特許第6872989号(P6872989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872989
(24)【登録日】2021年4月22日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20210510BHJP
   A47K 17/02 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   A61G12/00 U
   A47K17/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-124750(P2017-124750)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-5307(P2019-5307A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】柊 温子
(72)【発明者】
【氏名】白石 和良
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−137294(JP,A)
【文献】 実開平07−003498(JP,U)
【文献】 米国特許第05630236(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00,5/14
A47K 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者に着座される座部の後方に配設されたフレームと、
前記座部に着座された被介助者の座位姿勢を保持する保持部と、
前記フレームに対して前記保持部を上下方向に回動可能に連結する連結部と、
を有し、
前記保持部が、前記連結部に固定されると共に前記座部に着座された被介助者の肩越しに前方へ延びる肩越し部と、該肩越し部から下方に延設されて被介助者の前面を支承する前面受け部と、該前面受け部から後方に延設されて被介助者の側面を支承する側面受け部と、を有し、
前記肩越し部の上下方向の回動により、前記座部に着座された被介助者の前面を前記前面受け部で支承すると共に該被介助者の側面を前記側面受け部によって支承する保持位置と、該保持位置から該前面受け部および該側面受け部が上方へ待避した待避位置と、を選択的にとり得るようにされている、
ことを特徴とする介助装置。
【請求項2】
前記前面受け部は、前記保持部が前記保持位置にある場合に前記座部に着座された被介助者の胸を支承する胸受け部を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の介助装置。
【請求項3】
前記保持部が前記保持位置にある場合に、前記側面受け部が前記座部に着座された被介助者の脇腹を支承する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の介助装置。
【請求項4】
前記保持部が左右一対設けられている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の介助装置。
【請求項5】
左右の前記肩越し部が、前記フレームに対して互いに独立して上下方向に回動可能とされている、ことを特徴とする請求項4に記載の介助装置。
【請求項6】
左右の前記保持部のうち少なくとも前記側面受け部同士の左右方向間隔が変更可能とされている、ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の介助装置。
【請求項7】
前記肩越し部が、前記連結部に対して左右方向に揺動可能に連結されている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の介助装置。
【請求項8】
前記フレームが、固定フレームと、該固定フレームに対して前後方向に揺動可能とされて直立位置と該直立位置から前方へ傾斜された前傾位置とを選択的にとり得るようにされた揺動フレームと、を有し、
前記揺動フレームの揺動をロックしておくロック機構が設けられ、
前記保持部が、前記連結部を介して前記揺動フレームに対して連結されている、
とを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の介助装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座姿勢にある被介助者の上半身を安定した状態で保持させておくための介助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
障がい者や高齢者などの被介助者が、例えば着座式便器(洋式便器)に着座した場合に自力で座位姿勢を維持できないとき、被介助者の上半身を安定させた状態にすることが望まれる。このため、特許文献1、特許文献2には、着座式便器の周囲に、上半身を安定させるための補助具を設けたものが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の補助具は、便器に着座した被介助者の左右に位置される前後方向に延びる左右一対のガイド管と、各ガイド管の前端部同士を連結する湾曲状の掴みバーを設けたものとなっている。また、特許文献1には、便器に着座されて背もたれ板に背中をもたれかけさせた被介助者の腰部を拘束するベルトを設けることも開示されている。
【0004】
特許文献2に記載のものでは、便器に着座した被介助者の左右に位置される前後方向に延びる左右一対の手摺り(アームレスト)を設けて、この手摺りを、上下方向に揺動可能として、前後方向に延びる使用位置と上下方向に延びる待避位置とを選択的にとり得るようにしたものが開示されている。また、特許文献2には、便器に着座されて背もたれ板に背中をもたれかけさせた被介助者の上半身を拘束するベルトを設けることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−33919号公報
【特許文献2】特開2001−169968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した各特許文献に記載のものは、いずれも、被介助者を拘束するベルトを用いない限り、被介助者が、補助具を掴む等のことができる程度の被介助者、つまり腕や指先に力を入れることのできる程度の被介助者であることが前提となっている。しかしながら、被介助者の中には、補助具を掴む等のことができない者もおり、この場合は、自分自身の力で座位姿勢を維持できないため、周囲に掴むことが可能な補助具が存在しても、実際にはこの補助具を利用することができないというのが実情である。
【0007】
ここで、特許文献2のものでは、腕や指先に力を入れることができない被介助者に対しては、ベルトを用いて被介助者の上半身を背もたれ板に固定することになる。しかしながら、ベルトによる上半身の拘束は、被介助者を縛り付けるということになって、被介助者において多大な精神的苦痛を伴うと共に倫理上の問題をも生じて、採用し難いというのが実情である。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、座部に着座される被介助者が自力で座位姿勢を維持できない場合であっても、ベルトによる拘束を行うことなく、上半身を確実に安定保持させておくことのできるようにした介助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
被介助者に着座される座部の後方に配設されたフレームと、
前記座部に着座された被介助者の座位姿勢を保持する保持部と、
前記フレームに対して前記保持部を上下方向に回動可能に連結する連結部と、
を有し、
前記保持部が、前記連結部に固定されると共に前記座部に着座された被介助者の肩越しに前方へ延びる肩越し部と、該肩越し部から下方に延設されて被介助者の前面を支承する前面受け部と、該前面受け部から後方に延設されて被介助者の側面を支承する側面受け部と、を有し、
前記肩越し部の上下方向の回動により、前記座部に着座された被介助者の前面を前記前面受け部で支承すると共に該被介助者の側面を前記側面受け部によって支承する保持位置と、該保持位置から該前面受け部および該側面受け部が上方へ待避した待避位置と、を選択的にとり得るようにされている、
ようにしてある。
【0010】
上記解決手法によれば、座部に着座された被介助者が自力で座位姿勢を維持できない場合、前のめりになる上半身を前面受け部でもって確実に支承することができ、また横倒れする上半身を側面受け部によって確実に支承することができ、被介助者の上半身を確実かつ安定して保持させておくことができる。また、被介助者の臀部が座部から前方にずり落ちそうになっても、上半身の前面を前面受け部の下部でもって受け止めることにより、座位姿勢を維持することができる。また、保持部を待避位置とすることにより、保持部に邪魔されることなく、座部への離着座を容易に行うことができる。勿論、ベルトによる拘束を行うものではないので、被介助者に対して精神的苦痛を与えてしまうこともなく、倫理上も問題になることはない。
【0011】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。
前記肩越し部が、前記連結部に対して左右方向に揺動可能に連結されている、
ようにすることができる。この場合、体格の相違する被介助者に対して幅広く対応することができる。
【0012】
前記前面受け部は、前記保持部が前記保持位置にある場合に前記座部に着座された被介助者の胸を支承する胸受け部を有している、ようにすることができる。この場合、前面受け部の胸受け部によって被介助者の胸を支承して、被介助者の上半身が前倒れするのを確実に防止する上で好ましいものとなる。
【0013】
前記保持部が前記保持位置にある場合に、前記側面受け部が前記座部に着座された被介助者の脇腹を支承する、ようにすることができる。この場合、側面受け部によって被介助者の脇腹を支承して、被介助者の上半身が横倒れするのを確実に防止する上で好ましいものとなる。
【0014】
前記保持部が左右一対設けられている、ようにすることができる。この場合、一方の保持部で被介助者の左上半身を支承し、他方の保持部で被介助者の右上半身を支承することから、被介助者の上半身をより一層かつ安定して保持させることができる。
【0015】
左右の前記肩越し部が、前記フレームに対して互いに独立して上下方向に回動可能とされている、ようにすることができる。この場合、介助者は、被介助者の片側上半身を支えつつ、他側上半身に他側の保持部を装着することができ、さらに、他側上半身が他側の保持部によって支承されるため、着座作業の負担が軽減される。また、片側の保持部を待避位置としておくことにより、介助者が被介助者に寄り添うための作業空間を広く確保することができる。
【0016】
左右の前記保持部のうち少なくとも前記側面受け部同士の左右方向間隔が変更可能とされている、ようにすることができる。この場合、体格の相違する被介助者に対して幅広く対応することができる。
【0017】
左右の前記肩越し部がそれぞれ、前記連結部に対して左右方向に揺動可能に連結され、
左右の前記肩越し部の揺動に応じて、左右の前記保持部同士の左右方向間隔が変更される、
ようにすることができる。この場合、体格の相違する被介助者に対して幅広く対応することができる。
【0018】
前記フレームが、固定フレームと、該固定フレームに対して前後方向に揺動可能とされて直立位置と該直立位置から前方へ傾斜された前傾位置とを選択的にとり得るようにされた揺動フレームと、を有し、
前記揺動フレームの揺動をロックしておくロック機構が設けられ、
前記保持部が、前記連結部を介して前記揺動フレームに対して連結されている、
ようにすることができる。
この場合、前記揺動フレームが前記直立位置とされたときの前記保持位置においては、前記座部に着座された被介助者の上半身が直立した座位姿勢でもって、被介助者の前面を前記前面受け部で支承すると共に該被介助者の側面を前記側面受け部によって支承し、前記揺動フレームが前記前傾位置とされたときの前記保持位置においては、前記座部に着座された被介助者の上半身が前傾された前屈姿勢でもって、被介助者の前面を前記前面受け部で支承すると共に該被介助者の側面を前記側面受け部によって支承することができる。これにより、排便にとって好ましい前屈姿勢を保つのが困難な被介助者であっても、揺動フレームを前傾位置にすることにより、被介助者に前屈姿勢を容易にとらせることができる。
【0019】
前記揺動フレームの前傾角度を、複数段階で選択可能とされている、ようにすることができる。この場合、前傾角度を被介助者の好みに応じて適切に設定することができる。
【0020】
前記保持部が、前記前面受け部よりも前方位置において、前記座部に着座された被介助者の手指によって把持される把持部を有している、ようにすることができる。この場合、被介助者が把持部を握ることができれば、特に揺動フレームを直立位置から前傾させる際、被介助者に安定感を与えることができる。また、介助者が把持部を掴んで保持部を上下方向に回動させることができるため、保持部の回動作業が容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、座部に着座された被介助者が自力で座位姿勢を維持できない場合であっても、ベルトによる拘束を行うことなく、保持部により上半身を確実に安定保持することにより、被介助者の座位姿勢を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による介助装置の骨格構造例を示すもので、保持部を覆うパッド、背当て部のクッションおよびロック機構の一部を省略して示す斜視図。
図2】本発明による介助装置を示すもので、保持部を待避位置としたときを示す正面図。
図3図2に示す介助装置を着座式便器に対して配設した状態を示すもので、保持部を保持位置としたときの正面図。
図4図3の左側面図。
図5】フレームに対して保持部を上下方向に回動可能に連結するための構造例を示す要部断面図。
図6】保持部と連結部材との連結部位を示す側面図。
図7図6を上方から見た平面図。
図8図6の右方から見た側面図。
図9】左右の保持部同士の左右方向間隔を広げた状態を示す正面図。
図10】保持部を待避位置とした状態を示す側面図。
図11】揺動フレームを直立位置とし、保持部を保持位置とした状態を示す側面図で、固定フレームの一部を省略して示す図。
図12図11の状態から揺動フレームを前傾させて前傾位置とした状態を示す側面図。
図13】揺動フレームを直立位置とした状態で、被介助者の座位姿勢を保持した状態を示す正面図。
図14】揺動フレームを前傾位置とした状態で、被介助者の前屈姿勢を保持した状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図4において、本発明による介助装置は、大別して、フレーム10と、左右一対の保持部20と、左右一対の連結部30と、を有する。
【0024】
フレーム10は、固定フレーム11と揺動フレーム12とを有する。固定フレーム11は、金属製の板材を加工することにより構成されて、着座式便器(洋式便器)Bの直後方にある壁面Hに固定される。揺動フレーム12は、上下方向に延びる長く伸びる本体部材12Aと、本体部材12Aの下端部に一体化されて左右方向に延びる下横部材12Bと、本体部材12Aの上端部に一体化されて左右方向に延びる上横部材12Cと、を有する。そして、下横部材12Bが、固定フレーム11対して、左右方向に延びる軸線L1(図1参照)を中心として回転可能に連結、保持されている。これにより、揺動フレーム12が、固定フレーム11対して、下横部材12Bを中心として揺動可能に連結、保持されている。
【0025】
揺動フレーム12には、上下方向に延びる取付板12Dが一体化されている(図1参照)。この取付板12Dを弾性体からなるクッション材によって被覆することにより、背当て部12Eが構成されている(図2図4参照で、図1では背当て部12Eは省略してある)。
【0026】
揺動フレーム12における上横部材12Cの各端部に対して、連結部30を介して、保持部20が連結されている。この連結部30に関連した部分の構造について、図5図8をも参照しつつ説明するが、この連結部の構造は左右対称なので、一方のみに着目して説明する。まず、連結部30は、第1部材31と、第1部材31に対して一体化された軸状の第2部材32と、第2部材32の外周に嵌合された筒状の第3部材33と、を有する。
【0027】
第1部材31が、上横部材12Cの端部に対して、上下方向に回動可能に取付けられている。すなわち、図5に示すように、上横部材12Cの端面には、円形の嵌合凹部12Caが形成され、その底壁部12Cbにはねじ孔12Ccが形成されている。
【0028】
一方、第1部材31には、嵌合凹部12Caに対して回動可能に嵌合される外周円形の嵌合凸部31aが形成されている。第1部材31のうち、嵌合凸部31aが形成されている部分には、取付孔31bが形成されている。
【0029】
第1部材31は、上横部材12Cにおける底壁部12Cbと固定座金40とによって挟持された状態で、ねじ孔12Ccに螺合される取付ボルト41によって取付られる。この取付状態では、底壁部12Cbと第1部材31との間に座金42、43および皿ばね44が介在され、かつ第1部材31と固定座金40との間には座金45が介在される。このような取付により、第1部材31は、上横部材12Cに対して、上下方向に回動可能に連結された状態とされ、かつ所望の回動位置でもって第1部材31を静止させておくことができる。なお、上横部材13C(つまり揺動フレーム12)に対する第1部材31(つまり連結部30)の回動軸線が、符号L2(図1参照)で示される。
【0030】
第1部材31に一体化された第2部材32は、第1部材31に対して直交するように延びていて、その外周に第3部材33が回動可能に嵌合されている。第1部材31の端面に係合凹部31cが形成される一方、これに対向する第3部材33の端面には係合凸部33aが形成されている。係合凹部31cの周方向長さが、係合凸部33aの周方向長さよりも大きくされていて、第3部材33が、第1部材31(つまり第2部材32)に対して、所定角度範囲でもって回動可能とされている(例えば15度〜20度程度)。
【0031】
第2部材32の端面にはねじ孔32aが形成される一方、第3部材33の端面には、手回し操作される取付ねじ34が回動可能に保持されている。取付ねじ34は、ねじ孔32aに螺合される。第2部材32と第3部材33との間には、図5と同様の摩擦結合の構造が採択されて、取付ねじ34は、図5における取付ボルト41に対応したものとなっている(締付け力を調整して回動抵抗が可変な点が、取付ボルト41と相違)。すなわち、取付ねじ34を締め付けることにより、第3部材33の回動抵抗が増大される。取付ねじ34を緩めることにより、第3部材33の回動抵抗が減少される。取付ねじ34の締付力を調整することにより、第3部材33(つまり保持部20)を所望の回動位置へと変更可能としつつ、所望位置でもって停止させておくことができる。
【0032】
各保持部20は、大別して、連結部30に固定されると共に着座式便器Bに着座された被介助者P1の肩越しに前方へ延びる肩越し部21と、肩越し部21の先端部から下方へ延設されて被介助者P1の前面を支承する前面受け部23と、前面受け部23から後方に延設されて被介助者P1の側面を支承する側面受け部24と、を有する。片越し部21、前面受け部23及び側面受け部24は、弾力性のあるパッド26で覆われた金属製の芯材22によって一体的に形成されている。そして、肩越し部21の基端部が、前述した連結部30における第3部材33に対して、固定具50によって固定されている。
【0033】
本実施形態では、前面受け部23は、被介助者P1の前面、特に被介助者P1の胸を広い面積でもって支承できるように板状(面状)とされている。具体的には、図3及び図8に示すように、前面受け部23は、肩越し部21の先端部から下方へ帯状に延設された下方延設部23aと、下方延設部23aから板状に張り出して被介助者P1の胸を支承する胸受け部23bとを備えている。また、前面受け部24の前面には、被介助者又は介助者により把持される把持部25が設けられている。把持部25は、取っ手形状とされている。
【0034】
図4に示すように、側面受け部24は、被介助者P1の側面を支承するよう、前面受け部23から後方に延設されて背当て部12E近傍に達している。また、図6に示すように、側面受け部24は、被介助者P1の側面、特に被介助者P1の脇腹を広い面積でもって支承できるように板状(面状)とされており、側面受け部24の下端部は、胸受け部23bの下端位置よりもさらに下方へ延びている。
【0035】
前記揺動フレーム12を所望の揺動角度でもってロックするためのロック機構R2が設けられている。このロック機構R2について、特に、図11図12を参照しつつ説明する。ロック機構R2は、固定フレーム11に一体的に設けられたロック板60(図1をも参照)と、揺動フレーム12の上端部に上下方向に変位可能に保持された操作部61(図1図3をも参照)と、基端部が揺動フレーム12の下端部に揺動可能に保持されたロック片62と、操作部61とロック片62とを連結するロッド状の連結部材63と、ロック片62の先端部が下方に向かうように付勢するスプリング64と、ガイド板65と、を有する。
【0036】
ガイド板65は、ロック片62の若干上方位置において揺動フレーム12に固定されて、連結部材63が遊嵌状態で貫通されている。そして、スプリング64が、コイルスプリングとされて、ガイド板65とロック片62との間において連結部材63を取り巻くように配設されている。これより、スプリング64によって、ロック片62はその先端部が下方へ向かうように付勢されている。
【0037】
ロック板60には、前後方向に間隔をあけて複数のロック用凹部60aが形成されている。一方、ロック片62の先端部には、ロック用凹部60aに係脱されるロック用凸部62aが形成されている。ロック用突部62aをロック用凹部60aから離脱(嵌合解除)したときがロック解除状態となり、このときは揺動フレーム12が前後方向に揺動可能とされる。
【0038】
ロック用突部62aがロック用凹部60aに嵌合されたときがロック状態となり、揺動フレーム2の前後方向の揺動が規制される。ロック用突部62aをもっとも後方のロック用凹部60aに嵌合させたときが、揺動フレーム12が直立した状態とされる。また、ロック用突部62aをもっとも前方のロック用凹部60aに嵌合させたときが、揺動フレーム12がもっとも前傾した状態とされる。このように、ロック用突部62aを、どの位置にあるロック用凹部60aに嵌合させるかによって、揺動フレーム12の揺動角度が変更される。
【0039】
ロック用突部62aがロック用凹部60aに嵌合されているとき、スプリング64によって、この嵌合状態(ロック状態)が確実に維持される。介助者が、スプリング64の付勢力に抗して操作部61を上方へ向けて操作することにより、連結部材63を介してロック片62が上方へ揺動されて、ロック用突部62aのロック用凹部60aに対する嵌合(ロック)が解除される。
【0040】
次に、以上のように構成された介助装置の使用方法について、特に図13図14を参照しつつ説明する。なお、図13図14において、保持される対象となる被介助者が符号P1で示される。まず、被介助者P1が着座式便器Bに着座される前の状態では、揺動フレーム12が直立位置とされ、かつ保持部20が、図2図10に示すように、上方へ待避された待避位置とされる。
【0041】
待避位置にある状態でもって、被介助者P1は、介助者の補助を受けつつ、着座式便器B(の便座)に着座される。この着座状態では、被介助者P1の背中が背当て部12Eに当たり、被介助者P1の上半身が直立した座位姿勢としておくのが好ましい。
【0042】
被介助者P1が着座式便器Bに着座された状態で、介助者は、保持部20を保持位置へ向けて回動させて、保持部20の側面受け部24を被介助者P1の脇腹と腕の間に差し入れて、保持部20を保持位置とする。この保持部20でもって保持された状態となる座位姿勢の被介助者P1が、図13に示される。なお、図4図11は、図13に対応して、揺動フレーム12が直立位置とされ、かつ保持部20が保持位置とされた図である。介助者は、被介助者P1の片側上半身を支えつつ、他側上半身に他側の保持部20を装着することができ、さらに、他側上半身が他側の保持部20によって支承されるため、着座作業の負担が軽減される。
【0043】
図13の揺動フレーム12の直立位置から、揺動フレーム12を前傾させた前傾位置でもって、上半身を前傾させた被介助者P1の前屈姿勢を保持した状態が、図14に示される。揺動フレーム12の揺動角度の変更は、ロック機構R2用の操作部61を介助者が操作して行うことになる。
【0044】
揺動フレーム12を前傾させることにより、被介助者P1が前屈姿勢となって、排便の上で好ましい姿勢となる。このとき、前のめりとなる被介助者P1の胸部が前面受け部23でもって確実に支承される。なお、被介助者P1が把持部25を握ることができれば、特に揺動フレームを直立位置から前傾させる際、被介助者に安定感を与えることができる。
【0045】
被介助者P1の排便が終了した後は、揺動フレーム12を直立位置へと復帰させた状態とし、この後保持部20を待避位置へ回動させて、被介助者P1を着座式便器Bから離間させればよい。
【0046】
なお、排尿時は、揺動フレーム12を前傾位置としてもよく、直立位置としてもよい(被介助者P1の好みに応じて選択すればよい)。
【0047】
被介助者P1の体格が大きい場合は、図9に示すように、肩越し部21の揺動角度を変更して、左右の保持部20同士の間隔を大きくした状態、つまり左右の前面受け部23同士の左右間隔および左右の側面受け部24同士の左右間隔を大きくした状態とすればよい。
【0048】
また、被介助者の中には、片腕が硬直して動かないために、側面受け部24が腕と脇腹との間に入らないこともある。この場合は、動かない側の腕を一方の側面受け部24に当て、動かせることのできる腕側にある他方の側面受け部24を脇腹に当てて、被介助者P1の上半身が横倒れすることを防止すればよい。
【0049】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。左右一対の保持部20は、互いに一体化あるいは連動するように設定することにより、同時に上下方向に揺動するようにしてもよい(一方を待避位置としたときは他方も待避位置とされ、一方が保持位置とされたときは他方も保持位置とされる)。左右一対の保持部20同士の左右間隔の変更は、肩越し部21を連結部30に対して左右方向にスライドさせることにより行う等、他の適宜の手法を採択できる。また、左右方向間隔の変更は、左右の側面受け部24同士のみについて行うようにすることもできる。ロック機構R2は、例えば電動式にする等、適宜の構造、形式のものを採択できる。保持部20は、左右いずれか一方のみを有するものであってもよい。
【0050】
揺動フレーム12は、直立位置と前傾位置とのうちいずれか一方のみをとり得るものであってもよい。本発明が適用される座部を有する機器としては、着座式便器に限らず、例えば、休憩用の固定椅子や観賞位置にある固定椅子等、適宜のものを含むものである。保持位置とされた状態の保持部20が待避位置へ向けて揺動されるのを規制するロック機構を別途設けることもできる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、自力で座位姿勢を維持できない障がい者や高齢者用の介助装置として好適である。
【符号の説明】
【0052】
P1:被介助者
B:着座式便器
H:壁面
L1:軸線(揺動フレーム用)
L2:軸線(保持部の上下方向回動用)
R2:ロック機構
10:フレーム
11:固定フレーム
12:揺動フレーム
20:保持部
21:肩越し部
22:芯材
23:前面受け部
24:側面受け部
25:把持部
26:パッド
30:連結部
31:第1部材
32:第2部材
33:第3部材
34:取付ねじ
60:ロック板
60a:ロック用凹部
61:操作部
62:ロック片
62a:ロック用凸部
63:連結部材
64:スプリング
65:ガイド板
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