方法は、本発明のキットを用い、レーザー溶着させることを含む。
本発明では、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品(透過樹脂部材)と、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品(吸収樹脂部材)を、レーザー溶着させて成形品を製造することができる。レーザー溶着することによって透過樹脂部材と吸収樹脂部材を、接着剤などを用いずに、強固に溶着することができる。
部材の形状は特に制限されないが、部材同士をレーザー溶着により接合して用いるため、通常、少なくとも面接触箇所(平面、曲面)を有する形状である。レーザー溶着では、透過樹脂部材を透過したレーザー光が、吸収樹脂部材に吸収されて、溶融し、両部材が溶着される。本発明では、透明樹脂部材が、ガラス繊維を含有していてもレーザー光に対する透過性が高いので、高いレーザー溶着強度を達成できる。ここで、レーザー光が透過する部材の厚み(レーザー光が透過する部分におけるレーザー透過方向の厚み)は、用途、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物の組成その他を勘案して、適宜定めることができるが、例えば5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
【0063】
レーザー溶着に用いるレーザー光源としては、光吸収性色素が吸収する光の種類に応じて定めることができ、波長800〜1064nmの範囲に極大吸収波長を有するレーザー光が好ましい。具体例としては、例えば、半導体レーザーが挙げられる。
【0064】
より具体的には、例えば、透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着する場合、まず、両者の溶着する箇所同士を相互に接触させる。この時、両者の溶着箇所は面接触が望ましく、平面同士、曲面同士、または平面と曲面の組み合わせであってもよい。次いで、透過樹脂部材側からレーザー光を照射(好ましくは溶着面に85〜95°の角度から照射)する。この時、必要によりレンズ系を利用して両者の界面にレーザー光を集光させてもよい。その集光ビームは、透過樹脂部材中を透過し、吸収樹脂部材の表面近傍で吸収されて発熱し溶融する。次にその熱は熱伝導によって透過樹脂部材にも伝わって溶融し、両者の界面に溶融プールを形成し、冷却後、両者が接合する。
このようにして透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着された成形品は、高い接合強度を有する。
尚、本発明における成形品とは、完成品や部品の他、これらの一部分を成す部材も含む趣旨である。
【0065】
本発明でレーザー溶着して得られた成形品は、機械的強度が良好で、高い溶着強度を有し、レーザー光照射による樹脂の損傷も少ないため、種々の用途、例えば、各種保存容器、電気・電子機器部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、車両機構部品などに適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両用中空部品(各種タンク、インテークマニホールド部品、カメラ筐体など)、車両用電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品など)モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品などに好適に用いることができる。
特に、本発明の成形品およびキットは、車載カメラの筐体に適している。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0067】
<樹脂>
MP10:以下の合成方法によって得た。
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が7:3の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。
【0068】
<ガラス繊維>
T−756H:日本電気硝子社製、ECS03T−756H、重量平均繊維径10.5μm、カット長3mm、ウレタン系集束剤で表面処理されている
<タルク>
ミクロンホワイト#5000S:林化成社製
<離型剤>
ステアリン酸バリウム:東京化成工業社製
【0069】
<安定剤>
安定剤1:CuI、純正化学株式会社製、ヨウ化銅(I)
安定剤2:KI、長瀬産業株式会社製、201FF STABILIZER
<光透過性色素>
LTW−8731H:オリエント化学工業社製、e−BIND LTW−8731H、ポリアミド66と光透過性色素のマスターバッチ
<光吸収性色素>
カーボンブラック:カーボンブラックマスターバッチ、日弘ビックス社製、PA−0896、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)とカーボンブラックのマスターバッチ(カーボンブラック50質量%)
【0070】
<実施例1>
<<レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物ペレットの調製>>
後述する下記表1に示す組成(表1は質量部である)となるように、樹脂とタルクと離型剤と安定剤をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−W−1−MP)を用いて投入し、さらに、光透過性色素についても二軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−W−1−MP)を用いてスクリュー根元から同時に投入し、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−V−1B−MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物ペレットを投入した。押出機の温度設定は、280℃とした。
【0071】
<<レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物ペレットの調製>>
後述する下記表1に示す組成(表1は質量部である)となるように、樹脂とタルクと離型剤と安定剤をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−W−1−MP)を用いて投入、LTW−8731Hについても二軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−W−1−MP)を用いてスクリュー根元から同時投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−V−1B−MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、レーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物ペレットを投入した。押出機の温度設定は、280℃とした。
【0072】
<<溶着強度>>
上記で得られたレーザー透過性ポリアミド樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製「型式:SE50DU」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型表面温度110℃の条件で幅20mm、長さ126mm、厚さ1.0mmの試験片1(透過樹脂部材)を製造した。
また、上記で得られたレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物ペレットを、120℃で5時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製「型式:SE50DU」)を用いて、シリンダー温度280℃、金型表面温度110℃の条件で幅20mm、長さ126mm、厚さ1.0mmの試験片2(吸収樹脂部材)を製造した。
図1に示すように試験片を重ね合わせ、レーザー光照射を行った。
図1中、(a)は試験片を側面から見た図を、(b)は試験片を上方から見た図をそれぞれ示している。1は試験片1を、2は試験片2を、3はレーザー光照射箇所を、それぞれ示している。
試験片1と試験片2を重ね合わせ、試験片1側からレーザーを照射した。レーザー溶着装置は、スキャンタイプのパーカーコーポレーション社製「PARK LASER SYSTEM」を用い、レーザー光波長は940nm(半導体レーザー)、溶着スポット径は2.0mm、溶着長さは20mmでレーザーを照射した。レーザー光のスキャン速度は5mm/秒、レーザー出力は13W、クランプ圧力は0.5MPaとした。このようにして溶着した試験片を得た。
【0073】
得られた溶着した試験片を用い、レーザー溶着強度測定を行った。溶着強度の測定は、ASTM D756規格における引張試験に従い、引張試験機(インストロン社製「5544型」)を使用し、溶着して一体化された試験片1と試験片2を、その長軸方向の両端をクランプで挟み、引張速度5mm/分で引っ張った。溶着部の引張せん断破壊強度に応じて以下の通り評価した。
A1:引張せん断破壊強度が10kN以上であった。
B1:引張せん断破壊強度が5kN以上10kN未満であった。
C1:引張せん断破壊強度が5kN未満であった。
【0074】
<<色移り>>
上記溶着強度の評価方法に従い、試験片1と試験片2をレーザー溶着し、溶着した試験片を得た。得られた溶着した試験片を、85℃、相対湿度(RH)85%の雰囲気下に1000時間おいて湿熱処理を行った。その後、溶着した試験片の色移りの有無を目視で確認した。
A2:湿熱試験後に色移りしなかった。
C2:湿熱試験後に色移りが確認された。
【0075】
<<湿熱試験後の強度保持率>>
上記溶着強度の評価方法に従い、試験片1と試験片2をレーザー溶着し、溶着した試験片を得た。得られた溶着した試験片を、85℃、相対湿度(RH)85%の雰囲気下に1000時間おいて湿熱処理を行った。湿熱処理後の溶着した試験片について、上記溶着強度の評価方法と同様に、ASTM D756規格における引張試験に従い、溶着部の引張せん断破壊強度を求めた。前記湿熱処理前後の引張保持率を以下の通り評価した。
A3:強度保持率が60%以上であった。
B3:強度保持率が60%未満であった。
【0076】
<実施例2、比較例2〜4>
実施例1において、表1に示す通り変更し、他は同様に行った。
【0077】
【表1】
【0078】
上記表1の結果から明らかなとおり、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物とレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物における安定剤の質量比を本発明の範囲内としたとき、溶着強度が高く、湿熱試験後に安定剤に由来する色移りが生じす、かつ、湿熱試験後の強度保持率を高く維持することが可能であった。
一方、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に安定剤を配合しない場合(比較例1)やレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に安定剤を配合しない場合(比較例2)、安定剤が添加されていない樹脂部材の材料が脆く、レーザー溶着強度が不十分であった。また、湿熱試験後に、安定剤に由来する色移りが確認された。さらに、湿熱試験後の安定剤が添加されていない樹脂部材が脆く強度保持が不十分であることが分かった。
また、レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物およびレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物の両方に安定剤を配合しない場合(比較例3)、湿熱試験後も安定剤に由来する色移りは生じず、また、湿熱試験後も高い強度保持率を維持できた。しかしながら、レーザー溶着強度が不十分であった。
レーザー透過性ポリアミド樹脂組成物に含まれる安定剤とレーザー吸収性ポリアミド樹脂組成物に含まれる安定剤の比率が、本発明の範囲外である場合(比較例4)、レーザー溶着強度と湿熱試験後の強度保持率には優れていたが、湿熱試験後に安定剤に由来する色移りが生じてしまった。